その表面が鉄道車両の外観面を形成する金属製の外板と、前記外板の裏面に接合され前記外板を補強する金属製の補強部材とを備える鉄道車両構体が広く知られている。このような鉄道車両構体として、外板と骨組みと外板補強部材とからなる構体や、外板と一体プレス成形内板とからなる構体や、いわゆるダブルスキンタイプの構体等が知られている。
そのような鉄道車両構体の一例として、下記特許文献1に記載の技術が開示されている。下記特許文献1に記載の技術は、それ以前の鉄道車両構体に対して、(1)全体座屈及び局部座屈に対する強度低下の課題、(2)応力集中部における永久変形(引張側)又は局部座屈(圧縮側)の課題、(3)水密性の課題、(4)外板の美観性の課題、(5)内部骨組みの煩雑さの課題を解決するものである。
尚、本明細書において、鉄道車両構体とは、鉄道車両のボディを構成するものであって、主に鉄道車両ボディの側面を構成する側構体と、主に鉄道車両ボディの屋根を構成する屋根構体と、主に鉄道車両ボディの端面を構成する妻構体とを備えるものとして説明している。側構体、屋根構体、及び妻構体は、単数又は複数の外板を有しており、その外板に対して適宜補強部材が取り付けられるものである。
下記特許文献1に記載の鉄道車両構体以前の鉄道車両構体では、外板と外板補強部材との接合には、熱歪み低減の観点から、抵抗スポット溶接が多用されていたが、既打点への分流を避けるためにその打点ピッチは通常50〜80mm程度とされていた。
車体自重・乗客により負荷される垂直荷重により、側外板パネル(外板と補強部材とを含むパネルである)は主として面内せん断作用を受ける。また、車両間の前後力(車端圧縮荷重)により、側外板パネルには連結器を通じての荷重により面内軸圧縮・面内曲げ作用も負荷される。強度設計上、第1に留意すべき破壊モードは側外板パネルの座屈であり、これをもとに構造の概要が決定される。
例えば、側外板パネルが広範囲で圧縮作用を受ける部位(例えば車端圧縮荷重時の車体中央腰板下部)では、所要の面外剛性をもつ補強部材を外板の内側に接合することが行われている。一般に、鉄道車両の側構体は車体長手方向の圧縮作用をより大きく受けるので、車体長手方向に沿って外板の内側に補強部材を設けるのが普通である。また、側外板パネルが広範囲で主としてせん断を受ける部位(例えば垂直荷重時における台車直上の戸袋部)では、補強部材をレール方向に対し45度の角度で外板に接合するのが理想であるが、そのような角度を持たせて接合することが製造上煩雑であるので、実際には補強部材を水平方向(レール方向)あるいは垂直方向に配置している。
しかしながら、このような鉄道車両構体には、前述したような5つの課題がある。引き続いて、それら5つの課題について詳述する。
まず第1の課題は、全体座屈および局部座屈に対する強度低下の課題である。前述したように、外板と補強部材との接合には、熱歪み低減の観点から、抵抗スポット溶接が多用されるが、既打点への分流を避けるためにその打点ピッチは通常50〜80mm程度である。この場合、補強部材にうまく応力が分散せずに理論どおりの座屈強度を得られないことがある。
つまり、面外曲げ剛性が理論値よりも低下し、想定より低い荷重で全体座屈を引き起こす可能性がある。また、補強部材に平行な方向の圧縮に対してスポット溶接点間で外板が座屈するおそれがあり、このような局部座屈に対しても理論上の座屈強度より劣る。また、圧接によるスポットまわりの歪みにより外板に初期歪みが生じ、これによっても局部の座屈強度が大きく低下する。
第2の課題は、応力集中部における永久変形(引張側)、あるいは局部座屈(圧縮側)の課題である。側外板パネルには、側外板パネルの開口部における隅部において応力集中が生じる。特に通勤車用の側構体には窓、出入口などの開口部が多く、これらの隅部における応力集中が問題となる。
これら応力集中部において引張側では永久変形、圧縮側では座屈変形を起こして最終的に破壊に至る。これに対する対策としては、引張側ではプレート状の補強部材を内側に足して増厚し、応力を軽減することが考えられる。圧縮側も理論上は同様に対処が可能であるが、しかし抵抗スポット溶接で組立てられた従来の鉄道車両構体ではいくつか問題がある。
すなわち、前述したように、抵抗スポット溶接の打点ピッチは通常50〜80mm程度であるが、この場合、補強プレートにうまく応力が分散せずに理論どおりの座屈強度を得られないことがある。また、せっかく補強プレートをあてがっても、これを接合するためのスポット溶接が増え、圧接・入熱によるスポットまわりの歪みにより外板に初期歪みが生じ、かえって局部の座屈強度を低下させることがある。
第3の課題は、水密性の課題である。鉄道車両構体の組立において多用される抵抗スポット溶接は重ね継手しか構成することができないため、外板どうし、あるいは外板と縁部材(窓枠、ドアマスクなど)との接合も重ね継手となる。
ところで、これらの継手では外部からの浸水を防ぐため、水密性を保つ工夫が必要であるが、重ね部で微小な隙間を生じるのに加えスポット溶接は間欠的な接合法であるため、重ね部にあらかじめシール材をはさみ込んで溶接を行うことにより水密性を確保している。あるいは重ね端部に隅肉状にシール材を盛ることにより水密性を確保している。しかし、風雨や洗車に伴うシール材の経年劣化によりシール切れが生じ、車内への浸水が発生することがある。
第4の課題は、外板(側外板、妻外板)の美観性の課題である。鉄道車両構体の組立において多用される抵抗スポット溶接は、施工時にスポット状に押圧を行うため、押圧力と入熱によりその周囲に歪みを生じる。また打点部には凹状の圧痕も生じるため、これらが外板の美観を損ねている。とくに側外板、妻外板の美観を損ねることは製品価値を低下させることになる。
なお、スポット溶接による外板の「焼け」は電解処理により消すことが可能であるが、圧痕は比較的深く、接合後の研磨等によって見えなくすることは困難である。また、カラーバンド(フィルム)により覆うこともできるが、覆っても、見る角度によっては、圧痕はさらに目立つことになりかねない。
第5の課題は、内部骨組の煩雑さの課題である。内装、機器類を構体に取り付ける構造として、従来は主構造あるいは内部骨組(2次構造材)にネジ座を溶接付けしたり、あるいは取付金を別途設けたりすることにより対応していた。
これらの取付金、ネジ座はほとんどが車両毎の個別設計であり、構体への取付場所も車種、部位によってまちまちである。従って、ネジ座、内部骨組、取付金等、部品点数が増し、部品製作、溶接付けに多大な工数を要している。また取付位置が標準化されていないので、取付の寸法管理も煩雑である。
下記特許文献1に記載の鉄道車両構体は、これらの課題を解決するものであって、外板と補強部材との接合に、抵抗スポット溶接に代えて、レーザ溶接を利用するものである。より具体的には、側構体の外板と、その外板の内側に接合され外板を補剛する補強部材とを有し、この補強部材の一部あるいは全部が車体長手方向に配置され、補強部材が外板にほぼ連続なるレーザ溶接にて接合されている鉄道車両構体が提案されている。
