JP2011187790A - 液体噴射ヘッド、液体噴射装置、および圧電素子 - Google Patents

液体噴射ヘッド、液体噴射装置、および圧電素子 Download PDF

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Abstract

【課題】ビスマス系の複合酸化物からなる圧電体を含み、耐電圧が良好なアクチュエーターおよび液体噴射ヘッドを提供する。
【解決手段】本発明にかかる液体噴射ヘッドは、薄膜法により形成された圧電体および前記圧電体に電圧を印加する電極を含む圧電アクチュエーターを備えた液体噴射ヘッドであって、前記圧電体は、チタン酸亜鉛酸ビスマスランタンおよびチタン酸鉛の固溶体を含み、前記圧電体における、前記チタン酸亜鉛酸ビスマスランタンの前記チタン酸鉛に対するモル比(チタン酸亜鉛酸ビスマスランタン/チタン酸鉛)は、0.39以上0.61以下である。
【選択図】図2

Description

本発明は、液体噴射ヘッド、液体噴射装置、および圧電素子に関する。
液体噴射ヘッドは、液体噴射装置の構成として、例えば、インクジェットプリンター等に用いられる。この場合、液体噴射ヘッドは、インクの小滴を吐出して飛翔させるために用いられ、これによりインクジェットプリンターは、当該インクを紙等の媒体に付着させて印刷を行うことができる。
液体噴射ヘッドは、一般に、ノズルから液体を吐出するために液体に圧力を加えるアクチュエーターを有している。このようなアクチュエーターは、例えば、圧電素子を備えたものがある。アクチュエーターが備える圧電素子としては、電気機械変換機能を呈する圧電材料、例えば、結晶化した圧電性セラミックス等からなる圧電体を、2つの電極で挟んで構成されたものがある。このような圧電素子は、2つの電極によって電圧が印加されることによって変形することができ、この変形を利用して、アクチュエーターを、例えば、撓み振動モードで動作させることができる。
このような用途に用いられる圧電材料としては、電気機械変換効率などの圧電特性が高いことが望ましく、該特性が他の材料に比較して優れていることから、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)系の材料の研究開発が行われてきた。しかし、近年、圧電材料の圧電特性をさらに向上する要求が強まるとともに、環境負荷のより小さい材料を用いることが求められるようになり、PZT系の材料では、これらの要求に応えることが困難となってきており、例えば、鉛含有量の少ないペロブスカイト型酸化物の圧電材料の開発が進められるようになった。
理論上圧電特性が高いと考えられているセラミックス材料の中には、例えば、Bi系酸化物があり、現状では、BiFeOが、バルク状態において常圧にて焼成することで、ペロブスカイト型の結晶構造を形成することが知られている。他のBi系酸化物の多くは、焼成時の雰囲気が常圧ではペロブスカイト型の結晶構造を形成せず、数GPaを超える高圧でペロブスカイト型の結晶構造を形成する。例えば、Bi(Zn0.5,Ti0.5)O(BZT)は、高圧(6ギガパスカル程度)で焼成しなければ、ペロブスカイト型の結晶構造を形成できないことが知られている。
特許文献1には、アルカリ金属および鉛を含まない複合酸化物が開示されている。同文献には、特定の組成を有する酸化物についてキューリー温度等が評価され、圧電特性に優れ、高いキューリー温度を有する圧電材料を提供できる等の記載がある。
特開2009−256186号公報
本発明のいくつかの態様にかかる目的の一つは、環境負荷が小さく、耐電圧が良好な圧電アクチュエーターおよびこれを備えた液体噴射ヘッドを提供することにある。また、本発明のいくつかの態様にかかる目的の一つは、環境負荷の小さい圧電体を含む圧電素子を提供することにある。
本発明は上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の態様または適用例として実現することができる。
[適用例1]
本発明にかかる液体噴射ヘッドの一態様は、
薄膜法により形成された圧電体および前記圧電体に電圧を印加する電極を含む圧電アクチュエーターを備えた液体噴射ヘッドであって、
前記圧電体は、チタン酸亜鉛酸ビスマスランタンおよびチタン酸鉛の固溶体を含み、
前記圧電体における、前記チタン酸亜鉛酸ビスマスランタンの前記チタン酸鉛に対するモル比(チタン酸亜鉛酸ビスマスランタン/チタン酸鉛)は、0.39以上0.61以下である。
本適用例の液体噴射ヘッドによれば、PZTに比較して、鉛含有量の小さいビスマス系の複合酸化物からなる圧電体を含み、耐電圧が良好である。これにより、環境負荷を低減することができるとともに、圧電アクチュエーターの変位を大きくすることができ、例えば、インクジェット印刷におけるインクの吐出性能を高めることができる。
[適用例2]
適用例1において、
前記チタン酸亜鉛酸ビスマスランタンのビスマスのランタンに対するモル比(ビスマス/ランタン)は、1.00以上2.33以下であることができる。
本適用例の液体噴射ヘッドによれば、圧電体の圧電特性がさらに高まっており、より良好なヒステリシス特性を有することができる。
[適用例3]
適用例1または適用例2において、
前記チタン酸鉛における、鉛のチタンに対するモル比(鉛/チタン)は、1.0より大きく1.1以下であることができる。
本適用例の液体噴射ヘッドによれば、圧電体の結晶構造がさらに良好となっており、より良好な電気機械変換をおこなうことができ、例えば、インクジェット印刷におけるインクの吐出性能を高めることができる。
