JP2011183238A - 担持酸化ルテニウムの製造方法および塩素の製造方法 - Google Patents

担持酸化ルテニウムの製造方法および塩素の製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】熱安定性や触媒寿命に優れた担持酸化ルテニウムの製造方法を提供することにある。また、この方法により得られた担持酸化ルテニウムを用いて、長時間にわたり安定して塩素を製造する方法を提供することにある。
【解決手段】担持酸化ルテニウム触媒の製造方法であって、チタニア担体をケイ素化合物を含む酸性水溶液と接触処理した後、酸化性ガス雰囲気下で第1の焼成を行い、次いでルテニウム化合物を含む水溶液と接触処理した後、酸化性ガス雰囲気下で第2の焼成を行うことを特徴とする。こうして製造された担持酸化ルテニウムを触媒として用い、この触媒の存在下に塩化水素を酸素で酸化することにより、塩素を製造する。
【選択図】なし

Description

本発明は、酸化ルテニウムが担体に担持されてなる担持酸化ルテニウムを製造する方法に関する。また、本発明は、この方法により製造された担持酸化ルテニウムを触媒に用いて塩化水素を酸素で酸化することにより、塩素を製造する方法にも関係している。
担持酸化ルテニウムは、塩化水素を酸素で酸化して塩素を製造するための触媒として有用であり、その製造方法として、例えば、特許文献1及び2には、ルテニウム化合物を酸化チタン担体に担持した後、焼成し、次いでアルコキシシラン化合物やシロキサン化合物等のケイ素化合物を担持させ、その後、酸化する、具体的には空気中で焼成する方法が記載され、特許文献3には、ケイ素化合物のエタノール溶液を酸化チタンに含浸させた後、焼成することでシリカを酸化チタン担体に担持した後、次いでルテニウム化合物を担持させ、その後、酸化する、具体的には空気中で焼成する方法が提案されている。
特開2002−292279号公報 特開2004−074073号公報 特開2008−155199号公報
しかしながら、上記従来の製造方法により得られる担持酸化ルテニウムは、長時間酸化反応に用いられる等の熱負荷が掛かると、担体や担体に担持された酸化ルテニウムが焼結(シンタリング)する傾向があり、かかる焼結が起こると触媒活性が低下するため、触媒寿命の点で必ずしも満足のいくものではなかった。そこで、本発明の目的は、かかる焼結を抑制し、熱安定性や触媒寿命に優れた担持酸化ルテニウムを、製造工程において有機物の使用を低減し、より簡便で安定的に低コストで生産できる製造方法を提供することにある。また、この方法により得られた担持酸化ルテニウムを用いて、長時間にわたり安定して塩素を製造する方法を提供することにある。
本発明者は鋭意検討を行った結果、担持酸化ルテニウム触媒の製造において、チタニア担体をケイ素化合物を含む酸性水溶液と接触処理した後、酸化性ガス雰囲気下で第1の焼成を行い、次いでルテニウム化合物を含む水溶液と接触処理した後、酸化性ガス雰囲気下で第2の焼成を行うことにより、上記目的を達成しうることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、チタニア担体をケイ素化合物を含む酸性水溶液と接触処理した後、酸化性ガス雰囲気下で第1の焼成を行い、次いでルテニウム化合物を含む水溶液と接触処理した後、酸化性ガス雰囲気下で第2の焼成を行うことを特徴とする担持酸化ルテニウムの製造方法を提供するものである。
また、本発明によれば、上記方法により製造された担持酸化ルテニウムの存在下で、塩化水素を酸素で酸化することにより、塩素を製造する方法も提供される。
本発明によれば、熱安定性や触媒寿命に優れた担持酸化ルテニウムを安定的に低コストで製造することができ、こうして得られる担持酸化ルテニウムを触媒に用いて、塩化水素を酸素で酸化することにより、塩素を製造することができる。
