JP2011200930A - 金属部材の接合方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】少なくとも一方に錫を含む金属部材同士の表面を、蟻酸またはクエン酸溶液中において煮沸あるいは蟻酸またはクエン酸蒸気に暴露するステップと、この煮沸又は暴露された金属部材の表面同士をつき合わせ、加熱及び加圧するステップと、を含む接合方法とする。
【選択図】図1
Description
また、薄く高層な配線基板の開発や小型軽量化の追及により接続部の微細化が進展するにつれ、接合の際には、負荷を極力与えないようにすることが求められており、余計な力を加えない低応力な接合技術の開発が加速している。
フリップチップ接合は、図16に示すように、例えばロジックIC等の電子部品54の下面に設けられたチップ電極51と、実装基板52上の基板電極53とを向かい合わせて直接接続させる。また、この際には、例えばはんだバンプ等の接続部55を介してチップ電極51と基板電極53を接続する。
例えば、チップ部品の各種電極基板や熱緩衝板との大面積接合では、真空中または不活性雰囲気中で加圧・加熱する熱圧着の方法が採用される。
この熱圧着は、図17Aに示すように、実装基板62の電極と、実装基板62上に実装するロジックIC等の電子部品64の電極間に金属バンプ65等を形成・配置する。
そして例えば420℃程の熱を印加しながら、矢印A3に示す方向に圧力を加えることで、固相拡散による接合を行うものである。この方法では高い接合強度が得られることが特徴である。
特に異方性を有する樹脂では、接着面に対して垂直方向に導通性、水平方向に絶縁性を得られるため、隣り合うバンプ同士がショートすることなく実装基板82と電子部品84とを接続することができる。
また、こうした樹脂接合では260℃程の加熱を行うものが多く、数十秒程度と比較的短時間での接合を行うことが可能である。
特に、図18に示すように、基板96上に形成したはんだバンプ98によって電子部品97を接合しようとすると、液相による接合であるために、はんだバンプ98が矢印A6,A7の方向に広がりやすい。このため、領域T1に示す箇所において隣り合うはんだバンプ98が接触し、ショートを引き起こしてしまう。
こうしたショートの可能性は、熱圧着や超音波振動のような固相接合においても、その高温、高荷重のために排除しきれてはいない。
さらには、電子部品と基板の熱膨張係数が異なるため、リフローしたはんだにより接続した接合部分には、せん断応力や歪が加わり、接続信頼性の低下を招く危険性を孕んでいる。
また、超音波接合は、低温接続法の一つとして用いられるものの、位置決め精度が悪く、接合界面は局所的に高温(数百℃)になる。また、基板の気相洗浄が必要となるためコストもかかり、さらには、超音波振動による素子へのダメージという懸念も存在する。
この金属部材表面に形成された蟻酸化合物や、クエン酸化合物は、接合の際には接合界面において凝集するため、接合させる金属部材が直接接触する真実接合面積を増大させることができる。
特に、この蟻酸化合物やクエン酸化合物は、通常金属表面に形成されている金属酸化物よりも低い温度で凝集する。このため、従来よりも低い温度で、大きい真実接合面積を確保することが可能となる。
また、固相拡散により接合が行われるため、従来のように隣り合うバンプ同士が接触してショートする危険性も排除することができる。
図1は、本実施の形態例(以下「本例」と呼ぶ)による金属の接合方法の手順を示すフローチャートである。
本例の金属の接合方法は、まず接合させる金属部材を蟻酸又はクエン酸溶液中にて煮沸する(ステップS1)。または、蟻酸、クエン酸溶液中にて煮沸する代わりに、蟻酸蒸気又はクエン酸を含む蒸気に接合させたい金属部材表面を暴露させてもよい。なお、この時接合させる少なくとも一方の金属部材には錫が含まれているものとする。
そして図2Bに示すように、電子部品4の電極1と基板2の電極3をつき合わせ、矢印A2に示す熱を加えながら矢印A1の方向に圧力を印加することで、電極1と電極3とを固相拡散により接合することができる。
以下に本発明による金属部材の接合方法の実施例について説明する。
[1]実施例1
電解研磨により接合面を平滑化した直方体の錫ブロックと、エメリー紙を用いて4000番まで接合面を機械研磨した銅ブロックとを沸騰した蟻酸(98%)中に浸漬し、10分間の煮沸を行った。
