JP2011161892A - 透明導電膜付ガスバリアフィルム - Google Patents
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Abstract
【課題】構成層の剥離や透明導電膜の劣化を防止することにより、長期にわたり優れた性能を発揮することが期待できる透明導電膜付ガスバリアフィルムを提供。
【解決手段】環状ポリオレフィン系材料からなる基材10の両主面に対し、それぞれガスバリア層20A、20B、保護層30A、30Bを順次積層してフィルム積層体2を構成する。保護層30A、30Bはシロキサン系熱硬化性樹脂で構成する。APC層40の両面にITO膜50A、50Bを積層して透明導電膜積層体3を構成する。このフィルム積層体2と透明導電膜積層体3とを積層して、透明導電膜付ガスバリアフィルム1を構成する。
【選択図】図1
【解決手段】環状ポリオレフィン系材料からなる基材10の両主面に対し、それぞれガスバリア層20A、20B、保護層30A、30Bを順次積層してフィルム積層体2を構成する。保護層30A、30Bはシロキサン系熱硬化性樹脂で構成する。APC層40の両面にITO膜50A、50Bを積層して透明導電膜積層体3を構成する。このフィルム積層体2と透明導電膜積層体3とを積層して、透明導電膜付ガスバリアフィルム1を構成する。
【選択図】図1
Description
本発明は低抵抗の透明導電膜を有するガスバリアフィルムに関し、特に透明導電膜の劣化防止を図るとともに、フィルムの反りや構成層の剥離を防止する改良技術に関する。
酸素や水分等のガスの透過を防止する手段として、ガスバリアフィルムが開発されている。ガスバリアフィルムは、液晶ディスプレイ(LCD)や有機ELディスプレイ(OELD)等のフラットディスプレイパネル(FPD)において、液晶層や発光層が大気中の水分(水蒸気)や酸素成分と触れて劣化するのを防止する手段として使用される。また、電子ペーパーの構成要素や太陽電池の発電要素を保護したり、食品や化学薬品を長期保存するための容器・素材としても幅広く利用されている。
ガスバリアフィルムの構成例としては、耐熱性及び透明性に優れる環状ポリオレフィン等の合成樹脂を基材フィルムとし、その少なくともいずれかの表面に、ガスバリア層として、アルミナ、ジルコニア、ケイ素等の無機成分を含む金属酸化物、窒化物、酸窒化物等の無機層や、紫外線硬化型樹脂または熱硬化型樹脂等の有機成分からなる有機層を一層以上設けて構成される(特許文献1、2)。
ガスバリアフィルムの表面には、有機ELや電子ペーパー等の表示手段を駆動させるため、透明導電膜(透明電極)が配設されることもある。透明電極膜には透明性と低抵抗値(例えば10Ω/□以下)を備えることが要求される。
透明電極膜付ガスバリアフィルムについては、以下に示す課題がある。
第一に、構成層の剥離を防止すべき問題がある。透明電極膜付ガスバリアフィルムは、異なる複数の構成層を積層してなるため、各層が剥離を起こすと適切なガスバリア特性が得られなくなる。また、当該ガスバリアフィルムが配設対象面から脱落したり、透明導電膜を利用した通電が正しく行えなくなる等の問題を生じうる。
第一に、構成層の剥離を防止すべき問題がある。透明電極膜付ガスバリアフィルムは、異なる複数の構成層を積層してなるため、各層が剥離を起こすと適切なガスバリア特性が得られなくなる。また、当該ガスバリアフィルムが配設対象面から脱落したり、透明導電膜を利用した通電が正しく行えなくなる等の問題を生じうる。
第二に、カール防止を図る問題がある。ガスバリアフィルムに形成した透明導電膜は、結晶性を向上させて低抵抗を実現するため、いわゆるポストアニール処理が施される。この処理の加熱により、複数の構成要素の熱膨張特性の違いに起因し、ガスバリアフィルムがカール(反り)を生じる場合がある。カールが発生すると品質低下を招き、ディスプレイ面等に対して正確にガスバリアフィルムを配設できない問題が生じうる。
第三に透明導電膜の劣化を防止すべき課題がある。透明導電膜が使用中に劣化すると、抵抗値の増大により通電状態が劣化し、有機ELや電子ペーパーなど通電対象を正しく駆動できないおそれがある。また、消費電力の増大を招く問題も生じうる。
本発明は以上の各課題に鑑みてなされたものであって、構成層の剥離や透明導電膜の劣化を防止することにより、長期にわたり優れた性能を発揮することが期待できる透明導電膜付ガスバリアフィルムを提供することを目的とする。
本発明は以上の各課題に鑑みてなされたものであって、構成層の剥離や透明導電膜の劣化を防止することにより、長期にわたり優れた性能を発揮することが期待できる透明導電膜付ガスバリアフィルムを提供することを目的とする。
上記課題を解決するため、本発明はフィルム積層体上に透明導電膜が積層された構成を有する透明導電膜付ガスバリアフィルムであって、前記フィルム積層体は、環状ポリオレフィン系材料からなる基材に対し、その少なくとも一方の主面に、ガスバリア層及び当該ガスバリア層を保護する保護層が同順に積層されて構成され、保護層は、熱硬化型樹脂材料で構成され、ガスバリア層は、有機層または物理気相成長法によって形成された無機層の少なくともいずれかを含んでなる構成とした。
ここで前記透明導電膜には、Ag―Pd―Cu系合金層に対し、その両主面に透明導電酸化物を積層した積層体を利用することもできる。
また、保護層は、シロキサン系熱硬化型樹脂材料で構成することもできる。
この場合、シロキサン系熱硬化型樹脂材料は、ポリビニルアルコール(PVA)、エチレン酢酸ビニル共重合体(EVA)、スチレンブタジエン共重合体、酢酸ビニル、ポリビニルアセタール、アクリル酸エステル系樹脂、アクリルアミド系樹脂、ポリエステル系樹脂等の内のいずれか1種以上を含む構成とすることもできる。
また、保護層は、シロキサン系熱硬化型樹脂材料で構成することもできる。
この場合、シロキサン系熱硬化型樹脂材料は、ポリビニルアルコール(PVA)、エチレン酢酸ビニル共重合体(EVA)、スチレンブタジエン共重合体、酢酸ビニル、ポリビニルアセタール、アクリル酸エステル系樹脂、アクリルアミド系樹脂、ポリエステル系樹脂等の内のいずれか1種以上を含む構成とすることもできる。
また、保護層は、120〜180℃の加熱により熱硬化させて得ることもできる。
また、前記無機層は、ケイ素化合物、アルミニウム、ジルコニウム、タンタル、ニオブ、亜鉛、錫、インジウム化合物の内のいずれか1種以上の酸化物、酸窒化物、窒化物を含んで構成することもできる。
