JP2011181170A - 磁気記録媒体用金属磁性粉末 - Google Patents

磁気記録媒体用金属磁性粉末 Download PDF

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Abstract

【課題】従来と同等の耐候性レベルを維持しながら、粒子体積の割に飽和磁化σsが大きい、高記録密度の塗布型磁気記録媒体に適した金属磁性粉末を提供する。
【解決手段】FeまたはFeとCoを主成分とする金属磁性相および酸化膜を有する粒子からなる粉末であって、その粉末粒子の平均長軸長が10〜50nm、酸化膜を含んだ平均粒子体積が5000nm3以下であり、粉末粒子中に含まれる各元素の含有量(原子%)の値を用いて算出される(R+Al+Si)/(Fe+Co)原子比が20%以下である磁気記録媒体用金属磁性粉末。ただし、Rは希土類元素(Yも希土類元素として扱う)である。この金属磁性粉末は錯化剤と還元剤を使用して焼成後に非磁性成分を溶出処理することにより得られる。
【選択図】図1

Description

本発明は、塗布型磁気記録媒体に用いられる強磁性金属粉末に関する。
コンピュータのデータバックアップ用途に代表される磁気記録媒体は、大容量化に伴い、より記録密度を高めることが必須とされている。高記録密度を達成させるためには、粒子体積の小さい磁性粉が必要とされている。本出願人においても、こうした趨勢に応えるべく、特許文献1に記載の製造方法をはじめとして、金属磁性粉末の製造技術の改良を種々行ってきた。
従来開示されている文献等にも記載されているように、金属磁性粉末は鉄を主成分とするものが代表的である。鉄系の金属磁性粉末は、工業的にはオキシ水酸化鉄もしくは酸化鉄を主体とした針状粉末にSiやAl、希土類元素、アルカリ土類金属元素といった焼結防止剤を含有させた後、還元する方法によって製造されるのが一般的である。
従来、磁性粉末の特性を改善するために、主として磁性粉末そのものの特性をいかに改善するか、または焼結を防止して、いかに分散性を改良するか、といった観点での検討がなされてきた。特許文献2〜5には、粒子の表面における希土類元素等の原子数割合を規定して、その範囲に含まれる磁性粒子を使用することによって、電磁変換特性に優れた磁気記録媒体が得られると開示されている。特に、特許文献5では単位表面積あたりの焼結防止剤量を規定しているが、粒子の癒着を防止し分散性を高め、磁気記録媒体の磁気特性および表面性を向上させるためには、規定値以上の焼結防止剤を含有させる必要があることを教示している。
磁気記録媒体の記録密度を高めるためには、単位体積あたりに含まれる磁性粒子の数を増やすことが必要であるため、微粒子化が必須である。例えば特許文献7、8には、できるだけ微粒子化された磁性粉末を使用する技術が示されている。微粒子化の方法としては、従来、磁性粒子を焼成・還元により合成するための原料物質(前駆体)の段階で微粒子化を図っておくことが一般的であるが、微粒子化された前駆体を焼成・還元に供すると粒子間焼結を起こしたり、粒子形状が崩れて軸比が低下したりする問題が一層生じやすい。そのため、前駆体には多量の焼結防止剤を含有させる必要があった。
ところが、焼結防止剤として使用される希土類元素やAl、Siは非磁性であるため、磁性粉末の単位体積あたりに含まれるそれら「非磁性成分」の割合が増大すると飽和磁化が低下する。特に磁性粉末を微粒子化するにあたっては、先に述べたように焼結防止剤の量を増やす必要があるため、単位体積あたりの焼結防止剤量が増大し、飽和磁化が著しく低下してしまうという問題があった。また、特許文献9には磁性粒子に圧縮脱気処理を施し、焼結や粒子間相互作用による結合を解きほぐすことによって、分散性を高める方法が記載されている。
一方で、微粒子化により粒子体積が小さくなると、一般に飽和磁化は低下する。その理由の一つとして、磁性粉末の耐候性を保持するためには粒子表面に一定の厚みを持った酸化膜を形成させる必要があるため、微粒子化すると相対的に金属部分の体積が減少してしまうことが挙げられる。金属磁性粉末の磁気特性を向上させるには、磁性を担う金属部分の体積比を高めることが有効であり、従来からそのような取り組みがなされている。ただしその手法は、酸化膜の厚みを調整することに主眼を置いたものであり、この場合、相対的に酸化膜が薄くなるため耐候性の低下を伴いやすいという問題があった。
特開平07−022224号公報 特開平06−215360号公報 特開平07−078331号公報 特開平07−184629号公報 特開2003−296915号公報 特開2005−101582号公報 特開2003−242624号公報 特開2005−259929号公報 特許第3043785号公報
上述のように、磁性粉末の微粒子化を図った場合には、焼結防止剤の添加量が相対的に増加すること、および耐候性を維持するために必要な酸化膜の量が相対的に増加することによる、磁気特性への悪影響が問題になりやすい。焼結防止剤の添加量を低減したり、酸化膜を薄くしたりする直接的な手法でこの問題を解消することは極めて困難である。
