JP5731483B2 - 金属磁性粉末およびその製造方法、磁性塗料、並びに磁気記録媒体 - Google Patents
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Description
また発明者らは、金属磁性粒子の粒子体積を縮小する方法として、特許文献2に記載の方法を開示している。
そして、本発明者らによる更なる検討によると、従来開示してきた金属磁性粒子の粒子体積を縮小させる方法を用いた場合であっても、製造された磁気記録媒体において、磁気特性の飛躍的な改善には結びつかない場合があることが判明した。そこで、当該場合について更に研究を行ったところ、金属磁性粒子の粒子体積を縮小させる方法に係る操作により、金属磁性粒子の分散性が低下したり、金属磁性粒子が樹脂を初めとする有機物と混合される際のなじみが低下したり、分散性が低下している可能性に想到した。
強磁性元素を主成分とする金属磁性相を有し、Yを含む希土類元素、AlおよびSiから選択される1種以上を非磁性成分として含有する粒子からなる金属磁性粉末を製造する方法であって、
前記非磁性成分と錯体を形成しうる錯化剤を含有する液中において、金属磁性粉末へ還元剤を作用させることで、前記粒子中の非磁性成分を前記液中に溶出させる工程と、
前記非磁性成分を前記液中に溶出させた後の粒子へ、当該粒子を乾燥することなく、前記液中にて酸化膜を形成する工程と、
前記酸化膜を形成する工程の後に、前記粒子を純水中に分散させ、さらに前記純水を有機溶媒で置換する溶媒置換工程とを備えた、金属磁性粉末の製造方法である。
前記酸化膜を形成する工程とは、前記非磁性成分が前記液中に溶出した粒子を、過酸化物により酸化する工程である、第1の発明に記載の金属磁性粉末の製造方法である。
前記酸化膜を形成する工程の後に、前記粒子を乾燥させる乾燥工程を備えた、第1または第2の発明に記載の金属磁性粉末の製造方法である。
強磁性元素を主成分とする金属磁性相を有し、Yを含む希土類元素、AlおよびSiから選択される1種以上を含有し、酸化膜を有する粒子からなる金属磁性粉末であって、
等酸点が7.0以上であり、
粒子の平均長軸長が10〜50nmであり、
酸化膜を含んだ粒子の平均粒子体積が5000nm3以下であり、
粒子中に含まれる各元素の含有量(原子%)の値を用いて算出される(R+Al+Si)/(Fe+Co)原子比の値が20%以下であり、
粒子に対する単位面積当たりの有機酸(ステアリン酸)の吸着量が1.33mg/m2以上1.44mg/m 2 以下である、金属磁性粉末である。
但し、RはYを含む希土類元素であり、R、Al、Siから選択される1種または2種の含有量が0の場合もある。
煮沸抽出法(JISK−5101−17−1:2004)に準拠して測定された粉体pH値が7.0以上である、第4の発明に記載の金属磁性粉末である。
Fe(110)で算出される結晶子径が11.5nm以下であり、
粒子の平均粒子体積V(nm3)を、球形として算出される結晶子体積(nm3)で除した粒子体積当たりの存在結晶子数の平均値が6.0個以下である、第4または第5の発明に記載の金属磁性粉末である。
第4から第6の発明のいずれかに記載の金属磁性粉末を含む磁性塗料である。
第4から第6の発明のいずれかに記載の金属磁性粉末を含む磁気記録媒体である。
