JP2011162714A - シリコーンゴム系硬化性組成物、成形体及び医療用チューブ - Google Patents

シリコーンゴム系硬化性組成物、成形体及び医療用チューブ Download PDF

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Abstract

【課題】引張り強度及び引裂き強度に優れたシリコーンゴムが得られる、シリコーンゴム系硬化性組成物を提供する。
【解決手段】ビニル基含有直鎖状オルガノポリシロキサン(A)、直鎖状オルガノハイドロジェンポリシロキサン(B)、及び、分岐状オルガノハイドロジェンポリシロキサン(C)を含有することを特徴とする、シリコーンゴム系硬化性組成物。
【選択図】なし

Description

本発明は、シリコーンゴム系硬化性組成物、該シリコーンゴム系硬化性組成物を用いた成形体、及び該成形体で構成される医療用チューブに関するものである。
シリコーンゴムは、耐熱性、難燃性、化学的安定性、耐候性、耐放射線性、電気特性等に優れていることから、幅広い分野において様々な用途に使用されている。特に、シリコーンゴムは、生理的に不活性であると共に、生体に触れた場合の体組織に対する反応が少ないため、医療用各種カテーテル等、医療器具の材料としても利用されている。
医療用カテーテルは、胸腔や腹腔等の体腔、消化管や尿管等の菅腔部、血管等に挿入し、体液の排出や、薬液、栄養剤及び造影剤等の注入点滴に用いられる管であり、生体適合性の他、耐傷付き性(耐引裂き性)、耐キンク性(引張り強度)、透明性、柔軟性(引張り伸び性)等が要求される。医療用カテーテルの具体的用途としては、例えば、術後の血液や膿等の排液除去用吸引器のドレナージチューブや、経皮的内視鏡下胃ろう造設術(PEG)等の術後の栄養摂取用チューブ等が挙げられる。また、カテーテル用の極細チューブ状のシリコーンゴムを製造するためには、シリコーンゴム材料であるシリコーンゴム組成物には押出し成形性が求められる。
医療用カテーテルの材料としては、シリコーンゴムの他、軟質ポリ塩化ビニル等も一般的に使用されている。ポリ塩化ビニル等と比較して、シリコーンゴムは、生体適合性及び柔軟性の点において優れるものの、引裂き強度や引張り強度等の強度面、特に引裂き強度の向上が求められている。引裂き強度が充分でないと、施術中の針や刃物等による傷によってカテーテルが破けたり、或いは、引張り強度が充分でないと、カテーテルが折れ曲がって降伏して閉塞(キンク)し、排出されるべき体液や注入されるべき薬液等のカテーテル内の流通が滞ってしまう。
そこで、シリコーンゴムの引裂き強度や引張り強度を高めるべく、様々な方法が提案されている(例えば、特許文献1〜7)。シリコーンゴムに高い引裂き性を付与するための具体的な方法としては、シリカ微粒子等の無機充填材の添加、架橋密度の疎密化(シリコーンゴムの系中に架橋密度が高い領域と低い領域とを分布させる)等が挙げられる。架橋密度の疎密化による引き裂き性の向上は、架橋密度の高い領域が、引裂き応力に対する抗力として作用するためと考えられている。
例えば、特許文献1では、高粘度及び低ビニル基含有量のオルガノポリシロキサン(生ゴム(A))を主体とし、これに、低粘度及び高ビニル基含有量のオルガノポリシロキサン(シリコーンオイル(B))、ビニル基含有オルガノポリシロキサン共重合体(ビニル基含有シリコーンレジン(C))、オルガノ水素シロキサン(架橋剤(D))、白金又は白金化合物(硬化触媒(E))、及び微粉末シリカ(充填剤(F))を配合した硬化性シリコーンゴム組成物が開示されている。
特開平7−331079号公報 特開平7−228782号公報 特開平7−258551号公報 米国特許3,884,866号公報 米国特許4,539,357号公報 米国特許4,061,609号公報 米国特許3,671,480号公報
しかしながら、特許文献1のように、ビニル基含有量が高いオルガノポリシロキサンを用い、且つ、ビニル基の含有量が異なるオルガノポリシロキサンと組み合わせて配合しても、架橋点の増加により引張り強度を高めることはできるが、十分な引裂き強度は得られない。
本発明は、引張り強度及び引裂き強度に優れたシリコーンゴムが得られる、シリコーンゴム系硬化性組成物を提供することを目的とするものである。
このような目的は、下記(1)〜(24)に記載の本発明により達成される。
(1) ビニル基含有直鎖状オルガノポリシロキサン(A)と、直鎖状オルガノハイドロジェンポリシロキサン(B)と、分岐状オルガノハイドロジェンポリシロキサン(C)と、を含有することを特徴とするシリコーンゴム系硬化性組成物。
(2) 前記ビニル基含有直鎖状オルガノポリシロキサン(A)は、下記式(1)で示されるものである、シリコーンゴム系硬化性組成物。
Figure 2011162714
(式(1)中、mは1〜1000の整数、nは3000〜10000の整数であり、Rは炭素数1〜10の置換又は非置換のアルキル基、アルケニル基、アリール基、又はこれらを組み合わせた炭化水素基、Rは炭素数1〜10の置換又は非置換のアルキル基、アルケニル基、アリール基、又はこれらを組み合わせた炭化水素基、Rは炭素数1〜8の置換又は非置換のアルキル基、アリール基、又はこれらを組み合わせた炭化水素基である。)
(3) 前記直鎖状オルガノハイドロジェンポリシロキサン(B)は、下記式(2)で示されるものである、シリコーンゴム系硬化性組成物。
Figure 2011162714
(式(2)中、mは0〜300の整数、nは(300−m)の整数である。Rは炭素数1〜10の置換又は非置換のアルキル基、アルケニル基、アリール基、これらを組み合わせた炭化水素基、又はヒドリド基である。Rは炭素数1〜10の置換又は非置換のアルキル基、アルケニル基、アリール基、これらを組み合わせた炭化水素基、又はヒドリド基である。ただし、複数のR及びRのうち、少なくとも2つ以上がヒドリド基である。Rは炭素数1〜8の置換又は非置換のアルキル基、アリール基、又はこれらを組み合わせた炭化水素基である。)
(4) 前記分岐状オルガノハイドロジェンポリシロキサン(C)は、下記平均組成式(c)で示されるものであるシリコーンゴム系硬化性組成物。
平均組成式(c) : (H(R3−aSiO1/2(SiO4/2
(式(c)において、Rは一価の有機基、aは1〜3の範囲の整数、mはH(R3−aSiO1/2単位の数、nはSiO4/2単位の数である。)
(5) 前記分岐状オルガノハイドロジェンポリシロキサン(C)のヒドリド基量は、7.5〜10当量/Kgである、シリコーンゴム系硬化性組成物。