[適用例4]
適用例1ないし適用例3のいずれか一例において、
前記電極は、対向する一対の導電層を含み、
前記圧電体は、前記一対の導電層の間に薄膜状に配置され、
前記圧電体の厚みは、100nm以上3μm以下であることができる。
本適用例の液体噴射ヘッドによれば、圧電体の結晶構造が、良好なペロブスカイト型構造をとっており、より良好な電気機械変換をおこなうことができ、例えば、インクジェット印刷におけるインクの吐出性能を高めることができる。
[適用例5]
適用例4において、
前記一対の導電層の間に電圧を印加したときに、
前記圧電体の絶縁破壊が生じる電界強度が、500kV/cm以上2000kV/cm以下であることができる。
本適用例の液体噴射ヘッドによれば、耐電圧の極めて高い圧電体を備えているため、例えば、圧電アクチュエーターの変位をより大きくすることができ、例えば、インクジェット印刷におけるインクの吐出性能を高めることができる。
[適用例6]
本発明にかかる液体噴射装置の一態様は、
適用例1ないし適用例5のいずれか一例に記載の液体噴射ヘッドを備える。
本適用例の液体噴射装置は、PZTに比較して、鉛含有量の小さいビスマス系の複合酸化物からなる圧電体を含み耐電圧が良好である。これにより、環境負荷を低減することができるとともに、例えば、インクジェット印刷におけるインクの吐出性能が高い。
[適用例7]
本発明にかかる圧電素子の一態様は、
対向して配置された一対の導電層と、
前記一対の導電層の間に配置された圧電体と、
を含み、
前記圧電体は、チタン酸亜鉛酸ビスマスランタンおよびチタン酸鉛の固溶体であり、
前記固溶体における、前記チタン酸亜鉛酸ビスマスランタンの前記チタン酸鉛に対するモル比(チタン酸亜鉛酸ビスマスランタン/チタン酸鉛)は、0.39以上0.61以下である。
本適用例の圧電素子によれば、ビスマス系の複合酸化物からなる圧電体を含み、耐電圧を良好とすることができる。
実施形態の圧電素子100、圧電アクチュエーター102の断面の模式図。 実施形態の液体噴射ヘッド600の断面の模式図。 実施形態の液体噴射ヘッド600を模式的に示す分解斜視図。 実施形態の液体噴射装置700を模式的に示す斜視図。 実施例2の圧電素子の分極および変位の印加電圧に対するプロット。 実施例3の圧電素子の分極および変位の印加電圧に対するプロット。 実施例2、実施例3および比較例の歪率−電界強度プロット。 実施例1の圧電素子のヒステリシス曲線。 実施例2の圧電素子のヒステリシス曲線。 実施例3の圧電素子のヒステリシス曲線。 実施例4の圧電素子のヒステリシス曲線。 参考例1の圧電素子のヒステリシス曲線。 実施例1ないし5および参考例1ないし3のXRDパターン。
以下に本発明の好適な実施形態について、図面を参照しながら説明する。なお以下の実施形態は、本発明の一例を説明するものである。そのため、本発明は以下の実施形態に限定されるものではなく、要旨を変更しない範囲で実施される各種の変形例も含む。なお、下記の実施形態で説明される構成の全てが本発明の必須構成要件であるとは限らない。
1.圧電素子および圧電アクチュエーター
図1は、本実施形態にかかる圧電素子100の断面の模式図である。
本実施形態にかかる圧電素子100は、第1導電層10と、第2導電層20と、圧電体30と、を含む。
1.1.第1導電層
第1導電層10は、例えば、基板1の上方に形成される。基板1は、例えば、導電体、半導体、絶縁体で形成された平板とすることができる。基板1は、単層であっても、複数の層が積層された構造であってもよい。また、基板1は、上面が平面的な形状であれば内部の構造は限定されず、例えば、内部に空間等が形成された構造であってもよい。また、例えば、後述する液体噴射ヘッドのように、基板1の下方に圧力室等が形成されているような場合においては、基板1より下方に形成される複数の構成をまとめて一つの基板1とみなしてもよい。
基板1は、可撓性を有し、圧電体30の動作によって変形(屈曲)することのできる振動板であってもよい。この場合、圧電素子100は、振動板と、第1導電層20と、圧電体30と、第2導電層20と、を含む圧電アクチュエーター102となる。ここで、基板1が可撓性を有するとは、基板1がたわむことができることを指す。基板1を振動板とした場合、基板1のたわみは、圧電アクチュエーター102を液体噴射ヘッドに使用する場合、吐出させる液体の体積と同程度に圧力室の容積を変化させうる程度であれば十分である。
基板1が振動板である場合は、基板1の材質としては、例えば、酸化ジルコニウム(ZrO)、窒化シリコン、酸化シリコンなどの無機酸化物、ステンレス鋼などの合金を例示することができる。これらのうち、基板1(振動板)の材質としては、化学的安定性および剛性の点で、酸化ジルコニウムが特に好適である。この場合においても基板1は、例示した物質の2種以上の積層構造であってもよい。
本実施形態では、以下、基板1が振動板であって、酸化ジルコニウムによって形成されている場合を例示する。したがって、圧電素子100は、可撓性を有し、圧電体30の動作によって変形(屈曲)することができる振動板を備えた圧電アクチュエーター102と実質的に同一である。以下の説明においては、圧電素子100および圧電アクチュエーター102は、相互に読み替えることができる。
