JP2011171132A - 電池 - Google Patents

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Abstract

【課題】水の還元反応を利用する、即ち、水を正極活物質として使用した電池を提供すること。
【解決手段】電解液に多価カルボン酸塩の水溶液を、正極含有触媒として二酸化マンガンを使用した正極活物質が水である電池において、これらの電解質及び正極含有触媒は、水を正極活物質とする正極反応(2HO+2e→2OH+H)を触媒し、過電圧を抑制すると考えられるため、水を正極活物質として利用した電池を提供することができる。
【選択図】図1

Description

本発明は、水を正極活物質として利用した電池に関する。
従来、乾燥状態で流通し、水を注入することにより発電する電池が知られている。例えば、特許文献1には、金属製の負極外筒体と、当該負極外筒体に充填された酸化物質からなる粉末充填材と、当該粉末充填材中に差し込まれた炭素からなる棒状の正極集電体と、上記負極外筒体の内部に注入された、水を吸収し上記粉末充填剤に供給するための吸水部材とを含む電池が開示されている。
実用新案登録第3148205号公報
特許文献1に記載の電池は、二酸化マンガン等の酸化力の強い酸化物質を正極活物質として用いており、水は電解液の溶媒として用いられているに過ぎず、水を直接、正極活物質として用いているわけではない。ここで水は、自然界に広く存在し、容易に入手することが可能であり、還元電位−0.83V vs. SHE、理論容量1488mAhg−1という、高い還元電位と大きな理論容量を有する。このため、水を正極活物質として用いることにより高容量の電池を構成することができると期待される。
しかしながら、通常、水の還元反応を電池反応に利用するには、水の高い還元電位に加えて、相当の過電圧がかかるので、これら還元電位と過電圧との総和を超える、卑な酸化電位を有する負極が必要になる。しかも、このような卑な電位を有する金属のうち、リチウム、ナトリウム、カルシウムといった金属は水と激しく反応するため、水を正極活物質として使用した電池の負極としては使用できない。このため、水を正極活物質として用いた電池はこれまで実現されていなかった。水を正極活物質として用いた電池を実現できれば、環境への悪影響を与えない、低コストで製造可能な電池を製造できることが期待されていた。
従って、本発明は、水の還元反応を利用する、即ち、水を正極活物質として使用した電池を提供することを目的とする。
本発明者らは、電解液に含有される電解質として多価カルボン酸塩を、正極含有触媒として二酸化マンガンを用いたとき、水の還元反応の過電圧を抑制でき、水を正極活物質として用いることができることを見出し、本発明を完成するに至った。具体的には、本発明は以下のものを提供する。
(1) 電解液に多価カルボン酸塩の水溶液を、正極含有触媒として二酸化マンガンを使用した正極活物質が水である電池。
(1)に記載の発明は、電解液に含有される電解質として多価カルボン酸塩を、正極含有触媒として二酸化マンガンを用いている。これらの電解質及び正極含有触媒は、水を正極活物質とする正極反応(2HO+2e→2OH+H)を触媒し、過電圧を抑制すると考えられるため、水を正極活物質として利用した電池を提供することができる(図1及び図2参照)。
(2) 前記二酸化マンガンの結晶構造が、正方晶型である(1)に記載の電池。
(2)に記載の発明は、(1)に記載の発明において用いられる正極含有触媒の結晶構造を規定したものである。正極含有触媒として正方晶型二酸化マンガンを用いた場合、例えば電解二酸化マンガン等の二酸化マンガンを用いた場合よりも、電池の容量を増大させることができる(図1及び図3参照)。
(3) 前記電解液のpHが、7以上14未満である(1)又は(2)に記載の電池。
(3)に記載の発明は、(1)及び(2)に記載の発明における電解液のpHを規定したものである。本発明の電池の正極における電気化学反応が終了する要因には、正極活物質である水の消失以外にも、正極表面に被膜が形成されることによる電気化学反応の阻害が挙げられる。電池に含有される電解液が強アルカリ性(pH14付近)である場合、正極表面にクエン酸マグネシウム又は酸化マグネシウム等からなる不動態被膜が形成され、正極での電気化学反応が阻害される。
