JP2011198890A - 金属パターン形成方法及びそれを用いて形成された金属パターン - Google Patents

金属パターン形成方法及びそれを用いて形成された金属パターン Download PDF

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Abstract

【課題】無電解めっき技術で金属パターンを形成する方法において基板との密着性が優れ、且つ細線描画性の優れた金属パターン形成方法とそれを用いて形成された金属パターンを提供することである。
【解決手段】基板の上に、触媒を含有するインクをインクジェット方式でパターン部を印字、乾燥し、該パターン部の上に無電解めっき処理によって金属パターンを形成する方法において、該触媒が可溶性パラジウム金属錯体でかつ該触媒を含有するインクpHが10.0〜14.0であり、前記無電解めっき処理前の印字パターン部の表面粗さRaが30nm以上45nm以下であることを特徴とする金属パターン形成方法。
【選択図】なし

Description

本発明は、インクジェット法による回路形成に用いる金属パターン形成用インク及び金属パターンに関するものである。
回路に用いる金属パターンの形成は、従来、レジスト材料を用いた方法により行われてきた。すなわち、金属薄層上にレジスト材料を塗布し、必要なパターンを露光した後、現像により不要なレジストを除去し、むき出しとなった金属薄をエッチングにより除去し、さらに残存するレジスト部分を剥離することで金属パターンを記録した金属薄を形成していた。
しかしながら、この方法では工程が多岐にわたり時間がかかること、また不要なレジスト、金属薄を除去することなど、生産時間、およびエネルギーや原材料使用効率の点から無駄が多く、改善が要求されていた。
近年、粒径が100nm以下の、いわゆる金属ナノ粒子を含有するインクを用い、スクリーン印刷やインクジェット(以下IJともいう)印刷などで金属パターンを直接描画する金属パターン形成方法に注目が集まっている(例えば、特許文献1参照)。
この金属パターン形成方法は、金属ナノ粒子の粒径を極小にすることで融点が低下することを活用し、200〜300℃程度の温度で焼成することにより、回路を形成する方法である。本技術は、確かに工数の低減、原材料の利用効率向上などの利点はあるものの、金属粒子同士を完全に融合させることが難しく、焼成後の金属パターンにおいて電気抵抗を下げるための後処理における温度や条件に厳しい制約がある、という課題が残っていた。
金属ナノ粒子を用いず、金属塩を使用してインク中で金属イオンの形態にし、加熱下で還元性を有する還元剤を含有する溶液から導電パターンを形成する方法がある。しかしながら、金属塩に配位して安定化させる錯化剤が十分な性能を有していないため、金属塩の還元反応が進行しやすくなり、液保存性に乏しいものになっていた。
一方、金属を穏和な条件で生成析出させる手段として、無電解めっき技術を活用して金属パターンを形成する方法も提案されている。例えば、無電解めっきが形成可能となる触媒を含有したインクで回路パターンを形成させた後、無電解めっき処理で金属を形成させる方法が開示されている(例えば、特許文献2、非特許文献1参照)。
無電解めっき技術を活用して金属パターンを形成する方法は、上記いずれの場合においても、可溶性なパラジウム金属錯体をインクに含有させて、そのインクをインクジェット方式にて基板に印字させてパラジウム触媒のパターン形成を行う。その後に無電解めっきをおこない、触媒パターン上に金属パターンを形成させている。しかしながら、無電解めっきによる金属と基板(ガラスエポキシあるいはポリイミド等の有機樹脂)との密着性は十分なものではなかった。また、細線のパターン化に際しては、細線描画性が劣る場合があり、細線のエッジ部に欠けが生じたり、細線の線状に乱れが生じることもあった。従来は、基板を機械的あるは化学的な表面処理にて凸凹を設け、アンカー効果にて密着性をあげることが行われていたが、この方法では金属パターン自身も同様な凹凸をもってしまい好ましいものではない。また、基板に紫外線照射やプラズマ処理にて表面に特定な官能基を形成させ、触媒との配位、吸着性を利用して密着性をあげたりしていた。しかしながらいずれの方法でも、十分な密着性があるとは言い難かった。
特開2002−299833号公報 特開平7−131135号公報