以下、本発明を詳細に説明する。本発明の担持酸化ルテニウムは、酸化ルテニウム及びシリカがチタニア担体に担持されてなる担持酸化ルテニウムである。かかるチタニア担体は、ルチル型チタニア(ルチル型の結晶構造を有するチタニア)やアナターゼ型チタニア(アナターゼ型の結晶構造を有するチタニア)、非晶質のチタニア等からなるものであることができ、また、これらの混合物からなるものであってもよい。本発明では、ルチル型チタニア及び/又はアナターゼ型チタニアからなるチタニア担体が好ましく、中でも、チタニア担体中のルチル型チタニア及びアナターゼ型チタニアに対するルチル型チタニアの比率(以下、ルチル型チタニア比率ということがある。)が20%以上のチタニア担体が好ましく、30%以上のチタニア担体がより好ましく、90%以上のチタニア担体がさらにより好ましい。ルチル型チタニア比率が高くなるほど、得られる担持酸化ルテニウムの触媒活性もより良好となる。上記ルチル型チタニア比率は、X線回折法(以下XRD法)により測定でき、以下の式(1)で示される。
ルチル型チタニア比率[%]=〔I/(I+I)〕×100 (1)
:ルチル型チタニア(110)面を示す回折線の強度
:アナターゼ型チタニア(101)面を示す回折線の強度
尚、チタニア担体中にナトリウムやカルシウムが含まれていると、それらの含量が多いほど、得られる担持酸化ルテニウムの触媒活性が低くなる傾向があるので、ナトリウム含有量は200重量ppm以下であるのが好ましく、また、カルシウム含有量は200重量ppm以下であるのが好ましい。また、ナトリウム以外のアルカリ金属や、カルシウム以外のアルカリ土類金属も、得られる担持酸化ルテニウムの触媒活性に悪影響を及ぼしうるので、全アルカリ金属の含有量が200重量ppm以下であるのがより好ましく、また、全アルカリ土類金属の含有量が200重量ppm以下であるのがより好ましい。これらアルカリ金属やアルカリ土類金属の含有量は、例えば、誘導結合高周波プラズマ発光分光分析(以下、ICP分析ということがある。)、原子吸光分析、イオンクロマトグラフィー分析等で測定することができ、好ましくはICP分析で測定する。尚、チタニア担体の中にアルミナ、ジルコニア、酸化ニオブなどの酸化物が含まれていてもよい。
チタニア担体の比表面積は、窒素吸着法(BET法)で測定することができ、通常BET1点法で測定する。該測定により得られる比表面積は、通常5〜300m/gであり、好ましくは5〜50m/gである。比表面積が高すぎると、得られる担持酸化ルテニウムにおけるチタニアや酸化ルテニウムが焼結しやすくなり、熱安定性が低くなることがある。一方、比表面積が低すぎると、得られる担持酸化ルテニウムにおける酸化ルテニウムが分散しにくくなり、触媒活性が低くなることがある。
チタニア担体には、粉末状やゾル状のチタニアを混練、成形し、次いで焼成したものを用いることができる。チタニア担体は、公知の方法に基づいて調製することができ、例えば、チタニア粉末やチタニアゾルを、有機バインダー等の成形助剤及び水と混練し、ヌードル状に押出成形した後、乾燥、破砕して成形体を得、次いで得られた成形体を空気等の酸化性ガス雰囲気下で焼成することで調製できる。
こうして得られるチタニア担体にシリカを担持させる方法としては、チタニア担体にケイ素化合物を担持させた後、酸化性ガスの雰囲気下で焼成する方法が挙げられる。
前記ケイ素化合物としては、Si(OR)(以下、Rは炭素数1〜4のアルキル基を表す。)の如きケイ素アルコキシド化合物、塩化ケイ素(SiCl)、臭化ケイ素(SiBr)の如きハロゲン化ケイ素、SiCl(OR)、SiCl(OR)、SiCl(OR)の如きケイ素ハロゲン化物アルコキシド化合物、水酸化ケイ素化合物等が挙げられる。また、必要に応じて、その水和物を用いてもよいし、それらの2種以上を用いてもよい。本発明では、中でも、ケイ素アルコキシド化合物が好ましく、ケイ素テトラエトキシド、すなわちオルトケイ酸テトラエチル〔Si(OC〕がより好ましい。ケイ素化合物の使用量は、チタニア1モルに対し、通常0.001〜0.3モルであり、好ましくは0.002〜0.15モル、より好ましくは0.004〜0.03モルである。
チタニア担体にケイ素化合物を担持させる方法としては、チタニア担体をケイ素化合物を含む酸性水溶液と接触処理する方法が挙げられる。接触処理において、処理時の温度は、通常0〜100℃、好ましくは0〜50℃であり、処理時の圧力は通常0.1〜1MPa、好ましくは大気圧である。また、かかる接触処理は、空気雰囲気下や、窒素、ヘリウム、アルゴン、二酸化酸素の如き不活性ガス雰囲気下で行うことができ、この際、水蒸気を含んでいてもよい。
