JP2011061117A - 圧電素子、圧電アクチュエーター、液体噴射ヘッドおよび液体噴射装置 - Google Patents

圧電素子、圧電アクチュエーター、液体噴射ヘッドおよび液体噴射装置 Download PDF

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Abstract

【課題】圧電体層の結晶が良質で、圧電特性の良好な圧電素子を提供すること。
【解決手段】本発明にかかる圧電素子100は、第1導電層10と、第1導電層10に対向して配置された第2導電層20と、第1導電層10および第2導電層20の間に配置され、少なくとも鉛、ジルコニウム、チタンおよび酸素を含む複合酸化物によって形成された圧電体層30と、を含み、圧電体層30は、圧電体層30の第1導電層10側の端に配置された第1結晶層32と、第1結晶層32に連続し、第1結晶層32よりも第2導電層20側に配置された第2結晶層34と、を含み、圧電体層30の鉛の濃度は、第1結晶層32の第1導電層10側のほうが、第2結晶層34の第2導電層20側よりも低く、圧電体層30の酸素の濃度は、第1結晶層32の第1導電層10側のほうが、第2結晶層34の第2導電層20側よりも高い。
【選択図】図1

Description

本発明は、圧電素子、圧電アクチュエーター、液体噴射ヘッドおよび液体噴射装置に関する。
圧電素子は、結晶化した圧電セラミックス等からなる圧電材料が2つの電極によって挟まれた構造を含んでいる。そのため圧電素子は、圧電材料に電界を印加して伸縮等の変形を生じることができる。圧電素子は、液体噴射ヘッド等の圧電アクチュエーターに利用されている。液体噴射ヘッドの利用される圧電アクチュエーターの典型例としては、撓み振動モードによって駆動されるものがある。
液体噴射ヘッドとしては、例えば、インク滴を吐出するノズル孔と連通する圧力発生室の一部を振動板で構成し、この振動板を圧電素子により変形させて圧力発生室内に導入されたインクを加圧してノズル孔からインク滴を吐出させるインクジェット式記録ヘッド等がある。インクジェット式記録ヘッドに搭載される圧電アクチュエーターとしては、たとえば、振動板の表面全体に均一な圧電材料層を形成し、この圧電材料層をリソグラフィ法により圧力発生室に対応する形状に切り分けて圧力発生室毎に独立して駆動できるように圧電アクチュエーターを形成したものがある。
ところで、このような圧電素子の圧電体層は、液相プロセスによりチタン酸ジルコン酸鉛(PZT)等の圧電材料の薄膜を成膜して形成される。たとえば、特許文献1には、圧電体層を形成する際に圧電材料を複数回に分けて塗布して成膜する方法が開示されている。同公報には、このように成膜すると基板面の法線方向に結晶の100面が優先的に配向した圧電体層(エンジニアードドメイン)を安定的に得ることができる等の記載がある。
特開2002−314163号公報
しかし、圧電素子に求められる性能は、より厳しくなってきており、圧電体層を形成する際に、圧電材料の塗布を複数回行うことだけでは、必ずしも十分な性能を得ることが難しくなってきた。そのため、たとえば電極材料と圧電体層の材料との格子整合や、他の材料(たとえばチタン)の層をさらに積層するなどの検討もなされている。
発明者らは、より良好なエンジニアードドメイン構造を形成するためには、圧電体層が接する電極との界面付近における圧電材料の結晶の変質を抑えることが重要であるとの知見を得た。そして、このような圧電体層およびこれを挟む電極の界面付近における圧電材料の結晶の制御は、該圧電材料の組成に大きく影響されることを見出した。
本発明のいくつかの態様にかかる目的の1つは、圧電体層の結晶が良質で、圧電特性の良好な圧電素子を提供することにある。
本発明は上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の態様または適用例として実現することができる。
[適用例1]
本発明にかかる圧電素子の一態様は、
第1導電層と、
前記第1導電層に対向して配置された第2導電層と、
前記第1導電層および前記第2導電層の間に配置され、少なくとも鉛、ジルコニウム、チタンおよび酸素を含む複合酸化物によって形成された圧電体層と、
を含み、
前記圧電体層は、前記圧電体層の前記第1導電層側の端に配置された第1結晶層と、前記第1結晶層に連続し、前記第1結晶層よりも前記第2導電層側に配置された第2結晶層と、を含み、
前記圧電体層の鉛の濃度は、前記第1結晶層の前記第1導電層側のほうが、前記第2結晶層の前記第2導電層側よりも低く、
前記圧電体層の酸素の濃度は、前記第1結晶層の前記第1導電層側のほうが、前記第2結晶層の前記第2導電層側よりも高い。
このような圧電素子は、圧電体層が、圧電体層の第1導電層側の端に配置された第1結晶層および第2結晶層を有しており、圧電体層の組成において、鉛の濃度は、第1結晶層の第1導電層側のほうが、第2結晶層の第2導電層側よりも低く、かつ、酸素の濃度は、第1結晶層の第1導電層側のほうが、第2結晶層の第2導電層側よりも高い。そのため、圧電体層の全体において複合酸化物の結晶の質が向上している。これにより、本適用例の圧電素子は、少なくとも変位量に関する耐久特性が良好なものである。
[適用例2]
適用例1において、
前記第1結晶層の前記第1導電層側の酸素の濃度は、前記第2結晶層の前記第2導電層側の酸素の濃度よりも、4.7原子%以上8.7原子%以下の範囲で高い、圧電素子。
このような圧電素子は、圧電体層全体において複合酸化物の結晶の質がさらに向上している。これにより、本適用例の圧電素子は、変位量に関する耐久特性がさらに良好なものである。
[適用例3]
適用例1または適用例2において、