第21回エレクトロニクス実装学会講演大会講演文集、2007年、p.105
本発明は、上記課題に鑑みなされたものであり、その目的は、無電解めっき技術で金属パターンを形成する方法において基板との密着性が優れ、且つ細線描画性の優れた金属パターン形成方法とそれを用いて形成された金属パターンを提供することである。
本発明の上記目的は、以下の構成により達成される。
1.基板の上に、触媒を含有するインクをインクジェット方式でパターン部を印字、乾燥し、該パターン部の上に無電解めっき処理によって金属パターンを形成する方法において、該触媒が可溶性パラジウム金属錯体でかつ該触媒を含有するインクpHが10.0〜14.0であり、前記無電解めっき処理前の印字パターン部の表面粗さRaが30nm以上45nm以下であることを特徴とする金属パターン形成方法。
2.前記触媒を含有するインクに、さらに酸とアルカリの中和塩を含有していることを特徴とする前記1に記載の金属パターン形成方法。
3.前記無電解めっき処理前の印字パターン部の表面粗さにするために、前記無電解めっき処理の前にパターン部に存在する前記中和塩を除去することを特徴とする前記2に記載の金属パターン形成方法。
4.前記中和塩を溶解させて除去することを特徴とする前記2または3のいずれか一項に記載の金属パターン形成方法。
5.前記可溶性パラジウム金属錯体が、パラジウム金属塩と錯化剤で形成されていることを特徴とする前記1から4のいずれか一項に記載の金属パターン形成方法。
6.前記基板が非インク吸収性樹脂であることを特徴とする前記1から5のいずれか一項に記載の金属パターン形成方法。
7.前記非インク吸収性樹脂がポリイミド樹脂であることを特徴とする前記1から6のいずれか一項に記載の金属パターン形成方法。
8.前記無電解めっき処理の後に、さらに電気めっき処理をすることを特徴とする前記1から7のいずれか一項に記載の金属パターン形成方法。
9.前記無電解めっき処理に用いるめっきが銅とニッケルおよびそれらの合金であることを特徴とする前記1から8のいずれか一項に記載の金属パターン形成方法。
10.前記1から9のいずれか1項に記載の金属パターン形成方法により形成されたことを特徴とする金属パターン。
本発明により、無電解めっき技術で金属パターンを形成する方法において基板との密着性が優れ、且つ細線描画性の優れた金属パターン形成方法とそれを用いて形成された金属パターンを提供することができた。
以下、本発明を実施するための形態について詳細に説明する。
インクの触媒としてパラジウム金属錯体を用いて、インクをアルカリ性にするとパラジウム金属錯体がインク中で安定化し、インクジェット出射性に良好であることが分かった。
しかしながら、パラジウム金属錯体は中性な水には難溶性なので、いったん溶解しやすい多量の酸(塩酸、硝酸など)を含有した水で溶解させる。このあとに上記理由からインクをアルカリ性にするために多量のアルカリ(水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなど)を添加させる。
そのため、インク中に酸とアルカリで形成される中和塩が多量に含有される。こうした中和塩は、インク中では可溶化しており簡単に析出するものではないが、IJ印字、インク溶媒が乾燥すると、中和塩が固体物としてIJ印字に残存する。この時パラジウム錯体はIJ印字部に極薄かつ均一な状態で存在し平滑な表面を有する。しかしながら、中和塩は結晶固形物として表面に存在するため、基板の表面粗さを大きくする。
触媒インクの印字部に触媒機能以外の固体残留物が存在すると、あとから行う無電解めっきで形成される過程にこうした固体物が金属と基板の間に残ったり、めっき金属が基板からやや浮いた状態で形成したりして、金属パターンの密着性を低下させていることが分かった。
IJ印字する前には当然、基板表面に存在するものを十分に洗浄するが、インクに含有するものが基板表面に固体物として残存する場合は、IJ印字と無電解めっき処理の間に過剰な固形物を除去することが重要である。種々の微量な不純物はもとより、本発明のような可溶性パラジウム金属錯体の場合は、可溶化するため用いられる、酸とアルカリによる中和塩がインク中に多量に含有し、これが問題となる。この中和塩はIJ印字後の乾燥により、大きな結晶固体物として基板上に多数残存し悪影響を及ぼす。
《前処理工程》
