JP2011148187A - 積層ポリエステルフィルム - Google Patents

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Abstract

【課題】 極めて優れた紫外線吸収能や赤外線吸収能などの高機能の特性を有し、当該高機能を要するような用途である光学用フィルムや非光学分野のフィルム用途等の各種用途へ好適に利用することができるポリエステルフィルムを安価にかつ生産性良く提供する。
【解決手段】 積層構造を有するポリエステルフィルムの少なくとも1つの層中にATOナノ粒子を含有し、当該粒子のフィルム中の含有量が2.0〜5.0g/mであることを特徴とする積層ポリエステルフィルム。
【選択図】 なし

Description

本発明は、ATOナノ粒子を含有するポリエステルフィルムに関するものである。
近年、非光学用途である窓ガラス用途、建材用途、また、光学用途である太陽電池用途、フラットパネルディスプレイ用途、有機EL用途、電子ペーパー用途などで、UV吸収能、また、IR吸収能を持つ安価なフィルムの需要が高まっている。
有機化合物を用いて、上記要求を満たすフィルムは数多く知られている。有機化合物では、置換基変換による構造変換が容易であることからバリエーションが豊富で、効果も様々調整可能あるが、長期に渡る湿度、UV(紫外線)、熱等による製品の耐候性に問題がある。
有機化合物に対して、無機化合物を用いると、要求効果に対してバリエーションは少ないが、適した効果があるものを用いたときに外的要因による分解が考えにくく、半永久的に用いることができるという利点がある。
フィルムへ無機化合物を粒子として含有させる場合、有機化合物を用いるときも同様だが、UV吸収性などの効果の観点から、粒子の大きさと樹脂への分散性が大きな鍵となってくる。
これまでに、水分散でのコーティング技術による無機化合物の含有方法は知られているが、無機化合物は水溶液分散性が低いという問題、また、コーティングでは含有量が低く、期待の効果を出すことが難しいという問題がある。しかし、適当な無機化合物の樹脂への練り込みによる含有方法が可能であれば、理想的な効果を持つ耐候性フィルムの生産が期待できる。
特開2002−283509号公報 特開2005−271592号公報 特開2009−505871号公報
本発明は、上記実情に鑑みなされたものであって、その解決課題は、極めて優れた紫外線吸収能や赤外線吸収能などの高機能の特性を有し、当該高機能を要するような用途である光学用フィルムや非光学分野のフィルム用途等の各種用途へ好適に利用することができるポリエステルフィルムを安価にかつ生産性良く提供することにある。
本発明者は、上記実情に鑑み鋭意検討した結果、特定の構成を有するポリエステルフィルムによれば、上記課題を容易に解決できることを見いだし本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明の要旨は、積層構造を有するポリエステルフィルムの少なくとも1つの層中にATOナノ粒子を含有し、当該粒子のフィルム中の含有量が2.0〜5.0g/mであることを特徴とする積層ポリエステルフィルムに存する。
本発明によれば、UVやIR吸収能を持つ高機能化ポリエステルフィルムを提供することができ、光学用途、非光学用途のどちらにも応用が期待できるためにその工業的価値は高い。
以下、本発明をさらに詳細に説明する。
本発明における積層ポリエステルフィルムを構成するポリエステルフィルムは、フィルム表面のオリゴマーの析出を抑制する目的で粒子を表層に配合するため、生産性を考えると3層、4層またはそれ以上の多層であった方が好ましい。
本発明において使用するポリエステルは、生産コストの削減や工程作業容易化を追及した結果、ホモポリエステルであることが好ましい。ホモポリエステルからなる場合、芳香族ジカルボン酸と脂肪族グリコールとを重縮合させて得られるものが好ましい。芳香族ジカルボン酸としては、テレフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸などが挙げられ、脂肪族グリコールとしては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノール等が挙げられる。代表的なポリエステルとしては、ポリエチレンテレフタレート等が例示される。
本発明におけるポリエステルフィルムの厚みは、フィルムとして製膜可能な範囲であれば特に限定されるものではないが、通常10〜350μm、好ましくは50〜250μmの範囲である。
