以下、本発明の第一の実施の形態について添付図面を参照して詳細に説明する。なお、以下においては、SIMカードが装着されるカード用コネクタに適用する場合について説明する。しかしながら、本実施の形態に係るカード用コネクタの適用対象については、これに限定されるものではなく適宜変更が可能である。
まず、本実施の形態に係るカード用コネクタについて説明する前に装着対象となるカードについて説明する。図14は、本発明の第一の実施の形態に係るカードの平面図であり、(a)が上面図、(b)が背面図をそれぞれ示している。
図14(a)、(b)に示すように、カード91は、いわゆるSIMカードであり、上面視略矩形状に形成され情報記憶部を有する記憶媒体である。カード91の一の角部には、切り欠かれて約45度に傾斜した傾斜面92が形成されている。傾斜面92は、カード91の挿入方向を識別するのに用いられ、この傾斜面92が形成されている側が挿入方向における前端側とされ、逆側が挿入方向における後端側とされる。
カード91の背面には、カード91の挿入方向における後端側の略半部に、カード用コネクタ1の複数のコンタクト端子15に接触して情報の読み出しまたは書込みをするための複数の接点パッド93が設けられている。また、カード91の側面は、挿入方向に沿って平坦に形成され、カード用コネクタ1のスライド部材6の側面に面接触される。すなわち、カード91は、カード用コネクタ1のスライド部材6に保持されることなく、スライド部材6に面接触された状態で挿入方向及び排出方向に動作される。
次に、図1および図2を参照して、カード用コネクタの全体構成について説明する。図1は、本発明の第一の実施の形態に係るカード用コネクタの斜視図である。図2は、本発明の第一の実施の形態に係るカバーを外したカード用コネクタの斜視図である。
図1及び図2に示すように、本実施の形態に係るカード用コネクタ1は、上面および前面が開口されたコネクタ本体2と、コネクタ本体2の上面の開口に装着されてカード91の装着空間を形成するカバー3とを備え、コネクタ本体2及びカバー3が組み合わされて装着口4を有する箱状体をなしている。コネクタ本体2の底壁部11における装着口4側の略前半部には、複数のコンタクト端子15が設けられている。各コンタクト端子15は、底壁部11の略前半部から奥壁部12側に向かって延在している。
コネクタ本体2の奥壁部12には、カード91の装着検出用のスイッチ部5が設けられている。スイッチ部5は、奥壁部12に揺動可能に支持されたレバー21と、レバー21に設けられた接点バネ22とを有している。スイッチ部5は、奥壁部12の内側面に露出された一対の固定接点23、24に対向し、カード91の非装着時に、接点バネ22の一端を一方の固定接点23に接触させ、接点バネ22の他端を他方の固定接点24から離間させている。そして、スイッチ部5は、カード91により奥壁部12側に押し込まれると、レバー21の回動により接点バネ22の他端を他方の固定接点24に接触させて、カード91の装着を検出する。
コネクタ本体2の一の側壁部13側には、側壁部13に沿ってスライド可能なスライド部材6と、スライド部材6のスライドに伴って伸縮するコイル状の排出バネ7とが設けられている。排出バネ7は、一端が奥壁部12に当接され、他端がスライド部材6に当接されており、スライド部材6を排出方向に付勢している。また、コネクタ本体2の装着口4側には、スライド部材6の排出方向へのスライドを遮るようにストッパ26が設けられている。ストッパ26は、スライド部材6に当接することで、スライド部材6を排出位置に規制する。
スライド部材6は、排出バネ7に付勢された状態で挿入方向及び排出方向にスライド可能に構成されている。スライド部材6は、挿入方向の前端側からコネクタ本体2の中央に向かって延在する腕部31を有している。腕部31は、カード91の挿入方向の前端面に当接し、スライド部材6とカード91とを一体に動作させる。
スライド部材6の上面にはハートカム溝39が形成されており、このハートカム溝39とストッパ26に設けられたラッチピン8とによりスライド部材6の位置が規定される。ラッチピン8は、スライド部材6のスライド方向に延在し、両端が底壁部11に向かって略直角に屈曲している。ラッチピン8の一端は、ストッパ26に回動可能に支持され、他端はスライド部材6のハートカム溝39上に摺動される。