こうしたIJ印字部の固体残存物はIJ印字部の表面粗さを増大させる。表面粗さを持たせたほうが、基板との密着性は向上するが、あとから形成する金属膜の表面も同様に粗くなり好ましくない。よって本発明では無電解めっき処理の前にIJ印字部の表面粗さを適度に軽減することが、密着性向上という観点からして重要である。
本発明では無電界メッキ処理の前に固体残存物の中和塩を除去して表面粗さを減少させる工程を前処理工程という。前処理工程により、無電解めっき処理前の印字パターン部の表面粗さRaの値を小さくすることが重要であり、本発明では無電解めっき処理前の印字パターン部の表面粗さRaは、30nm以上45nm以下の範囲にすることで、良好な密着性と良好な細線描画性を得ることが可能となった。
固体残存物(中和塩)を除去して表面粗さRaを30nm以上45nm以下にする前処理の方法としては、中和塩をエアで吹き飛ばす処理、定着して平滑にする処理、加熱、溶融させる処理などがあるが、中和塩を水溶液で溶解させることが好ましい。通常は水系液体に対する溶解性が高いので、IJ印字部をその液体に接触あるいは浸漬させること溶解し、表面粗さを小さくすることが可能である。液体に浸漬させる場合、温度、時間を適宜調整して上記表面粗さを調節できるが、温度は10℃〜40℃、時間は1〜10分程度の処理が扱いやすく好ましい。また必要に応じて撹拌する事ができる。超音波を併用することもできる。
但し、前処理工程において表面粗さを小さくしすぎることも好ましくない。それは基板上に存在する触媒も除去することになる。すると、無電解めっきによる金属が十分に形成しなかったりして、印字部の細線描画性が低下することもある。
《金属パターン形成用インク》
本発明ではインクジェット方式により、まず金属パターン形成用インクにより、印字パターンが印字される。形成された印字パターン部に従い無電解めっきされた金属パターンは、各種配線板に微細な回路パターンに応用できるもので、電子回路等で要求されている微細な線幅のパターン等に用いることができる。上記印字パターン形成に用いる金属パターン形成用インク(以下、単にインクともいう)は、触媒としてパラジウム金属錯体を含有することを一つの特徴とする。
本発明においては、パラジウム金属錯体は、パラジウム金属塩と錯化剤によって錯体形成しているものが好ましい。
本発明に適用可能なパラジウム金属塩としては、例えば、フッ化パラジウム、塩化パラジウム、臭化パラジウム、ヨウ化パラジウム、硝酸パラジウム、硫酸パラジウム、酢酸パラジウム、アセト酢酸パラジウム、トリフルオロ酢酸パラジウム、水酸化パラジウム、酸化パラジウム、硫化パラジウム等が挙げられ、中でも塩化パラジウムが好ましい。
インク中におけるパラジウム金属塩の含有量としては、0.01質量%以上、1.0質量%以下が好ましい。パラジウム金属塩の濃度が0.01質量%以上であれば、次工程である無電解めっき反応の必要な活性度を得ることができ、1.0質量%以下であれば、インク中のパラジウム金属塩の安定性を維持することができる点で好ましい。パラジウム金属塩は通常、水に不要なため予め、酸に溶解させて使用することが多い。この場合用いられる酸としては、無機酸が好ましく、塩酸、硫酸、硝酸などが挙げられ、可溶性の点で塩酸が好ましい。無機酸の使用量としては、パラジウム金属塩の5質量%〜30質量%が好ましい。
〔錯化剤〕
本発明のインクに適用可能な錯化剤としては、上記パラジウム金属塩と錯体形成可能な化合物が挙げられる。化合物としては、カルボシキ基をもつ有機酸があり、たとえば、シュウ酸、マロン酸、こはく酸、アジピン酸、マレイン酸、酒石酸、クエン酸などが挙げられる。そしてアミン系化合物または含窒素複素環式化合物であることが好ましい。アミン系化合物とはアンモニアの水素原子の1個またはそれ以上が炭化水素残基で置換された化合物であり、パラジウムイオンに対する錯形成剤である。ここではアンモニアも含むものとする。アミンはN原子上に非共有電子対を保持しており、パラジウムイオンと錯形成しやすい。アミンとしては、アンモニア、メチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、エチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、プロピルアミン、ジプロピルアミン、トリプロピルアミン、ブチルアミン、ジブチルアミン、トリブチルアミン、エチレンジアミン、エタノールアミン、トリエタノールアミン、エチレンジアミンテトラ酢酸等の直鎖アミン化合物、環状アミン化合物が挙げられる。含窒素複素環式化合物としては、例えば、ピリジン、2−アミノピリジン、3−アミノピリジン、4−アミノピリジン、ビピリジン、フェナントロリンなどが挙げられる。