また、前記無機層は、真空薄膜形成法で形成することもできる。この場合、前記ガスバリア層の1層当たりの膜厚としては、10nm以上5μm以下の範囲に設定することが望ましい。
また、前記無機層は、ケイ素化合物、アルミニウム、ジルコニウム、タンタル、ニオブ、亜鉛、錫、インジウム化合物の内のいずれか1種以上の酸化物、酸窒化物、窒化物を含んで構成することもできる。
また、前記無機層は、真空薄膜形成法で形成することもできる。この場合、前記ガスバリア層の1層当たりの膜厚としては、10nm以上5μm以下の範囲に設定することが望ましい。
また、前記有機層は、紫外線硬化樹脂成分または熱硬化型樹脂成分の一方または両方を含んで構成することもできる。このような樹脂等の有機成分で構成する場合は、前記ガスバリア層の1層当たりの膜厚は0.1μm以上10μm以下とすることが望ましい。
以上の構成を有する本発明の透明導電膜付ガスバリアフィルムは、フィルム積層体の構成要素である基材とガスバリア層、保護層のいずれもが耐熱性材料で構成されている。一方、透明導電膜は本来、耐熱性を有している。従って、透明導電膜の形成時にポストアニール処理を実施しても、フィルム積層体の熱損傷を極力低減することができるので、完成後のガスバリアフィルムについて、良好な諸性能(透明性、ガスバリア特性、並びに通電性)を期待できる。また、フィルム積層体が耐熱性を有するのでアニール温度を低くしなければならない制約も小さい。従って、透明導電膜の結晶度を十分に向上させるために必要な加熱温度でポストアニール処理を実施することができる。
また、基材が環状ポリオレフィンの採用により良好な耐熱性を有していることから、ガスバリア層を形成する際に加熱処理を実施しても、基材の熱損傷を防止できる効果も奏される。このため、ガスバリア層としても幅広い材料の採用が可能であり、設計選択性を高めることができる。
また、フィルム積層体が耐熱性を有することで、前記ポストアニール処理の際の加熱によって、当該フィルム積層体が熱変形を生じてカールを発生するおそれも低減されており、良好な平坦性を維持することができる。
また、フィルム積層体が耐熱性を有することで、前記ポストアニール処理の際の加熱によって、当該フィルム積層体が熱変形を生じてカールを発生するおそれも低減されており、良好な平坦性を維持することができる。
さらにガスバリアフィルムでは、フィルム積層体の各最外面に配された保護層によって、ガスバリア層及び基材が外部から適切に保護されている。特に基材の材料である環状ポリオレフィン系材料は、製造工程で用いられるトルエン、キシレン等の各種有機溶剤に触れると化学反応により劣化する場合があるが、予め保護層を配設しておくことで耐溶剤性を付与でき、このような薬剤との直接接触による不具合を良好に回避できる。また、保護層を熱硬化型材料で構成することで、優れた耐熱性と適度な強度を得ることができる。その結果、高温環境下に長期曝しても、各構成要素の変形や変質・剥離等を防いで、ガスバリアフィルムの良好な性能を維持できる。
なお、前記透明導電膜としては、耐腐食性に優れるAPC合金層を2つのITO膜で挟んでパッキングしてなる、透明導電膜積層体を用いることができる。この構造によりAPC合金層は大気との接触が遮断され、大気中の酸化性ガスによる劣化を抑制できるので、安定した電気特性を維持する効果を期待できる。このような透明導電膜積層体を持つガスバリアフィルムでは、長期にわたり、上記した良好な平坦性及びガスバリア特性が得られる。また、これに加えて透明導電膜積層体の優れた通電特性が期待できる。
なお、カールの抑制効果は、フィルム積層体が厚み方向に沿って、基材を中心とする対称的な積層構造を有することでも発揮される。例えばガスバリア層、保護層のいずれかが環境温度等の影響で内部応力を発生しても、各々の内部応力は基材を挟んで互いに反対の向きにカールさせようと作用するので、結果的に内部応力は相殺され、変形が防止される。ガスバリアフィルムではこのような理由によっても、カールの発生を効果的に抑制し、平坦性を維持することが可能になっている。
このようなカール防止効果を有することから、例えばガスバリアフィルムをディスプレイ表面に配設して使用することによって、ガスバリアフィルムがディスプレイの駆動熱に曝されても、カールを発生することなく、ディスプレイ表面に良好に密着させることが期待できる。
<実施の形態>
[ガスバリアフィルム1の構成]
図1の断面図に基づいて実施の形態1の透明電極膜付ガスバリアフィルム1(以下、単に「ガスバリアフィルム1」と称する。)の構成を説明する。
当図に示されるガスバリアフィルム1は、フィルム積層体2と透明導電膜積層体3を積層して構成されている。
[ガスバリアフィルム1の構成]
図1の断面図に基づいて実施の形態1の透明電極膜付ガスバリアフィルム1(以下、単に「ガスバリアフィルム1」と称する。)の構成を説明する。
当図に示されるガスバリアフィルム1は、フィルム積層体2と透明導電膜積層体3を積層して構成されている。
フィルム積層体2は、基材10の両主面に対して、ガスバリア層20A、20B、保護層30A、30Bを同順に積層した構成を有する。ガスバリア層20A、20B、保護層30A、30Bは、それぞれ同一のものを使用している。これによりフィルム積層体2は、厚み方向に沿って、基材10を中心とする対称構造を有する。
基材10は、環状ポリオレフィン系材料からなる透明なプラスチックフィルムであり、優れた柔軟性及び耐熱性を有する。ここで「環状ポリオレフィン系材料」とは一般総称であって、具体的には以下の各種材料を例示できる。
(a)環状オレフィンの開環(共)重合体を必要に応じ、水素添加した重合体
(b)環状オレフィンの付加(共)重合体
(c)環状オレフィンとエチレン、プロピレン等のα−オレフィンとのランダム共重合体
(d)前記(a)〜(c)を不飽和カルボン酸や誘導体等で変性したグラフト変性体等が例示できる。
基材10は、環状ポリオレフィン系材料からなる透明なプラスチックフィルムであり、優れた柔軟性及び耐熱性を有する。ここで「環状ポリオレフィン系材料」とは一般総称であって、具体的には以下の各種材料を例示できる。
(a)環状オレフィンの開環(共)重合体を必要に応じ、水素添加した重合体
(b)環状オレフィンの付加(共)重合体
(c)環状オレフィンとエチレン、プロピレン等のα−オレフィンとのランダム共重合体
(d)前記(a)〜(c)を不飽和カルボン酸や誘導体等で変性したグラフト変性体等が例示できる。