また、テープの配向性改善のためには、焼結を防止し、分散性を高めることが必須である。ところが微粒子化を進めていくと磁性粉の表面積が増大し、焼結しやすくなる。特に、発明者らの最近の検討によると、特許文献5に開示されているような手法を用いて粒子間焼結を抑制したとしても、ある程度の焼結防止効果は得られるが、とりわけ、微粒子である100nm以下の粒子径を有する磁性粉末の焼結防止剤の量を単純に増やしても粒子間焼結を完全に防止することは困難であることがわかってきた。さらに、焼結による粗大な凝集体が形成されることによって分散性が悪くなり、テープの配向特性が悪化する問題も生じ、焼結防止剤の量を増やすことによって非磁性成分が増大し、磁性粉単位体積あたりの磁化量が低下することで、テープ化した際のBrが低下してしまう問題もあった。
特許文献9に示すような圧縮加圧により凝集体を解きほぐす方法では、磁性粒子に機械的な圧力を加えるため磁性粒子が損傷され、磁気特性が悪化する問題があった。特に微粒子である100nm以下の粒子径を有する磁性粉末ではその傾向が著しいため、そのような方法をとることは得策ではないことがわかってきた。すなわち、微粒子である100nm以下の粒子径を有する磁性粉末では、従来からの経験則から、非磁性の焼結防止剤量の低減や分散性の向上が必要であることは認識されていたが、焼結防止剤を低減することは粒子同士の焼結を促し、微粒子であればその傾向が顕著となる。このため従来は微粒子化に伴った焼結防止剤の添加量を増やすことはあっても、焼結防止剤の添加量を減らすという、いわば理想的な手法を容易に採用することはできなかった。
ところが、焼結防止剤は焼成時あるいは加熱還元時の焼結を防止する目的で焼成前の原料に添加されるものであり、焼成や加熱還元を経て合成された金属磁性粉末中では既に役割を終えていることから、焼結防止剤の添加量を低減するのではなく、焼結防止剤に由来して金属磁性粉末中に含有されている「非磁性成分」を除去することができれば、焼結防止を達成しながら磁性を担う金属部分の相対的な量比を増大させることが可能になり、微粒子化に伴う飽和磁化の低下が抑制されるものと考えられる。また、塗布型磁気記録媒体におけるヘッド汚れの原因の一つとして、粒子表面に存在する焼結防止剤由来成分の影響も考えられ、この点からも当該非磁性成分を除去することは有効である。
さらに焼結防止剤は磁性粉末の表面近傍に偏析する。焼成・還元時における熱により、焼結防止剤が融解することによって、個々の粒子表面の焼結防止剤成分の癒着(ネッキング)が生じ、磁性粒子同士が凝集体を形成する。従って、表面近傍の焼結防止剤を除去することにより、ネッキングがほぐれて粒子間凝集が改善され、それによって磁性粉のバインダーに対する分散性が向上することが考えられる。
しかしながら、金属磁性粉末の粒子から焼結防止剤に由来する非磁性成分だけを効果的に除去することは必ずしも容易ではなく、その手法は未だ確立されていない。
本発明はこのような現状に鑑み、既に役割を終えている焼結防止剤由来の非磁性成分を金属磁性粉末の粒子から除去する技術を提供し、それによって、従来と同等の耐候性レベルを維持しながら、粒子体積の割に飽和磁化σs(Am2/kg)が大きい、高記録密度の塗布型磁気記録媒体に適した金属磁性粉末を提供すること、およびそれを用いた塗布型磁気記録媒体を提供することを目的とする。
上記目的は、FeまたはFeとCoを主成分とする金属磁性相および酸化膜を有する粒子からなる粉末であって、その粉末粒子の平均長軸長が10〜50nm、酸化膜を含んだ平均粒子体積が5000nm3以下であり、粉末粒子中に含まれる各元素の含有量(原子%)の値を用いて算出される(R+Al+Si)/(Fe+Co)原子比が20%以下であり、好ましくは前記非磁性成分の含有量が粉末の単位表面積当たり40μmol/m2以下である磁気記録媒体用金属磁性粉末によって達成される。
ここで、「(R+Al+Si)/(Fe+Co)原子比が20%以下」とは、下記(2)式が成立することを意味する。
(R+Al+Si)/(Fe+Co)×100≦20 ……(2)
ただし、各元素記号の箇所には原子%で表された当該元素の含有量が代入される。Rは希土類元素(Yも希土類元素として扱う)である。希土類元素、Al、Siの全てが含まれている必要はない。含有されていない元素については、(2)式においてゼロが代入される。
ここでは、希土類元素(Yも希土類元素として扱う)、AlおよびSiを「非磁性成分」という。「非磁性成分の含有量が粉末の単位表面積当たり40μmol/m2以下である」とは、下記(3)式が成立することを意味する。
[粉末1g当たりに含まれるR+Al+Siの総モル数](μmol/g)/[粉末のBET比表面積](m2/g)≦40 ……(3)
この金属磁性粉末は、水銀圧入法により測定される当該粉末の細孔分布において、細孔径が当該粉末の平均長軸長より大きい領域における細孔の累積容積が例えば1.0mL/g以下である。この、「細孔径が当該粉末の平均長軸長より大きい領域における細孔の累積容積」を、本明細書では「累積粒子間空隙」と呼んでいる。
また、この金属磁性粉末は、例えば飽和磁化σs(Am2/kg)と、酸化膜を含んだ平均粒子体積V(nm3)との間に下記(1)式の関係が成立する。