また、電解液のpHが7以下未満である場合には、負極が自己放電を起こし、自己放電による負極容量の損失が発生する。また、電池反応の進行につれて、水酸化物イオンが生成し、電解液がアルカリ性になるため、初期の電解液のpHは負極での自己放電を抑制できる範囲内において低いpHであることが容量増大の観点から好ましい。
(4) 前記多価カルボン酸塩が、クエン酸塩及び/又はコハク酸塩である(1)から(3)のいずれかに記載の電池。
(4)に記載の発明は、(1)から(3)に記載の発明において用いられる多価カルボン酸塩について規定したものである。クエン酸イオン及びコハク酸イオンは、金属イオンにキレートする多価カルボン酸イオンの中では、比較的低分子量で水への溶解度が高いため、多価金属イオンにキレートした場合においても水への溶解性を高く維持することができる。このため、正極表面における被膜形成を抑制することができる。
(5) 前記電解液が、前記多価カルボン酸塩を0.2mol/L以上0.9mol/L以下含有する(1)から(4)のいずれかに記載の電池。
(5)に記載の発明は、(1)から(4)に記載の発明の電解液中の多価カルボン酸塩の濃度を規定したものである。多価カルボン酸塩の濃度が0.2mol/L未満では、水の還元反応に対する触媒効果が低下や、イオン強度の低下による電解液の抵抗の低下、被膜形成の抑制効果の低下につながる。このため、電池の容量が低下する(図4参照)。多価カルボン酸塩濃度が0.9mol/Lを超える場合は、正極表面で、より低いpHでも被膜の形成が生じることとなり、電池の容量が低下する(図4参照)。
(6) 負極が、マグネシウム又はマグネシウム合金からなる(1)から(5)のいずれかに記載の電池。
(6)に記載の発明は、(1)から(5)に記載の発明における負極の材料を規定したものである。ここで、マグネシウムは、水の還元電位よりも卑な酸化電位(−2.37V vs. SHE)を有し、大きな理論容量(2290mAhg−1)を有する。しかしながら、水酸化マグネシウムの水への溶解度は低いので、負極表面に被膜が生成し、電気化学反応が阻害されるという問題がある。ここで、水の還元反応を触媒する多価カルボン酸イオンは溶解度が低い水酸化マグネシウムをキレート化して溶解度を向上させることができる。このため、負極表面が被覆されることが抑制され、マグネシウム本来の容量を発揮することができる。
(7) 正極及び負極の間に配置される水を保持可能な保液部と、外部から前記保液部に水を導入可能な孔を備え、前記保液部が乾燥状態において多価カルボン酸塩を含有する(1)から(6)のいずれかに記載の電池。
(7)に記載の発明は、(1)に記載の発明の具体的態様を規定した者である。正極活物質である水を、使用直前まで電池内部に包含させず、使用直前に外部から供給する形とすれば、電池の軽量化を図ることができる。また、電解液も水溶液であるため、乾燥状態で保存すれば電気化学反応は生じず、電池を長期間保存することが可能となる。
本発明の電池は、電解液に含有される電解質として多価カルボン酸塩を、正極含有触媒として二酸化マンガンを用いている。これらの電解質及び正極含有触媒は、水を正極活物質とする正極反応(2HO+2e→2OH+H)を触媒し、過電圧を抑制すると考えられるため、水を正極活物質として利用した電池を提供することができる。
更に、本発明においては、電解質として多価カルボン酸塩を用いているため、マグネシウム又はマグネシウム合金を負極活物質に用いた場合であっても、多価カルボン酸イオンが、溶解度の低い水酸化マグネシウムをキレートして水酸化マグネシウムの溶解度を向上させる。このため、酸化マグネシウムが負極の表面を被覆することがなく、電池が長時間に亘り起電力を維持することができる。
本発明の実施例により求められる放電曲線を示す図面である。 本発明の比較例により求められる放電曲線を示す図面である。 本発明の比較例により求められる放電曲線を示す図面である。 本発明の実施例により求められる多価カルボン酸濃度と容量との関係を示す図面である。 正方晶型二酸化マンガンのX線回折パターンを示す図面である。
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。
<電池>
[電池の構成]
本発明の電池は、正極、負極、及び正極と負極との間に保持された保液部からなる。
(正極)
正極は、正極含有触媒である二酸化マンガンと、導電剤と、結着剤とからなる。正極を作製するには、各材料を所定の割合(例えば、二酸化マンガンを7質量部、導電剤を2質量部、結着剤を1質量部)で混合し、集電体に塗布し、結着剤の溶剤が蒸発する温度で乾燥させればよい。
(二酸化マンガン)