(6) 前記ビニル基含有直鎖状オルガノポリシロキサン(A)は、ビニル基含有量が0.05〜0.2モル%である第一のビニル基含有直鎖状オルガノポリシロキサンと、ビニル基含有量が0.5〜12モル%である第二のビニル基含有直鎖状オルガノポリシロキサンを含有する、シリコーンゴム系硬化性組成物。
(7) 前記ビニル基含有直鎖状オルガノポリシロキサン(A)の重合度が、4000〜8000の範囲である、シリコーンゴム系硬化性組成物。
(8) 前記直鎖状オルガノハイドロジェンポリシロキサン(B)はビニル基を有しないものである、シリコーンゴム系硬化性組成物。
(9) 前記分岐状オルガノハイドロジェンポリシロキサン(C)の平均組成式(c)において、水素原子の数aが1である、シリコーンゴム系硬化性組成物。
(10) 前記分岐状オルガノハイドロジェンポリシロキサン(C)はビニル基を有しないものである、シリコーンゴム系硬化性組成物。
(11)前記分岐状オルガノハイドロジェンポリシロキサン(C)は、窒素雰囲気下、1000℃まで昇温速度10℃/分で加熱した際の残渣量が5%以上である、シリコーンゴム系硬化性組成物。
(12) 前記ビニル基含有直鎖状オルガノポリシロキサン(A)100重量部に対し、前記直鎖状オルガノハイドロジェンポリシロキサン(B)を0.1〜5重量部、及び、前記分岐状オルガノハイドロジェンポリシロキサン(C)を0.01〜10重量部の割合で含有する、シリコーンゴム系硬化性組成物。
(13) ビニル基含有分岐状オルガノポリシロキサン(D)をさらに含有する、シリコーンゴム系硬化性組成物。
(14) 前記ビニル基含有分岐状オルガノポリシロキサン(D)は、下記平均組成式(d)で示されるものである、シリコーンゴム系硬化性組成物。
平均組成式(d):(CH=CH(RSiO1/2m(SiO4/2
(式(d)において、Rはビニル基を有しない一価の有機基、mはCH=CH(RSiO1/2単位の数、nはSiO4/2単位の数である)
(15) 前記ビニル基含有分岐状オルガノポリシロキサン(D)のビニル基量は、0.05〜3当量/Kgである、シリコーンゴム系硬化性組成物。
(16) 前記ビニル基含有分岐状オルガノポリシロキサン(D)の有機基Rがメチル基である、シリコーンゴム系硬化性組成物。
(17) 前記ビニル基含有分岐状オルガノポリシロキサン(D)は液状である、シリコーンゴム系硬化性組成物。
(18) 前記ビニル基含有分岐状オルガノポリシロキサン(D)の重合度は、4000以下である、シリコーンゴム系硬化性組成物。
(19) 前記ビニル基含有直鎖状オルガノポリシロキサン(A)100重量部に対し、前記ビニル基含有分岐状オルガノポリシロキサン(D)を5〜30重量部の割合で含有する、シリコーンゴム系硬化性組成物。
(20) 触媒量の白金又は白金化合物をさらに含有する、シリコーンゴム系硬化性組成物。
(21) 無機充填材をさらに含有する、シリコーンゴム系硬化性組成物。
(22) 硬化後の物性が、JIS K6251(2004)によるダンベル状3号形試験片の引張り強さが8.6N/mm以上であり、JIS K6252(2001)による切込み無しアングル形試験片の引裂き強さが33N/mm以上である、シリコーンゴムを与える、シリコーンゴム系硬化性組成物。
(23) 上記シリコーンゴム系硬化性組成物を用いてなる成形体。
(24) 上記成形体で構成されることを特徴とする医療用チューブ
本発明のシリコーンゴム系硬化性組成物を硬化して得られるシリコーンゴムは、引張り強度及び引裂き強度に優れるものである。従って、本発明のシリコーンゴム系硬化性組成物を用いてなる成形体及び該成形体で構成される医療用チューブは引張り強度や引裂き強度等の機械的強度が高い。すなわち、本発明によれば、耐傷付き性及び耐キンク性に優れたシリコーンゴム製医療用カテーテルを提供することが可能である。
本発明のシリコーンゴム系硬化性組成物は、ビニル基含有直鎖状オルガノポリシロキサン(A)と、直鎖状オルガノハイドロジェンポリシロキサン(B)と、分岐状オルガノハイドロジェンポリシロキサン(C)と、を含有することを特徴とする。
本発明者らは、シリコーンゴムの強度向上を達成すべく、鋭意検討した結果、ビニル基の含有量が異なる直鎖状オルガノポリシロキサンを組み合わせても、引張り強度と引裂き強度を兼ね備えたシリコーンゴムを得ることが難しいことを見出した。そして、ビニル基含有直鎖状オルガノポリシロキサン(A)を主体とし、直鎖状オルガノハイドロジェンポリシロキサン(B)及び分岐状オルガノハイドロジェンポリシロキサン(C)を組み合わせることで、架橋点の量を確保しつつ、架橋密度が疎密化されたシリコーンゴムが得られることを見出した。これは、二次元的な直鎖状の分子構造を有する(B)直鎖状オルガノハイドロジェンポリシロキサンと、三次元的に分岐した分子構造を有する(C)分岐状オルガノハイドロジェンポリシロキサンとを組み合わせて用いることによって、シリコーンゴムの架橋ネットワーク中に架橋点が密な領域と疎な領域が形成されるためと推測される。
本発明のシリコーンゴム系硬化性組成物を硬化させることで得られるシリコーンゴムは、架橋点の量の確保しつつ、架橋密度が疎密化されているため、優れた引張り強度及び引裂き強度を呈する。従って、本発明のシリコーンゴム系硬化性組成物を用いることによって、耐傷付き性及び耐キンク性に優れたシリコーンゴム製カテーテルを得ることができる。
以下、本発明のシリコーンゴム系硬化性組成物を構成する各成分について詳しく説明する。本発明のシリコーンゴム系硬化性組成物は、上記(A)〜(C)成分を必須成分とするものである。
(A)ビニル基含有直鎖状オルガノポリシロキサン
ビニル基含有直鎖状オルガノポリシロキサン(A)は、本発明のシリコーンゴム系硬化性組成物の主成分であり、直鎖構造を有する重合体である。ビニル基を含有し、該ビニル基が加硫時の架橋点となる。
ビニル基含有直鎖状オルガノポリシロキサン(A)のビニル基の含有量は、特に限定されないが、0.01〜15モル%、さらに0.05〜12モル%であることが好ましい。ここで、ビニル基含有量とは、ビニル基含有直鎖状オルガノポリシロキサン(A)を構成する全ユニットを100モル%としたときのビニル基含有シロキサンユニットのモル%である。但し、ビニル基含有シロキサンユニット1つに対して、ビニル基1つであると考える。
ビニル基含有直鎖状オルガノポリシロキサン(A)の重合度は特に限定されないが、通常、3000〜10000の範囲であり、好ましくは4000〜8000の範囲である。
ビニル基含有直鎖状オルガノポリシロキサン(A)の比重は、通常、0.9〜1.1の範囲である。