接触処理としては、含浸又は浸漬が挙げられる。前記酸性水溶液と接触処理する方法として、例えば、(A)チタニア担体にケイ素化合物を含む酸性水溶液を含浸させる、(B)チタニア担体をケイ素化合物を含む酸性水溶液に浸漬させる等の方法が挙げられるが、前記(A)の方法が好ましい。
前記酸性水溶液において、ケイ素化合物として水への溶解度が低いケイ素アルコキシド化合物及び/又はケイ素ハロゲン化物アルコキシド化合物を使用する場合、それらのケイ素化合物は酸性水溶液中で加水分解されて溶解する。前記酸性水溶液を使用する際には、ケイ素化合物が酸性水溶液に溶解して1相の透明で均一な溶液となってから使用することが好ましい。ケイ素化合物を含む酸性水溶液が1相の透明で均一な溶液となっていることの確認は、目視によって行えば十分である。但し、均一溶液になってからさらに攪拌を続けた場合や、長時間混合温度付近で放置した場合、前記酸性水溶液に不溶なシリカが生成することがある。このような液を使用してチタニア担体との接触処理を行うと、所定量のシリカをチタニア担体に担持できないといった問題や、担体上にシリカが不均一に担持される恐れがあり、その結果、担持酸化ルテニウム触媒の熱安定性が不十分となる。そのため、前記酸性水溶液が均一溶液になったのを確認した後は、すみやかに攪拌を止め、すみやかに前記接触処理に使用することが望ましい。前記酸性水溶液を保存する場合は凍らない程度に冷却して密閉保存することが望ましい。
ケイ素化合物を含む酸性水溶液が1相の透明で均一な溶液となるまでの混合時間は、酸性水溶液に含まれる酸のケイ素化合物に対する使用量や、混合温度によって調整できる。酸のケイ素化合物に対する使用量が多すぎる場合や、混合温度が高すぎる場合には、混合液に不溶なシリカが生成して白濁し、目的の均一溶液を得ることができないことがある。後述する酸の適正使用量において、安定的に加水分解を進行させるためには、混合温度は60℃以下が好ましく、40℃以下がさらに好ましい。
前記酸性水溶液に含まれる酸としては、塩化水素、硝酸等のように、一分子中に遊離可能な水素イオンを1個有する無機酸や、硫酸等のように、一分子中に遊離可能な水素イオンを2個有する無機酸や、リン酸等のように、一分子中に遊離可能な水素イオンを3個有する無機酸や、メタンスルホン酸、トリフルオロ酢酸等のように、一分子中に遊離可能な水素イオンを1個有する有機酸等を挙げることができ、水に可溶であることが必要である。また、酸が担持酸化ルテニウム触媒の表面上に残存していると活性の低下を引き起こす可能性があるため、後述する乾燥、第1の焼成により、触媒上から酸は除去されることが好ましい。したがって、その際の除去が簡便に行える酸を使用することが望ましく、例えば、ケイ素化合物をチタニア担体に担持させた後に行う、後述する第1の焼成時の焼成温度よりも沸点が低い酸を使用することが望ましい。但し、該焼成温度よりも沸点の高い酸を使用する場合でも、焼成後に適切に洗浄を行い、酸を除去できれば問題ないが、工程が増加、複雑化するため好ましくない。以上の点を考慮すると、前記酸としては、塩化水素が最も好ましい。
前記酸性水溶液に含まれる酸としては、装置の腐食を引き起こす可能性や酸性水溶液に不溶なシリカの生成を促進させる可能性を考慮すると、極力使用量が少ないことが望ましい。しかしながら、その使用量が少なすぎると、担持酸化ルテニウム触媒の性能が低下するといったことや、酸性水溶液が1相の透明で均一な溶液となるまでの混合時間が非常に長くなり効率が低下することがある。上記した40℃以下という混合温度条件において、ルテニウム化合物及びケイ素化合物の酸性水溶液に含まれる酸の使用量は、該水溶液の調製に使用されるケイ素化合物1モルに対して、酸から遊離可能な水素イオン量に換算して好ましくは0.0003〜3.5モルであり、さらに好ましくは0.003〜0.35モルである。酸から遊離可能な水素イオン量は、以下の式(2)で示される。
酸から遊離可能な水素イオン量[モル]=酸の使用量[モル]×酸から遊離可能な水素イオンの数[−]×混合温度における酸の解離度[−] (2)