本発明者らが、当該磁気特性が改善しない原因について研究したところ、「焼結防止剤の除去工程」における操作により、金属磁性粉末の分散性や樹脂に対するなじみが低下すること、さらに、金属磁性粒子同士が、「焼結防止剤の除去工程」における乾燥工程で再凝集することに想到した。つまり、金属磁性粉末の分散性や樹脂に対するなじみの低下、金属磁性粒子同士の再凝集により、従来の技術に係る金属磁性粉末を塗料化したときに、金属磁性粒子を十分に分散することができないものと考えられる。金属磁性粉末を磁性塗料化したときに金属磁性粒子を十分に分散することができないと、当該磁性塗料において金属磁性粉末として振る舞う体積は、個々の金属磁性粒子よりも大きくなってしまう(所謂、「活性化体積」が増加してしまう。)。この結果、金属磁性粒子における粒子体積の低減効果によりもたらされると、期待されていた磁気特性の改善効果が相殺されたものと考えられる。
本発明に係る金属磁性粉末の原料は、公知の方法により得ることができる。具体的には、α−オキシ水酸化鉄(ゲーサイト)またはα−酸化鉄(ヘマタイト)を、水素雰囲気、含水素雰囲気等の還元性雰囲気下で還元することで得ることができる。尚、当該α−オキシ水酸化鉄、α−酸化鉄には、焼結防止剤であるアルミニウムや希土類元素が含有されている。
当該還元は、300〜700℃程度の条件で行うのが良いが、所望により還元温度を二段階以上とする「多段還元法」を適用してもよい。当該多段還元適用時には、まず低温条件で還元し、次に高温条件で還元する方法が好ましい。
上記得られた金属磁性粉末から、焼結防止剤として添加された非磁性成分であるアルミニウムや希土類元素を削減して、金属磁性粒子体積の軽減された金属磁性粉末を得る。
当該操作により、金属磁性粒子の表面に存在している非磁性成分を溶解し削減することができる。
本発明においては、金属磁性粒子の再凝集を抑制するため、および、後述する金属磁性粒子の等酸点をpH=7.0の領域とするために、上述した「焼結防止剤の除去工程」の後、非磁性成分が液中に溶出した金属磁性粒子を乾燥させることなく、湿式状態のまま当該液中にて、表面に酸化膜を形成させる「湿式安定化工程」を実施する。この湿式安定化工程においては、金属磁性粒子の表面に酸化膜を形成させることができればよいが、より好適には均一な酸化膜を形成させる。当該均一な酸化膜を形成させるためには、湿式安定化工程において、過酸化物等を添加することが好ましい。具体的には、無機過酸化物や、クロム酸カリウムといった酸化剤、あるいは有機過酸化物が挙げられるが、取扱の容易さを考慮すれば無機過酸化物、なかでも過酸化水素水を用いることが好ましい。
上述した「湿式安定化工程」の後、金属磁性粉末と処理液とを公知の方法により分離する。そして、分離された金属磁性粉末を、一旦清浄な純水中に分散させることで、「湿式安定化工程」にて生成し、金属磁性粒子表面に付着して残存する成分を除去する。当該金属磁性粉末を純水中に分散させる際、純水を撹拌したり、超音波洗浄を用いても良い。そして、金属磁性粉末を純水に分散させた後、再度分離操作を行って、金属磁性粉末と洗浄液とを分離した後、当該金属磁性粉末を有機溶媒に再分散させる操作を行うことにより、金属磁性粉末の有機溶媒分散液を得る。
また、当該有機溶剤への再分散操作は、金属磁性粒子表面に残存する水分と有機物の置換をより進めるために、一回以上、数回行うことが好ましい。
上記の操作を経た結果、分散性に優れた金属磁性粉末を得ることが出来た。
本発明に係る磁性粉末の物理特性は、具体的には以下のような物性を有する。
本発明に係る金属磁性粒子の平均一次粒子径は、透過型電子顕微鏡(日本電子株式会社製のJEM−100CX Mark−II型)を使用した。100kVの加速電圧で、明視野で本発明に係る金属磁性粉末を観察した像を写真撮影し、約300個の金属磁性粒子を選択して平均一次粒子径を測定した。
他方、形状磁気異方性で磁気を発現する金属磁性粒子の場合には、軸比も重要なファクターであり、少なくとも軸比は2以上であることが求められる。