ビニル基含有直鎖状オルガノポリシロキサン(A)としては、下記式(1)で表される構造を有するものが好ましい。
Figure 2011162714
式(1)中、Rは炭素数1〜10の置換又は非置換のアルキル基、アルケニル基、アリール基、又はこれらを組み合わせた炭化水素基である。炭素数1〜10のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基等が挙げられ、中でも、メチル基が好ましい。炭素数1〜10のアルケニル基としては、例えば、ビニル基、アリル基、ブテニル基等が挙げられ、中でも、ビニル基が好ましい。炭素数1〜10のアリール基としては、例えば、フェニル基等が挙げられる。
また、Rは炭素数1〜10の置換又は非置換のアルキル基、アルケニル基、アリール基、又はこれらを組み合わせた炭化水素基である。炭素数1〜10のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基等が挙げられ、中でも、メチル基が好ましい。炭素数1〜10のアルケニル基としては、例えば、ビニル基、アリル基、ブテニル基が挙げられる。炭素数1〜10のアリール基としては、例えば、フェニル基が挙げられる。
また、Rは炭素数1〜8の置換又は非置換のアルキル基、アリール基、又はこれらを組み合わせた炭化水素基である。炭素数1〜8のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基等が挙げられ、中でも、メチル基が好ましい。炭素数1〜8のアリール基としては、例えば、フェニル基が挙げられる。
式(1)中のR及びRの置換基としては、例えば、メチル基、ビニル基等が挙げられ、Rの置換基としては、例えば、メチル基等が挙げられる。
尚、式(1)中、複数のRは互いに独立したものであり、互いに異なっていてもよいし、同じであってもよい。R、及びRについても同様である。
m、nは、式(1)で表されるビニル基含有直鎖状オルガノポリシロキサン(A)を構成する繰り返し単位の数であり、mは1〜1000の整数、nは3000〜10000の整数である。mは、好ましくは40〜700であり、nは、好ましくは3600〜8000である。
式(1)で表されるビニル基含有直鎖状オルガノポリシロキサン(A)の具体的構造としては、下記式(1−1)で表されるものが挙げられる。
Figure 2011162714
式(1−1)中、R及びRは、それぞれ独立して、メチル基又はビニル基であり、少なくとも一方がビニル基である。
本発明においては、(A)ビニル基含有直鎖状オルガノポリシロキサンとして、ビニル基含有量が0.05〜0.2モル%である第1のビニル基含有直鎖状オルガノポリシロキサン(A1)と、ビニル基含有量が0.5〜12モル%である第2のビニル基含有直鎖状オルガノポリシロキサン(A2)とを含有することが好ましい。シリコーンゴムの原料である生ゴムとして、一般的なビニル基含有量を有する第1のビニル基含有直鎖状オルガノポリシロキサン(A1)と、ビニル基含有量が高い第2のビニル基含有直鎖状オルガノポリシロキサン(A2)とを組み合わせることで、ビニル基を偏在化させることができ、シリコーンゴムの架橋ネットワーク中に、より効果的に架橋密度の疎密を形成することができるからである。すなわち、より効果的にシリコーンゴムの引裂き強度を高めることができる。
具体的には、(A)ビニル基含有直鎖状オルガノポリシロキサンとして、例えば、上記式(1−1)において、Rがビニル基である単位及び/又はRがビニル基である単位を、0.05〜0.2モル%含む第1のビニル基含有直鎖状オルガノポリシロキサン(A1)と、Rがビニル基である単位及び/又はRがビニル基である単位を、0.5〜12モル%含む第2のビニル基含有直鎖状オルガノポリシロキサン(A2)とを用いることが好ましい。
第1のビニル基含有直鎖状オルガノポリシロキサン(A1)は、ビニル基含有量が0.1〜0.15モル%であることが好ましい。また、第2のビニル基含有直鎖状オルガノポリシロキサン(A2)は、ビニル基含有量が、0.8〜8.0モル%であることが好ましい。
第1のビニル基含有直鎖状オルガノポリシロキサン(A1)と第2のビニル基含有直鎖状オルガノポリシロキサン(A2)とを組み合わせて配合する場合、(A1)と(A2)の比率は特に限定されないが、通常、重量比でA1:A2が1:0.05〜1:0.6、特に1:0.08〜1:0.5であることが好ましい。
第1及び第2のビニル基含有直鎖状オルガノポリシロキサン(A1)及び(A2)は、それぞれ1種のみを用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
(B)直鎖状オルガノハイドロジェンポリシロキサン
直鎖状オルガノハイドロジェンポリシロキサン(B)は、直鎖構造を有し、且つ、Siに水素が直接結合した構造(≡Si−H)を有し、(A)ビニル基含有直鎖状オルガノポリシロキサンのビニル基の他、シリコーンゴム系硬化性組成物に配合される成分のビニル基とヒドロシリル化反応し、これら成分を架橋するものである。
直鎖状オルガノハイドロジェンポリシロキサン(B)において、Siに直接結合する水素原子(ヒドリド基)の量は特に限定されない。シリコーンゴム系硬化性組成物において、(A)ビニル基含有直鎖状オルガノポリシロキサン中のビニル基1モルに対し、直鎖状オルガノハイドロジェンポリシロキサン(B)のヒドリド基量が、0.5〜5モルとなる量が好ましく、さらに好ましくは1〜3.5モルとなる量である。
直鎖状オルガノハイドロジェンポリシロキサン(B)の分子量は特に限定されないが、重量平均分子量が20000以下であることが好ましく、特に重量平均分子量が7000以下であることが好ましい。直鎖状オルガノハイドロジェンポリシロキサン(B)の重量平均分子量は、GPC(ゲル透過クロマトグラフィー)により測定することができる。
直鎖状オルガノハイドロジェンポリシロキサン(B)は、通常、ビニル基を有しないものであることが好ましい。分子内の架橋反応が進行する可能性があるからである。
直鎖状オルガノハイドロジェンポリシロキサン(B)としては、下記式(2)で表される構造を有するものが好ましい。
Figure 2011162714
式(2)中、Rは炭素数1〜10の置換又は非置換のアルキル基、アルケニル基、アリール基、これらを組み合わせた炭化水素基、又はヒドリド基である。炭素数1〜10のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基等が挙げられ、中でも、メチル基が好ましい。炭素数1〜10のアルケニル基としては、例えば、ビニル基、アリル基、ブテニル基等が挙げられ、中でも、ビニル基が好ましい。炭素数1〜10のアリール基としては、例えば、フェニル基が挙げられる。
