JP5375725B2 - 金属パターン製造方法及び金属パターン - Google Patents

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Description

本発明は、インクジェット法による回路形成に用いる金属パターン製造方法及び金属パターンに関するものである。
回路に用いる金属パターンの形成は、従来、レジスト材料を用いた方法により行われてきた。すなわち、金属薄層上にレジスト材料を塗布し、必要なパターンを光露光した後、現像により不要なレジストを除去し、むき出しとなった金属薄をエッチングにより除去し、さらに残存するレジスト部分を剥離することで金属パターンを記録した金属薄を形成していた。
しかしながら、この方法では工程が多岐にわたること、また不要なレジスト、金属薄を除去することなど、原材料使用効率の点から無駄が多く、改善が要求されていた。
これに対し、平均粒径が100nm以下の金属ナノ粒子を含有するインクを用い、スクリーン印刷やインクジェット印刷などで金属パターンを直接描画する金属パターン形成方法に注目が集まっている(例えば、特許文献1参照)。
この金属パターン形成方法は、金属ナノ粒子の粒径を極小にすることで融点が低下することを活用し、200〜300℃程度の温度で焼成することにより、回路を形成する方法である。この方法では、確かに工数の低減、原材料使用効率向上などの利点はあるものの、焼成後の金属パターンにおいて電気抵抗を下げるための後処理における温度や条件に厳しい制約がある、という問題があった。
金属ナノ粒子を用いず、金属塩を使用してインク中で金属イオンの形態にし、加熱下で還元性を有する還元剤を含有する溶液から金属パターンを形成する方法がある。しかしながら、金属塩に配位して安定化させる錯化剤が十分な性能を有していないため、金属塩の還元反応が進行しやすくなり、液保存性に乏しいものになっていた。
一方、金属を穏和な条件で生成析出させる手段として、無電解めっき技術を活用して金属パターンを形成する方法も提案されている。例えば、無電解めっきが形成可能となる触媒を含有したインクで回路パターンを形成させた後、無電解めっき処理で金属を形成させる方法が開示されている(例えば、特許文献2、非特許文献1参照)。
上記いずれの場合においても、触媒(前駆体)をインクに含有させて、そのインクを基板に吐出させてパターン形成を行う。その後に活性化処理、無電解めっきをおこない、触媒パターン上に金属パターンを形成させている。
しかしながら、触媒前駆体は活性化処理液に対して、ある程度の溶解度を有するので、基板上に形成したパターン部から、触媒前駆体の溶解、拡散が発生する。この現象により、無電解めっき処理にて、金属パターンを形成すると、金属パターンが所望の線幅より線太りする(めっき太り現象)ことが、精度のよい金属パターンを形成する上での課題であった。
特開2002−299833号公報 特開平7−131135号公報
第21回エレクトロニクス実装学会講演大会講演文集p.105(2007年)
本発明は、上記課題に鑑みなされたものであり、その目的は、めっき太りを抑制し、めっき性が低下しない金属パターン製造方法及び金属パターンを提供することにある。
本発明の上記目的は、以下の構成により達成される。
1.基板上に、無電解めっきの触媒前駆体を含有するインクを用いてパターン部を形成し、活性化処理にて該パターン部の該触媒前駆体を無電解めっきの触媒に変換して、無電解めっき処理によって金属パターンを形成する製造方法において、洗浄液に対する該触媒前駆体の溶解度が0.5g/L以下である洗浄液で洗浄し、前記活性化処理を行うことを特徴とする金属パターン製造方法。
2.前記洗浄液が陽金属イオンを含有し、該陽金属イオンの濃度が2.5mol/L以上であることを特徴とする前記1に記載の金属パターン製造方法。
3.前記陽金属イオンが、Li、Na、K、Mg2+、Ca2+及びBa2+から選ばれる少なくとも1つであることを特徴とする前記2に記載の金属パターン製造方法。