このような環状ポリオレフィン材料としては特に限定されず、例えばノルボルネン、テトラシクロドデセンや、それらの誘導体(例えばカルボキシル基やエステル基を有するもの)が例示できる。
環状ポリオレフィン系樹脂の市販製品としては、例えばTopas Advanced Polymersの付加重合型ポリオレフィンである「TOPAS」(登録商標)が好適である。その他、日本ゼオン株式会社の開環重合型ポリオレフィンである「ZEONOR(ゼオノア)」または「ZEONEX」(いずれも登録商標)、JSR株式会社の「ARTON」(登録商標)、三井化学株式会社の脂環重合型ポリオレフィンである「APEL」(登録商標)等も挙げることができる。
環状ポリオレフィン系樹脂の市販製品としては、例えばTopas Advanced Polymersの付加重合型ポリオレフィンである「TOPAS」(登録商標)が好適である。その他、日本ゼオン株式会社の開環重合型ポリオレフィンである「ZEONOR(ゼオノア)」または「ZEONEX」(いずれも登録商標)、JSR株式会社の「ARTON」(登録商標)、三井化学株式会社の脂環重合型ポリオレフィンである「APEL」(登録商標)等も挙げることができる。
環状ポリオレフィン系材料から基材10を製造する方法は限定されず、例えば公知の溶液流延法、押し出し法、カレンダー法等のいずれかを例示できる。また、その製造の際には当該樹脂成分に紫外線吸収剤、アンチブロッキング剤、滑剤、静電気防止剤、安定剤等、各種添加剤を目的に合わせて添加することもできる。また、基材表面に対し、コロナ処理、酸素、窒素、アルゴンやこれらの混合ガスによるプラズマ処理等によって表面処理を行ったものを用いることもできる。或いは、フィルム表面に紫外線硬化樹脂や熱硬化型樹脂からなる塗膜を形成したものを基材10として用いてもよい。
ガスバリア層20A(20B)は、少なくとも水蒸気および酸素に対する高いガスバリア性と、高い光線透過性を有する層として構成されている。その材料としては、各種有機成分や無機成分をそれぞれ単独で、または組み合わせて用いることができる。また、単層構造や多段構造(無機層と有機層を交互に積層した構造等)のいずれで構成してもよい。さらに、成膜方法も公知のいずれかの製法を利用することができる。
有機成分としては、鉱酸(無機酸)、水及び有機溶剤の存在下で重縮合する、主成分が直鎖状ポリマーよりなる公知樹脂(アクリル系樹脂やシリコン系樹脂、エポキシ系樹脂等、各種公知の紫外線硬化樹脂材料や熱硬化型樹脂材料の一方または両方)を用いることが好適である。
有機成分を用いた成膜工程の手順としては、まず前記樹脂材料を含む塗工液を用意し、公知塗工方式(ロールコート、グラビアコート、ナイフコート、ダイコートやディッピング等)により塗工液を基材表面に塗布し、溶媒を気化させた後、紫外線照射または加熱処理により硬化させて成膜することができる。このように有機成分のみからなる有機層を成膜する場合、その膜厚としては0.1μm以上10μm以下の範囲に設定するのが好適で、また1μm以上6μm以下の範囲に設定するのがさらに好適である。
有機成分を用いた成膜工程の手順としては、まず前記樹脂材料を含む塗工液を用意し、公知塗工方式(ロールコート、グラビアコート、ナイフコート、ダイコートやディッピング等)により塗工液を基材表面に塗布し、溶媒を気化させた後、紫外線照射または加熱処理により硬化させて成膜することができる。このように有機成分のみからなる有機層を成膜する場合、その膜厚としては0.1μm以上10μm以下の範囲に設定するのが好適で、また1μm以上6μm以下の範囲に設定するのがさらに好適である。
熱硬化型樹脂材料を用いた具体的方法を例示すると、ジエチルジエトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、テトラエトキシシランなどの有機シラン材料の一部加水分解、脱水縮合させたものと、これに所定容量のフルオロシラン化合物あるいはメチル基、エチル基等を有するオルガノシラン材料(オルガノシロキサン材料)を用意する。この材料に対し、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノールなどのアルコール系有機溶媒、水、塩酸を配合させ、ゾルとして調整したものを塗料とする。この塗料をグラビアコート法などのロールコーティング法で所定の最終膜厚となるように塗布する。塗布した塗料について所定の加熱処理(熱硬化処理)を行い、乾燥させると、オルガノポリシロキサンを含んでなるガスバリア層20A(20B)が得られる。
一方、無機成分としては、酸化物、酸窒化物、窒化物のうちの1種以上のケイ素化物(SiO2等のSiOx系、SiON、SiN等)を含む材料を用いることが望ましい。無機成分を用いて成膜する場合は、蒸着法、スパッタ法、イオンプレーティング(イオンめっき)法等の物理気相成長法(PVD;Physical Vapor Deposition)を用いて成膜できる。このうち蒸着法としては、抵抗加熱蒸着、電子ビーム蒸着、フラッシュ蒸着、高周波加熱蒸着、アーク蒸着、レーザー蒸着(PLD法)、分子線エピタキシー法(MBE法)等が挙げられる。またスパッタ法としては、DCグロースパッタ、MFグロースパッタ、RFグロースパッタ、ECR(電子サイクロトロン共鳴)スパッタ、デュアルACスパッタ、イオンビームスパッタ、マグネトロンスパッタ(平衡、非平衡のいずれか。上記各手法との組み合わせが一般的である)等が挙げられる。イオンプレーティング法としては、プラズマ、イオンを利用したスパッタ以外の成膜法であって、DCプラズマイオンプレーティング、RFプラズマイオンプレーティング(誘導プラズマも含む)、イオンビームアシスト蒸着(クラスターイオンビームも含む)等が挙げられる。このように無機成分のみからなる無機層でガスバリア層20A(20B)を成膜する場合、その膜厚としては10nm以上5μm以下の範囲に設定するのが望ましい。なお、水蒸気バリア性を高めるためには1μm以上に設定するのがさらに望ましい。また、無機層としてはこれ以外にもケイ素化物、アルミニウム、ジルコニウム、タンタル、ニオブ、亜鉛、錫、インジウム化合物、の内のいずれか1種以上の酸化物、酸窒化物、窒化物を含むように形成することができる。
或いはガスバリア層20A(20B)は、有機層または無機層の積層体、或いは異なる材料からなる有機層を積層した多層構造で形成することもできる。