また、Rは炭素数1〜10の置換又は非置換のアルキル基、アルケニル基、アリール基、これらを組み合わせた炭化水素基、又はヒドリド基である。炭素数1〜10のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基が挙げられ、中でも、メチル基が好ましい。炭素数1〜10のアルケニル基としては、例えば、ビニル基、アリル基、ブテニル基等が挙げられ、中でも、ビニル基が好ましい。炭素数1〜10のアリール基としては、例えば、フェニル基が挙げられる。
尚、式(2)中、複数のRは互いに独立したものであり、互いに異なっていてもよいし、同じであってもよい。Rについても同様である。ただし、複数のR及びRのうち、少なくとも2つ以上がヒドリド基である。
また、Rは炭素数1〜8の置換又は非置換のアルキル基、アリール基、又はこれらを組み合わせた炭化水素基である。炭素数1〜8のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基等が挙げられ、中でも、メチル基が好ましい。炭素数1〜8のアリール基としては、例えば、フェニル基が挙げられる。複数のRは互いに独立したものであり、互いに異なっていてもよいし、同じであってもよい。
式(1)中のR,R,Rの置換基としては、例えば、メチル基、ビニル基等が挙げられ、分子内の架橋反応を防止する観点から、メチル基が好ましい。
m、nは、式(2)で表される直鎖状オルガノハイドロジェンポリシロキサン(B)を構成する繰り返し単位の数であり、mは0〜300の整数、nは(300−m)の整数である。好ましくは、mは0〜150の整数、nは(150−m)の整数である。
(B)直鎖状オルガノハイドロジェンポリシロキサンは、1種のみを単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
(C)分岐状オルガノハイドロジェンポリシロキサン
分岐状オルガノハイドロジェンポリシロキサン(C)は、分岐構造を有するため、架橋密度が高い領域を形成し、シリコーンゴムの系中の架橋密度の疎密構造形成に大きく寄与する成分である。上記直鎖状オルガノハイドロジェンポリシロキサン(B)同様、Siに水素が直接結合した構造(≡Si−H)を有し、ビニル基含有直鎖状オルガノポリシロキサン(A)のビニル基の他、シリコーンゴム系硬化性組成物に配合される成分のビニル基とヒドロシリル化反応し、これら成分を架橋する重合体である。
分岐状オルガノハイドロジェンポリシロキサン(C)において、Siに直接結合する水素原子(ヒドリド基)の量は特に限定されないが、7.5〜10当量/Kgであることが好ましく、特に7.8〜9.2当量/Kgであることが好ましい。
分岐状オルガノハイドロジェンポリシロキサン(C)の比重は、通常0.9〜0.95の範囲である。
分岐状オルガノハイドロジェンポリシロキサン(C)は、通常、ビニル基を有しないものであることが好ましい。分子内の架橋反応が進行する可能性があるであるからである。
分岐状オルガノハイドロジェンポリシロキサン(C)としては、下記平均組成式(c)で示されるものが好ましい。
平均組成式(c)
(R3−aSiO1/2(SiO4/2
(式(c)において、Rは一価の有機基、aは1〜3の範囲の整数、mはH(R3−aSiO1/2単位の数、nはSiO4/2単位の数である)
式(c)において、Rは一価の有機基であり、好ましくは、炭素数1〜10の置換又は非置換のアルキル基、アリール基、又はこれらを組み合わせた炭化水素基である。炭素数1〜10のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基等が挙げられ、中でも、メチル基が好ましい。炭素数1〜10のアリール基としては、例えば、フェニル基が挙げられる。
式(c)において、aは、ヒドリド基(Siに直接結合する水素原子)の数であり、1〜3の範囲の整数、好ましくは1である。
また、式(c)において、mはH(R3−aSiO1/2単位の数、nはSiO4/2単位の数である。
分岐状オルガノハイドロジェンポリシロキサン(C)は分岐状構造を有する。直鎖状オルガノハイドロジェンポリシロキサン(B)と分岐状オルガノハイドロジェンポリシロキサン(C)は、その構造が直鎖状か分岐状かという点で異なり、Siの数を1とした時のSiに結合するアルキル基Rの数(R/Si)が、直鎖状オルガノハイドロジェンポリシロキサン(B)では1.8〜2.1、分岐状オルガノハイドロジェンポリシロキサン(C)では0.8〜1.7の範囲である。
また、分岐状オルガノハイドロジェンポリシロキサン(C)は、分岐構造を有しているため、例えば、窒素雰囲気下、1000℃まで昇温速度10℃/分で加熱した際の残渣量が5%以上となる。これに対して、直鎖状オルガノハイドロジェンポリシロキサン(B)は、直鎖状であるため、上記条件で加熱した後の残渣量はほぼゼロとなる。
分岐状オルガノハイドロジェンポリシロキサン(C)の具体例としては、下記式(3)で表される構造を有するものが挙げられる。
Figure 2011162714
式(3)中、Rは炭素数1〜8の置換又は非置換のアルキル基、アリール基、又はこれらを組み合わせた炭化水素基、若しくは水素原子である。炭素数1〜8のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基等が挙げられ、中でも、メチル基が好ましい。炭素数1〜8のアリール基としては、例えば、フェニル基が挙げられる。Rの置換基としては、例えば、メチル基等が挙げられる。
尚、式(3)中、複数のRは互いに独立したものであり、互いに異なっていてもよいし、同じであってもよい。
分岐状オルガノハイドロジェンポリシロキサン(C)は、1種のみを単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
また、式(3)中、「−O−Si≡」は、Siが三次元に広がる分岐構造を有することを表している。
本発明のシリコーンゴム系硬化性組成物は上記(A)〜(C)成分以外の成分を含有していてもよい。その他の成分としては、例えば、下記(D)〜(F)が挙げられる。
(D)ビニル基含有分岐状オルガノポリシロキサン
ビニル基含有分岐状オルガノポリシロキサン(D)は、分岐構造を有するため、架橋密度が高い領域を形成し、シリコーンゴムの系中の架橋密度の疎密構造形成に大きく寄与する成分である。また、ビニル基が加硫時の架橋点となる。