4.前記触媒前駆体が、パラジウム金属錯体であることを特徴とする前記1から3のいずれか1項に記載の金属パターン製造方法。
5.温度が10℃以上、50℃以下の前記洗浄液で洗浄することを特徴とする前記1から4のいずれか1項に記載の金属パターン製造方法。
6.前記1から5のいずれか1項に記載の金属パターン製造方法を用いて形成されたことを特徴とする金属パターン。
本発明により、めっき太りを抑制し、めっき性が低下しない金属パターン製造方法及び金属パターンを提供することができた。
以下、本発明を実施するための形態について詳細に説明する。
触媒前駆体を含有したインクを基板上にインクジェット方式により吐出し、パターン部を形成した後に、活性化処理、無電解めっきにて金属パターン形成させた際、金属パターンが所望の線幅より線太りする現象の原因については、以下のように推定している。すなわち、インクジェット方式によりパターン部形成後、基板を活性化処理工程の浴に浸漬している間に、基板上の触媒前駆体が、浴中に微量溶解、拡散すると推測される。そのため、浴中に拡散した触媒前駆体が、基板上に再付着することで、めっき太りが起こると推察された。特に触媒前駆体のパラジウム金属錯体はインク溶解性を上げるためのアルカリ化合物が共存するため、触媒前駆体の水性媒体への溶解、拡散が進行し易くなる。また、インクジェット方式によるパターン部形成では、基板上のインク付与量が少ないため、溶解、拡散がさらに大きくなる傾向があるため、めっき太りが起き易いと推測される。
そこで本発明では、活性化処理工程の前に、触媒前駆体は溶解させず、かつ共存するアルカリ化合物は除去可能な洗浄工程を入れることで、めっき太りを改善できることが判明した。通常、めっき太りの改善としては、めっき形成能を低下する方法もあるが、この方法では、太りの改善と同時に細線等のめっき性が小さい部分への正常なめっきも阻害されることが多い。本発明の方法であれば、めっき性を低下することなく、めっき太りを改善できることが分かった。
具体的には、洗浄液に対する触媒前駆体の溶解度が低い洗浄液で洗浄したあとに、活性化処理工程にて活性化処理してから、無電解めっきを行う。通常の洗浄工程での洗浄液としては、付着物や不純物の除去と次工程の浴に悪影響を与えないという観点から、何も含有しない水(純水)を用いるケースが多い。しかしながら、水を用いて洗浄した場合、触媒前駆体の溶解等を抑えることができず、めっき太りが改善されない。
そこで、鋭意検討の結果、洗浄液に対する触媒前駆体の溶解度が0.5g/L以下である洗浄液を用いれば、触媒前駆体の溶解、拡散が押さえられるため、めっき太りを改善することができることを見出した。
ここで、洗浄液に対する触媒前駆体の溶解度が0.5g/L以下である洗浄液は、温度、pH、溶媒の種類などを変えることや、添加物などを加えることにより調整することができる。本発明では、洗浄液に一定量以上の陽金属イオンを存在させることにより、溶解度の低い洗浄液を調製することが好ましい。
また、特に触媒前駆体がパラジウム金属錯体である場合に、めっき太りの改善の効果が表れた。これは、パラジウム金属錯体では、洗浄液に多量の陽金属イオンが存在すると、系内への溶解、拡散が低下するためであると推察される。それに加え、本発明に係る洗浄液によりアルカリ化合物の除去も可能なので、めっき太り対しては好ましいと考えられる。
以下、本発明の具体的な構成について説明していく。
《金属パターン形成用インク》
〔触媒前駆体〕
本発明において、パターン形成に用いる金属パターン形成用インク(以下、単にインクともいう)は、触媒前駆体を含有する。
本発明における触媒前駆体とは、活性化処理工程により、無電解めっきの触媒に変性する前の化合物を意味する。具体的には、金属塩化合物であり、好ましくは、パラジウム金属塩が好ましく、さらに好ましくはパラジウム金属錯体である。本発明においては、パラジウム金属錯体は、パラジウム金属塩と錯化剤によって錯体形成していることが好ましい。