次に、蟻酸から錫ブロック及び銅ブロックを取り出して互いの表面をつき合わせ、接合温度が130℃の条件において7MPaの圧力を30分間印加することで錫ブロックと銅ブロックの接合を行った。
[2]実施例2
銅ブロックと錫ブロックの接合温度を140℃としたこと以外は、実施例1と同様にして接合を行った。
[3]実施例3
銅ブロックと錫ブロックの接合温度を150℃としたこと以外は、実施例1と同様にして接合を行った。
[4]実施例4
接合させる金属ブロックを錫ブロックとニッケルブロックとしたこと以外は、実施例1と同様にして接合を行った。
[5]実施例5
錫ブロックとニッケルブロックの接合温度を120℃としたこと以外は、実施例4と同様にして接合を行った。
[6]実施例6
錫ブロックとニッケルブロックの接合温度を140℃としたこと以外は、実施例4と同様にして接合を行った。
[7]実施例7
錫ブロックとニッケルブロックの接合温度を150℃としたこと以外は、実施例4と同様にして接合を行った。
[8]実施例8
蒸留水100mlに対し、クエン酸粉末を20g投入して溶解させた溶液を約100℃にて沸騰させた。そして、この沸騰溶液中に上述の実施例1と同様の錫ブロックと銅ブロックを浸漬し、5分間煮沸を行った。
煮沸後、蒸留水にて錫ブロックと銅ブロックを10秒間洗浄した後、接合面に残留する蒸留水をエアーブローによって除去、乾燥させた。
そして錫ブロック及び銅ブロックを取り出して互いの接合面をつき合わせ、接合温度が120℃から140℃までそれぞれ10℃刻みの温度条件において、それぞれ接合を行った。なお、接合時の圧力は7MPaの圧力を30分間印加した。
[9]実施例9
接合させる金属ブロックを錫ブロックとニッケルブロックとし、接合温度を140℃から170℃まで10℃刻みの温度にてそれぞれ接合を行ったこと以外は実施例8と同様にして接合を行った。
[10]比較例1
電解研磨により接合面を平滑化した直方体の錫ブロック及び銅ブロックをそのままつき合わせ、接合温度が160℃の条件において7MPaの圧力を30分間印加することで錫ブロックと銅ブロックの接合を行った。
[11]比較例2
錫ブロックと銅ブロックの接合温度を170℃としたこと以外は、比較例1と同様にして接合を行った。
[12]比較例3
錫ブロックと銅ブロックの接合温度を180℃としたこと以外は、比較例1と同様にして接合を行った。
[13]比較例4
錫ブロックと銅ブロックの接合温度を190℃としたこと以外は、比較例1と同様にして接合を行った。
[14]比較例5
接合させる金属ブロックを、錫ブロックとニッケルブロックとし、接合温度を180℃としたこと以外は、比較例1と同様にして接合を行った。
[15]比較例6
錫ブロックとニッケルブロックの接合温度を190℃としたこと以外は、比較例1と同様にして接合を行った。
[16]比較例7
錫ブロックとニッケルブロックの接合温度を200℃としたこと以外は、比較例1と同様にして接合を行った。
[17]比較例8
錫ブロックとニッケルブロックの接合温度を210℃としたこと以外は、比較例1と同様にして接合を行った。
[18]比較例9
錫ブロックとニッケルブロックの接合温度を220℃としたこと以外は、比較例1と同様にして接合を行った。
図3は、錫と銅の接合を行った実施例1〜3及び比較例1〜4の金属継手を引張試験機にかけ、接合強度と接合温度の関係を調べたものである。
なお、接合面に垂直方向を長手方向とし、この方向に引張試験を行った。引張試験にはインストロン型試験機を用いた。
横軸は接合温度であり、縦軸は継手強度比である。なお、継手強度比は、錫ブロックそのものの強度を100とした場合に対する接合界面の強度比である。
したがって、錫と銅の接合を行った金属ブロックが引張試験によって破断した時の引張強さをσj、錫ブロック単体が引張試験によって破断した時の引張強さをσBとすると、継手強度比は(σj/σB)×100によって表すことができる。
しかし、この温度では接合が不十分であり、引張荷重を大きくしていくと接合界面からの剥がれが生じたため、継手強度比は70強程度と低い値になっている。
そして接合温度が150℃では、継手強度比が100となり、表面処理を行わなかった場合に比べ、より低い温度で高い接合強度が得られていることがわかる。