前記圧電体層の各元素の濃度は、ラザフォード後方散乱法およびオージェ電子分光法を併用し、相対感度因子を決定し、該相対感度因子を用いて測定された、圧電素子。
このような圧電素子は、耐久特性が良好である。
[適用例4]
適用例1ないし適用例3のいずれか一例において、
前記第1結晶層および前記第2結晶層の合計の厚みは、前記圧電体層の厚みの20分の1以上3分の1以下である、圧電素子。
このような圧電素子は、結晶制御領域の、圧電体層に占める割合が良好で、耐久特性の向上に加えて、変位量をより大きくすることができる。
[適用例5]
本発明にかかる圧電アクチュエーターの一態様は、
適用例1ないし適用例4のいずれか一例に記載された圧電素子と、
前記第1導電層または前記第2導電層に接して設けられ、可撓性を有する振動板と、
を含む。
このような圧電アクチュエーターは、上記適用例の圧電素子のいずれかを有するため、耐久性に優れている。
[適用例6]
本発明にかかる液体噴射ヘッドの一態様は、
適用例5に記載された圧電アクチュエーターと、
ノズル孔と連通し、前記圧電アクチュエーターの動作によって容積が変化する圧力室と、を含む。
このような液体噴射ヘッドは、上記適用例の圧電アクチュエーターを有するため、耐久性に優れている。
[適用例7]
本発明にかかる液体噴射装置の一態様は、
適用例6に記載された液体噴射ヘッドを含む。
このような液体噴射装置は、上記適用例の液体噴射ヘッドを有するため、耐久性に優れている。
実施形態にかかる圧電素子100の断面の模式図。 実験例1のRBS/AESデプスプロファイル。 実験例2のRBS/AESデプスプロファイル。 実験例および参考例のSTEM−EDS断面組成マップ像。 実験例1の高分解能TEM像。 実験例2の高分解能TEM像。 参考例の高分解能TEM像。 Pb過剰量および変位量の変化率の関係を示すグラフ。 Pb過剰量および分圧の関係を示すグラフ。 Pb過剰量と各元素の濃度の変化の関係を示すグラフ。 実施形態にかかる液体噴射ヘッド600の要部の断面の模式図。 実施形態にかかる液体噴射ヘッド600を模式的に示す分解斜視図。 実施形態にかかる液体噴射装置700を模式的に示す斜視図。
以下に本発明の好適な実施形態について、図面を参照しながら説明する。なお以下の実施形態は、本発明の一例を説明するものである。また、本発明は、下記の実施形態に限定されるものではなく、要旨を変更しない範囲において実施される各種の変形例も含む。
1.圧電素子
図1は、本実施形態にかかる圧電素子100の断面の模式図である。
本実施形態にかかる圧電素子100は、第1導電層10と、第2導電層20と、圧電体層30と、を含む。
1.1.第1導電層
第1導電層10は、たとえば、基板1の上方に形成される。基板1は、たとえば、導電体、半導体、絶縁体で形成された平板とすることができる。基板1は、単層であっても、複数の層が積層された構造であってもよい。また、基板1は、上面が平面的な形状であれば内部の構造は限定されず、たとえば、内部に空間等が形成された構造であってもよい。また、たとえば、後述する液体噴射ヘッドのように、基板1の下方に圧力室等が形成されているような場合においては、基板1より下方に形成される複数の構成をまとめて一つの基板1とみなしてもよい。
基板1は、可撓性を有し、圧電体層30の動作によって変形(屈曲)することのできる振動板であってもよい。この場合、圧電素子100は、振動板と、第1導電層20と、圧電体層30と、第2導電層50と、を含む圧電アクチュエーター102となる。ここで、基板1が可撓性を有するとは、基板1がたわむことができることを指す。基板1を振動板とした場合、基板1のたわみは、圧電アクチュエーター102を液体噴射ヘッドに使用する場合、吐出させる液体の体積と同程度に圧力室の容積を変化させうる程度であれば十分である。
基板1が振動板である場合は、基板1の材質としては、たとえば、酸化ジルコニウム(ZrO)、窒化シリコン、酸化シリコンなどの無機酸化物、ステンレス鋼などの合金を例示することができる。これらのうち、基板1(振動板)の材質としては、化学的安定性および剛性の点で、酸化ジルコニウムが特に好適である。この場合においても基板1は、例示した物質の2種以上の積層構造であってもよい。
本実施形態では、以下、基板1が振動板であって、酸化ジルコニウムによって形成されている場合を例示する。したがって、圧電素子100は、可撓性を有し、圧電体層30の動作によって変形(屈曲)することができる振動板を備えた圧電アクチュエーター102と実質的に同一である。よって以下の説明においては、圧電素子100および圧電アクチュエーター102は、相互に読み替えることができる。
第1導電層10の形状は、第2導電層20と対向できるかぎり限定されないが、圧電素子100を薄膜状にする場合には、層状あるいは薄膜状の形状が好ましい。この場合の第1導電層10の厚みは、たとえば、50nm以上300nm以下とすることができる。また、第1導電層10の平面的な形状についても、第2導電層20が対向して配置されたときに両者の間に圧電体層30を配置できる形状であれば、特に限定されず、たとえば、矩形、円形等とすることができる。
第1導電層10の機能の一つとしては、圧電体層30に電圧を印加するための一方の電極(たとえば、圧電体層30の下方に形成された下部電極)となることが挙げられる。第1導電層10には、圧電体層30を結晶化する際の結晶配向を制御する機能を持たせてもよい。
第1導電層10の材質としては、たとえば、ニッケル、イリジウム、白金などの各種の金属、それらの導電性酸化物(たとえば酸化イリジウムなど)、ストロンチウムとルテニウムの複合酸化物(SrRuO:SRO)、ランタンとニッケルの複合酸化物(LaNiO:LNO)などを例示することができる。第1導電層10は、例示した材料の単層構造でもよいし、複数の材料を積層した構造であってもよい。また、第1導電層10と基板1との間には、たとえば、密着層等が形成されていてもよい。この場合の密着層としては、たとえばチタン層などが挙げられる。