σs≧0.0185V+58 ……(1)
そして、当該金属磁性粉末を温度60℃、湿度90%の雰囲気下に1週間(168h)保持したときの飽和磁化の低下率Δσsが15%以下となるものが好適な対象となる。
飽和磁化の低下率Δσsは磁性粉末の耐候性を評価する指標であり、下記(4)式により定義される。
Δσs(%)=(σs(i)−σs(ii))/σs(i)×100 ……(4)
ただし、σs(i)は前記雰囲気に保持する前の飽和磁化(Am2/kg)、σs(ii)は前記雰囲気に168h保持した後の飽和磁化(Am2/kg)である。
このような金属磁性粉末は、前記比磁性成分を含有する焼成後あるいはさらに加熱還元後の金属磁性粉末に対し、錯化剤と還元剤を併用して非磁性成分を液中に溶出させる処理を施すことによって製造することができる。すなわち本発明では、FeまたはFeとCoを主成分とする金属磁性相を有し、前記非磁性成分の1種以上を含有する粒子からなる金属磁性粉末に対し、前記非磁性成分の少なくとも1種以上と錯体を形成しうる錯化剤が添加された液中において還元剤を作用させることにより、粉末粒子中の非磁性成分を液中に溶出させる工程(溶出処理工程)を有する磁気記録媒体用金属磁性粉末の製造法が提供される。前記溶出処理工程の後に、さらに、粉末粒子の表面に酸化膜を形成する工程(酸化処理工程)を採用することが望ましい。
ここで、錯化剤として、例えば酒石酸ナトリウムおよびクエン酸ナトリウムのうち1種または2種を使用することができる。また還元剤として、例えばヒドラジン(N22)、リチウムアルミニウムハイドライド(LiAlH4)、ナトリウムボロンハイドライド(NaBH4)およびその誘導体の1種以上を使用することができる。
本発明によれば、金属磁性粉末を製造する際に添加される焼結防止剤の「添加量」を低減するのではなく、焼成や加熱還元を経て得られた金属磁性粉末から役割を終えた焼結防止剤由来の非磁性成分を溶出させるという手段を採用したことにより、粒子の焼結を防止しながら磁性を担う金属元素の相対的な割合を増大させることができた。このため、本発明の金属磁性粉末は、微粒子化に伴う飽和磁化の低下が顕著に抑制されており、粒子体積が小さい割に、従来の金属磁性粉末よりも高い飽和磁化を呈する。粒子表面の焼結防止剤が顕著に除去されていることによって、焼結防止剤に起因した粒子間の結合(ネッキング)がはずれ、分散性が向上する。また、酸化膜を特段薄くするような措置を講じなくても微粒子化に伴う飽和磁化の低下が抑制されるので、耐候性が低下するという弊害も生じない。したがって本発明は、塗布型磁気記録媒体において昨今ますます厳しくなりつつある高記録密度化と耐候性向上(飽和磁化が高く維持される信頼性の向上)の要求に応えるものである。
各実施例および比較例で得られた金属磁性粉末について、平均粒子体積Vと飽和磁化σsの関係を示したグラフ。 溶出前サンプル3および実施例5の金属磁性粉末についての細孔分布のグラフ(縦軸を累積容積としたもの)。 溶出処理前後における金属磁性粉末の状態を模式的に示した図。
《金属磁性粉末》
本発明で対象とする磁性粉末は、「Fe」または「FeとCo」を主体とする金属磁性相をもつ粒子からなる金属磁性粉末である。すなわち、金属磁性相を構成する磁性元素(Fe、Co、Ni)のうち、「Fe」または「FeとCo」の占める原子割合が50%以上のものである。また、この粉末は酸化膜を有しており、酸化膜と金属磁性相を含めた粉末粒子全体に存在する元素のモル比において、Feに対するCoの割合(以下「Co/Fe原子比」という)が0〜50at%のものが対象となる。ここで、Co/Fe原子比は「Co含有量(at%)/Fe含有量(at%)×100」で表される。Co/Fe原子比が5〜45at%のものがより好ましく、10〜40at%のものが一層好ましい。このような範囲において安定した磁気特性が得られやすく、耐候性も良好になる。酸化膜は鉄酸化物が検出されるものであるが、その他の元素の酸化物が同時に存在していても構わない。
製造過程においては焼結防止剤として希土類元素(Yも希土類元素として扱う)、Al、Si等の「非磁性成分」が添加されるが、本発明の金属磁性粉末は後述の方法によってこれらの非磁性成分の溶出が図られているので、(R+Al+Si)/(Fe+Co)原子比が20at%以下になっている。すなわち、前記(2)式が成立している。このとき、従来の微粉化された金属磁性粉末と比べ、粒子体積の割に飽和磁化の大きい粉末が提供される。(R+Al+Si)/(Fe+Co)原子比は15at%以下であることがより好ましく、13at%以下、あるいはさらに12at%以下であることが一層好ましい。
粉末粒子を構成する元素のうち、Fe、Co、Ni、希土類元素(Yも希土類元素として扱う)、Al、SiおよびO以外にも、例えば、焼結防止剤等として添加されたアルカリ土類金属元素等、種々の元素が混入して構わない。本発明で対象とする粉末の組成として、Fe、Co、Ni、希土類元素(Yも希土類元素として扱う)、Al、SiおよびOを含有し、残部が不可避的不純物であるものが含まれる。