本発明のインクにおいて、パラジウム金属塩(Pd)と錯化剤(Ch)のモル比は、1:0.5以上、1:10以下の範囲とすることが好ましい。パラジウム金属塩と錯化剤のモル比を1:0.5以上にすることにより、パラジウム金属塩と錯化剤とで形成される錯体の比率が高まり、インク中での溶解性や還元反応性が良好となる。また、モル比を1:10以下にすることにより、過剰な錯化剤による反応阻害を抑止するうえで好ましい。
本発明では、インクpHが10.0〜14.0である。パラジウム金属塩と錯化剤により形成される錯体は、インクのpHがアルカリ性であるほど形成が容易に進むため、パラジウム金属塩と錯化剤で形成された錯体の溶解性と保存性に優れる。また、非インク吸収性の樹脂基板との組合せにおいては、インクが高pHほど、密着性が良好となって好ましい。
インクpHをアルカリ性にするのに、アルカリ化合物を添加する。アルカリ化合物としては特に限定はないが、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムが好ましい。添加量としては、上記pH値に調整するに必要な量を添加する。よって、上記添加した酸とアルカリで形成される中和塩がインク中に含有することなる。この中和塩がインクで溶解していることが好ましい。
〔インク溶媒〕
本発明のインクに適用可能な溶媒としては、上記パラジウム金属塩と錯化剤の溶解性の観点から水性液媒体が好ましく用いられ、水性液媒体としては、水及び水溶性有機溶剤等の混合溶媒が更に好ましく用いられる。これらの溶媒の組成については、上記のパラジウム金属塩と錯化剤で形成された錯体の溶解状態に留意して選択することが好ましい。
好ましく用いられる水溶性有機溶剤としては、例えば、アルコール類(例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、イソブタノール、セカンダリーブタノール、ターシャリーブタノール等)、多価アルコール類(例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、ブチレングリコール、ヘキサンジオール、ペンタンジオール、グリセリン、ヘキサントリオール、チオジグリコール等)、多価アルコールエーテル類(例えば、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノフェニルエーテル、プロピレングリコールモノフェニルエーテル等)、アミン類(例えば、エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、N−メチルジエタノールアミン、N−エチルジエタノールアミン、モルホリン、N−エチルモルホリン、エチレンジアミン、ジエチレンジアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ポリエチレンイミン、ペンタメチルジエチレントリアミン、テトラメチルプロピレンジアミン等)、アミド類(例えば、ホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド等)、複素環類(例えば、2−ピロリドン、N−メチル−2−ピロリドン、シクロヘキシルピロリドン、2−オキサゾリドン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン等)、スルホキシド類(例えば、ジメチルスルホキシド等)等が挙げられる。
溶媒が水だけの単なる触媒素溶液ではインクジェットのインクとしては不適切である。それは上記有機溶媒が存在することで、インクがインクジェットヘッドから安定して吐出するために適度な粘性(粘度)を与え、粘度1.5〜30mPa/sの範囲に調整可能となる。またインクの水分が揮発するとヘッドノズル内で固化や出射不良を回避するために保湿性を付与すること、さらに有機溶媒によりインクの表面張力をインクジェットに適した50〜25mN/mに調整することも重要である。そのため、上記有機溶媒をインク中に5質量%〜90質量%が好ましく、さらに好ましくは、30質量%〜80質量%である。また有機溶媒の沸点としては、80℃以上250℃以下が保湿性と乾燥性の点で好ましい。
