JP2011159453A - 酸化物超電導薄膜の製造方法 - Google Patents

酸化物超電導薄膜の製造方法 Download PDF

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賢宏 種子田
Takeshi Nakanishi
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Abstract

【課題】コスト的に有利なFF−MOD法を用いて酸化物超電導薄膜を製造するに際して、1層当たりの仮焼膜の厚さが厚い場合でも、発泡やクラックの発生が抑制された仮焼膜を形成することができ、効率的に、高Icの酸化物超電導薄膜を製造することが可能な製造方法を提供する。
【解決手段】フッ素を含まない金属有機化合物を原料とし、塗布熱分解法を用いて製造する酸化物超電導薄膜の製造方法であって、酸化物超電導薄膜の前駆体である仮焼膜を形成するに際して、金属有機化合物の各々に含有される有機成分が熱分解を起こす温度近傍で加熱して、各金属有機化合物に含有される有機成分を熱分解させて除去する熱処理を、低温側から段階的に行い、その後、さらに高温での熱処理を行って、残存する炭素を分解、除去する。
【選択図】なし

Description

本発明は、酸化物超電導線材の製造に用いられる酸化物超電導薄膜の製造方法に関し、詳しくは、フッ素を含まない金属有機化合物を原料とし、塗布熱分解法を用いて製造する酸化物超電導薄膜の製造方法に関する。
酸化物超電導薄膜を用いた超電導線材の一層の普及のため、臨界電流密度Jcや臨界電流値Icをより高めた酸化物超電導薄膜の製造の研究が行われている。
このような酸化物超電導薄膜の製造方法の1つに、塗布熱分解法(Metal Organic Deposition、略称:MOD法)と言われる方法がある(特許文献1)。この方法は、RE(希土類元素)、Ba(バリウム)、Cu(銅)の各金属有機化合物を溶媒に溶解して製造された原料溶液(以下、「MOD溶液」とも言う)を基板に塗布した後、金属有機化合物を例えば500℃付近で熱処理(仮焼)し、含有する有機成分を熱分解させて除去して、酸化物超電導薄膜の前駆体である仮焼膜を形成し、得られた仮焼膜(以下、「MOD仮焼膜」とも言う)をさらに高温(例えば、750℃〜800℃)で熱処理(本焼)することにより結晶化を行って酸化物超電導薄膜を製造するものであり、主に真空中で製造される気相法(蒸着法、スパッタ法、パルスレーザ蒸着法等)に比較して製造設備が簡単で済み、また大面積や複雑な形状への対応が容易である等の特徴を有している。
上記塗布熱分解法としては、原料としてフッ素を含む有機酸塩を用いるTFA−MOD法(Metal Organic Deposition using TriFluoro Acetates)とフッ素を含まない金属有機化合物を用いるフッ素フリーMOD法(以下、「FF−MOD法」とも言う)とがある。
TFA−MOD法を用いると、面内配向性に優れた酸化物超電導薄膜を得ることができる。しかし、このTFA−MOD法では、仮焼成時にフッ化物であるBaF(フッ化バリウム)が生成され、このBaFが本焼成時に分解して危険なフッ化水素ガスを発生する。このため、フッ化水素ガスを処理する装置、設備が必要となる。
これに対して、FF−MOD法は、フッ化水素ガスのような危険なガスを発生することがないため、特殊な処理設備が不要であり、製造設備は汎用品で対応することが可能となり、線材の低コスト化を図ることができるという利点を有している。
このようなMOD法を用いて、より高いIcの酸化物超電導薄膜を得ようとするためには、膜厚を厚くすることが重要であり、塗布と仮焼を繰り返すことで仮焼膜を積層して厚膜の仮焼膜とした後、本焼を行って厚膜の酸化物超電導薄膜とする方法が、従来より採られている。そして、工程数を低減して効率的な生産を図るため、1層当たりの仮焼膜の厚さを厚くすることにより、少ない積層回数で厚膜の仮焼膜を得ることが検討されていた。