また、焼結防止剤に由来する非磁性成分の許容含有量範囲を、粉末の表面積に応じて規定することが望ましい。具体的には、前記非磁性成分の含有量が粉末の単位表面積当たり40μmol/m2以下であること、すなわち前記(3)式を満たすように非磁性成分の含有量が制限されていることが望ましい。これを外れて非磁性成分の含有量が多くなると、金属磁性粉末の飽和磁化が低下しやすく、それに起因して磁気記録媒体のC/Nが悪化しやすくなる。Fe、Co、Ni、希土類元素(Yも希土類元素として扱う)、Al、SiおよびO以外の含有元素を「X成分」と呼ぶとき、希土類元素、Al、SiおよびX成分の合計量が粉末の単位表面積当たり40μmol/m2以下に制限されていることが特に望ましく、30μmol/m2以下であることが一層好ましい。
粉末粒子のサイズに関しては、平均長軸長が10〜50nm、かつ平均粒子体積が5000nm3以下好ましくは4500nm3以下のものが対象となる。これより粒子サイズが大きいと、磁気テープの高記録密度化に十分対応することが難しくなる。この発明で言う長軸長とは、電子顕微鏡写真で観察される粒子において粒子画像の有する径のうち、もっとも長いものがこれにあたる。一方、写真により観察される粒子画像が楕円もしくは円である場合(長い部分の径(長径)と短い部分の径(短径)の比が1〜2近傍の場合)には、断面におけるもっとも長い径がここで言う長軸長にあたる。
また、本発明に従う粒子は、粒子間のネッキングが改善されるため、累積粒子間空隙が1.0mL/g未満であることを特徴とする。この累積粒子間空隙は、水銀圧入法により測定される細孔分布において、細孔径が平均長軸長よりも大きい領域における細孔容積の総和を意味する値である。つまり、細孔径が平均長軸長よりも小さい領域では、細孔径として計測されるのは、粒子の表層に存在する粒子の細孔そのものであるのに対し、平均長軸長よりも大きい領域において計測されるものは、粒子同士の重なりや融着によって生じる空間を表すものである。
ここで「平均長軸長」は前記の透過型電子顕微鏡画像から測定される個々の粒子(少なくとも300個)の長軸長を平均したものである。
したがって、細孔径が平均長軸長よりも大きい領域における空間が多いものは、粒子間のネッキングが多く、凝集体を形成している蓋然性が高い。このような凝集は、媒体化した際のパッキングの悪化、ひいては磁気記録媒体の特性悪化(粒子性ノイズの増大、角型比等の配向特性が悪化)につながる可能性がある。したがって、空隙は少なければ少ない方がよいが、本発明者らの知見によれば累積粒子間空隙が1.0mL/g未満、好ましくは0.9mL/g未満、より好ましくは0.8mL/g未満であるのがよい。累積粒子間空隙小さければ小さい方が好ましいが、空隙を完全にはなくすことは困難である(粒子同士の単純なかさなりの場合でも生じる)ので、算出される累積粒子間空隙は0mL/gよりも大きい値となる。累積粒子間空隙は粒子の形状によっても影響される。
粒子の形状としては、針状、紡錘状、平針状、粒状等の各種の形態が考えられる。特に平針状であると、粒子同士の積層が空間を生じることなく、理想的に構成されるため、無駄な空間が少なくなるので好ましい。
本発明の金属磁性粉末の磁気特性として、飽和磁化σs(Am2/kg)と、酸化膜を含んだ平均粒子体積V(nm3)との間に下記(1)式の関係が成立するものが特に好ましい対象となる。
σs≧0.0185V+58 ……(1)
このような磁性粉末は、粒子サイズが小さくても優れた飽和磁化を呈するものである。
また同時に、温度60℃、湿度90%の雰囲気下に1週間保持したときの飽和磁化の低下率Δσsが15%以下であるような良好な耐候性を兼ね備えていることが望ましい。
これらの特性を具備する金属磁性粉末は、高記録密度磁気記録媒体として極めて実用性が高い。
《金属磁性粉末の製造法》
焼結防止剤を添加した原料粉を焼成し、還元する段階までは一般的な金属磁性粉の製造法が採用できる。例えば、Coおよび焼結防止剤を含有するオキシ水酸化鉄を公知の方法により250〜700℃の温度で焼成し、α−Fe23等の鉄酸化物へと変化させる。その後、この鉄酸化物を気相還元によって加熱還元し、α−Feを主成分とする金属磁性粉末を得る。この金属磁性粉末を「還元後の中間製品」と呼ぶ。本発明の金属磁性粉末を得るには、前記還元後の中間製品に対して、焼結防止剤に由来する非磁性成分を溶出させる処理(溶出処理工程)を施す必要がある。溶出処理工程の後、酸化膜を形成する処理(酸化処理工程)に供することにより、本発明の金属磁性粉末が得られる。
〔溶出処理工程〕
溶出処理工程に供するための還元後の中間製品としては、表面に酸化膜を形成させたものも使用できるが、焼結防止剤由来成分の溶出効果を高めるために、酸化膜を形成させる処理を行っていない粉体を用意することが望ましい。
処理液として、還元後の中間製品に含まれている希土類元素(Yも希土類元素として扱う)、Al、Siのうち少なくとも1種以上と錯体を形成しうる化合物(錯化剤)を溶解させた溶液を準備する。錯化剤としては、とくに制限する必要はないが、無電解めっきで錯化剤として通常使用されている薬品、例えば酒石酸塩、クエン酸塩、リンゴ酸塩、乳酸塩等が容易に入手できる。錯化剤の濃度は0.01〜10mol/L程度とすればよい。必要に応じてpH緩衝効果のある物質、例えばアンモニウム塩などを添加してもよい。処理液の調製は室温付近の温度で行うことができる。
