JP5589239B2 - 担持酸化ルテニウムの製造方法および塩素の製造方法 - Google Patents
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本発明の担持酸化ルテニウムの製造方法は、次の(1)〜(3)の工程を備える。
(1)チタニア、アルミナおよびシリカからなる群から選択される1種以上を含む担体に、ルテニウム化合物含有液を担持する担持工程、
(2)ルテニウム化合物含有液が担持された担体を減圧下で乾燥させる乾燥工程、および
(3)乾燥工程で得られるルテニウム化合物が担持された担体を焼成する工程。
以下、各工程について詳細に説明する。
本工程で用いられる担体は、チタニア(酸化チタン)、アルミナ(酸化アルミニウム)およびシリカ(二酸化ケイ素)からなる群から選択される1種以上を含むものであり、そのような担体としては、たとえばチタニア、アルミナまたはシリカからなる担体のほか、チタニアおよびアルミナからなる担体、チタニアおよびシリカからなる担体、チタニア、アルミナおよびシリカからなる担体などを挙げることができる。本工程で用いられる担体は、ジルコニア(酸化ジルコニウム)や酸化ニオブなどの他の酸化物を含んでいてもよい。
ここで、θは単分子被覆率[%]、Sはシリカ担持チタニア担体の比表面積[m2/g]、Aはシリカ担持チタニア担体1g当たりに担持されているシリカの分子数、amはシリカの分子占有面積〔=0.139×10-18[m2]〕である。
am=1.091(Mw/(Nd))2/3 (2)
ここで、Mwはシリカの分子量〔=60.07[g/mol]〕、Nはアボガドロ数〔=6.02×1023[個]〕、dはシリカの真密度〔=2.2[g/m3]〕である。
本工程では、ルテニウム化合物含有液が担持された担体を、減圧条件下で乾燥する。減圧下で乾燥を行なうことにより、担体中における担持されたルテニウム化合物の偏在(ムラ)を抑制でき、ルテニウム化合物が均一に担持された担体を得ることが可能になる。これにより、触媒活性および熱安定性に優れた担持酸化ルテニウムを得ることができる。また、減圧下での乾燥によれば、短時間での乾燥が可能であり、このような場合でも大気圧下での乾燥と異なり、触媒活性および熱安定性を高度に維持することができる。さらに、減圧下での乾燥は、大気圧下での乾燥と比較して、有機物等の危険性を有するガス(ルテニウム化合物含有液に含まれる溶媒など)の大気への漏洩を防止できる、該危険性を有するガスの無害化処理(不活性ガスによる希釈およびこれに用いられる不活性化ガスの循環設備など)を省略できるなど、製造面および安全衛生面において有利である。乾燥ムラをより少なくし、より均一な乾燥を達成するために、乾燥に用いる容器を回転させ、担体を流動させながら乾燥させたり、乾燥に用いる棚の層高を調節して乾燥させることもできる。
上記乾燥工程で得られたルテニウム化合物が担持された担体は、ついで焼成される。かかる焼成により、担持されたルテニウム化合物は酸化ルテニウムへと変換され、担持酸化ルテニウムが得られる。焼成は、酸化性ガスの雰囲気下で行なうのが好ましい。酸化性ガスとは、酸化性物質を含むガスであり、たとえば、酸素含有ガスが挙げられる。その酸素濃度は通常1〜30容量%程度である。この酸素源としては、通常、空気や純酸素が用いられ、必要に応じて不活性ガスで希釈される。酸化性ガスは、中でも、空気が好ましい。焼成温度は、通常100〜500℃、好ましくは200〜350℃である。
上記のようにして製造される担持酸化ルテニウムを触媒に用い、この触媒の存在下で塩化水素を酸素で酸化することにより、塩素を効率的に、かつ長期にわたって安定して製造することができる。本発明の方法によって製造される担持酸化ルテニウムは、優れた触媒活性および熱安定性を有しているため、これを触媒に用いた塩化水素酸化反応では、良好な転化率が長期にわたって持続される。
(1)担体の調製