1.2.第2導電層
第2導電層20は、第1導電層10に対向して配置される。第2導電層20は、全体が第1導電層10と対向していてもよいし、一部が第1導電層10に対向していてもよい。第2導電層20の形状は、第1導電層10と対向できるかぎり限定されないが、圧電素子100を薄膜状にする場合には、層状あるいは薄膜状の形状が好ましい。この場合の第2導電層20の厚みは、たとえば、10nm以上300nm以下とすることができる。また、第2導電層20の平面的な形状についても、第1導電層10に対向して配置されたときに両者の間に圧電体層30を配置できる形状であれば、特に限定されず、たとえば、矩形、円形等とすることができる。
第2導電層20の機能の一つとしては、圧電体層30に電圧を印加するための一方の電極(たとえば、圧電体層30の上に形成された上部電極)となることが挙げられる。第2導電層20の材質は、上述の第1導電層10と同様とすることができる。
図1は、第1導電層10が第2導電層20よりも平面的に大きく形成された例を示しているが、第2導電層20のほうが第1導電層10よりも平面的に大きく形成されてもよい。この場合は、第2導電層20は、圧電体層30の側面に形成されてもよく、第2導電層20に、水分や水素等から圧電体層30を保護する機能を兼ねさせることができる。
1.3.圧電体層
圧電体層30は、第1導電層10および第2導電層20の間に配置される。圧電体層30は、第1導電層10および第2導電層20の少なくとも一方に接していてもよい。また、圧電体層30と、第1導電層10および第2導電層20の少なくとも一方と、の間には、他の層が形成されてもよい。この場合の他の層としては、たとえば圧電体層30の結晶の配向を制御するための配向制御層(たとえばチタン層)などが挙げられる。
図示の例では、圧電体層30は、第1導電層10および第2導電層20に接して設けられている、圧電体層30の厚さは、たとえば、100nm以上2000nm以下とすることができる。圧電体層30の厚みがこの範囲を外れると、十分な変形(電気機械変換)が得られなくなる場合がある。
また、圧電体層30は、少なくとも鉛、ジルコニウム、チタンおよび酸素を含む複合酸化物を含む。圧電体層30に含まれる複合酸化物としては、一般式ABOで示される酸化物(たとえば、Aは、Pbを含み、Bは、ZrおよびTiを含む。)が挙げられる。より具体的には、チタン酸ジルコン酸鉛(Pb(Zr,Ti)O)(以下これを「PZT」と略記することがある)、ニオブ酸チタン酸ジルコン酸鉛(Pb(Zr,Ti,Nb)O)(以下これを「PZTN」と略記することがある。)などが挙げられる。このような複合酸化物は、いずれも式中、Aサイトの酸化物とBサイトの酸化物の固溶体を形成することができる。そして、このような複合酸化物は、結晶化により、ペロブスカイト型の結晶構造をとることができる。複合酸化物は、結晶化されて、ペロブスカイト型の結晶構造をとることにより、圧電性を呈することができる。これにより、圧電体層30は、第1導電層10および第2導電層20によって電界が印加されることで変形することができる(電気機械変換)。この変形によって、たとえば基板1をたわませたり振動させたりすることができる。
圧電体層30は、第1結晶層32および第2結晶層34を有する。
第1結晶層32は、圧電体層30の第1導電層10側の端に形成される。第1結晶層32の厚みは、特に限定されないが、5nm以上200nm以下とすることが好ましい。
第1結晶層32の機能としては、圧電体層30の結晶性を向上させること、圧電体層30の下方の部材(本実施形態では第1導電層10)の影響が第2結晶層34に及びにくくすること、および圧電体層30の結晶の欠陥を減少させること、などが挙げられる。
第2結晶層34は、第1結晶層32に連続し、第1結晶層32よりも第2導電層20側に配置される。第2結晶層34の厚みは、特に限定されないが、50nm以上2000nm以下とすることが好ましい。第2結晶層34の機能としては、第1結晶層32の圧電体層30の結晶性の向上作用をさらに補うこと、圧電体層30全体の結晶性を向上させること、および圧電体層30の結晶の欠陥を減少させること、などが挙げられる。
また、第1結晶層32および第2結晶層34の合計の厚みは、圧電体層30の厚みと一致していてもよい。なお、第1結晶層32および第2結晶層34の合計の厚みは、圧電体層30の厚みに対して、20分の1以上3分の1以下であることがより好ましい。第1結晶層32および第2結晶層34の合計の厚みが、このような範囲にあると、圧電素子100の耐久性の向上および変位量の向上の両立をさらに容易に図ることができる。
第1結晶層32および第2結晶層34は、たとえば、圧電体層30を製造するときに原料の塗布および焼成(結晶化)を複数回繰り返して積層すること、原料の塗布および焼成(結晶化)を複数回繰り返して積層する際に、各層の間にTi層、Zr層、Pb層などを追加すること、および圧電体層30を製造するときの焼成時の雰囲気の酸素分圧、焼成温度を変化させること、の少なくとも一種によって形成されることができる。なお、圧電体層30にTi層、Zr層、Pb層を焼成前に追加した場合でも、焼成後、圧電体層30の材質はPZTとなり得、焼成前にこれらの層が存在していた部位に形成されるPZTの結晶は、組成が化学量論組成付近でゆらいだものとなる。