〔界面活性剤〕
本発明のインクに適用可能な界面活性剤としては、例えば、アルキル硫酸塩、アルキルエステル硫酸塩、ジアルキルスルホコハク酸塩類、アルキルナフタレンスルホン酸塩類、アルキルリン酸塩、ポリオキシアルキレンアルキルエーテルリン酸塩、脂肪酸塩類等のアニオン性界面活性剤、ポリオキシエチレンアルキルエーテル類、ポリオキシアルキレンアルキルフェニルエーテル類、アセチレングリコール類、ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレンブロックコポリマー類等のノニオン性界面活性剤、グリセリンエステル、ソルビタンエステル、ポリオキシエチレン脂肪酸アミド、アミンオキシド等の界面活性剤、アルキルアミン塩類、第四級アンモニウム塩類等のカチオン性界面活性剤が挙げられる。
〔その他の各種添加剤〕
本発明のインクには、必要に応じて、その他の金属パターン形成用インクで従来公知の各種添加剤を含有することができる。例えば、蛍光増白剤、消泡剤、潤滑剤、防腐剤、増粘剤、帯電防止剤、マット剤、水溶性多価金属塩、酸塩基、緩衝液等pH調整剤、酸化防止剤、表面張力調整剤、非抵抗調整剤、防錆剤、無機顔料等を挙げることができる。
〔基板〕
本発明のインクを用いた金属パターン形成において、金属パターンを形成する基板としては、絶縁性を備えたものであれば特に制限はなく、例えば、ガラスやセラミックス等の剛性の強いものから、PET(ポリエチレンテレフタレート)やポリイミドなどの樹脂から構成されるフィルム状のものが挙げられる。
しかしながら、本発明の金属パターン形成方法においては、非インク吸収性の樹脂基板を用いることが好ましい。基板として非インク吸収性の樹脂基板、特に樹脂フィルムを用いることにより、優れた可堯性を得ることができ、広範囲な分野への適用が可能となり、加えて非インク吸収性基板とすることにより、金属パターン形成過程における基板の伸縮が抑制されることで、高精緻な金属パターンを形成することができる。
さらに非インク吸収性樹脂基板に印字する場合は、アルカリ性インクが樹脂を加水分解することによって、非インク吸収性樹脂基板表面を改質することによる触媒の浸透効果がある。そのため、あとから無電解めっき処理で形成させる金属パターンと樹脂基板との密着性も向上させている。
非インク吸収性樹脂としては、絶縁性を備えたものであれば特に制限はなく、例えば、ポリエステル系樹脂、ジアセテート系樹脂、トリアテセート系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリイミド系樹脂等の材料を有するフィルム等が挙げられ、その中でもPET(ポリエチレンテレフタレート)、ポリイミドなどの樹脂から構成されるフィルム状のものが好ましく、更に好ましくアルカリ加水分解等で改質可能な、ポリイミド樹脂である。アルカリで樹脂を加水分解等で表面改質できると、触媒とそのあとに形成される金属膜と樹脂基板との密着性が向上するためと考えている。
本発明で表面粗さとはJIS−B−0601(2001)により定義される表面粗さRa(算術平均粗さ)をいう。測定装置としては、例えば、触針法やレーザ干渉測長法といった周知の表面粗さ測定法で測定することができる。また、線幅が細い場合は、より広い面積の試料を別途作成して測定して代用することができる。また、本発明においては、表面粗さの測定は使用の直前で行う。通常、残存した中和塩はすぐに表面粗さが変化することはないが、中和塩によっては、湿度などで変化する場合もあるため、使用の一時間前までに測定する。
本発明において用いられる基板において、密着性改良の観点から、表面改質処理を施しても良い。同様にして、基板上に下引き層を設けてもよい。下引き層の材料としては、シランカップリング剤などのカップリング剤などが挙げられる。
《金属パターンの形成工程》
本発明のインクを用いた金属パターン形成方法としては、パラジウム金属錯体を含有するインクを、インクジェットヘッドより基板上に吐出してパターン部を印字するパターン印字工程と、前記した前処理工程と、パターン部に無電解めっき処理を施して金属パターンを形成する無電解めっき処理工程とを有し、更には、上記パターン印字工程と、無電解めっき処理工程との間に、触媒活性化工程を設けることが好ましい。