本発明に適用可能な触媒前駆体としては、例えば、フッ化パラジウム、塩化パラジウム、臭化パラジウム、ヨウ化パラジウム、硝酸パラジウム、硫酸パラジウム、酢酸パラジウム、アセト酢酸パラジウム、トリフルオロ酢酸パラジウム、水酸化パラジウム、酸化パラジウム、硫化パラジウム等が挙げられ、中でも塩化パラジウムが好ましい。
インク中における触媒前駆体の含有量としては、0.01質量%以上、1.0質量%以下が好ましい。触媒前駆体の濃度が0.01質量%以上であれば、無電解めっき処理工程において、無電解めっき反応の必要な活性度を得ることができ、1.0質量%以下であれば、インク中のパラジウム金属塩の安定性を維持することができる点で好ましい。触媒前駆体としてパラジウム金属塩を用いる場合、水に不溶なため、酸に溶解させて使用することが好ましい。この場合に用いられる酸としては、無機酸が好ましく、塩酸、硫酸、硝酸などが挙げられ、可溶性の点で塩酸が好ましい。無機酸の使用量としては、パラジウム金属塩の5質量%〜30質量%が好ましい。
〔錯化剤〕
本発明に係るインクに適用可能な錯化剤としては、上記触媒前駆体と錯体形成可能な化合物が挙げられる。化合物としては、カルボシキ基をもつ有機酸があり、たとえば、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、アジピン酸、マレイン酸、酒石酸、クエン酸などが挙げられる。そしてアミン系化合物または含窒素複素環式化合物であることが好ましい。アミン系化合物とはアンモニアの水素原子の1個またはそれ以上が炭化水素残基Rで置換された化合物であり、Pdイオンに対する錯形成剤である。本発明においてはアンモニアも含むものとする。アミンはN原子上に非共有電子対を保持しており、パラジウムイオンと錯形成しやすい。アミンとしては、アンモニア、メチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、エチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、プロピルアミン、ジプロピルアミン、トリプロピルアミン、ブチルアミン、ジブチルアミン、トリブチルアミン、ピリジン、2−アミノピリジン、3−アミノピリジン、4−アミノピリジン、エチレンジアミン、エタノールアミン、トリエタノールアミン、エチレンジアミンテトラ酢酸等の直鎖アミン化合物、環状アミン化合物が挙げられる。含窒素複素環式化合物としては、例えば、ピリジン、ビピリジン、フェナントロリンなどが挙げられる。
本発明に係るインクにおいて、触媒前駆体と錯化剤のモル比は、1:0.5以上、1:10以下の範囲とすることが好ましい。触媒前駆体と錯化剤のモル比を1:0.5以上にすることにより、触媒前駆体と錯化剤とで形成される錯体の比率が高まり、インク中での溶解性や還元反応性が良好となる。また、モル比を1:10以下にすることにより、過剰な錯化剤による反応阻害を抑止するうえで好ましい。
また、インク中における触媒前駆体と錯化剤で形成された錯体の溶解性と保存性を高める目的で、インクのpHを8.0以上の範囲に調整することが好ましく、さらに好ましくはpH10.0〜14.0である。パラジウム金属塩と錯化剤により形成される錯体は、インクのpHがアルカリ性であるほど形成が容易に進むため、pH8.0以上が好ましい。また、非インク吸収性の樹脂基板との組合せにおいては、インクが高pHほど、密着性が良好となって好ましい。
インク中のpHをアルカリ性に調整するために、アルカリ剤を添加する。アルカリ剤としては特に限定はないが、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムが好ましい。添加量としては、上記pH値に調整するに必要な量を添加する。よって、上記添加した酸とアルカリで形成される中和塩がインク中に含有することなる。この中和塩がインクで溶解していることが好ましい。
pH測定方法としては、例えば、東亜電波工業株式会社のデジタルpHメーターHM−30S等を用い、25℃におけるpH値を測定する。
〔インク溶媒〕