しかし、従来のMOD法においては、1層当たりの仮焼膜の厚さを0.2μm以上にすると、仮焼膜が発泡したり、仮焼膜にクラックが生じたりするという問題の発生が避けられなかった。発泡したり、クラックが生じたりした仮焼膜を本焼した場合、安定な結晶化を行うことができず、高Icの酸化物超電導薄膜を得ることができない。
特公平7−106905号公報
そこで、本発明は、MOD法の内でもコスト的に有利なFF−MOD法を用いて酸化物超電導薄膜を製造するに際して、1層当たりの仮焼膜の厚さが厚い場合でも、発泡やクラックの発生が抑制された仮焼膜を形成することができ、効率的に、高Icの酸化物超電導薄膜を製造することが可能な製造方法を提供することを課題とする。
本発明者は、上記課題に鑑み、鋭意研究の結果、FF−MOD法を用いた酸化物超電導薄膜の製造に際して、酸化物超電導薄膜の前駆体であるMOD仮焼膜を形成させる仮焼熱処理工程として、従来のように、例えば500℃付近という1つの温度で、原料が含有する有機成分を一度に熱分解させて除去するのではなく、各々の金属有機化合物が熱分解を起こす温度で、各金属有機化合物を熱分解させる熱処理を段階的に行い、さらにその後残存する炭素を熱分解させる熱処理を行うことにより、上記課題が解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
以下、各請求項の発明について説明する。
請求項1に記載の発明は、
酸化物超電導線材の製造に用いる酸化物超電導薄膜を、フッ素を含まない金属有機化合物を原料とし、塗布熱分解法を用いて製造する酸化物超電導薄膜の製造方法であって、
酸化物超電導薄膜の前駆体である仮焼膜を形成するに際して、
前記金属有機化合物の各々に含有される有機成分が熱分解を起こす温度近傍で加熱して、各金属有機化合物に含有される有機成分を熱分解させて除去する熱処理を、低温側から段階的に行い、
その後、さらに高温での熱処理を行って、残存する炭素を分解、除去する
ことを特徴とする酸化物超電導薄膜の製造方法である。
本発明者は、最初に、従来のFF−MOD法において、1層当たりの仮焼膜の厚さを厚くした場合、仮焼膜が発泡したり、仮焼膜にクラックが生じたりする原因につき検討を行った。その結果、従来は、仮焼熱処理工程において、例えば500℃付近の温度で、各金属有機化合物が含有する有機成分を一度に熱分解させて除去していたが、この熱処理が発泡やクラックを生じさせていたことが分かった。
即ち、原料である金属有機化合物は、REの有機化合物、Baの有機化合物、Cuの有機化合物というように複数種類の金属有機化合物が用いられるが、通常、各々の熱分解温度は異なっている。それにも拘わらず、従来のFF−MOD法では、これらの各熱分解温度を上回る温度で一度に熱分解させて除去していたため、全ての金属有機化合物が急激に熱分解されて発泡が生じると共に、急激な有機成分の除去により塗布膜に急激な収縮が起こりクラックが生じていることが分かった。
そこで、本請求項の発明においては、各々の金属有機化合物に含有される有機成分が熱分解を起こす温度近傍で段階的に加熱して、各金属有機化合物に含有される有機成分を順次熱分解させて除去している。
このため、金属有機化合物に含有される有機成分の熱分解は、従来のように急激なものとはならず、発泡やクラックの発生が抑制された仮焼膜を得ることができる。
なお、熱処理は、低温側から段階的に行う。これは、高温側から熱処理を行うと、熱分解温度が低い有機成分が急激に熱分解されて発泡するためである。
本請求項の発明においては、前記のような熱処理の後、さらに高温での熱処理を行っている。これは、残存する炭素を分解、除去するためである。
