JP2011173954A - 水性ウレタン変性(メタ)アクリル樹脂分散液の製造方法 - Google Patents

水性ウレタン変性(メタ)アクリル樹脂分散液の製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】耐溶剤性および耐水性が良好な塗膜を形成でき、かつ耐アルコールショック性、凍結融解サイクルに対する耐久性、熱安定性に優れた水性ウレタン変性(メタ)アクリル樹脂分散液の製造方法の提供。
【解決手段】活性水素を有しない(メタ)アクリル系モノマー(A)中で、ポリイソシアネート(a)、水酸基及びアミノ基から選ばれる官能基を2つ以上と、酸性官能基を1つ以上有する化合物(b)、酸性官能基を有しないポリオール(c)、グリシジル基及び重合性不飽和基を有する化合物(d)を反応させ、重合性不飽和基及び酸性官能基を有するイソシアネート末端ウレタンプレポリマー(B)を製造し、プレポリマー(B)中の酸性官能基を中和し水希釈して乳化させた後、プレポリマー(B)の鎖延長反応と、モノマー(A)及びプレポリマー(B)のラジカル重合反応とを行う水性ウレタン変性(メタ)アクリル樹脂分散液の製造方法。
【選択図】なし

Description

本発明は、水性ウレタン変性(メタ)アクリル樹脂分散液の製造方法に関する。
従来、コーティング剤、塗料、インキ用の水性樹脂として、アクリル樹脂やウレタン樹脂が使用されている。
アクリル樹脂は、耐候性、光沢、耐アルカリ性などの性能に優れているが、塗膜にした際の硬さと軟さの両立が困難であり、耐屈曲性、耐衝撃性、耐摩耗性などが不十分であった。
一方、ウレタン系樹脂は、機械的物性、密着性、耐磨耗性、柔軟性等に優れているが、耐候性、耐アルカリ性、耐熱性などが不良であり、かつ高価であった。
そこで、両方の樹脂の欠点を補うため、アクリル樹脂とウレタン樹脂を複合化した水性樹脂が提案されている。
例えば特許文献1には、活性水素を有しない(メタ)アクリル系モノマー(例えばエチルアクリレート、ブチルアクリレート等)中で、ポリオール(例えばポリプロピレングリコール、ジメチロールプロピオン酸等)と、ポリイソシアネートとを反応させてウレタンプレポリマーを製造し、ついでこれを中和・水分散させ水性分散体とした後、該水性分散体をラジカル重合することで、アクリル樹脂と複合化された水性ウレタン樹脂の製造方法が開示されている。
特許文献2には、分子内に、少なくとも2個の水酸基と1個の不飽和基を有する不飽和化合物(例えばグリセリンモノアクリレート等)を必須成分とする不飽和単量体(例えばエチルアクリレート、ブチルアクリレート等)中で、ポリオール(例えばポリプロピレングリコール、ジメチロールプロピオン酸等)と、ポリイソシアネートとを反応させてウレタンプレポリマーを製造し、ついでこれを中和・水分散させ水性分散体とした後、該水性分散体をラジカル重合することで、アクリル樹脂と複合化された水性ウレタン樹脂の製造方法が開示されている。
特許文献3には、活性水素を有しない(メタ)アクリル系モノマー(例えばメチル(メタ)アクリレート等)中で、ジイソシアネート化合物と、ポリオール化合物と、分子中に2個の水酸基と1個のイオン形成官能基を含有する化合物(例えばジメチロールブタン酸等)とを反応させてウレタンプレポリマーを製造し、ついでこれを中和・水添加して乳化した後、水酸基含有(メタ)アクリル系モノマーを混合し、鎖延長と(メタ)アクリル系モノマーのラジカル重合を行うことで、アクリル樹脂とウレタン樹脂が複合化された樹脂組成物水性エマルションが開示されている。
特開平9−143211号公報 特開平9−165425号公報 特開2004−24435号公報
しかしながら、特許文献1に記載の方法では、ウレタンプレポリマー中にアクリル樹脂と結合する部分(二重結合)がないので、水性分散体をラジカル重合させても(メタ)アクリル系モノマーとウレタンプレポリマーが別々に重合してポリマー(アクリル樹脂とウレタン樹脂)となるだけであり、すなわち、アクリル樹脂とウレタン樹脂の単なる混合物が得られるだけである。よって、得られた水性ウレタン樹脂は溶液安定性が低く、耐アルコールショック性(水性樹脂をアルコール系溶剤で希釈したときの増粘や凝集物の発生)、凍結融解サイクル(水性樹脂を凍結させた後、融解させることを繰り返す操作)に対する耐久性、熱安定性に劣る傾向があった。
特許文献2に記載の方法では、グリセリンモノアクリレートを含むモノマー中でウレタンプレポリマーを製造しているため、ウレタンプレポリマー中に不飽和結合が導入され、不飽和単量体とウレタンプレポリマーとがラジカル重合する。しかし、グリセリンモノアクリレートは不純物としてモノアルコール化合物やトリアルコール化合物を含む場合が多い。そのため、ウレタンプレポリマーの製造工程中に、モノアルコール化合物がウレタンプレポリマーと反応することで反応が停止して低分子量化したり、トリアルコール化合物によってウレタンプレポリマーの増粘やゲル化を引き起こしたりすることがあった。
特許文献3に記載の方法では、ウレタンプレポリマーを乳化した後に、水酸基含有(メタ)アクリル系モノマーを混合し、鎖延長と(メタ)アクリル系モノマーのラジカル重合を行う。この場合、ウレタンプレポリマー中のイソシアネート基と水酸基含有(メタ)アクリル系モノマーとの反応の方が、鎖延長の反応よりも進行しやすいため、鎖延長の反応はウレタンプレポリマー中の未反応のイソシアネート基と鎖延長剤との反応に限定されやすい。その結果、分子量が制限されやすく、特に高分子量化が困難となる。従って、得られる水性樹脂は低分子量になる傾向にあり、塗膜の耐溶剤性が低下しやすかった。
また、ウレタンプレポリマーの乳化後に添加する(メタ)アクリル系モノマーは活性水素(水酸基)を有するため、得られる水性樹脂全体の親水性が高くなりやすく、塗膜の耐水性が低下しやすかった。
本発明は上記事情に鑑みてなされたもので、耐溶剤性および耐水性が良好な塗膜を形成でき、かつ耐アルコールショック性、凍結融解サイクルに対する耐久性、熱安定性に優れた水性ウレタン変性(メタ)アクリル樹脂分散液の製造方法の提供を課題とする。
本発明の水性ウレタン変性(メタ)アクリル樹脂分散液の製造方法は、活性水素を有しない(メタ)アクリル系モノマー(A)中で、ポリイソシアネート(a)と、分子内に、水酸基及びアミノ基から選ばれる官能基を2つ以上含み、かつ酸性官能基を1つ以上有する化合物(b)と、酸性官能基を有しないポリオール(c)と、分子内にグリシジル基及び重合性不飽和基を有する化合物(d)(ただし、前記(メタ)アクリル系モノマー(A)を除く。)とを反応させて、重合性不飽和基及び酸性官能基を有するイソシアネート末端ウレタンプレポリマー(B)を製造し、ついで、イソシアネート末端ウレタンプレポリマー(B)中の酸性官能基を中和し、水希釈して乳化させた後、イソシアネート末端ウレタンプレポリマー(B)の鎖延長反応と、前記(メタ)アクリル系モノマー(A)およびイソシアネート末端ウレタンプレポリマー(B)のラジカル重合反応とを行うことを特徴とする。
また、本発明の水性ウレタン変性(メタ)アクリル樹脂分散液の製造方法は、活性水素を有しない(メタ)アクリル系モノマー(A)中で、ポリイソシアネート(a)と、分子内に、水酸基及びアミノ基から選ばれる官能基を2つ以上含み、かつ酸性官能基を1つ以上有する化合物(b)と、酸性官能基を有しないポリオール(c)とを反応させて、酸性官能基を有するイソシアネート末端ウレタンプレポリマー(C)を製造し、ついで、イソシアネート末端ウレタンプレポリマー(C)中の酸性官能基を中和し、水希釈して乳化させた後、イソシアネート末端ウレタンプレポリマー(C)の鎖延長反応と、前記(メタ)アクリル系モノマー(A)および分子内にグリシジル基及び重合性不飽和基を有する化合物(d)(ただし、前記(メタ)アクリル系モノマー(A)を除く。)のラジカル重合反応と、イソシアネート末端ウレタンプレポリマー(C)および前記化合物(d)の付加反応とを行うことを特徴とする。