なお、有機層または無機層としてガスバリア層20A(20B)を構成する場合の各膜厚範囲を例示したが、これらの範囲より厚いとクラックが発生するおそれがあり、逆に薄いと十分なガスバリア性を得にくいことがあるので留意すべきである。
なお、有機層または無機層としてガスバリア層20A(20B)を構成する場合の各膜厚範囲を例示したが、これらの範囲より厚いとクラックが発生するおそれがあり、逆に薄いと十分なガスバリア性を得にくいことがあるので留意すべきである。
保護層30A(30B)は、基材10及びガスバリア層20A(20B)に対し、耐溶剤性(特にトルエン、キシレン等に対する耐性)及び耐アルカリ性(エッチング処理等の工程適性)を付与する目的で用いる層であって、120〜180℃の加熱処理で熱硬化する熱硬化型樹脂材料で構成され、フィルム積層体2の最外面に配置されている。具体的には、シロキサン系熱硬化型樹脂(HC剤)である日本精化株式会社製の「NSC−2451」を挙げることができる。このようなシロキサン系熱硬化型樹脂を用いて保護層30A(30B)を構成すれば、ガスバリア層20A(20B)と保護層30A(30B)との密着性を向上させることができるので好適である。
続いて透明導電膜積層体3は、APC合金層40の両主面に対して、ITO膜50A、50Bを積層した構成を有する。
APC合金層40は、Ag(主成分)−Pd−Cu系合金材料からなる透明な層(膜厚10〜30nm)であって、透明導電膜積層体3における主な透明電極部として機能する層である。このAg−Pd−Cu系合金はAg材料に比べて耐熱性、耐腐食性に優れ、長期にわたり良好な電気伝導性(10Ω/□以下の低抵抗性)を発揮できる特徴を持つ。従って、比較的大面積にわたりAPC合金層40を形成しても、ジュール熱の発生を防いで良好な通電性能を期待できる。
APC合金層40は、Ag(主成分)−Pd−Cu系合金材料からなる透明な層(膜厚10〜30nm)であって、透明導電膜積層体3における主な透明電極部として機能する層である。このAg−Pd−Cu系合金はAg材料に比べて耐熱性、耐腐食性に優れ、長期にわたり良好な電気伝導性(10Ω/□以下の低抵抗性)を発揮できる特徴を持つ。従って、比較的大面積にわたりAPC合金層40を形成しても、ジュール熱の発生を防いで良好な通電性能を期待できる。
なお、面積抵抗(Rs)を10Ω/□以下にするためには、APC合金層40の膜厚が10nm以上必要である(性能確認試験の「APC合金層及びITO膜の膜厚に対する面積抵抗値及び透過率の関係」を参照)。また、膜厚が30nmを超えると、APC合金層40の透過性が低くなり過ぎ、透明導電膜として用いることができない(性能確認試験の「光学シミュレーション」を参照)。
また、全光線透過率については、例えば膜厚を変化させることで調節が可能である。
APC合金層40の形成方法としては、公知の金属スパッタリング法や合金ペーストを塗布して焼成する方法等を挙げることができる。また、APC合金層40の組成としては適宜設定が可能であるが、概ねAgを主成分とし、Pdを0.05〜3.50wt%、Cuを0.05〜3.50wt%の範囲にそれぞれ設定することが好適である。当該合金は、基本的にAg−Pd−Cu系の合金組成であれば、他に別の金属が含まれていてもよい。
APC合金層40の形成方法としては、公知の金属スパッタリング法や合金ペーストを塗布して焼成する方法等を挙げることができる。また、APC合金層40の組成としては適宜設定が可能であるが、概ねAgを主成分とし、Pdを0.05〜3.50wt%、Cuを0.05〜3.50wt%の範囲にそれぞれ設定することが好適である。当該合金は、基本的にAg−Pd−Cu系の合金組成であれば、他に別の金属が含まれていてもよい。
また、APC合金材料についての一般的な製造方法や特性は、例えば特許文献3(WO2005/031016)を参照することができる。
ITO膜50A(50B)は、公知のインジウムスズ酸化物からなる透明電極部であり、厚み10〜150nmでスパッタリング法や真空蒸着法等の薄膜形成法を用いて成膜されている。透明導電膜積層体3において、ITO膜50AはAPC合金層40を被覆することにより環境性能を向上させ、当該合金層40が大気と不要な酸化反応を生じて劣化する問題を防止する。ITO膜50BはAPC合金層40の下面において、保護層30Aと積層されている。ここで、ITO膜は熱硬化型樹脂との密着性に優れるため、ITO膜50はフィルム積層体2と強固に密着するために用いられる。
ITO膜50A(50B)は、公知のインジウムスズ酸化物からなる透明電極部であり、厚み10〜150nmでスパッタリング法や真空蒸着法等の薄膜形成法を用いて成膜されている。透明導電膜積層体3において、ITO膜50AはAPC合金層40を被覆することにより環境性能を向上させ、当該合金層40が大気と不要な酸化反応を生じて劣化する問題を防止する。ITO膜50BはAPC合金層40の下面において、保護層30Aと積層されている。ここで、ITO膜は熱硬化型樹脂との密着性に優れるため、ITO膜50はフィルム積層体2と強固に密着するために用いられる。
なお、ITO膜50A(50B)は、いずれもAPC合金層40と同様に、透明電極としての機能も併せて発揮する。
透明導電膜積層体3は、各構成要素を成膜した後にポストアニール処理を施すことによって結晶性を高め、低抵抗化及び透明性の向上が図られている。このポストアニール処理による効果は、例えば公知のXRD等の解析により結晶構造を調べることで確認できる。
透明導電膜積層体3は、各構成要素を成膜した後にポストアニール処理を施すことによって結晶性を高め、低抵抗化及び透明性の向上が図られている。このポストアニール処理による効果は、例えば公知のXRD等の解析により結晶構造を調べることで確認できる。
なお透明導電膜積層体3は、当然ながら、所定の配線パターンに合わせて適宜パターニングを施すことができる。また、ITO膜50A(50B)は一例にすぎず、亜鉛、錫、インジウムのいずれかを含む透明導電酸化物を利用できる。この透明導電酸化物としては、ITO以外に、ZnO(酸化亜鉛)、AZO(アルミドープ酸化亜鉛)、GZO(ガリウムドープ酸化亜鉛)、IWO(タングステンドープ酸化インジウム)、ITiO(チタンドープ酸化インジウム)、SnO2(酸化錫)等を挙げることができる。
また、透明導電膜積層体3は本発明における必須要件ではなく、上記したいずれかの透明導電酸化物からなる、単層構造または積層構造の透明導電膜を利用することもできる。
<ガスバリアフィルム1の効果について>