このように、段階的に緩やかな熱処理によって、各有機成分を熱分解して除去すると共に、残存する炭素も熱分解して除去しているため、発泡やクラックの発生が抑制された1層当たりの膜厚が厚い仮焼膜を得ることが可能となる。そして、これを繰り返すことにより、このような発泡やクラックの発生が抑制された膜厚が厚い仮焼膜を積層することができ、その結果、効率的に高Icの酸化物超電導薄膜を製造することができる。
なお、前記した各熱処理は、階段状に温度を上昇させて連続的に行っても良いが、途中の段階の熱処理後、一旦室温まで戻し、その後、残りの熱処理を行っても良い。
フッ素を含まない金属有機化合物としては、希土類元素RE、バリウムBa、銅Cuの各金属有機化合物が、カルボキシル基を有する金属塩(ナフテン酸塩、オクチル酸塩、ネオデカン酸塩、イソノナン酸塩等)、アミノ基を有するアミン類金属塩、アミノ基およびカルボキシル基からなるアミノ酸金属塩、硝酸塩、金属アルコキシド、アセチルアセトナート等の形で用いられる。これらの内、アセチルアセトナート等のβジケトン錯体が好ましい。
REとしては、イットリウムY、プラセオジムPr、ネオジムNd、サマリウムSm、ユウロピウムEu、ガドリニウムGd、ホルミウムHo、イッテルビウムYb等を挙げることができるが、実用的には、Y、Gd、Hoが用いられ、それぞれ、YBCO薄膜、GdBCO薄膜、HoBCO薄膜が得られる。
次に、本発明者は、これらYBCO薄膜、GdBCO薄膜、HoBCO薄膜を本発明に係る酸化物超電導薄膜の製造方法を用いて製造する際の、各金属有機化合物の具体的な熱分解温度につき検討を行った。
即ち、これらのMOD溶液の塗布膜を用いて、DTA測定(示差熱測定)を行った。その結果、250℃〜350℃および410℃〜450℃に発熱ピークが観測され、250℃〜350℃ではCu有機化合物の熱分解が起こり、410℃〜450℃ではRE(Y、Gd、Ho)有機化合物およびBa有機化合物の熱分解が起こっていることが分かった。
これにより、各金属有機化合物の熱分解は、まず250℃〜350℃(第1の温度)で行い、次いで410℃〜450℃(第2の温度)で行うことが好ましいことが分かる。このような温度に従って、各金属有機化合物の熱分解温度に分けて、低温側から高温側に段階的に熱処理を施すことにより、各金属有機化合物に含有された有機成分を緩やかに熱分解して除去できるため、MOD仮焼膜に発泡やクラックが生じることがない。
そして、YBCO薄膜、GdBCO薄膜、HoBCO薄膜の場合には、上記したように、RE(Y、Gd、Ho)有機化合物の熱分解温度とBa有機化合物の熱分解温度はほぼ同じであるため、有機成分の熱分解のための熱処理は、合計2つの温度で行われることになる。
なお、410℃〜450℃での熱処理は、水蒸気雰囲気下で行うことが好ましい。水蒸気雰囲気とすることにより、分解されたBaは水酸化バリウムBa(OH)となる。このBa(OH)は融点が408℃であり、前記の温度範囲では液相を呈するため、前記した熱分解により除去された有機成分が引き起こす塗布膜の収縮は、膜厚方向にのみ生じることとなり、クラックの発生が抑制される。好ましい水蒸気雰囲気は、露点20℃程度である。
次に、前記の仮焼膜の形成に続いて、450℃〜600℃の温度で熱処理を行う。各金属有機化合物に含有された有機成分が熱分解されても、炭素はすぐに二酸化炭素として膜中から脱離する訳ではなく、炭素−炭素結合を持った化合物の状態で残っている。この状態で本焼処理を施すと、配向性の良い結晶成長が得られず、高Icの酸化物超電導薄膜とすることができない。このため、450℃以上の温度で熱処理を施して、炭素の分解を行い除去する。しかし、600℃を超えると、金属酸化物の結晶化が起こり、本焼時の結晶成長を阻害するため、450℃〜600℃の温度で熱処理を施す。