ケイ素化合物の酸性水溶液に含まれる水としては、蒸留水、イオン交換水、超純水などの純度の高い水が好ましい。使用する水に不純物が多く含まれると、かかる不純物が触媒に付着して、触媒の活性を低下させる場合がある。水の使用量は、前記酸性水溶液に含まれるケイ素化合物1モルに対して、通常0.7〜5000モル、好ましくは1.5〜2500モル、より好ましくは7〜1500モルである。チタニア担体にケイ素化合物を担持させるのに最低限必要な水の量は、使用するチタニア担体の総細孔容積から担持に使用する酸性水溶液に含まれるケイ素化合物及び酸の体積を除いた量である。
こうして、チタニア担体にケイ素化合物を担持させることができる。前記チタニア担体にケイ素化合物を担持させた後、通常、乾燥し、その後、酸化性ガスの雰囲気下で第1の焼成を行う。かかる乾燥方法としては、従来公知の方法を採用することができ、その温度は、通常、室温から100℃程度であり、その圧力は、通常0.001〜1MPa、好ましくは大気圧である。かかる乾燥は、空気雰囲気下や、窒素、ヘリウム、アルゴン、二酸化酸素の如き不活性ガス雰囲気下で行うことができ、この際、水蒸気を含んでいてもよい。取り扱いの観点から、上記不活性ガス雰囲気下で行うのが好ましい。
また前記第1の焼成により、担持されたケイ素化合物はシリカに変換される。酸化性ガスとは、酸化性物質を含むガスであり、例えば、酸素含有ガスが挙げられる。その酸素濃度は通常1〜30容量%程度である。この酸素源としては、通常、空気や純酸素が用いられ、必要に応じて不活性ガスで希釈される。酸化性ガスは、中でも、空気が好ましい。焼成温度は、通常100〜1000℃、好ましくは250〜450℃である。
前記第1の焼成により、前記チタニア担体にシリカを担持することができる。最終的に得られる担持酸化ルテニウムを酸化反応触媒に使用する場合は、前記第1の焼成後にケイ素化合物が全てシリカとなっている必要はなく、一部アルコキシド基や加水分解されたケイ素化合物が残存していても、該酸化反応の際にシリカに変換されるので問題は無い。
また、前記酸性水溶液には、必要に応じて、後述するルテニウム化合物が含まれていてもよい。すなわち、チタニア担体への酸化ルテニウムの担持をシリカの担持とともに行い、その後で以下に述べる酸化ルテニウムの担持を行うことにより、二段階で酸化ルテニウムを担持することができる。
上記のようにチタニア担体にシリカを担持し、次いで、酸化ルテニウムを担持する。シリカを担持したチタニア担体に酸化ルテニウムを担持させる方法としては、シリカを担持したチタニア担体にルテニウム化合物を担持させた後、酸化性ガスの雰囲気下で焼成して調製する方法が挙げられる。
前記ルテニウム化合物としては、例えば、RuCl、RuBrの如きハロゲン化物、KRuCl、KRuClの如きハロゲノ酸塩、KRuOの如きオキソ酸塩、RuOCl、RuOCl、RuOClの如きオキシハロゲン化物、K[RuCl(HO)]、[RuCl(HO)]Cl、K[RuOCl10]、Cs[RuOCl]の如きハロゲノ錯体、[Ru(NHO]Cl、[Ru(NH3)Cl]Cl、[Ru(NH]Cl、[Ru(NH]Cl、[Ru(NH]Brの如きアンミン錯体、Ru(CO)、Ru(CO)12の如きカルボニル錯体、[RuO(OCOCH(HO)]OCOCH、[Ru(OCOR)]Cl(R=炭素数1〜3のアルキル基)の如きカルボキシラト錯体、K[RuCl(NO)]、[Ru(NH(NO)]Cl、[Ru(OH)(NH(NO)](NO、[Ru(NO)](NOの如きニトロシル錯体、ホスフィン錯体、アミン錯体、アセチルアセトナト錯体等が挙げられる。中でもハロゲン化物が好ましく用いられ、特に塩化物が好ましく用いられる。尚、ルテニウム化合物としては、必要に応じて、その水和物を使用してもよいし、また、それらの2種以上を使用してもよい。
ルテニウム化合物とチタニア担体の使用割合は、後述する第2の焼成後に得られる担持酸化ルテニウム中の酸化ルテニウム/チタニア担体の重量比が、通常0.1/99.9〜20/80、好ましくは0.3/99.7〜10/85、より好ましくは0.5/99.5〜5/95となるように、適宜調整すればよい。酸化ルテニウムがあまり少ないと触媒活性が十分でないことがあり、あまり多いとコスト的に不利となる。加えて、チタニア担体に担持されたシリカ1モルに対し担持酸化ルテニウム中の酸化ルテニウムのモル数が0.1〜4モルとなるようにルテニウム化合物の使用量を調整するのが好ましく、0.3〜2モルとなるように調整するのがより好ましい。シリカ1モルに対する酸化ルテニウムのモル数が高すぎると、担持酸化ルテニウムの熱安定性が低くなることがあり、低すぎると、触媒活性が低くなることがある。上述したように、二段階で酸化ルテニウムの担持を行う場合、前記酸化ルテニウム/チタニア担体の重量比及び前記酸化ルテニウムのモル数は、二段階の合計でそれぞれ前記範囲となるようにルテニウム化合物の使用量を調整すればよい。
