JP5350555B1 - 液状化防止構造及び液状化防止工法 - Google Patents
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Abstract
【課題】液状化地盤を囲い壁で拘束して液状化を防止する構造において、囲い壁を補強して液状化防止作用及び効果を高める構造および工法を提供する。
【解決手段】地盤中に存在する液状化層Xの一定の深さまで、又は液状化層Xを貫通させてその下の非液状化層Yへ届く深さまで、地盤改良壁体20を、平面視が閉じた閉鎖形状に造成した囲い壁2として構築する。地盤改良壁体20の内面側に、突っ張り作用を働かせるに相当な間隔をあけて内接する火打ち形状の地盤改良体3を、囲い壁2との間で応力の伝達が可能に接合して造成する。
【選択図】図1
Description
そこで、囲い壁による液状化防止効果を高める手段として、格子の間隔を狭めた構造、或いは地盤改良壁体の壁厚の一部又は全部を大きくしたり、地盤改良壁体の内部へ鋼矢板やH型鋼等の芯材を埋め込むことにより壁体自体の剛性・強度を高める構造が考えられている。
しかし、格子間隔を狭幅にすると、液状化防止効果は高まるが、改良土量が増えるので工期が長引き、施工費用が嵩んで不経済である。また、既設住宅に関し、既に最小の格子間隔が決定している場合には、それ以下の格子間隔に施工できない。そのため例えば掘削径の大きなドリルを使用して壁厚を大にするか、或いは他の補強工法と併用する必要があるのでコスト高となる。
また、地盤改良壁体の剛性を高める方法、例えば芯材を使用する工法では、施工費用が多く掛かるし、その効果は剛性を高めた箇所のみで限定的となり、十分な液状化防止効果が期待できない場合がある。
下記特許文献3には、液状化層の所定深度域に地盤改良壁体から内方へ向かって突き出す水平方向の硬化材注入層を複数層並列させて造成する液状化防止工法が開示されている。
下記特許文献5は、囲い壁の内周面に、立面方向に見て三角形状の連続型傾斜壁を、前記囲い壁と同方向に連続させて一体的に設けて液状化防止効果を高めた構成を開示している。
下記特許文献6には、囲い壁の内周面に、長方形の板形状で成る控え壁を、所定の間隔をあけて囲い壁の内面と直交方向にリブ状に複数体設けて、液状化による被害を抑制する基礎構造が開示されている。
下記特許文献7は、囲い壁の内部に、L字形平面形、T字形平面形、十字形平面形をなす地盤改良体を、互いに離しかつ分散して複数体造成して、囲い壁を補強した液状化防止構造を開示している。
下記の特許文献8は、地盤改良壁体で平面視が八角形に造成した囲い壁を格子状に構築した構成を示している。
また、上記特許文献3に開示された液状化防止構造は、並列配置に複数造成した硬化材注入層で液状化防止効果を高めることはできる。しかし、複数の硬化材注入層を施工すると、やはり改良土量が増えるので工期が長引き、施工費用も嵩み不経済である。
また、上記特許文献5は既設建物が存在していても、その直下の基礎地盤に、事後的な対策工として容易に実施可能であり、囲い壁の変形を連続型傾斜壁で効果的に防止して、既存建物直下地盤の液状化を防止することができる。
しかし、特許文献4及び5に開示された構造も、改良土量が増えて工期が長引き、施工費用も嵩み不経済であることが懸念される。
上記特許文献7に開示された液状化防止構造は、既存構造物が存在する場合には、適用できない欠点がある。
上記特許文献8に開示された液状化防止構造は、囲い壁を補強して液状化防止作用・効果(拘束効果)を高める構造ではない。
しかも、上記特許文献6〜8に開示された構造は、改良土量が増えて工期が長引き、施工費用も嵩み不経済である。
地盤中に存在する液状化層Xの一定深さまで、又は同液状化層Xを貫通させてその下の非液状化層Yへ届く深さまで、地盤改良壁体20を、平面視が閉じた閉鎖形状に造成した囲い壁2として構築して成る液状化防止構造において、
前記囲い壁2として構築された地盤改良壁体20の内面側に、突っ張り作用を働かせるに相当な間隔をあけて内接する火打ち形状の地盤改良体3が、囲い壁2との間で応力の伝達が可能に接合して造成されていることを特徴とする。
閉鎖形状の囲い壁2は平面視が矩形状に形成されており、前記囲い壁2の内隅部に火打ち形状の地盤改良体3が、囲い壁2との間で応力の伝達が可能に接合して造成されていることを特徴とする。
火打ち形状の地盤改良体3は、地面からの深さ1m〜4mの範囲内に造成されていることを特徴とする。
