JP6774774B2 - 杭基礎構造 - Google Patents
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そのため、この地震時引抜力によって杭頭と建物躯体である基礎との接合部(以下、杭頭接合部と略称する。)が破壊しないように、杭頭接合部は想定される地震時引抜力に応じた構造とするのが基本となる。一方、杭頭接合部の構造の簡略化が求められる場合や、杭頭接合部の構造はそのままで地震時引抜力への更なる安全性が求められる場合もある。
後者は、上述のような不都合はないものの、追加的なウェイトで建物自重が重くなるので、地震時に杭に作用するせん断力(以下、地震時せん断力と略称する。)が増大してしまうデメリットがある。
建設地の地下に残された既存躯体と、
建設地の地中に建て込まれた新設杭と、
前記新設杭の上に接合された新設躯体とが備えられ、
前記新設躯体が、前記既存躯体の重量が地震時引抜力への抵抗要素となる状態で当該既存躯体に接続され、
前記新設躯体と前記既存躯体との接続は、互いの地下外壁どうしの間で行われ、
前記既存躯体における前記新設躯体との接続領域が、地震時に発現させる設定引抜抵抗力に応じた重量を有する領域として、前記既存躯体の地下外壁において前記新設躯体と接続されていない非接続領域よりも上方の領域に設定されている点にある。
また、このように既存躯体を有効に利用することで、既存躯体の解体・撤去作業の省力化や新設山留壁の構築作業の省力化等を図ることも可能となる。
更に、既存躯体の重量自体がそもそも大きい上、建設地に残す範囲を拡大する等の簡易な方法により重量を更に大きくできるので、杭に作用する地震時引抜力を大きく低減させることが可能となる。
しかも、地下に残された既存躯体は、自身の基礎構造にて下方から支持されているので、このように新設躯体と既存躯体とを接続しても、新設躯体の自重が重くなることはない。そのため、既存躯体の重量が新設躯体に追加されることで、新設杭に作用する地震時せん断力が増大することも回避することができる。
これらのことから、新設杭に作用する地震時引抜力を大きく低減させることが可能で、且つ、新設杭に作用する地震時せん断力の増大を回避しながら地震時引抜力を効率的に低減することができる実用性の高い優れた杭基礎構造を実現することができる。
また、既存躯体における新設躯体との接続領域は新設躯体との一体性が強いので、仮に地震時引抜力で既存躯体が分断破壊する場合でも、その分断ラインが接続領域と非接続領域との境界付近に位置するなどにより、接続領域が新設躯体に接続された状態が維持され易い。
そのため、当該接続領域が、地震時に発現させる設定引抜抵抗力に応じた重量を有する領域に設定されている上記構成によれば、少なくとも設定引抜抵抗力を高い確率で作用させることができ、地震時引抜力に対する安全性を更に高めることができる。
更に、上記構成によれば、新設躯体と既存躯体の地下外壁どうしは、新設杭の地震時引抜力の作用方向となる上下方向(縦方向)沿う姿勢にあるので、アンカーや鉄筋等の接続部材を亘らせる汎用性の高い接続構造に限らず、両地下外壁どうしの対向面間に凹部と凸部などの両者の上下相対移動を規制する係合部を設ける接続構造や、両地下外壁どうしの摩擦抵抗を高めて両者の上下相対移動を抑制する接続構造などの接続構造を採用することも可能となる。よって、既存躯体の状態や建築計画等に応じた適切な接続構造を採用することができる。
そして、アンカーや鉄筋等の接続部材を亘らせる汎用性の高い接続構造を採用する場合には、新設躯体と既存躯体の基礎どうしを接続するのに比べて地下水の問題が生じることを抑制しながら、接続部材のせん断耐力にて適切に伝達する形態で既存躯体の重量を利用した引抜抵抗力を的確に実現し、新設杭に作用する地震時引抜力を効果的に低減することができる。
それでいて、地震時引抜力については、耐力に比べて確定し易い既存躯体の重量を利用して効率的に低減することができる。
この杭基礎構造は、図1に示すように、建設地Gの地下に残された既存躯体1と、建設地Gの地中に建て込まれた新設杭2と、新設杭2の上に接合された新設躯体3とが主要構成として備えられており、建設地Gにて既設建物から新設建物に建て替える場合に好適に用いることができる。そして、当該杭基礎構造は、新設躯体3から受ける鉛直荷重及び水平荷重を新設杭2にて負担するとともに、既存躯体1の重量を利用して新設杭2に作用する地震時引抜力を低減するように構成されている。