二酸化マンガンは正極含有触媒として作用するが、反応場の量は、二酸化マンガンの量に相関するので、二酸化マンガンの含有量が多いほうが好ましい。なお、二酸化マンガンの結晶構造は正方晶型が好ましい(図5参照)。
(導電剤)
導電剤は、電気化学反応には関与しないので、機能を果たすに十分な含有量のみ含有されさえすれば、含有量は少なければ少ないほど好ましい。導電剤としては、ケチェンブラック、アセチレンブラック、チャンネルブラック、ファーネスブラック、ランプブラック、サーマルブラック等のカーボンブラック、鱗片状黒鉛、グラファイト等を挙げることができる
(結着剤)
結着剤は、電気化学反応には関与しないので、機能を果たすに十分な含有量のみ含有さえすれば、含有量が少なければ少ないほど好ましい。結着剤としては、特に限定されるものではなく、熱可塑性樹脂や熱硬化性樹脂を挙げることができる。具体的には、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリビニルアルコール、ポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデン、スチレンブタジエンゴム、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロエチレン共重合体、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体、テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体、フッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体、フッ化ビニリデン−クロロトリフルオロエチレン共重合体、エチレン−テトラフルオロエチレン共重合体、ポリクロロトリフルオロエチレン、フッ化ビニリデン−ペンタフルオロプロピレン共重合体、プロピレン−テトラフルオロエチレン共重合体、エチレン−クロロトリフルオロエチレン共重合体、フッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン−テトラフルオロエチレン共重合体、フッ化ビニリデン−パーフルオロメチルビニルエーテル−テトラフルオロエチレン共重合体、エチレン−アクリル酸共重合体等を挙げることができる。これらの材料は単独で用いてもよく、二種以上を混合して用いてもよい。
(正極集電体)
正極集電体としては、例えば、グラファイト、銅、ニッケル、アルミニウム、鉄、チタン等の材料からなるものが好適であるが、導電体である限りにおいてこれらに限定されるものではない。
(負極)
負極は、水との急激な化学反応を生起せず、酸化電位が水の還元電位(−0.83V vs. SHE)よりも低い材料からなるものであれば、特に限定されない。このような材料としては、マグネシウム、トリウム、ベリリウム、アルミニウム、チタン、ジルコニウム、マンガン、又はこれらの合金等を挙げることができる。これらの材料の中でも、電池電圧、容量が良好な数値を示すこと、及び資源としての入手容易性の観点からマグネシウム又はマグネシウム合金が好ましい。
(保液部)
保液部は、親水性を有し、電解液を保持する保液機能を有すると共に、電極間の短絡を防止するセパレータとしての機能を有する。保液部を構成する材料としては、ポリプロピレン製不織布、ポリフェニレンスルフィド製不織布、ガラス繊維、ろ紙、オレフィン系樹脂の多孔質フィルム等を用いることができるが、絶縁性及び保液機能を有している限りにおいて特にこれらに限定されるものではない。
また、本発明の電池は、保液部を乾燥させた状態で保管して、使用時に保液部を含水させて用いてもよい。その場合、保液部には多価カルボン酸塩を含有させ、水が供給されることにより、保液部に多価カルボン酸塩の水溶液が保持されることとなる。
(電解液)
ここで、保液部に保持される電解液は多価カルボン酸塩の水溶液である。電解液に含まれる多価カルボン酸イオンは、二酸化マンガンと共に水の還元反応を触媒するため、水を正極活物質として用いた電池を提供することができる。更に、負極活物質としてマグネシウム又はマグネシウム合金を用いた場合においても、溶出するマグネシウムイオンに、多価カルボン酸イオンがキレートし、マグネシウム塩の溶解度を向上させ、正極及び負極表面の被膜生成を抑制することができる。また、多価カルボン酸イオンの緩衝作用により、電解液が容易にアルカリ性へと変化することを防止できる。この結果、負極活物質としてマグネシウム又はマグネシウム合金を用いた場合においても、正極及び負極表面での被膜の形成を防止し、電池の容量の増大が可能となる。