本発明に係るインクに適用可能な溶媒としては、上記パラジウム金属塩と錯化剤の溶解性の観点から水性液媒体が好ましく用いられ、水性液媒体としては、水及び水溶性有機溶剤等の混合溶媒が更に好ましく用いられる。これらの溶媒の組成については、上記のパラジウム金属塩と錯化剤で形成された錯体の溶解状態に留意して選択することが好ましい。
好ましく用いられる水溶性有機溶剤としては、例えば、アルコール類(例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、イソブタノール、セカンダリーブタノール、ターシャリーブタノール等)、多価アルコール類(例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、ブチレングリコール、ヘキサンジオール、ペンタンジオール、グリセリン、ヘキサントリオール、チオジグリコール等)、多価アルコールエーテル類(例えば、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノフェニルエーテル、プロピレングリコールモノフェニルエーテル等)、アミン類(例えば、エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、N−メチルジエタノールアミン、N−エチルジエタノールアミン、モルホリン、N−エチルモルホリン、エチレンジアミン、ジエチレンジアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ポリエチレンイミン、ペンタメチルジエチレントリアミン、テトラメチルプロピレンジアミン等)、アミド類(例えば、ホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド等)、複素環類(例えば、2−ピロリドン、N−メチル−2−ピロリドン、シクロヘキシルピロリドン、2−オキサゾリドン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン等)、スルホキシド類(例えば、ジメチルスルホキシド等)等が挙げられる。
溶媒が水だけの単なる触媒素溶液では、インクジェットのインクとしては不適切である。それは上記有機溶媒が存在することで、インクがインクジェットヘッドから安定して吐出するために適度な粘性(粘度)を与え、粘度1.5〜30mPa/sの範囲に調整可能となる。またインクの水分が揮発することによるヘッドノズル内での固化や出射不良を回避するために保湿性を付与すること、さらに有機溶媒によりインクの表面張力を、インクジェット方式に適した25〜50mN/mに調整することも重要である。そのため、上記有機溶媒をインク中に5〜90質量%含有させることが好ましく、さらに好ましくは、30〜80質量%である。また有機溶媒の沸点としては、80℃以上、250℃以下が、保湿性と乾燥性の点で好ましい。
〔界面活性剤〕
本発明に係るインクに適用可能な界面活性剤としては、例えば、アルキル硫酸塩、アルキルエステル硫酸塩、ジアルキルスルホコハク酸塩類、アルキルナフタレンスルホン酸塩類、アルキルリン酸塩、ポリオキシアルキレンアルキルエーテルリン酸塩、脂肪酸塩類等のアニオン性界面活性剤、ポリオキシエチレンアルキルエーテル類、ポリオキシアルキレンアルキルフェニルエーテル類、アセチレングリコール類、ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレンブロックコポリマー類等のノニオン性界面活性剤、グリセリンエステル、ソルビタンエステル、ポリオキシエチレン脂肪酸アミド、アミンオキシド等の界面活性剤、アルキルアミン塩類、第四級アンモニウム塩類等のカチオン性界面活性剤が挙げられる。
〔その他の各種添加剤〕
本発明に係るインクには、必要に応じて、その他の金属パターン形成用インクで従来公知の各種添加剤を含有することができる。例えば、蛍光増白剤、消泡剤、潤滑剤、防腐剤、増粘剤、帯電防止剤、マット剤、水溶性多価金属塩、酸塩基、緩衝液等pH調整剤、酸化防止剤、表面張力調整剤、非抵抗調整剤、防錆剤、無機顔料等を挙げることができる。
《基板》