本発明の水性ウレタン変性(メタ)アクリル樹脂分散液の製造方法によれば、耐溶剤性および耐水性が良好な塗膜を形成でき、かつ耐アルコールショック性、凍結融解サイクルに対する耐久性、熱安定性に優れた水性ウレタン変性(メタ)アクリル樹脂分散液が得られる。
以下、本発明を詳細に説明する。
なお、本明細書において、(メタ)アクリレートは、アクリレートとメタクリレートの両方を示し、(メタ)アクリル酸は、アクリル酸とメタクリル酸の両方を示すものとする。
本発明の水性ウレタン変性(メタ)アクリル樹脂分散液(以下、「水性樹脂分散液」という。)の製造方法は、活性水素を有しない(メタ)アクリル系モノマー(A)(以下、「モノマー(A)」という。)中で、ウレタンプレポリマーを製造し、その後に、ウレタンプレポリマーとモノマー(A)を含む混合物をラジカル重合する方法である。これにより、モノマー(A)とウレタンプレポリマーとがラジカル重合し、アクリル樹脂とウレタン樹脂とが結合した複合体(水性樹脂)の分散液が得られる。
[モノマー(A)]
モノマー(A)は、分子内に活性水素を有しないアクリル系モノマーである。ここで「活性水素を有しない」とは、カルボキシル基、水酸基、メチロール基、シラノール基、1級アミノ基、2級アミノ基を含有しない、ということである。
このようなモノマー(A)としては、例えば(メタ)アクリル系モノマーが挙げられる。例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、ノニルメタクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、炭素数12〜13のアルキルを有するメタクリレート、トリデシルメタクリレート、ステアリルメタクリレート、メトキシエチル(メタ)アクリレート、エトキシエチル(メタ)アクリレート、プロポキシエチルアクリレート、ブトキシエチルアクリレート、テトラヒドロフルフリルメタクリレート、メトキシエトキシエチルアクリレート、エトキシエトキシエチルアクリレート、プロポキシエトキシエチルアクリレート、ブトキシエトキシエチルアクリレート等の(メタ)アクリル酸アルキルエステル;(メタ)アクリルアミド、N−ブトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N−メチルアクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、N−イソプロピル(メタ)アクリルアミド等のアミド基を有する不飽和単量体;N,N−ジメチルアミノエチルメタクリレート、N,N−ジエチルアミノエチルメタクリレート、N,N−ジメチルアミノプロピルメタクリレート等の三級アミノ基を有する(メタ)アクリル酸エステル;N−ビニルピロリドン、N−ビニルイミダゾール、N−ビニルカルバゾール等の含窒素不飽和単量体;シクロペンチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート等の脂環式(メタ)アクリレート;スチレン、α−メチルスチレン、メタクリル酸ベンジル、メタクリル酸フェニル等の芳香族不飽和単量体;ビニルトリエトキシシラン、γ−メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン等の含珪素不飽和単量体;オクタフルオロペンチル(メタ)アクリレート、パーフルオロシクロヘキシル(メタ)アクリレート等の含フッ素不飽和単量体;イソシアネート基をブロックした不飽和単量体等の不飽和基を一つ有する単量体類などが挙げられる。
また、モノマー(A)として、活性水素を有しない不飽和基を2つ有する不飽和単量体(例えばジビニルベンゼン、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート等)を用いてもよい。
これらのモノマー(A)は1種単独または2種以上を混合して使用することができる。また、モノマー(A)としては、後述する(a)〜(c)成分をよく溶解させる化合物を選択することが望ましいが、初期仕込みの段階で完全溶解させなくても、昇温後反応の進行に伴い溶解させるような化合物を選択してもよい。
[ウレタンプレポリマー]
ウレタンプレポリマーは、ポリイソシアネート(a)(以下、「(a)成分」という。)と、分子内に、水酸基及びアミノ基から選ばれる官能基を2つ以上含み、かつ酸性官能基を1つ以上有する化合物(b)(以下、「(b)成分」という。)と、酸性官能基を有しないポリオール(c)(以下、「(c)成分」という。)と、分子内にグリシジル基及び重合性不飽和基を有する化合物(d)(以下、「(d)成分」という。)との反応により生成される。
<(a)成分>
(a)成分は、ポリイソシアネートである。
(a)成分としては、分子内にイソシアネート基を2個以上有する化合物が好ましい。このような(a)成分としては、例えば脂肪族ポリイソシアネート、芳香族ポリイソシアネート、脂環式ポリイソシアネートおよびその誘導体などが挙げられる。具体的には、キシリレンジイソシアネート、ポリフェニルメタンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート、水添ジフェニルメタンジイソシアネート、水添キシリレンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネートなどのジイソシアネートおよびこれらの重合物が挙げられる。
また、(a)成分として、例えば上記の4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネートなどのポリイソシアネート化合物と、アロファネート結合、イソシアヌレート結合、カルボジイミド結合などを有する化合物との縮合物を用いてもよい。
これら(a)成分は、1種単独または2種以上を混合して使用することができる。これら(a)成分のうち、詳しくは後述するが、モノマー(A)中で製造されたウレタンプレポリマーを水に分散する際のイソシアネート基と水との反応性、および得られる水性樹脂分散液の耐候性の点から、脂肪族ポリイソシアネート、脂環式ポリイソシアネートが好ましい。さらに、モノマー(A)との相溶性の点から、脂環式ポリイソシアネートが好ましく、中でもイソホロンジイソシアネートが特に好ましい。
<(b)成分>
(b)成分は、分子内に、水酸基及びアミノ基から選ばれる官能基を2つ以上含み、かつ酸性官能基を1つ以上有する化合物であり、ウレタンプレポリマー中に酸性官能基を導入するために用いられる。
水酸基及びアミノ基は、(a)成分のイソシアネート基と反応し得る官能基である。
また、酸性官能基としては、カルボキシル基、スルホン酸基などが挙げられる。
このような(b)成分としては、酸性官能基としてカルボキシル基を有する場合、例えばジメチロールプロピオン酸、ジメチロール酢酸、ジメチロールブタン酸、ジメチロールヘプタン酸、ジメチロールノナン酸、ジヒドロキシ安息香酸等の炭素数1〜9のアルカノールカルボン酸類;1−カルボキシ−1,5−ペンチレンジアミン、3,5−ジアミノ安息香酸等のアミノ基含有カルボン酸類;ポリオキシプロピレントリオールと、無水マレイン酸や無水フタル酸とのハーフエステル化合物などが挙げられる。