この処理液に、前記還元後の中間製品を添加する。粉末の添加量は、あまり多すぎると反応が不均一になる可能性があるが、通常、処理液1Lあたり1〜100g程度、好ましくは5〜50g程度とすることで良好な結果が得られる。液中において反応の均一性を維持するために、攪拌または強制分散(例えば超音波分散など)を行うことが好ましい。
処理液中に粉末が均一に分散した後に、還元剤を処理液に添加する。還元剤としては、ヒドラジン(N22)、リチウムアルミニウムハイドライド(LiAlH4)、ナトリウムボロンハイドライド(NaBH4)といった強還元剤として知られる物質を使用する。還元能力が弱い還元剤を使用すると磁性元素の溶出が起こりやすくなるので好ましくない。還元剤の濃度が濃すぎると非磁性成分の溶出効果が低下するので好ましくなく、薄すぎると磁性元素が溶出しやすくなるので好ましくない。還元剤の濃度は通常0.01〜10mol/Lの範囲で調整することができ、0.05〜5mol/Lとすることがより好ましく、0.1〜5mol/Lが一層好ましい。還元剤を添加した後、液温を10〜50℃、好ましくは15〜40℃に保った上で、10〜300minかけて浸出操作を行う。これにより、処理液中に非磁性成分が溶出し、磁性粉末粒子中における磁性元素の量比が相対的に上昇する。この反応は不活性ガス雰囲気下で進行させることが好ましい。
図3に、溶出処理前後における金属磁性粉末の状態を模式的に示す。溶出処理前においては焼結防止剤により粒子間に多数の結合(ネッキング)が生じ、粒子と粒子の間に大きな空隙が生じていると推測される。粒子間空隙が多く存在する場合、この粒子間空隙が磁性層内でデッドスペースとなり、磁性粒子のパッキングが悪化する傾向がある。一方、溶出処理後においては、焼結防止剤が溶解除去された結果、これらのネッキングが減少し、粒子の独立性が確保される。したがって、パッキングが改善され(すなわち磁性層単位体積あたりに存在する磁性粒子の数が増加し)、媒体化した際のノイズの減少等が期待される。
〔酸化処理工程〕
溶出処理工程を終えた金属磁性粉末には、粒子の表層に酸化膜を形成する処理を施す。その方法はとくに限定されるものではなく、従来一般的な方法が採用できる。すなわち、前記の溶出処理に使用した液に酸化物を投入する湿式法で行ってもよいし、前記溶出処理液から分離・抽出した粉末を乾式法で酸化処理してもよい。ただし、乾式法で行う際には、粉末が不安定な状態になっていることがあるので、取り扱いには注意が必要である。
《磁気記録媒体》
このようにして得られた本発明の金属磁性粉末は、一般的な方法を用いて重層塗布型磁気記録媒体の磁性層に使用することができる。
重層塗布型磁気記録媒体は、ベースフィルムの上に、下層として非磁性層を有し、その上に上層として磁性層を有する。本発明の金属磁性粉末は上層の磁性層を形成するための塗料中に配合させて使用される。
上層、下層いずれの塗料も、各材料を所定組成となるような割合で配合し、ニーダーおよびサンドグラインダーを用いて混練・分散させる方法で調合することができる。ベースフィルムへの塗料の塗布は、下層の湿潤なうちに可及的速やかに上層磁性を塗布する、いわゆるウエット・オン・ウエット方式で行うことが好ましい。
重層塗布型磁気記録媒体の構成として、例えば以下のものを例示することができる。
〔ベースフィルム〕
例えば、ポリエチレンテレフタラート、ポリエチレンナフタレートなどのポリエステル類、ポリオレフィン類、セルローストリアセテート、ポリカーボネイト、ポリアミド、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリスルフォン・アラミド、芳香族ポリアミド、等の樹脂フィルムを挙げることができる。
〔非磁性層(下層)用塗料〕
例えば、非磁性粉末(α−酸化鉄:同和鉱業(株)製、平均長軸粒子径80nm):85質量部、カーボンブラック:20質量部、アルミナ:3質量部、塩化ビニル樹脂(日本ゼオン(株)製塩化ビニル系バインダー:MR−110):15質量部、ポリウレタン樹脂(東洋紡(株)製ポリウレタン樹脂:UR−8200):15質量部、メチルエチルケトン:190質量部、シクロヘキサノン:80質量部、トルエン:110質量部からなる組成の非磁性塗料を挙げることができる。
〔磁性層(上層)用塗料〕
例えば、本発明の金属磁性粉末:100質量部、カーボンブラック:5質量部、アルミナ:3質量部、塩化ビニル樹脂(日本ゼオン(株)製:MR−110):15質量部、ポリウレタン樹脂(前掲のUR−8200):15質量部、ステアリン酸:1質量部、アセチルアセトン:1質量部、メチルエチルケトン:190質量部、シクロヘキサノン:80質量部、トルエン:110質量部からなる組成の磁性塗料を挙げることができる。
《比較例1》