シリカを担持したチタニア担体にルテニウム化合物を担持させる方法としては、チタニア担体をルテニウム化合物を含む水溶液と接触処理する方法が挙げられる。接触処理において、処理時の温度は、通常0〜100℃、好ましくは0〜50℃であり、処理時の圧力は通常0.1〜1MPa、好ましくは大気圧である。また、かかる接触処理は、空気雰囲気下や、窒素、ヘリウム、アルゴン、二酸化酸素の如き不活性ガス雰囲気下で行うことができ、この際、水蒸気を含んでいてもよい。
接触処理としては、含浸又は浸漬が挙げられる。前記酸性水溶液と接触処理する方法として、(C)ルテニウム化合物を含む水溶液をチタニア担体に含浸させる方法や、(D)チタニア担体をルテニウム化合物を含む水溶液に浸漬させて、ルテニウム化合物を吸着させる方法等が挙げられるが、前記(C)の方法が好ましい。また、該水溶液には、必要に応じて、前記ケイ素化合物及び/又は前記酸が含まれていてもよい。尚、ルテニウム化合物の担持後は必要に応じて、例えば特開2000−229239号公報、特開2000−254502号公報、特開2000−281314号公報、特開2002−79093号公報等に記載される如く還元処理を行ってもよい。
ルテニウム化合物を含む水溶液に含まれる水としては、蒸留水、イオン交換水、超純水などの純度の高い水が好ましい。使用する水に不純物が多く含まれると、かかる不純物が触媒に付着して、触媒の活性を低下させる場合がある。水の使用量は、前記水溶液に含まれるルテニウム化合物1モルに対して、通常1.5〜8000モル、好ましくは3〜2500モル、より好ましくは7〜1500モルである。チタニア担体にルテニウム化合物を担持させるのに最低限必要な水の量は、使用するチタニア担体の総細孔容積から担持に使用する酸性水溶液に含まれるルテニウム化合物の体積を除いた量である。
シリカを担持したチタニア担体にルテニウム化合物を担持させた後、酸化性ガスの雰囲気下で第2の焼成を行う。かかる焼成により、担持されたルテニウム化合物は酸化ルテニウムに変換される。酸化性ガスとは、酸化性物質を含むガスであり、例えば、酸素含有ガスが挙げられる。その酸素濃度は通常1〜30容量%程度である。この酸素源としては、通常、空気や純酸素が用いられ、必要に応じて不活性ガスで希釈される。酸化性ガスは、中でも、空気が好ましい。焼成温度は、通常100〜500℃、好ましくは200〜350℃である。
前記第2の焼成により、シリカを担持したチタニア担体に酸化ルテニウムを担持することができ、本発明の担持酸化ルテニウムが得られる。担持されている酸化ルテニウムにおけるルテニウムの酸化数は、通常+4であり、酸化ルテニウムとしては二酸化ルテニウム(RuO)であるが、他の酸化数のルテニウムないし他の形態の酸化ルテニウムが含まれていてもよい。
本発明で製造される担持酸化ルテニウムにおいて、チタニア担体に担持されているシリカの被覆割合を、チタニア担体の比表面積に対するシリカの単分子被覆率θとして表すことができ、以下の式(3)で示される。
θ=am×A/S×100 (3)
θ:単分子被覆率[%]
S:チタニア担体の比表面積[m/g]
A:酸化ルテニウム及びシリカがチタニア担体に担持されてなる担持酸化ルテニウムにおける、チタニア担体1g当たりに担持されているシリカの分子数[個/g]
m:シリカの分子占有面積〔=0.139×10−18[m/個]〕
尚、上記シリカの分子占有面積amは、以下の式(4)から求められる値である。
m=1.091(M/(Nd))2/3 (4)
:シリカの分子量〔=60.07[g/mol]〕
N:アボガドロ数〔=6.02×1023[個]〕
d:シリカの真密度〔=2.2×10[g/m]〕