本発明に係るインクを用いた金属パターン形成において、金属パターンを形成する基板としては、絶縁性を備えたものであれば特に制限はなく、例えば、ガラスやセラミックス等の剛性の強いものから、PET(ポリエチレンテレフタレート)やポリイミドなどの樹脂から構成されるフィルム状のものが挙げられる。
その中でも特に、本発明の金属パターン形成方法においては、非インク吸収性の樹脂基板を用いることが好ましい。ここで非インク吸収性とは、インクと接触させた際に溶解、膨潤することが実質的に若しくは全くないことをいう。基材として非インク吸収性の樹脂基板、特に樹脂フィルムを用いることにより、優れた可撓性を得ることができ、広範囲な分野への適用が可能となる。また、非インク吸収性基板とすることにより、金属パターン形成過程における基板の伸縮が抑制されることで、高精緻な金属パターンを形成することができる。
非インク吸収性樹脂としては、絶縁性を備えたものであれば特に制限はなく、例えば、ポリエステル系樹脂、ジアセテート系樹脂、トリアテセート系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリイミド系樹脂等の材料を有するフィルム等が挙げられ、その中でもPET(ポリエチレンテレフタレート)、ポリイミドなどの樹脂から構成されるフィルム状のものが好ましく、更に好ましくはポリイミドフィルムである。
本発明で用いられる基板において、密着性改良の観点から、表面改質処理を施しても良い。同様にして、基板上に下引き層を設けてもよい。下引き層の材料としては、シランカップリング剤などのカップリング剤などが挙げられる。
《金属パターンの形成工程》
本発明におけるインクを用いた金属パターン形成方法としては、以下のように行う。
1)触媒前駆体を含有するインクを用いて、パターン部を形成するパターン部形成工程、
2)パターン部を洗浄するために、本発明に係る洗浄液を用いた洗浄工程、
3)触媒前駆体を触媒に変換する活性化処理工程、
4)無電解めっき液にて、金属生成させる無電解めっき処理工程。
この後に電気めっき処理工程にて、さらに任意の厚みを持った金属パターンを形成させてもよい。
ここで、本発明でいうパターン部とは、基板上に吐出されたインクが存在する部分をいう。
〔パターン部形成工程〕
本発明において、パターン部の形成方法としては、インクジェットヘッドからインクを基板上に吐出し、パターン部を形成するインクジェット方式が好ましい。吐出させるインク液滴の大きさとしては、特に制限はないが、回路配線等の場合は微細線の形成が必要となるので50pl以下であることが好ましく、更に好ましくは20pl以下のインク液滴量である。インクジェットヘッドとしては、特に制限はなく、ピエゾ型、サーマル型いずれのヘッドを用いることが可能である。
パターン部を形成した後、パターン部を乾燥させる方法としては、加熱、送風などの乾燥手段を用いることが時間短縮の観点から好ましい。
(洗浄工程)
本発明の金属パターン製造方法では、パターン部を洗浄液に浸漬させて、洗浄を行うことを特徴とする。
また、本発明に係る洗浄液では、洗浄液に対する触媒前駆体の溶解度を0.5g/L以下にすることを特徴とする。パターン部洗浄時における触媒前駆体の溶解度を0.5g/L以下にすることによって、触媒前駆体が洗浄液に溶解しにくくなり、めっき太りを抑えるのに効果的である。ここでの溶解度は、洗浄工程の温度と同じ温度の溶解度を意味する。
本発明で規定する溶解度の測定法としては、インクから加熱等で溶媒を除去して取り出した触媒前駆体を洗浄液に入れ、攪拌、溶解させた後、未溶解の触媒前駆体を取り除いたあとの洗浄液に含有する、触媒前駆体の量を定量することにより求めた。触媒前駆体に対する溶解度は、0.3g/L以下がより好ましく、0.1g/L以下であるのがさらに好ましい。
また、触媒前駆体の溶解度は洗浄液の温度により変動するが、洗浄液の温度としては10〜50℃が好ましい。洗浄液の温度を本発明で規定する条件範囲にすると、触媒前駆体の溶解度を0.5g/L以下に調整し易く、またその他の夾雑物の除去能も向上する。
〈洗浄液〉