第1導電層10の形状は、第2導電層20と対向できるかぎり限定されないが、本実施形態では、圧電体30が、薄膜状に形成されるため、層状あるいは薄膜状の形状が好ましい。第1導電層10の厚みは、例えば、50nm以上300nm以下とすることができる。また、第1導電層10の平面的な形状についても、第2導電層20が対向して配置されたときに両者の間に圧電体30を配置できる形状であれば、特に限定されず、例えば、矩形、円形等とすることができる。
第1導電層10の機能の一つとしては、第2導電層20と一対になって、圧電体30に電圧を印加するための一方の電極(例えば、圧電体30の下方に形成された下部電極)となることが挙げられる。第1導電層10には、圧電体30を結晶化する際の結晶配向を制御する機能を持たせてもよい。
第1導電層10の材質としては、例えば、ニッケル、イリジウム、白金などの各種の金属、それらの導電性酸化物(例えば酸化イリジウムなど)、ストロンチウムとルテニウムの複合酸化物(SrRuO:SRO)、ランタンとニッケルの複合酸化物(LaNiO:LNO)などを例示することができる。第1導電層10は、例示した材料の単層構造でもよいし、複数の材料を積層した構造であってもよい。
1.2.第2導電層
第2導電層20は、第1導電層10に対向して配置される。第2導電層20は、全体が第1導電層10と対向していてもよいし、一部が第1導電層10に対向していてもよい。第2導電層20の形状は、第1導電層10と対向できるかぎり限定されないが、本実施形態では、圧電体30が、薄膜状に形成されるため、層状あるいは薄膜状の形状が好ましい。第2導電層20の厚みは、例えば、50nm以上300nm以下とすることができる。また、第2導電層20の平面的な形状についても、第1導電層10に対向して配置されたときに両者の間に圧電体30を配置できる形状であれば、特に限定されず、例えば、矩形、円形等とすることができる。
第2導電層20の機能の一つとしては、圧電体30に電圧を印加するための一方の電極(例えば、圧電体30の上に形成された上部電極)となることが挙げられる。第2導電層20には、圧電体30を結晶化する際の結晶配向を制御する機能を持たせてもよい。第2導電層20の材質は、上述の第1導電層10と同様とすることができる。
図1は、第1導電層10が第2導電層20よりも平面的に大きく形成された例を示しているが、第2導電層20のほうが第1導電層10よりも平面的に大きく形成されてもよい。この場合は、第2導電層20は、圧電体30の側面に形成されてもよく、第2導電層20に、水分や水素等から圧電体30を保護する機能を兼ねさせることができる。
1.3.圧電体
圧電体30は、第1導電層10および第2導電層20の間に配置される。圧電体30は、第1導電層10および第2導電層20の少なくとも一方に接していてもよい。図1の例では、圧電体30は、第1導電層20および第2導電層20に接して設けられている。
圧電体30は、薄膜法により形成される。ここで、薄膜法とは、スパッタ法、蒸着法、MOCVD(Metal−Organic Chemical Vapor Deposition)法、MOD(Metal−Organic Decomposition)法、PLD(Pulsed Laser Deposition)(レーザーアブレーション)法、ミスト成膜法、およびゾルゲル法の少なくとも一種の方法を指す。すなわち、本実施形態の圧電体30は、バルク状態で形成されたものではなく、例えば、バルク状態で形成されたあとに、研磨等により薄膜化されたものではない。
圧電体30の厚さは、薄膜法によって形成される限り限定されず、例えば、100nm以上3000nm以下とすることができる。薄膜法によって、厚みの大きい圧電体30を形成する場合には、例えば、スパッタ法、蒸着法、MOCVD法などの物質を堆積させる種の方法では堆積時間を長くすることにより形成することができ、また例えば、MOD法やゾルゲル法などのコーティング−焼成を行う種の方法では、該方法を繰り返して積層することにより形成することができる。さらに、積層する場合には、各層毎に異なる薄膜法を用いて積層してもよい。圧電体30の厚みがこの範囲を外れると、耐圧が不十分となったり、十分な変形(電気機械変換)が得られなくなる場合がある。
本実施形態の圧電体30は、チタン酸亜鉛酸ビスマスランタンおよびチタン酸鉛の固溶体である。
より具体的には、圧電体30は、チタン酸亜鉛酸ビスマスランタン(Bi,La)(Zn,Ti)O)(以下これを「BLZT」と略記することがある)、およびチタン酸鉛PbTiO(以下これを「PT」と略記することがある)の固溶体(以下これを「PT−BLZT」と略記することがある)であり、例えば、
(1−u)Pb(1+v)TiO−u(Bi(1−w)La)(Zn(1−x)Ti)O・・・(式I)
として表記することができる。
このPT−BLZTは、一般式としては、ABOで示される複合酸化物であり、いわゆるペロブスカイト型酸化物に分類され、結晶化により、ペロブスカイト型の結晶構造をとることができる。PT−BLZTは、結晶化されて、ペロブスカイト型の結晶構造をとることにより、圧電性を呈することができる。これにより、圧電体30は、第1導電層10および第2導電層20によって電界が印加されることで変形することができる(電気機械変換)。この変形によって、例えば基板1をたわませたり振動させたりすることができ、圧電アクチュエーター102を構成することができる。
本実施形態の圧電体30の固溶体を、上記(式I)の型式で表記した場合、u、v、wおよびxは、いずれも0以上1以下の値をとりうる。これらの値は、圧電体30を形成するときの原料の仕込量が表現されていてもよく、また、形成後の圧電体30の組成が表現されていてもよい。例えば、式中「v」は、PbTiOの化学量論比よりも過剰に仕込まれた鉛原料の量を表現しているものとすることができる。したがって、当該化学式の電荷の中性が、見かけ上満足されない表記となる場合があり、その場合は仕込の値、または、結晶の欠陥の程度が示されていると解するものとする。