ビニル基含有分岐状オルガノポリシロキサン(D)のビニル基の含有量は、特に限定されないが、0.05〜3当量/Kg、特に0.15〜0.5当量/Kgであることが好ましい。
ビニル基含有分岐状オルガノポリシロキサン(D)は、液状、より具体的には油状であることが好ましく、通常、重合度が4000以下であることが好ましい。
また、ビニル基含有分岐状オルガノポリシロキサン(D)は粘度が、4000〜70000cStの範囲であることが好ましい。
さらに、ビニル基含有分岐状オルガノポリシロキサン(D)は比重が、通常、0.95〜1.1の範囲であることが好ましい。
ビニル基含有分岐状オルガノポリシロキサン(D)としては、下記平均組成式(d)で示されるものが好ましい。
平均組成式(d)
(CH=CH(RSiO1/2m(SiO4/2
式(d)において、Rはビニル基を有しない一価の有機基であり、好ましくは、炭素数1〜10の置換又は非置換のアルキル基、アリール基、又はこれらを組み合わせた炭化水素基である。炭素数1〜8のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基等が挙げられ、中でも、メチル基が好ましい。炭素数1〜8のアリール基としては、例えば、フェニル基が挙げられる。Rとしては、特にメチル基が好ましい。
また、式(d)において、mはCH=CH(RSiO1/2単位の数、nはSiO4/2単位の数である。ビニル基含有分岐状オルガノポリシロキサン(D)は、分岐状構造を有し、nに対するmの比m/nが2〜5の範囲である。m/nは、好ましくは3〜4の範囲である。
ビニル基含有分岐状オルガノポリシロキサン(D)の具体例としては、下記式(4)で表される構造を有するものが挙げられる。
Figure 2011162714
式(4)中、Rは炭素数1〜8の置換又は非置換のアルキル基、アリール基、又はこれらを組み合わせた炭化水素基である。炭素数1〜8のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基等が挙げられ、中でも、メチル基が好ましい。炭素数1〜8のアリール基としては、例えば、フェニル基が挙げられる。Rの置換基としては、例えば、メチル基等が挙げられる。
尚、式(4)中、複数のRは互いに独立したものであり、互いに異なっていてもよいし、同じであってもよい。
また、式(4)中、「−O−Si≡」は、Siが三次元に広がる分岐構造を有することを表している。
ビニル基含有分岐状オルガノポリシロキサン(D)は、1種のみを単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
(E)白金又は白金化合物
(E)白金又は白金化合物は、加硫の触媒として作用する成分であり、その添加量は触媒量である。具体的な成分としては、公知のものを使用することができる。例えば、白金黒、白金をシリカやカーボンブラック等に担持させたもの、塩化白金酸又は塩化白金酸のアルコール溶液、塩化白金酸とオレフィンの錯塩、塩化白金酸とビニルシロキサンとの錯塩等が挙げられる。触媒成分である(E)白金又は白金化合物は、1種のみを単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
(F)無機充填材
(F)無機充填材は、シリコーンゴムの硬さや機械的強度の向上、特に引張り強度の向上を目的として添加される成分であり、公知のものを用いることができる。具体的には、例えば、シリカ微粒子、クレイ等を挙げることができ、特にシリカ微粒子が好ましい。シリカ微粒子は、比表面積が50〜400m2/g、特に、100〜400m2/gであることが好ましい。シリカ微粒子としては、ヒュームドシリカ、焼成シリカ、沈降シリカ等が挙げられる。シリカ微粒子は、鎖状オルガノポリシロキサン、環状オルガノポリシロキサン、ヘキサメチルジシラザン、ジクロルジメチルシラン等で表面処理されたものでもよい。無機充填材(F)は、1種のみを単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
本発明のシリコーンゴム系硬化性組成物は、上記(A)〜(F)成分の他、シリコーンゴム系硬化性組成物に配合される公知の成分を含有していてもよい。例えば、珪藻土、酸化鉄、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化バリウム、酸化マグネシウム、酸化セリウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸亜鉛、ガラスウール、マイカ等が挙げられる。その他、分散剤、顔料、染料、帯電防止剤、酸化防止剤、難燃剤、熱伝導性向上剤等を適宜配合することができる。
本発明のシリコーンゴム系硬化性組成物において、各成分の含有割合は特に限定されないが、通常、ビニル基含有直鎖状オルガノポリシロキサン(A)100重量部に対し、直鎖状オルガノハイドロジェンポリシロキサン(B)を0.1〜5重量部、及び、分岐状オルガノハイドロジェンポリシロキサン(C)を0.01〜10重量部の割合で含有することが好ましい。特に、ビニル基含有直鎖状オルガノポリシロキサン(A)100重量部に対し、直鎖状オルガノハイドロジェンポリシロキサン(B)を0.1〜2重量部、及び、分岐状オルガノハイドロジェンポリシロキサン(C)を0.3〜2重量部の割合で含有することが好ましい。
また、ビニル基含有分岐状オルガノポリシロキサン(D)を含有させる場合には、ビニル基含有直鎖状オルガノポリシロキサン(A)100重量部に対し、ビニル基含有分岐状オルガノポリシロキサン(D)を5〜30重量部重量部、特に5〜20重量部の割合で含有することが好ましい。
白金又は白金化合物(E)の含有量は、触媒量であり、適宜設定することができるが、具体的には、(A)〜(D)及び(F)の合計量100重量部に対して0.05〜5重量部、特に0.1〜1重量部の範囲が好ましい。
(F)無機充填材の含有量は、(A)〜(D)の合計量100重量部に対し、10〜100重量部、特に20〜50重量部の割合で含有することが好ましい。
本発明のシリコーンゴム系硬化性組成物は、上記成分を、任意の混練装置により、均一に混合することによって得られる。混練装置としては、例えば、ニーダー、2本ロール、バンバリーミキサー(連続ニーダー)、加圧ニーダー等が挙げられる。