上記従来の技術は、確かにそれ以前の鉄道車両構体に比べて、(1)全体座屈及び局部座屈に対する強度低下の課題、(2)応力集中部における永久変形(引張側)又は局部座屈(圧縮側)の課題、(3)水密性の課題、(4)外板の美観性の課題、(5)内部骨組みの煩雑さの課題を解決するものであって、その限りにおいては優れた技術ともいえる。
しかしながら、実際に鉄道車両構体を構築するにあたっては、様々な新たな課題が発生するものである。鉄道車両構体において、外板を補強するために内側に取り付けられる補強部材としては、上記特許文献1に記載のようないわゆるハット材が用いられる場合が多い。
ハット材とは、外板に当接されるフランジ部と、そのフランジ部と繋がっており外板から離隔するように形成されるチャネル部とを有するものである。より具体的には、断面が鍔付き帽子形状をなしており、断面がC字状のチャネル部と、断面がC字状のチャネル部の両端から外側に延びるフランジ部とを有するものである。
ハット材で構成される補強部材を外板に取り付けるには、従来の技術では、外板裏面に対してハット材を位置決めし、ハット材のフランジ部と外板とをレーザ溶接で接合することになる。ハット材の取り付け位置は、上述したように構体の強度上必要な位置に的確に配置する必要があり、ハット材のフランジ部を的確な位置に配置すると共に、その位置を保ったまま外板と溶接することが求められる。
しかしながら、上述したようにハット材は、断面が鍔付き帽子形状をなしており、断面がC字状のチャネル部と、断面がC字状のチャネル部の両端から外側に延びるフランジ部とを有するものである。従って、チャネル部の形状も正確に形成し、尚且つフランジ部もチャネル部に対して正確な位置関係となるように形成し、ハット材全体としての寸法精度を厳密に確保するのは困難である。
ハット材の寸法精度を確保できなければ、例えばハット材と外板とが的確な位置関係になるように、双方を的確な位置関係となるように配置し、その位置関係がずれないように強固に保持する必要がある。しかしながら、このようにハット材と外板とを強固に保持しようとすれば、外板の外観面側に圧痕が生じる可能性があり、外観面の美観向上という当初の目的と相反する結果となってしまうおそれがある。また、ハット材と外板とを強固に保持するために、ハット材側からのみ外板に向けて押圧すると、ハット材のチャネル部が撓んでしまうことが想定される。このようにハット材が撓んでしまうと、予定していた溶接位置がずれてしまい、溶接装置の位置補正が必要となって、工数が増大するおそれがある。
本発明はこのような課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、その表面が鉄道車両の外観面を形成する金属製の外板と、前記外板の裏面に接合され前記外板を補強する金属製の補強部材とを備える鉄道車両構体であって、外板と補強部材との位置関係を的確に保つことが確実に可能であって、外板の表面側への影響を極力低減することが可能な鉄道車両構体を提供することにある。また、そのような鉄道車両構体を製造するための製造方法を提供することも本発明の目的である。
上記課題を解決するために本発明に係る鉄道車両構体は、その表面が鉄道車両の外観面を形成する金属製の外板と、前記外板の裏面に接合され前記外板を補強する金属製の補強部材とを備える鉄道車両構体であって、前記補強部材は、前記外板に当接される第一補強部品と、前記第一補強部品が前記外板に当接される面とは反対側の面において前記第一補強部品に当接される第二補強部品とを有しており、前記第一補強部品と前記第二補強部品とが溶接接合されることで前記補強部材を形成しており、前記第一補強部品と前記第二補強部品との双方に、前記第一補強部品と前記第二補強部品とを双方の側から保持して溶接接合したことに起因する溶接痕が形成されていることを特徴とする。
本発明に係る鉄道車両構体においては、補強部材を第一補強部品と第二補強部品とで構成している。第一補強部品は外板に当接されるものであり、第二補強部品は第一補強部品が外板に当接される面とは反対側の面において第一補強部品に当接されるものである。従って、第一補強部品は外板と当接するために好適な形態となし、第二補強部品は補強部材の強度を担うために好適な形態となすことができ、結果として補強部材による補強強度を十分に確保しつつ外板との当接性を高めることができる。
補強部材を構成する第一補強部品と第二補強部品とは、互いに溶接接合によって接合され、第一補強部品と第二補強部品とを双方の側から保持して溶接接合したことに起因する溶接痕が形成されている。このように、第一補強部品と第二補強部品との双方に溶接接合に起因する溶接痕(第一補強部品と第二補強部品とを挟み込んで保持した結果生じる保持痕や、第一補強部品と第二補強部品とを溶接した際の溶融痕といった痕)が形成されるように接合するので、第一補強部品と第二補強部品とを挟み込むように確実に保持した溶接が可能となり、第一補強部品と第二補強部品とを確実に溶接接合することができる。また、第二補強部品側からのみ外板に向けて押圧して固定する必要がないので、溶接位置のずれに起因する溶接装置の位置補正が不要となって、工数の増大を防止することができる。
従って、補強部材の強度を担うための第二補強部品と外板との当接性を担うための第一補強部品とを確実に一体化した補強部材とすることができ、補強部材としては変形などが生じにくく実質的な寸法上の精度が向上する。本発明では、このように第一補強部品と第二補強部品とを確実に保持して溶接接合し、そのように溶接接合して形成した補強部材を外板に取り付けて鉄道車両構体となしているので、外板と補強部材との位置関係を的確に保つことが確実に可能であって、外板の表面側への影響をより低減することが可能な鉄道車両構体を提供することができる。
また本発明に係る鉄道車両構体では、前記補強部材と前記外板とは当該溶接痕が形成されている部分以外で溶接接合されていることも好ましい。
この好ましい態様では、第一補強部品と第二補強部品との接合とは独立して、補強部材を外板に接合するために適切な部分及び手法によって、外板の表面に極力溶接痕が出ないか、出たとしても外観上問題のないレベルのものとするように溶接接合することができる。従って、外板と補強部材との位置関係を的確に保つことが確実に可能であって、外板の表面側への影響を確実に低減することが可能な鉄道車両構体を提供することができる。
また本発明に係る鉄道車両構体では、前記第二補強部品は、前記第一補強部品に当接されるフランジ部と、前記フランジ部と繋がっており前記第一補強部品から離隔するように形成されるチャネル部とを有し、前記第一補強部品と前記第二補強部品とは、前記フランジ部と前記第一補強部品とが溶接接合されることで前記補強部材を形成しており、前記フランジ部と前記第一補強部品との双方に溶接痕が形成されていることも好ましい。