5000mLビーカーに純水3000mLを入れ、温調機で40℃に維持しながら、これに0.03mol/Lの硫酸コバルト(特級試薬)溶液と0.15mol/Lの硫酸第一鉄(特級試薬)水溶液を1:4の混合割合にて混合した溶液を500mL添加した。その後、Fe+Coに対して炭酸が3当量となる量の顆粒状の炭酸ナトリウムを直接添加し、液中温度が±5℃を超えないように調整しつつ、炭酸鉄を主体とする懸濁液を作った。これを1時間30分熟成した後、空気を50mL/minでFeイオンの酸化率が20%となるように調整した量添加して核晶を形成させ、65℃まで昇温し、更に50mL/minで純酸素を通気して酸化を1時間継続した。そのあと、純酸素を窒素に切り替えてから、30分程度熟成した。
その後、液温を40℃まで降温し、温度が安定してからAlとして1.0質量%の硫酸アルミニウム水溶液を5.0g/minの添加速度で20分間添加し続けてオキシ水酸化鉄を成長させた。さらに純酸素を50mL/minで流し続け、酸化を完結させた。なお、酸化の終点は、上澄み液を少量分取し、ヘキサシアノ酸鉄カリウムの溶液を使用して、液色が変化しないことを確認した後とした。
酸化終了後の液に酸化イットリウムの硫酸水溶液(Yとして2.0質量%含有する)を300g添加した。このようにして、Alが固溶され、Yが表面に被着されたオキシ水酸化鉄の粉末を得た。
前記オキシ水酸化鉄のケーキを常法により濾過、水洗後、130℃で乾燥し、オキシ水酸化鉄乾燥固形物を得た。その固形物10gをバケットに入れ、水蒸気を水として1.0g/minの導入速度で添加しながら大気中にて400℃で焼成し、α−酸化鉄(ヘマタイト)を主成分とする鉄系酸化物を得た。
このα−酸化鉄を、通気可能なバケット内に投入し、該バケットを貫通型還元炉内に装入し、水素ガス(流速:40L/min)を通気しつつ、水蒸気を水として1.0g/minの導入速度で添加しながら、400℃で30分間焼成することにより還元処理を施した。還元時間終了後、水蒸気の供給を停止し、水素雰囲気下600℃まで10℃/minの昇温速度にて昇温した。その後、水蒸気を水として1.0g/minの導入速度で添加しながら60min高温還元処理を行い、金属磁性粉末(鉄系合金粉末)を作製した。この段階の金属磁性粉末はまだ酸化膜を形成する処理(酸化処理)を施されていないものであり、この金属磁性粉末は前述の「還元後の中間製品」に相当する。
〔酸化処理〕
この比較例においては従来の工程に従い、上記還元後の中間製品に対して酸化膜を形成させるための酸化処理を施した。具体的には還元後の中間製品をバケットから取り出さずに、そのまま酸化処理工程に移行させた。すなわち、その後、炉内雰囲気を水素から窒素に変換し、50L/minの流速で窒素を導入しながら炉内温度を降温レート20℃/minで90℃まで低下させた。酸化膜形成初期段階は窒素50L/minと純酸素400mL/minの混合割合にて混合したガスを炉内に添加し、水蒸気を水として1.0g/minの導入速度で添加しながら、水蒸気・酸素・窒素の混合雰囲気中にて酸化膜を形成させ、表面の酸化による発熱が抑制された段階で徐々に空気の供給量を増すことによって、雰囲気中における酸素濃度を上昇させた。最終的な純酸素の流量は2.0L/minの添加量とした。その際、炉内に導入されるガスの総量は窒素の流量を調整することによりほぼ一定に保たれるようにした。安定化処理は、概ね90℃に維持される雰囲気下で実施した。
このようにして得られた金属磁性粉末(酸化処理後のもの)について、以下に示すように粉体特性および組成を調べた。
〔長軸長・短軸長の測定〕
被測定粉末について透過型電子顕微鏡(日本電子(株)製造のJEM−100CXMark−II型)を使用し、100kVの加速電圧で、明視野での観察を行った。この観察像を例えば倍率58000倍で写真撮影し、拡大倍率は例えば縦横9倍に拡大する。各サンプルについて複数の写真画像の中から単分散している粒子をランダムに300個選択して、個々の粒子についてその写真画像に現れている長軸長と短軸長を測定し、その平均値を当該サンプルの長軸長、短軸長と表示した。
〔粒子の体積〕
上記方法で測定した長軸長、短軸長の平均値を用い、粒子を円柱形状に近似して、次に示す式、
(粒子体積)=π×(長軸長)×(短軸長/2)2
により粒子の体積を求めた。
〔比表面積〕
ユアサイオニクス製4ソーブUSを用いて、BET法により求めた。
〔結晶子サイズ〕
X線回折装置(理学電気株式会社製のRAD−2C)を用いて下記(5)式により求めた。
結晶子サイズ=Kλ/βcosθ ……(5)
ただし、K:シェラー定数0.9、λ:Co−Kα線波長、β:Fe(110)面の回折ピークの半価幅(ラジアン)、θ:回折角(ラジアン)である。
測定範囲は2θ=45〜60°の範囲でスキャンして算出した。なおスキャンスピードは5°/分で、積算回数は5回で測定している。
〔磁気特性および耐候性〕
磁気特性は東英工業株式会社製のVSM装置(VSM−7P)を使用して外部磁場10kOe(795.8kA/m)で測定した。耐候性評価は設定温度60℃、相対湿度90%の恒温恒湿容器内に一週間保持して、該恒温恒湿下に保持する前と後の飽和磁化σsを測定し、前記(4)式に従って求めた。
〔粉末粒子の組成分析〕