このように、YBCO薄膜、GdBCO薄膜、HoBCO薄膜をFF−MOD法により製造するに際して、250℃〜350℃を第1の温度、410℃〜450℃を第2の温度、そして450℃〜600℃を第3の温度として、各温度範囲内で熱処理を段階的に施すことにより、発泡やクラックがなく、炭素-炭素結合を持った化合物も含有されていないMOD仮焼膜を得ることができ、このMOD仮焼膜を本焼処理することにより、高Icの酸化物超電導薄膜を得ることができる。
なお、各熱処理は、各金属有機化合物を充分に分解させる、またはカーボンを充分に分解させるためには、ある程度の熱処理時間を必要とする。具体的には、各熱処理に要する時間として、10〜300分程度が望ましい。300分を超える長時間、熱処理を行っても良いが、各金属有機化合物やカーボンが充分に分解された後は、意味のない加熱となり、製造速度を低下させることとなるため、望ましくない。
なお、基板としては、最上層を構成する結晶が2軸配向していることが好ましい。2軸配向している基板の上に超電導層を形成させることにより配向性のよい結晶が成長する。
本発明者は、上記に示した知見に基づく発明を、以下の請求項2〜6として請求する。
即ち、請求項2に記載の発明は、
前記酸化物超電導薄膜が、YBCO薄膜、GdBCO薄膜、HoBCO薄膜のいずれかであることを特徴とする請求項1に記載の酸化物超電導薄膜の製造方法である。
請求項3に記載の発明は、
前記金属有機化合物に含有される有機成分を熱分解させて除去する第1の熱処理温度が、250℃〜350℃であることを特徴とする請求項2に記載の酸化物超電導薄膜の製造方法である。
請求項4に記載の発明は、
前記金属有機化合物に含有される有機成分を熱分解させて除去する第2の熱処理温度が、410℃〜450℃であることを特徴とする請求項2または請求項3に記載の酸化物超電導薄膜の製造方法である。
請求項5に記載の発明は、
前記各金属有機化合物に含有される有機成分を熱分解させて除去する熱処理を行った後に行われる残存する炭素を熱分解させて除去する熱処理温度が、450℃〜600℃であることを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載の酸化物超電導薄膜の製造方法である。
請求項6に記載の発明は、
前記各金属有機化合物に含有される有機成分を熱分解させて除去する熱処理、および炭素を熱分解させて除去する熱処理の処理時間が、10〜300分であることを特徴とする請求項1ないし請求項5のいずれか1項に記載の酸化物超電導薄膜の製造方法である。
請求項7に記載の発明は、
前記酸化物超電導薄膜が、YBCO薄膜であることを特徴とする請求項1ないし請求項6のいずれか1項に記載の酸化物超電導薄膜の製造方法である。
前記したYBCO薄膜、GdBCO薄膜、HoBCO薄膜の内でも、YBCO薄膜の製造において、上記の各効果が最も発揮される。
請求項8に記載の発明は、
前記炭素を熱分解させて除去する熱処理後の仮焼膜の膜厚が、0.2μm以上であることを特徴とする請求項1ないし請求項6のいずれか1項に記載の酸化物超電導薄膜の製造方法である。
本発明は、0.2μm以上の膜厚の場合において発生していた発泡やクラックの発生が抑制された仮焼膜を得ることができる。このように、本発明は、0.2μm以上の膜厚において大きな効果を発揮する。
本発明によれば、MOD法の内でもコスト的に有利なFF−MOD法を用いて酸化物超電導薄膜を製造するに際して、1層当たりの仮焼膜の厚さが厚い場合でも、発泡やクラックの発生が抑制された仮焼膜を形成することができ、効率的に、高Icの酸化物超電導薄膜を製造することが可能な製造方法を提供することができる。
FF−MOD法によりYBCO薄膜を作製する過程におけるDTA測定結果を示す図である。
以下、本発明を実施の形態に基づいて説明する。なお、本発明は、以下の実施の形態に限定されるものではない。本発明と同一および均等の範囲内において、以下の実施の形態に対して種々の変更を加えることが可能である。