すなわち、蟻酸によって表面処理を行うことで、接合温度を190℃から150℃へと40℃大幅に下げることができる。
図4Aは接合温度が130℃における実施例1の銅ブロック側の破断面であり、図4Bは錫ブロック側の破断面である。
また、図4Cは接合温度が140℃における実施例2の銅ブロック側の破断面であり、図4Dは錫ブロック側の破断面である。
また、図4Eは接合温度が150℃における実施例3の銅ブロック側の破断面であり、図4Fは錫ブロック側の破断面である。
また、接合温度が140℃(実施例2)と少し高くした場合には、図4Cに示すように、破断面の下部領域において脆性的に界面破断が生じている。一方、上部領域では部分的に銅側に残った錫ブロックが延性的に破断しており、母材破断と界面破断とが混在した状態となっている。
したがって、錫ブロック側の破断面である図4Dでは、下部領域において界面破断を生じ、上部領域では、銅ブロック側に残った断片分だけ欠けた状態となっている。
このことからも、150℃の接合温度において錫と銅との接合を強固に行うことができているのがわかる。
図5Aは、接合温度が130℃(実施例1)における銅ブロック側破断面を走査型電子顕微鏡(SEM)によって観察した拡大写真図であり、図5Bは、この断面領域における銅の分布をEDXによって分析したものである。また、図5Cは、同じ断面領域における錫の分布をEDXによって分析したものである。
したがって、接合温度が140℃の場合には、銅ブロックと錫ブロックの界面破断と、錫ブロックの母材破断とが混在しているのがわかる。
このことからも、接合温度が150℃の場合には、錫ブロックの母材破断が生じているのがわかる。
図6Aは、接合温度が170℃の場合の銅ブロック側の破断面であり、図6Bは、この時の錫ブロック側の破断面である。
また、図6Cは、接合温度が180℃の場合の銅ブロック側の破断面であり、図6Dは、この時の錫ブロック側の破断面である。
また、図6Eは、接合温度が190℃の場合の銅ブロック側の破断面であり、図6Fは、この時の錫ブロック側の破断面である。
一方、接合温度を180℃(比較例3)とした場合の図6C,Dでは接合強度が上昇し、断面収縮をともなって延性的に破断をしているのが確認できる。
また、接合温度を190℃(比較例4)とした場合の図6E,Fにおいても同様に断面収縮をともなった延性的な破断をしている。
図7Aは、接合温度が170℃(比較例2)における銅ブロック側の破断面を電子顕微鏡(SEM)によって観察した拡大写真図である。また図7Bは、同じ領域における銅をEDXによって検出したものであり、図7Cは錫を検出したものである。
また、図7Gは、接合温度が190℃(比較例4)における銅ブロック側の破断面を電子顕微鏡(SEM)によって観察した拡大写真図である。また図7Hは、同じ領域における銅をEDXによって検出したものであり、図7Iは錫を検出したものである。
Sn+2HCOOH → Sn(HCOO)2+H2↑ ・・・(1)
SnO+2HCOOH → Sn(HCOO)2+H2O↑ ・・・(2)
SnO2+2HCOOH → Sn(HCOO)2+H2↑+O2↑ ・・・(3)
一方、接合温度を高くしていくと、錫表面に形成されている酸化錫等の酸化皮膜は凝集し、接合温度が高くなるほど凝集した粒子も粗大化して分布密度が低下する。すなわち、高温での接合時には、錫と銅との間に介在する酸化物等の介在物が凝集することにより、錫と銅が直接接触した真実接合面積が増加するため、接合強度が大きくなると考えられる。
シンボルcは、実施例4〜7における継手強度比であり、シンボルdは比較例5〜9における継手強度比である。
一方、蟻酸による表面改質を行った実施例4〜7の場合、接合温度が130℃において既に80以上の高い継手強度比が得られ、150℃という低い温度で継手強度比が100となった。
このように、錫とニッケルを接合する場合においても、母材破断が生じる接合温度が220℃から150℃へと、70℃下がっており、蟻酸により表面改質を行うことで、大幅に接合温度を低くすることができる。
図9Aは接合温度が120℃(実施例4)におけるニッケルブロック側の破断面であり、図9Bは、錫ブロック側の破断面である。
また、図9Cは、接合温度が130℃(実施例5)におけるニッケルブロック側の破断面であり、図9Dは錫ブロック側の破断面である。