粉末粒子の組成は、金属磁性相と酸化膜を含んだ粒子全体の質量分析を行うことによって求めた。Co、Alおよび希土類元素(Yも含む希土類元素として扱う)の定量は日本ジャーレルアッシュ株式会社製高周波誘導プラズマ発光分析装置ICP(IRIS/AP)を用い、Feの定量は平沼産業株式会社製平沼自動滴定装置(COMTIME−980)を用い、酸素の定量はLECO Corporation製のNITROGEN/OXYGEN DETERMETER(TC−436型)を用いて行った。これらの定量結果は質量%として与えられるので、適宜原子%(at%)に変換することにより、Co/Fe原子比、Al/(Fe+Co)原子比、Y/(Fe+Co)原子比、(R+Al+Si)/(Fe+Co)原子比を求めた。なお、各比較例、実施例において、Si/(Fe+Co)は測定限界以下であるため、これらの例では(R+Al+Si)/(Fe+Co)原子比は(R+Al)/(Fe+Co)原子比に等しい。
結果を表1に記載してある(以下の比較例において同じ)。
《比較例2〜24》
比較例1に示した方法と同様の製法で、組成と酸化処理条件を変えることで、種々の組成と粒子サイズのサンプルを作製した。
こうして得られたサンプルの組成および磁気特性を表1に示す。
《実施例1》
比較例1に示した方法と同様の製法で、「還元後の中間製品」を作製した。これに比較例1に記載した「酸化処理」を施したものを「溶出前サンプル1」と呼ぶ。溶出前サンプル1の粉体特性および磁気特性を比較例1と同様の方法で求めた。その結果を表2に示す(以下の溶出前サンプル2、3において同様)。
溶出前サンプル1に「酸化処理」を施す前の金属磁性粉末(すなわち「還元後の中間製品」)に対して、以下のように溶出処理を施した。
錯化剤として酒石酸ナトリウムを0.05mol/L、緩衝剤として硫酸アンモニウムを0.1mol/Lとなるように混合し、NH3でpH=9に調整した処理液を用意した。溶出前サンプル1の金属磁性粉10gを上記処理液に投入し、温度を30℃に保持し、次いで還元剤として水素化ホウ素ナトリウムを0.3mol/Lとなるよう添加した。これを30分攪拌しながら30℃で熟成し、スラリ−を得た。このスラリ−固液分離し、固形成分と濾液を回収した。
固形成分は濾過、水洗、乾燥させ、乾燥品とした。この乾燥品は、前記比較例1に示した「酸化処理」に準じた条件で酸化処理を施し、「実施例1の金属磁性粉末」を得た。「実施例1の金属磁性粉末」について、比較例1と同様に粉体特性および組成を調べた。
一方、濾液については、粉末から溶出した成分として、Fe、Co、Al、Yの濃度(ppm)を測定した。
これらの結果を表2に記載する(以下の各例において同様)。「実施例1の金属磁性粉末」は表2中に「実施例1」と略記してある(以下の実施例について同様)。なお、表2中の「長軸長」および「短軸長」はそれぞれ「平均長軸長」および「平均短軸長」を意味する。
次に、「溶出前サンプル1」、「実施例1の金属磁性粉末」を用いた磁気テープを以下のようにして作成し、媒体としての磁気特性を調べた。なお、ここでは金属磁性粉末の効果をより鮮明に確認するため、非磁性層を設けず、磁性層単層のテープを作成した。
[1]磁性塗料の作成
磁性粉末0.35gを秤量し、ポット(内径45mm、深さ13mm)へ入れる。蓋を開けた状態で10分間放置する。次にビヒクル〔東洋紡製、塩化ビニル系樹脂MR−110(22質量%)、シクロヘキサノン(38.7質量%)、アセチルアセトン(0.3質量%)、ステアリン酸−n−ブチル(0.3質量%)、メチルエチルケトン(38.7質量%)の混合溶液〕をマイクロピペットで0.700mL採取し、これを前記のポットに添加する。すぐにスチールボール(2φ)30g、ナイロンボール(8φ)10個をポットへ加え、蓋を閉じ10分間静置する。その後、このポットを遠心式ボールミル(FRITSH P−6)にセットし、ゆっくりと回転数を上げ、600rpmにあわせ、60分間分散を行う。遠心式ボールミルが停止した後、ポットを取り出し、マイクロピペットを使用し、あらかじめメチルエチルケトンとトルエンを1:1で混合しておいた調整液を1.800mL添加する。再度、遠心式ボールミルにポットをセットし、600rpmで5分間分散し、分散を終了する。
[2]磁気テープの作成
前記の分散を終了したあと、ポットの蓋を開け、ナイロンボールを取り除き、塗料をスチールボールごとアプリケータ(55μm)へ入れ、ベースフィルム(東レ株式会社製のポリエチレンフィルム、商品名15C−B500、膜厚15μm)の上に塗布を行う。塗布後、すばやく、5.5kGの配向器のコイル中心に置き、磁場配向させ、その後乾燥させる。
[3]テープ特性の評価試験
得られたテープについて前記のVSMを用いて、保磁力Hcx、保磁力分布SFD、角形比SQ、ORの測定を行う。
表3に得られたテープの特性を示す。
次に、「溶出前サンプル1」および「実施例1の金属磁性粉末」について、細孔分布を以下のように測定した。
〔細孔分布測定〕
細孔分布ポロシメーター(Micromeritics Instrument Corporation製、AutoPoreIV 9500 V1.05)を用いて水銀圧入法により計測した。