チタニア(酸化チタン)50部〔堺化学(株)製のSTR−60R、100%ルチル型〕、α−アルミナ100部〔住友化学(株)製のAES−12〕、チタニアゾル13.2部〔堺化学(株)製のCSB、チタニア含有量38%〕、およびメチルセルロース2部〔信越化学(株)製のメトローズ65SH−4000〕を混合し、ついで純水を加えて混練した。この混合物を直径3.0mmφの円柱状に押出し、乾燥した後、長さ4〜6mm程度に破砕した。得られた成形体を空気中、800℃で3時間焼成し、チタニアとα−アルミナの混合物からなる担体を得た。
上記で得られた担体100gを300mlのナス型フラスコに仕込み、塩化ルテニウム水和物〔NEケムキャット(株)製のRuCl3・nH2O、Ru含有量40.0%〕3.87gを純水20.8gに溶解して調製した水溶液を、担体を仕込んだナス型フラスコを水平を軸として14rpmで回転させながら30分間で滴下することによりポアフィリング法で含浸した。その後、塩化ルテニウム水溶液が含浸された担体をロータリーエバポレーターを用いて14rpmで回転させながら乾燥させた。このとき、ナス型フラスコ内の圧力を約2.7kPa(20mmHg)、ナス型フラスコを加熱する温水バスの温度(乾燥温度)を50℃とし、塩化ルテニウム担持担体の含水率〔担体中の水分質量/塩化ルテニウム担持担体の質量(ドライベース)×100〕が4%以下となるまで1時間かけて乾燥した。
乾燥時の圧力、乾燥温度および乾燥時間を表1に示すように変更したこと以外は、実施例1と同様にして担持酸化ルテニウムを得た。
担持酸化ルテニウム1.0gを、直径2mmのα−アルミナ球〔ニッカトー(株)製のSSA995〕12gで希釈し、ニッケル製反応管(内径14mm)に充填し、さらに反応管のガス入口側に上と同じα−アルミナ球12gを予熱層として充填した。この中に、塩化水素ガスを0.214mol/h(0℃、1気圧換算で4.8L/h)、および酸素ガスを0.107mol/h(0℃、1気圧換算で2.4L/h)の速度で常圧下に供給し、触媒層を282〜283℃に加熱して反応を行なった。反応開始1.5時間後の時点で、反応管出口のガスを30%ヨウ化カリウム水溶液に流通させることによりサンプリングを20分間行ない、ヨウ素滴定法により塩素の生成量を測定し、塩素の生成速度(mol/h)を求めた。この塩素の生成速度と上記の塩化水素ガスの供給速度から、下式:
塩化水素の転化率(%)=〔塩素の生成速度(mol/h)×2÷塩化水素の供給速度(mol/h)〕×100
より塩化水素の転化率を計算した。塩化水素の転化率が高いほど初期活性が高いと評価できる。
まず、以下の手順で熱安定性試験を行なった。すなわち、担持酸化ルテニウム1.2gを、石英製反応管(内径21mm)に充填した。この中に、塩化水素ガスを0.086mol/h(0℃、1気圧換算で1.9L/h)、および酸素ガスを0.075mol/h(0℃、1気圧換算で1.7L/h)、塩素ガスを0.064mol/h(0℃、1気圧換算で1.4L/h)、水蒸気を0.064mol/h(0℃、1気圧換算で1.4L/h)の速度で常圧下に供給し、触媒層を375〜380℃に加熱して反応を行なった。反応開始50時間後の時点で反応を停止し、窒素ガスを0.214mol/h(0℃、1気圧換算で4.8L/h)の速度で供給しながら冷却した。
Claims (3)
- チタニア、アルミナおよびシリカからなる群から選択される1種以上を含む担体に、ルテニウム化合物含有液を担持する担持工程と、
ルテニウム化合物含有液が担持された担体を減圧下、温度0〜100℃で乾燥させる乾燥工程と、
前記乾燥工程で得られるルテニウム化合物が担持された担体を焼成する焼成工程と、
を含む担持酸化ルテニウムの製造方法。 - 前記乾燥工程において、前記ルテニウム化合物含有液が担持された担体は、13.3kPa以下の圧力下で乾燥される請求項1に記載の担持酸化ルテニウムの製造方法。
- 請求項1または2に記載の方法により製造された担持酸化ルテニウムの存在下で、塩化水素を酸素で酸化する工程を含む塩素の製造方法。
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