この好ましい態様によれば、第一補強部品と第二補強部品とは、第二補強部品に形成されたフランジ部と第一補強部品とが溶接接合されることで補強部材を形成している。第二補強部品は、第一補強部品に当接されるフランジ部と、フランジ部と繋がっており第一補強部品から離隔するように形成されるチャネル部とを有しているので、第一補強部品との接合に最適化されたフランジ部において第一補強部品と溶接接合することができ、第一補強部品と第二補強部品とを確実に溶接接合することができる。第二補強部品では、第一補強部品との接合部位であるフランジ部とは別にチャネル部を設けており、このチャネル部は第一補強部品から離隔するように形成されているので、補強部材を形成した際の断面係数の増大による強度向上に確実に貢献することができる。
また本発明に係る鉄道車両構体では、前記第二補強部品は、断面が鍔付き帽子形状をなしており、断面がC字状のチャネル部と、前記チャネル部のC字状を成す断面の両端から外側に延びる一対のフランジ部とを有することも好ましい。
この好ましい態様によれば、第二補強部品は、チャネル部のC字状を成す断面の両端から外側に延びる一対のフランジ部を有している。従って、チャネル部の両脇において第一補強部品と第二補強部品とを溶接接合することができ、チャネル部の変形をより確実に抑制することができる。
また本発明に係る鉄道車両構体では、前記補強部材と前記外板とは、前記第二補強部品とは重なり合わない前記第一補強部品の外周近傍領域の少なくとも一部において溶接接合されていることも好ましい。
この好ましい態様では、補強部材と外板とを、前記第二補強部品とは重なり合わない前記第一補強部品の外周近傍領域の少なくとも一部において溶接接合しているので、第一補強部品と第二補強部品とが重ならない領域であって、第二補強部品の外側における外周近傍領域で確実に溶接接合することができる。
また本発明に係る鉄道車両構体では、前記補強部材は、鉄道車両が走行するレールが延伸する方向に沿うように配置されていることも好ましい。
この好ましい態様では、補強部材が、鉄道車両が走行するレールが延伸する方向(鉄道車両の長手方向、鉄道車両の進行方向)に沿うように配置されているので、補強部材を外板に溶接接合する際には、鉄道車両の長手方向すなわち進行方向に沿った溶接部位を確保することができる。従って、補強部材と外板との溶接接合に起因する痕が外板の外側に生じたとしても、より目立たない状態とすることができる。
また本発明に係る鉄道車両構体では、前記補強部材に加えて、前記補強部材が配置されている方向と交わるように配置される第二補強部材を備えることも好ましい。
この好ましい態様では、補強部材に加えて、補強部材が配置されている方向と交わるように配置される第二補強部材を備える。従って、第一補強部品と第二補強部品とを組み合わせることで、補強部材としては変形などが生じにくく実質的な寸法上の精度が向上した補強部材に対して、第二補強部材を強度確保上より適切な位置に確実に配置することができる。
また本発明に係る鉄道車両構体では、前記補強部材は、少なくとも二つの前記第二補強部品と、これら二つの前記第二補強部品を繋ぐように設けられる一つの前記第一補強部品とを有しており、前記第二補強部材は、二つの前記第二補強部品の間であって、前記第一補強部品に載るように配置されていることも好ましい。
この好ましい態様では、補強部材は、少なくとも二つの第二補強部品と、これら二つの第二補強部品を繋ぐように設けられる一つの第一補強部品とを有しているので、二つの第二補強部品を互いに離隔するように配置し、そのように配置した二つの第二補強部品を第一補強部品によって繋げて一体化させることができる。第二補強部材は、このように一体化された第二補強部品の間に配置されるので、分割せずともいずれの第二補強部品とも干渉せずに配置することができる。
また本発明に係る鉄道車両構体では、前記補強部材が配置されていない部分の少なくとも一部において、前記第二補強部材と前記外板との間に挟み板が配置されていることも好ましい。
この好ましい態様では、第二補強部材と外板との間に挟み板が配置されているので、補強部材の第一補強部品に乗り上げるように第二補強部材を配置したとしても、挟み板を第一補強部品と同等の厚みとすることで、第二補強部材と外板との間の隙間を生じさせずに第二補強部材を外板に確実に接合することができる。
また本発明に係る鉄道車両構体では、前記第二補強部材は、前記第一補強部品に当接される第三補強部品と、前記第三補強部品が前記第一補強部品に当接される面とは反対側の面において前記第三補強部品に当接される第四補強部品とを有していることも好ましい。
この好ましい態様では、第二補強部材を第三補強部品と第四補強部品とで構成している。また、第三補強部品は第一補強部品に当接されるものであり、第四補強部品は第三補強部品が第一補強部品に当接される面とは反対側の面において第三補強部品に当接されるものである。従って、第三補強部品は第一補強部品と当接するために好適な形態となし、第四補強部品は第二補強部材の強度を担うために好適な形態となすことができ、結果として第二補強部材による補強強度を十分に確保しつつ補強部材や外板との当接性を高めることができる。
上記課題を解決するために本発明に係る鉄道車両構体の製造方法は、その表面が鉄道車両の外観面を形成する金属製の外板と、前記外板の裏面に接合され前記外板を補強する金属製の補強部材とを備える鉄道車両構体の製造方法であって、前記外板と、前記補強部材を構成する第一補強部品及び第二補強部品とを準備する準備工程と、前記第一補強部品は前記外板に当接されるものであり、前記第二補強部品は前記第一補強部品が前記外板に当接される面とは反対側の面において前記第一補強部品に当接されるものであって、前記第一補強部品と前記第二補強部品とを双方の側から保持し、前記第一補強部品と前記第二補強部品との双方に溶接接合に起因する溶接痕が形成されるように溶接接合することで前記補強部材を形成する補強部材形成工程と、前記補強部材と前記外板とを溶接接合し鉄道車両構体と成す構体形成工程と、を備える。
本発明に係る鉄道車両構体の製造方法においては、補強部材を第一補強部品と第二補強部品とで構成している。第一補強部品は外板に当接されるものであり、第二補強部品は第一補強部品が外板に当接される面とは反対側の面において第一補強部品に当接されるものである。従って、第一補強部品は外板と当接するために好適な形態となし、第二補強部品は補強部材の強度を担うために好適な形態となすことができ、結果として補強部材による補強強度を十分に確保しつつ外板との当接性を高めることができる。