第1結晶層32および第2結晶層34は、それぞれ複合酸化物の結晶を含んでおり、これらの結晶は、第1結晶層32および第2結晶層34の界面において連続的に形成されている。第1結晶層および第2結晶層の界面では、結晶の組成の揺らぎ等が生じており、このような揺らぎによって第1結晶層および第2結晶層の境界が画定されることができる。
そして、本実施形態の圧電素子100では、圧電体層30の鉛の濃度は、第1結晶層32の第1導電層10側のほうが、第2結晶層34の第2導電層20側よりも低く、かつ、圧電体層30の酸素の濃度は、第1結晶層32の第1導電層10側のほうが、第2結晶層34の第2導電層20側よりも高い。なお、図示しないが、第1結晶層32および第2結晶層34の厚みが圧電体層30の厚みと同一である場合には、圧電体層30の鉛の濃度は、圧電体層30の第1導電層10側の端のほうが、圧電体層30の第2導電層20側の端よりも低く、かつ、圧電体層30の酸素の濃度は、圧電体層30の第1導電層10側の端のほうが、圧電体層30の第2導電層20側の端よりも高い。
ここで、圧電体層30における各元素の濃度は、厚み方向分析により測定される。厚み方向分析は、たとえば、オージェ分光分析法(AES)、走査型透過型電子顕微鏡によるエネルギー分散型X線分析法(STEM−EDS)、透過型電子顕微鏡による電子エネルギーロス分析法(STEM−EELS、TEM−EELS等)、X線光電子分光(XPS)、および二次イオン質量分析(SIMS)などにより行われる。そして、圧電体層30の厚み方向の濃度のプロファイル(デプスプロファイル)として表現される。また、厚み方向分析の定量性を高めるために、必要に応じてラザフォード後方散乱分光法(RBS)などを併用して行われる。
また、第1結晶層32の第1導電層10側の端における酸素の濃度および第2結晶層34の第2導電層20側の端における酸素の濃度の差は、4.7原子%以上8.7原子%以下とすると、圧電体層30の全体の結晶の質がより良好となるためさらに好ましい。
1.4.作用効果等
本実施形態の圧電素子100は、圧電体層30の第1導電層10側の端に第1結晶層32および第2結晶層34が形成されている。そして、圧電体層30の鉛の濃度が、第1結晶層32の第1導電層10側のほうが、第2結晶層34の第2導電層20側よりも低く、かつ、圧電体層30の酸素の濃度が、第1結晶層32の第1導電層10側のほうが、第2結晶層34の第2導電層20側よりも高くなっている。そのため、圧電体層30の全体にわたって複合酸化物の結晶性が良好となっている。これにより、圧電素子100の変位量を大きくすることができ、動作特性を向上させることができる。また、本実施形態の圧電素子100は、圧電体層30の結晶性が良好であるため、繰り返し駆動されたときの耐久性に優れている。
2.圧電素子の製造方法
本発明の圧電素子は、たとえば、以下のように製造することができる。
まず、基板1を準備し、基板1上に第1導電層10を形成する。第1導電層10は、たとえば、スパッタ法、めっき法、真空蒸着法などにより形成されることができる。第1導電層10は、必要に応じてパターニングされることができる。
次に、第1導電層10の上に、圧電体層30を形成する。圧電体層30は、たとえば、ゾルゲル法、CVD(Chemical Vapor Deposition)法、MOD(Metal Organic Deposition)法、スパッタ法、レーザーアブレーション法などにより形成されることができる。ここで圧電体層30の材質が、たとえば、PZTである場合、酸素雰囲気で650℃ないし750℃程度の焼成を行うことにより、圧電体層30を結晶化することができる。なお、結晶化は、圧電体層30をパターニングした後に行ってもよい。
本実施形態では、圧電体層30は、上記の操作を少なくとも2回繰り返して形成される。このようにすることで、第1結晶層32および第2結晶層34を形成することができる。これにより圧電体層30全体の結晶性および結晶の質を向上させることができる。なお、第1結晶層32は、第1導電層10に接して形成され、2層目の上記操作により第2結晶層34が形成される。なお、本実施形態では、さらに上記操作が行われて圧電体層30が形成されるが、第2結晶層34は、第1結晶層32に連続する2層目で形成されたものを指している。
次に、圧電体層30の上に第2導電層20を形成する。第2導電層20は、たとえば、スパッタ法、めっき法、真空蒸着法などにより形成されることができる。そして、所望の形状に第2導電層20および圧電体層30をパターニングして、圧電素子を形成する。なお第2導電層20および圧電体層30は、必要に応じて同時にパターニングされることができる。以上例示した工程により、本発明の圧電素子を製造することができる。
3.実験例および参考例
以下に実験例および参考例を示し、本発明をより具体的に説明する。なお、本発明は、以下の実験例によってなんら限定されるものではない。
3.1.圧電素子の作成
各実験例および参考例の圧電素子は、以下のように作成した。まず、シリコン基板を用意し、第1導電層10としてイリジウムをスパッタにより成膜してパターニングした。各実験例の圧電体層30は、いずれもゾルゲル法によって作成した。第1導電層10の上に、スピンコート法によって、PZTの原料溶液を塗布した。この原料溶液は、実験例ごとに異なる配合を有するものとした。また、スピンコートにおいては、エッジリンスを主溶媒にて行い、スピン速度は、1500rpmとした。
