JP4758936B2 - 磁気記録用金属磁性粉およびその製造法 - Google Patents

磁気記録用金属磁性粉およびその製造法 Download PDF

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Description

本発明は、高密度磁気記録用に適した金属磁性粉末およびその製造方法に関する。
昨今の情報の高容量化に伴って、それを記録する媒体も高容量のものが求められるようになっている。かような高容量・高密度の磁気記録媒体を構築するための試みとして、従来からできるだけ微小で高い磁気特性(特に保磁力)を有する磁性粒子の開発が積極的になされてきた。本願出願人も平均粒子径20nm程度の超微細な粒子でも磁性を発現することを明らかにし、さらなる高保磁力で微細な磁性粒子の開発を続けている。ところが、微細な粒子では、熱をかける処理(具体的には焼結・還元)を行うと、粒子同士の融着が起こりやすくなり、せっかく微粒子になり得る前駆体が作成できたとしても、凝集体(クラスター)になってしまい微粒子化を図った恩恵を受けにくくなるといわれている。
そこで、個々の粒子の独立性を担保するため、例えば特許文献1には単位表面積あたりの焼結防止剤量を規定し、粒子の癒着を防止し分散性を高め、磁気記録媒体の磁気特性および表面性を向上させるために、規定値以上の焼結防止剤を含有させることが教示されている。
また、非特許文献1では、粒子体積や磁気粘性の比較的小さい粒子についての開示があるが、50nm以下の磁性粒子に限って言えば磁気粘性が小さく、かつ高保磁力を有する磁性粉末は開示されていない。
本出願人は磁性粉における耐候性(保存安定性)に着目し、従来にない酸化膜の形成に関して種々検討を行ってきた。例えば、表面酸化膜におけるCoの存在量に関するもの(特許文献2)、表面酸化膜の価数変化を変化させるもの(特許文献3)を開示し、従来公知の粉末に比較して耐候性(保存安定性)に優れたものが提供できることを確認した。さらには、酸化膜における局部的なEDS測定結果から、酸化膜中の組成も耐酸化性に対して多大な影響を与える可能性があり、製造条件によってはかような酸化膜中の組成に関しても変化させうることを見出した。この点は特許文献2に開示した。
特開2003−296915号公報 特開2006−128535号公報 特開2005−276361号公報 S.J.F. Chadwick et.al Journal of Magnetism and Magnetic Materials 290-291 (2005) 134-137
磁性粉末の微粒子化を図った場合には、焼結防止剤の添加量が相対的に増加すること、および耐候性を維持するために必要な酸化膜の量が相対的に増加することによる、磁気特性への悪影響が問題になりやすい。焼結防止剤の添加量を低減したり、酸化膜を薄くしたりする直接的な手法でこの問題を解消することは極めて困難である。
ところが、焼結防止剤は焼成時あるいは加熱還元時の焼結を防止する目的で焼成前の原料に添加されるものであり、焼成や加熱還元を経て合成された金属磁性粉末中では既に役割を終えていることから、焼結防止剤の添加量を低減するのではなく、焼結防止剤に由来して金属磁性粉末中に含有されている「非磁性成分」を除去することができれば、焼結防止を達成しながら磁性を担う金属部分の相対的な量比を増大させることが可能になり、微粒子化に伴う飽和磁化の低下が抑制されるものと考えられる。また、塗布型磁気記録媒体におけるヘッド汚れの原因の一つとして、粒子表面に存在する焼結防止剤由来成分の影響も考えられ、この点からも当該非磁性成分を除去することは有効である。
さらに焼結防止剤は磁性粉末の表面近傍に偏析する。焼成・還元時における熱により、焼結防止剤が融解することによって、個々の粒子表面の焼結防止剤成分の癒着(ネッキング)が生じ、磁性粒子同士が凝集体を形成する。従って、表面近傍の焼結防止剤を除去することにより、ネッキングがほぐれて粒子間凝集が改善され、それによって磁性粉のバインダーに対する分散性が向上することが考えられる。しかしながら、金属磁性粉末の粒子から焼結防止剤に由来する非磁性成分だけを効果的に除去することは必ずしも容易ではなく、その手法は未だ確立されていない。
また、微粒子化は今まで考慮に入れていなかった要因を検討する必要を生じさせた。具体的には、従来であれば、磁性粒子が大きかったことにより、その影響が無視できていた磁気粘性に関することである。磁性粒子がきわめて小さい場合においては磁気粘性は高すぎると磁気記録に影響を及ぼすとも言われており、安定した磁気記録を保つためには、磁気粘性の小さい磁性粒子を提供する必要があるといえる。
そこで本発明は微粒子であっても配向性が高く、磁気粘性の小さい金属磁性粉末を提供することを目的とする。