本発明に係る洗浄液は、水系でも非水系でも構わないが、好ましくは水系溶媒で構成された溶液である。これは、本発明に係るインクには、多量の無機塩やアルカリ化合物が含有される場合があり、これらを除去する効率が高いためである。
本発明に係る洗浄液を本発明で規定する溶解度の範囲に調整する方法としては、水に陽金属イオンを含有させることが好ましい。この陽金属イオンが洗浄液に多量に存在するほど、触媒前駆体が洗浄液に溶解しにくくなり、触媒前駆体の拡散が押さえられると推察される。
この時、陽金属イオンの濃度としては、2.5mol/L以上にすることが好ましく、さらに好ましくは5.0mol/L以上である。陽金属イオンの濃度を2.5mol/L以上にすることによって、触媒前駆体が洗浄液に溶解しにくくなり、めっき太りを抑えるのに効果的であるからである。
また、本発明に適用可能な陽金属イオンとしては、例えば、Li、Na、K、Mg2+、Ca2+、Ba2+が好ましい。更に好ましくは、NaとKである。これらの陽金属イオンは、共存させても良い。また、水への溶解性などの観点から、カウンターの陰イオンとしては、ハロゲンイオンが好ましい。実際に使用する場合の具体的な化合物としては、塩化リチウム、臭化リチウム、ヨウ化リチウム、塩化ナトリウム、臭化ナトリウム、ヨウ化ナトリウム、チオ硫酸ナトリウム、亜硝酸ナトリウム、水酸化ナトリウム、塩化カリウム、臭化カリウム、ヨウ化カリウム、炭酸カリウム、水酸化カリウム、塩化マグネシウム、塩化カルシウム、塩化バリウム、酢酸バリウムなどが挙げられる。このうち、陽金属イオンの溶解や触媒前駆体に悪影響を与えないという観点から、塩化ナトリウム、塩化カリウムが好ましい。
〔活性化処理工程〕
本発明に係る活性化処理とは、触媒前駆体を無電解めっきが可能な触媒に変換する処理を意味する。
本発明では、無電解めっき処理工程の前に、活性化処理を施すことにより、無電解めっき反応がより活性化される。つまり、上記触媒を溶解状態で含有するインクを基板に吐出し、パターン部を形成したあと、パラジウムイオン(Pd2+)を0価金属(Pd)にすることで、無電解めっき反応を活性化することができる。
活性化処理は、触媒の種類によって適正な方法を選択する必要があり、酸の付与、加熱、還元剤の付与等が挙げられる。パラジウムイオンに好ましい還元剤としては、ホウ素系化合物が好ましく、具体的には、水素化ホウ素ナトリウム、トリメチルアミンボラン、ジメチルアミンボラン(DMAB)などが好ましい。還元方法としては、還元剤の溶液にパターン部が形成された基板を浸漬させ、活性化処理を行うことができる。
〔無電解めっき処理工程〕
本発明に係る無電解めっき処理について説明する。
本発明においては、上記パターン部を形成した基板を、無電解めっき液(浴)に浸漬させることにより、無電解めっき処理を行うことを特徴とする。
無電解めっき液としては、1)金属イオン、2)無電解めっき液用錯化剤、3)還元剤が主に含有される。無電解めっきで形成される金属としては、例えば、金、銀、銅、パラジウム、ニッケルおよびそれらの合金などが挙げられるが、密着性と導電性の観点から銅とニッケルおよびそれらの合金が好ましい。無電解めっき浴に使用される金属イオンとしても、前記金属に対応した金属イオンを含有させる。無電解めっき液用錯化剤および還元剤も金属イオンに適したものが選択される。無電解めっき液用の錯化剤としては、例えば、エチレンジアミンテトラ酢酸(以下、EDTAと略記する)、ロシェル塩、D−マンニトール、D−ソルビトール、ズルシトール、イミノ二酢酸、trans−1,2−シクロヘキサンジアミン四酢酸、などが挙げられ、EDTAが好ましい。還元剤としては、ホルムアルデヒド、テトラヒドロホウ酸カリウム、ジメチルアミンボラン、グリオキシル酸、次亜リン酸ナトリウムなどが挙げられ、ホルムアルデヒドが好ましい。
前記無電解めっき処理工程は、めっき浴の温度、pH、浸漬時間、金属イオン濃度を制御することで、金属形成の速度や膜厚を制御することができる。
〔電気めっき処理工程〕
本発明の金属パターン製造方法においては、金属膜厚を厚くする目的などで、無電解めっき処理を施した後、さらに電気めっき処理工程を行っても良い。