塗布された原料溶液を大気中、100℃で3分間、および、大気中、160℃で3分間乾燥させ、溶媒を除去した。次いで、大気中、400℃で3分間熱処理して、原料溶液中の有機成分を除去した(脱脂)。そして、酸素雰囲気中、740℃で5分間焼成してPZTからなる圧電体層の1層目(第1結晶層32)を得た。この時点における焼成後の第1結晶層32の厚みは、各実験例においていずれも約130nmであった。その後、第1結晶層32の上に、同様の方法を行って、2層目の圧電体層(第2結晶層34)を形成した。3層目以降についても同様の操作を行った。2層目以降の圧電体層の厚みは約300nmとなるようにした。そのため、第1結晶層32および第2結晶層34の合計の厚みは、約430nmとなっている。このように、合計5層が積層され、結晶化された圧電体層30を形成した。圧電体層30の全体の厚みは約1330nmであった。
この後、第2導電層20として、イリジウムをスパッタにより成膜し、第2導電層20および圧電体層30をパターニングして実験例1および実験例2の圧電素子を作成した。
ゾルゲル法における原料溶液は、酢酸鉛、Zr(CHCOCHCOCH、およびTi[OCH(CHの混合溶液であり、溶媒としてブチルセロソルブを用いた。原料溶液の組成は、各実験例について、原料溶液に含まれる元素の濃度として、表1の「原料における各元素の濃度(仕込量)」の欄に記載したとおりである。
実験例1は、圧電体層30の原料溶液における鉛原子の過剰量が18%である。ここで過剰量とは、PZTが理想的なペロブスカイト型構造を採った場合の化学量論組成、すなわち、Pb(Zr,Ti)Oにおける鉛の分率(濃度)を1(100%)としたときに、1を超えて配合された量である。すなわち、実験例1は、鉛原子の数が、Zr原子およびTi原子の数の合計よりも18%多く配合された原料溶液を用いて作成されている。同様に、実験例2は、圧電体層30の原料溶液における鉛原子の過剰量が28%である。また、同様に、参考例は、圧電体層30の原料溶液における鉛原子の過剰量が8%である。なお、以下、原料溶液における鉛原子の過剰量を、単に「Pb過剰量」と表記する。
3.2.圧電体層の分析
図2および図3は、それぞれ実験例1および実験例2の圧電素子の第1導電層10および圧電体層30の界面近傍をRBS(ラザフォード後方散乱分光法)/AES(オージェ電子分光法)で測定した結果に基づくデプスプロファイルである。RBS法は標準試料不要で深さ方向の定量組成分布を得ることができるが、単独での厚膜測定(本電極構成でのPZT限界膜厚は100nm程度)や電極との界面近傍の組成分布に関しては判定が難しい。そこで、各実験例では深さ分解能の高いAESと定量精度が高いRBSを併用し、相対感度因子を決定することで、横軸(深さ分解能)と縦軸(定量精度)を両立させることとした。相対感度因子は、AESの安定領域(選択エッチングによる影響が少ない)の平均ピーク強度と、RBSから求めた組成の比、これを規格化した値である。この方法は、各元素単独で組成プロファイルが出せる訳ではなく、全ての元素のピーク強度と相対感度因子が必要であり、相対的な濃度プロファイルとなる。第1導電層10と圧電体層30との界面近傍のPZTから求めた相対感度因子をPZT厚膜(500nm程度)に適用して、以下の式1に基づき、厚膜の深さ方向の濃度プロファイルを求めた。
元素Aの濃度=(元素Aのピーク強度/相対感度因子)/Σ(各元素のピーク強度/相対感度因子)×100・・・・(1)
図2および図3の各元素のデプスプロファイルをみると、圧電体層30と第1導電層10の界面(第1結晶層32の第1導電層10側の端)(図中Aと符号を付し、以下この界面を界面Aと称することがある。)、第1結晶層32と第2結晶層34の界面、および第2結晶層34の第2導電層20側に隣り合う圧電体層30との界面(第2結晶層34の第2導電層20側の端)(図中Bと符号を付し、以下この領域を界面Bと称することがある。)のそれぞれにおいて、各元素の濃度変動が生じていることがわかる。
そして、得られたプロファイル(図2および図3)から、実験例1および実験例2の圧電素子における界面Aおよび界面Bの各元素の濃度をそれぞれ計測した。これらの値は、第1結晶層32の第1導電層10側の端、および第2結晶層34の第2導電層20側の端の位置における組成に相当する。
表1の結果から、実験例1および実験例2は、いずれも、鉛の濃度が、第1結晶層32の第1導電層10側(界面A)のほうが、第2結晶層34の第2導電層20側(界面B)よりも低く、かつ、圧電体層30の酸素の濃度は、第1結晶層32の第1導電層10側(界面A)のほうが、第2結晶層34の第2導電層20側(界面B)よりも高くなっていることがわかる。具体的には、実験例1では、鉛の濃度が、第1結晶層32の第1導電層10側で14.9原子%、第2結晶層34の第2導電層20側で24.7原子%であり、かつ、圧電体層30の酸素の濃度は、第1結晶層32の第1導電層10側で66原子%、第2結晶層34の第2導電層20側で57.3原子%であった。また、実験例2では鉛の濃度が、第1結晶層32の第1導電層10側で21.8原子%、第2結晶層34の第2導電層20側で26.8原子%であり、かつ、圧電体層30の酸素の濃度は、第1結晶層32の第1導電層10側で60.9原子%、第2結晶層34の第2導電層20側で56.2原子%であった。
なお、参考例では、鉛の濃度が、第1結晶層32の第1導電層10側で0原子%、第2結晶層34の第2導電層20側で0原子%であり、かつ、圧電体層30の酸素の濃度は、第1結晶層32の第1導電層10側で66.6原子%、第2結晶層34の第2導電層20側で66.6原子%であった。そのため、参考例の圧電素子は、鉛の濃度が、第1結晶層32の第1導電層10側のほうが、第2結晶層34の第2導電層20側よりも低く、かつ、圧電体層30の酸素の濃度は、第1結晶層32の第1導電層10側のほうが、第2結晶層34の第2導電層20側よりも高いという関係を有していなかった。なお参考例の複合酸化物のEDSによる定量性については、実験例におけるRBS/AESの定量値を基に補正して求めた。