上記単分子被覆率θは、通常10〜200%であり、好ましくは10〜150%であり、さらに好ましくは40〜140%である。即ち、このような値となるように、チタニア担体調製時にケイ素化合物等の使用量を適宜調整する。かかる単分子被覆率θが低すぎると、担持酸化ルテニウムにおけるチタニアや酸化ルテニウムが焼結しやすくなり、熱安定性が低くなることがある。また、単分子被覆率θが高すぎると、ルテニウム化合物がチタニア上に担持されにくくなり、得られる担持酸化ルテニウムの触媒活性が低くなることがある。
かくして製造される担持酸化ルテニウムを触媒に用い、この触媒の存在下で塩化水素を酸素で酸化することにより、塩素を効率的に製造することができる。反応方式としては、流動床、固定床、移動床等の反応方式が採用可能であり、断熱方式又は熱交換方式の固定床反応器が好ましい。断熱方式の固定床反応器を用いる場合には、単管式固定床反応器、多管式固定床反応器のいずれも使用することができるが、単管式固定床反応器を好ましく使用することができる。熱交換方式の固定床反応器を用いる場合には、単管式固定床反応器、多管式固定床反応器のいずれも使用することができるが、多管式固定床反応器を好ましく使用することができる。
この酸化反応は平衡反応であり、あまり高温で行うと平衡転化率が下がるため、比較的低温で行うのが好ましく、反応温度は、通常100〜500℃、好ましくは200〜450℃である。また、反応圧力は、通常0.1〜5MPa程度である。酸素源としては、空気を使用してもよいし、純酸素を使用してもよい。塩化水素に対する酸素の理論モル量は1/4モルであるが、通常、この理論量の0.1〜10倍の酸素が使用される。また、塩化水素の供給速度は、触媒1Lあたりのガス供給速度(L/h;0℃、1気圧換算)、すなわちGHSVで表して、通常10〜20000h−1程度である。
以上、本発明の好ましい実施形態を説明したが、本発明はかかる実施形態に限定されるものではない。
以下に本発明の実施例を示すが、本発明はこれらによって限定されるものではない。
実施例1
(担体の調製)
チタニア粉末〔昭和タイタニウム(株)製のF−1R、ルチル型チタニア比率93%〕100部と有機バインダー2部〔ユケン工業(株)製のYB−152A〕とを混合し、次いで純水29部、チタニアゾル〔堺化学(株)製のCSB、チタニア含有量40%〕12.5部を加えて混練した。この混合物を直径3.0mmφのヌードル状に押出し、60℃で2時間乾燥した後、長さ3〜5mm程度に破砕した。得られた成形体を、空気中で室温から600℃まで1.7時間かけて昇温した後、同温度で3時間保持して焼成し、白色のチタニア担体(比表面積:16m/g)を得た。
(担持酸化ルテニウムの製造)
50mlのガラス製サンプル瓶に1.0重量%塩酸10.33gとオルトケイ酸テトラエチル〔和光純薬工業(株)製のSi(OC〕1.70gを入れ溶液が透明で均一になるまで室温で攪拌を行った。尚、溶液が均一になるまでの時間は約1時間であった。得られた溶液(塩化水素から遊離可能な水素イオン量/オルトケイ酸テトラエチル=0.33(モル比))を2.42g計りとり、上記チタニア担体10.01gに含浸させた後、空気雰囲気下、室温で2日間乾燥した。得られた固体10.23gを、空気流通下、室温から300℃まで1.3時間かけて昇温した後、同温度で2時間保持して焼成し、シリカの含有量が0.98重量%である白色のシリカ担持チタニア10.05gを得た。
上記で得られたシリカ担持チタニアに、塩化ルテニウム水和物〔NEケムキャット(株)製のRuCl・nHO、Ru含有量40.0重量%〕0.243gを純水2.19gに溶解して調製した水溶液を含浸させ、空気雰囲気下、24℃で2日間乾燥した。得られた固体10.38gを、空気流通下、室温から250℃まで1.1時間かけて昇温した後、同温度で2時間保持して焼成し、シリカの含有量が0.96重量%、酸化ルテニウムの含有量が1.25重量%である青灰色の担持酸化ルテニウム10.19gを得た。
(担持酸化ルテニウムの熱安定性試験)
上記で得られた担持酸化ルテニウム1.2gを、石英製反応管(内径21mm)に充填した。この中に、塩化水素ガスを0.086mol/h(0℃、1気圧換算で1.9L/h)、及び酸素ガスを0.075mol/h(0℃、1気圧換算で1.7L/h)、塩素ガスを0.064mol/h(0℃、1気圧換算で1.4L/h)、水蒸気を0.064mol/h(0℃、1気圧換算で1.4L/h)の速度で常圧下に供給し、触媒層を435〜440℃に加熱して反応を行った。反応開始50時間後の時点で、反応を停止し、窒素ガスを0.214mol/h(0℃、1気圧換算で4.8L/h)の速度で供給しながら冷却した。