また、図9Eは、接合温度が140℃(実施例6)におけるニッケルブロック側の破断面であり、図9Fは錫ブロック側の破断面である。
また、図9Gは、接合温度が150℃(実施例7)におけるニッケルブロック側の破断面であり、図9Hは錫ブロック側の破断面である。
図10Aは、接合温度が180℃(比較例5)におけるニッケルブロック側の破断面であり、図10Bは、錫側の破断面である。
また、図10Cは、接合温度が200℃(比較例7)におけるニッケルブロック側の破断面であり、図10Dは、錫側の破断面である。
また、図10Eは、接合温度が210℃(比較例8)におけるニッケルブロック側の破断面であり、図10Fは、錫ブロック側の破断面である。
また、図10Gは、接合温度が220℃(比較例9)におけるニッケルブロック側の破断面であり、図10Hは、錫ブロック側の破断面である。
一方、接合温度が220℃の場合には、図10Gに示す破断面の左側の領域においてニッケルブロック表面が露出している。また、右側の領域では、延性的に母材破断した錫ブロックの一部が残存しており、界面破断と母材破断とが混在した状態となっている。
すなわち、接合の際に接合面が塑性変形し、外周部にバリとして押し出された結果、ニッケルブロックは錫ブロックを拘束するようになる。また、塑性変形量は、接合温度の上昇とともに増加するため、このような高い引張強さを示したものと考えられる。
これは、銅と錫の接合の場合と同様、蟻酸によって酸化錫から置換された蟻酸錫は、低い接合温度で凝集、粗大化して分布密度が低下するため、真実接合面積を増大させることができるからである。
また、この作用は、表面に酸化錫が形成されている金属に対して得られる。したがって、少なくとも一方が錫を含有する金属であれば、蟻酸による表面改質を行うことで効果的に接合温度を下げることができる。
横軸は接合温度であり、縦軸は継手強度比である。また、シンボルeは、クエン酸による改質を行った実施例8の結果であり、またシンボルfは、改質を行わず、そのまま接合した比較例1〜4の結果である。
また、クエン酸を含有する蒸気中に金属の接合面を暴露することによっても、表面の改質を行うことができる。
横軸は、接合温度であり、縦軸は、破断が生じた時の引張強さである。
また、シンボルgは、クエン酸による表面改質を行った場合の実施例9の結果であり、シンボルhは、改質を行わないで接合を行った比較例5〜8の結果である。
このように、錫とニッケルを接合する場合においても、クエン酸による表面改質を行うことにより、従来よりも低い温度で同等の強度を得ることが可能である。
したがって、例えば図13Aに示すように、実装基板12上にロジックIC等のチップ14,15,16,17を多層積載する場合において有効に適用できる。例えば、基板側の電極13もしくはチップ側の電極11の少なくとも一方を錫を含有する材料により形成し、本発明による方法で接合を行っていく。これにより、低い温度かつ低荷重での接合が可能になるため、チップを多層積層する場合においても各チップにダメージを与えることなく実装することができる。
また、当然のことながら、図13Bに示すように、実装基板22上にICチップ24等を電極25によって接続する通常の表面実装においても、本発明を好適に用いることができる。
この場合には、例えば下部容器42と上部蓋44との接合部45を錫を含有する金属によって形成し、例えば蟻酸やクエン酸による表面改質を行った後に上部蓋44を被せて接合する。これにより、低温かつ強固な接合が可能となり、電子部品47に与える熱負荷を低減したパッケージングを行うことができる。
Claims (3)
- 少なくとも一方に錫を含む金属部材同士の表面を、蟻酸またはクエン酸溶液中において煮沸あるいは蟻酸蒸気またはクエン酸蒸気に暴露するステップと、
前記煮沸又は暴露された前記金属部材の表面同士をつき合わせ、加熱及び加圧するステップと、
を含む
金属部材の接合方法。 - さらに、前記金属部材の煮沸又は暴露後に、金属部材表面を洗浄するステップを含む請求項1に記載の金属部材の接合方法。
- さらに、前記金属部材表面を乾燥するステップを含む請求項1又は2に記載の金属部材の接合方法。
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