〔パターン印字工程〕
本発明に係る金属パターン形成方法においては、パラジウム金属塩及び錯化剤を含有した本発明のインクは、インクジェットヘッドから基板へ吐出させ、パターン形成させる。吐出させるインク液滴の大きさとしては、特に制限はないが、回路配線等の場合は微細線の形成が必要となるので50pl以下が好ましく、更に好ましくは20pl以下のインク液滴量である。
インクジェットヘッドとしては、特に制限はなく、ピエゾ型、サーマル型いずれのヘッドを用いることが可能である。
パターン印字した後、乾燥させる方法としては、加熱、送風など時間短縮の観点で好ましい。
〔触媒活性化工程〕
本発明に係る金属パターン形成方法においては、上記触媒のパラジウム金属塩と錯化剤を含有するインクを基板上に印字する工程と、後述する無電解めっき処理を行う工程の間に、触媒活性化工程を有することが好ましい。
すなわち、無電解めっき処理を行う工程の前に、触媒活性化処理を施すことにより、上記触媒を溶解状態で含有するインクを、基板に印字したあと、2価のパラジウムを0価金属のパラジウムにすることで、無電解めっき反応がより活性化される。本発明では、触媒パラジウム金属を0価にする工程を触媒活性化工程という。触媒活性化工程は、触媒の種類によって適正な方法を選択する必要があり、酸の付与、加熱、還元剤の付与等が挙げられる。パラジウムイオンに好ましい還元剤としては、ホウ素系化合物が好ましく、具体的には、水素化ホウ素ナトリウム、トリメチルアミンボラン、ジメチルアミンボラン(DMAB)などが好ましい。還元方法としては、還元剤の溶液に印字済み基板を浸漬させ、活性化処理を行うことができる。なお、還元剤の溶液が、上記中和塩に対して溶解性があれば、触媒活性化工程は前処理工程と兼用してもかまわない。
〔無電解めっき処理工程〕
本発明に係る無電解めっき処理について説明する。
非インク吸収性樹脂基板に触媒及び錯化剤を含有したインクをインクジェット法にてパターンを印字したあと、無電解めっき処理を行い、印字パターン部に金属を形成させた金属パターンを得る。通常は、上記パターン印字した非インク吸収性樹脂基板を、無電解めっき液(浴)に浸漬する工程が一般的な方法である。
無電解めっき液としては、1)金属イオン、2)無電解めっき液用錯化剤、3)還元剤が主に含有される。無電解めっきで形成される金属としては、例えば、金、銀、銅、パラジウム、ニッケルおよび、それらの合金などが挙げられるが、密着性と導電性の観点から銅とニッケルおよびそれらの合金(リン、ホウ素、タングステン等)が好ましい。無電解めっき浴に使用される金属イオンとしても、上記金属に対応した金属イオンを含有させる。無電解めっき液用錯化剤および還元剤も金属イオンに適したものが選択される。錯化剤としては、例えば、エチレンジアミンテトラ酢酸(以下、EDTAと略記する)、ロシェル塩、D−マンニトール、D−ソルビトール、ズルシトール、イミノ二酢酸、trans−1,2−シクロヘキサンジアミン四酢酸、などが挙げられ、EDTAが好ましい。還元剤としては、ホルムアルデヒド、テトラヒドロホウ酸カリウム、ジメチルアミンボラン、グリオキシル酸、次亜リン酸ナトリウムなどが挙げられ、ホルムアルデヒドが好ましい。
上記無電解めっき工程は、めっき浴の温度、pH、浸漬時間、金属イオン濃度を制御することで、金属形成の速度や膜厚を制御することができる。
[電気めっき処理工程]
本発明においては、無電解めっき処理をおこなった後、さらに電気めっき処理工程をおこなってもよい。
工程では、前記無電解メッキ処理の後、この工程により形成された導電膜を電極とし、さらに電気メッキ処理を行うことができる。これにより基板との密着性に優れた導電膜をベースとして、そこに新たに任意の厚みをもつ導電膜を容易に形成することができる。この工程を付加することにより、金属膜を目的に応じた厚みに形成することができ、本発明の導電膜を、高い導電性が要求される種々の用途に適用するのに好適である。
電気メッキ処理の方法としては、従来公知の方法を用いることができる。なお、本工程の電気メッキ処理に用いられる金属としては、銅、クロム、鉛、ニッケル、金、銀、すず、亜鉛などが挙げられ、導電性の観点から、銅、金、銀が好ましく、銅がより好ましい。