補強部材を形成するための補強部材形成工程においては、補強部材を構成する第一補強部品と第二補強部品とは、互いに溶接接合によって接合され、第一補強部品と第二補強部品とを双方の側から保持して溶接接合したことに起因する溶接痕が形成されるように接合される。このように、第一補強部品と第二補強部品との双方に溶接接合に起因する溶接痕(第一補強部品と第二補強部品とを挟み込んで保持した結果生じる保持痕や、第一補強部品と第二補強部品とを溶接した際の溶融痕といった痕)が形成されるように接合するので、第一補強部品と第二補強部品とを挟み込むように確実に保持した溶接が可能となり、第一補強部品と第二補強部品とを確実に溶接接合することができる。従って、補強部材の強度を担うための第二補強部品と外板との当接性を担うための第一補強部品とを確実に一体化した補強部材とすることができ、補強部材としては変形などが生じにくく実質的な寸法上の精度が向上する。本発明では、このように第一補強部品と第二補強部品とを確実に保持して溶接接合し、そのように溶接接合して形成した補強部材を外板に取り付けて鉄道車両構体となしているので、外板と補強部材との位置関係を的確に保つことが確実に可能であって、外板の表面側への影響をより低減することが可能な鉄道車両構体を提供することができる。
また本発明に係る鉄道車両構体の製造方法では、前記構体形成工程において、前記補強部材と前記外板とを、前記溶接痕が形成されている部分以外で溶接接合し鉄道車両構体と成すことも好ましい。
この好ましい態様では、第一補強部品と第二補強部品との接合とは独立して、補強部材を外板に接合するために適切な部分及び手法によって、外板の表面に極力溶接痕が出ないか、出たとしても外観上問題のないレベルのものとするように溶接接合することができる。従って、外板と補強部材との位置関係を的確に保つことが確実に可能であって、外板の表面側への影響をより低減することが可能な鉄道車両構体を提供することができる。
また本発明に係る鉄道車両構体の製造方法では、前記第二補強部品は、前記第一補強部品に当接されるフランジ部と、前記フランジ部と繋がっており前記第一補強部品から離隔するように形成されるチャネル部とを有するものであって、前記補強部材形成工程において、前記補強部材は、前記第二補強部品の前記フランジ部と前記第一補強部品との双方に溶接痕が形成されるように、前記フランジ部と前記第一補強部品とを溶接接合して形成されることも好ましい。
この好ましい態様によれば、補強部材形成工程において第一補強部品と第二補強部品とは、第二補強部品に形成されたフランジ部と第一補強部品とが溶接接合されることで補強部材として形成されている。第二補強部品は、第一補強部品に当接されるフランジ部と、フランジ部と繋がっており第一補強部品から離隔するように形成されるチャネル部とを有しているので、第一補強部品との接合に最適化されたフランジ部において第一補強部品と溶接接合することができ、第一補強部品と第二補強部品とを確実に溶接接合することができる。第二補強部品では、第一補強部品との接合部位であるフランジ部とは別にチャネル部を設けており、このチャネル部は第一補強部品から離隔するように形成されているので、補強部材を形成した際の断面係数の増大による強度向上に確実に貢献することができる。
また本発明に係る鉄道車両構体の製造方法では、前記第二補強部品は、断面が鍔付き帽子形状をなしており、断面がC字状のチャネル部と、前記チャネル部のC字状を成す断面の両端から外側に延びる一対のフランジ部とを有するものであって、前記補強部材形成工程において、前記補強部材は、前記チャネル部のC字状を成す断面の両端から外側に延びる一対のフランジ部と前記第一補強部品との双方に溶接痕が形成されるように、前記フランジ部と前記第一補強部品とを溶接接合して形成されることも好ましい。
この好ましい態様によれば、チャネル部のC字状を成す断面の両端から外側に延びる一対のフランジ部を有する第二補強部品を用いている。従って、チャネル部の両脇において第一補強部品と第二補強部品とを溶接接合することができ、チャネル部の変形をより確実に抑制することができる。
また本発明に係る鉄道車両構体の製造方法では、前記構体形成工程において、前記補強部材と前記外板とを、前記第二補強部品とは重なり合わない前記第一補強部品の外周近傍領域の少なくとも一部において溶接接合し鉄道車両構体と成すことも好ましい。
この好ましい態様では、補強部材と外板とを、前記第二補強部品とは重なり合わない前記第一補強部品の外周近傍領域の少なくとも一部において溶接接合しているので、第一補強部品と第二補強部品とが重ならない領域であって、第二補強部品の外側における外周近傍領域で確実に溶接接合することができる。
また本発明に係る鉄道車両構体の製造方法では、前記構体形成工程において、前記外板に対して前記補強部材を、鉄道車両が走行するレールが延伸する方向に沿うように配置し、当該配置した状態で前記補強部材と前記外板とを溶接接合することも好ましい。
この好ましい態様では、構体形成工程において、補強部材を、鉄道車両が走行するレールが延伸する方向(鉄道車両の長手方向、鉄道車両の進行方向)に沿うように配置しているので、補強部材を外板に溶接接合する際には、鉄道車両の長手方向すなわち進行方向に沿った溶接部位を確保することができる。従って、補強部材と外板との溶接接合に起因する痕が外板の外側に生じたとしても、より目立たない状態とすることができる。
また本発明に係る鉄道車両構体の製造方法では、前記準備工程において、第二補強部材を準備し、前記構体形成工程において、前記第二補強部材を、前記補強部材が配置されている方向と交わるように配置し、当該配置した状態で前記第二補強部材を固定することも好ましい。
この好ましい態様では、補強部材に加えて、補強部材が配置されている方向と交わるように配置される第二補強部材を用いている。従って、構体形成工程において第一補強部品と第二補強部品とを組み合わせることで、補強部材としては変形などが生じにくく実質的な寸法上の精度が向上した補強部材に対して、第二補強部材を強度確保上より適切な位置に確実に配置することができる。
また本発明に係る鉄道車両構体の製造方法では、前記補強部材形成工程において、前記補強部材を、少なくとも二つの前記第二補強部品と、これら二つの前記第二補強部品を繋ぐように設けられる一つの前記第一補強部品とを溶接接合することで形成し、前記構体形成工程において、前記第二補強部材を、二つの前記第二補強部品の間であって、前記第一補強部品に載るように配置し、当該配置した状態で前記第二補強部材を固定することも好ましい。
この好ましい態様では、少なくとも二つの第二補強部品と、これら二つの第二補強部品を繋ぐように設けられる一つの第一補強部品とを有している補強部材を用いている。従って、補強部材形成工程において、二つの第二補強部品を互いに離隔するように配置し、そのように配置した二つの第二補強部品を第一補強部品によって繋げて一体化させることができる。構体形成工程において第二補強部材は、このように一体化された第二補強部品の間に配置されるので、分割せずともいずれの第二補強部品とも干渉せずに配置することができる。