各成分の混合順序に特に限定はないが、均一な組成物を得るためには、通常、予め、(A)ビニル基含有直鎖状オルガノポリシロキサンに、(F)無機充填材の少なくとも一部を分散させることが好ましい。(A)ビニル基含有直鎖状オルガノポリシロキサンとして、ビニル基含有量の異なる(A1)と(A2)とを組み合わせて用いる場合には、(A1)及び(A2)のそれぞれに(F)無機充填材の少なくとも一部を予め分散させ、これら分散物を混合して混練した後、残りの無機充填材を添加、さらに混練することが好ましい。また、触媒である(E)白金又は白金化合物は、ハンドリング性の観点から、予め、(A)ビニル基含有直鎖状オルガノポリシロキサンに分散させることが好ましい。
以上のようにして得られた本発明のシリコーンゴム系硬化性組成物は、例えば、140〜180℃で5〜15分間加熱(1次硬化)した後、200℃で4時間ポストベーク(2次硬化)することによってシリコーンゴムを得ることができる。
本発明のシリコーンゴム系硬化性組成物を硬化させることによって、JIS K6251(2004)によるダンベル状3号形試験片の引張り強さが8.6N/mm以上であり、且つ、JIS K6252(2001)による切込み無しアングル形試験片の引裂き強さが33N/mm以上である、シリコーンゴムを得ることが可能である。
上記切込み無しアングル形試験片の引裂き強さは、35N/mm以上であることが好ましく、特に37N/mm以上であることが好ましい。
また、上記ダンベル状3号形試験片の引張り強さは、8.8N/mm以上であることが好ましく、特に、9.1N/mm以上であることが好ましい。
ここで、上記引張り強さ及び上記引裂き強さは、それぞれ、試験片の厚みを1mmとする以外は、JIS K6251(2004)、JIS K6252(2001)に準拠して、本発明のシリコーン系硬化性組成物を硬化して作製した試験片を用いて測定することができる。
上記のような引張り強さ及び引裂き強さを有するシリコーンゴムを用いることで、上記機械的強度に優れた成形体を得ることができる。そして、このような成形体を用いることによって、耐キンク性及び耐傷付き性に優れたシリコーンゴム製医療用チューブ(例えばカテーテル)を得ることができる。
以下、本発明のシリコーンゴム系硬化性組成物の一形態を実施例により説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
実施例及び比較例において使用した原材料は以下の通りである。
(1) (A1)第1のビニル基含有直鎖状オルガノポリシロキサン、ビニル基含有量0.13モル%:以下の合成スキームにより合成。
(2) (A2)第2のビニル基含有直鎖状オルガノポリシロキサン、ビニル基含有量0.92モル%:以下の合成スキームにより合成。
(3) (B)直鎖状オルガノハイドロジェンポリシロキサン:(モメンティブ)製・「TC25D」
(4) (C)分岐状オルガノハイドロジェンポリシロキサン:(Gelest)製・「HQM−105」
(5) (D)ビニル基含有分岐状オルガノポリシロキサン:(Gelest)製・「VQM−146」
(6) (E)白金:(モメンティブ)製・「TC−25A」
(7) (F)無機充填材:シリカ微粒子(日本アエロジル)製・「アエロジェルR972」
[(A1)第1のビニル基含有直鎖状オルガノポリシロキサンの合成]
下記式(5)に従って、第1のビニル基含有直鎖状オルガノポリシロキサンを合成した。
具体的には、Arガス置換した、冷却管及び攪拌翼を有する300mLセパラブルフラスコに、オクタメチルシクロテトラシロキサン 74.7g(252mmol)、2,4,6,8−テトラメチル2,4,6,8−テトラビニルシクロテトラシロキサン 0.086g(0.25mmol)及びカリウムシリコネート 0.1gを入れ、昇温し、120℃で30分間攪拌した。粘度の上昇が確認できた。
その後、155℃まで昇温し、3時間攪拌を続けた。3時間後、1,3−ジビニルテトラメチルジシロキサン 0.1g(0.6mmol)を添加し、さらに、155℃で4時間攪拌した。
4時間後、トルエン250mLで希釈した後、水で3回洗浄した。洗浄後の有機層をメタノール1.5Lで数回洗浄することで、再沈精製し、オリゴマーとポリマーを分離した。得られたポリマーを60℃で一晩減圧乾燥し、第2のビニル基含有直鎖状オルガノポリシロキサンを得た(Mn=277,734、Mw=573,906、IV値(dl/g)=0.89)。
Figure 2011162714
[(A2)第2のビニル基含有直鎖状オルガノポリシロキサンの合成]
上記(A1)の合成において、2,4,6,8−テトラメチル2,4,6,8−テトラビニルシクロテトラシロキサンを、0.86g(2.5mmol)用いたこと以外は、同様にして、第2のビニル基含有直鎖状オルガノポリシロキサンを合成した。
[実施例1]
(シリコーンゴム系硬化性組成物の調製)
(A1)第1のビニル基含有直鎖状オルガノポリシロキサン40.0gに、(F)無機充填材20gを添加し、混練して第1のマスターバッチを調製した。
一方、(A2)第2のビニル基含有直鎖状オルガノポリシロキサン3.5gに、(F)無機充填材1.8gを添加し、混練して第2のマスターバッチを調製した。
得られた第1及び第2のマスターバッチを混合し、2本ロールで混練した。ロール上に(F)無機充填材1.9gを添加し、均一になるまで混練し、さらに10分間混練した。
続いて、(C)分岐状オルガノハイドロジェンポリシロキサン0.4gと(D)ビニル基含有分岐状オルガノポリシロキサン3.6gとを加え、さらに10分間混練した。
さらに、(E)白金0.36gを混合し均一になるまで混練した後、(B)直鎖状オルガノハイドロジェンポリシロキサン1.42gを加え、10分間混練し、シリコーンゴム系硬化性組成物を調製した。
表1に各原材料の仕込量と重量比を示す。
Figure 2011162714
尚、表1中、(E)及び(B)の重量部(重量比)は、それぞれ、(A1)、(A2)、(D)、(C)及び(F)の合計100重量部に対する値である。
(シリコーンゴム系硬化性組成物の評価)
<引張り強度及び引裂き強度>
得られたシリコーンゴム系硬化性組成物を、170℃、10MPaで10分間プレスし、1mmのシート状に成形すると共に、1次硬化した。
続いて、200℃で4時間加熱し、2次硬化した。
得られたシート状シリコーンゴムを用いて、JIS K6251(2004)に準拠して、ダンベル状3号形試験片、及び、JIS K6252(2001)に準拠して切込み無しアングル形試験片を作製し、JIS K6251(2004)によるダンベル状3号形試験片の引張り強さ、及び、JIS K6252(2001)による切込み無しアングル形試験片の引裂き強さを測定した。ただし、引張り強さ及び引裂き強さの測定に用いた試験片の厚みは、1mmとした。
結果を表1に示す。
<押出し成形性>