電気メッキ処理により得られる導電膜の膜厚については、用途に応じて異なるものであり、メッキ浴中に含まれる金属濃度、浸漬時間、或いは、電流密度などを調整することでコントロールすることができる。なお、一般的な電気配線などに用いる場合の膜厚は、導電性の観点から、0.3μm以上であることが好ましく、3μm以上であることがより好ましい。
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、実施例において「部」あるいは「%」の表示を用いるが、特に断りがない限り「質量部」あるいは「質量%」を表す。
《インクの調製》
〔インクの調製:本発明〕
触媒として塩化パラジウムと濃塩酸の質量比が4/1である塩化パラジウム2.0質量%である水溶液を作製した。塩化パラジウムが溶解したことを確認後、この塩化パラジウム水溶液を使用して、塩化パラジウム0.2質量%、錯化剤として2−アミノピリジンを0.2質量%、水溶性有機溶媒として、エチレングリコールを30質量%、グリセリン10質量%、純水を残分としてインクを調製した。次いで、水酸化ナトリウムを用いてpHが9.5、12.0および13.5となるように、インクのpHを調整した。調製したインクの外観を目視観察した結果、塩化パラジウムが完全に溶解している状態にあることを確認した。これらのインクにおける塩化パラジウム(Pd)と錯化剤である2−アミノピリジン(Ch)とのモル比(Pd:Ch)は、1:1.9である。
《金属配線パターンの形成》
〔金属配線パターンの形成〕
(パターン印字工程)
搬送系オプションXY100(コニカミノルタIJ(株)製)に装着したインクジェットヘッド評価装置EB100(コニカミノルタIJ(株)製)に、インクジェットヘッドKM256Aq水系ヘッド(コニカミノルタIJ(株)製)を取り付け、上記調製したインクが吐出できるようにした。ステージに、非インク吸収性樹脂基板として厚さ75μmのポリイミドシート(基板)を取り付け、表1に記載した試料番号とインクpHが対応するように上記3種のインクを吐出して、配線幅100μm、配線間距離100μm、配線長30mmで100本の細線パターンと10mm×100mmの長方形パターンの2種のパターンを各々形成した。
(前処理工程)
上記方法でパターン形成した後の各基板を80℃で5分乾燥したのち、ホウ素系の還元剤を含有した下記活性化液に、浸漬した。下記の還元剤溶液は、インク中の中和塩(塩化ナトリウム)に対する溶解性をもち、前処理の水溶液としても有用であるため、前処理工程では、活性化工程も兼用させた。このときの温度は室温あるいは、加温した条件でおこなった。また、この前処理工程は、1000mlビーカーにマグネチックスターラーを用いて、常に溶液が飛散しない程度の撹拌をおこなった。インクpH、前処工程の時間、の組み合わせは表1に記載のごとく変化し、表面粗さを変化させた。(温度が記載のないものは全て室温にておこなった)
〈活性化液〉1000mlに仕上げた。
アルカップMRD2−A(上村工業社製) 18ml
アルカップMRD2−C(上村工業社製) 60ml
純水 残量
この工程が終了した後、乾燥後の長方形パターン部の表面粗さRaの測定を無電解めっき処理工程直前に、以下のようにしておこなった。
測定装置は、WYKO社製RSTPLUS非接触3次元微少表面形状測定システムを用いた。VSIモードにして対物レンズ10倍、中間レンズ0.5倍を用いた。測定条件は、Scan depthを40μm、Mod threshを2.0%、Scan backを15.0μm、Resolutionを368×238 full view、Scan speedをHIGHで測定した。解析では、FilteringをMedian Smoothingで行い、印字パターン部(長方形パターン)の表面粗さ(Ra)を測定した。
(無電解めっき処理工程)
長方形パターンと、細線パターンの各々について、表1に示した試料番号と無電解めっきの種類が対応するように、下記の無電解浴を用いてニッケル/リン(Ni/P)と銅(Cu)の無電解めっき処理を、各試料に対して行った。
(無電解ニッケル/リンめっき)
下記の組成の無電解ニッケル浴を作製し(1000ml仕上がり)、60℃温度において、約0.2μmの膜厚のNi/Pめっきを形成した。
リンデン204(P含量8%:ワールドメタル社製) 200ml
純水 800ml
(pHを約7.2に調整)
(無電解銅めっき処理)