上記目的は、粒子長10nm以上45nm以下、軸比が2以上であり、粒子の先端部が丸みを帯びている粒子で構成される磁気記録用金属磁性粉によって達成される。「先端部が丸みを帯びている」とは、例えば長軸方向先端部の曲率半径が短軸長の1/6より大きい粒子をいう。すなわち本発明では、FeまたはFeとCoを主成分とする金属磁性相および酸化膜を有する粒子からなる金属磁性粉であって、その粉末粒子の平均長軸長が10〜45nm、各粒子の軸比(すなわち長軸長と短軸長の比)が2以上、希土類元素をR(ただしYも希土類元素として扱う)と表すとき、金属磁性粉粒子に含まれる各元素の含有量(原子%)の値を用いて算出される(R+Al+Si)/(Fe+Co)原子比が20%以下であり、粒子のTEM(透過型電子顕微鏡)像において長軸方向先端部の曲率半径が両端とも短軸長の1/6より大きい粒子が90%以上を占める磁気記録用金属磁性粉が提供される。特に、酸化膜を含んだ平均粒子体積VTEMが5000nm3以下であるものが好適な対象となる。
ここで、粒子のTEM像において長軸に対し直角の方向を短軸方向と呼ぶとき、当該粒子の短軸方向で最も長い部分の径を短軸長という。上記のような曲率半径の大きい粒子の存在率を求める際には、TEMにおいて全体形状が確認できる粒子をランダムに300個以上選んで測定を行い、測定した粒子数を分母として存在率を算出する。
上記において、長軸方向先端部の曲率半径の規定に代え、粒子のTEM像において長軸方向両端部近傍の形状が下記(1)式を満たす粒子が、50%以上の存在率で含まれる点を規定した磁気記録用金属磁性粉が提供される。
1/DW≧0.7 ……(1)
ここで、DWは上記の短軸長、D1は当該粒子の長軸方向端部からの長軸方向距離がDW/2の位置における短軸方向の径である。(1)式を満たす粒子の存在率を求める際には、TEMにおいて全体形状が確認できる粒子をランダムに300個以上選んで測定を行い、測定した粒子数を分母として存在率を算出する。
また本発明では、TEMに付属のエネルギー分散型蛍光X線分析装置を用いて粒子の長軸方向端部からの長軸方向距離が5nmの位置に電子ビームの照準を合わせたときの元素検出強度が下記(2)式を満たす粒子が、70%以上の存在率で含まれる磁気記録用金属磁性粉が提供される。
Al+IR<IFe+ICo ……(2)
ここで、IAl、IR、IFeおよびICoは、それぞれAl、希土類元素(Yも希土類元素として扱う)、FeおよびCoの検出強度(最大カウント数)であり、2種以上の希土類元素を含有する場合のIRは各希土類元素の検出強度の合計とする。各元素の最大カウント数は、それぞれの元素のKα特性X線が存在するとされている位置を中心として±1keVの範囲で観測される最大値を採用する。ある粒子が(2)式を満たす粒子であるかどうかについては、その粒子の長軸方向端部(2箇所)のうち、少なくとも一方の端部について(2)式を満たしていれば、(2)式を満たす粒子であると判定される。(2)式を満たす粒子の存在率を求める際には、TEMにおいて全体形状が確認できる粒子をランダムに20個以上選んで測定を行い、測定した粒子数を分母として存在率を算出する。
本発明では特に、下記(1)式を満たす粒子が50%以上の存在率で含まれ、かつ下記(2)式を満たす粒子が70%以上の存在率で含まれる磁気記録用金属磁性粉が提供される。
また、このような磁性粉末において特に、透過型電子顕微鏡写真において観察される、粒子の長軸方向の先端部分における酸化膜の被覆厚みxnm、短軸方向の先端部における酸化膜による被覆厚みynmとしたとき、x/y≦5であるもの、あるいはさらに、−1kOeの印加磁場における磁気粘性係数(−S)が1×10-3〜10×10-3であるもの、あるいはさらに、酸化膜を含み円柱で近似した粒子体積VTEMが5000nm3(5×10-18cm3)以下であり、粉末について測定される活性化体積Vactが1×10-18〜2×10-18cm3であり、好ましくは前記VTEMおよびVactが下記(3)式を満たすものが提供される。
TEM/Vact≦1.2 ……(3)
このような金属磁性粉末の製造方法として、本発明では、FeまたはFeとCoを主成分とする金属磁性相を有し、希土類元素(Yも希土類元素として扱う)、AlおよびSi(以下これらを「非磁性成分」という)の1種以上を含有する粒子からなる金属磁性粉末に対し、前記非磁性成分の少なくとも1種以上と錯体を形成しうる錯化剤を含有する液中において還元剤を作用させることにより、粉末粒子中の非磁性成分を液中に溶出させる工程(溶出処理工程)、還元性ガス雰囲気で熱処理する工程(再還元処理工程)、酸化性ガス雰囲気で熱処理する工程(安定化処理工程)を順次有する処理を施す磁気記録用金属磁性粉の製造法が提供される。前記溶出化処理工程と再還元工程の間に、粉末粒子の表面に酸化膜を形成する工程(酸化処理工程)を入れることが好ましい。錯化剤として、酒石酸ナトリウムおよびクエン酸ナトリウムの1種以上を使用することができ、還元剤として、ヒドラジン(N22)、リチウムアルミニウムハイドライド(LiAlH4)、ナトリウムボロンハイドライド(NaBH4)およびその誘導体の1種以上を使用することができる。
こうした操作を経て得られる粒子は、軸比が2以上であって、粒子の輪郭部が常に曲率を有する磁性粒子であり、またその粒子の先端部は丸くなっていることを特徴とする粒子である。こうした構成を有する粒子であれば、磁場中で配向したときに粒子同士の接触や衝突が少なくなり配向性が高くなるので好ましい。全体の粒子に対するかような外的形状を有する粒子の割合は80%以上、より好ましくは90%以上であるのがよい。
本発明に従う製法によって作成される磁性粒子は、微粒子であっても配向性が高く、かつ磁気粘性も小さい粒子であるので、高密度磁気記録媒体用磁性粒子として好適なものである。