(熱安定性試験後の担持酸化ルテニウムの活性評価)
上記熱安定性試験に付された担持酸化ルテニウム1.2gのうち、1.0gを分取し、直径2mmのα−アルミナ球〔ニッカトー(株)製のSSA995〕12gで希釈し、ニッケル製反応管(内径14mm)に充填し、さらに反応管のガス入口側に上と同じα−アルミナ球12gを予熱層として充填した。この中に、塩化水素ガスを0.214mol/h(0℃、1気圧換算で4.8L/h)、及び酸素ガスを0.107mol/h(0℃、1気圧換算で2.4L/h)の速度で常圧下に供給し、触媒層を282〜283℃に加熱して反応を行った。反応開始1.5時間後の時点で、反応管出口のガスを30%ヨウ化カリウム水溶液に流通させることによりサンプリングを20分間行い、ヨウ素滴定法により塩素の生成量を測定し、塩素の生成速度(mol/h)を求めた。この塩素の生成速度と上記の塩化水素の供給速度から、下式より塩化水素の転化率を計算し、表1に示した。
塩化水素の転化率(%)=〔塩素の生成速度(mol/h)×2÷塩化水素の供給速度(mol/h)〕×100
比較例1
(担体の調製)
実施例1と同様の方法で白色のチタニア担体を得た。
(担持酸化ルテニウムの製造)
上記で得られたチタニア担体10.00gに、オルトケイ酸テトラエチル〔和光純薬工業(株)製のSi(OC〕0.357gをエタノール1.65gに溶解して調製した溶液を含浸させ、空気雰囲気下、室温で1日間乾燥した。得られた固体10.08gを、空気流通下、室温から300℃まで1.3時間かけて昇温した後、同温度で2時間保持して焼成し、シリカの含有量が1.02重量%である白色のシリカ担持チタニア10.05gを得た。得られたシリカ担持チタニアに、塩化ルテニウム水和物〔NEケムキャット(株)製のRuCl・nHO、Ru含有量40.0重量%〕0.243gを純水2.25gに溶解して調製した水溶液を含浸させ、空気雰囲気下、24℃で1日間乾燥した。得られた固体10.53gを、空気流通下、室温から250℃まで1.3時間かけて昇温した後、同温度で2時間保持して焼成し、シリカの含有量が1.01重量%、酸化ルテニウムの含有量が1.25重量%である青灰色の担持酸化ルテニウム10.14gを得た。
(担持酸化ルテニウムの評価)
得られた担持酸化ルテニウムに対して、実施例1と同様に、熱安定性試験、該試験後の活性評価を行った。結果を表1に示した。
比較例2
(担体の調製)
実施例1と同様の方法で白色のチタニア担体を得た。
(担持酸化ルテニウムの製造)
上記で得られたチタニア担体20.01gに、塩化ルテニウム水和物〔NEケムキャット(株)製のRuCl・nHO、Ru含有量40.0重量%〕0.487gを純水4.29gに溶解して調製した水溶液を含浸させ、空気雰囲気下、室温で2日間乾燥した。得られた固体の内10.02gを、空気流通下、室温から250℃まで1.1時間かけて昇温した後、同温度で2時間保持して焼成し、酸化ルテニウムの含有量が1.27重量%である青灰色の酸化ルテニウム担持チタニア9.83gを得た。得られた酸化ルテニウム担持チタニアに、オルトケイ酸テトラエチル〔和光純薬工業(株)製のSi(OC〕0.355gをエタノール1.62gに溶解して調製した溶液を含浸させ、空気雰囲気下、室温で1日間乾燥した。得られた固体を、空気流通下、室温から300℃まで1.3時間かけて昇温した後、同温度で2時間保持して焼成し、シリカの含有量が1.00重量%、酸化ルテニウムの含有量が1.25重量%である青灰色の担持酸化ルテニウム9.50gを得た。
(担持酸化ルテニウムの評価)
得られた担持酸化ルテニウムに対して、実施例1と同様に、熱安定性試験、該試験後の活性評価を行った。結果を表1に示した。
比較例3
(担体の調製)
実施例1と同様の方法で白色のチタニア担体を得た。
(担持酸化ルテニウムの製造)