地盤中に存在する液状化層Xの一定深さまで、又は同液状化層Xを貫通させてその下の非液状化層Yへ届く深さまで、地盤改良壁体20を、平面視が閉じた閉鎖形状に造成した囲い壁2として構築する液状化防止工法において、
前記囲い壁2として構築された地盤改良壁体20の内面側に、突っ張り作用を働かせるに相当な間隔をあけて内接する火打ち形状の地盤改良体3を、囲い壁2との間で応力の伝達が可能に接合して造成することを特徴とする。
しかも、前記火打ち形状の地盤改良体3は、地面からの深さ1m〜4mの程度に造成するので、改良土量が少なくて済み、短工期で経済的に安価に施工できる。
また、前記火打ち形状の地盤改良体3は、例えば平面視が矩形の囲い壁2の内隅部に造成するので、既存建物4を取り囲むように造成された囲い壁2であっても、特殊な装置を用いることなく容易に造成できるので、施工性に優れている。
本発明による液状化防止工法は、囲い壁2を平面視が矩形の閉鎖形に形成して、前記囲い壁2の内隅部に、火打ち形状の地盤改良体3を地面からの深さ1m〜4mの範囲内に、しかも囲い壁2との間で応力の伝達が可能に接合して造成して実施される。
図1〜3に示した本発明に係る液状化防止構造1の基本的な構造は、従来公知の液状化防止構造と同様、液状化対象地盤に対し、平面的に見て矩形の閉鎖形状に囲い壁2を構築した構成である。
即ち、構造物4の直下に位置する液状化層Xを貫通して、その下の非液状化層Y(地面からの深さ12m程度)へ届く深さまでほぼ垂直な壁状に連続する地盤改良壁体20…を平面視が閉じた矩形状で閉鎖形状の囲い壁2(図示例の場合は四角形状)として構築されている。
前記囲い壁2の施工要領を説明すると、先ず、液状化層Xに向かって、ほぼ垂直な壁状に連続する地盤改良壁体20を、従来公知の地盤改良工法により造成する。前記地盤改良体20を造成する従来公知の地盤改良工法は、例えば地盤改良機を用いた深層混合処理工法やソイルミキシングウォール工法等により行う。即ち、原位置地盤を地盤改良機により掘削し、その掘削土へセメントミルク等の安定剤を注入し混合・撹拌して、改良柱の一部分がラップして連続する柱列状の地盤改良柱体壁を地盤改良壁体20として構築し、平面視が矩形の閉鎖形状をなす囲い壁2を形成する。
図2に例示した囲い壁2の平面視の縦横寸法は、一例として13m×16m程度であり、地盤改良壁体20の厚さは一例として1.0m程度である。
なお、詳細に図示することは省略したが、前記囲い壁2の平面形状は、図1及び2に示した四角形状に限らない。例えば多角形状や円形状や楕円形状、或いは前者を組み合わせた形状等、種々の形状に構築し実施することができる。
つまり、本発明の液状化防止構造1は、上記(1)及び(2)の要件を満たせば、上記地盤改良壁体20を非液状化層Yに到達するまで造成する必要はない。図4に示したように、液状化層Xの一定深さまで造成した構成で実施することもできる。
図1〜3に例示した囲い壁2は平面的に見て四角形状に形成した構成なので、前記火打ち形状の地盤改良体3は、前記囲い壁2の四隅のいわゆる内隅部へ、同囲い壁2との間で応力の伝達が可能に接合して造成する。前記火打ち形状の地盤改良体3…は、図示例の場合、地面からの深さ1mから4mの範囲程度で壁状に造成されている。図2のように平面的に見た火打ち形状の地盤改良体3の厚さは1.0m程度、長さ5.5m程度であり、地盤改良壁体20に対して約45度程度の角度に造成されている。但し、前記火打ち形状をなす地盤改良体3の厚さ、寸法及び角度は、前記実施例の限りではなく、地盤改良壁体20が備えるべき強度に応じて適宜設計変更することができる。
前記火打ち形状の地盤改良体3を地面からの深さ1m〜4mの範囲内で造成する理由は、地面に近い地下水位以下の地盤(地面からの深さ1m〜4m程度の範囲)は、囲い壁2による拘束力が小さいため、同囲い壁2を構成する地盤改良壁体20が地震により揺れ易く、地面からの深さ4m以深に比べて液状化し易いからである。よって、前記火打ち形状の地盤改良体3を前記範囲内で造成して液状化地盤を拘束すれば、十分に液状化防止効果を高めることができるし、加えて改良土量は少なくて済み、短工期で経済的に安価に施工できる。ただし、前記寸法以上に深く火打ち形状の地盤改良体3を造成することは、設計、施工者の自由である。
なお、前記火打ち形状の地盤改良体3の施工は、上記囲い壁2を構成する地盤改良壁体20の施工と同様、公知の地盤改良機を使用して、深層混合処理工法やソイルミキシングウォール工法等により、壁状の地盤改良体3を造成することにより実施される。
また、囲い壁2の平面形状が、例えば多角形状や円形状、或いは両者を組み合わせた形状等の場合には、前記火打ち形状の地盤改良体3は、前記囲い壁2の平面形状に応じて、突っ張り作用を働かせるのに相当な間隔をあけて内接するように造成される。