本実施形態の圧電体30は、チタン酸亜鉛酸ビスマスランタンおよびチタン酸鉛の固溶体であり、当該固溶体における、チタン酸亜鉛酸ビスマスランタンのチタン酸鉛に対するモル比(BLZT/PT)は、0.39以上0.61以下となっている。すなわち、本実施形態の圧電体30の固溶体を、上記(式I)の型式で表記した場合、0.28≦u≦0.38である。
本実施形態の圧電素子100では、圧電体30の固溶体の、チタン酸亜鉛酸ビスマスランタンのチタン酸鉛に対するモル比(BLZT/PT)が、この範囲にあるため、耐電圧が良好となる。これにより、圧電素子100に印加する電圧を高めることができ、例えば、圧電アクチュエーター102の変位を大きくすることができる。そして、このような圧電体30は、例えば、インクジェット印刷におけるインクの吐出性能を高めることができる。なおBLZT/PT比は、より好ましくは、0.39以上0.49以下である。
本実施形態の圧電体30の固溶体において、チタン酸亜鉛酸ビスマスランタンにおけるビスマスのランタンに対するモル比(Bi/La)は、1.00以上2.33以下としてもよい。すなわち、本実施形態の圧電体30の固溶体を、上記(式I)の型式で表記した場合、0.3≦w≦0.5とすることができる。このようにすれば、圧電素子100のヒステリシスループの形状をさらに良好にすることができる。すなわち、Bi/La比が、1.00以上2.33以下であると、ヒステリシスループをより開いた形状にすることができる。また、Bi/La比は、より好ましくは1.5以上2.33以下である。
本実施形態の圧電体30において、チタン酸鉛における、鉛のチタンに対するモル比(鉛/チタン)は、1.0より大きく1.1以下とすることができる。また、圧電体30において、固溶体となっているチタン酸鉛の鉛は、化学量論組成のチタン酸鉛の鉛量よりも10%以下過剰であるようにしてもよい。すなわち、本実施形態の圧電体30の固溶体を、上記(式I)の型式で表記した場合、0≦v≦0.1とすることができる。このようにすれば、固溶体の結晶における異相の量を減少させることができる。例えば、圧電体30が結晶化された際に、立方晶、正方晶、菱面体晶などの結晶構造の相が現れる場合があるが、チタン酸鉛における鉛のチタンに対するモル比(鉛/チタン)は、1.0より大きく1.1以下とすることにより、例えば、圧電体30において、正方晶の割合を高め、他の結晶構造の相(異相)の存在量を減少させることができる。このようにすれば、圧電素子100の圧電特性をさらに良好にすることができる。
本実施形態の圧電体30の固溶体において、チタン酸亜鉛酸ビスマスランタンにおける亜鉛のチタンに対するモル比(Zn/Ti)は、0.92以上1.08以下としてもよい。すなわち、本実施形態の圧電体30の固溶体を、上記(式I)の型式で表記した場合、0.48≦x≦0.5とすることができる。このようにすれば、圧電素子100の耐電圧をさらに良好とすることができる。これにより、圧電素子100に印加する電圧をさらに高めることができ、例えば、圧電アクチュエーター102の変位をさらに大きくすることができる。そして、このような圧電体30は、例えば、インクジェット印刷におけるインクの吐出性能をさらに高めることができる。なおZn/Ti比は、より好ましくは、0.96以上1.04以下であり、ビスマス、亜鉛およびチタンの価数のバランスの点で、特に好ましくは0.5である。
1.4.作用効果等
本実施形態にかかる圧電素子100(圧電アクチュエーター102)は、上述の圧電体30を含むため、少なくとも、耐圧、すなわち、第1導電層10および第2導電層20の間に電圧が印加されたときに絶縁破壊を生じる電界強度が高いという特徴を有する。後述の実施例によってさらに説明するが、本実施形態の圧電素子100は、絶縁破壊を生じる電界強度が非常に高く、例えば、500kV/cm以上2000kV/cm以下といった値を有することができる。
また、本実施形態にかかるPT−BLZTは、PZT(鉛含有量:約76質量%)に比較して、低い鉛含有量(53質量%ないし61質量%)であるにもかかわらず、非常に良好な特性を示すことが判明した。すなわち、本実施形態にかかるPT−BLZTは、環境負荷を小さく抑えることができ、かつ、優れた圧電特性を示すことができる。
本実施形態の圧電素子100は、広範な用途に用いることができる。圧電アクチュエーター102の用途としては、例えば、液体噴射ヘッド、インクジェットプリンターなどの液体噴射装置などがあり、圧電素子100の用途としては、ジャイロセンサー、加速度センサーなどの各種のセンサー類、音叉型振動子などのタイミングデバイス類、超音波モーターなどの超音波デバイス類に好適に用いることができる。
2.圧電素子の製造方法
本発明の圧電素子100は、例えば、以下のように製造することができる。
まず、基板1を準備し、基板1上に第1導電層10を形成する。第1導電層20は、例えば、スパッタ法、めっき法、真空蒸着法などにより形成されることができる。第1導電層10は、必要に応じてパターニングされることができる。