《金属磁性粉末》
本発明で対象とする磁性粉末は、「Fe」または「FeとCo」を主成分とする金属磁性相をもつ粒子からなる金属磁性粉末である。すなわち、金属磁性相を構成する磁性元素(Fe,Co,Ni)のうち、「Fe」または「FeとCo」の占める原子割合が50%以上のものである。また、この粉末は酸化膜を有しており、酸化膜と金属磁性相を含めた粉末粒子全体に存在する元素のモル比において、Feに対するCoの割合(以下「Co/Fe原子比」という)が0〜50at%のものが対象となる。ここで、Co/Fe原子比は「Co含有量(at%)/Fe含有量(at%)×100」で表される。Co/Fe原子比が5〜45at%のものがより好ましく、10〜40at%のものが一層好ましい。このような範囲において安定した磁気特性が得られやすく、耐候性も良好になる。酸化膜は鉄酸化物が検出されるが、その他の元素の酸化物が同時に存在していても構わない。
製造過程においては焼結防止剤として希土類元素(Yも希土類元素として扱う),Al,Si等の「非磁性成分」が添加されるが、本発明の金属磁性粉末は後述の方法によってこれらの非磁性成分の溶出が図られているので、(R+Al+Si)/(Fe+Co)原子比が20at%以下になっている。このとき、従来の微粉化された金属磁性粉末と比べ、粒子体積の割に飽和磁化の大きい粉末が提供される。(R+Al+Si)/(Fe+Co)原子比は15at%以下であることがより好ましく、13at%以下、あるいはさらに12at%以下であることが一層好ましい。
粉末粒子を構成する元素のうち、Fe,Co,Ni,希土類元素(Yも希土類元素として扱う),Al,SiおよびO以外にも、例えば、焼結防止剤等として添加されたアルカリ土類金属元素等、種々の元素が混入して構わない。本発明で対象とする粉末の組成として、Fe,Co,Ni,希土類元素(Yも希土類元素として扱う),Al,SiおよびOを含有し、残部が不可避的不純物であるものが含まれる。
また、TEMに付属のエネルギー分散型蛍光X線分析装置(例えばTEM−EDS)を用いた測定により算出される最大カウント数比は希土類/Fe、およびAl/Feがそれぞれ0.5以下、好ましくは0.3以下である。これよりも大きい値の場合では、粒子の該当部分に非磁性成分が多く存在していることを示し、磁気特性が希釈化されてしまうので好ましくない。
本発明の金属磁性粉は金属相以外の磁性に寄与しない成分、特に焼結防止のために含有させるAlや希土類元素(Yも希土類元素として扱う)の存在量が低減されている点に特徴を有する。この点は、具体的には粒子を局所的に組成分析することによって確かめることができる(後述)。その最も特徴的な局所的な組成パラメータとして、TEMに付属のエネルギー分散型蛍光X線分析装置を用いて粒子の長軸方向端部からの長軸方向距離が5nmの位置に電子ビームの照準を合わせたときの元素検出強度を挙げることができる。この検出強度が前記(2)式を満たす粒子が、70%以上の存在率で含まれる金属磁性粉末が、本発明において特に好適な対象となる。
粉末粒子のサイズに関しては、平均長軸長が10〜45nm、好ましくは10〜35nmであって、かつ平均粒子体積が5000nm3以下好ましくは4500nm3以下のものが対象となる。これより粒子サイズが大きいと、磁気テープの高記録密度化に十分対応することが難しくなる。
粒子形状に関しては、粒子のTEM像において長軸方向先端部の曲率半径が両端とも短軸長の1/6より大きい粒子が90%以上を占めるような粉末であることが好ましい。このように丸みを帯びた先端形状を有する粒子がほとんどを占める金属磁性粉末は、媒体中で良好な配向性を得る上で有利となると考えられる。丸みを帯びた粒子の存在割合が多い粉末としては、前記(1)式を満たす粒子が、50%以上の存在率で含まれるものを挙げることもできる。
さらに粉体の磁気特性の計測により算出される活性化体積Vactは1×10-18〜3×10-18cm3の範囲にあることが望ましい。Vactが大きすぎる粒子を用いると媒体化した際に粒子性ノイズの値が大きくなりすぎてしまうので好ましくない。一方、Vactが1×10-18cm3より小さい場合には所望の磁気特性が得られづらくなるので好ましくない。Vactは1×10-18〜2.5×10-18cm3であることがより好ましく、1×10-18〜2×10-18cm3であることがさらに一層好ましい。
さらに、TEM写真により算出される酸化膜の部分を含む長軸長と短軸長から円柱モデル(もしくは楕円体柱モデル)により算出される粒子の物理体積VTEMと、前記活性化体積Vactの比が、1.2以下であることが好ましい。この場合、希土類元素、Al、Siといった磁性に寄与しない成分の存在割合が小さく、磁気特性の向上に有利となる。なお、理論的には円柱モデル(もしくは楕円体柱モデル)による粒子体積とVactの比は1が最小となるが、ここではTEMにより実測されるVTEMを使用するので、計算上は1を下回る場合が出現しうる。この比が1に近い値になると粒子の物理体積と磁化を司る活性化体積がほぼ一致していることを示し、記録に影響を与えない成分がきわめて少なく形成できていることを示すので好ましい。逆にこの値が大きすぎる場合には磁気凝集が多くなっており、高密度の磁気記録には適応しづらい。