ハートカム溝39は、複数の段差と傾斜を有して上面視ハート型の環状に形成されており、スライド部材6のスライドに応じてラッチピン8の他端を一方向に摺動させる。スライド部材6が奥壁部12近傍の装着位置に押し込まれると、ラッチピン8の他端がハートカム溝39の係止部分に係止され、排出バネ7の付勢によるスライド部材6の復帰が規制される。この状態からさらにスライド部材6が押し込まれると、ラッチピン8とハートカム溝39との係止状態が解除されて、排出バネ7の付勢によりスライド部材6が復帰される。このように、ラッチピン8とハートカム溝39は、スライド部材6の装着位置における保持機能を有している。
また、スライド部材6には、ストッパ26の側方を通り装着口4側に延在する連結部32が設けられている。連結部32の先端の近傍には、スライド部材6に連動する抜け止め部材9が設けられている。抜け止め部材9は、カード91を抜け止め保持する保持片44を有している。また、抜け止め部材9は、連結部32を介してスライド部材6に連動し、装着口4の一部を塞ぐ抜け止め位置と抜け止め位置から退避した退避位置との間で保持片44を移動させる。
カバー3は、金属製の板材を折り曲げて形成されており、上板の一側方にはラッチピン8を押えるピン押え35が形成されている。ピン押え35は、底壁部11側に切り起こされた片持ちバネであり、ラッチピン8の中間部分を下方に押圧してラッチピン8の他端をハートカム溝39に押し付けている。
以下、図3及び図4を参照して、スライド部材と抜け止め部材との連動構成について説明する。図3は、本発明の第一の実施の形態に係るスライド部材と抜け止め部材との連動構成の説明図である。図4は、本発明の第一の実施の形態に係る寸法誤差を有するカードが装着された場合の抜け止め部材の揺動状態の説明図である。なお、図3においては、カードの排出時のスライド部材と抜け止め部材との連動状態を示している。
図3に示すように、連結部32は、ストッパ26を迂回するように装着口4側に延在し、抜け止め部材9に当接可能に形成されている。このため、スライド部材6と抜け止め部材9は、装着口4近傍においてストッパ26により連動が規制されることがない。連結部32の先端部には、スライド部材6のスライドを抜け止め部材9のバネ片43に伝達可能な傾斜面33が形成されている。傾斜面33は、装着口4側に向かって側壁部13との間隔を狭めるように傾斜している。そして、傾斜面33は、スライド部材6のスライドに伴って移動されることで、抜け止め部材9のバネ片43を押圧する。
抜け止め部材9は、金属板を折り曲げて形成されており、コネクタ本体2の底壁部11に設けられた支持突起41に揺動自在に支持される平板部42を有している。平板部42の奥壁部12側には、片持ちのバネ片43が設けられている。バネ片43は、平板部42に連なる基端部からストッパ26に向かって延在し、延在方向の途中部分で基端側に折り返されている。このバネ片43の自由端部側が、連結部32の傾斜面33に押圧されることで、抜け止め部材9が支持突起41を中心として揺動される。
平板部42の装着口4側には、カード91を抜け止め保持する保持片44が設けられている。保持片44は、平板部42に連なる基端部から装着口4側(カード91側)に向かって延在し、途中部分で基端側に折り曲げられている。保持片44は、基端側の略半部でカード91を抜け止め保持する。保持片44の先端側の略半部は、退避位置においてカード91との接触を避けるように折り曲げられている。
また、平板部42のバネ片43近傍は、連結部32に設けられた第一、第二の規制部48、49と共に、抜け止め部材9の揺動範囲を規制する規制片45となっている。規制片45は、連結部32において、第一、第二の規制部48、49に対して一段低くなった段部47に位置される。そして、抜け止め部材9は、スライド部材6が排出位置にある場合に、規制片45と第一の規制部48とによって抜け止め方向への揺動が規制される。これにより、カード91の非装着時に保持片44が抜け止め位置に移動されず、カード91の装着が阻害されることがない。また、抜け止め部材9は、スライド部材6が装着位置にある場合に、規制片45と第二の規制部49とによって退避方向への揺動が規制される。これにより、カード91の装着時に保持片44が退避位置に移動されず、カード91の抜けが確実に防止される。