下記の無電解銅めっき溶液を調製した(1000ml仕上がり)
無電解銅めっき溶液は、銅濃度として2.5質量%、ホルマリン濃度が1質量%、エチレンジアミンテトラ酢酸(EDTA)濃度が2.5質量%である。また、水酸化ナトリウムで無電解銅めっき溶液のpHは、13.0に調整し、50℃温度において、約0.2μmの膜厚の銅めっきを形成した。
〈無電解銅めっき溶液〉
メルプレートCU−5100A(メルテックス社製) 60ml
メルプレートCU−5100B(メルテックス社製) 55ml
メルプレートCU−5100C(メルテックス社製) 20ml
メルプレートCU−5100M(メルテックス社製) 40ml
純水 残量
(電気めっき処理工程)
無電解めっきを行った、10mm×100mmの長方形パターンと細線パターンについて、更に電気めっきを行った。
電気めっき浴の組成は以下の通りで、1000mlに仕上げた。
硫酸銅五水塩 60g
硫酸 190g
塩素イオン 50mg
純水 残量
陽極として、銅板を電気めっき浴に浸漬し、電流密度1.5A/dmで電気めっきを行った。10mm×100mmの長方形パターン上に銅膜約10μmの金属メッキを形成させた。
《金属配線パターンの評価》
上記形成した2種の金属パターンについて、下記の各評価を行った。
〔密着性の評価〕
上記形成した、10mm×100mmの長方形パターンに対して、JIS C6481に記載に従って、90度ピール強度試験による密着性の評価を行った。
〔細線描画性の評価〕
上記形成した100本の細線パターンを光学顕微鏡にて観察し、下記の基準に従って細線描画性を評価した。
◎:細線の欠け(断線)や細線同士の接触が全くなく、かつ線形状の乱れ(細りや太り)も5%未満である
○:細線の欠け(断線)、細線同士の接触がなく、かつ線形状の乱れ(細りや太り)も5%以上、10%未満である
△:細線の欠け(断線)、細線同士の接触がなく、かつ線形状の乱れ(細りや太り)が10%以上、30%未満である
×:細線の欠け(断線)や細線同士の接触が認められ、かつ線形状の乱れ(細りや太り)が30%以上である
以上により、得られた各評価結果を、表1に示す。
Figure 2011198890
表1より本発明試料は密着性、細線描画性が共に優れていることがわかる。

Claims (10)

  1. 基板の上に、触媒を含有するインクをインクジェット方式でパターン部を印字、乾燥し、該パターン部の上に無電解めっき処理によって金属パターンを形成する方法において、該触媒が可溶性パラジウム金属錯体でかつ該触媒を含有するインクpHが10.0〜14.0であり、前記無電解めっき処理前の印字パターン部の表面粗さRaが30nm以上45nm以下であることを特徴とする金属パターン形成方法。
  2. 前記触媒を含有するインクに、さらに酸とアルカリの中和塩を含有していることを特徴とする請求項1に記載の金属パターン形成方法。
  3. 前記無電解めっき処理前の印字パターン部の表面粗さにするために、前記無電解めっき処理の前にパターン部に存在する前記中和塩を除去することを特徴とする請求項2に記載の金属パターン形成方法。
  4. 前記中和塩を溶解させて除去することを特徴とする請求項2または3のいずれか一項に記載の金属パターン形成方法。
  5. 前記可溶性パラジウム金属錯体が、パラジウム金属塩と錯化剤で形成されていることを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載の金属パターン形成方法。
  6. 前記基板が非インク吸収性樹脂であることを特徴とする請求項1から5のいずれか一項に記載の金属パターン形成方法。
  7. 前記非インク吸収性樹脂がポリイミド樹脂であることを特徴とする請求項1から6のいずれか一項に記載の金属パターン形成方法。
  8. 前記無電解めっき処理の後に、さらに電気めっき処理をすることを特徴とする請求項1から7のいずれか一項に記載の金属パターン形成方法。
  9. 前記無電解めっき処理に用いるめっきが銅とニッケルおよびそれらの合金であることを特徴とする請求項1から8のいずれか一項に記載の金属パターン形成方法。
  10. 請求項1から9のいずれか1項に記載の金属パターン形成方法により形成されたことを特徴とする金属パターン。
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