JP2011163080A - 地盤改良体を用いた基礎構造及びその構築方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】地震時に構造物に作用する水平方向の荷重を地盤改良体へ確実に伝達でき、その荷重を地盤改良体に負担させられる地盤改良体を用いた基礎構造とその構築方法の提供を課題とする。
【解決手段】地中12に格子状に構築された壁状の地盤改良体14と、地盤改良体14で区画された領域18内へ突出する突起部22を有し、地盤改良体14の上部に構築された基礎部24と、地盤改良体14と突起部22との間に介在され、地盤改良体14と同等以上の強度を有する伝達部材20と、を備えた地盤改良体14を用いた基礎構造10とする。
【選択図】図1

Description

本発明は、地盤改良体を用いた基礎構造及びその構築方法に関する。
軟弱地盤や液状化の発生が予想される地盤における構造物の基礎は、セメント固化剤等の地盤改良によって軟弱地盤の改良や液状化防止を図った直接基礎や、杭により構造物を支持する杭基礎が一般的に用いられている。
近年、合理的な基礎形式として、直接基礎と杭基礎とを併用したパイルド・ラフト基礎の適用が増えて来ているが、液状化のおそれのある地盤においては、液状化防止のために、地盤改良体とパイルド・ラフト基礎とを併用する場合も見られるようになって来ている。
しかしながら、杭がある場合には、構造物の基礎底面と地盤改良体との接地圧が小さくなるため、地震時に構造物に作用する水平方向の荷重(以下「水平荷重」という場合がある)に対して、両者の摩擦抵抗を期待できず、基礎底面が地盤改良体に対して滑動してしまうおそれがある。
この問題点を解決するため、基礎底面と地盤改良体との間を接合する接合方法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1に記載の接合方法では、構造物の基礎底面に設けた突起部が地盤改良体の上面に形成された凹部に差し込まれ、地震時に構造物に作用する水平荷重が突起部と凹部の接合部を介して地盤改良体に伝達されるようになっている。そして、杭は、構造物の基礎底面と接合されないようになっている。
これにより、杭は構造物の鉛直方向の荷重(以下「鉛直荷重」という場合がある)のみを負担し、地震時に構造物に作用する水平荷重は地盤改良体が全て負担するようになっている。しかし、特許文献1に記載の接合方法では、地盤改良体の上面に穴を空けて突起部を差し込むため、地盤改良体に断面欠損が生じ易く、地盤改良体が破損するおそれがある。このため、地震時に構造物に作用する水平荷重を地盤改良体が適切に負担できないことがある。
特開2005−307594号公報
そこで、本発明は、上記事情に鑑み、地震時に構造物に作用する水平方向の荷重を地盤改良体へ確実に伝達でき、その荷重を地盤改良体に負担させられる地盤改良体を用いた基礎構造とその構築方法を得ることを目的とする。
上記の目的を達成するために、本発明に係る請求項1に記載の地盤改良体を用いた基礎構造は、地中に格子状に構築された壁状の地盤改良体と、前記地盤改良体で区画された領域内へ突出する突起部を有し、前記地盤改良体の上部に構築された基礎部と、前記地盤改良体と前記突起部との間に介在され、前記地盤改良体と同等以上の強度を有する伝達部材と、を備えたことを特徴としている。
請求項1に記載の発明によれば、基礎部の突起部と地盤改良体との間に、地盤改良体と同等以上の強度を有する伝達部材が介在しているため、地震時に構造物に作用する水平方向の荷重を、その基礎部の突起部から伝達部材を介して地盤改良体の面内方向へ確実に伝達することができ、その水平方向の荷重を地盤改良体に適切に負担させることができる。
また、請求項2に記載の地盤改良体を用いた基礎構造は、請求項1に記載の地盤改良体を用いた基礎構造において、前記突起部が杭で支持されていることを特徴としている。
請求項2に記載の発明によれば、基礎部に作用する鉛直方向の荷重を杭によって支持できる。また、水平方向の荷重の一部を地盤改良体が受けるので、杭に作用する水平方向の荷重を小さくできる。これにより、杭断面を小さくできる。
また、請求項3に記載の地盤改良体を用いた基礎構造は、請求項1又は請求項2に記載の地盤改良体を用いた基礎構造において、前記伝達部材が、地盤の表層を改良した改良地盤であることを特徴としている。
請求項3に記載の発明によれば、地震時に構造物に作用する水平方向の荷重を、現場発生材を利用して地盤改良体に伝達することができる。
また、請求項4に記載の地盤改良体を用いた基礎構造は、請求項1又は請求項2に記載の地盤改良体を用いた基礎構造において、前記伝達部材が、前記地盤改良体と前記基礎部との間に設けられたコンクリートであることを特徴としている。