《金属磁性粉末の製造法》
焼結防止剤を添加した原料粉を焼成し、還元する段階までは一般的な金属磁性粉の製造法が採用できる。例えば、Coおよび焼結防止剤を含有するオキシ水酸化鉄を公知の方法により250〜700℃の温度で焼成し、α−Fe23等の鉄酸化物へと変化させる。その後、この鉄酸化物を気相還元によって加熱還元し、α−Feを主成分とする金属磁性粉末を得る。この金属磁性粉末を「還元後の中間製品」と呼ぶ。本発明の金属磁性粉末を得るには、前記還元後の中間製品に対して、焼結防止剤に由来する非磁性成分を溶出させる処理(溶出処理工程)を施す必要がある。溶出処理工程の後、酸化膜を形成する処理(酸化処理工程)に供することにより、本発明の金属磁性粉末が得られる。
〔溶出処理工程〕
溶出処理工程に供するための還元後の中間製品としては、表面に酸化膜を形成させたものも使用できるが、焼結防止剤由来成分の溶出効果を高めるために、酸化膜を形成させる処理を行っていない粉体を用意することが望ましい。
処理液として、還元後の中間製品に含まれている希土類元素(Yも希土類元素として扱う)、Al,Siのうち少なくとも1種以上と錯体を形成しうる化合物(錯化剤)を溶解させた溶液を準備する。錯化剤としては、とくに制限する必要はないが、無電解めっきで錯化剤として通常使用されている薬品、例えば酒石酸塩、クエン酸塩、リンゴ酸塩、乳酸塩等が容易に入手できる。錯化剤の濃度は0.01〜10mol/L程度とすればよい。必要に応じてpH緩衝効果のある物質、例えばアンモニウム塩などを添加してもよい。処理液の調製は室温付近の温度で行うことができる。
この処理液に、前記還元後の中間製品を添加する。粉末の添加量は、あまり多すぎると反応が不均一になる可能性があるが、通常、処理液1Lあたり1〜100g程度、好ましくは5〜50g程度とすることで良好な結果が得られる。液中において反応の均一性を維持するために、撹拌または強制分散(例えば超音波分散など)を行うことが好ましい。
処理液中に粉末が均一に分散した後に、還元剤を処理液に添加する。還元剤としては、ヒドラジン(N22)、リチウムアルミニウムハイドライド(LiAlH4)、ナトリウムボロンハイドライド(NaBH4)といった強還元剤として知られる物質を使用する。還元能力が弱い還元剤を使用すると磁性元素の溶出が起こりやすくなるので好ましくない。還元剤の濃度が濃すぎると非磁性成分の溶出効果が低下するので好ましくなく、薄すぎると磁性元素が溶出しやすくなるので好ましくない。還元剤の濃度は通常0.01〜10mol/Lの範囲で調整することができ、0.05〜5mol/Lとすることがより好ましく、0.1〜5mol/Lが一層好ましい。還元剤を添加した後、液温を10〜50℃、好ましくは15〜40℃に保った上で、10〜300minかけて浸出操作を行う。これにより、処理液中に非磁性成分が溶出し、磁性粉末粒子中における磁性元素の量比が相対的に上昇する。この反応は不活性ガス雰囲気下で進行させることが好ましい。
〔酸化処理工程〕
溶出処理工程を終えた金属磁性粉末には、必要に応じて粒子の表層に酸化膜を形成する処理を施す。その方法はとくに限定されるものではなく、従来から知られている方法が採用できる。すなわち、前記の溶出処理に使用した液に酸化物を投入する湿式法で行ってもよいし、前記溶出処理液から分離・抽出した粉末を乾式法で酸化処理してもよい。ただし、乾式法で行う際には、粉末が不安定な状態になっていることがあるので、取り扱いには注意が必要である。
〔再還元処理工程・安定化処理工程〕
本発明に従う金属磁性粉末は、安定化された粒子に対して再度還元処理を施し、その後、再度、酸化雰囲気に曝す安定化処理を施すことによって製造される。これらの処理によると、粒子先端部が丸みを帯びた粒子が得られるようになりやすいので好ましい。再還元工程は、水素ガス等の還元雰囲気下で熱処理することによって実施できる。その熱処理温度は、150℃以上とすることが望ましいが、あまり高温にすると粒子間焼結が起こりやすくなるので、350℃以下の範囲とする必要があり、300℃以下の範囲がより好ましい。また、安定化処理は酸化性ガス雰囲気で熱処理することによって実施できる。この場合も温度が高すぎると焼結が生じやすいので、概ね150〜350℃の範囲で行うことが望ましい。
《磁気記録媒体》
このようにして得られた本発明の金属磁性粉末は、一般的な方法を用いて重層塗布型磁気記録媒体の磁性層に使用することができる。
重層塗布型磁気記録媒体は、ベースフィルムの上に、下層として非磁性層を有し、その上に上層として磁性層を有する。本発明の金属磁性粉末は上層の磁性層を形成するための塗料中に配合させて使用される。
上層、下層いずれの塗料も、各材料を所定組成となるような割合で配合し、ニーダーおよびサンドグラインダーを用いて混練・分散させる方法で調合することができる。ベースフィルムへの塗料の塗布は、下層の湿潤なうちに可及的速やかに上層磁性を塗布する、いわゆるウエット・オン・ウエット方式で行うことが好ましい。
重層塗布型磁気記録媒体の構成として、例えば以下のものを例示することができる。
〔ベースフィルム〕