また本発明に係る鉄道車両構体の製造方法では、前記準備工程において、前記第二補強部材と前記外板との間に配置される挟み板を準備し、前記構体形成工程において、前記第二補強部材と前記外板との間に挟み板を配置することも好ましい。
この好ましい態様では、構体形成工程において、第二補強部材と外板との間に挟み板を配置しているので、補強部材の第一補強部品に乗り上げるように第二補強部材を配置したとしても、挟み板を第一補強部品と同等の厚みとすることで、第二補強部材と外板との間の隙間を生じさせずに第二補強部材を外板に確実に接合することができる。
また本発明に係る鉄道車両構体の製造方法では、前記第二補強部材は、第三補強部品及び第四補強部品によって構成され、前記第三補強部品は前記第一補強部品に当接されるものであり、前記第四補強部品は前記第三補強部品が前記第一補強部品に当接される面とは反対側の面において前記第三補強部品に当接されるものであって、前記準備工程において、前記第二補強部材を構成する第三補強部品及び第四補強部品を準備し、前記補強部材形成工程において、前記第三補強部品と前記第四補強部品とを、前記第三補強部品と前記第四補強部品との双方に溶接接合に起因する溶接痕が形成されるように溶接接合することも好ましい。
この好ましい態様では、第三補強部品と第四補強部品とで構成している第二補強部材を用いている。第三補強部品は第一補強部品に当接されるものであり、第四補強部品は第三補強部品が第一補強部品に当接される面とは反対側の面において第三補強部品に当接されるものである。従って、第三補強部品は第一補強部品と当接するために好適な形態となし、第四補強部品は第二補強部材の強度を担うために好適な形態となすことができ、結果として第二補強部材による補強強度を十分に確保しつつ補強部材や外板との当接性を高めることができる。
本発明によれば、外板と補強部材との位置関係を的確に保つことが確実に可能であって、外板の表面側への影響をより低減することが可能な鉄道車両構体を提供することができる。
以下、添付図面を参照しながら本発明の実施の形態について説明する。説明の理解を容易にするため、各図面において同一の構成要素に対しては可能な限り同一の符号を付して、重複する説明は省略する。
図1は、本実施形態に係る鉄道車両構体を示す斜視図である。図1に示すように、鉄道車両構体BDは、床構体FBと、屋根構体CBと、側構体SBと、妻構体EBとが互いに接合されて構成されている。床構体FBは、鉄道車両構体BDの床部を構成する部分である。屋根構体CBは、鉄道車両構体BDの屋根部を構成する部分である。側構体SBは、鉄道車両構体BDの側部を構成する部分であって、左右対称に一対設けられている。妻構体EBは、鉄道車両構体BDの端部を構成する部分であって、前方の端部と後方の端部とに一対設けられている。
側構体SBは、ドアユニットDUと、ドア上部パネルDUPと、側構体ブロックSBaと、側構体ブロックSBbと、窓ユニットWUaと、窓ユニットWUbとを有している。ドアユニットDUは、鉄道車両構体BDの出入り口を構成するユニットであって、片側に(一つの側構体SBにおいて)4個設けられている。ドア上部パネルDUPは、ドアユニットDUの上縁部よりも上側に位置し、屋根構体CBと接合される部分である。
側構体ブロックSBaは、妻構体EBとドアユニットDUとの間に配置される部分であって、片側に(一つの側構体SBにおいて)2個設けられている。側構体ブロックSBaは、幕パネルUPaと、吹寄パネルMPaと、吹寄パネルMPbと、腰パネルLPaとを備えている。窓ユニットWUaは、側構体ブロックSBaに配置される窓を構成するユニットである。
幕パネルUPaは、窓ユニットWUaの上縁部よりも上側に位置し、屋根構体CBと接合されるパネルである。吹寄パネルMPaは、妻構体EBと窓ユニットWUaとの間に配置されるパネルである。吹寄パネルMPbは、ドアユニットDUと窓ユニットWUaとの間に配置されるパネルである。腰パネルLPaは、窓ユニットWUaの下縁部よりも下側に位置し、床構体FBと接合されるパネルである。従って、窓ユニットWUaは、幕パネルUPaと、吹寄パネルMPaと、吹寄パネルMPbと、腰パネルLPaとによって囲まれている。
側構体ブロックSBbは、ドアユニットDUとドアユニットDUとの間に配置される部分であって、片側に(一つの側構体SBにおいて)3個設けられている。側構体ブロックSBbは、幕パネルUPbと、吹寄パネルMPc,MPcと、腰パネルLPbとを備えている。窓ユニットWUbは、側構体ブロックSBbに配置される窓を構成するユニットである。
幕パネルUPbは、窓ユニットWUbの上縁部よりも上側に位置し、屋根構体CBと接合されるパネルである。吹寄パネルMPcは、ドアユニットDUと窓ユニットWUbとの間に配置されるパネルである。腰パネルLPbは、窓ユニットWUbの下縁部よりも下側に位置し、床構体FBと接合されるパネルである。従って、窓ユニットWUbは、幕パネルUPbと、吹寄パネルMPc,MPcと、腰パネルLPbとによって囲まれている。
続いて、鉄道車両構体BDを構成する側構体ブロックSBaについて説明する。側構体ブロックSBaの説明にあたっては、その製造方法も併せて説明する。図2は、側構体ブロックSBa及び鉄道車両構体BDの製造方法を示すフロー図である。図2に示すように、側構体ブロックSBa及び鉄道車両構体BDの製造方法は、準備工程S01と、外板形成工程S02と、補強部材形成工程S03と、構体形成工程S04とを備えている。
準備工程S01では、床構体FB、屋根構体CB、側構体SB、及び妻構体EBをそれぞれ構成するための部材を準備する。側構体SBを例にとると、ドアユニットDUと、ドア上部パネルDUPと、側構体ブロックSBaと、側構体ブロックSBbと、窓ユニットWUaと、窓ユニットWUbとを構成するための部材を準備する。側構体ブロックSBbを構成する部材は、形状は若干異なるものの側構体ブロックSBaを構成する部材とほぼ同等なのでその説明を省略する。また、ドアユニットDU、ドア上部パネルDUP、窓ユニットWUa、及び窓ユニットWUbの構成は公知の構成であるので、それらの説明についても省略する。
上述したように側構体ブロックSBaは、幕パネルUPaと、吹寄パネルMPaと、吹寄パネルMPbと、腰パネルLPaとを備えている。側構体ブロックSBaを構成する部材として、幕パネルUPa、吹寄パネルMPa、吹寄パネルMPb、及び腰パネルLPaを構成する外板と、それら外板の裏側に設けられる補強部材を構成する部材とを準備する。
外板形成工程S02では、幕パネルUPa、吹寄パネルMPa、吹寄パネルMPb、及び腰パネルLPaを構成する外板を形成する。図3に、その外板8の平面図を示す。図3に示すように、外板8は、外板部材10と、外板部材12と、外板部材14と、外板部材16とを備えている。