但し、非磁性成分はR、Si、Alの全てが存在する場合に加えて、R、Si、Alから選択される2種または1種が存在する場合もある。例えば、R、Si、Alから選択される2種が存在する場合は、存在しない1種の値は0となり、R、Si、Alから選択される1種が存在する場合は、存在しない2種の値は0となる。
本発明に係る金属磁性粉末の結晶子径は、粉末X線回折法により算出した。具体的にはFe(110)面の結晶子の大きさを、シェラー法を適用して算出する。本明細書においては、Fe(110)の半価幅を使用して算出した。本願に記載の結果はX線源にCo管球を使用した結果に基づいている。
Fe(110)における結晶子サイズ=Kλ/βcosθ・・・(式1)
ただし、K:シェラー定数0.9、λ:X線波長、β:回折ピークの半価幅(ラジアン)、θ:回折角(ラジアン)。
本発明に係る金属磁性粒子の比表面積は、BET一点法を用いて測定した。測定装置は、ユアサイオニクス株式会社製の4ソープUSを使用した。
本発明に係る金属磁性粉末の嵩密度は、JIS法(JISK―5101:1991)に準拠して測定できる。
また、例えば、特開2007−263860に記載された所定のホルダーに測定対象の粉体を充填して粉体層を形成し、当該粉体層へ所定の圧力を加えた後、粉体層の高さを測定し、当該粉体層の高さの測定値と、充填された粉体の重量とから測定対象の粉体の密度を求める方法でも算出できる。当該値は、金属磁性粒子の詰まり易さの傾向を示しており、当該値が高い金属磁性粉末は高密度記録に適している。
金属磁性粒子の等酸点とは、金属磁性粒子を所定のpH値を有する溶液に投入した際、当該金属磁性粒子と周囲の溶液間とにおいて、プロトンの出入りがバランスし外観的にはプロトンの出入りが停止して見える点である。
当該等酸点は、当該金属磁性粒子を含まない溶液(ブランク溶液)をリファレンス溶液とし、当該リファレンス溶液を滴定したときの滴定曲線と、当該金属磁性粒子を含む溶液を同様に滴定したときの滴定曲線との交点をもとめることで、測定することが出来る。
これに対し、本発明に係る金属磁性粒子では、焼結防止剤(非磁性成分)の削減工程の後に湿式安定化工程を経ているため、等酸点がpH=7.0の中性、またはpH=7.5以上のアルカリ性側領域に存在する。当該等酸点を有する本発明に係る金属磁性粒子は、詳細な作用機構は明らかではないものの、磁性粉用の樹脂に対して優れた相溶効果を持つようになり、樹脂とのなじみが向上したものと考えられる。
さらに、本発明に係る金属磁性粒子と樹脂とのなじみが向上した結果、上述した溶媒置換工程の効果に加え、当該金属磁性粒子を用いた磁気記録媒体において、保磁力の向上およびSFDx値の低下を実現出来たと考えられる。
さらに、金属磁性粒子を所定のpH値を有する溶液に投入した際、表面からプロトンが放出されるか、または、吸収されるかを調べることで、当該金属磁性粒子の表面性を評価することが出来る。
本発明者らの検討によると、本発明に係る金属磁性粒子の場合は、本発明に係る金属磁性粒子を含有するpH=11の水酸化カリウム溶液へ、希硝酸を徐々に添加していき、当該水酸化カリウム溶液がpH=5に達した時点において、当該金属磁性粒子がプロトン放出性を発揮するものが好ましいことが判明した。
金属磁性粒子が、溶液pH=5に達した時点においてプロトン放出性を発揮することで、溶液pH値を当該値に設定することにより、金属磁性粒子間の反発を生じさせ、別途分散剤を添加することなく、金属磁性粒子のみでも当該溶液中で高い分散性を発揮させることができる。
本発明に係る金属磁性粉末を、500メッシュで解粒した試料0.05gを準備する。当該試料を、緩衝剤として0.1モル/Lの硝酸カリウムを含むpH=11の水酸化カリウム溶液100mLに添加した。当該本発明に係る金属磁性粉末を含有する水酸化カリウム溶液へ、0.01モル/Lの硝酸水溶液を0.02mL/分の速度で添加して、pH値の変化を測定した。