電気めっき処理工程では、前記無電解めっき処理後、無電解めっき処理工程により形成された金属パターンを電極とし、更に電気めっき処理を行うことができる。これにより、基材との密着性に優れた金属パターンをベースとして、その金属パターン上に、新たに任意の厚みをもつ金属パターンを容易に積層することができる。電気めっき処理工程を付加することにより、金属膜を目的に応じた厚みに形成することができることにより、本発明の金属パターンを、高い導電性が要求される種々の用途に適用することが可能となった。
本発明に適用可能な電気めっき処理の方法としては、従来公知の方法を用いることができる。なお、電気めっき処理工程に用いられる金属としては、銅、クロム、鉛、ニッケル、金、銀、すず、亜鉛などが挙げられ、導電性の観点から、銅、金、銀が好ましく、銅がより好ましい。
電気めっき処理により得られる導電膜の膜厚については、用途に応じて異なるものであり、めっき浴中に含まれる金属濃度、浸漬時間、或いは、電流密度などを調整することでコントロールすることができる。なお、一般的な電気配線などに用いる場合の膜厚は、導電性の観点から、0.3μm以上であることが好ましく、3μm以上であることがより好ましい。
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、実施例において「部」あるいは「%」の表示を用いるが、特に断りがない限り「質量部」あるいは「質量%」を表す。
《金属パターンの作製》
[金属パターン1の作製]
〔触媒前駆体インクの調製〕
塩化パラジウムと濃塩酸の質量比が4:1である塩化パラジウムを2.0%含有する水溶液を調製した。この水溶液においては、塩化パラジウムが溶解することを確認した。この塩化パラジウム水溶液を使用して、塩化パラジウム水溶液を0.2%、錯化剤として2−アミノピリジンを0.2%、水溶性有機溶媒として、エチレングリコールを30%、グリセリンを10%、純水を残分として、触媒前駆体インクを調製した。次いで、水酸化ナトリウムを用いて、触媒前駆体インクのpHを14.0に調整した。調製した触媒前駆体インクの外観を目視観察した結果、塩化パラジウムが完全に溶解している状態にあることを確認した。触媒前駆体インクにおける塩化パラジウム(Pd)と2−アミノピリジン(Ch)とのモル比(Pd:Ch)は、1:1.9である。
〔金属パターンの形成〕
(パターン部形成工程)
搬送系オプションXY100(コニカミノルタIJ株式会社製)に装着したインクジェットヘッド評価装置EB100(コニカミノルタIJ株式会社製)に、インクジェットヘッドKM256Aq水系ヘッド(コニカミノルタIJ株式会社製)を取り付け、上記調製した触媒前駆体インクが吐出できるようにした。ステージに、非インク吸収性樹脂基板として厚さ75μmのポリイミドシートを取り付け、触媒前駆体インクを吐出して、配線幅100μm、配線間距離100μm、配線長30mmで10本の細線パターンと1画素(1ドットライン)〜3画素(3ドットライン)の幅の異なるパターン部を形成した。
(洗浄工程)
上記形成した触媒前駆体のパターン部を、25℃の下記洗浄液1に30分浸漬して、洗浄を行った。
〈洗浄液1の調製〉
陽金属イオン化合物として、塩化カリウムを純水に2.5mol/Lの濃度で溶解し、これを洗浄液1とした。調製した洗浄液1と、上記形成した触媒前駆体のパターン部を用いて、前述の方法に従って25℃における溶解度を測定した結果、0.4g/Lであった。
(活性化処理工程)
上記洗浄処理を施し、パターン部形成基板を80℃で5分乾燥した後、ホウ素系の還元剤を含有した下記活性化液に浸漬して活性化処理を施した。
〈活性化液の調製〉
下記の各化合物を純水に添加、溶解したのち、純水で1000mlに仕上げて活性化液を調製した。
アルカップMRD2−A(上村工業株式会社製) 18ml
アルカップMRD2−C(上村工業株式会社製) 60ml
純水 922ml
(無電解めっき処理工程)
50℃の下記無電解銅めっき溶液を用いて、上記活性化処理を施したパターン部形成基板に無電解めっき処理を施し、約0.2μmの膜厚の金属パターン1を形成した。