外板部材10は、ステンレス製の板状部材であって、幕パネルUPaに対応するものである。外板部材12は、ステンレス製の板状部材であって、腰パネルLPaに対応するものである。外板部材14は、ステンレス製の板状部材であって、吹寄パネルMPaに対応するものである。外板部材16は、ステンレス製の板状部材であって、吹寄パネルMPbに対応するものである。
外板部材10と、外板部材12と、外板部材14と、外板部材16とを図3に示すような所定の位置に配置し、互いに溶接接合することで外板8を形成する。
図2に戻り、外板形成工程S02に続く補強部材形成工程S03では、外板8の裏面に取り付ける補強部材を形成する。図4〜図6に、補強部材の斜視図を示す。図4に示す補強部材20は、第一補強部品201と、第二補強部品202とを有している。第二補強部品202は、長手方向において第一補強部品201よりも短くなるように形成されている。
第一補強部品201は、外板8に当接されるものであって、外板8に当接される当接面201aと、当接面201aとは反対側の裏面201bとを有している。第一補強部品201は、外板8に当接されて、第二補強部品202とは重なり合わない領域であって、第一補強部品201の外周の一部である取付縁201c,201cの近傍領域201cc,201cc(外周近傍領域)において外板8とレーザ溶接によって溶接接合される。
第二補強部品202は、第一補強部品201が外板8と当接される当接面201aとは反対側の裏面201bにおいて第一補強部品201に当接されるものである。第二補強部品202は、チャネル部202aと、一対のフランジ部202b,202bとを有している。
フランジ部202b,202bは、第一補強部品201に当接される部分である。チャネル部202aは、フランジ部202b,202bと繋がっており、第一補強部品201から離隔するように形成されている。第二補強部品202は、その断面が鍔付き帽子(ハット)形状を成している。従って、チャネル部202aは、断面がC字状をなしている。フランジ部202b,202bは、断面C字状のチャネル部202aの両端から互いに外側に延出するように形成されている。
第一補強部品201と第二補強部品202とは、互いの長手方向が沿うように配置し、第二補強部品202のフランジ部202b,202bを第一補強部品201の裏面201bに当接させる。その当接している部分(フランジ部202b,202bに相当する部分)を第一補強部品201側と第二補強部品202側とから挟み込むように保持し、フランジ部202b,202bに沿ってスポット溶接する。
従って、第一補強部品201と第二補強部品202との双方には、溶接接合に起因する溶接痕WMaが形成される。この溶接痕WMaは、第一補強部品201と第二補強部品202とを挟み込むように保持した際にチャック等によって高い保持圧がかけられた結果生じる保持痕や、溶接によって第一補強部品201及び第二補強部品202が溶融した結果生じる溶融痕である。このように溶接痕WMaが、第一補強部品201と第二補強部品202との双方に残ることを許容できる構成とすることで、第一補強部品201と第二補強部品202とを確実に接合させることができる。
続いて、図5に示す補強部材22は、第一補強部品221と、第二補強部品222,223とを有している。第二補強部品222,223は、長手方向において第一補強部品221よりも短くなるように形成されている。
第一補強部品221は、外板8に当接されるものであって、外板8に当接される当接面221aと、当接面221aとは反対側の裏面221bとを有している。第一補強部品221は、外板8に当接されて、第二補強部品222,223とは重なり合わない領域であって、第一補強部品221の外周の一部である取付縁221c,221cの近傍領域221cc,221cc(外周近傍領域)において外板8とレーザ溶接によって溶接接合される。
第二補強部品222は、第一補強部品221が外板8と当接される当接面221aとは反対側の裏面221bにおいて第一補強部品221に当接されるものである。第二補強部品222は、チャネル部222aと、一対のフランジ部222b,222bとを有している。
フランジ部222b,222bは、第一補強部品221に当接される部分である。チャネル部222aは、フランジ部222b,222bと繋がっており、第一補強部品221から離隔するように形成されている。第二補強部品222は、その断面が鍔付き帽子(ハット)形状を成している。従って、チャネル部222aは、断面がC字状をなしている。フランジ部222b,222bは、断面C字状のチャネル部222aの両端から互いに外側に延出するように形成されている。
第二補強部品223は、第一補強部品221が外板8と当接される当接面221aとは反対側の裏面221bにおいて第一補強部品221に当接されるものである。第二補強部品223は、チャネル部223aと、一対のフランジ部223b,223bとを有している。
フランジ部223b,223bは、第一補強部品221に当接される部分である。チャネル部223aは、フランジ部223b,223bと繋がっており、第一補強部品221から離隔するように形成されている。第二補強部品223は、その断面が鍔付き帽子(ハット)形状を成している。従って、チャネル部223aは、断面がC字状をなしている。フランジ部223b,223bは、断面C字状のチャネル部223aの両端から互いに外側に延出するように形成されている。
第二補強部品223は、第二補強部品222と略同一形状を成す部材であって、第二補強部品222よりもその長手方向の長さが長くなるように形成されている。
第一補強部品221と第二補強部品222,223とは、互いの長手方向が沿うように配置し、第二補強部品222のフランジ部222b,222bを第一補強部品201の裏面201bに当接させると共に、第二補強部品223のフランジ部223b,223bを第一補強部品221の裏面221bに当接させる。その当接している部分(フランジ部222b,222b及びフランジ部223b,223bに相当する部分)を第一補強部品221側と第二補強部品222,223側とから挟み込むように保持し、フランジ部222b,222b及びフランジ部223b,223bに沿ってスポット溶接する。
従って、第一補強部品221と第二補強部品222,223との双方には、溶接接合に起因する溶接痕WMbが形成される。この溶接痕WMbは、第一補強部品221と第二補強部品222,223とを挟み込むように保持した際にチャック等によって高い保持圧がかけられた結果生じる保持痕や、溶接によって第一補強部品221及び第二補強部品222,223が溶融した結果生じる溶融痕である。このように溶接痕WMbが、第一補強部品221と第二補強部品222,223との双方に残ることを許容できる構成とすることで、第一補強部品221と第二補強部品222,223とを確実に接合させることができる。
図6に示す補強部材24(第二補強部材)は、第三補強部品241と、第四補強部品242とを有している。第三補強部品241と第四補強部品242とは、長手方向において略同じ長さになるように形成されている。