尚、水酸化カリウム水溶液、またはその代替溶液は空気中の炭酸を吸収する作用があることから、作成から数日経過した液を使用することは好ましくない。
磁性粉末がプロトンを放出する時には、この値はマイナス(−)の値を取り、プロトンを吸収するときにはこの値は(+)の値を取るとした。つまり、水酸化カリウム水溶液のpH値から見れば、磁性粉末がプロトンを放出するときpH値は、リファレンス(ブランク溶液)よりも酸性側の(小さい)値をとり、磁性粉末がプロトンを吸収するとき、pH値はリファレンス(ブランク溶液)よりも塩基性側の(大きい)値をとる。
・・・(式2)
従来の技術に係る金属磁性粒子は、プロトンを放出する傾向が顕著である。当該傾向から、従来の技術に係る金属磁性粒子は、粒子表面に何らかの残留成分が残存している可能性が示唆される。
従来の技術に係る金属磁性粒子が示すプロトンを放出する傾向を図1に示す。
図1より、従来の技術に係る金属磁性粒子は、溶液のpH値が低いときはプロトンを吸収する傾向が高いが、溶液のpH値の上昇とともにプロトンを吸収する傾向が低下し、「[放出または吸収]する(H+)個数/m2=0」となる等酸点を経過してプロトンを放出する傾向が高まる。しかし、溶液のpH値がさらに上昇するとともに、今度はプロトンを放出する傾向が徐々に低下し、再び「[放出または吸収]する(H+)個数/m2=0」となるレベルに漸近することが判明した。
焼結防止剤(非磁性成分)の削減工程の後に湿式安定化工程を経て製造された本発明に係る金属磁性粉末は、JIS法(JISK−5101−17−1:2004/顔料試験方法−第17部:pH値−第1節:煮沸抽出法)に規定された粉体pH値の測定において、pH=7以上である金属磁性粉末となった。
蓋の出来るガラス製容器に、液中から炭酸ガスを除いた純水を充填し、所定量の金属磁性粉末を加えて10%懸濁液を作製する。その後、蓋を開放状態とし、懸濁液を5分程度加熱して煮沸し、煮沸状態になってから、さらに5分間煮沸を継続する。その後、容器の蓋をしてから懸濁液を常温まで放冷し、煮沸により減少した量の水を補って1分間振り混ぜた後、5分間静置し、懸濁液のpH値を測定した。
本発明に係る金属磁性粉末の組成は、金属磁性相と酸化膜とを含んだ金属磁性粒子全体の質量分析を行うことによって求めた。Co,Alおよび希土類元素(Yも含む希土類元素として扱う)の定量は日本ジャーレルアッシュ株式会社製高周波誘導プラズマ発光分析装置ICP(IRIS/AP)を用い、Feの定量は平沼産業株式会社製平沼自動滴定装置(COMTIME−980型)を用いて行った。
これらの定量結果は質量%として与えられるので、適宜、原子%(at%)に変換することにより、Co/Fe原子数比、Al/(Fe+Co)原子数比、Y/(Fe+Co)原子数比、(R+Al+Si)/(Fe+Co)原子数比を求めた。
尚、後述する、各実施例、比較例においてSi/(Fe+Co)の値は測定限界以下であったため当該値を0とみなし、(R+Al+Si)/(Fe+Co)原子数比は(R+Al)/(Fe+Co)原子数比に等しいとした。
有機酸(ステアリン酸)は、当該金属磁性粒子表面における塩基性点に該当する点に吸着する。従って、金属磁性粒子への有機酸(ステアリン酸)吸着量は、当該金属磁性粒子の樹脂に対する分散性等を知るのに重要な指標になり得る。
焼結防止剤(非磁性成分)の削減工程の後に湿式安定化工程を経て製造された本発明に係る金属磁性粉末では、単位面積当たりの有機酸(ステアリン酸)の吸着量が、1.2mg/m2以上に保持された磁性粉末であることが知見された。