例えば、ポリエチレンテレフタラート、ポリエチレンナフタレートなどのポリエステル類、ポリオレフィン類、セルローストリアセテート、ポリカーボネイト、ポリアミド、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリスルフォン・アラミド、芳香族ポリアミド、等の樹脂フィルムを挙げることができる。
〔非磁性層(下層)用塗料〕
例えば、非磁性粉末(α−酸化鉄:DOWAエレクトロニクス(株)製、平均長軸粒子径80nm):85質量部、カーボンブラック:20質量部、アルミナ:3質量部、塩化ビニル樹脂(日本ゼオン(株)製塩化ビニル系バインダー:MR−110):15質量部、ポリウレタン樹脂(東洋紡(株)製ポリウレタン樹脂:UR−8200):15質量部、メチルエチルケトン:190質量部、シクロヘキサノン:80質量部、トルエン:110質量部からなる組成の非磁性塗料を挙げることができる。
〔磁性層(上層)用塗料〕
例えば、本発明の金属磁性粉末:100質量部、カーボンブラック:5質量部、アルミナ:3質量部、塩化ビニル樹脂(日本ゼオン(株)製:MR−110):15質量部、ポリウレタン樹脂(前掲のUR−8200):15質量部、ステアリン酸:1質量部、アセチルアセトン:1質量部、メチルエチルケトン:190質量部、シクロヘキサノン:80質量部、トルエン:110質量部からなる組成の磁性塗料を挙げることができる。
《実施例1》
5000mLビーカーに純水3000mLを入れ、温調機で40℃に維持しながら、これに0.03mol/Lの硫酸コバルト(特級試薬)溶液と0.15mol/Lの硫酸第一鉄(特級試薬)水溶液を1:4の混合割合にて混合した溶液を500mL添加した。その後、Fe+Coに対して炭酸が3当量となる量の顆粒状の炭酸ナトリウムを直接添加し、液中温度が40±5℃の範囲を超えないように調整しつつ、炭酸鉄を主体とする懸濁液を作った。これを1時間30分熟成した後、空気を50mL/minでFeイオンの酸化率が20%となるように調整した量添加して核晶を形成させ、65℃まで昇温し、更に50mL/minで純酸素を通気して酸化を1時間継続した。そのあと、純酸素を窒素に切り替えてから、30分程度熟成した。
その後、液温を40℃まで降温し、温度が安定してからAlとして1.0質量%の硫酸アルミニウム水溶液を5.0g/minの添加速度で20分間添加し続けてオキシ水酸化鉄を成長させた。さらに純酸素を50mL/minで流し続け、酸化を完結させた。なお、酸化の終点は、上澄み液を少量分取し、ヘキサシアノ酸鉄カリウムの溶液を使用して、液色が変化しないことを確認した後とした。
酸化終了後の液に酸化イットリウムの硫酸水溶液(Yとして2.0質量%含有する)を300g添加した。このようにして、Alが固溶され、Yが表面に被着されたオキシ水酸化鉄の粉末を得た。
前記オキシ水酸化鉄のケーキを常法により濾過、水洗後、130℃で乾燥し、オキシ水酸化鉄乾燥固形物を得た。その固形物10gをバケットに入れ、水蒸気を水として1.0g/minの導入速度で添加しながら大気中にて400℃で焼成し、α−酸化鉄(ヘマタイト)を主成分とする鉄系酸化物を得た。
このα−酸化鉄を、通気可能なバケット内に投入し、該バケットを貫通型還元炉内に装入し、水素ガス(流速:40L/min)を通気しつつ、水蒸気を水として1.0g/minの導入速度で添加しながら、400℃で30分間焼成することにより還元処理を施した。還元時間終了後、水蒸気の供給を停止し、水素雰囲気下600℃まで10℃/minの昇温速度にて昇温した。その後、水蒸気を水として1.0g/minの導入速度で添加しながら60分間の高温還元処理を行い、金属磁性粉末(鉄系合金粉末)を作製した。この段階の金属磁性粉末はまだ酸化膜を形成する処理(酸化処理)を施されていないものであり、この金属磁性粉末は前述の「還元後の中間製品」に相当する。
〔溶出処理〕
この「還元後の中間製品」に相当する金属磁性粉末に対して以下のように溶出処理を施した。
純水900mLに対して、錯化剤として酒石酸ナトリウムを0.05mol/L、緩衝剤として硫酸アンモニウムを0.1mol/Lとなるように混合し、NH3でpH=9に調整した処理液を用意した。「還元後の中間製品」に相当する金属磁性粉末10gを上記処理液に投入し、温度を30℃に保持し、次いで還元剤として水素化ホウ素ナトリウムを0.3mol/Lとなるよう添加した。これを30分撹拌しながら30℃で熟成し、スラリ−を得た。このスラリ−固液分離し、固形成分と濾液を回収した。この固形成分を濾過、水洗、乾燥させ、乾燥品とした。
〔酸化処理〕
この乾燥品に対して以下のように酸化膜を形成させるための酸化処理を施した。
上記乾燥品を通気可能なバケット内に入れ、そのバケットを貫通型還元炉内に装入し、50L/minの流速で窒素を導入しながら炉内温度を降温レート20℃/minで90℃まで低下させた。酸化膜形成初期段階は窒素50L/minと純酸素400mL/minの混合割合にて混合したガスを炉内に添加し、水蒸気を水として1.0g/minの導入速度で添加しながら、水蒸気・酸素・窒素の混合雰囲気中にて酸化膜を形成させ、表面の酸化による発熱が抑制された段階で徐々に空気の供給量を増すことによって、雰囲気中における酸素濃度を上昇させた。最終的な純酸素の流量は2.0L/minの添加量とした。その際、炉内に導入されるガスの総量は窒素の流量を調整することによりほぼ一定に保たれるようにした。この酸化処理は、概ね90℃に維持される雰囲気下で1時間実施した。