この場合、抜け止め部材9は、バネ片43によりカード91の挿入方向における寸法誤差を吸収している。例えば、図4に示すように、カード用コネクタ1に、挿入方向における寸法が大きなカード91が装着された場合には、バネ片43が大きく撓んで抜け止め部材9の揺動量を調整し、保持片44によるカード91の抜け止めを可能とする。このように、抜け止め部材9は、バネ片43の撓みにより揺動量が調整される。また、カード用コネクタ1に外部からの振動等が加わっても、抜け止め部材9とスライド部材6との間で生じる振動がバネ片43に吸収されるため、異音の発生を防止でき、操作性を向上させることが可能となる。
ここで、図5を参照して、抜け止め部材の揺動動作について説明する。図5は、本発明の第一の実施の形態に係る抜け止め部材の揺動動作の遷移図である。なお、図5において、(a)から(c)がカードの装着時における抜け止め部材の揺動動作、(c)から(e)がカードの排出時における抜け止め部材の揺動動作をそれぞれ示している。
図5(a)に示すように、スライド部材6が排出位置にある場合、スライド部材6によってカード91が装着口4から押し出されている。このとき、抜け止め部材9は、保持片44を退避位置に位置させており、規制片45と第一の規制部48とにより抜け止め方向への揺動が規制されている。この状態からカード91が押し込まれると、スライド部材6が挿入方向にスライドされ、抜け止め部材9のバネ片43と連結部32の傾斜面33とが接触される。
図5(b)に示すように、カード91が更に押し込まれ、スライド部材6がさらに挿入方向にスライドされると、バネ片43が傾斜面33に乗り上がり始める。抜け止め部材9は、バネ片43に対する傾斜面33の押し込みにより支持突起41を中心に抜け止め方向に揺動を開始する。このとき、抜け止め部材9は、規制片45と第一の規制部48とが離間されるため、揺動が規制されることがない。
図5(c)に示すように、カード91がカード用コネクタ1に装着され、スライド部材6が装着位置までスライドされると、バネ片43が傾斜面33に完全に乗り上がる。抜け止め部材9は、抜け止め方向の揺動により保持片44を抜け止め位置に移動させる。これにより、抜け止め部材9の保持片44が、装着口4側に突出され、カード用コネクタ1からのカード91の抜けが防止される。このとき、抜け止め部材9は、規制片45と第二の規制部49とによって退避方向の揺動が規制される。したがって、カード用コネクタ1からのカード91の無理抜きが防止される。
このように、スライド部材6の装着位置へのスライドに連動して、抜け止め部材9の保持片44が抜け止め位置に移動される。よって、カード91の装着動作で、抜け止め部材9により抜け止めされるため、カード用コネクタ1からのカード91の抜けを確実に防止することが可能となる。
図5(c)に示す状態から、カード91が更に押し込まれると、スライド部材6がカード91と共に排出方向に押し戻され、第二の規制部49による抜け止め部材9の退避方向の揺動規制が解除される。
図5(d)に示すように、スライド部材6が排出方向にスライドされると、カード91の後端によって抜け止め部材9の保持片44が押し込まれる。抜け止め部材9は、保持片44に対するカード91の押し出しにより支持突起41を中心に退避方向に揺動を開始する。このとき、バネ片43が傾斜面33を下るため、バネ片43に対する傾斜面33の押し込み量が小さくなり、抜け止め部材9の退避方向の揺動に対するバネ片43の抵抗が弱まる。
図5(e)に示すように、カード91がカード用コネクタ1から排出され、スライド部材6が排出位置までスライドされると、抜け止め部材9は、退避方向の揺動により保持片44を退避位置に移動させる。これにより、抜け止め部材9の保持片44が、装着口4側から退避され、カード91用コネクタに対するカード91の抜差しが許容される。このとき、抜け止め部材9は、規制片45と連結部32の第一の規制部48とによって抜け止め方向の揺動が規制される。
このように、スライド部材6の排出位置へのスライドに連動して、抜け止め部材9の保持片44が退避位置に移動される。よって、カード91の排出動作で、抜け止め部材9の抜け止めが解除されるため、カード用コネクタ1からのカード91の排出が規制されることがない。
図6及び図7を参照して、カード用コネクタの装着動作及び排出動作について説明する。図6は、本発明の第一の実施の形態に係るカード用コネクタによるカードの装着動作の説明図である。図7は、本発明の第一の実施の形態に係るカード用コネクタによるカードの排出動作の説明図である。なお、図6及び図7においては、説明の便宜上、カバーを省略している。