一方、酸性官能基としてスルホン酸基を有する場合、例えばメタニル酸、2−アミノナフタレン−1−スルホン酸、4−アミノナノフタレン−1−スルホン酸、7−アミノー1,3−ナフタレンジスルホン酸、1−アミノ−2−ナフトール−4−スルホン酸等のアミノ基を有する化合物;5−スルホイソフタル酸のエチレングリコール付加物などが挙げられる。
(b)成分としては、酸性官能基としてカルボキシル基を有する化合物が好ましく、中でも、分子内に2個の水酸基と1個以上のカルボキシル基とを有する化合物がより好ましい。このような化合物としては、具体的に、ジメチロールプロピオン酸、ジメチロールブタン酸、ジメチロールヘプタン酸、ジメチロールノナン酸などのジメチロールアルカン酸類が挙げられる。これらの中でも、モノマー(A)への溶解性の観点から、ジメチロールプロピオン酸、ジメチロールブタン酸が特に好ましい。
<(c)成分>
(c)成分は、酸性官能基を有しないポリオールである。
(c)成分としては、分子内に水酸基を2個以上有する化合物が好ましい。このような(c)成分としては、低分子量ポリオール、高分子量ポリオールなどが挙げられる。
低分子量ポリオールとしては、例えばエチレングリコール、ジエチレングリコール、トリメチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、ヘキサメチレングリコール、ネオペンチルグリコール等の2価のアルコール;トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、グリセリン、ペンタエリスリトール、ソルビトール等の3価以上のアルコールなどが挙げられる。
一方、高分子量ポリオールとしては、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、アクリルポリオール、エポキシポリオールなどが挙げられる。
ポリエーテルポリオールとしては、ポリエチレングリコール、ポリオキシプロピレングリコール、ポリ(エチレン/プロピレン)グリコール、ポリテトラメチレングリコールなどが挙げられる。
ポリエステルポリオールとしては、ジオールと二塩基酸の重縮合物とからなるポリエステルが挙げられる。ジオールとしては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、3−メチル1,5−ペンタンジオールなどが挙げられる。二塩基酸としては、アジピン酸、アゼライン酸、セバチン酸、イソフタル酸、テレフタル酸などが挙げられる。また、上述したポリエステル以外にも、例えばポリカプロラクトン、ポリβ−メチル−δ−バレロラクトン等のラクトン系開環重合体ポリオール、ポリカーボネートジオールなどを用いてもよい。
アクリルポリオールとしては、水酸基を有するモノマーの共重合体が挙げられる。水酸基含有モノマーとしては、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチルアクリレート、ジヒドロキシアクリレート等が挙げられる。
エポキシポリオールとしては、アミン変性エポキシ樹脂等がある。
(c)成分としては、上述したポリオール以外にも、例えばポリブタジエンジオール、ひまし油などを用いてもよい。
これら(c)成分は1種単独または2種以上を混合して使用することができるが、被塗装物への密着性、塗装性、あるいは塗膜物性等のバランスをとるためには、化学構造の異なる2種類以上を混合して使用することが好ましい。また、分子量を適宜選択することによっても達成できる。
<(d)成分>
(d)成分は、分子内にグリシジル基及び重合性不飽和基を有する化合物(ただし、前記(メタ)アクリル系モノマー(A)を除く。)である。
(d)成分としては、例えばグリシジル(メタ)アクリレート、グリシジルオキシエチルメタクリレート、4−ヒドロキシブチルアクリレートグリシジルエーテル、3,4−エポキシシクロヘキシルメタクリレート、アリルグリシジルエーテルなどが挙げられる。中でもウレタンプレポリマーを製造する際の反応性の面から、グリシジル(メタ)アクリレートが好ましい。
[水性樹脂分散液の製造]
上述したように、水性樹脂分散液は、モノマー(A)中でウレタンプレポリマーを製造し、その後に、ウレタンプレポリマーとモノマー(A)を含む混合物をラジカル重合することで得られる。
ここで、水性樹脂分散液の製造について、具体的に説明する。水性樹脂分散液は、以下に示す製造方法(i)または製造方法(ii)により製造される。
<製造方法(i)>
製造方法(i)は、重合性不飽和基及び酸性官能基を有するイソシアネート末端ウレタンプレポリマー(B)(以下、「プレポリマー(B)」という。)を経由して水性樹脂分散液を製造する方法である。
まず、モノマー(A)中でプレポリマー(B)を製造する。プレポリマー(B)は、以下に示す製造方法(i−1)〜(i−3)により製造される。
(製造方法(i−1))
製造方法(i−1)では、まず、モノマー(A)中で、(a)成分と(b)成分と(c)成分とを反応(ウレタン化反応)させて、(b)成分由来の酸性官能基を有するイソシアネート末端ウレタンプレポリマー(C)(以下、「プレポリマー(C)という。」を製造する(第一工程)。
ついで、反応系内に(d)成分を添加して、プレポリマー(C)中の酸性官能基と(d)成分中のグリシジル基とを付加反応させ、プレポリマー(B)を得る(第二工程)。
(製造方法(i−2))
製造方法(i−2)では、まず、モノマー(A)中に、(b)成分と(c)成分と(d)成分とを仕込み、(b)成分中の酸性官能基と(d)成分中のグリシジル基とを付加反応させて、(b)成分由来の酸性官能基と(d)成分由来の重合性不飽和基を有するポリオール(D)(以下、ポリオール(D)という。)を製造する(第一工程)。
ついで、反応系内に(a)成分を添加して、(a)成分とポリオール(D)と(c)成分とをウレタン化反応させ、プレポリマー(B)を得る(第二工程)。
(製造方法(i−3))
製造方法(i−3)では、モノマー(A)中に、(a)成分と(b)成分と(c)成分と(d)成分とを仕込み、(a)成分と(b)成分と(c)成分とによるウレタン化反応と、(b)成分中の酸性官能基と(d)成分中のグリシジル基とによる付加反応とを同時に行い、プレポリマー(B)を得る。
上記製造方法(i−1)〜(i−3)のうち、水性樹脂分散液の溶液安定性、および水性樹脂分散液より形成される塗膜の耐水性や耐溶剤性が向上することから、製造方法(i−1)が好ましい。
ついで、上記製造方法(i−1)〜(i−3)のいずれかの方法によって得られたプレポリマー(B)と、モノマー(A)とを含む混合物に中和剤と水を添加して、プレポリマー(B)中の酸性官能基を中和すると共に水希釈して、乳化を行う。
その後、プレポリマー(B)の鎖延長反応と、プレポリマー(B)およびモノマー(A)のラジカル重合反応とを行うことによって、水性樹脂分散液を得る。
鎖延長反応とラジカル重合反応は同時に行ってもよいし、鎖延長反応を行った後にラジカル重合反応を行ってもよい。
なお、鎖延長反応を行う際には、鎖延長剤として詳しくは後述するが、水やポリアミン等を用いる。鎖延長剤として水を用いる場合には、製造工程の簡略化や工程時間の短縮の面で、鎖延長反応とラジカル重合反応を同時に行うのが好ましい。
一方、鎖延長剤として水以外(ポリアミンなど)を用いる場合には、反応熱緩和の面で、鎖延長反応を行った後にラジカル重合反応を行うのが好ましい。