〔再還元処理・安定化処理〕
上記の酸化処理によって酸化膜を形成させた後の粉末を250℃の水素雰囲気下に30分間曝すことによって再還元処理を行った。その後、上記酸化処理と同様の方法を実施することによって安定化処理を行った。
このようにして得られた金属磁性粉末について、以下に示すように粉体特性および組成を調べた。
〔長軸長・短軸長の測定〕
被測定粉末についてTEM(日本電子(株)製、JEM−100CX Mark-II型)を使用し、100kVの加速電圧で、明視野での観察を行った。この観察像を例えば倍率58000倍で写真撮影し、拡大倍率は例えば縦横9倍に拡大する。各サンプルについて複数の写真画像の中から単分散している粒子をランダムに300個選択して、個々の粒子についてその写真画像に現れている長軸長と短軸長を測定し、その平均値を当該サンプルの長軸長、短軸長と表示した。
〔粒子の体積〕
上記方法でTEMを用いて測定した長軸長、短軸長の平均値を用い、粒子を円柱形状に近似して下記(4)式によりVTEMを求めた。
TEM=π×[長軸長]×([短軸長]/2)2 ……(4)
また、活性化体積Vactは、磁気測定による公知の方法で求めた。
〔比表面積〕
ユアサアイオニクス製4ソーブUSを用いて、BET法により求めた。
〔結晶子サイズDx〕
X線回折装置(理学電気株式会社製、RAD−2C)を用いて下記(5)式により求めた。
Dx=Kλ/βcosθ ……(5)
ただし、K:シェラー定数0.9、λ:Co−Kα線波長、β:Fe(110)面の回折ピークの半価幅(ラジアン)、θ:回折角(ラジアン)である。
測定範囲は2θ=45〜60°の範囲でスキャンして算出した。なおスキャンスピードは5°/分で、積算回数は5回で測定している。
〔磁気特性〕
磁気特性は東英工業株式会社製のVSM装置(VSM−7P)を使用して外部磁場10kOe(795.8kA/m)で測定した。また、磁気粘性は、磁場印加時間に対する磁化の減衰率から求められる粘性であり、外部磁場;−1kOeにて公知の方法で磁気粘性係数を求めた。
〔粉末の組成分析〕
粉末の組成は、金属磁性相と酸化膜を含んだ粒子全体の質量分析を行うことによって求めた。Co,Alおよび希土類元素(Yも含む希土類元素として扱う)の定量は日本ジャーレルアッシュ株式会社製高周波誘導プラズマ発光分析装置ICP(IRIS/AP)を用い、Feの定量は平沼産業株式会社製平沼自動滴定装置(COMTIME−980型)を用いて行った。これらの定量結果は質量%として与えられるので、適宜原子%(at%)に変換することにより、Co/Fe原子比、Al/(Fe+Co)原子比、Y/(Fe+Co)原子比、(R+Al+Si)/(Fe+Co)原子比を求めた。なお、各比較例、実施例において、Si/(Fe+Co)は測定限界以下であるため、これらの例では(R+Al+Si)/(Fe+Co)原子比は(R+Al)/(Fe+Co)原子比に等しい。
〔粒子の局所的組成分析〕
粉末粒子をTEMにより観察し、TEMに付属のエネルギー分散型蛍光X線分析装置(EDS)を用いて、粒子の下記3箇所について組成分析を行った。
(A)粒子の長軸方向先端付近; 具体的には粒子先端から長軸方向に5nmの距離にある位置に電子ビームの照準を合わせた。この箇所は、粒子のTEM像において金属コアと考えられる比較的暗い明度に写る部分を外れた部分に相当し、酸化膜あるいは非磁性成分が主体の部分であると考えられる。
(B)粒子の短軸端部付近
(C)粒子の中央部付近
これらは、図2に模式的に付記した粒子の測定位置A、B、Cにそれぞれ対応する。
なお、各元素は次の箇所に現れるピークを使用して算出した。
Al:1.5keV、
Y:1.9keV、
Fe:6.4keV、
Co:6.9keV
次に、上記の再還元処理・安定化処理を終えた金属磁性粉末を用いた磁気テープを以下のようにして作成し、媒体としての磁気特性を調べた。なお、ここでは金属磁性粉末の効果をより鮮明に確認するため、非磁性層を設けず、磁性層単層のテープを作成した。
[1]磁性塗料の作成
磁性粉末0.35gを秤量し、ポット(内径45mm、深さ13mm)へ入れる。蓋を開けた状態で10分間放置する。次にビヒクル〔東洋紡製、塩化ビニル系樹脂MR−110(22質量%)、シクロヘキサノン(38.7質量%)、アセチルアセトン(0.3質量%)、ステアリン酸−n−ブチル(0.3質量%)、メチルエチルケトン(38.7質量%)の混合溶液〕をマイクロピペットで0.700mL採取し、これを前記のポットに添加する。すぐにスチールボール(2φ)30g、ナイロンボール(8φ)10個をポットへ加え、蓋を閉じ10分間静置する。その後、このポットを遠心式ボールミル(FRITSH P−6)にセットし、ゆっくりと回転数を上げ、600rpmにあわせ、60分間分散を行う。遠心式ボールミルが停止した後、ポットを取り出し、マイクロピペットを使用し、あらかじめメチルエチルケトンとトルエンを1:1で混合しておいた調整液を1.800mL添加する。再度、遠心式ボールミルにポットをセットし、600rpmで5分間分散し、分散を終了する。
[2]磁気テープの作成