最初に、カード用コネクタ1によるカード91の装着動作について説明する。図6(a)に示すように、カード用コネクタ1にカード91が挿入されると、カード91の先端がスライド部材6の腕部31に接触される。このとき、抜け止め部材9は、第一の規制部48によって抜け止め方向の揺動が規制されるため、抜け止め部材9がカード91の挿入を妨げることがない。この状態からカード91が押し込まれると、スライド部材6が装着位置に向かってスライドし、抜け止め部材9の抜け止め方向の揺動規制が解除される。
図6(b)に示すように、カード91が更に押し込まれると、ラッチピン8の他端にハートカム溝39が摺動されながら、スライド部材6が更に装着位置側にスライドされる。このスライド部材6の挿入方向のスライドに伴って、連結部32の傾斜面33に抜け止め部材9のバネ片43が押し込まれ、抜け止め部材9が支持突起41を中心として抜け止め方向に揺動される。
図6(c)に示すように、カード91が更に押し込まれると、ラッチピン8の他端がハートカム溝39の係止部分に係止され、カード91がスライド部材6と共に装着位置に保持される。そして、抜け止め部材9の保持片44が抜け止め位置まで移動され、カード用コネクタ1からのカード91の抜けが防止される。また、カード91によってスイッチ部5が押し込まれて、カード91の装着が検出される。そして、装着位置に保持されることでカード91の接点パッド93が、カード用コネクタ1のコンタクト端子15と接触し、カード91の情報記憶部と上位装置との間での信号の授受が可能となる。
次に、カード用コネクタ1によるカード91の排出動作について説明する。図7(a)に示すように、カード91の装着状態においては、ラッチピン8の他端がハードカム溝39の係止部分に係止され、スライド部材6の排出方向へのスライドが規制されている。このとき、抜け止め部材9は、第二の規制部49によって退避方向の揺動が規制されるため、カード91の無理抜きが防止される。
図7(b)に示すように、カード91が更に押し込まれると、ラッチピン8とハートカム溝39との係止状態が解除されて、スライド部材6が排出バネ7により排出位置に向かって押し戻される。このスライド部材6の排出方向のスライドによって、カード91の後端に抜け止め部材9の保持片44が押し出されて、抜け止め部材9が支持突起41を中心として退避方向に揺動される。
図7(c)に示すように、スライド部材6が排出位置にスライドされると、カード91による押し出しにより、抜け止め部材9の保持片44が退避位置に移動される。このようにして、カード91がカード用コネクタ1の装着口4から排出される。また、スイッチ部5へのカード91による押し込みが解除されるので、カード91の排出が検出される。そして、装着位置からカード91が排出位置に移動することでカード91の接点パッド93が、カード用コネクタ1のコンタクト端子15から離間する。
以上のように、本実施の形態に係るカード用コネクタ1によれば、スライド部材6の装着位置へのスライドに連動して、連結部32の傾斜面33に押し込まれることで、抜け止め部材9の保持片44が抜け止め位置に移動される。よって、カード91の装着動作で、抜け止め部材9により抜け止めされるため、カード用コネクタ1からのカード91の抜けを確実に防止することが可能となる。また、スライド部材6の排出位置へのスライドに連動し、カード91に押圧されて抜け止め部材9の保持片44が退避位置に移動される。よって、カード91の排出動作で、抜け止め部材9の抜け止めが解除されるため、カード用コネクタ1からのカード91の排出が阻害されることがない。また、抜け止め部材9に対する手動操作が不要となるため、簡易にカード91の装着動作及び排出動作を行うことが可能となる。
次に、本発明の第二の実施の形態について説明する。本発明の第二の実施の形態に係るカード用コネクタは、上述した第一の実施の形態に係るカード用コネクタとスライド部材と抜け止め部材との連動構成についてのみ相違する。したがって、特に相違点についてのみ説明する。図8は、本発明の第二の実施の形態に係るカバーを外したカード用コネクタの斜視図である。図9は、本発明の第二の実施の形態に係るスライド部材と抜け止め部材の分解斜視図である。図10は、本発明の第二の実施の形態に係るスライド部材と抜け止め部材との連動構成の説明図である。