<製造方法(ii)>
製造方法(ii)は、プレポリマー(C)を経由して水性樹脂分散液を製造する方法である。
まず、モノマー(A)中でプレポリマー(C)を製造する。プレポリマー(C)は、前記製造方法(i−1)と同様にして製造される。
ついで、プレポリマー(C)とモノマー(A)とを含む混合物に中和剤と水を添加して、プレポリマー(C)中の酸性官能基を中和すると共に水希釈して、乳化を行う。
その後、プレポリマー(C)の鎖延長反応と、モノマー(A)および(d)成分のラジカル重合反応と、プレポリマー(C)および(d)成分の付加反応とを行うことによって、水性樹脂分散液を得る。
プレポリマー(C)とモノマー(A)とを含む混合物に(d)成分を添加するタイミングは、混合物に中和剤と水を添加する前でもよいし、後でもよい。
また、鎖延長反応とラジカル重合反応と付加反応は同時に行ってもよいし、鎖延長反応を行った後にラジカル重合反応と付加反応を行ってもよい。後者の場合、ラジカル重合反応と付加反応は同時であってもよいし、付加反応を行った後にラジカル重合反応を行ってもよいし、ラジカル重合反応を行った後に付加反応を行ってもよい。
鎖延長剤として水を用いる場合には、製造工程の簡略化や工程時間の短縮の面で、鎖延長反応とラジカル重合反応と付加反応を同時に行うのが好ましい。
一方、鎖延長剤として水以外(ポリアミンなど)を用いる場合には、反応熱緩和の面で、鎖延長反応を行った後にラジカル重合反応と付加反応を行うのが好ましい。
<各成分の配合割合>
上述した製造方法(i)、(ii)においては、ウレタン樹脂とアクリル樹脂の比率が、質量比でウレタン樹脂:アクリル樹脂=1:9〜9:1となるように、各成分を配合するのが好ましい。より好ましくはウレタン樹脂:アクリル樹脂=3:7〜7:3であり、この範囲内で各成分を配合すれば、水性樹脂分散液をより安定して製造することができる。
なお、ウレタン樹脂が上述した比率より少ないと、モノマー(A)の分散安定性が低下し、ラジカル重合時にゲル化したり凝集物が発生したりしやすく、製造時の安定性が著しく下がる傾向にある。一方、ウレタン樹脂が上述した比率より多くなると、ウレタン化反応時の粘度が高くなることにより、攪拌効率が低下する傾向にある。
また、(b)成分は、ウレタンプレポリマー中に導入される酸性官能基の量、すなわち、ウレタンプレポリマー固形分換算での酸価が20〜110mgKOH/gとなるように配合されるのが好ましく、より好ましくは40〜90mgKOH/gである。酸価が低いと、ウレタンプレポリマーの自己乳化性が不足し、分散安定性に劣る傾向がある。一方、酸価が高いと、水性樹脂分散液より形成される塗膜の物性や耐水性に劣る傾向がある。
特に、酸性官能基としてカルボキシル基を有するポリオールを(b)成分として用いる場合、製造方法(i−1)、(ii)におけるプレポリマー(C)と(d)成分との付加反応、および製造方法(i−2)、(i−3)における(b)成分と(d)成分との付加反応は、通常、(d)成分のグリシジル基に対して、(b)成分由来のカルボキシル基が過剰に存在する系内で行われる。従って、カルボキシル基とグリシジル基の比率が、モル比でカルボキシル基:グリシジル基=1:0.01〜1:1となるように、(b)成分と(d)成分を配合するのが好ましい。より好ましくは、カルボキシル基:グリシジル基=1:0.1〜1:0.5であり、この範囲内で配合すれば、得られる水性樹脂分散液の溶液安定性と、該水性樹脂分散液より形成される塗膜の耐溶剤性の点でより好ましい。
なお、グリシジル基が上述した比率より少ないと、ウレタンプレポリマー中に導入できる重合性不飽和基量が少なくなり、その結果、ウレタン樹脂−アクリル樹脂間の結合数が減少し、水性樹脂分散液の溶液安定性に劣る傾向がある。一方、グリシジル基が上述した比率より多くなると、ウレタンプレポリマー中の重合性不飽和基量が過剰となる。その結果、製造方法(i)におけるプレポリマー(B)とモノマー(A)とのラジカル重合時、または製造方法(ii)におけるプレポリマー(C)とモノマー(A)とのラジカル重合時に、高粘度化やゲル化したり、凝集物が発生したりし、製造時の安定性が低下する傾向にある。
また、製造方法(i−1)、(ii)においてプレポリマー(C)を製造する際には、(a)成分、(b)成分、(c)成分の比率が、イソシアネート基と水酸基のモル比でイソシアネート基:水酸基=1:2〜2:1となるように、(a)〜(c)成分を配合するのが好ましい。より好ましくは、イソシアネート基:水酸基=1:1〜2:1であり、この範囲内で配合すれば、末端にイソシアネート基を有するウレタンプレポリマーを容易に製造でき、次工程の鎖延長反応において高分子量化しやすくなるため好ましい。
<各反応について>
(ウレタン化反応)
モノマー(A)中で行われるウレタン化反応は、通常、反応系内の温度50〜100℃、反応時間3〜10時間の条件で行うことが好ましい。特に反応時間が短すぎると未反応物質が残る可能性があり、水性樹脂分散液より得られる塗膜の物性が低下しやすくなる。
また、ウレタン化反応では、ウレタン化反応の熱によってモノマー(A)が重合するのを防ぐために、空気の存在下でp−メトキシフェノール等の重合禁止剤をモノマー(A)100質量部に対し0.002〜0.3質量部程度の範囲で、モノマー(A)に加えておいてもよい。
また、ウレタン化反応では、ウレタン化反応の進行が遅い場合、触媒をウレタンプレポリマー100質量部に対し0.1〜1.0質量部程度添加してもよい。
触媒としては、例えばジブチルチンジラウレート、ジブチルチンジオクトエート、スタナスオクトエート等の有機スズ化合物;トリエチルアミン、トリエチレンジアミン等の3級アミン化合物などが挙げられる。
(付加反応)
プレポリマー(C)と(d)成分の付加反応には、以下に示す方法があるが、付加反応効率の点から、(1)が特に好ましい。
(1)製造方法(i‐1):モノマー(A)中で、プレポリマー(C)と(d)成分を付加反応させる方法。
(2)製造方法(ii):プレポリマー(C)を中和・水希釈する前に、(d)成分を反応系内に添加し、プレポリマー(C)を乳化した後、水中でプレポリマー(C)と(d)成分を付加反応させる方法。
(3)製造方法(ii):プレポリマー(C)を中和・水希釈した後に、(d)成分を反応系内に添加し、プレポリマー(C)を乳化した後、水中でプレポリマー(C)と(d)成分を付加反応させる方法。
また、製造方法(i−1)、(ii)におけるプレポリマー(C)と(d)成分との付加反応、および製造方法(i−2)、(i−3)における(b)成分と(d)成分との付加反応は、反応系内に触媒がなくても進行するが、触媒を使用すればより容易に進行できる。
触媒としては、例えば水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、アンモニア、トリエチルアミン、ジメチルベンジルアミン、ジメチルエタノールアミン、ジルコニウムオクトエート、亜鉛ナフテネート等が挙げられる。
(中和・乳化)
ウレタンプレポリマーとモノマー(A)とを含む混合物に中和剤と水を添加して、ウレタンプレポリマーの酸性官能基を中和し、水希釈して乳化させる方法には、以下に示す方法があるが、中和熱が抑制され、さらに乳化が容易になることから、(4)、(6)が特に好ましい。
(4)製造方法(i):プレポリマー(B)とモノマー(A)とを含む混合物に、中和剤と水を混合した溶液を徐々に滴下して乳化させる方法。