本実施の形態は、FF−MOD法によりY123で示されるYBCO薄膜(Y−Ba−Cu−Oよりなり、Y:Ba:Cuのモル比が1:2:3である酸化物超電導薄膜)の作製に関し、予め各金属錯体の分解温度をDTA(示差熱分析)法により調査し、調査結果を参考に仮焼熱処理の条件を種々設定してYBCO薄膜を作製した実験例である。以下に、DTA測定および実験例(実施例及び比較例)について説明する。
1.DTA測定結果
Y、BaおよびCuのアセチルアセトナート錯体をモル比で1:2:3で混合した混合物を原料として作製したMOD溶液の塗布膜を用意し、DTA測定を行なった。
図1は、FF−MOD法によりYBCO薄膜を作製する過程におけるDTA測定結果を示す図である。図1において、250℃〜350℃と410℃〜450℃に発熱ピークが観測された。図1より250℃〜350℃においてCu錯体の熱分解が起きていることが分かる。
また、410℃〜450℃においてY錯体とBa錯体の熱分解が起きていることが分かる。
2.YBCO薄膜の作製
次に、上記を参考にして実際にYBCO薄膜を作製した。以下に実験の内容と実験結果について説明する。
イ.塗布
基板として、CeO/YSZ/CeO/Ni合金の基板を用い、この基板上に、Y、Ba、Cuの各アセチルアセトナート錯体を、Y:Ba:Cuのモル比が1:2:3となるように調整して溶媒(メタノール)に溶解した原料溶液をスピンコート法により塗布して塗布膜を作製した。
ロ.仮焼熱処理
次に、作製した塗布膜を、各種熱処理条件下で1段階のみの熱処理、2段階の熱処理および3段階の熱処理を行い、膜厚が400〜500nmの仮焼膜を作製した。1段階のみの熱処理条件、2段階の熱処理の熱処理条件、3段階の熱処理の熱処理条件をそれぞれ表1、表2、表3に示す。また、各段階の熱処理の保持時間を変えた実験の熱処理条件を表4に示す。
ハ、中間熱処理および本焼熱処理
次に、仮焼膜にアルゴン/酸素混合ガス(酸素濃度:100ppm、CO濃度:1ppm以下)雰囲気の下、680℃で90分間の中間熱処理を施し、その後、同じくアルゴン/酸素混合ガス(酸素濃度:100ppm)雰囲気の下、770℃で10分間の本焼熱処理(結晶化熱処理)を施した後、酸素濃度100%雰囲気中で炉冷を行ってYBCO薄膜(本焼膜)を作製した。
3.評価
イ.評価方法
a.仮焼膜の評価
仮焼熱処理終了後、作製した仮焼膜の表面を観察して発泡とクラックの有無を調べた。
b.YBCO薄膜(本焼膜)の評価
77K、自己磁場下において、作製したYBCO薄膜の超電導特性(Ic)を測定した。
ロ.評価結果
各実験例の仮焼熱処理の熱処理条件と評価結果を表1〜4に示す。
なお、表1〜4において、仮焼熱処理を3段階で行い、各段階の熱処理条件が以下の条件を満たす実験例が本発明の実施例である。
1段階目:熱処理温度 250℃〜350℃
2段階目:熱処理温度 410℃〜450℃
3段階目:熱処理温度 500℃〜600℃
a.1段階のみの熱処理
はじめに、仮焼熱処理を1段階のみの熱処理で実施した場合の熱処理条件と評価結果を説明する。各実験例の熱処理条件と評価結果を表1に示す。なお、表1において実験例1は、従来技術の熱処理条件で仮焼熱処理を実施した実験例である。
Figure 2011159453
表1より、実験例2〜4のように350℃以下で熱処理を行った場合には、発泡もクラックも生じておらず、一方、実験例5および実験例1のように400℃以上で熱処理を行った場合には発泡が発生することが分かる。なお、実験例2〜5のYBCO薄膜(本焼膜)のIcはすべて0A/cmであった。これは、仮焼熱処理を450℃以下の温度で行ったため、金属錯体の熱分解、及び有機物の熱分解が十分に行われないまま本焼熱処理を行うこととなり、本焼熱処理に際して、仮焼膜中に残ったカーボンがYBCOの結晶化を阻害したためと考えられる。一方、従来技術による実験例1では、発泡が生じ、このために充分に高いIcが得られていない。