上記で得られたチタニア担体チタニア担体10.00gに、塩化ルテニウム水和物〔NEケムキャット(株)製のRuCl・nHO、Ru含有量40.0重量%〕0.243g及びオルトケイ酸テトラエチル〔和光純薬工業(株)製のSi(OC〕0.360gをエタノール1.62gに溶解して調整した溶液を含浸させ、空気雰囲気下、室温で2日間乾燥し、10.54gの茶色の固体が得られた。得られた固体の内2.51gを、空気流通下、室温から250℃まで1.1時間かけて昇温した後、同温度で2時間保持して焼成し、シリカの含有量が1.01重量%、酸化ルテニウムの含有量が1.25重量%である青灰色の担持酸化ルテニウム2.47gを得た。
(担持酸化ルテニウムの評価)
得られた担持酸化ルテニウムに対して、実施例1と同様に、熱安定性試験、該試験後の活性評価を行った。結果を表1に示した。
比較例4
(担体の調製、担持酸化ルテニウムの製造とその評価)
(担持酸化ルテニウムの製造)において室温から250℃まで1.1時間かけて昇温したところを室温から300℃まで1.3時間かけて昇温した以外は、比較例3と同様の方法で、担持酸化ルテニウムを製造した。得られた担持酸化ルテニウムに対して、実施例1と同様に、熱安定性試験、該試験後の活性評価を行った。結果を表1に示した。
比較例5
(担体の調製、担持酸化ルテニウムの製造とその評価)
(担持酸化ルテニウムの製造)において室温から250℃まで1.1時間かけて昇温したところを室温から350℃まで1.5時間かけて昇温した以外は、比較例3と同様の方法で、担持酸化ルテニウムを製造した。得られた担持酸化ルテニウムに対して、実施例1と同様に、熱安定性試験、該試験後の活性評価を行った。結果を表1に示した。
比較例6
(担体の調製)
実施例1と同様の方法で白色のチタニア担体を得た。
(担持酸化ルテニウムの製造)
50mlのガラス製サンプル瓶に0.10重量%塩酸2.17gを入れ、そこに塩化ルテニウム水和物〔NEケムキャット(株)製のRuCl・nHO、Ru含有量40.0重量%〕0.240gを溶解させ、得られた溶液を上記チタニア担体10.01gに含浸させた後、空気雰囲気下、室温で2日間乾燥し、10.22gの茶色の固体が得られた。得られた固体の内5.00gを、空気流通下、室温から250℃まで1.1時間かけて昇温した後、同温度で2時間保持して焼成し、酸化ルテニウムの含有量が1.25重量%である青灰色の担持酸化ルテニウム4.87gを得た。
(担持酸化ルテニウムの評価)
得られた担持酸化ルテニウムに対して、実施例1と同様に、熱安定性試験、該試験後の活性評価を行った。結果を表1に示した。
Figure 2011183238
TEOS:オルトケイ酸テトラエチル

Claims (9)

  1. 酸化ルテニウム及びシリカがチタニア担体に担持されてなる担持酸化ルテニウムの製造方法であって、チタニア担体をケイ素化合物を含む酸性水溶液と接触処理した後、酸化性ガス雰囲気下で第1の焼成を行い、次いでルテニウム化合物を含む水溶液と接触処理した後、酸化性ガス雰囲気下で第2の焼成を行うことを特徴とする担持酸化ルテニウムの製造方法。
  2. 前記酸性水溶液に含まれる酸の使用量が、前記ケイ素化合物1モルに対して、該酸から遊離可能な水素イオン量に換算して0.0003〜3.5モルである請求項1に記載の担持酸化ルテニウムの製造方法。
  3. 前記第1の焼成を、前記酸性水溶液に含まれる酸の沸点以上であり、かつ250〜450℃の温度で行い、前記第2の焼成を200〜350℃の温度で行う請求項1又は2に記載の担持酸化ルテニウムの製造方法。
  4. 前記酸性水溶液に含まれる酸が塩化水素である請求項1〜3のいずれかに記載の担持酸化ルテニウムの製造方法。
  5. 前記酸性水溶液がルテニウム化合物を含有する請求項1〜4のいずれかに記載の担持酸化ルテニウムの製造方法。
  6. 前記ケイ素化合物がケイ素アルコキシド化合物である請求項1〜5のいずれかに記載の担持酸化ルテニウムの製造方法。
  7. 前記ケイ素アルコキシド化合物がオルトケイ酸テトラエチルである請求項6に記載の担持酸化ルテニウムの製造方法。
  8. 前記担持酸化ルテニウムにおけるシリカの単分子被覆率がチタニア担体の比表面積に対して10〜150%である請求項1〜7のいずれかに記載の担持酸化ルテニウムの製造方法。
  9. 請求項1〜8のいずれかに記載の方法により製造された担持酸化ルテニウムの存在下で、塩化水素を酸素で酸化することを特徴とする塩素の製造方法。
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