(5)製造方法(i):プレポリマー(B)とモノマー(A)とを含む混合物に、中和剤を添加した後に、水を添加して乳化させる方法。
(6)製造方法(ii):プレポリマー(C)とモノマー(A)とを含む混合物に、中和剤と水を混合した溶液を徐々に滴下して乳化させる方法。
(7)製造方法(ii):プレポリマー(C)とモノマー(A)とを含む混合物に、中和剤を添加した後に、水を添加して乳化させる方法。
中和剤としては、有機アミン類や無機類などの塩基性化合物を用いることができる。
有機アミン類としては、例えばメチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、ブチルアミン、ヘキシルアミン、オクチルアミン、エタノールアミン、プロパノールアミン、ジエタノールアミン、N−メチルジエタノールアミン、ジメチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、N,N−ジメチルエタノールアミン、2−ジメチルアミノ−2−メチル−1−プロパノール、2−アミノ−2−メチル−1−プロパノール、モルホリンなどが挙げられる。
無機類としては、例えばリチウム、カリウム、ナトリウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、アンモニアなどが挙げられる。
これらの中でも、塗膜にした後に揮発性を有する点で有機アミン類とアンモニアが好ましく、特にトリエチルアミン、N,N−ジメチルエタノールアミンが好ましい。
中和剤の添加量は、(b)成分が酸性官能基としてカルボキシル基を有する場合、ウレタンプレポリマー中のカルボキシル基1当量に対して、0.6〜1.2当量(中和率換算で60〜120%)程度が好ましい。中和率が60%より低いとウレタンプレポリマーの乳化力が低下し、モノマー(A)とのラジカル重合時に、ゲル化や凝集物が発生する傾向にある。中和率が120%よりも高くなると、水分散時の系内の粘度が高くなり、乳化が困難となる。また、水性樹脂分散液中に残存する中和剤の量が多くなるため、形成される塗膜の耐水性が低下することがある。
なお、ウレタンプレポリマーの粘度が高く、あるいは酸価が低いことによって乳化が困難な場合は、反応系内に乳化剤を添加し、中和剤と併用することも可能である。
乳化剤の種類としては、乾燥塗膜の耐水性・耐候性等を考慮し、後述する反応性乳化剤を用いるのが好ましい。
(鎖延長反応)
製造方法(i)において乳化されたプレポリマー(B)、および製造方法(ii)において乳化されたプレポリマー(C)の鎖延長反応は、反応系内に存在する水がそのまま鎖延長剤として使われるが、ウレタン樹脂をより高分子量化するには、鎖延長剤としてポリアミン類を使用するのが好ましい。
ポリアミン類を使用するとウレタン樹脂中にウレア結合が形成され、ポリウレタン−ウレア樹脂が得られ、ウレタン樹脂部分の高分子量化が図れる。特に、3官能以上のポリアミン類は架橋剤としても作用するので、塗膜の耐溶剤性もより向上する。
ポリアミンとしては、例えばエチレンジアミン、プロピレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、トリエチレンテトラミン、イソホロンジアミン、ピペラジン、ジフェニルジアミン等の脂肪族系、脂環式系、芳香族系のジアミン、トリアミンなどが挙げられる。
さらに、単官能のモノアミンを併用すれば鎖延長反応の停止が起こるため、分子量の調整も容易である。
水を鎖延長剤として使用する場合、反応系内の温度を70℃以上にすると、水を介する鎖延長反応が進行しやすくなるので好ましい。また、この鎖延長反応は、後述のモノマー(A)とのラジカル重合と同時に行うことも可能である。
一方、水以外の鎖延長剤を使用する場合、プレポリマー(B)やプレポリマー(C)中のイソシアネート基と水との反応を抑制するため、これらウレタンプレポリマーを乳化させる工程の前に、または乳化工程と同時に、反応系内の温度を70℃以下に下げることが好ましい。より好ましくは50℃以下であり、この温度に下げることで、水とイソシアネート基の反応を抑制でき、水以外の鎖延長剤との反応を効率良く進行させ、ウレタンプレポリマーを高分子量化することが可能となる。
特に、ポリアミンを鎖延長剤として用いて鎖延長反応を行う場合は、ポリアミンとイソシアネートの反応性が高いことから、反応系内の温度を20〜80℃にするのが好ましい。温度の上限値は60℃以下が好ましい。また、水に溶解するポリアミンを用いた場合、ポリアミンを適量の水に混合し、その溶液を反応系内に滴下しながら徐々に導入する方法が、反応熱の緩和とウレタン樹脂のゲル化抑制の点から好ましい。
(ラジカル重合反応)
製造方法(i)におけるプレポリマー(B)とモノマー(A)とのラジカル重合反応、および製造方法(ii)におけるモノマー(A)と(d)成分とのラジカル重合反応には、以下に示す方法があるが、製造工程の簡略化、工程時間の短縮の面で、(8)、(10)が特に好ましい。
(8)製造方法(i):モノマー(A)の全量をウレタン化反応時の溶媒として用い、プレポリマー(B)を乳化した後に、モノマー(A)の全量をそのまま反応器内でラジカル重合させる方法。
(9)製造方法(i):モノマー(A)の一部をウレタン化反応時の溶媒として用い、プレポリマー(B)を乳化した後に、残りのモノマー(A)を反応系内に滴下して添加し、ラジカル重合させる方法。
(10)製造方法(ii):モノマー(A)の全量をウレタン化反応時の溶媒として用い、プレポリマー(C)を乳化した後に、モノマー(A)の全量をそのまま反応器内でラジカル重合させる方法。
(11)製造方法(ii):モノマー(A)の一部をウレタン化反応時の溶媒として用い、プレポリマー(C)を乳化した後に、残りのモノマー(A)を反応系内に滴下して添加し、ラジカル重合させる方法。
ラジカル重合反応を行う際には、通常、重合開始剤を用いる。重合開始剤は水溶性であってもよく、油溶性であってもよい。
重合開始剤としては、例えばアゾビスイソブチロニトリル、アゾビスイソブチルバレロニトリル等のアゾ化合物;過酸化ベンゾイル、イソブチリルパーオキサイド、オクタノイルパーオキサイド、クミルパーオキシオクテート、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシアセテート、ラウリルパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド、ジ−2−エチルヘキシルパーオキシジンカーボネイト等の有機過酸化物;過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム、過酸化水素等の無機パーオキサイド化合物などが挙げられる。
有機または無機パーオキサイド化合物は、還元剤と組み合わせてレドックス系開始剤として使用することも可能である。この場合に用いられる還元剤としては、L−アスコルビン酸、L−ソルビン酸、メタ重亜硫酸ナトリウム、硫酸第二鉄、塩化第二鉄、ロンガリットなどが挙げられる。
これら重合開始剤は、1種単独または2種以上を混合して使用することができる。
重合開始剤は、モノマー(A)100質量部に対して0.05〜5.00質量部の範囲内で使用するのが好ましい。
また、ラジカル重合反応は、通常、40〜100℃の温度で行うことが好ましいが、70℃以下での比較的低温での重合や、重合速度を促進させたい場合は、L−アスコルビン酸、L−ソルビン酸、メタ重亜硫酸ナトリウム、硫酸第二鉄、塩化第二鉄、ロンガリット等の還元剤と、過酸化物系の重合開始剤とを組み合わせたレドックス系を用いてもよい。