得られたシリコーンゴム系硬化性組成物をチューブ状に成形し、チューブの外観を目視にて評価することで、押出成形性を有していることが確認された。
<透明性>
上記同様、シリコーンゴム系硬化性組成物をチューブ状に成形し、チューブの外観を目視にて評価することで、透明性を有していることが確認された。
<引張り伸び率>
上記引張り強度及び引裂き強度と同様にしてシート状シリコーンゴムを作製し、JIS K6251(2004)に準拠して、ダンベル状3号形試験片作製し、JIS K6251(2004)によるダンベル状3号形試験片の引張り強さを測定すると同時に、その伸び率を測定した。ただし、試験片の厚みは、1mmとした。
実施例1のシリコーンゴム系硬化性組成物を硬化して得られるシリコーンゴムは、引張り伸び率が390%であり、柔軟性を有していることが確認された。
[実施例2]
表1に示すように、(C)分岐状オルガノハイドロジェンポリシロキサンを0.2g、(E)白金を0.35g使用した以外は、実施例1と同様にして、シリコーンゴム系硬化性組成物を調製した。表1に各原材料の仕込量と重量比を示す。
また、実施例1同様、得られたシリコーンゴム系硬化性組成物を用いて作製した試験片について、引張り強さ及び引裂き強さを測定した。結果を表1に示す。
また、実施例1同様、押出し成形性、透明性及び引張り伸び率についても評価した。その結果、実施例2のシリコーンゴム系硬化性組成物は、良好な押出し成形性を有していることが確認された。さらに、実施例2のシリコーンゴム系硬化性組成物を硬化して得られるシリコーンゴムは、透明性を有していると共に、引張り伸び率が402%であり、柔軟性を有していることが確認された。
[実施例3]
(シリコーンゴム系硬化性組成物の調製)
(A1)第1のビニル基含有直鎖状オルガノポリシロキサン40.0gに、(F)無機充填材20gを添加し、混練して第1のマスターバッチを調製した。
一方、(A2)第2のビニル基含有直鎖状オルガノポリシロキサン3.7gに、(F)無機充填材1.8gを添加し、混練して第2のマスターバッチを調製した。
得られた第1及び第2のマスターバッチを混合し、2本ロールで混練した。ロール上に(F)無機充填材2.5gを添加し、均一になるまで混練し、さらに10分間混練した。
続いて、(C)分岐状オルガノハイドロジェンポリシロキサン1.5gと(D)ビニル基含有分岐状オルガノポリシロキサン3.7gとを加え、さらに10分間混練した。
さらに、(E)白金0.37gを混合し均一になるまで混練した後、(B)直鎖状オルガノハイドロジェンポリシロキサン1.46gを加え、10分間混練し、シリコーンゴム系硬化性組成物を調製した。
表1に各原材料の仕込量と重量比を示す。
(シリコーンゴム系硬化性組成物の評価)
実施例1同様、得られたシリコーンゴム系硬化性組成物を用いて作製した試験片について、引張り強さ及び引裂き強さを測定した。結果を表1に示す。
また、実施例1同様、押出し成形性、透明性及び引張り伸び率についても評価した。その結果、実施例3のシリコーンゴム系硬化性組成物は、良好な押出し成形性を有していることが確認された。さらに、実施例3のシリコーンゴム系硬化性組成物を硬化して得られるシリコーンゴムは、良好な押出し成形性を有していることが確認された。さらに、透明性を有していると共に、引張り伸び率が354%であり、柔軟性を有していることが確認された。
[比較例1]
(シリコーンゴム系硬化性組成物の調製)
(A1)第1のビニル基含有直鎖状オルガノポリシロキサン73.0gに、(F)無機充填材37.0gを添加し、混練した。
さらに、(E)白金0.55gを混合し均一になるまで混練した後、(B)直鎖状オルガノハイドロジェンポリシロキサン2.20gを加え、10分間混練し、シリコーンゴム系硬化性組成物を調製した。
表1に各原材料の仕込量と重量比を示す。
(シリコーンゴム系硬化性組成物の評価)
実施例1同様、得られたシリコーンゴム系硬化性組成物を用いて作製した試験片について、引張り強さ及び引裂き強さを測定した。結果を表1に示す。
また、実施例1同様、押出し成形性、透明性及び引張り伸び率についても評価した。その結果、比較例1のシリコーンゴム系硬化性組成物は、良好な押出し成形性を有していることが確認された。さらに、透明性を有していると共に、引張り伸び率が429%であり、柔軟性を有していることが確認された。
[比較例2]
(シリコーンゴム系硬化性組成物の調製)
(A1)第1のビニル基含有直鎖状オルガノポリシロキサン33.0gに、(F)無機充填材16.5gを添加し、混練して第1のマスターバッチを調製した。
一方、(A2)第2のビニル基含有直鎖状オルガノポリシロキサン15.0gに、(F)無機充填材7.5gを添加し、混練して第2のマスターバッチを調製した。
得られた第1及び第2のマスターバッチを混合し、2本ロールで10分間混練した。
さらに、(E)白金0.36gを混合し均一になるまで混練した後、(B)直鎖状オルガノハイドロジェンポリシロキサン1.44gを加え、10分間混練し、シリコーンゴム系硬化性組成物を調製した。
表1に各原材料の仕込量と重量比を示す。
(シリコーンゴム系硬化性組成物の評価)
実施例1同様、得られたシリコーンゴム系硬化性組成物を用いて作製した試験片について、引張り強さ及び引裂き強さを測定した。結果を表1に示す。
また、実施例1同様、押出し成形性、透明性及び引張り伸び率についても評価した。その結果、比較例2のシリコーンゴム系硬化性組成物は、良好な押出し成形性を有していることが確認された。さらに、透明性を有していると共に、引張り伸び率が437%であり、柔軟性を有していることが確認された。
[結果]
表1に示すように、比較例1のシリコーンゴム系硬化性組成物より得られたシリコーンゴムは、引張り強さには優れるものの、引裂き強さは33N/mm未満であり不十分であった。また、比較例2のシリコーンゴム系硬化性組成物より得られたシリコーンゴムは、引張り強さが8.6N/mm未満、且つ、引裂き強さが33N/mm未満であり、引張り強さ及び引裂き強さ共に不十分であった。
これに対して、実施例1〜3のシリコーンゴム系硬化性組成物より得られたシリコーンゴムは、いずれも、引張り強さが8.6N/mm以上、且つ、引裂き強さが33.1N/mm以上であり、優れた引張り強さ及び引裂き強さを示した。特に、実施例1のシリコーンゴム系硬化性組成物を硬化して得られたシリコーンゴムは、37.9N/mmという高い引裂き強さを示した。

Claims (24)

  1. ビニル基含有直鎖状オルガノポリシロキサン(A)と、直鎖状オルガノハイドロジェンポリシロキサン(B)と、分岐状オルガノハイドロジェンポリシロキサン(C)と、を含有することを特徴とするシリコーンゴム系硬化性組成物。