また、表1をみると、実験例1および実験例2のいずれも、PZTの各元素の相対的な比率は、仕込み時のPb過剰量によって変化していることがわかる。すなわち、Pb過剰量が18%から28%に増加すると、第2結晶層34の第2導電層20側の端(界面B)においてはチタンに対するジルコニウムの比(Zr/Ti)が1.5から2.3に増加(+53%)し、Pb以外の組成にも影響を与えていることがわかる。また、仕込み時のPb過剰量は、酸素の濃度にも影響を与えており、実験例1および実験例2における、第1結晶層32の第1導電層10側(界面A)と、第2結晶層34の第2導電層20側(界面B)における酸素の濃度の差は、それぞれ、8.7原子%および4.7原子%であった。
図4にPb過剰量が8%(参考例)、18%(実験例1)、および28%(実験例2)のSTEM(走査透過電子顕微鏡)−EDS(エネルギー分散型X線分光)分析により得た断面組成マップ像を示す。図4をみると、圧電体層を焼成するときの層毎に、各元素において周期的な濃度分布が生じていることがわかる。特に、Pb過剰量8%(参考例)では、第1導電層10へのPb拡散は見られず、第2結晶層34の第2導電層20側の端(界面B)ではPbの固溶を伴わないZrO(比誘電率50程度)の偏析が認められる。さらに、圧電体層30と第1導電層10の界面(第1結晶層32の第1導電層10側の端)(界面A)では、Pbの固溶を伴わないルチル型TiO(比誘電率100程度)の偏析が確認された。STEM−EDSから求めた参考例のPZT組成は、表1に合わせて記載した。なお、参考例のSTEM−EDSの各元素についての断面組成マップ像は、図4に合わせて記載されている。
図5ないし図7には、実験例1、実験例2および参考例の圧電素子の、第1導電層10および圧電体層30(第1結晶層32)の界面付近の断面を高分解能TEM観察した結果を示す。図5および図6をみると、Pb過剰量が18%(実験例1)および28%(実験例2)では、第1導電層10および圧電体層30(第1結晶層32)の界面(界面A)付近に十分にPbが供給され、当該界面付近に異層が形成されていない良好なペロブスカイト構造を構築できていることがわかる。一方、図7に示すように、鉛過剰量が8%(参考例)では第1導電層10および圧電体層30(第1結晶層32)の界面付近へのPbの供給が不十分となり、ルチル型TiO(比誘電率100程度)の偏析が認められた。
3.3.圧電素子の評価
図8はPb過剰量と、変位量の変化率との関係を示している。この評価は、圧電素子の作成直後の変位量に対する、1億回のパルス(第1導電層10を−電位とし、第2導電層20を+電位とした、−2Vから+30Vの矩形波)を印加した後の変位量の変化率を求め、Pb過剰量に対してプロットしたものである。なお、変化率は、小さいほど圧電素子が良好な耐久性を有しているといえる。
図8をみると、少なくともPb過剰量が18%(図中、実験例1と記載)よりも大きい範囲では、変化率が4%よりも小さく抑えられていることが分かる。また、実験例2のPb過剰量が28%においては、変化率が3%よりも小さく抑えられていることが分かる。そして例えば、規格値として、変化率を5%とした場合には、Pb過剰量が18%よりも大きい範囲であれば十分に規格を満足することができることが分かる。また、図8によると、最適値をとるPb過剰量が22%である圧電素子では、変化率が0.2%に抑えられていることがわかる。
図9は、Pb過剰量に対して、圧電体層30に外部からの印加電圧が到達している割合(分圧)をプロットしたグラフである。図9には、圧電素子を作成した直後における分圧(グラフ中、黒い○印で表示)と、1億回のパルス(第1導電層10を−電位とし、第2導電層20を+電位とした、−2Vから+30Vの矩形波)を印加した後の分圧(グラフ中、×印で表示)をプロットした。Pb過剰量が18%の場合(実験例1)耐久試験前後で5.5%の分圧低下が確認されたが、Pb過剰量が8%の場合(参考例)は、分圧の低下が著しく、16.8%程度の分圧低下が生じていることがわかる。参考例の結果は、PZT中のPb濃度が化学量論組成(20原子%)に対して少ないことに起因し、低誘電率層化した部位に電界が集中して分圧が低下したものと考えられる。この低誘電率層は、図7に示した高分解能TEM観察結果から、ルチル型TiOの層であると考えることができる。
図10は、実験例1、実験例2および参考例について、圧電体層30と第1導電層10の界面(第1結晶層32の第1導電層10側の端)(界面A)および第2結晶層34の第2導電層20側の端(界面B)における各元素の濃度を、Pb過剰量に対してプロットしたグラフである。Pb過剰量8%(参考例)では、界面Aに、TiO、界面BにZrOが偏析し、低誘電率層が形成されている。このことは、参考例の圧電素子が、上記変位量の変化率(図8参照)が大きいこと、および上記分圧が小さいこと(図9参照)の一因となっていることを示していると考えられる。なお、Pb過剰量が18%(実験例1)と28%(実験例2)では、界面に異層は形成されていない(図5および図6参照)。
以上の実験例および参考例は、Pb過剰量を変化させることによって第1結晶層32および第2結晶層34における鉛の濃度および酸素の濃度を変化させ、耐久性を検証した例であるが、第1結晶層32および第2結晶層34は、たとえば、焼成温度、チタン層等の他の層の介在、および第1導電層10や第2導電層20の材質などによっても、その態様を変化させることができる。さらに、上記の実験例および参考例では、第1結晶層32および第2結晶層34は、分析結果において、明確な境界を有していたが、両者は必ずしも明確な境界を有していなくてもよい。