窒素で置換したグローブボックス中において、金属磁性粉末を30メッシュで解粒した試料2.0gを準備する。当該試料を、2質量%のステアリン酸が溶解したメチルエチルケトン溶液15.0gに添加し、下部から永久磁石を用いて試料を凝集させる。
ここで、当該溶液の上澄み液10gを分取して、ホットプレート上において90℃で3時間加熱し、加熱残分の重量を測定した。得られた加熱残分重量の数値を(式3)に代入した。
A=1000×B×(C/100)×[1−E/{(C/100)×D}]/F・・・(式3)
但し、Aはステアリン酸吸着量(mg/g)、Bは溶液の全重量(g)(ここでは15.0g)、Cは溶液中のステアリン酸濃度(質量%)(ここでは2質量%)、Dは上澄み液の重量(g)(ここでは10g)、Eは90℃で3時間加熱した後の加熱残分重量(g)、Fは試料の重量(g)(ここでは2g)である。
(式3)において、B×(C/100)は当初の溶液中のステアリン酸の重量(g)を示し、[1−E/{(C/100)×D}]は上澄み液中に残存するステアリン酸の割合を示している。
本発明に係る金属磁性粉末の、外部磁場10kOe(795.8kA/m)下における、保磁力Hc、飽和磁化σs、角形比SQ、粉末のBSFD(バルク状態におけるSFD値)を測定した。
具体的には、本発明に係る金属磁性粉末をφ6mmのプラスチック製容器に充填し、東英工業株式会社製のVSM装置(VSM−7P)を使用して、外部磁場10kOe(795.8kA/m)を印加し、保磁力Hc(Oe、kA/m)、飽和磁化σs(Am2/kg)を測定し、単位体積あたりの磁気特性値を算出した。
具体的には、金属磁性粉末を、例えばφ6mmのプラスチック製容器中に粉末を充填しVSM装置にて飽和磁化値(σsA)を測定する。次に、金属磁性粉末を、60℃80%の恒温恒湿環境下に静置する。そして、恒温恒湿環境下さらした後の金属磁性粉末の飽和磁化値(σsB)を同様に測定する。
ここで、(式4)より、耐候性の低下率(Δσs)を算出することによって、金属磁性粉末の環境に対する安定性を評価した。
Δσs={(σsA)−(σsB)}/(σsA)×100・・・(式4)
本発明に係る金属磁性粒子の媒体への適用可能性を確認する為、所定のベースフィルム上へ、本発明に係る金属磁性粒子を用いた単層磁性層を形成させた。
当該テープ上の単層磁性層に対し、保磁力Hcx(Oe、kA/m)、磁性層表面に平行な方向の保磁力分布SFDxを評価した。
本発明に係る金属磁性粉末(最終製品としての磁性粉末)0.35gを秤量して(内径45mm、深さ13mmの)ポットに入れ、蓋を開けた状態で10分間放置した。次に当該ポットへ、マイクロピペットを用いて、ビヒクル(日本ゼオン株式会社製の塩化ビニル系樹脂MR−555(20質量%)、東洋紡株式会社製のバイロン(登録商標)UR−8200(30質量%)、シクロヘキサノン(50質量%)、アセチルアセトン(0.3質量%)、ステアリン酸−n−ブチル(0.3質量%)の混合溶液)0.7mLを添加した。そして、当該添加直後に、スチールボール(2φ)30g、ナイロンボール(8φ)10個をポットに加え、ポットの蓋を閉じた状態で10分間静置した。
これは、本発明に係る磁性塗料を用いて作製した磁気テープにおいては、上述したように、塗膜中の本発明に係る磁性粉末の等酸点が7.0以上あることで塗料樹脂とのなじみが向上して優れた相溶効果を発揮したこと、さらに、本発明に係る磁性粉末の粉体pH値が7.0以上あることで有機溶媒への分散性が優れること、さらに、塗膜中の磁性粉末は、塩基性点が確保(単位面積当たりのステアリン酸吸着量が1.2mg/m2以上)されたことで、配向性に優れたものであることの結果であると考えられる。