請求項4に記載の発明によれば、地震時に構造物に作用する水平方向の荷重を、コンクリートによって地盤改良体に確実に伝達することができる。
また、本発明に係る請求項5に記載の地盤改良体の構築方法は、地中に壁状の地盤改良体を格子状に構築する工程と、前記地盤改良体で区画された領域に該地盤改良体よりも低く杭を設ける工程と、前記杭の頭部よりも上側の地盤の表層を改良して改良地盤とする工程と、前記杭の頭部まで前記改良地盤を掘削する工程と、前記杭の頭部に支持される突起部と前記地盤改良体の上部に支持される基礎部を構築する工程と、を含むことを特徴としている。
請求項5に記載の発明によれば、基礎部の突起部と地盤改良体との間に表層改良された改良地盤が介在しているため、地震時に構造物に作用する水平方向の荷重を、その基礎部の突起部から改良地盤を介して地盤改良体の面内方向へ確実に伝達することができ、その水平方向の荷重を地盤改良体に適切に負担させることができる。
以上のように、本発明によれば、地震時に構造物に作用する水平方向の荷重を地盤改良体へ確実に伝達でき、その荷重を地盤改良体に負担させられる地盤改良体を用いた基礎構造とその構築方法を提供することができる。
本実施形態に係る地盤改良体を用いた基礎構造を示す説明図 伝達部材が形成された地盤改良体を示す概略斜視図 伝達部材が形成された地盤改良体を示す概略平面図 本実施形態に係る地盤改良体を用いた基礎構造を示す概略側断面図 本実施形態に係る地盤改良体を用いた基礎構造を示す概略平断面図
以下、本発明に係る実施の形態について、図面に示す実施例を基に詳細に説明する。なお、各図において、鉛直上方向を矢印UPで示す。また、矢印UPと直交する方向を水平方向とし、矢印HRx、矢印HRyで示す場合がある。
図1で示すように、本実施形態に係る基礎構造10は、軟弱な地盤12に対して施工される基礎構造であり、その地盤(地中)12には、鉛直支持力の補強及び液状化対策のための地盤改良体14が構築されている。すなわち、地盤改良体14が構築される地盤12は、地震時に液状化の発生が予想される液状化層Lであり、地盤改良体14の深さは、その液状化層Lの底面までとされている。
地盤改良体14は、スラリー状とされたセメント系固化材による安定剤と、現地の地盤12の中の土とを、図示しない撹拌装置で撹拌して固化させることで、図2、図3で示すように、円柱体16を連続して並べたような壁状に形成されている。つまり、この地盤改良体14は、隣接する円柱体16の周壁16Aの一部を共有化させて連続的に一体化させた壁状に形成されており、全体的には平面視で格子状に構築されている。
そして、その地盤改良体14の壁部としての側壁14Aには、円柱体16の周壁16Aを連続的に一体化させたことにより、凹凸部15が形成されている。すなわち、地盤改良体14の側壁14Aには、平面視円弧状の凸部15Aが形成されるとともに、その凸部15A間に、凹部15Bが形成されるようになっている。
また、格子状の地盤改良体14で区画された複数の領域18内における地盤12の略中央には、円柱状の杭28が設けられている。この杭28は、その上端面(頭部)28Aが、地盤改良体14の上端面(頭部)14Bよりも、所定高さ(例えば10cm〜30cm程度)低位となるように地盤12に埋設されており、後述する基礎部24に形成される突起部22の底面22Aに当接する(又は図示しない鉄筋等を介して接合される)構造になっている。
また、各領域18内において、杭28の上端面28Aよりも上側の地盤12の表層が地盤改良体14と同様に改良されて固化され、地盤改良体14と同等以上の強度を有する伝達部材20が構築されている。そして、各伝達部材20の略中央部には、上側が下側よりも開口面積が大きくなるような略四角錐台形状の孔部21が形成され、この孔部21によって、杭28の上端面28Aが地盤12から露出されるようになっている。
つまり、各伝達部材20は、各領域18内において、地盤改良体14の側壁14Aに沿って配設される枠形状とされており、その外周壁部20Aが、側壁14Aに形成されている凹凸部15(凹部15B)と噛み合うように構築されることで、その側壁14Aに強固に接合されるようになっている。なお、各伝達部材20は、各領域18内の地盤12の表層を所定深さ(例えば10cm〜30cm程度)掘削した後、コンクリートを打設することによって構築してもよい。
また、各領域18内にそれぞれ伝達部材20が構築された地盤改良体14の上部にはコンクリートが打設され、図1、図4で示すように、建物26の基礎部24が構築されるようになっている。そして、このとき、基礎部24の底面24Aには、各領域18内へ突出する略四角錐台形状の突起部(パイルキャップ)22が一体に複数形成(構築)されるようになっている。