図8に示すように、カード用コネクタ51は、スライド部材55と抜け止め部材56とを除いて、第一の実施の形態に示すカード用コネクタと同一の構成になっている。スライド部材55は、コネクタ本体52の一の側壁部58沿ってスライド可能に配置されており、図示しない排出バネによって排出方向に付勢されている。また、スライド部材55の排出方向における前方には、スライド部材55のスライドを規制するストッパ61が設けられている。ストッパ61の近傍には、スライド部材55に連動して、カード91を抜け止めする抜け止め部材56が設けられている。
図9に示すように、スライド部材55には、装着口側に延在する連結部62が設けられており、連結部62にはストッパ61を収容可能な開口63が形成されている。このため、スライド部材55と抜け止め部材56は、装着口近傍においてストッパ61により連動が規制されることがない。また、開口63内にストッパ61が配置されるため、ストッパ61の上方を通るように連結部62を迂回させる構成と比較して、カード用コネクタ51を薄型化することが可能となる。
連結部62の先端部には、底壁部59側に向かって突出した連結ピン64が形成されている。連結ピン64は、抜け止め部材56の上面に形成されたカム溝65内に配置され、スライド部材55のスライドに伴ってカム溝65内を移動することで、抜け止め部材56を駆動させる。すなわち、カム部として機能する連結ピン64と、カム従動面として機能するカム溝65のガイド面とでカム機構が形成される。
抜け止め部材56は、上面視略円弧状のレバー66と、レバー66の先端側に設けられた保持部67とを有している。レバー66の背面には、揺動突起68が底壁部59側に突出されている。抜け止め部材56は、揺動突起68が底壁部59に設けられた支持穴に挿入されることで、底壁部59に揺動可能に支持される。レバー66の上面には、上記した円弧状のカム溝65が形成されており、カム溝65を形成する対向面が連結ピン64をガイドするガイド面になっている。この円弧状のカム溝65が、連結部62の連結ピン64に押圧されることで、抜け止め部材56が支持穴を中心として揺動される。
図10(a)に示すように、スライド部材55が排出位置にある場合、連結ピン64が保持部67近傍のカム溝65の一端側に位置されており、保持部67が退避位置に位置されている。この状態からカード91が押し込まれると、スライド部材55が挿入方向にスライドされ、連結部62の連結ピン64がカム溝65内を一端側から他端側に向かって移動する。そして、連結ピン64がカム溝65の他端側のガイド面に摺接することで、支持穴を中心として抜け止め部材56が抜け止め方向に揺動される。
図10(b)に示すように、カード91が更に押し込まれ、スライド部材55が装着位置までスライドされると、抜け止め部材56の保持部67が抜け止め位置まで移動される。これにより、保持部67が、装着口側に突出され、カード用コネクタ51からのカード91の抜けが防止される。また、ラッチピン57の他端がハートカム溝69の係止部分に係止され、カード91がスライド部材55と共に装着位置に保持される。
このように、スライド部材55の装着位置へのスライドに連動して、抜け止め部材56の保持部67が抜け止め位置に移動される。よって、カード91の装着動作で、抜け止め部材56により抜け止めされるため、カード用コネクタ51からのカード91の抜けを確実に防止することが可能となる。
図10(c)に示すように、カード91が更に押し込まれると、ラッチピン57とハートカム溝69との係止状態が解除されて、スライド部材55がカード91と共に排出方向に押し戻される。スライド部材55が排出方向にスライドされると、連結ピン64がカム溝65内を他端側から一端側に向かって移動する。そして、連結ピン64がカム溝65の一端側のガイド面に摺接することで、支持穴を中心として抜け止め部材56が退避方向に揺動される。
図10(d)に示すように、カード91がカード用コネクタ51から排出され、スライド部材55が排出位置までスライドされると、抜け止め部材56の保持部67が退避位置まで移動される。これにより、保持部67が装着口側から退避され、カード用コネクタ51に対するカード91の抜差しが許容される。
このように、スライド部材55の排出位置へのスライドに連動して、抜け止め部材56の保持部67が退避位置に移動される。よって、カード91の排出動作で、抜け止め部材56の抜け止めが解除されるため、カード用コネクタ51からのカード91の排出が規制されることがない。