  2. 前記ビニル基含有直鎖状オルガノポリシロキサン(A)は、下記式(1)で示されるものである請求項1に記載のシリコーンゴム系硬化性組成物。
    Figure 2011162714
    (式(1)中、mは1〜1000の整数、nは3000〜10000の整数であり、Rは炭素数1〜10の置換又は非置換のアルキル基、アルケニル基、アリール基、又はこれらを組み合わせた炭化水素基、Rは炭素数1〜10の置換又は非置換のアルキル基、アルケニル基、アリール基、又はこれらを組み合わせた炭化水素基、Rは炭素数1〜8の置換又は非置換のアルキル基、アリール基、又はこれらを組み合わせた炭化水素基である。)
  3. 前記直鎖状オルガノハイドロジェンポリシロキサン(B)は、下記式(2)で示されるものである請求項1又は2に記載のシリコーンゴム系硬化性組成物。
    Figure 2011162714
    (式(2)中、mは0〜300の整数、nは(300−m)の整数である。Rは炭素数1〜10の置換又は非置換のアルキル基、アルケニル基、アリール基、これらを組み合わせた炭化水素基、又はヒドリド基である。Rは炭素数1〜10の置換又は非置換のアルキル基、アルケニル基、アリール基、これらを組み合わせた炭化水素基、又はヒドリド基である。ただし、複数のR及びRのうち、少なくとも2つ以上がヒドリド基である。Rは炭素数1〜8の置換又は非置換のアルキル基、アリール基、又はこれらを組み合わせた炭化水素基である。)
  4. 前記分岐状オルガノハイドロジェンポリシロキサン(C)は、下記平均組成式(c)で示されるものである請求項1乃至3のいずれかに記載のシリコーンゴム系硬化性組成物。
    平均組成式(c) : (H(R3−aSiO1/2(SiO4/2
    (式(c)において、Rは一価の有機基、aは1〜3の範囲の整数、mはH(R3−aSiO1/2単位の数、nはSiO4/2単位の数である。)
  5. 前記分岐状オルガノハイドロジェンポリシロキサン(C)のヒドリド基量は、7.5〜10当量/Kgである請求項1乃至4のいずれか1項に記載のシリコーンゴム系硬化性組成物。
  6. 前記ビニル基含有直鎖状オルガノポリシロキサン(A)は、ビニル基含有量が0.05〜0.2モル%である第一のビニル基含有直鎖状オルガノポリシロキサンと、ビニル基含有量が0.5〜12モル%である第二のビニル基含有直鎖状オルガノポリシロキサンを含有する請求項1乃至5のいずれか1項に記載のシリコーンゴム系硬化性組成物。
  7. 前記ビニル基含有直鎖状オルガノポリシロキサン(A)の重合度が、4000〜8000の範囲である、請求項1乃至6のいずれか1項に記載のシリコーンゴム系硬化性組成物。
  8. 前記直鎖状オルガノハイドロジェンポリシロキサン(B)はビニル基を有しないものである、請求項1乃至7のいずれか1項に記載のシリコーンゴム系硬化性組成物。
  9. 前記分岐状オルガノハイドロジェンポリシロキサン(C)の平均組成式(c)において、水素原子の数aが1である、請求項4乃至8のいずれか1項に記載のシリコーンゴム系硬化性組成物。
  10. 前記分岐状オルガノハイドロジェンポリシロキサン(C)はビニル基を有しないものである、請求項1乃至9のいずれか1項に記載のシリコーンゴム系硬化性組成物。
  11. 前記分岐状オルガノハイドロジェンポリシロキサン(C)は、窒素雰囲気下、1000℃まで昇温速度10℃/分で加熱した際の残渣量が5%以上である、請求項1乃至10のいずれか1項に記載のシリコーンゴム系硬化性組成物。
  12. 前記ビニル基含有直鎖状オルガノポリシロキサン(A)100重量部に対し、前記直鎖状オルガノハイドロジェンポリシロキサン(B)を0.1〜5重量部、及び、前記分岐状オルガノハイドロジェンポリシロキサン(C)を0.01〜10重量部の割合で含有する、請求項1乃至11のいずれか1項に記載のシリコーンゴム系硬化性組成物。
  13. ビニル基含有分岐状オルガノポリシロキサン(D)をさらに含有する、請求項1乃至12のいずれか1項に記載のシリコーンゴム系硬化性組成物。
  14. 前記ビニル基含有分岐状オルガノポリシロキサン(D)は、下記平均組成式(d)で示されるものである請求項13に記載のシリコーンゴム系硬化性組成物。
    平均組成式(d):(CH=CH(RSiO1/2m(SiO4/2
    (式(d)において、Rはビニル基を有しない一価の有機基、mはCH=CH(RSiO1/2単位の数、nはSiO4/2単位の数である)
  15. 前記ビニル基含有分岐状オルガノポリシロキサン(D)のビニル基量は、0.05〜3当量/Kgである請求項13又は請求項14に記載のシリコーンゴム系硬化性組成物。
  16. 前記ビニル基含有分岐状オルガノポリシロキサン(D)の有機基Rがメチル基である、請求項13乃至15のいずれか1項に記載のシリコーンゴム系硬化性組成物。
  17. 前記ビニル基含有分岐状オルガノポリシロキサン(D)は液状である、請求項13乃至16のいずれか1項に記載のシリコーンゴム系硬化性組成物。
  18. 前記ビニル基含有分岐状オルガノポリシロキサン(D)の重合度は、4000以下である、請求項13乃至17のいずれか1項に記載のシリコーンゴム系硬化性組成物。
  19. 前記ビニル基含有直鎖状オルガノポリシロキサン(A)100重量部に対し、前記ビニル基含有分岐状オルガノポリシロキサン(D)を5〜30重量部の割合で含有する、請求項13乃至18のいずれか1項に記載のシリコーンゴム系硬化性組成物。
  20. 触媒量の白金又は白金化合物をさらに含有する、請求項1乃至19のいずれか1項に記載のシリコーンゴム系硬化性組成物。
  21. 無機充填材をさらに含有する、請求項1乃至20のいずれか1項に記載のシリコーンゴム系硬化性組成物。
  22. 硬化後の物性が、
    JIS K6251(2004)によるダンベル状3号形試験片の引張り強さが8.6N/mm以上であり、
    JIS K6252(2001)による切込み無しアングル形試験片の引裂き強さが33N/mm以上である、
    シリコーンゴムを与える、請求項1乃至21のいずれか1項に記載のシリコーンゴム系硬化性組成物。
  23. 請求項1乃至22のいずれか1項に記載のシリコーンゴム系硬化性組成物を用いてなる成形体。
  24. 請求項23に記載の成形体で構成されることを特徴とする医療用チューブ。
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