以上の構成を有するガスバリアフィルム1では、フィルム積層体2の構成要素である基材10とガスバリア層20A(20B)、保護層30A(30B)のいずれもが耐熱性材料で構成されている。また、透明導電膜積層体3は無機材料から構成されているので十分な耐熱性を有する。従って、透明導電膜積層体3をなす各構成要素についてポストアニール処理を実施する際に、フィルム積層体2が熱損傷する問題を抑制でき、その結果として、完成後もガスバリアフィルム1において良好な諸性能(透明性、ガスバリア性、並びに通電性等)の発揮を期待できる。また、フィルム積層体2の熱損傷を回避する目的でアニール温度を過度に低く維持する制約もないため、透明導電膜積層体3の各構成要素の結晶度を向上させるために十分な加熱温度でポストアニール処理を実施することができる。
<ガスバリアフィルム1の効果について>
以上の構成を有するガスバリアフィルム1では、フィルム積層体2の構成要素である基材10とガスバリア層20A(20B)、保護層30A(30B)のいずれもが耐熱性材料で構成されている。また、透明導電膜積層体3は無機材料から構成されているので十分な耐熱性を有する。従って、透明導電膜積層体3をなす各構成要素についてポストアニール処理を実施する際に、フィルム積層体2が熱損傷する問題を抑制でき、その結果として、完成後もガスバリアフィルム1において良好な諸性能(透明性、ガスバリア性、並びに通電性等)の発揮を期待できる。また、フィルム積層体2の熱損傷を回避する目的でアニール温度を過度に低く維持する制約もないため、透明導電膜積層体3の各構成要素の結晶度を向上させるために十分な加熱温度でポストアニール処理を実施することができる。
なお、基材10が耐熱性を有していることから、ガスバリア層20A(20B)を熱硬化型樹脂材料で成膜する際に120℃程度の加熱処理を実施しても、基材10の変色や変形等の熱損傷・熱変質を防止できる効果も奏される。
また、フィルム積層体2が耐熱性を有することで、前記ポストアニール処理の際の加熱によって、当該フィルム積層体2が熱変形を生じてカールを発生するおそれも低減されており、良好な平坦性を維持することができる。
また、フィルム積層体2が耐熱性を有することで、前記ポストアニール処理の際の加熱によって、当該フィルム積層体2が熱変形を生じてカールを発生するおそれも低減されており、良好な平坦性を維持することができる。
なお、このようなカール発生の抑制効果は、フィルム積層体2が厚み方向に沿って、基材10を中心とする対称的な積層構造を有することでも発揮される。例えばガスバリア層20A(20B)、保護層30A(30B)のいずれかが環境温度等の影響で内部応力を発生しても、各々の内部応力は基材10を挟んで互いに反対の向きに作用するので、結果的に内部応力は相殺され、変形が防止される。ガスバリアフィルム1ではこのような理由によっても、カールの発生を効果的に抑制し、平坦性を維持することが可能になっている。
このような良好な平坦性を有するため、例えばガスバリアフィルム1をディスプレイ表面に配設して使用する場合において、ガスバリアフィルム1がディスプレイの駆動熱に曝されても、当該ガスバリアフィルム1がカールを発生して剥離することなく、ディスプレイ表面に良好に密着させることが期待できる。
さらにガスバリアフィルム1では、フィルム積層体2の最外面に配された保護層30A(30B)によって、ガスバリア層20A(20B)及び基材10が外部より適切に保護されている。特に基材10の材料である環状ポリオレフィン系材料は、製造工程で用いられるトルエン、キシレン等の各種有機溶剤に触れると化学反応により劣化する場合があるが、予め保護層30A(30B)を配設しておくことで耐溶剤性を付与でき、このような薬剤との直接接触による不具合を良好に回避できる。また、保護層30A(30B)をシロキサン系熱硬化型材料で構成することで、優れた耐熱性と適度な強度、並びにガスバリア層20A(20B)及びITO膜50A(50B)に対する密着性を得ることができる。その結果、高温環境下に長期曝しても、各構成要素の変形や変質・剥離等を防いで、ガスバリアフィルム1の良好な性能を維持できる。
さらにガスバリアフィルム1では、フィルム積層体2の最外面に配された保護層30A(30B)によって、ガスバリア層20A(20B)及び基材10が外部より適切に保護されている。特に基材10の材料である環状ポリオレフィン系材料は、製造工程で用いられるトルエン、キシレン等の各種有機溶剤に触れると化学反応により劣化する場合があるが、予め保護層30A(30B)を配設しておくことで耐溶剤性を付与でき、このような薬剤との直接接触による不具合を良好に回避できる。また、保護層30A(30B)をシロキサン系熱硬化型材料で構成することで、優れた耐熱性と適度な強度、並びにガスバリア層20A(20B)及びITO膜50A(50B)に対する密着性を得ることができる。その結果、高温環境下に長期曝しても、各構成要素の変形や変質・剥離等を防いで、ガスバリアフィルム1の良好な性能を維持できる。
また、透明導電膜積層体3では、耐腐食性に優れるAPC合金層40の採用に加え、APC合金層40を2つのITO膜50A、50Bで挟んでパッキングしている。この構造によりAPC合金層40は大気との接触が遮断され、大気中の酸化性ガスによる劣化を抑制できるので、安定した電気特性を維持する効果を期待できる。このようなITO膜50AによるAPC合金層40の保護構造を持つガスバリアフィルム1では、長期にわたり、上記した良好な平坦性及びガスバリア特性が得られるとともに、透明導電膜積層体3における優れた通電特性が期待できるものである。
なお、ガスバリアフィルム1では各種ディスプレイへの配設を想定しているため、各構成要素2、3をいずれも透明に形成している。しかしながら、透明性がそれほど要求されない場合は、不透明なガスバリアフィルムとして作製してもよい。
また、ガスバリアフィルム1では基材10の両面にガスバリア層20A(20B)及び保護層30A(30B)を形成したが、必要に合わせ、一方の主面にのみ、ガスバリア層及び保護層を形成してもよい。この場合、基材10を中心とする両面対象構造によるカール抑制効果は無いが、前述したように各構成要素が耐熱性材料で構成されているので、熱損傷・変形・変質や剥離等の不具合を防止するという上記効果は十分に期待できる。