以上のように、本実施の形態に係るカード用コネクタ51によれば、第一の実施の形態と同様に、カード用コネクタ51からのカード91の抜けを確実に防止することができると共に、抜け止め部材56によってカード91の排出が阻害されることがない。また、抜け止め部材56に対する手動操作が不要となるため、簡易にカード91の装着動作及び排出動作を行うことが可能となる。さらに、簡易な構成で、スライド部材55と抜け止め部材56との連動構成を形成することが可能となる。
次に、本発明の第三の実施の形態について説明する。本発明の第三の実施の形態に係るカード用コネクタは、上述した第一、第二の実施の形態に係るカード用コネクタとスライド部材と抜け止め部材との連動構成についてのみ相違する。したがって、特に相違点についてのみ説明する。図11は、本発明の第三の実施の形態に係るカバーを外したカード用コネクタの斜視図である。図12は、本発明の第三の実施の形態に係るスライド部材と抜け止め部材の平面図である。図13は、本発明の第三の実施の形態に係るスライド部材と抜け止め部材との連動構成の説明図である。
図11に示すように、カード用コネクタ71は、スライド部材75と抜け止め部材76とを除いて、第一、第二の実施の形態に示すカード用コネクタと同一の構成になっている。スライド部材75は、コネクタ本体72の一の側壁部78に沿ってスライド可能に配置されており、図示しない排出バネによって排出方向に付勢されている。また、スライド部材75の排出方向における前方には、スライド部材75のスライドを規制するストッパ81が設けられている。ストッパ81の近傍には、スライド部材75に連動して、カード91を抜け止めする抜け止め部材76が設けられている。
図12に示すように、スライド部材75には、装着口側に延在する連結部82が設けられており、連結部82にはストッパ81を収容可能な開口83が形成されている。このため、スライド部材75と抜け止め部材76は、装着口近傍においてストッパ81により連動が規制されることがない。また、開口83内にストッパ81が配置されるため、ストッパ81の上方を通るように連結部82を迂回させる構成と比較して、カード用コネクタ71を薄型化することが可能となる。
連結部82の先端部には、底壁部79側に向かって突出したカム部84が形成されている。カム部84は、側壁部78との間に抜け止め部材76のレバー86を収容可能な間隔を空けて形成される。カム部84は、スライド部材75のスライドに伴ってレバー86の側面85に摺接することで、抜け止め部材76を駆動させる。すなわち、カム部84とカム従動面として機能するレバー86の側面85とでカム機構が形成される。
抜け止め部材76は、上面視略円弧状のレバー86と、レバー86の先端側に設けられた保持部87とを有している。レバー86の背面には、揺動突起88が底壁部79側に突出されている。抜け止め部材76は、揺動突起88がコネクタ本体72の底壁部79に設けられた支持穴に挿入されることで、底壁部79に揺動可能に支持される。レバー86の側面85は、略円弧状に延在しており、カム部84に摺接される摺接面になっている。このレバー86の円弧状の側面85が、カム部84に押圧されることで、抜け止め部材76が支持穴を中心として揺動される。
図13(a)に示すように、スライド部材75が排出位置にある場合、カム部84が保持部87側のレバー86の一端側に接しており、保持部87が退避位置に位置されている。この状態からカード91が押し込まれると、スライド部材75が挿入方向にスライドされ、カム部84がレバー86の側面85を一端側から他端側に向かって摺動する。そして、カム部84がレバー86の側面85の他端側に摺接することで、支持穴を中心として抜け止め部材76が抜け止め方向に揺動される。
図13(b)に示すように、カード91が更に押し込まれ、スライド部材75が装着位置までスライドされると、抜け止め部材76の保持部87が抜け止め位置まで移動される。これにより、保持部87が、装着口側に突出され、カード用コネクタ71からのカード91の抜けが防止される。また、ラッチピン77の他端がハートカム溝89の係止部分に係止され、カード91がスライド部材75と共に装着位置に保持される。
このように、スライド部材75の装着位置へのスライドに連動して、抜け止め部材76の保持部87が抜け止め位置に移動される。よって、カード91の装着動作で、抜け止め部材76により抜け止めされるため、カード用コネクタ71からのカード91の抜けを確実に防止することが可能となる。