電解液のpHは7以上14以下であることが好ましい。電池の正極における電気化学反応が終了する要因には、正極活物質である水の消失以外にも、正極表面に被膜が形成されることによる電気化学反応の阻害が挙げられる。電池に含有される電解液が強アルカリ性(pH14付近)である場合、正極表面にクエン酸マグネシウム又は酸化マグネシウム等からなる不動態被膜が形成され、正極での電気化学反応が阻害される。
また、電解液のpHが7未満である場合には、負極が自己放電を起こし、自己放電による負極容量の損失が発生する。また、電池反応の進行につれて、水酸化物イオンが生成し、電解液がアルカリ性になるため、初期の電解液のpHは負極での自己放電を抑制できる範囲内において低いpHであることが容量増大の観点から好ましい。
多価カルボン酸塩としては、例えばクエン酸塩やコハク酸塩を用いることができる。これら、溶解度の高い多価カルボン酸塩を用いることにより、多価金属イオンをキレートした場合においても、水への溶解度を向上させることができ、正極及び負極表面における被膜形成を抑制することができる。
電解液に含まれる多価カルボン酸塩の濃度は、0.2mol/L以上0.9mol/L以下であることが好ましい。多価カルボン酸塩の濃度が0.2mol/L未満では、水の還元反応に対する触媒効果が低下や、イオン強度の低下による電解液の抵抗の低下、被膜形成の抑制効果の低下につながる。このため、電池の容量が低下する(図4参照)。多価カルボン酸塩濃度が0.9mol/Lを超える場合は、正極表面で、より低いpHでも被膜の形成が生じることとなり、電池の容量が低下する(図4参照)。
以下、本発明について、実施例を挙げて詳細に説明する。なお、本発明は、以下に示す実施例に何ら限定されるものではない。
<実施例1>
[正極の作製]
正方晶型の結晶構造を有する二酸化マンガン粉末7質量部に、アセチレンブラック2質量部、ポリビニルフッ化ビニリデン1質量部を混合した。この混合物をカーボンペーパーに塗布し、110℃で1時間焼成して正極とした。
[電解液の作製]
クエン酸ナトリウムを純粋に溶解し、0.7mol/Lに調整した。
[測定セル]
測定セルは、作製した上記正極及び上記電解液、並びに負極及び参照電極から作製した。負極にはマグネシウム合金(AZ31)を、参照電極にはマグネシウム合金を用い、正極の電圧及び容量を測定した。
<比較例1>
電解液の作製に、クエン酸三ナトリウムを使用せず、塩化ナトリウムを使用し、電解液中の塩化ナトリウムの濃度を0.7mol/Lとした点以外は、実施例1と同様の方法により、正極の電圧及び容量を測定した。
<比較例2>
正方晶型の二酸化マンガンを用いず、電解二酸化マンガンを用いた点以外は、実施例1と同様の方法により、正極の電圧及び容量を測定した。
図1、図2、及び図3は、それぞれ実施例1、比較例2、及び比較例3における放電極性を示す図面である。図1及び図2から明らかなように、クエン酸三ナトリウムを含有する電解液を用いた場合、塩化ナトリウムを含有する電解液を用いた場合と比べて容量が顕著に大きくなっていることが分かる。また、正極に正方晶型の二酸化マンガンを用いた場合、電解二酸化マンガンを用いた場合に比べて、容量が顕著に大きくなっていることが分かる。以上より、本発明によれば、水を正極活物質として用いても、十分な性能を有する電池を提供することができる。

Claims (7)

  1. 電解液に多価カルボン酸塩の水溶液を、正極含有触媒として二酸化マンガンを使用した正極活物質が水である電池。
  2. 前記二酸化マンガンの結晶構造が、正方晶型である請求項1に記載の電池。
  3. 前記電解液のpHが、7以上14未満である請求項1又は2に記載の電池。
  4. 前記多価カルボン酸塩が、クエン酸塩及び/又はコハク酸塩である請求項1から3のいずれかに記載の電池。
  5. 前記電解液が、前記多価カルボン酸塩を0.2mol/L以上0.9mol/L以下含有する請求項1から4のいずれかに記載の電池。
  6. 負極が、マグネシウム又はマグネシウム合金からなる請求項1から5のいずれかに記載の電池。
  7. 正極及び負極の間に配置される水を保持可能な保液部と、外部から前記保液部に水を導入可能な孔を備え、前記保液部が乾燥状態において多価カルボン酸塩を含有する請求項1から6のいずれかに記載の電池。
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