また、ガスバリアフィルム1では基材10の両面にガスバリア層20A(20B)及び保護層30A(30B)を形成したが、必要に合わせ、一方の主面にのみ、ガスバリア層及び保護層を形成してもよい。この場合、基材10を中心とする両面対象構造によるカール抑制効果は無いが、前述したように各構成要素が耐熱性材料で構成されているので、熱損傷・変形・変質や剥離等の不具合を防止するという上記効果は十分に期待できる。
なお、基材10の一方の主面にのみガスバリア層及び保護層を形成した場合、他方の主面には保護層のみを形成してもよい。このような工夫により、基材10の表面を良好に保護する効果が期待できる。
<性能確認実験>
本発明の性能・効果を確認するため、以下の各実験を行った。
<性能確認実験>
本発明の性能・効果を確認するため、以下の各実験を行った。
(保護層密着実験)
保護層の材料が異なるサンプルA〜Dを作製し、SiOx系材料からなるガスバリア層との密着性について調べた。
サンプルA(実施例);基材として、環状オレフィンとエチレンとの共重合比が82:18であり、ガラス転移温度が180℃以上の環状オレフィンの付加(共)重合体からなるフィルム(厚み100μm)を用意した。前記基材の上に、SiOxからなる膜厚80nmのガスバリア層をスパッタ装置(ULVAC社製SPW−020S)にて成膜した。具体的な成膜条件を表1に示す。ここでは10−4Pa台まで真空引きを行った後、アルゴンガスおよび酸素ガスを導入してSiターゲットを用いて反応性スパッタリングを実施した。
保護層の材料が異なるサンプルA〜Dを作製し、SiOx系材料からなるガスバリア層との密着性について調べた。
サンプルA(実施例);基材として、環状オレフィンとエチレンとの共重合比が82:18であり、ガラス転移温度が180℃以上の環状オレフィンの付加(共)重合体からなるフィルム(厚み100μm)を用意した。前記基材の上に、SiOxからなる膜厚80nmのガスバリア層をスパッタ装置(ULVAC社製SPW−020S)にて成膜した。具体的な成膜条件を表1に示す。ここでは10−4Pa台まで真空引きを行った後、アルゴンガスおよび酸素ガスを導入してSiターゲットを用いて反応性スパッタリングを実施した。
そして当該ガスバリア層上にメイヤーバーを用いて、シロキサン系熱硬化型樹脂材料であるNSC−2451(日本精化製)を塗工し、120℃90秒の条件で乾燥させることにより、膜厚3μmの保護層を形成した。
サンプルB(比較例);上記基材のガスバリア層上に、メイヤーバーを用いてZ−7531(JSR製)を塗工し、60℃で90秒乾燥させ、1000mJ/cm2の照度でUV照射することにより、膜厚3μmの保護層を形成した。
サンプルB(比較例);上記基材のガスバリア層上に、メイヤーバーを用いてZ−7531(JSR製)を塗工し、60℃で90秒乾燥させ、1000mJ/cm2の照度でUV照射することにより、膜厚3μmの保護層を形成した。
サンプルC(比較例);上記基材のガスバリア層上に、メイヤーバーを用いて、ルシフラールNAB−007(日本ペイント製)を塗工し、60℃で90秒乾燥させて1000mJ/cm2の照度でUV照射することにより、膜厚3μmの保護層を形成した。
サンプルD(比較例);上記基材のガスバリア層上に、メイヤーバーを用いてアロニックスLCR0903(東亜合成製)を塗工し、60℃で90秒乾燥させて、1000mJ/cm2の照度でUV照射することにより、膜厚3μmの保護層を形成した。
サンプルD(比較例);上記基材のガスバリア層上に、メイヤーバーを用いてアロニックスLCR0903(東亜合成製)を塗工し、60℃で90秒乾燥させて、1000mJ/cm2の照度でUV照射することにより、膜厚3μmの保護層を形成した。
これらのサンプルA〜Dの保護層について、クロスカットテープ試験(JIS−K−5600)を実施した。その結果を表2に示す。
表2に示すように、比較例B〜Dにおいて剥離が確認された。実施例のサンプルAでは剥離は全く確認されなかった。
この結果から、少なくともガスバリア層をSiOxで構成した場合は、UV硬化型樹脂材料を用いて保護層を構成すると密着性が優れず、サンプルAのようにシロキサン系熱硬化型樹脂材料で保護層を構成すれば、前記ガスバリア層に対して良好な密着性を発揮できることが分かった。
この結果から、少なくともガスバリア層をSiOxで構成した場合は、UV硬化型樹脂材料を用いて保護層を構成すると密着性が優れず、サンプルAのようにシロキサン系熱硬化型樹脂材料で保護層を構成すれば、前記ガスバリア層に対して良好な密着性を発揮できることが分かった。
このような結果が得られた理由は次のように考えられる。すなわちサンプルB〜Dにおいて、SiOx系ガスバリア層との密着性が優れなかったUV硬化樹脂は、アクリレート系分子等で構成され、開始剤が炭素原子の二重結合を切って架橋することで硬化している。このようにUV硬化樹脂の成分及び構造がガスバリア層の組成と大きく違うため、両者の密着性が低くなったものと推測される。
一方、サンプルAでは、保護層を構成するNSC−2451(シロキサン系熱硬化型樹脂)は、Si骨格を有しており、この点でガスバリア層にも含まれるSiと共通した成分を有している。これにより、サンプルAの保護層とガスバリア層とは優れた密着性を発揮するものと考えられる。或いは、保護層中にガスバリア層のSiと良好な結合性を有する有機成分が含まれている可能性も考えられる。このように本発明で良好な密着性が得られる正確な理由は特定が難しいが、優れた密着性が得られることは確かである。
(保護層耐薬品性実験)
先の試験同様に、サンプルA(実施例)を作成する要領で、所定の基材の表面に、シロキサン系熱硬化樹脂材料であるNSC−2451をメイヤーバーを変えて膜厚を150nm程度から7μmまでに変化させたサンプルNo.1〜6を作成した。この各サンプルに対してトルエンとキシレンの耐溶剤性および塩酸(濃度35%)、シュウ酸(濃度3%)、塩化第二鉄溶液(濃度39%)での耐酸性および水酸化ナトリウム水溶液(濃度2%)での耐アルカリ性を確認した。評価方法は、トルエンとキシレンは保護層上にポリスポイトで2滴液滴し、5分間放置した。塩酸水溶液や水酸化ナトリウム水溶液などは5分間浸漬を行った。
先の試験同様に、サンプルA(実施例)を作成する要領で、所定の基材の表面に、シロキサン系熱硬化樹脂材料であるNSC−2451をメイヤーバーを変えて膜厚を150nm程度から7μmまでに変化させたサンプルNo.1〜6を作成した。この各サンプルに対してトルエンとキシレンの耐溶剤性および塩酸(濃度35%)、シュウ酸(濃度3%)、塩化第二鉄溶液(濃度39%)での耐酸性および水酸化ナトリウム水溶液(濃度2%)での耐アルカリ性を確認した。評価方法は、トルエンとキシレンは保護層上にポリスポイトで2滴液滴し、5分間放置した。塩酸水溶液や水酸化ナトリウム水溶液などは5分間浸漬を行った。