当該新設杭2は、新設躯体3から受ける鉛直荷重及び水平荷重を既存杭4に負担させることなく単独負担可能に構成されている。具体的には、新設杭2は、新設躯体3から受ける鉛直荷重及び水平荷重を単独負担可能な耐力を有するように、杭径や杭長や本数等の仕様が設定されている。
この点、本杭基礎構造は、既存躯体1の重量を利用して地震時引抜力を低減させるので、地震時引抜力への耐力としては半剛接合構造で十分ではあるが、本実施形態では、杭頭補強筋(図示省略)で頑強に補強した剛接合構造を採用し、地震時引抜力に対する杭頭接合部6の安全性を高める選択をしている。
ここで、既存躯体1の接続領域Aは、多数の接続部材71にて直接的に新設躯体3に接続された領域である。本実施形態では、設定引抜抵抗力に応じた重量(つまり、地震時に設定引抜抵抗力を発現させる重量)が既存地下外壁12の上半側の重量となることから、設定引抜抵抗力に応じた重量を有する領域として既存地下外壁12の上半側の領域を接続領域Aとしている。
まず、既存躯体1の既存基礎11と既存地下外壁12を建設地Gの地下に残して、既存建物を解体・撤去する。なお、建設地Gの地下に残された既存躯体1は、杭基礎構造において地震時引抜力の抵抗要素として構成するが、施工段階では、新規の土留め壁を不要として労務作業を低減することや地下水の湧出を抑制することにも効果を発揮する。
そして、埋め戻し材5の上に新設躯体3の新設基礎31を構築する。この際、杭頭接合部6が所望の接合構造となるように杭頭21は適宜に補強しておく。
そして、新設躯体3の柱33の周囲及び新設躯体3の外周部にコンクリートを打設して柱脚部35及び新設地下外壁32を構築する。この際、柱脚部35と接続領域Aの間の部位36は、新設地下外壁32を構成するコンクリート増打部として柱脚部35と一体にコンクリートを打設する。このようにすることで、既存躯体1の接続領域Aと新設地下外壁32とを接続部材71を介して適切に接続しながら新設地下外壁32と柱脚部35を一体的に構築することができる。
以上の工程により、本発明に係る杭基礎構造を構築することができる。
(1)前述の実施形態では、新設躯体3と既存躯体1との接続部7が、新設躯体3の新設地下外壁32と既存躯体1の既存地下外壁12とに横方向に延びる接続部材71を亘らせて構成されている場合を例に示したが、これに限るものではない。
このようにすれば、新設躯体3が上方側に移動しようとする場合に、係合状態にある新設躯体3側の凸部73と既存躯体22側の凹部72とによって既存躯体1の重量が移動抵抗力として適切に付加され、その結果、新設杭2に作用する地震時引抜力を好適に低減させることができる。この接続部7は、既存地下外壁12に凹部72を形成した状態で、当該既存地下外壁12を型枠にしてコンクリートを打設して新設地下外壁32を構築することにより、凹部72に入り込む凸部73を備えた新設地下外壁32が構築できるので、容易に構築することができる。
2 新設杭
3 新設躯体
12 既存地下外壁
32 新設地下外壁
A 接続領域
Claims (3)
- 建設地の地下に残された既存躯体と、
建設地の地中に建て込まれた新設杭と、
前記新設杭の上に接合された新設躯体とが備えられ、
前記新設躯体が、前記既存躯体の重量が地震時引抜力への抵抗要素となる状態で当該既存躯体に接続され、
前記新設躯体と前記既存躯体との接続は、互いの地下外壁どうしの間で行われ、
前記既存躯体における前記新設躯体との接続領域が、地震時に発現させる設定引抜抵抗力に応じた重量を有する領域として、前記既存躯体の地下外壁において前記新設躯体と接続されていない非接続領域よりも上方の領域に設定されている杭基礎構造。 - 前記新設杭は、前記新設躯体から受ける鉛直荷重及び水平荷重を単独負担可能に構成されている請求項1記載の杭基礎構造。
- 前記新設杭の杭頭と前記新設躯体の新設基礎とは、剛接合構造よりも回転拘束度を緩和した半剛接合構造にて接合されている請求項1又は2記載の杭基礎構造。
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