〈無電解銅めっき溶液の調製〉
メルプレートCU−5100A(メルテックス株式会社製) 60ml
メルプレートCU−5100B(メルテックス株式会社製) 55ml
メルプレートCU−5100C(メルテックス株式会社製) 20ml
メルプレートCU−5100M(メルテックス株式会社製) 40ml
純水 825ml
上記調製した無電解銅めっき溶液は、銅濃度として2.5%、ホルマリン濃度が1.0%、エチレンジアミンテトラ酢酸(EDTA)濃度が2.5%である。また、水酸化ナトリウムを用いて、pHは13.0に調整した。
[金属パターン2〜12の作製]
上記金属パターン1の作製において、洗浄工程で用いる洗浄液として、洗浄液1に代えて、表1に記載の構成(陽金属イオンの化合物種と添加量、洗浄液の温度)及び触媒前駆体に対する溶解度の洗浄液2〜12を用いた以外は同様にして、金属パターン2〜12を形成した。
《金属パターンの評価》
上記形成した各金属パターンについて、下記の各評価を行った。
〔パターン外析出の評価:めっき太り耐性の評価〕
上記作製した100μm幅のパターン部を光学顕微鏡で観察し、金属パターン10本の幅を測定し、その平均値を求め、下式に従ってパターン外の析出幅を求め、下記の基準に従って、めっき太り耐性を評価した。
パターン外の析出幅(μm)=10本の平均値(μm)−100μm
◎:パターン外の析出幅が、5.0μm未満である
○:パターン外の析出幅が、5.0μm以上、10.0μm未満である
△:パターン外の析出幅が、10.0μm以上、20.0μm未満である
×:パターン外の析出幅が、20.0μm以上である
〔めっき性の評価〕
上記作成した1画素(1ドットライン)〜3画素(3ドットライン)の幅の異なる微細線パターンを、光学顕微鏡により観察し、下記の基準に従って、めっき性を評価した。
◎:1画素〜3画素の全ての微細線パターンで、きれいにめっきがされている
○:2画素、3画素の微細線パターンではめっきがされているが、1画素の微細線パターンではめっきされなかった
△:3画素の微細線パターンではめっきがされているが、1画素と2画素の微細線パターンではめっきされなかった
×:全ての微細線パターンでめっきされなかった
以上により得られた結果を、表1に示す。
Figure 0005375725
表1に記載の結果より明らかなように、本発明で規定する洗浄液を用いて作成した金属パターンは、比較例に対し、めっき太りを抑制し、幅の異なる微細線パターンを形成してもめっき性に優れていることが分かる。

Claims (6)

  1. 基板上に、無電解めっきの触媒前駆体を含有するインクを用いてパターン部を形成し、活性化処理にて該パターン部の該触媒前駆体を無電解めっきの触媒に変換して、無電解めっき処理によって金属パターンを形成する製造方法において、洗浄液に対する該触媒前駆体の溶解度が0.5g/L以下である洗浄液で洗浄し、前記活性化処理を行うことを特徴とする金属パターン製造方法。
  2. 前記洗浄液が陽金属イオンを含有し、該陽金属イオンの濃度が2.5mol/L以上であることを特徴とする請求項1に記載の金属パターン製造方法。
  3. 前記陽金属イオンが、Li、Na、K、Mg2+、Ca2+及びBa2+から選ばれる少なくとも1つであることを特徴とする請求項2に記載の金属パターン製造方法。
  4. 前記触媒前駆体が、パラジウム金属錯体であることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の金属パターン製造方法。
  5. 温度が10℃以上、50℃以下の前記洗浄液で洗浄することを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の金属パターン製造方法。
  6. 請求項1から5のいずれか1項に記載の金属パターン製造方法を用いて形成されたことを特徴とする金属パターン。
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