次に、第1導電層20の上に、圧電体30を形成する。圧電体30は、上述の通り、例えば、スパッタ法、蒸着法、MOCVD(Metal−Organic Chemical Vapor Deposition)法、MOD(Metal−Organic Decomposition)法、PLD(Pulsed Laser Deposition)(レーザーアブレーション)法、ミスト成膜法、およびゾルゲル法の少なくとも一種の方法あるいはこれら複数の方法の組合せにより形成されることができる。圧電体30の結晶化は、例えば、500℃以上800℃以下において、酸素雰囲気で行うことができる。これにより、圧電体30を結晶化することができる。なお、結晶化は、圧電体30をパターニングした後に行ってもよい。そして、必要に応じて、上記操作を複数回繰り返して、所望の厚みの圧電体30を得ることができる。
次に、圧電体30の上に第2導電層20を形成する。第2導電層20は、例えば、スパッタ法、めっき法、真空蒸着法などにより形成されることができる。そして、所望の形状に第2導電層20および圧電体30をパターニングして、圧電素子を形成する。なお第2導電層20および圧電体30は、必要に応じて同時にパターニングされることができる。以上例示した工程により、本実施形態の圧電素子100を製造することができる。
3.液体噴射ヘッド
次に、本実施形態にかかる圧電素子(圧電アクチュエーター)の用途の一例として、これらを有する液体噴射ヘッド600について、図面を参照しながら説明する。図2は、液体噴射ヘッド600の要部を模式的に示す断面図である。図3は、液体噴射ヘッド600の分解斜視図であり、通常使用される状態とは上下を逆に示したものである。
液体噴射ヘッド600は、上述の圧電素子(圧電アクチュエーター)を有することができる。以下では、基板1(上部に振動板1aを含む構造体)の上に圧電素子100が形成され、圧電素子100と振動板1aとが圧電アクチュエーター102を構成している液体噴射ヘッド600を例示して説明する。
液体噴射ヘッド600は、図2および図3に示すように、ノズル孔612を有するノズル板610と、圧力室622を形成するための圧力室基板620と、圧電素子100と、を含む。さらに、液体噴射ヘッド600は、図3に示すように、筐体630を有することができる。なお、図3では、圧電素子100を簡略化して図示している。
ノズル板610は、図2および図3に示すように、ノズル孔612を有する。ノズル孔612からは、インクが吐出されることができる。ノズル板610には、例えば、多数のノズル孔612が一列に設けられている。ノズル板620の材質としては、例えば、シリコン、ステンレス鋼(SUS)などを挙げることができる。
圧力室基板620は、ノズル板610上(図3の例では下)に設けられている。圧力室基板620の材質としては、例えば、シリコンなどを例示することができる。圧力室基板620がノズル板610と振動板1aとの間の空間を区画することにより、図3に示すように、リザーバー(液体貯留部)624と、リザーバー624と連通する供給口626と、供給口626と連通する圧力室622と、が設けられている。この例では、リザーバー624と、供給口626と、圧力室622とを区別して説明するが、これらはいずれも液体の流路であって、このような流路はどのように設計されても構わない。また例えば、供給口626は、図示の例では流路の一部が狭窄された形状を有しているが、設計にしたがって任意に形成することができ、必ずしも必須の構成ではない。リザーバー624、供給口626および圧力室622は、ノズル板610と圧力室基板620と振動板1aとによって区画されている。リザーバー624は、外部(例えばインクカートリッジ)から、振動板1aに設けられた貫通孔628を通じて供給されるインクを一時貯留することができる。リザーバー624内のインクは、供給口626を介して、圧力室622に供給されることができる。圧力室622は、振動板1aの変形により容積が変化する。圧力室622はノズル孔612と連通しており、圧力室622の容積が変化することによって、ノズル孔612からインク等が吐出される。
圧電素子100は、圧力室基板620上(図3の例では下)に設けられている。圧電素子100は、圧電素子駆動回路(図示せず)に電気的に接続され、圧電素子駆動回路の信号に基づいて動作(振動、変形)することができる。振動板1aは、圧電体30の動作によって変形し、圧力室622の内部圧力を適宜変化させることができる。
筐体630は、図3に示すように、ノズル板610、圧力室基板620および圧電素子100を収納することができる。筐体630の材質としては、例えば、樹脂、金属などを挙げることができる。
液体噴射ヘッド600は、上述した少なくとも耐圧に優れた圧電素子100を含んでいる。したがって液体噴射ヘッド600は、耐圧が高く、従来に比較してより高い電圧の動作が可能で、液体等の吐出能力が高いものとなっている。
なお、ここでは、液体噴射ヘッド600がインクジェット式記録ヘッドである場合について説明した。しかしながら、本実施形態の液体噴射ヘッドは、例えば、液晶ディスプレイ等のカラーフィルターの製造に用いられる色材噴射ヘッド、有機ELディスプレイ、FED(面発光ディスプレイ)等の電極形成に用いられる電極材料噴射ヘッド、バイオチップ製造に用いられる生体有機物噴射ヘッドなどとして用いられることもできる。
4.液体噴射装置
次に、本実施形態にかかる液体噴射装置について、図面を参照しながら説明する。液体噴射装置は、上述の液体噴射ヘッドを有する。以下では、液体噴射装置が上述の液体噴射ヘッドを有するインクジェットプリンターである場合について説明する。図4は、本実施形態にかかる液体噴射装置700を模式的に示す斜視図である。