以上のように、仮焼熱処理の温度を350℃以下と低くした場合には、発泡およびクラックの発生を防ぐことができることが分かる。しかし、前記の温度での仮焼熱処理のみでは、超電導材として機能する材料が得られない。一方、温度を400℃以上にした場合には発泡が発生するため、1段階の仮焼熱処理では発泡、クラックの発生がなく、高Icの酸化物超電導薄膜の作製が困難であることが分かる。
b.2段階熱処理
次に、仮焼熱処理を2段階の熱処理で実施した場合の熱処理条件と評価結果について説明する。なお、1段階目の熱処理条件は、表1において発泡、クラック共に生じなかった実験例3の300℃で120分間保持する熱処理条件に固定した。各実験例の熱処理条件および評価結果を表2に示す。
Figure 2011159453
表2より、1段階目として、300℃で120分間の温度保持を行った後、実験例12、および実験例13のように2段階目として500℃で120分間の温度保持を行うと、雰囲気の加湿の有無に関わらず膜にクラックが生じるため、低いIcしか得られないことが分かる。一方、実験例6および実験例7のように2段階目として380℃で120分間の温度保持を行った場合は、雰囲気の加湿の有無にかかわらず、発泡もクラックも生じていない膜を得ることができている。
また、2段階目として420℃および450℃で120分間の温度保持を行った場合、実験例8および実験例10のように雰囲気を加湿しなかった場合にはクラックが生じているが、実験例9および実験例11のように露点20℃で熱処理を行った場合には発泡もクラックも生じない膜を得ることができている。このように発泡もクラックも生じなかったのは、加湿を行うことにより、バリウム錯体が分解した後に水酸化バリウムが生成し、この水酸化バリウムが融解したことによって、仮焼熱処理を行う際の金属錯体等の分解に伴う膜の収縮が膜厚方向のみに進んだためであると考えられる。
また、2段階の熱処理を行った場合でも、2段階目で450℃以下で温度保持を行った場合に、Icが0A/cmとなったのは、前述したように、金属錯体の熱分解および有機物の熱分解が十分に行われないまま本焼熱処理を行ったため、仮焼膜中に残ったカーボンがYBCOの結晶化を阻害したためと考えられる。
以上の結果より、2段階の仮焼熱処理でも発泡、クラックの発生がなく、高Icの酸化物超電導薄膜の作製が困難であることが分かる。
c.3段階熱処理
次に、3段階熱処理により仮焼熱処理を行った実験例であって、2段階目の熱処理の温度、雰囲気を変えて仮焼熱処理を行った実験例について説明する。なお、2段階目の熱処理は、表2において発泡、クラック共に生じなかった実験例6、実験例7、実験例9の熱処理条件とした。各実験例の熱処理条件および評価結果を表3に示す。
Figure 2011159453
表3より、実験例14および実験例15のように2段階目の熱処理を380℃で行った場合は、加湿の有無に関わらず3段階目に500℃で熱処理を行った際にクラックが生じていることが分かる。このようにクラックが生じたのは、2段階目の熱処理の温度が低過ぎるために、Y錯体およびBa錯体の分解が十分に進まないまま3段階目の熱処理を行ったことにより、3段階目の熱処理で膜が急激に収縮したためと考えられる。
一方、2段階目熱処理を410℃〜450℃の420℃で行った実験例16の場合は、2段階目の熱処理においてY錯体およびBa錯体の分解を充分に進ませたため、3段階目の熱処理で膜の急激な収縮が抑制され、緩やかな収縮が行われた結果クラックが生じていない。また、3段階目の熱処理を500℃という450℃〜600℃の温度で行ったため、3段階目の熱処理で膜中に残ったカーボンを除去することができ、Icが110A/cmと高いYBCO薄膜が得られている。
d.各段階の熱処理における保持時間の影響調査
次に、2段階および3段階熱処理により仮焼熱処理を行った実験例であって、各段階の熱処理における保持時間の影響を調べた実験例について説明する。なお、各段階の熱処理温度および2段階目の雰囲気は、実施例である実験例16に合わせた。各実験例の熱処理条件および評価結果を表4に示す。