図13(c)に示すように、カード91が更に押し込まれると、ラッチピン77とハートカム溝89との係止状態が解除されて、スライド部材75がカード91と共に排出方向に押し戻される。スライド部材75が排出方向にスライドされると、カム部84がレバー86の側面85を他端側から一端側に向かって移動する。そして、カム部84がレバー86の側面85の一端側に摺接することで、支持穴を中心として抜け止め部材76が退避方向に揺動される。
図13(d)に示すように、カード91がカード用コネクタ71から排出され、スライド部材75が排出位置までスライドされると、抜け止め部材76の保持部87が退避位置まで移動される。これにより、抜け止め部材76の保持部87が装着口側から退避され、カード91用コネクタに対するカード91の抜差しが許容される。
このように、スライド部材75の排出位置へのスライドに連動して、抜け止め部材76の保持部87が退避位置に移動される。よって、カード91の排出動作で、抜け止め部材76の抜け止めが解除されるため、カード用コネクタ71からのカード91の排出が規制されることがない。
以上のように、本実施の形態に係るカード用コネクタ71によれば、第一、第二の実施の形態と同様に、カード用コネクタ71からのカード91の抜けを確実に防止することができると共に、抜け止め部材76によってカード91の排出が阻害されることがない。また、抜け止め部材76に対する手動操作が不要となるため、簡易にカード91の装着動作及び排出動作を行うことが可能となる。さらに、レバー86の側面85をカム従動面とすることで、薄型の抜け止め部材76を使用しても、カム部84からの押圧力に対する部品強度を高めることが可能となる。また、連結ピン64をカム溝65内に配置する第二の実施の形態と比較して、部品強度が高められることから、抜け止め部材76を薄く形成することができ、カード用コネクタ71を薄型化することが可能となる。
なお、上記した各実施の形態においては、本発明をSIMカードに対応したカード用コネクタに適用する構成としたが、この構成に限定されるものではない。SIMカード以外にも、側面に切欠きが形成されたSDカード等に対応可能なカード用コネクタに適用するようにしてもよい。また、上記した各実施の形態においては、本発明をカードの接点パッドとコネクタのコンタクト端子とを接触させて信号の授受を行う接触式のカード用コネクタに適用する構成としたが、この構成に限定されるものではない。カード装着位置において、光学式や磁気式の信号読み出し書込み部材によってカードとコネクタとの信号の授受を行う非接触式のカード用コネクタに適用しても良い。
また、上記した各実施の形態においては、本発明を1種類のカードに対応したカード用コネクタに適用する構成としたが、この構成に限定されるものではない。2種類以上のカードに対応可能なコンバイン型のカード用コネクタや、3種類以上のカードに対応可能なカード用コネクタに適用してもよい。
また、上記した各実施の形態においては、保持部が抜け止め部材と一体に形成される構成にしたが、この構成に限定されるものではない。保持部は、抜け止め部材によって抜け止め位置と退避位置とに移動される構成であればよく、抜け止め部材と別体に形成されていてもよい。
また、上記した各実施の形態においては、連結部がスライド部材と一体に形成される構成にしたが、この構成に限定されるものではない。連結部は、スライド部材のスライドに伴って抜け止め部材を連動させるものであればよく、スライド部材と別体に形成されていてもよい。
また、上記した各実施の形態においては、スライド部材及び抜け止め部材がカム機構を介して連動する構成としたが、この構成に限定されるものではない。スライド部材及び抜け止め部材は、どのような構成で連動してもよい。また、抜け止め部材は、スライド部材の挿入方向のスライドのみに連動する構成としてもよいし、スライド部材の排出方向のスライドのみに連動する構成としてもよい。
また、上記した各実施の形態においては、抜け止め部材は、スライド部材のスライドに連動して揺動される構成としたが、この構成に限定されるものではない。抜け止め部材は、スライド部材のスライドに連動して、スライド方向に直交するカード用コネクタの幅方向にスライドして、保持部を保持位置に移動させる構成としてもよい。
また、今回開示された実施の形態は、全ての点で例示であってこの実施の形態に制限されるものではない。本発明の範囲は、上記した実施の形態のみの説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。