液体噴射装置700は、図4に示すように、ヘッドユニット730と、駆動部710と、制御部760と、を含む。液体噴射装置700は、さらに、液体噴射装置700は、装置本体720と、給紙部750と、記録用紙Pを設置するトレイ721と、記録用紙Pを排出する排出口722と、装置本体720の上面に配置された操作パネル770と、を含むことができる。
ヘッドユニット730は、上述した液体噴射ヘッド600から構成されるインクジェット式記録ヘッド(以下単に「ヘッド」ともいう)を有する。ヘッドユニット730は、さらに、ヘッドにインクを供給するインクカートリッジ731と、ヘッドおよびインクカートリッジ731を搭載した運搬部(キャリッジ)732と、を備える。
駆動部710は、ヘッドユニット730を往復動させることができる。駆動部710は、ヘッドユニット730の駆動源となるキャリッジモーター741と、キャリッジモーター741の回転を受けて、ヘッドユニット730を往復動させる往復動機構742と、を有する。
往復動機構742は、その両端がフレーム(図示せず)に支持されたキャリッジガイド軸744と、キャリッジガイド軸744と平行に延在するタイミングベルト743と、を備える。キャリッジガイド軸744は、キャリッジ732が自在に往復動できるようにしながら、キャリッジ732を支持している。さらに、キャリッジ732は、タイミングベルト743の一部に固定されている。キャリッジモーター741の作動により、タイミングベルト743を走行させると、キャリッジガイド軸744に導かれて、ヘッドユニット730が往復動する。この往復動の際に、ヘッドから適宜インクが吐出され、記録用紙Pへの印刷が行われる。
なお、本実施形態では、液体噴射ヘッド600および記録用紙Pがいずれも移動しながら印刷が行われる液体噴射装置の例を示しているが、本発明の液体噴射装置は、液体噴射ヘッド600および記録用紙Pが互いに相対的に位置を変えて記録用紙Pに印刷される機構であればよい。また、本実施形態では、記録用紙Pに印刷が行われる例を示しているが、本発明の液体噴射装置によって印刷を施すことができる記録媒体としては、紙に限定されず、布、フィルム、金属など、広範な媒体を挙げることができ、適宜構成を変更することができる。
制御部760は、ヘッドユニット730、駆動部710および給紙部750を制御することができる。
給紙部750は、記録用紙Pをトレイ721からヘッドユニット730側へ送り込むことができる。給紙部750は、その駆動源となる給紙モーター751と、給紙モーター751の作動により回転する給紙ローラー752と、を備える。給紙ローラー752は、記録用紙Pの送り経路を挟んで上下に対向する従動ローラー752aおよび駆動ローラー752bを備える。駆動ローラー752bは、給紙モーター751に連結されている。制御部760によって供紙部750が駆動されると、記録用紙Pは、ヘッドユニット730の下方を通過するように送られる。
ヘッドユニット730、駆動部710、制御部760および給紙部750は、装置本体720の内部に設けられている。
液体噴射装置700は、耐圧の高い液体噴射ヘッド600を有する。したがって液体噴射装置700の液体の吐出能力は高いものとなっている。
なお、上記例示した液体噴射装置700は、1つの液体噴射ヘッド600を有し、この液体噴射ヘッド600によって、記録媒体に印刷を行うことができるものであるが、複数の液体噴射ヘッドを有してもよい。液体噴射装置が複数の液体噴射ヘッドを有する場合には、複数の液体噴射ヘッドは、それぞれ独立して上述のように動作されてもよいし、複数の液体噴射ヘッドが互いに連結されて、1つの集合したヘッドとなっていてもよい。このような集合となったヘッドとしては、例えば、複数のヘッドのそれぞれのノズル孔が全体として均一な間隔を有するような、ライン型のヘッドを挙げることができる。
以上、本発明にかかる液体噴射装置の一例として、インクジェットプリンターとしての液体噴射装置700を説明したが、本発明にかかる液体噴射装置は、工業的にも利用することができる。この場合に吐出される液体(液状材料)としては、各種の機能性材料を溶媒や分散媒によって適当な粘度に調整したものなどを用いることができる。本発明の液体噴射装置は、例示したプリンター等の画像記録装置以外にも、液晶ディスプレイ等のカラーフィルターの製造に用いられる色材噴射装置、有機ELディスプレイ、FED(面発光ディスプレイ)、電気泳動ディスプレイ等の電極やカラーフィルターの形成に用いられる液体材料噴射装置、バイオチップ製造に用いられる生体有機材料噴射装置としても好適に用いられることができる。
5.実施例および参考例
以下に実施例および参考例を示し、本発明をより具体的に説明する。なお、本発明は、以下の実施例によってなんら限定されるものではない。
5.1.圧電素子の作製
実施例1ないし実施例4および参考例1ないし参考例3の圧電素子は、以下のように作製した。
まず、基板を以下の工程にて作製した。単結晶シリコン基板上に絶縁膜として二酸化シリコンを熱酸化にて作製した。この基板上に膜厚が50nmのTiAlNと、膜厚が100nmのイリジウム(Ir)と、膜厚が30nmの酸化イリジウム(IrOx)膜と、膜厚が150nmの白金(Pt)膜をRFマグネトロンスパッタ法にて順次積層した。この積層体は、上記実施形態の第1導電層10に相当する。
各実施例および各参考例の圧電体30は、いずれも化学溶液法によって作製した。第1導電層10の上に、スピンコート法によって、PT−BLZTの前駆体溶液を塗布した。この前駆体溶液は、実施例および参考例ごとに異なる配合を有するものとした。また、スピンコートにおける回転速度および時間は、最初は500rpm・5sec、次に3000rpm・30secとした。