Figure 2011159453
表4より、実験例17のように1段階目の熱処理を5分しか行わなかった場合には、2段階目の熱処理にて発泡が生じている。また、実験例18のように2段階目の熱処理を5分しか行わなかった場合には、3段階目の熱処理にてクラックが生じている。いずれも、熱処理時間が短過ぎ、金属錯体の分解が不十分なまま次の段階の熱処理を行ったためと考えられる。
また、実験例19では、発泡およびクラックは生じなかったが、Icは40A/cm程度にとどまった。このように低いIcしか得られなかったのは、3段階目の熱処理における保持時間が5分と短いために、金属錯体の熱分解および有機物の熱分解が十分に行われないまま本焼熱処理を行ったため、仮焼膜中に残ったカーボンがYBCOの結晶化を阻害したためと考えられる。
1段階目と2段階目の熱処理時間をそれぞれ10分間とし、3段階目の熱処理時間を120分間とした実験例20では、発泡もクラックもない仮焼膜が得られた。また、得られたYBCO薄膜のIcは80A/cmであった。このように、熱処理時間は最低10分程度でも発泡やクラックのない仮焼膜を得ることができ、良好なIcを得られることが分かる。なお、実験例20のIc80A/cmは、表3に示した実験例16の110A/cmに比べてIcが低いことから、より高Icを得るためには、実験例16のように各段階の熱処理における保持時間を120分程度にすることが好ましい。

Claims (8)

  1. 酸化物超電導線材の製造に用いる酸化物超電導薄膜を、フッ素を含まない金属有機化合物を原料とし、塗布熱分解法を用いて製造する酸化物超電導薄膜の製造方法であって、
    酸化物超電導薄膜の前駆体である仮焼膜を形成するに際して、
    前記金属有機化合物の各々に含有される有機成分が熱分解を起こす温度近傍で加熱して、各金属有機化合物に含有される有機成分を熱分解させて除去する熱処理を、低温側から段階的に行い、
    その後、さらに高温での熱処理を行って、残存する炭素を分解、除去する
    ことを特徴とする酸化物超電導薄膜の製造方法。
  2. 前記酸化物超電導薄膜が、YBCO薄膜、GdBCO薄膜、HoBCO薄膜のいずれかであることを特徴とする請求項1に記載の酸化物超電導薄膜の製造方法。
  3. 前記金属有機化合物に含有される有機成分を熱分解させて除去する第1の熱処理温度が、250℃〜350℃であることを特徴とする請求項2に記載の酸化物超電導薄膜の製造方法。
  4. 前記金属有機化合物に含有される有機成分を熱分解させて除去する第2の熱処理温度が、410℃〜450℃であることを特徴とする請求項2または請求項3に記載の酸化物超電導薄膜の製造方法。
  5. 前記各金属有機化合物に含有される有機成分を熱分解させて除去する熱処理を行った後に行われる残存する炭素を熱分解させて除去する熱処理温度が、450℃〜600℃であることを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載の酸化物超電導薄膜の製造方法。
  6. 前記各金属有機化合物に含有される有機成分を熱分解させて除去する熱処理、および炭素を熱分解させて除去する熱処理の処理時間が、10〜300分であることを特徴とする請求項1ないし請求項5のいずれか1項に記載の酸化物超電導薄膜の製造方法。
  7. 前記酸化物超電導薄膜が、YBCO薄膜であることを特徴とする請求項1ないし請求項6のいずれか1項に記載の酸化物超電導薄膜の製造方法。
  8. 前記炭素を熱分解させて除去する熱処理後の仮焼膜の膜厚が、0.2μm以上であることを特徴とする請求項1ないし請求項6のいずれか1項に記載の酸化物超電導薄膜の製造方法。
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