また、重合開始剤として油溶性重合開始剤を用いる場合は、予めウレタンプレポリマーとモノマー(A)を含む混合物中に溶解させておくことが好ましい。
一方、重合開始剤として水溶性重合開始剤を用いる場合は、ウレタンプレポリマーとモノマー(A)を含む混合物を水で希釈した後に、重合開始剤を添加するのが好ましい。重合開始剤を添加する際は、一度に重合開始剤の全量を添加する方法、重合開始剤の全量を時間かけて滴下する方法、始めに重合開始剤の一部を添加し残りを後から添加する方法のいずれの方法で行ってもよい。
また、ラジカル重合反応を行う際には、分子量を調節する目的で、公知の連鎖移動剤、例えばオクチルメルカプタン、ラウリルメルカプタン、2−メルカプトエタノール、ターシャルドデシルメルカプタン、チオグリコール酸などを使用してもよい。
ラジカル重合反応では、プレポリマー(B)やプレポリマー(C)の乳化力が低い場合、重合中に凝集物、カレットが発生して製造の安定性が低下することがある。
そこで、このような場合には、ラジカル重合反応時に乳化剤を添加するのが好ましく、これにより凝集物・カレットの発生を低減することができる。
ラジカル重合反応時に添加する乳化剤としては、乾燥塗膜の耐水性や耐候性等を考慮し、反応性乳化剤を用いることが好ましい。例えば、反応部位としてアリル基を分子内に有する反応性乳化剤を用いることができる。具体的には、株式会社ADEKA製の「アデカリアソープSR−10」、「ER−10」、「ER−30」等が挙げられる。
また、反応性乳化剤としては、反応部位としてアリル基以外の反応基を持つアニオン性反応性乳化剤を使用することもでき、具体的には花王株式会社製の「ラテムルPD−104」等が挙げられる。
反応性乳化剤の使用量は、ウレタンプレポリマー製造時の重合安定性、並びに塗膜の耐水性および耐候性の点から、モノマー(A)100質量部に対して、1〜10質量部とすることが好ましい。
以上説明したように本発明によれば、ウレタン樹脂の構成成分の1つとして(d)成分を用いることによって、ウレタンプレポリマーに(d)成分由来の重合性不飽和基を導入できる。よって、本発明により得られる水性樹脂分散液は、ラジカル重合反応時にモノマー(A)とウレタンプレポリマーとがラジカル重合し、アクリル樹脂とウレタン樹脂とが結合した複合体の分散液として得られるので、耐アルコールショック性、凍結融解サイクルに対する耐久性、熱安定性に優れる。
また、本発明では、アクリル樹脂を構成するアクリル系モノマーとしてモノマー(A)成分を用いる。モノマー(A)は活性水素を有しないので、水性樹脂の親水性が高まるのを抑制できる。加えて、モノマー(A)はウレタンプレポリマー中のイソシアネート基とは反応しにくい。よって、ウレタンプレポリマー中のイソシアネート基と鎖延長剤との反応が妨げられにくいので、ウレタン樹脂部分を容易に高分子量化できる。
従って、本発明により得られる水性樹脂分散液は、耐溶剤性および耐水性が良好な塗膜を形成できる。
本発明により得られる水性樹脂分散液は、そのままコーティング剤、塗料、インキなどとして使用することができる。
なお、水性樹脂分散液をそのままコーティング剤、塗料、インキなどして使用する場合、樹脂固形分については特に限定されないが、通常、3〜50質量%である。樹脂固形分が高すぎる場合は、所望の値になるように、水性樹脂分散液に水や有機溶剤を配合し、希釈して使用してもよい。
以下、本発明について実施例を挙げて具体的に説明する。ただし、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、本実施例において、特に断りがない限り「部」は「質量部」を意味する。
各種測定方法、評価方法は以下の通りである。
<水性樹脂分散液の物性測定>
(樹脂固形分の測定)
予め水性樹脂分散液の質量を測定した。ついで、水性樹脂分散液を105±5℃で2時間乾燥させ、残分の質量を測定し、下記式より樹脂固形分を求めた。
樹脂固形分(質量%)=残分の質量(g)/乾燥前の水性樹脂分散液の質量(g)×100
(粘度の測定)
水性樹脂分散液を25±1℃で2時間放置した後、B型粘度計(東機産業株式会社製、「TV−22形粘度計 スピンドルタイプ」)を用いて、水性樹脂分散液の粘度を測定した。
(pHの測定)
水性樹脂分散液を25±1℃で2時間放置した後、pHメーター(東亜ディーケーケー株式会社製、「Gシリーズ HM−30G」)を用いて、水性樹脂分散液のpHを測定した。
<溶液安定性試験>
(耐アルコールショック性の評価)
水性樹脂分散液/イソプロピルアルコール=1/1(質量比)、または水性樹脂散液/メタノール=1/1(質量比)で配合し、それぞれを攪拌して水性樹脂水分散液のアルコール配合溶液を作製した。
ついで、得られたアルコール配合液を25℃で2時間放置した後、B型粘度計を用いて、アルコール配合液の粘度を測定した。そして、アルコール配合前の水性樹脂分散液の粘度に対する、アルコール配合後の粘度の上昇率を求め、さらに凝集物の発生の有無について目視にて観察し、以下の評価基準に基づき耐アルコールショック性の評価を行った。
5:粘度上昇率が50%未満であり、凝集物が発生していない。
4:粘度上昇率が50%以上200%未満であり、凝集物が発生していない。
3:粘度上昇率が200%以上500%未満であり、凝集物が発生していない。
2:粘度上昇率が500%以上であり、凝集物が発生していない。
1:ゲル化あるいは凝集物が発生し、使用が不可能である。
(凍結融解サイクルに対する耐久性の評価)
水性樹脂分散液を0℃の条件下において完全に凍結させた後、50℃の温水中で2時間放置し溶解させた。本操作を5回繰り返し、水性樹脂水分散液の凍結融解サイクル後溶液を作製した。
ついで、得られた凍結融解サイクル後溶液を25℃で2時間放置した後、B型粘度計を用いて、凍結融解サイクル後溶液の粘度を測定した。そして、凍結融解サイクル前の水性樹脂分散液の粘度に対する、凍結融解サイクル後の粘度の上昇率を求め、さらに凝集物の発生の有無について目視にて観察し、以下の評価基準に基づき耐アルコールショック性の評価を行った。
5:粘度上昇率が10%未満であり、凝集物が発生していない。
4:粘度上昇率が10%以上30%未満であり、凝集物が発生していない。
3:粘度上昇率が30%以上50%未満であり、凝集物が発生していない。
2:粘度上昇率が50%以上であり、凝集物が発生していない。
1:ゲル化あるいは凝集物が発生し、使用が不可能である。
(熱安定性の評価)
水性樹脂分散液を50℃下で30日間放置した。放置後の水性樹脂分散液を25℃で2時間放置した後、B型粘度計を用いて、放置後の水性樹脂分散液の粘度を測定した。そして、放置前の水性樹脂分散液の粘度に対する、放置後の粘度の上昇率を求め、さらに凝集物の発生の有無について目視にて観察し、以下の評価基準に基づき耐アルコールショック性の評価を行った。
5:粘度上昇率が10%未満であり、凝集物が発生していない。
4:粘度上昇率が10%以上30%未満であり、凝集物が発生していない。
3:粘度上昇率が30%以上50%未満であり、凝集物が発生していない。
2:粘度上昇率が50%以上であり、凝集物が発生していない。
1:ゲル化あるいは凝集物が発生し、使用が不可能である。
<塗膜試験>
(耐溶剤性の評価)
水性樹脂分散液100部に対し、ブチルセロソルブを15部配合して、クリヤー塗料を作製した。
ついで、表面をメタノールで拭いた処理済PETシートに、バーコーターを用いて乾燥膜厚が20μmになるようにクリヤー塗料を塗装し、70℃×40分間乾燥させ、評価用塗膜を得た。