5000mLのビーカーに純水3000mLを入れた後、温調機で30℃に維持しながら、0.03モル/Lの硫酸コバルト(特級試薬)溶液と、0.15モル/Lの硫酸第一鉄(特級試薬)水溶液とを、モル比でCo:Fe=1:4の混合割合になるように混合した。この混合溶液500mLに、Fe+Coに対して炭酸量が5当量になる量の顆粒状の炭酸ナトリウムを直接添加し、液温が35±5℃の範囲を超えないように調整しながら、炭酸鉄を主体とする懸濁液を作製した。この懸濁液を90分間熟成させた後、Feイオンの酸化率が15%になるように調整した量の空気を100mL/分の流量で添加して、核晶を形成させた。そして、液温を60℃まで昇温させ、純酸素を30mL/分の流量で通気して90分間酸化を継続した。その後、純酸素を窒素に切り替えて通気し、45分間程度熟成した。
また、実施例1に係る金属磁性粒子の表面性評価(プロトン放出または吸収性)結果を図2に示した。
尚、図2は図1と同様に、横軸にリファレンス(ブランク溶液)のpH値をとり、縦軸に金属磁性粒子が溶液中へプロトンを[放出または吸収]する(H+)個数/m2をとったグラフである。そして実施例1に係る金属磁性粉末を◆と実線でプロットし、後述する比較例1に係る金属磁性粉末を□と破線でプロットしたものである。
実施例1において説明した「得られたスラリーへ、35%過酸化水素水4.0gを17.8gの純水に希釈した過酸化水素水溶液を添加し、撹拌しながら30分間熟成した。」という操作を、「得られたスラリーへ、35%過酸化水素水2.0gを17.8gの純水に希釈した過酸化水素水溶液を添加した。」と、変更した以外は、実施例1と同様の操作を行った。得られた金属磁性粉の物性値の測定結果を表1に、金属磁性粉の磁気特性、磁気テープ上での単層磁気層の磁気特性評価結果を表2に記載した。
実施例1において説明した「溶媒置換操作(2)」において、溶媒置換する溶剤として実施例3はメチルエチルケトン、実施例4はシクロヘキサノン、実施例5はエタノールへ、それぞれ代替した以外は、実施例1と同様の操作を行った。得られた金属磁性粉の物性値の測定結果を表1に、金属磁性粉の磁気特性、磁気テープ上での単層磁気層の磁気特性評価結果を表2に記載した。
実施例1で説明した湿式安定化方法ではなく、従来の技術に係る方法(例えば、特開2007−294841号公報に記載の方法)によって、乾燥粉を得た。
具体的には、実施例1において説明した、α−酸化鉄を主成分とする鉄系酸化物を、貫通型還元炉内に装入し還元処理を行った後、高温還元処理を行い、鉄系合金粉末(中間製品としての金属磁性粉末)を得、溶出処理を行ってスラリーを得る工程を実施した。
次に、当該溶出処理を経て、30℃で30分間の熟成を経た後に得られたスラリーを固液分離し、固形成分と濾液とを回収した。当該回収された固形成分を濾過、水洗、乾燥することで、中間乾燥品を得た。
具体的には、当該中間乾燥品を通気可能なバケット内に入れ、そのバケットを貫通型還元炉内に装入し、50L/minの流速で窒素を導入しながら、炉内温度を降温速度20℃/minで90℃まで低下させた。
酸化膜形成初期段階は、窒素50L/minと純酸素400mL/minとの混合割合にて混合したガスを炉内に供給し、水蒸気を水として1.0g/minの導入速度で供給することで、水蒸気・酸素・窒素の混合雰囲気中にて、中間乾燥品に表面に酸化膜を形成させた。
こうして得られた比較例1に係る金属磁性粉末の表面性について、表1、2および図2に□と破線でプロットして示した。
表1より、実施例1〜5および比較例1に係る試料とも、金属磁性粒子の形状的な性質は、ほぼ同様の結果を示した。しかし、金属磁性粒子の表面性を示す、ステアリン酸吸着量、等酸点および粉体pH値については、実施例1〜5に係る試料と、比較例1に係る試料とでは、顕著な差異がみられた。