その後、蛍光灯を用いて目視でサンプルの外観変化(透過性、反射性)を確認した。その結果を表3に示す。表3中、サンプルNo.7は比較例として用意した未塗工基材である。
まず、サンプルNo.1〜6のすべてにおいて、少なくともキシレンを除く上記全ての薬品に対する一定の耐薬性が確認された。これによりシロキサン系熱硬化樹脂材料を用いることでフィルムに良好な耐薬性を付与できることが期待できる。一方、保護層の膜厚が150nm程度ではキシレンの耐性が安定しないが、膜厚300nm以上で、少なくとも上記した薬品全ての耐性が得られようになる。
このように、シロキサン系熱硬化樹脂の保護層を用いれば、基材となる環状ポリオレフィンフィルムとガスバリア層を保護でき、電極のエッチングなどの後工程に対する耐性が得られる。
(透明導電膜積層体の光学特性について)
ITO/APC/ITOの積層構造を持つ透明導電膜積層体について、物理膜厚及び光学膜厚を変化させたときの可視光(550nm)透過率及び反射率の変化を光学シミュレーションで調べた。対象とするサンプルはガラス基板に前記透明導電膜積層体を各層の厚みを変化させて積層して得た。
(透明導電膜積層体の光学特性について)
ITO/APC/ITOの積層構造を持つ透明導電膜積層体について、物理膜厚及び光学膜厚を変化させたときの可視光(550nm)透過率及び反射率の変化を光学シミュレーションで調べた。対象とするサンプルはガラス基板に前記透明導電膜積層体を各層の厚みを変化させて積層して得た。
光学シミュレーションはThin Film Center Inc.製「The Essential Macleod ver.8.19.271」を用いて実施した。APCはAgのライブラリーを使用した。
各サンプルの膜厚と測定結果を表4に示す。表4中、単位はnmである。また、「%T」は波長550nmの可視光透過率(%)、「%R」は波長550nmの可視光反射率(%)をそれぞれ示す。
各サンプルの膜厚と測定結果を表4に示す。表4中、単位はnmである。また、「%T」は波長550nmの可視光透過率(%)、「%R」は波長550nmの可視光反射率(%)をそれぞれ示す。
光学膜厚とは、屈折率と物理膜厚を乗算して得られる膜厚(n・d)で、
関係式(n・d=m・λ)が成り立つ。
(n:屈折率、d:物理膜厚、m:整数、λ:光学中心波長)
ここでは、光学中心波長を500nmとして、その波長でのITO膜およびAPC合金膜の屈折率を2.06および0.05とした。
関係式(n・d=m・λ)が成り立つ。
(n:屈折率、d:物理膜厚、m:整数、λ:光学中心波長)
ここでは、光学中心波長を500nmとして、その波長でのITO膜およびAPC合金膜の屈折率を2.06および0.05とした。
表4に示すシミュレーション結果から、透過率を増加させるためには、ITO膜の光学膜厚を0.02λ〜0.3λの範囲が望ましく、さらに反射率も効果的に低減させるためには0.04λ〜0.25λの範囲が好適であると言える。
これを物理膜厚として言い換えると、ITO膜は10〜70nmの膜厚範囲が好適である。
(APC合金層及びITO膜の膜厚に対する面積抵抗値及び透過率の関係)
最初に、ITO膜をスパッタ成膜する際の最適なO2流量の検討を行った。
これを物理膜厚として言い換えると、ITO膜は10〜70nmの膜厚範囲が好適である。
(APC合金層及びITO膜の膜厚に対する面積抵抗値及び透過率の関係)
最初に、ITO膜をスパッタ成膜する際の最適なO2流量の検討を行った。
この成膜時の検討では、ITO膜の成膜条件としては、水準7のO2流量が最も効率的であることが分かった。
次に、上記水準7で検討したITO膜成膜時のO2流量条件を用い、ITO膜及びAPC合金層の成膜条件を変化させたサンプル1〜12(ITO/APC/ITO/膜厚125μmPET積層体)を作製した。各サンプル1〜12のITO膜,APC合金層の成膜(スパッタ)装置の設定条件は表4の通りとした。なお、表6の設定条件ではITO膜の狙い膜厚を30nm、APCの狙い膜厚を10nmにそれぞれ設定しているが、その他のサンプルについては狙い膜厚以外の条件を同様に設定した。
次に、上記水準7で検討したITO膜成膜時のO2流量条件を用い、ITO膜及びAPC合金層の成膜条件を変化させたサンプル1〜12(ITO/APC/ITO/膜厚125μmPET積層体)を作製した。各サンプル1〜12のITO膜,APC合金層の成膜(スパッタ)装置の設定条件は表4の通りとした。なお、表6の設定条件ではITO膜の狙い膜厚を30nm、APCの狙い膜厚を10nmにそれぞれ設定しているが、その他のサンプルについては狙い膜厚以外の条件を同様に設定した。
各サンプルのITO膜、APC合金層膜厚や成膜速度等、詳細な成膜条件は以下のように設定した。
上記作製した各サンプルNo.1〜12の膜厚とアニール処理前後の面抵抗及び可視光透過率等の特性をまとめて以下の表に示す。アニール処理は温風循環式オーブンを用い、160℃で30分加熱して実施した。表中、「ITO A」はPETとAPC合金層の間に介設されたもの、「ITO B」は最上層に配設されたものを示す。
表9のサンプルNo.13〜15に示すように、APC合金層の膜厚を増大させると抵抗値を下げられるが、これに伴って透過率が顕著に低下するので注意が必要である。一方、サンプルNo.7と13、16は、ITO膜の膜厚を薄くしても抵抗値はほとんど変わらないが、透過率が低下することが分かる。
このように、抵抗値と透明性についてはITO膜に比べてAPC合金層の特性が支配的であるので、ITO膜の膜厚は適度に保ちつつ、APC合金層の膜厚を透過率が低下しすぎないように調整すれば、ITO膜による一定の反射防止性を発揮させつつ、低抵抗性及び透明性の両方に優れる透明導電膜積層体を得ることができると考えられる。
このように、抵抗値と透明性についてはITO膜に比べてAPC合金層の特性が支配的であるので、ITO膜の膜厚は適度に保ちつつ、APC合金層の膜厚を透過率が低下しすぎないように調整すれば、ITO膜による一定の反射防止性を発揮させつつ、低抵抗性及び透明性の両方に優れる透明導電膜積層体を得ることができると考えられる。
以上の表9に示す結果から、表面抵抗(Rs)を10Ω/□以下にするためには、APC合金層の物理膜厚を10nm以上に設定することが望ましい。具体的には、APC合金層は10〜30nmの膜厚範囲が好適であると言える。