本解析実験は、図5で示したモデル地盤へ、図6に示した入力地震動を加振して解析を行ったものであり、その解析結果を図7に示した。
図5に示したモデル地盤の構成は、浦安市の「液状化対策実現可能性技術検討委員会」で用いられたものである。このモデル地盤は、地下水位がGL−1mであり、液状化層XはGL−1m〜−12mである。GL−12m以深であるAc1層(GL−12m〜−32m)、Ac2層(GL−32m〜−45m)は、非液状化層Yを示している。このモデル地盤には、地盤改良壁体20…が地面から液状化層Xを貫通しAc1層(非液状化層Y)に1m程度根入れして造成され、平面的に見て閉鎖形状の囲い壁2が構築されている。そして、前記囲い壁2の各内隅部に上記構成で成る火打ち形状の地盤改良体3を造成している。なお、囲い壁2の縦横の幅寸は13m×16m程度である。
図6に示した入力地震動は、東日本大震災時に観測された観測波の最大振幅を調整したものである。本解析実験では、図5に示すモデル地盤へ、図6に示す入力地震動を150秒まで加振して解析を行った。
図7〜9に示した解析結果において、縦軸は液状化層Xにおける地面からの深さを示しており、液状化層Xの所定の深さにおける過剰間隙水圧比をB線〜J線の横軸線として示した。過剰間隙水圧比は、B線、C線、…J線の順に0.1、0.2、…0.9を表している。上載荷重(土の重さ)と水圧が等しくなったとき過剰間隙水圧比が1.0となり、地盤が液状化する。
次に、図9に示した液状化地盤に囲い壁2を構築した場合の解析結果によると、地面からの深さ1m辺りの過剰間隙水圧比は0.1〜0.2程度(B線、C線)であり、それ以深で徐々に過剰間隙水圧比が上昇し、深さが4m辺りにおける囲い壁の中心部での過剰間隙水圧比は0.8(I線)となった。また、深さが3m〜8m辺りにおける囲い壁近辺の過剰間隙水圧比は、0.9(J線)となり、非常に高い数値が得られた。
また、地盤改良壁体20の壁面と平行方向に発生する面内方向の引張り応力も火打ち形状の地盤改良体3によって低減できるので、その健全性を維持できる。地盤改良壁体20の壁厚が1.0mよりも薄く施工され、引張り応力が大きくなる場合でも、本発明の火打ち形状の地盤改良体3による補強が有効である。
また、前記火打ち形状の地盤改良体3は、例えば平面視が矩形の囲い壁2の内隅部に造成するので、既存建物4を取り囲むように造成された囲い壁2であっても、特殊な装置を用いることなく容易に造成できるので、施工性に優れている。
更に、本発明による液状化防止構造の拡張した考えによれば、図12に示したように、縦横方向に複数の囲い壁2…を構築して格子状に構成した液状化防止構造11の場合、前記液状化防止構造11の外周に位置する囲い壁2の内隅部に、それぞれ上記火打ち形状の地盤改良体3を造成した構成で実施することもできる。
10 液状化防止構造
11 液状化防止構造
2 囲い壁
20 地盤改良壁体
3 火打ち形状の地盤改良体
4 構造物
X 液状化層
Y 非液状化層
Claims (4)
- 地盤中に存在する液状化層の一定深さまで、又は同液状化層を貫通させてその下の非液状化層へ届く深さまで、地盤改良壁体を、平面視が閉じた閉鎖形状に造成した囲い壁として構築して成る液状化防止構造において、
前記囲い壁として構築された地盤改良壁体の内面側に、突っ張り作用を働かせるに相当な間隔をあけて内接する火打ち形状の地盤改良体が、囲い壁との間で応力の伝達が可能に接合して造成されていることを特徴とする、液状化防止構造。 - 閉鎖形状の囲い壁は平面視が矩形状に形成されており、前記囲い壁の内隅部に火打ち形状の地盤改良体が、囲い壁との間で応力の伝達が可能に接合して造成されていることを特徴とする、請求項1に記載した液状化防止構造。
- 火打ち形状の地盤改良体は、地面からの深さ1m〜4mの範囲内に造成されていることを特徴とする、請求項1又は2に記載した液状化防止構造。
- 地盤中に存在する液状化層の一定深さまで、又は同液状化層を貫通させてその下の非液状化層へ届く深さまで、地盤改良壁体を、平面視が閉じた閉鎖形状に造成した囲い壁として構築する液状化防止工法において、
前記囲い壁として構築された地盤改良壁体の内面側に、突っ張り作用を働かせるに相当な間隔をあけて内接する火打ち形状の地盤改良体を、囲い壁との間で応力の伝達が可能に接合して造成することを特徴とする、液状化防止工法。
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