細孔分布と、平均長軸長の値から前述の「累積粒子間空隙」を算出した。「累積粒子間空隙」の値が1.0mL/g未満であるものを○(良好)、1.0mL/g以上であるものを×(従来レベル)と評価し、その結果を表3に併記してある(以下の各例において同じ)。
《実施例2》
前記の溶出前サンプル1に「酸化処理」を施す前の金属磁性粉末(すなわち「還元後の中間製品」)に対して、以下の条件で溶出処理を施した。
錯化剤としてクエン酸ナトリウムを0.05mol/L、緩衝剤として硫酸アンモニウムを0.1mol/Lとなるように混合し、NH3でpH=9に調整した処理液を用意した。溶出前サンプル1の金属磁性粉10gを上記処理液に投入し、温度を30℃に保持し、次いで還元剤としてヒドラジンを4mol/Lとなるよう添加した。これを30分攪拌しながら30℃で熟成し、スラリ−を得た。得られたスラリ−を固液分離した後、実施例1と同様にして、金属磁性粉末の特性を調べた。
《実施例3》
比較例1に示した方法と同様の製法で、前記溶出前サンプル1とは異なる組成の「還元後の中間製品」を作製した。これに比較例1に記載した「酸化処理」を施したものを「溶出前サンプル2」と呼ぶ。
前記の溶出前サンプル2に「酸化処理」を施す前の金属磁性粉末(すなわち「還元後の中間製品」)に対して、実施例1と同様の条件で溶出処理を施した。得られたスラリ−を固液分離した後、実施例1と同様にして、金属磁性粉末の特性を調べた。
《実施例4》
前記の溶出前サンプル2に「酸化処理」を施す前の金属磁性粉末(すなわち「還元後の中間製品」)に対して、実施例2と同様の条件で溶出処理を施した。得られたスラリ−を固液分離した後、実施例1と同様にして、金属磁性粉末の特性を調べた。
《実施例5》
比較例1に示した方法と同様の製法で、前記溶出前サンプル1、2とは異なる組成の「還元後の中間製品」を作製した。これに比較例1に記載した「酸化処理」を施したものを「溶出前サンプル3」と呼ぶ。
前記の溶出前サンプル3に「酸化処理」を施す前の金属磁性粉末(すなわち「還元後の中間製品」)に対して、以下の条件で溶出処理を施した。
錯化剤として酒石酸ナトリウムを0.0028(mol/L)、緩衝剤として硫酸アンモニウムを0.0056(mol/L)となるように混合した処理液を用意した。溶出前サンプル3の金属磁性粉10gを上記処理液に投入し、温度を30℃に保持し、次いで還元剤として水素化ホウ素ナトリウムを0.004mol/Lとなるよう添加した。これを30分攪拌しながら30℃で熟成し、スラリ−を得た。得られたスラリ−を固液分離した後、実施例1と同様にして、金属磁性粉末の特性を調べた。
Figure 2011181170
Figure 2011181170
Figure 2011181170
実施例として示した金属磁性粉末についてみると、溶出処理によって焼結防止剤として添加した元素に由来する非磁性成分(Y、Al)の量が大幅に低減された。溶出処理により溶出したFeおよびCoの量は、AlおよびYに比べわずかであることから、非磁性成分の含有量を選択的に効率よく低減できることが確認された。
図1に平均粒子体積Vと飽和磁化σsの関係を示す。各実施例で得られた本発明の金属磁性粉末は溶出処理に供したことによって、(1)式を満たしており、比較例の金属磁性粉末に比べ粒子体積が小さい割に飽和磁化σsが大幅に改善されていることがわかる。すなわち、本発明によって、体積と磁気特性の関係が改善された磁気記録媒体用の金属磁性粉末が得られることが確認された。耐候性Δσsについても従来と同等レベル以上に良好であった。
表3に示されるように、溶出処理を終えた各実施例の粉末は、累積粒子間空隙が1.0mL/g未満に低減しており、それに伴って磁気特性の顕著な改善が認められた。これは、粒子間のネッキングが大幅に解消され、媒体中での配向特性が改善されたことによるものと考えられる。
図2には、溶出前サンプル3と、実施例5の金属磁性粉末について、細孔分布のグラフ(縦軸を累積容積としたもの)を例示する。

Claims (4)

  1. FeまたはFeとCoを主成分とする金属磁性相および酸化膜を有する粒子からなる粉末であって、その粉末粒子の平均長軸長が10〜50nm、酸化膜を含んだ平均粒子体積が5000nm3以下であり、粉末粒子中に含まれる各元素の含有量(原子%)の値を用いて算出される(R+Al+Si)/(Fe+Co)原子比が20%以下である磁気記録媒体用金属磁性粉末。
    ただし、Rは希土類元素(Yも希土類元素として扱う)である。
  2. 粉末粒子中に含まれる希土類元素(Yも希土類元素として扱う)、AlおよびSiの合計量が粉末の単位表面積当たり40μmol/m2以下である請求項1に記載の磁気記録媒体用金属磁性粉末。
  3. 飽和磁化σs(Am2/kg)と、酸化膜を含んだ平均粒子体積V(nm3)との間に下記(1)式の関係が成立し、かつ、当該粉末を温度60℃、湿度90%の雰囲気下に1週間保持したときの飽和磁化の低下率Δσsが15%以下である請求項1または2に記載の磁気記録媒体用金属磁性粉末。
    σs≧0.0185V+58 ……(1)
  4. 請求項1〜3のいずれかに記載の金属磁性粉末を用いた磁気記録媒体。
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