第三補強部品241は、補強部材20,22に当接されるものであって、補強部材20,22に当接される当接面241aと、当接面241aとは反対側の裏面241bとを有している。第三補強部品241は、補強部材20,22に当接されて、第四補強部品242とは重なり合わない領域であって、第三補強部品241の外周の一部である取付縁241c,241cの近傍領域241cc,241cc(外周近傍領域)において補強部材20,22とレーザ溶接によって溶接接合される。
第四補強部品242は、第三補強部品241が補強部材20,22と当接される当接面241aとは反対側の裏面241bにおいて第三補強部品241に当接されるものである。第四補強部品242は、チャネル部242aと、一対のフランジ部242b,242bとを有している。
フランジ部242b,242bは、第三補強部品241に当接される部分である。チャネル部242aは、フランジ部242b,242bと繋がっており、第三補強部品241から離隔するように形成されている。第四補強部品242は、その断面が鍔付き帽子(ハット)形状を成している。従って、チャネル部242aは、断面がC字状をなしている。フランジ部242b,242bは、断面C字状のチャネル部242aの両端から互いに外側に延出するように形成されている。
第三補強部品241と第四補強部品242とは、互いの長手方向が沿うように配置し、第四補強部品242のフランジ部242b,242bを第三補強部品241の裏面241bに当接させる。その当接している部分(フランジ部242b,242bに相当する部分)を第三補強部品241側と第四補強部品242側とから挟み込むように保持し、フランジ部242b,242bに沿ってスポット溶接する。
従って、第三補強部品241と第四補強部品242との双方には、溶接接合に起因する溶接痕WMcが形成される。この溶接痕WMcは、第三補強部品241と第四補強部品242とを挟み込むように保持した際にチャック等によって高い保持圧がかけられた結果生じる保持痕や、溶接によって第三補強部品241及び第四補強部品242が溶融した結果生じる溶融痕である。このように溶接痕WMcが、第三補強部品241と第四補強部品242との双方に残ることを許容できる構成とすることで、第三補強部品241と第四補強部品242とを確実に接合させることができる。
図2に戻り、補強部材形成工程S03に続く構体形成工程S04では、外板8の裏面に補強部材20,22,24を取り付けて、側構体ブロックSBaを形成する。外板8に、補強部材20,22,24を取り付ける手順を、図7〜図9を参照しながら説明する。
図7に示すように、外板8(図3参照)に、補強部材20と補強部材22とをそれぞれ所定の位置に配置し、レーザ溶接にて溶接接合する。外板8の外板部材10及び外板部材12に相当する領域(図3参照)には、補強部材22を取り付ける。外板8の外板部材16に相当する領域(図3参照)には、補強部材20を取り付ける。
補強部材20,22は、鉄道車両構体BDの長手方向(図1参照)に沿うように、すなわち鉄道車両が走行するレールが延伸する方向に沿うように取り付けられる。補強部材20,22を外板8に取り付けるにあたっては、補強部材20を構成する第二補強部品202と、補強部材22を構成する第二補強部品222とが略同じ位置になるように取り付けるものとする。補強部材20をレーザ溶接する際には、取付縁201cに沿って溶接接合する。また、補強部材22をレーザ溶接する際には、取付縁221cに沿って溶接接合する。
図8に、図7に示す外板8及び補強部材20,22の一部の取り付け状態を示す。図8は、図7に示す外板8及び補強部材20,22の一部の取り付け状態を示す斜視図である。尚、図8は、外板8に対して補強部材20,22がどのように取り付けられているかを示すものであって、実際の外板8の形態や補強部材20,22の個数等は図7に図示するものである。
続いて図9に示すように、外板8に挟み板26,28を取り付ける。挟み板26,28は、第一補強部品201,221と略同一の厚みを有する板状部材である。挟み板26は、外板部材10に相当する領域(図3参照)の最下方に取り付けられた補強部材22と、外板部材12に相当する領域(図3参照)の最上方に取り付けられた補強部材22との間に配置され、レーザ溶接にて外板8に溶接接合される。挟み板26は、縦方向に配置される一方で、レーザ溶接は横方向に沿って適宜決められる間隔において溶接接合される。
挟み板28は、補強部材20と補強部材20との間、補強部材20と補強部材22との間、補強部材22と補強部材22との間に配置され、レーザ溶接にて外板8に溶接接合される。挟み板28は、縦方向に配置される一方で、レーザ溶接は横方向に沿って適宜決められる間隔において溶接接合される。
続いて図10に示すように、補強部材24を取り付ける。補強部材24は、補強部材20,22に対して、第一補強部品201,221が露出している部分に縦方向に沿って取り付けられる。また、挟み板26,28は、このように取り付けられる補強部材24に対応する位置に取り付けられるものである。
補強部材24は、外板8に既に取り付けられている補強部材20,22及び挟み板26,28に対してレーザ溶接によって溶接接合される。この状態について図11を参照しながら説明する。図11は、図10のA矢視を示す図である。図11に示すように、補強部材24は、挟み板28及び第一補強部品221に乗るように配置され、挟み板28及び第一補強部品221に対して溶接接合されている。
上述した本実施形態においては、補強部材20,22を第一補強部品201,221と第二補強部品221,222,223とで構成している。第一補強部品201,221は外板8に当接されるものであり、第二補強部品221,222,223は第一補強部品201,221が外板8に当接される面とは反対側の面において第一補強部品201,221に当接されるものである。従って、第一補強部品201,221は外板8と当接するために好適な形態である平板状となし、第二補強部品221,222,223は補強部材の強度を担うために好適な形態であるハット形状となすことができ、結果として補強部材20,22による補強強度を十分に確保しつつ外板8との当接性を高めることができる。
補強部材20,22を構成する第一補強部品201,221と第二補強部品221,222,223とは、互いに溶接接合によって接合され、溶接接合に起因する溶接痕WMa,WMbが形成されている。このように、第一補強部品201,221と第二補強部品221,222,223との双方に溶接接合に起因する溶接痕(第一補強部品201,221と第二補強部品221,222,223とを挟み込んで保持した結果生じる保持痕や、第一補強部品201,221と第二補強部品221,222,223とを溶接した際の溶融痕といった痕)が形成されるように接合するので、第一補強部品201,221と第二補強部品221,222,223とを挟み込むように確実に保持した溶接が可能となり、第一補強部品201,221と第二補強部品221,222,223とを確実に溶接接合することができる。従って、補強部材20,22の強度を担うための第二補強部品221,222,223と、外板8との当接性を担うための第一補強部品201,221とを確実に一体化した補強部材20,22とすることができ、補強部材としては変形などが生じにくく実質的な寸法上の精度が向上する。