前記の分散を終了したあと、ポットの蓋を開け、ナイロンボールを取り除き、塗料をスチールボールごとアプリケータ(55μm)へ入れ、ベースフィルム(東レ株式会社製のポリエチレンフィルム、商品名15C−B500、膜厚15μm)の上に塗布を行う。塗布後、すばやく、5.5kGの配向器のコイル中心に置き、磁場配向させ、その後乾燥させる。
〔テープ特性の評価〕
得られたテープについて前記のVSMを用いて磁気測定を行い、保磁力Hcx、角形比SQ、配向比ORを求めた。また、上記と同様の手法にて活性化体積Vactおよび磁気粘性を調べた。
以上の測定結果について、表1に粉末特性を、表2にテープ特性を示す(以下の各例において同じ)。
《実施例2》
実施例1におけるオキシ水酸化鉄の合成過程で原料粒子の粒子径を変更した以外は実施例1と同様にして、金属磁性粉末を得た。これを用いて実施例1と同様の測定を行った(以下の各例において同じ)。
《比較例1》
実施例1におけるオキシ水酸化鉄の合成過程で原料粒子の粒子径を変更したこと、および溶出工程を実施しなかったことを除き、実施例1と同様にして、金属磁性粉末を得た。この場合、上記「還元後の中間製品」をバケットから取り出さずに、そのまま炉内雰囲気を水素から窒素に切り替えることにより酸化処理工程に移行させた。
TEM−EDSによる粒子の測定では、前記(A)の箇所において、Al/Fe検出強度比=1.333、Y/Fe検出強度比=2.67であった。
《比較例2》
比較例1におけるオキシ水酸化鉄の合成過程で原料粒子の粒子径を変更した以外は実施例1と同様にして、金属磁性粉末を得た。
TEM−EDSによる粒子の測定では、前記(A)の箇所において、Al/Fe検出強度比=0.765、Y/Fe検出強度比=0.706であった。
溶出工程を実施した実施例の金属磁性粉末は、溶出工程を実施しなかった比較例のものと比べ、VTEM/Vactが小さく(表1)、金属相以外の磁性に寄与しない成分の付着量が少なくなっていると考えられる。これは、テープにおいても同様であった(表2)。また、磁気粘性は一般に粒子径が小さくなるほど増大するが、例えば表1の実施例1と比較例2を対比するとわかるように、粒子径レベルが同等であれば、金属相以外の成分を低減させた本発明の粒子の方が大幅に低い磁気粘性を呈する。非特許文献1のFig.3には磁気粘性の測定結果が示されており、前記同様条件(−1kOe)での磁気粘性係数はSample1〜4において1×10-3(=0.1×10-4)程度と低い磁気粘性が得られている。しかしこれらは同文献のTable.1に示されるとおり長軸長(l)が50nm以上と大きいものである。同文献Fig.3のSample5は長軸長40nmと本願実施例1の粉末の35nmに比較的近い粒径のものであるが、その磁気粘性係数は−1kOeにおいて11.3×10-3(=1.13×10-4)程度であり、実施例1の1.42×10-3に比べると非常に高い。つまり、溶出工程を経た本発明の金属磁性粉末は、同等の粒径レベルを有する公知の金属磁性粉末と比べると、大幅に低い磁気粘性を有することがわかる。VTEM/Vactの値や磁気粘性は媒体の磁気特性に影響を及ぼすと考えられ、事実、本発明に従う実施例の金属磁性粉末では配向比ORの向上が認められる(表2)。
図1には、実施例1、比較例2で得られた金属磁性粉末における粒子のTEM写真を例示する。測定倍率は500000倍である。いずれの写真も左右両端の距離が約105nmに相当する。溶出処理を行っていない比較例の粒子は、長軸方向先端部が比較的とがった形状を有している。これに対し、溶出処理を行い、最終的に再還元処理および安定化処理を施した実施例の粒子は、「先端先細り」の傾向があまりなく、長軸方向先端部が丸みを帯びた形状となっている。このようなTEM像から粒子のTEM像において長軸方向先端部の曲率半径が短軸長の1/6より大きい粒子が占める割合を求めたところ、比較例1、2で得られた粉末では50%にも満たなかったが、実施例1、2で得られた粉末では90%以上であった。また、前記(1)式を満たす粒子の存在率を求めたところ、比較例1、2で得られた粉末では上記存在率が50%未満であったが、実施例1、2で得られた粉末では50%以上であった。このような先端が丸みを帯びた粒子形状も、配向性を向上させる上で有利に作用していると考えられる。
図2には、実施例1、比較例2で得られた金属磁性粉末における粒子について、局所的な組成分析を行った際のTEM−EDSスペクトル(ただし、Feの最大カウント数で除してノルマライズしたもの)を例示する。A〜Cの記号は前述の測定箇所A〜Cに対応する。長軸方向先端付近(Aの位置)において、比較例のものはAlやYの検出強度が高く前記(2)式を満たしていない。これに対し溶出処理を行った実施例のものは前記(2)式を満たしている。各実施例、比較例の粉末において、このような測定をランダムに選択した20個の粒子について行った結果、前記(2)式を満たす粒子の存在率は、比較例1、2はともに5%未満であった(すなわち、(2)式を満たす粒子は観測されなかった)。これに対し、実施例1、2はともに70%以上であった。
実施例および比較例の金属磁性粉末粒子を例示したTEM写真。 実施例および比較例の金属磁性粉末粒子を局所的に測定したTEM−EDSスペクトル(Feの最大カウント数で除してノルマライズしたもの)を例示したグラフ。

Claims (14)