これは、従来の技術に係る比較例1の試料では、非磁性成分削減処理により表面が何らかの成分で汚染されていたものが、実施例1〜5に係る方法により、当該汚染の問題が解消されたこと、および、溶媒置換操作(1)(2)を経ることで、非磁性成分の削減処理により生じた表面性の変性が回復したことにより、削減処理が行われて、非磁性成分および金属磁性粒子体積が減少していながらも、樹脂に対して分散性の高い金属磁性粉末が得られたことと考えられる。
しかし、テープに媒体化した際は、実施例1〜5に係るテープは、比較例1に係るテープと比較して、高い保磁力を有するとともに、保磁力分布(SFDX)が狭いものとなることが判明した。
これは実施例1〜5に係る磁性塗料を用いて作製した磁気テープにおいては、上述したように、塗膜中の磁性粉末の等酸点が7.0以上あることで塗料樹脂とのなじみが向上したこと、さらに、磁性粉末の粉体pH値が7.0以上あり、有機溶媒への分散性が優れること、さらに、塗膜中の磁性粉末の塩基性点が確保(単位面積当たりのステアリン酸吸着量が1.2mg/m2以上)されたことで、配向性に優れたものになったことにより、テープ等の磁気記録媒体において、保磁力Hcxが高く、保磁力分布SFDxが低いという高密度磁気記録に適した優れた磁気特性を発揮するものとなったと考えられる。
Claims (8)
- 強磁性元素を主成分とする金属磁性相を有し、Yを含む希土類元素、AlおよびSiから選択される1種以上を非磁性成分として含有する粒子からなる金属磁性粉末を製造する方法であって、
前記非磁性成分と錯体を形成しうる錯化剤を含有する液中において、金属磁性粉末へ還元剤を作用させることで、前記粒子中の非磁性成分を前記液中に溶出させる工程と、
前記非磁性成分を前記液中に溶出させた後の粒子へ、当該粒子を乾燥することなく、前記液中にて酸化膜を形成する工程と、
前記酸化膜を形成する工程の後に、前記粒子を純水中に分散させ、さらに前記純水を有機溶媒で置換する溶媒置換工程とを備えた、金属磁性粉末の製造方法。 - 前記酸化膜を形成する工程とは、前記非磁性成分が前記液中に溶出した粒子を、過酸化物により酸化する工程である、請求項1に記載の金属磁性粉末の製造方法。
- 前記酸化膜を形成する工程の後に、前記粒子を乾燥させる乾燥工程を備えた、請求項1または2に記載の金属磁性粉末の製造方法。
- 強磁性元素を主成分とする金属磁性相を有し、Yを含む希土類元素、AlおよびSiから選択される1種以上を含有し、酸化膜を有する粒子からなる金属磁性粉末であって、
等酸点が7.0以上であり、
粒子の平均長軸長が10〜50nmであり、
酸化膜を含んだ粒子の平均粒子体積が5000nm3以下であり、
粒子中に含まれる各元素の含有量(原子%)の値を用いて算出される(R+Al+Si)/(Fe+Co)原子比の値が20%以下であり、
粒子に対する単位面積当たりの有機酸(ステアリン酸)の吸着量が1.33mg/m2以上1.44mg/m 2 以下である、金属磁性粉末。
但し、RはYを含む希土類元素であり、R、Al、Siから選択される1種または2種の含有量が0の場合もある。 - 煮沸抽出法(JISK−5101−17−1:2004)に準拠して測定された粉体pH値が7.0以上である、請求項4に記載の金属磁性粉末。
- Fe(110)で算出される結晶子径が11.5nm以下であり、
粒子の平均粒子体積V(nm3)を、球形として算出される結晶子体積(nm3)で除した粒子体積当たりの存在結晶子数の平均値が6.0個以下である、請求項4または5に記載の金属磁性粉末。 - 請求項4から6のいずれかに記載の金属磁性粉末を含む磁性塗料。
- 請求項4から6のいずれかに記載の金属磁性粉末を含む磁気記録媒体。
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