このように形成されてなる補強部材20,22と外板8とは、第一補強部品201,221と第二補強部品202,222,223とを接合した溶接痕WMa,WMbが形成されている部分以外で溶接接合されている。第一補強部品201,221と第二補強部品202,222,223との接合とは独立して、補強部材20,22を外板8に接合するために適切な部分及び手法によって、外板8の表面に極力溶接痕が出ないか、出たとしても外観上問題のないレベルのものとするように溶接接合することができる。従って、外板8と補強部材20,22との位置関係を的確に保つことが確実に可能であって、外板8の表面側への影響をより低減することが可能な鉄道車両構体BDを提供することができる。
また本実施形態では、第一補強部品201,221と第二補強部品202,222,223とは、第二補強部品202,222,223に形成されたフランジ部202b,222b,223bと第一補強部品201,221とが溶接接合されることで補強部材20,22を形成している。第二補強部品202,222,223は、第一補強部品201,221に当接されるフランジ部202b,222b,223bと、フランジ部202b,222b,223bと繋がっており第一補強部品201,221から離隔するように形成されるチャネル部202a,222a,223aとを有しているので、第一補強部品201,221との接合に最適化されたフランジ部202b,222b,223bにおいて第一補強部品201,221と溶接接合することができ、第一補強部品201,221と第二補強部品202,222,223とを確実に溶接接合することができる。第二補強部品202,222,223では、第一補強部品201,221との接合部位であるフランジ部202b,222b,223bとは別にチャネル部202a,222a,223aを設けており、このチャネル部202a,222a,223aは第一補強部品201,221から離隔するように形成されているので、補強部材20,22を形成した際の断面係数の増大による強度向上に確実に貢献することができる。
また本実施形態では、第二補強部品202,222,223は、チャネル部202a,222a,223aのC字状を成す断面の両端から外側に延びる一対のフランジ部202b,222b,223bを有している。従って、チャネル部202a,222a,223aの両脇において第一補強部品201,221と第二補強部品202,222,223とを溶接接合することができ、チャネル部202a,222a,223aの変形をより確実に抑制することができる。
また本実施形態では、補強部材20,22と外板8とを、第二補強部品202,222,223とは重なり合わない領域であって、第一補強部品201,221の外周の一部である取付縁201c,221cの近傍領域201cc,221cc(外周近傍領域)において外板8とレーザ溶接によって溶接接合しているので、第一補強部品201,221と第二補強部品202,222,223とが重ならない領域で確実に溶接接合することができる。
また本実施形態では、補強部材20,22が、鉄道車両が走行するレールが延伸する方向(鉄道車両構体BDの長手方向、鉄道車両構体BDを用いた鉄道車両の進行方向)に沿うように配置されているので、補強部材20,22を外板8に溶接接合する際には、鉄道車両の長手方向すなわち進行方向に沿った溶接部位を確保することができる。従って、補強部材と外板との溶接接合に起因する痕が外板の外側に生じたとしても、より目立たない状態とすることができる。
また本実施形態では、補強部材20,22に加えて、補強部材20,22が配置されている横方向と交わるように縦方向に沿って配置される第二補強部材としての補強部材24を備える。従って、第一補強部品201,221と第二補強部品202,222,223とを組み合わせることで、補強部材としては変形などが生じにくく実質的な寸法上の精度が向上した補強部材20,22に対して、第二補強部材としての補強部材24を強度確保上より適切な位置に確実に配置することができる。
また本実施形態では、補強部材22は、少なくとも二つの第二補強部品222,223と、これら二つの第二補強部品222,223を繋ぐように設けられる一つの第一補強部品221とを有しているので、二つの第二補強部品222,223を互いに離隔するように配置し、そのように配置した二つの第二補強部品222,223を第一補強部品221によって繋げて一体化させることができる。第二補強部材である補強部材24は、このように一体化された第二補強部品222,223の間に配置されるので、分割せずともいずれの第二補強部品222,223とも干渉せずに配置することができる。
また本実施形態では、第二補強部材である補強部材24と外板8との間に挟み板26,28が配置されているので、補強部材20,22の第一補強部品201,221に乗り上げるように補強部材24を配置したとしても、挟み板26,28を第一補強部品201,221と同等の厚みとすることで、補強部材24と外板8との間の隙間を生じさせずに補強部材24を外板8に確実に接合することができる。
また本実施形態では、第二補強部材である補強部材24を第三補強部品241と第四補強部品242とで構成している。また、第三補強部品241は第一補強部品201,221に当接されるものであり、第四補強部品242は第三補強部品241が第一補強部品201,221に当接される面とは反対側の面において第三補強部品241に当接されるものである。従って、第三補強部品241は第一補強部品201,221と当接するために好適な形態となし、第四補強部品242は補強部材24の強度を担うために好適な形態となすことができ、結果として補強部材24による補強強度を十分に確保しつつ補強部材20,22や外板8との当接性を高めることができる。
以上、具体例を参照しつつ本発明の実施の形態について説明した。しかし、本発明はこれらの具体例に限定されるものではない。すなわち、これら具体例に、当業者が適宜設計変更を加えたものも、本発明の特徴を備えている限り、本発明の範囲に包含される。例えば、前述した各具体例が備える各要素およびその配置、材料、条件、形状、サイズなどは、例示したものに限定されるわけではなく適宜変更することができる。また、前述した各実施の形態が備える各要素は、技術的に可能な限りにおいて組み合わせることができ、これらを組み合わせたものも本発明の特徴を含む限り本発明の範囲に包含される。