トルエン、メチルエチルケトン、酢酸エチル、イソプロピルアルコールのいずれかの溶剤をしみ込ませたガーゼを、評価用塗膜上に50回ラビングした後、塗膜の外観変化を目視にて観察し、以下の評価基準に基づき耐溶剤性を評価した。
5:曇りや白化が全く無い。
4:曇りや白化がごくわずかにあるが、問題ない。
3:曇り、白化が認められる。
2:かなり白化している。
1:塗膜のキズ、白化が激しい。
(耐水性の評価)
耐溶剤性の評価と同様にして、評価用塗膜を得た。
脱イオン水をしみ込ませたガーゼを、評価用塗膜上に荷重1kgをかけた状態で100回ラビングした後、塗膜の外観変化を目視にて観察し、以下の評価基準に基づき耐溶剤性を評価した。
5:曇りや白化が全く無い。
4:曇りや白化がごくわずかにあるが、問題ない。
3:曇り、白化が認められる。
2:かなり白化している。
1:塗膜のキズ、白化が激しい。
[実施例1]
製造方法(i−1)を採用し、以下のようにして水性樹脂分散液を得た。
攪拌機、温度計、コンデンサーを備えた四つ口フラスコに、イソホロンジイソシアネートを11部、ジメチロールブタン酸を5部、ポリオールA(3−メチル−1,5−ペンタンジオールとセバシン酸から得られる数平均分子量1000のポリエステルジオール)を7部、ポリオールB(数平均分子量1000のポリエーテルジオール)を7部、メチルメタクリレートを52部、2−エチルヘキシルアクリレートを17部仕込んだ。この混合物を攪拌しながら80℃に加熱して3時間保持し、ウレタン化反応を行い、酸性官能基を有するイソシアネート末端ウレタンプレポリマー(プレポリマー(C))の(メタ)アクリル系モノマー溶液を得た。
ついで、反応器内にグリシジルメタクリレートを0.65部、ジメチルアミノエチルメタクリレートを0.35部添加し、80℃で2時間反応させ、重合性不飽和基及び酸性官能基を有するイソシアネート末端ウレタンプレポリマー(プレポリマー(B))の(メタ)アクリル系モノマー溶液を得た。
ついで、内温が50℃以下になるまで冷却し、トリエチルアミン3.4部と脱イオン水223部を混合した溶液を、30分間かけて系内に滴下した。溶液が均一に乳化された後、脱イオン水3部に過硫酸カリウム0.15部を溶解させた溶液を系内に添加し、徐々に昇温した。発熱を確認後、75℃で制御して1時間保持しラジカル重合を行った。その後脱イオン水3部に過硫酸カリウム0.15部を溶解させた溶液をさらに追加し、1.5時間ラジカル重合を行い、水性樹脂分散液(P−1)を得た。
得られた水性樹脂分散液(P−1)について物性を測定した。結果を表1に示す。また、水性樹脂分散液(P−1)の溶液安定性試験、および塗膜試験を行った。結果を表3に示す。
[実施例2]
表1に示す組成に変更した以外は、実施例1と同様にして水性樹脂分散液(P−2)を得た。
得られた水性樹脂分散液(P−2)について物性を測定した。結果を表1に示す。また、水性樹脂分散液(P−2)の溶液安定性試験、および塗膜試験を行った。結果を表3に示す。
[実施例3]
製造方法(i−1)を採用し、以下のようにして水性樹脂分散液を得た。
攪拌機、温度計、コンデンサーを備えた四つ口フラスコに、イソホロンジイソシアネートを17部、ジメチロールブタン酸を7.5部、ポリオールAを8.5部、メチルメタクリレートを50部、ノルマルブチルメタクリレートを14.15部仕込んだ。この混合物を攪拌しながら80℃に加熱して3時間保持し、ウレタン化反応を行い、プレポリマー(C)の(メタ)アクリル系モノマー溶液を得た。
ついで、反応器内にグリシジルメタクリレートを2.5部、ジメチルアミノエチルメタクリレートを0.35部添加し、80℃で2時間反応させ、プレポリマー(B)の(メタ)アクリル系モノマー溶液を得た。
ついで、内温が50℃以下になるまで冷却し、トリエチルアミン5.2部と脱イオン水151部を混合した溶液を30分間かけて系内に滴下した。溶液が均一に乳化された後、脱イオン水25部にエチレンジアミン0.5部を溶解させた水溶液を30分間かけて系内に滴下し、内温50℃で制御して30分間保持した。
ついで、脱イオン水3部に過硫酸カリウム0.15部を溶解させた溶液を系内に添加し徐々に昇温した。発熱を確認後、75℃で制御して1時間保持しラジカル重合を行った。その後、脱イオン水3部に過硫酸カリウム0.15部を溶解させた溶液をさらに追加し、1.5時間ラジカル重合を行い、水性樹脂分散液(P−3)を得た。
得られた水性樹脂分散液(P−3)について物性を測定した。結果を表1に示す。また、水性樹脂分散液(P−3)の溶液安定性試験、および塗膜試験を行った。結果を表3に示す。
[実施例4〜6]
表1に示す組成に変更した以外は、実施例1と同様にして水性樹脂分散液(P−4)〜(P−6)を得た。
得られた水性樹脂分散液(P−4)〜(P−6)について物性を測定した。結果を表1に示す。また、水性樹脂分散液(P−4)〜(P−6)の溶液安定性試験、および塗膜試験を行った。結果を表3に示す。
[実施例7]
製造方法(i−2)を採用し、以下のようにして水性樹脂分散液を得た。
攪拌機、温度計、コンデンサーを備えた四つ口フラスコに、ジメチロールブタン酸を5部、ポリオールAを7部、ポリオールBを7部、メチルメタクリレートを52部、2−エチルヘキシルアクリレートを17部、グリシジルメタクリレートを0.65部、ジメチルアミノエチルメタクリレートを0.35部仕込んだ。この混合物系を攪拌しながら80℃に加熱して2時間保持し、付加反応を行い、酸性官能基と重合性不飽和基を有するポリオール(ポリオール(D))を得た。
ついで、反応器内にイソホロンジイソシアネートを11部添加し、80℃で3時間ウレタン化反応を行い、プレポリマー(B)の(メタ)アクリル系モノマー溶液を得た。
ついで、内温が50℃以下になるまで冷却し、トリエチルアミン3.4部と脱イオン水223部を混合した溶液を30分間かけて系内に滴下した。溶液が均一に乳化された後、脱イオン水3部に過硫酸カリウム0.15部を溶解させた溶液を系内に添加し徐々に昇温した。発熱を確認後、75℃で制御して1時間保持しラジカル重合を行った。その後、脱イオン水3部に過硫酸カリウム0.15部を溶解させた溶液をさらに追加し、1.5時間ラジカル重合を行い、水性樹脂分散液(P−7)を得た。
得られた水性樹脂分散液(P−7)について物性を測定した。結果を表1に示す。また、水性樹脂分散液(P−7)の溶液安定性試験、および塗膜試験を行った。結果を表3に示す。
[実施例8]
製造方法(i−3)を採用し、以下のようにして水性樹脂分散液を得た。
攪拌機、温度計、コンデンサーを備えた四つ口フラスコに、イソホロンジイソシアネートを11部、ジメチロールブタン酸を5部、ポリオールAを7部、ポリオールBを7部、メチルメタクリレートを52部、2−エチルヘキシルアクリレートを17部、グリシジルメタクリレートを0.65部、ジメチルアミノエチルメタクリレートを0.35部仕込んだ。この混合物系を攪拌しながら80℃に加熱して5時間保持し、ウレタン化反応と付加反応を同時に行い、プレポリマー(B)の(メタ)アクリル系モノマー溶液を得た。
ついで、内温が50℃以下になるまで冷却し、トリエチルアミン3.4部と脱イオン水223部を混合した溶液を30分間かけて系内に滴下した。溶液が均一に乳化された後、脱イオン水3部に過硫酸カリウム0.15部を溶解させた溶液を系内に添加し徐々に昇温した。発熱を確認後、75℃で制御して1時間保持しラジカル重合を行った。その後、脱イオン水3部に過硫酸カリウム0.15部を溶解させた溶液をさらに追加し、1.5時間ラジカル重合を行い、水性樹脂分散液(P−8)を得た。