本発明の圧電素子は、第1結晶層32および第2結晶層34を作成する態様に依存するものではない。すなわち、本発明の圧電素子は、いずれの方法によって圧電体層30が形成されても、圧電体層30が第1結晶層32および第2結晶層34を有し、かつ、上述した濃度の関係を有する限り、上述の作用効果を奏することができる。
4.液体噴射ヘッド
次に、本発明にかかる圧電素子が圧電アクチュエーターとして機能する液体噴射ヘッド600について、図面を参照しながら説明する。図11は、液体噴射ヘッド600の要部を模式的に示す断面図である。図12は、液体噴射ヘッド600の分解斜視図であり、通常使用される状態とは上下を逆に示したものである。
液体噴射ヘッド600は、上述の圧電素子(圧電アクチュエーター)を有することができる。以下の例では、基板1(上部が振動板1aとなっている構造体)の上に圧電素子100が形成され、圧電アクチュエーター102を有する液体噴射ヘッド600について説明する。
液体噴射ヘッド600は、図11および図12に示すように、ノズル孔612を有するノズル板610と、圧力室622を形成するための圧力室基板620と、圧電素子100と、を含む。さらに、液体噴射ヘッド600は、図12に示すように、筐体630を有することができる。なお、図12では、圧電素子100を簡略化して図示している。
ノズル板610は、図11および図12に示すように、ノズル孔612を有する。ノズル孔612からは、インクが吐出されることができる。ノズル板610には、たとえば、多数のノズル孔612が一列に設けられている。ノズル板620の材質としては、たとえば、シリコン、ステンレス鋼(SUS)などを挙げることができる。
圧力室基板620は、ノズル板610上(図12の例では下)に設けられている。圧力室基板620の材質としては、たとえば、シリコンなどを例示することができる。圧力室基板620がノズル板610と振動板1aとの間の空間を区画することにより、図12に示すように、リザーバー(液体貯留部)624と、リザーバー624と連通する供給口626と、供給口626と連通する圧力室622と、が設けられている。すなわち、リザーバー624、供給口626および圧力室622は、ノズル板610と圧力室基板620と振動板1aとによって区画されている。リザーバー624は、外部(たとえばインクカートリッジ)から、振動板1aに設けられた貫通孔628を通じて供給されるインクを一時貯留することができる。リザーバー624内のインクは、供給口626を介して、圧力室622に供給されることができる。圧力室622は、振動板1aの変形により容積が変化する。圧力室622はノズル孔612と連通しており、圧力室622の容積が変化することによって、ノズル孔612からインク等が吐出される。
圧電素子100は、圧力室基板620上(図12の例では下)に設けられている。圧電素子100の積層構造は、圧電素子駆動回路(図示せず)に電気的に接続され、圧電素子駆動回路の信号に基づいて動作(振動、変形)することができる。振動板1aは、積層構造(圧電体層30)の動作によって変形し、圧力室622の内部圧力を適宜変化させることができる。
筐体630は、図12に示すように、ノズル板610、圧力室基板620および圧電素子100を収納することができる。筐体630の材質としては、たとえば、樹脂、金属などを挙げることができる。
液体噴射ヘッド600は、上述した結晶性の良好な圧電体層30を有する圧電素子100を含んでいる。したがって液体噴射ヘッド600は、耐久性の高いものとなっている。
なお、ここでは、液体噴射ヘッド600がインクジェット式記録ヘッドである場合について説明した。しかしながら、本発明の液体噴射ヘッドは、たとえば、液晶ディスプレイ等のカラーフィルターの製造に用いられる色材噴射ヘッド、有機ELディスプレイ、FED(面発光ディスプレイ)等の電極形成に用いられる電極材料噴射ヘッド、バイオチップ製造に用いられる生体有機物噴射ヘッドなどとして用いられることもできる。
5.液体噴射装置
次に、本実施形態にかかる液体噴射装置について、図面を参照しながら説明する。図13は、本実施形態にかかる液体噴射装置700を模式的に示す斜視図である。液体噴射装置700は、本発明にかかる液体噴射ヘッドを有する。以下では、液体噴射装置700が上述の液体噴射ヘッド600を有するインクジェットプリンターである場合について説明する。
液体噴射装置700は、図13に示すように、ヘッドユニット730と、駆動部710と、制御部760と、を含む。さらに、液体噴射装置700は、装置本体720と、給紙部750と、記録用紙Pを設置するトレイ721と、記録用紙Pを排出する排出口722と、装置本体720の上面に配置された操作パネル770と、を含むことができる。
ヘッドユニット730は、上述した液体噴射ヘッド600から構成されるインクジェット式記録ヘッド(以下単に「ヘッド」ともいう)を有する。ヘッドユニット730は、さらに、ヘッドにインクを供給するインクカートリッジ731と、ヘッドおよびインクカートリッジ731を搭載した運搬部(キャリッジ)732と、を備える。
駆動部710は、ヘッドユニット730を往復動させることができる。駆動部710は、ヘッドユニット730の駆動源となるキャリッジモーター741と、キャリッジモーター741の回転を受けて、ヘッドユニット730を往復動させる往復動機構742と、を有する。
往復動機構742は、その両端がフレーム(図示せず)に支持されたキャリッジガイド軸744と、キャリッジガイド軸744と平行に延在するタイミングベルト743と、を備える。キャリッジガイド軸744は、キャリッジ732が自在に往復動できるようにしながら、キャリッジ732を支持している。さらに、キャリッジ732は、タイミングベルト743の一部に固定されている。キャリッジモーター741の作動により、タイミングベルト743を走行させると、キャリッジガイド軸744に導かれて、ヘッドユニット730が往復動する。この往復動の際に、ヘッドから適宜インクが吐出され、記録用紙Pへの印刷が行われる。