次に、塗布された前駆体膜を大気中、160℃で2分間乾燥させ、溶媒を除去した。次いで、大気中、400℃で4分間熱処理して、前駆体膜中の有機成分を除去した(脱脂)。各実施例および参考例につき、いずれも、前駆体溶液の塗布、乾燥、脱脂の組を3回繰り返して行った。次いで、焼成炉(Rapid Thermal Annealing(RTA))に導入し、0.5L/minの酸素フローを行いながら、500℃から800℃まで、2分間焼成した。
さらに各実施例および各参考例につき、いずれも、前駆体溶液の塗布、乾燥、脱脂の組を3回、焼成を2回繰り返し、その後、0.5L/minの酸素フローを行いながら、500℃から800℃まで、5分間焼成した。ここで、いずれの試料も、PT−BLZT層の一層あたりの厚みは、100nmとしたため、結果として600nmの厚みの圧電体30が得られた。
さらにその上に第2導電層20としてDCスパッタ法にて膜厚100nmのPT膜を作製した。その後、RTA炉に導入し、炉内を0.5L/分の流量の酸素でフローして、650℃で5分間、第2導電層20の焼付けを行い、各実施例および参考例の圧電素子をそれぞれ作製した。
各実施例および各参考例において、化学溶液法における前駆体溶液には、ビスマス、ランタン、亜鉛のそれぞれの原料として、2−エチルヘキサン酸塩を、チタンの原料として、金属アルコキシドを、鉛の原料として酢酸鉛を、溶媒(n−ブタノール)に混合したものを用いた。PT−BLZTの前駆体溶液の組成は、各実施例および各参考例について、原料溶液に含まれる元素の濃度として、表1に「原料における各元素の配合量(仕込量)(mol%)を記載した。また、表1には、(1−u)Pb(1+v)TiO−u(Bi(1−w)La)(Zn(1−x)Ti)O・・・(式I)の型式で表記したときの、u,v,w,xの値を併記した。また、PbおよびBiにつき、仕込みにおける化学量論組成(ストイキオメトリ)からの過剰分を併記した。なお、参考例1の圧電素子は、ランタンを含有しないが、便宜上、PT−BLZTとして、w=0であるものとして扱う。
Figure 2011187790
また、比較例として、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)を圧電体とした圧電素子を作製した。比較例の圧電素子は、原料溶液として、酢酸鉛、並びに、ジルコニウム、およびチタンのそれぞれの金属アルコキシドを原料として、溶媒(n−ブタノール)に混合したものを用い、厚みが1300nmとなるように、当該溶液の塗布、乾燥、脱脂の組を3回、および焼成を4回の組を2回繰り返した以外は、実施例および参考例と同様にして作製した。
5.2.圧電素子の評価
5.2.1.耐圧評価
各実施例、各参考例および比較例の圧電素子の耐圧性能は、変位−印加電圧プロットを行って、その結果を歪率−電界強度プロットに変換し、これを用いて評価した。変位−印加電圧プロットは、各試料の圧電素子を500μmφの円形のパターンにパターニングし、2つの電極をそれぞれ変位測定装置(DBLI)に接続して採取した。変位測定装置は、アグザクト社から入手したものを用いた。このときの測定周波数は、1kHzとした。
5.2.2.ヒステリシスの評価
ヒステリシスの評価は、東陽テクニカ社製、「FCE−1A」を用い、ヒステリシスループを測定し、その形状を評価して行った。ヒステリシスの評価に用いた試料は、各実施例、各参考例および比較例ともに、耐圧評価に用いたものと同様とした。
5.2.3.X線回折(XRD)
X線回折(XRD)パターンは、各実施例、各参考例および比較例ともに、各試料の圧電素子をパターニングすることなく、Bruker AXS社製の型番D8 Discoverに導入し、X線源としてCu−Kα線を使用して、室温で測定した。
5.3.評価結果
図5および図6は、それぞれ実施例2、実施例3の圧電素子の分極および変位の印加電圧に対するプロットである。図5および図6をみると、実施例2および実施例3の圧電素子は、いずれも良好な分極曲線、および変位曲線を示している。なお、図示しないが、実施例1、実施例4、実施例5、参考例1、参考例2および参考例3の圧電素子についても同様に、いずれも良好な分極曲線、および変位曲線を示していた。そして、このようにして得られた変位曲線を変換して、歪率−電界強度プロットを行った。
図7は、実施例2、実施例3および比較例の圧電素子の歪率−電界強度プロットである。図7をみると、実施例2および実施例3の圧電素子は、1700kV/cm以上の電界強度において、1.5%以上の歪率を示すことが判明した。このことは、実施例2および実施例3の、PT−BLZTを圧電体とする圧電素子は、極めて耐圧が良好で、非常に大きな歪率を達成できることを示している。なお、図示しないが、実施例1、実施例4、実施例5、参考例1、参考例2および参考例3の圧電素子についても、実施例2、実施例3と同様の結果であった。これらの結果に対して、比較例すなわちPZTを圧電体とする圧電素子は、電界強度が500kV/cm未満において絶縁破壊した。
図8、図9、図10、図11および図12は、それぞれ、実施例1、実施例2、実施例3、実施例4および参考例1の圧電素子のヒステリシスループを示している。図8ないし図11をみると、実施例1ないし実施例4の圧電素子は、いずれもヒステリシスループが、所謂、開いた形状となっており、良好な圧電特性を呈することが判明した。図12に示した参考例1の圧電素子のヒステリシスループは、実施例1ないし実施例4のヒステリシスループに比べて、若干開き方が劣るものの良好な圧電特性を示すことが判明した。