得られた水性樹脂分散液(P−8)について物性を測定した。結果を表1に示す。また、水性樹脂分散液(P−8)の溶液安定性試験、および塗膜試験を行った。結果を表4に示す。
[実施例9]
製造方法(ii)を採用し、以下のようにして水性樹脂分散液を得た。
攪拌機、温度計、コンデンサーを備えた四つ口フラスコに、イソホロンジイソシアネートを12部、ジメチロールブタン酸を5部、ポリオールAを16部、メチルメタクリレートを50部、ノルマルブチルメタクリレートを14.65部仕込んだ。この混合物系を攪拌しながら80℃に加熱して5時間保持し、ウレタン化反応を行い、プレポリマー(C)の(メタ)アクリル系モノマー溶液を得た。
ついで、反応器内にグリシジルメタクリレートを2部、ジメチルアミノエチルメタクリレートを0.35部添加し、均一に混合した。内温が50℃以下になるまで冷却し、トリエチルアミン3.4部と脱イオン水176部を混合した溶液を30分間かけて系内に滴下した。溶液が均一に乳化された後、脱イオン水3部に過硫酸カリウム0.15部を溶解させた溶液を系内に添加し徐々に昇温した。発熱を確認後、75℃で制御して1時間保持しラジカル重合を行った。その後、脱イオン水3部に過硫酸カリウム0.15部を溶解させた溶液をさらに追加し、1.5時間ラジカル重合を行い、水性樹脂分散液(P−9)を得た。
得られた水性樹脂分散液(P−9)について物性を測定した。結果を表1に示す。また、水性樹脂分散液(P−9)の溶液安定性試験、および塗膜試験を行った。結果を表4に示す。
[実施例10]
グリシジルメタクリレートの添加のタイミングを、トリエチルアミンによる中和の後に変更した以外は、実施例9と同様にして水性樹脂分散液(P−10)を得た。
得られた水性樹脂分散液(P−10)について物性を測定した。結果を表1に示す。また、水性樹脂分散液(P−10)の溶液安定性試験、および塗膜試験を行った。結果を表4に示す。
[比較例1]
表2に示す組成に変更し、(d)成分を用いなかった以外は、実施例1と同様にして水性樹脂分散液(P−11)を得た。
得られた水性樹脂分散液(P−11)について物性を測定した。結果を表2に示す。また、水性樹脂分散液(P−11)の溶液安定性試験、および塗膜試験を行った。結果を表4に示す。
[比較例2]
表2に示す組成に変更し、グリシジルメタクリレートの代わりに、2−ヒドロキシエチルメタクリレートを1.9部用いた以外は、実施例1と同様にして水性樹脂分散液(P−12)を得た。
得られた水性樹脂分散液(P−12)について物性を測定した。結果を表2に示す。また、水性樹脂分散液(P−12)の溶液安定性試験、および塗膜試験を行った。結果を表4に示す。
[比較例3]
表2に示す組成に変更し、グリシジルメタクリレートの代わりに、2−ヒドロキシエチルメタクリレートを1.9部用いた以外は、実施例8と同様にして水性樹脂分散液(P−13)を得た。
得られた水性樹脂分散液(P−13)について物性を測定した。結果を表2に示す。また、水性樹脂分散液(P−13)の溶液安定性試験、および塗膜試験を行った。結果を表4に示す。
[比較例4]
表2に示す組成に変更し、グリシジルメタクリレートの代わりに、2−ヒドロキシエチルメタクリレートを1.9部用いた以外は、実施例9と同様にして水性樹脂分散液(P−14)を得た。
得られた水性樹脂分散液(P−14)について物性を測定した。結果を表2に示す。また、水性樹脂分散液(P−14)の溶液安定性試験、および塗膜試験を行った。結果を表4に示す。
Figure 2011173954
Figure 2011173954
Figure 2011173954
Figure 2011173954
表1〜4から明らかなように、実施例1〜10で得られた水性樹脂分散液は、溶液安定性(耐アルコールショック性、凍結融解サイクルに対する耐久性、熱安定性)に優れていた。また、これら水性樹脂分散液から形成された塗膜は、耐溶剤性および耐水性も良好であった。
なお、実施例2は、実施例1よりも(d)成分を増量した例であり、水性樹脂分散液のイソプロピルアルコールに対するショック性が特に向上した。
実施例3は、鎖延長剤としてエチレンジアミンを使用した例であり、塗膜の耐溶剤性および耐水性がより向上した。
実施例4は、ウレタン樹脂の比率を多くした例であり、比率の少ないものと同様に水性樹脂分散液の溶液安定性が良好であった。
実施例5、6は、(d)成分の種類を変更した例であり、グリシジルメタクリレートを使用したものと同様に、水性樹脂分散液の液安定が良好であった。
実施例7〜10は、(d)成分の添加方法を変更した例であり、いずれも水性樹脂分散液の溶液安定性が良好であった。
一方、比較例1は、(d)成分を用いなかった例であり、水性樹脂分散液の溶液安定性が著しく低下した。
比較例2〜4は、(d)成分の代わりに活性水素を有する(メタ)アクリル系モノマーを用い、さらに添加方法を変更した例であり、水性樹脂分散液の溶液安定性が低下する傾向にあった。また、塗膜の耐溶剤性および耐水性が著しく低下した。
本発明によれば、耐アルコールショック性、凍結融解サイクルに対する耐久性、熱安定性に優れた水性ウレタン変性(メタ)アクリル樹脂の分散液を、有機溶剤を使用せずに製造することができる。さらに、この分散液から得られる塗膜は耐溶剤性や耐水性に優れるものである。従って、コーティング剤、塗料、インキ用の水性樹脂として工業用有益なものとなる。



Claims (2)

  1. 活性水素を有しない(メタ)アクリル系モノマー(A)中で、ポリイソシアネート(a)と、分子内に、水酸基及びアミノ基から選ばれる官能基を2つ以上含み、かつ酸性官能基を1つ以上有する化合物(b)と、酸性官能基を有しないポリオール(c)と、分子内にグリシジル基及び重合性不飽和基を有する化合物(d)(ただし、前記(メタ)アクリル系モノマー(A)を除く。)とを反応させて、重合性不飽和基及び酸性官能基を有するイソシアネート末端ウレタンプレポリマー(B)を製造し、
    ついで、イソシアネート末端ウレタンプレポリマー(B)中の酸性官能基を中和し、水希釈して乳化させた後、
    イソシアネート末端ウレタンプレポリマー(B)の鎖延長反応と、前記(メタ)アクリル系モノマー(A)およびイソシアネート末端ウレタンプレポリマー(B)のラジカル重合反応とを行う、水性ウレタン変性(メタ)アクリル樹脂分散液の製造方法。
  2. 活性水素を有しない(メタ)アクリル系モノマー(A)中で、ポリイソシアネート(a)と、分子内に、水酸基及びアミノ基から選ばれる官能基を2つ以上含み、かつ酸性官能基を1つ以上有する化合物(b)と、酸性官能基を有しないポリオール(c)とを反応させて、酸性官能基を有するイソシアネート末端ウレタンプレポリマー(C)を製造し、
    ついで、イソシアネート末端ウレタンプレポリマー(C)中の酸性官能基を中和し、水希釈して乳化させた後、
    イソシアネート末端ウレタンプレポリマー(C)の鎖延長反応と、前記(メタ)アクリル系モノマー(A)および分子内にグリシジル基及び重合性不飽和基を有する化合物(d)(ただし、前記(メタ)アクリル系モノマー(A)を除く。)のラジカル重合反応と、イソシアネート末端ウレタンプレポリマー(C)および前記化合物(d)の付加反応とを行う、水性ウレタン変性(メタ)アクリル樹脂分散液の製造方法。
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