すなわち、地盤改良体14の上部にコンクリートを打設した際には、各伝達部材20の略中央部に形成された孔部21にも、そのコンクリートが入り込むため、そのコンクリートが固化することにより、基礎部24の底面24Aには、上面が下面よりも面積の大きい略四角錐台形状の突起部22が一体に複数形成(構築)される。
そして、これにより、各突起部22の底面22Aの略中央に、各杭28の上端面28Aが当接する(又は図示しない鉄筋等を介して接合される)ようになっている。つまり、この構造により、基礎部24が複数の突起部22を介して複数の杭28に支持され、建物26による鉛直荷重が、地盤改良体14と共に、その複数の杭28でも受け止められるようになっている。
また、上記したように、各領域18を構成する(囲む)地盤改良体14の側壁14Aと、各突起部22の側面22Bとの間には、地盤改良体14と同等以上の強度を有する伝達部材20が介在し(伝達部材20だけが存在し)、かつ、各伝達部材20の外周壁部20Aは、地盤改良体14の側壁14Aに形成された凹凸部15に噛み合うように強固に接合されている。
したがって、地震時において、構造物としての建物26に作用する(図3で示す矢印HRx方向又は矢印HRy方向へ向かう)水平荷重は、その建物26の基礎部24から各突起部22を介して各伝達部材20へ伝達され、その各伝達部材20から地盤改良体14の側壁14Aの面内方向(円柱体16の並び方向)へ確実に伝達される。これにより、その水平荷重を地盤改良体14に適切に負担させることが可能となっている。
なお、図4で示すように、伝達部材20の高さ(厚さ)D1は、突起部22の高さ(基礎部24の底面24Aからの高さ)D2と同一(D1=D2)になっている。伝達部材20の高さD1が、突起部22の高さD2より高いと、即ち杭28の周面と地盤改良体14の側壁14Aとの間にまで伝達部材20を介在させる構造であると、上記した水平荷重が杭28に対して大きく作用してしまう不具合が生じるからである。
以上のような基礎構造10において、次にその作用について説明する。なお、図5は基礎部24の底面24Aで切断したときの概略平断面図である。まず、地盤(地中)12に壁状の地盤改良体14を格子状に構築する。この地盤改良体14は、建物26の慣性力(地震力)に対して抵抗可能な構造を有している。そして、地盤改良体14で区画された複数の領域18内の略中央に、地盤改良体14の上端面14Bよりも所定高さ低位となるように、それぞれ杭28を設ける(図1、図2、図4参照)。
その後、格子状の地盤改良体14で区画された複数の領域18内において、各杭28の上端面28Aよりも上側の地盤12の表層を改良して固化し、それぞれ伝達部材20を構築する。このとき、各伝達部材20の外周壁部20Aは、地盤改良体14の側壁14Aの凹凸部15(凹部15B)と噛み合うように構築される。つまり、各伝達部材20は、地盤改良体14の側壁14Aと強固に接合されるように構築される。
次いで、各領域18内において、それぞれの杭28の上端面28Aが露出するまで、各領域18内に構築された各伝達部材20の略中央部を略四角錐台形状に掘削する。これにより、各領域18内において、各伝達部材20の略中央部に略四角錐台形状の孔部21が形成される(図2、図3参照)。
各伝達部材20の略中央部に孔部21が形成されたら、地盤改良体14(伝達部材20)の上部にコンクリートを打設して基礎部24を構築する。その際、各伝達部材20の略中央部に形成された孔部21内にもコンクリートが入り込むため、基礎部24の底面24Aには、各領域18内へ突出する略四角錐台形状の突起部22が一体に複数形成(構築)される。
このように、基礎部24と複数の突起部22とを共に構築すると、その工数が増加せず、簡単に構築することができる。そして、これにより、複数の突起部22は、それぞれ杭28によって支持される。つまり、複数の突起部22を介して基礎部24(建物26)が、複数の杭28によって支持される。したがって、建物26による鉛直荷重は、その杭28によって殆ど受け止められる。
また、これにより、建物26の基礎部24と地盤改良体14とが、突起部22及び伝達部材20を介して一体的に接合される。したがって、図5で示すように、地震時に建物26に作用する水平荷重Fは、その建物26の基礎部24から突起部22を介して伝達部材20に伝達され、その伝達部材20から地盤改良体14の側壁14Aの面外方向だけではなく、面内方向(図5で示す矢印Fx方向)へも確実に伝達される。よって、その水平荷重を地盤改良体14に適切に負担させることができ、建物26の耐震を図ることができる。