図13には、実施例1ないし実施例5および参考例1ないし参考例3の圧電素子のXRDパターンを示した。図13をみると、実施例1ないし実施例5および参考例1ないし参考例3の圧電素子は、いずれも回折角22°、32°、39°、46°、および57°付近に、PT−BLZTのペロブスカイト構造に由来する尖鋭なピークが認められた。このことは、これらの例の圧電素子のPT−BLZTは、結晶性が良好であることを示している。また、実施例4の圧電素子のPT−BLZTは、ペロブスカイト構造に由来するピークが、ややブロードとなっており、結晶性が若干劣っていることが判明した。
以上の実施例および参考例から、PbTiO(PT)と固溶させ、薄膜法により形成することによりBi(Zn0.5,Ti0.5)O(BZT)に特有の障害であった高圧合成を行わずに圧電特性の良い圧電材料を常圧合成で得ることができることが判明した。また、Biサイトの一部をLaに置換し、薄膜化することによって高電圧印加が可能であることが判明した。
さらに、本発明にかかるビスマス系の複合酸化物は、揮発しやすいアルカリ金属元素や、遷移金属であるため価数が変化しやすくリークの原因ともなりうる鉄を含まなくても、圧電特性の良い圧電体とすることができることが判明した。
また、本発明にかかるビスマス系の複合酸化物は、PZT(鉛含有量:約76質量%)に比較して、低い鉛含有量(53質量%ないし61質量%)であるにもかかわらず、非常に良好な圧電特性を示すことが判明した。すなわち、本発明にかかるビスマス系の複合酸化物は、環境負荷を小さく抑え、優れた圧電特性を示すことが判明した。
以上に述べた実施形態および変形実施形態は、任意の複数の形態を適宜組み合わせることが可能である。これにより、組み合わされた実施形態は、それぞれの実施形態が有する効果または相乗的な効果を奏することができる。
本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、さらに種々の変形が可能である。例えば、本発明は、実施形態で説明した構成と実質的に同一の構成(例えば、機能、方法および結果が同一の構成、あるいは目的および効果が同一の構成)を含む。また、本発明は、実施形態で説明した構成の本質的でない部分を置き換えた構成を含む。また、本発明は、実施形態で説明した構成と同一の作用効果を奏する構成または同一の目的を達成することができる構成を含む。また、本発明は、実施形態で説明した構成に公知技術を付加した構成を含む。
1…基板、1a…振動板、10…第1導電層、20…第2導電層、30…圧電体、100…圧電素子、102…圧電アクチュエーター、600…液体噴射ヘッド、610…ノズル板、612…ノズル孔、620…圧力室基板、622…圧力室、624…リザーバー、626…供給口、628…貫通孔、630…筐体、700…液体噴射装置、710…駆動部、720…装置本体、721…トレイ、722…排出口、730…ヘッドユニット、731…インクカートリッジ、732…キャリッジ、741…キャリッジモーター、742…往復動機構、743…タイミングベルト、744…キャリッジガイド軸、750…給紙部、751…給紙モーター、752…給紙ローラー、752a…従動ローラー、752b…駆動ローラー、760…制御部、770…操作パネル

Claims (7)

  1. 薄膜法により形成された圧電体および前記圧電体に電圧を印加する電極を含む圧電アクチュエーターを備えた液体噴射ヘッドであって、
    前記圧電体は、チタン酸亜鉛酸ビスマスランタンおよびチタン酸鉛の固溶体を含み、
    前記圧電体における、前記チタン酸亜鉛酸ビスマスランタンの前記チタン酸鉛に対するモル比(チタン酸亜鉛酸ビスマスランタン/チタン酸鉛)は、0.39以上0.61以下である、液体噴射ヘッド。
  2. 請求項1において、
    前記チタン酸亜鉛酸ビスマスランタンのビスマスのランタンに対するモル比(ビスマス/ランタン)は、1.00以上2.33以下である、液体噴射ヘッド。
  3. 請求項1または請求項2において、
    前記チタン酸鉛における、鉛のチタンに対するモル比(鉛/チタン)は、1.0より大きく1.1以下である、液体噴射ヘッド。
  4. 請求項1ないし請求項3のいずれか一項において、
    前記電極は、対向する一対の導電層を含み、
    前記圧電体は、前記一対の導電層の間に薄膜状に配置され、
    前記圧電体の厚みは、100nm以上3μm以下である、液体噴射ヘッド。
  5. 請求項4において、
    前記一対の導電層の間に電圧を印加したときに、
    前記圧電体の絶縁破壊が生じる電界強度が、500kV/cm以上2000kV/cm以下である、液体噴射ヘッド。
  6. 請求項1ないし請求項5のいずれか一項に記載の液体噴射ヘッドを備えた、液体噴射装置。
  7. 薄膜法により形成された圧電体および前記圧電体に電圧を印加する電極を含む圧電素子であって、
    前記圧電体は、チタン酸亜鉛酸ビスマスランタンおよびチタン酸鉛の固溶体を含み、
    前記圧電体における、前記チタン酸亜鉛酸ビスマスランタンの前記チタン酸鉛に対するモル比(チタン酸亜鉛酸ビスマスランタン/チタン酸鉛)は、0.39以上0.61以下である、圧電素子。
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