(透明導電膜積層体の湿熱比較試験)
次に、透明導電膜積層体を用いた場合と、APC合金層のみを用いた場合の湿熱耐性について確認試験を行った。
(透明導電膜積層体の湿熱比較試験)
次に、透明導電膜積層体を用いた場合と、APC合金層のみを用いた場合の湿熱耐性について確認試験を行った。
実施例としては図1に示す構成を基本とし、ITO B/APC/ITO A/保護層/ガスバリア層/基材/ガスバリア層/保護層の積層構造に設定した。
比較例としては、APC/保護層/ガスバリア層/基材/ガスバリア層/保護層の積層構造に設定した。
ITO膜は膜厚30nmのスパッタ膜とした。APC合金層は膜厚10nmのスパッタ膜とした。
比較例としては、APC/保護層/ガスバリア層/基材/ガスバリア層/保護層の積層構造に設定した。
ITO膜は膜厚30nmのスパッタ膜とした。APC合金層は膜厚10nmのスパッタ膜とした。
保護層は、シロキサン系熱硬化型樹脂(HC剤)である日本精化株式会社製の「NSC−2451」を最終膜厚が3μmになるようにグラビアコーターで塗布し形成した。
ガスバリア層はSiOx系材料を用い、膜厚80nmのスパッタ膜として形成した。
基材は環状オレフィンとエチレンとの共重合比が82:18〜90:10であり、ガラス転移温度が180℃以上の環状オレフィンの付加(共)重合体からなるフィルム(厚み100μm)を用いた。これらのサンプルを100℃大気下または60℃90%RH雰囲気下にそれぞれ載置し、48時間継続して載置し場合における各特性変化を、当該載置前の特性と比較した。
ガスバリア層はSiOx系材料を用い、膜厚80nmのスパッタ膜として形成した。
基材は環状オレフィンとエチレンとの共重合比が82:18〜90:10であり、ガラス転移温度が180℃以上の環状オレフィンの付加(共)重合体からなるフィルム(厚み100μm)を用いた。これらのサンプルを100℃大気下または60℃90%RH雰囲気下にそれぞれ載置し、48時間継続して載置し場合における各特性変化を、当該載置前の特性と比較した。
この実施例及び比較例の特性について、以下の表10、11に示す。各表中、「密着」とは、クロスカットテープ試験(JIS−K−5600)による密着性評価を示す。
この表10に示すように、実施例については、いずれの試験の実施後も抵抗値の上昇、透過率の劣化、および外観変化のいずれの項目も目立った乱れが確認されず、良好な安定性を有していることが分かった。
表11に示すように、比較例では試験実施後に抵抗値の上昇、透過率の劣化、外観変化が確認され、性能の安定性の面において実施例よりも劣ることが明らかになった。
この結果から、透明導電膜としてAPC合金を用いる場合は、単層として用いるよりも、APC合金の両面をITO等の透明導電膜でパッキングした積層体として用いれば、過酷な使用環境下においても当初の良好な性能を維持できるものと考えられる。
この結果から、透明導電膜としてAPC合金を用いる場合は、単層として用いるよりも、APC合金の両面をITO等の透明導電膜でパッキングした積層体として用いれば、過酷な使用環境下においても当初の良好な性能を維持できるものと考えられる。
以上の各実験結果より、本発明が有する優位性が確認された。
本発明の透明導電膜付ガスバリアフィルムは、例えば有機ELディスプレイや液晶ディスプレイ等のFPDの表面、または電子ペーパー、太陽電池に組み込んだり、携帯電話機やノート型パソコン等の電子機器用タッチパネル、或いは各種券売機、キャッシュディスペンサーの表示面に配設する等、幅広い利用が可能である。
1 透明導電膜付ガスバリアフィルム
2 フィルム積層体
3 透明導電膜積層体
10 基材
20A、20B ガスバリア層
30A、30B 保護層
40 APC合金層(Ag―Pd―Cu系合金層)
50A、50B ITO膜
2 フィルム積層体
3 透明導電膜積層体
10 基材
20A、20B ガスバリア層
30A、30B 保護層
40 APC合金層(Ag―Pd―Cu系合金層)
50A、50B ITO膜
Claims (8)
- フィルム積層体上に透明導電膜が積層された構成を有する透明導電膜付ガスバリアフィルムであって、
前記フィルム積層体は、環状ポリオレフィン系材料からなる基材に対し、その少なくとも一方の主面に、ガスバリア層及び当該ガスバリア層を保護する保護層が同順に積層されて構成され、
保護層は、熱硬化型樹脂材料で構成され、
ガスバリア層は、有機層または物理気相成長法によって形成された無機層の少なくともいずれかを含んでなる
ことを特徴とする透明導電膜付ガスバリアフィルム。 - 透明導電膜は、Ag―Pd―Cu系合金層に対し、その両主面に透明導電酸化物を積層した積層体である
ことを特徴とする請求項1に記載の透明導電膜付ガスバリアフィルム。 - 保護層は、シロキサン系熱硬化型樹脂材料で構成されている
ことを特徴とする請求項1または2に記載の透明導電膜付ガスバリアフィルム。 - シロキサン系熱硬化型樹脂材料は、ポリビニルアルコール、エチレン酢酸ビニル共重合体、スチレンブタジエン共重合体、酢酸ビニル、ポリビニルアセタール、アクリル酸エステル系樹脂、アクリルアミド系樹脂、ポリエステル系樹脂等の内のいずれか1種以上を含む
ことを特徴とする請求項3に記載の透明導電膜付ガスバリアフィルム。 - 保護層は、120〜180℃の加熱により熱硬化されたものである
ことを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の透明導電膜付ガスバリアフィルム。 - 無機層は、ケイ素化合物、アルミニウム、ジルコニウム、タンタル、ニオブ、亜鉛、錫、インジウム化合物の内のいずれか1種以上の酸化物、酸窒化物、窒化物を含んで構成されている
ことを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の透明導電膜付ガスバリアフィルム。 - 無機層は、真空薄膜形成法で形成されている
ことを特徴とする請求項6に記載の透明導電膜付ガスバリアフィルム。 - 有機層は、紫外線硬化樹脂成分または熱硬化型樹脂成分の一方または両方を含んで構成されている
ことを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の透明導電膜付ガスバリアフィルム。
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