すなわち、格子状の地盤改良体14で区画された複数の領域18内には、それぞれ杭28が設けられている。そして、各杭28の上端面28Aは、各突起部22の底面22Aに当接する(又は図示しない鉄筋等を介して接合される)構造になっているため、上記したように、建物26による鉛直荷重は、その杭28によって殆ど受け止められる。
したがって、従来では、基礎部24と地盤改良体14との接地圧が低減され、地震時において、地盤改良体14に対する基礎部24の摩擦抵抗を期待できない懸念があった。つまり、地震時に建物26に作用する水平荷重が、基礎部24から地盤改良体14へ伝達され難く、その水平荷重を地盤改良体14が適切に負担できない懸念があった。
しかしながら、本実施形態に係る基礎構造10では、突起部22及び伝達部材20を介して、基礎部24と地盤改良体14とが一体的に接合される構造であるため、上記したように、地震時に建物26に作用する水平荷重Fを、その建物26の基礎部24から突起部22を介して伝達部材20へ伝達することができ、その伝達部材20から地盤改良体14の側壁14Aの面内方向(図5で示す矢印Fx方向)へ確実に伝達することができる。
よって、地盤改良体14に対する基礎部24の滑動を抑制又は防止することができ、上記した水平荷重を地盤改良体14に適切に負担させることができる。なお、杭28にも、地震時に建物26に作用する水平荷重が伝達されるが、上記したように、その水平荷重の殆ど(一部)は地盤改良体14に伝達されるため、杭28へ伝達される水平荷重を小さく抑えることができる。これにより、杭28の杭断面を小さくすることができる。
また、各伝達部材20は、各領域18内における地盤12の表層を改良した改良地盤やコンクリート等の簡易な手段で構築することができる。したがって、本実施形態に係る基礎構造10は、低コストで構築することができる。また、各伝達部材20を改良地盤で構築した場合には、現場発生材を利用して上記水平荷重を地盤改良体14に伝達できるようになるし、各伝達部材20をコンクリートで構築した場合には、より確実に上記水平荷重を地盤改良体14に伝達できるようになる。
以上、本実施形態に係る基礎構造10について、図面に示す実施例を基に説明したが、本実施形態に係る基礎構造10は、図示の実施例に限定されるものではない。例えば、突起部22の形状は、図示の略四角錐台形状に限定されるものではなく、地震時に建物26に作用する水平荷重を、その建物26の基礎部24から伝達部材20を介して地盤改良体14へ、効率よく確実に伝達させることができるような形状とされていればよい。
また、本実施形態に係る基礎構造10は、地盤改良体14と杭28(パイルド・ラフト基礎構造)とが併用された場合に特に有効であるが、これに限定されるものではない。例えば、杭28が全く設けられていない場合でも、傾斜地では有効となるし、杭28が地盤改良体14で区画された複数の領域18内のうち、一部の領域18内だけに設けられている場合でも有効となる。
10 基礎構造
12 地盤(地中)
14 地盤改良体
15 凹凸部
16 円柱体
18 領域
20 伝達部材
21 孔部
22 突起部
24 基礎部
26 建物(構造物)
28 杭

Claims (5)

  1. 地中に格子状に構築された壁状の地盤改良体と、
    前記地盤改良体で区画された領域内へ突出する突起部を有し、前記地盤改良体の上部に構築された基礎部と、
    前記地盤改良体と前記突起部との間に介在され、前記地盤改良体と同等以上の強度を有する伝達部材と、
    を備えた地盤改良体を用いた基礎構造。
  2. 前記突起部が杭で支持されている請求項1に記載の地盤改良体を用いた基礎構造。
  3. 前記伝達部材は、地盤の表層を改良した改良地盤である請求項1又は請求項2に記載の地盤改良体を用いた基礎構造。
  4. 前記伝達部材は、前記地盤改良体と前記基礎部との間に設けられたコンクリートである請求項1又は請求項2に記載の地盤改良体を用いた基礎構造。
  5. 地中に壁状の地盤改良体を格子状に構築する工程と、
    前記地盤改良体で区画された領域に該地盤改良体よりも低く杭を設ける工程と、
    前記杭の頭部よりも上側の地盤の表層を改良して改良地盤とする工程と、
    前記杭の頭部まで前記改良地盤を掘削する工程と、
    前記杭の頭部に支持される突起部と前記地盤改良体の上部に支持される基礎部を構築する工程と、
    を含む地盤改良体の構築方法。
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