  1. FeまたはFeとCoを主成分とする金属磁性相および酸化膜を有する粒子からなる金属磁性粉であって、その粉末粒子の平均長軸長が10〜45nm、各粒子の軸比が2以上、希土類元素をR(ただしYも希土類元素として扱う)と表すとき、金属磁性粉粒子に含まれる各元素の含有量(原子%)の値を用いて算出される(R+Al+Si)/(Fe+Co)原子比が20%以下であり、粒子のTEM像において長軸方向先端部の曲率半径が短軸長の1/6より大きい粒子が90%以上を占める磁気記録用金属磁性粉。
  2. FeまたはFeとCoを主成分とする金属磁性相および酸化膜を有する粒子からなる金属磁性粉であって、その粉末粒子の平均長軸長が10〜45nm、各粒子の軸比が2以上、希土類元素をR(ただしYも希土類元素として扱う)と表すとき、金属磁性粉粒子に含まれる各元素の含有量(原子%)の値を用いて算出される(R+Al+Si)/(Fe+Co)原子比が20%以下であり、粒子のTEM像において長軸方向両端部近傍の形状が下記(1)式を満たす粒子が、50%以上の存在率で含まれる磁気記録用金属磁性粉。
    1/DW≧0.7 ……(1)
    ここで、粒子のTEM像において長軸に対し直角の方向を短軸方向と呼ぶとき、DWは当該粒子の短軸方向で最も長い部分の径(すなわち短軸長)、D1は当該粒子の長軸方向端部からの長軸方向距離がDW/2位置における短軸方向の径である。
  3. FeまたはFeとCoを主成分とする金属磁性相および酸化膜を有する粒子からなる金属磁性粉であって、その粉末粒子の平均長軸長が10〜45nm、各粒子の軸比が2以上、希土類元素をR(ただしYも希土類元素として扱う)と表すとき、金属磁性粉粒子に含まれる各元素の含有量(原子%)の値を用いて算出される(R+Al+Si)/(Fe+Co)原子比が20%以下であり、TEMに付属のエネルギー分散型蛍光X線分析装置を用いて粒子の長軸方向端部からの長軸方向距離が5nmの位置に電子ビームの照準を合わせたときの元素検出強度が下記(2)式を満たす粒子が、70%以上の存在率で含まれる磁気記録用金属磁性粉。
    Al+IR<IFe+ICo ……(2)
    ここで、IAl、IR、IFeおよびICoは、それぞれAl、希土類元素(Yも希土類元素として扱う)、FeおよびCoの検出強度(カウント数)であり、2種以上の希土類元素を含有する場合のIRは各希土類元素の検出強度の合計とする。
  4. 粒子のTEM像において長軸方向両端部近傍の形状が下記(2)式を満たす粒子が、50%以上の存在率で含まれる請求項4に記載の磁気記録用金属磁性粉。
    1/DW≧0.7 ……(2)
    ここで、粒子のTEM像において長軸に対し直角の方向を短軸方向と呼ぶとき、DWは当該粒子の短軸方向で最も長い部分の径(すなわち短軸長)、D1は当該粒子の長軸方向端部からの長軸方向距離がDW/2位置における短軸方向の径である。
  5. 酸化膜を含んだ平均粒子体積VTEMが5000nm3以下である請求項1〜のいずれかに記載の金属磁性粉末。
  6. 透過型電子顕微鏡写真において観察される、粒子の長軸方向の先端部分における酸化膜の被覆厚みxnm、短軸方向の先端部における酸化膜による被覆厚みynmとしたとき、x/y≦5である、請求項1〜のいずれかに記載の磁気記録用金属磁性粉。
  7. −1kOeの印加磁場における磁気粘性係数が1×10-3〜10×10-3である、請求項1〜のいずれかに記載の磁気記録用金属磁性粉。
  8. 酸化膜を含み円柱で近似した粒子体積VTEMが5000nm3(5×10-18cm3)以下であり、粉末について測定される活性化体積Vactが1×10-18〜2×10-18cm3である請求項1〜のいずれかに記載の磁記録用磁性粉。
  9. 前記VTEMおよびVactが下記(3)式を満たす請求項に記載の磁気記録用金属磁性粉。
    TEM/Vact≦1.2 ……(3)
  10. 請求項1〜のいずれかに記載の磁性粉を使用する重層塗布型磁気記録媒体。
  11. FeまたはFeとCoを主成分とする金属磁性相を有し、希土類元素(Yも希土類元素として扱う)、AlおよびSi(以下これらを「非磁性成分」という)の1種以上を含有する粒子からなる金属磁性粉末に対し、前記非磁性成分の少なくとも1種以上と錯体を形成しうる錯化剤を含有する液中において還元剤を作用させることにより、粉末粒子中の非磁性成分を液中に溶出させる工程(溶出処理工程)、還元性ガス雰囲気で熱処理する工程(再還元処理工程)、酸化性ガス雰囲気で熱処理する工程(安定化処理工程)を順次有する処理を施す磁気記録用金属磁性粉の製造法。
  12. 溶出化処理工程後、再還元工程前に、粉末粒子の表面に酸化膜を形成する工程(酸化処理工程)を有する請求項11に記載の磁気記録用金属磁性粉の製造法。
  13. 錯化剤として、酒石酸ナトリウムおよびクエン酸ナトリウムの1種以上を使用する請求項11または12に記載の磁気記録用金属磁性粉の製造法。
  14. 還元剤として、ヒドラジン(N22)、リチウムアルミニウムハイドライド(LiAlH4)、ナトリウムボロンハイドライド(NaBH4)およびその誘導体の1種以上を使用する請求項1113のいずれかに記載の磁気記録用金属磁性粉の製造法。
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