制御部760は、ヘッドユニット730、駆動部710および給紙部750を制御することができる。
給紙部750は、記録用紙Pをトレイ721からヘッドユニット730側へ送り込むことができる。給紙部750は、その駆動源となる給紙モーター751と、給紙モーター751の作動により回転する給紙ローラー752と、を備える。給紙ローラー752は、記録用紙Pの送り経路を挟んで上下に対向する従動ローラー752aおよび駆動ローラー752bを備える。駆動ローラー752bは、給紙モーター751に連結されている。制御部760によって供紙部750が駆動されると、記録用紙Pは、ヘッドユニット730の下方を通過するように送られる。
ヘッドユニット730、駆動部710、制御部760および給紙部750は、装置本体720の内部に設けられている。
液体噴射装置700は、耐久性の高い液体噴射ヘッド600を有する。したがって液体噴射装置700の信頼性は高いものとなっている。
以上、本発明にかかる液体噴射装置の一例として、インクジェットプリンターとしてのインクジェット記録装置700を説明したが、本発明にかかる液体噴射装置は、工業的にも利用することができる。この場合に吐出される液体(液状材料)としては、各種の機能性材料を溶媒や分散媒によって適当な粘度に調整したものなどを用いることができる。本発明の液体噴射装置は、例示したプリンター等の画像記録装置以外にも、液晶ディスプレー等のカラーフィルターの製造に用いられる色材噴射装置、有機ELディスプレー、FED(面発光ディスプレー)、電気泳動ディスプレー等の電極やカラーフィルターの形成に用いられる液体材料噴射装置、バイオチップ製造に用いられる生体有機材料噴射装置としても好適に用いられることができる。
なお、上述した実施形態および変形は、それぞれ一例であって、本発明は、これらに限定されるわけではない。たとえば各実施形態および各変形等は、複数を適宜組み合わせることが可能である。
本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、さらに種々の変形が可能である。たとえば、本発明は、実施形態で説明した構成と実質的に同一の構成(たとえば、機能、方法および結果が同一の構成、あるいは目的および効果が同一の構成)を含む。また、本発明は、実施形態で説明した構成の本質的でない部分を置き換えた構成を含む。また、本発明は、実施形態で説明した構成と同一の作用効果を奏する構成または同一の目的を達成することができる構成を含む。また、本発明は、実施形態で説明した構成に公知技術を付加した構成を含む。
1…基板、1a…振動板、10…第1導電層、20…第2導電層、30…圧電体層、32…第1結晶層、34…第2結晶層、100…圧電素子、102…圧電アクチュエーター、600…液体噴射ヘッド、610…ノズル板、612…ノズル孔、620…圧力室基板、622…圧力室、624…リザーバー、626…供給口、628…貫通孔、630…筐体、700…液体噴射装置、710…駆動部、720…装置本体、721…トレイ、722…排出口、730…ヘッドユニット、731…インクカートリッジ、732…キャリッジ、741…キャリッジモーター、742…往復動機構、743…タイミングベルト、744…キャリッジガイド軸、750…給紙部、751…給紙モーター、752…給紙ローラー、752a…従動ローラー、752b…駆動ローラー、760…制御部、770…操作パネル

Claims (7)

  1. 第1導電層と、
    前記第1導電層に対向して配置された第2導電層と、
    前記第1導電層および前記第2導電層の間に配置され、少なくとも鉛、ジルコニウム、チタンおよび酸素を含む複合酸化物によって形成された圧電体層と、
    を含み、
    前記圧電体層は、前記圧電体層の前記第1導電層側の端に配置された第1結晶層と、前記第1結晶層に連続し、前記第1結晶層よりも前記第2導電層側に配置された第2結晶層と、を含み、
    前記圧電体層の鉛の濃度は、前記第1結晶層の前記第1導電層側のほうが、前記第2結晶層の前記第2導電層側よりも低く、
    前記圧電体層の酸素の濃度は、前記第1結晶層の前記第1導電層側のほうが、前記第2結晶層の前記第2導電層側よりも高い、圧電素子。
  2. 請求項1において、
    前記第1結晶層の前記第1導電層側の酸素の濃度は、前記第2結晶層の前記第2導電層側の酸素の濃度よりも、4.7原子%以上8.7原子%以下の範囲で高い、圧電素子。
  3. 請求項1または請求項2において、
    前記圧電体層の各元素の濃度は、ラザフォード後方散乱法およびオージェ電子分光法を併用し、相対感度因子を決定し、該相対感度因子を用いて測定された、圧電素子。
  4. 請求項1ないし請求項3のいずれか一項において、
    前記第1結晶層および前記第2結晶層の合計の厚みは、前記圧電体層の厚みの20分の1以上3分の1以下である、圧電素子。
  5. 請求項1ないし請求項4のいずれか一項に記載された圧電素子と、
    前記第1導電層または前記第2導電層に接して設けられ、可撓性を有する振動板と、
    を含む、圧電アクチュエーター。
  6. 請求項5に記載された圧電アクチュエーターと、
    ノズル孔と連通し、前記圧電アクチュエーターの動作によって容積が変化する圧力室と、
    を含む、液体噴射ヘッド。
  7. 請求項6に記載された液体噴射ヘッドを含む、液体噴射装置。
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