次に本発明におけるポリエステルフィルムの製造例について具体的に説明するが、以下の製造例に何ら限定されるものではない。すなわち、先に述べたポリエステル原料を使用し、ダイから押し出された溶融シートを冷却ロールで冷却固化して未延伸シートを得る方法が好ましい。この場合、シートの平面性を向上させるためシートと回転冷却ドラムとの密着性を高めることが好ましく、静電印加密着法および/または液体塗布密着法が好ましく採用される。次に得られた未延伸シートは二軸方向に延伸される。その場合、まず、前記の未延伸シートを一方向にロールまたはテンター方式の延伸機により延伸する。延伸温度は、通常70〜120℃、好ましくは80〜110℃であり、延伸倍率は通常2.5〜7倍、好ましくは3.0〜6倍である。次いで、一段目の延伸方向と直交する方向に延伸するが、その場合、延伸温度は通常70〜170℃であり、延伸倍率は通常3.0〜7倍、好ましくは3.5〜6倍である。そして、引き続き180〜270℃の温度で緊張下または30%以内の弛緩下で熱処理を行い、二軸配向フィルムを得る。上記の延伸においては、一方向の延伸を2段階以上で行う方法を採用することもできる。その場合、最終的に二方向の延伸倍率がそれぞれ上記範囲となるように行うのが好ましい。
また、本発明のポリエステルフィルム製造に関しては、同時二軸延伸法を採用することもできる。同時二軸延伸法は、前記の未延伸シートを通常70〜120℃、好ましくは80〜110℃で温度コントロールされた状態で機械方向および幅方向に同時に延伸し配向させる方法であり、延伸倍率としては、面積倍率で4〜50倍、好ましくは7〜35倍、さらに好ましくは10〜25倍である。そして、引き続き、170〜250℃の温度で緊張下または30%以内の弛緩下で熱処理を行い、延伸配向フィルムを得る。上述の延伸方式を採用する同時二軸延伸装置に関しては、スクリュー方式、パンタグラフ方式、リニアー駆動方式等、従来公知の延伸方式を採用することができる。
本発明において使用する無機化合物の粒子は、平均粒径が1〜100ナノメートル程度もので、分散性が良いものが好適である。必要に応じて、分散性を付与するために無機化合物の表面に有機化合物、例えば、シリコーンやシロキサン系、の表面処理粒子を施しても良い。粒子の具体例としては、アンチモンドープ酸化錫(以下、ATOと略記する)、錫ドープ酸化インジウム(以下、ITOと略記する)、ナノクレイ、タルク、二酸化珪素、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化錫、一酸化珪素、酸化ジルコニウム、酸化チタン、シリカ、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸バリウム、硫酸カルシウム、リン酸カルシウム、リン酸マグネシウムなどがあり、それらから選ばれる1種以上を用いることが好ましく、本発明においてはATOなの粒子を用いることを必須とする。上記粒子では、通常、粒径が0.002〜数μmのものが通常用いられる。無機化合物粒子の配合量は添加される重合性化合物100重量部に対して1〜10重量部とするのが好ましい。
ポリエステルフィルム中のATOナノ粒子含有量は、2.0〜5.0g/mの範囲である。含有量が2.0g/m未満では、UV、IR吸収性能に劣る。一方、5.0g/mを超えて含有する場合、無機粒子の凝集が起こり、UV、IR吸収性能が劣る他、フィルム外観の不具合が生じる。
本発明において、IR吸収能とは耐候性の一つの指標なり、具体的には、340〜1800nmにおける透過率を指す。この透過率を日射透過率と呼び、遮熱性能の基準となる。この日射透過率は、70%以下であることが好ましい。
本発明において、UV吸収能とは耐候性の一つの指標なり、具体的には、380nmにおける分光光線透過率測定で、2.0%以下の透過率であることが好ましい。
本発明のポリエステルフィルムへの粒子の含有方法としては、練り込み方法が挙げられるが、そのポリエステルへの練り込みについて説明する。上記化合物はポリエステルレジンに練り込んだマスターバッチとして用いる方が好ましいが、ポリエステルレジンへの直接添加でもよい。
さらに本発明のポリエステルフィルムについて、粒子の練り込みの層構成について説明する。粒子はポリエステルフィルムの両表層、もしくは、全層への練り込みでもよいが、両表層のみでも十分にUV、IR吸収性能に良い影響をもたらすので、コスト面、生産性を考慮に入れると、表層への練り込みが好ましい。
以下、本発明を実施例によりさらに詳細に説明するが、本発明はその要旨を越えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。また、本発明で用いた測定法および評価方法は次のとおりである。
(1)ポリエステルの固有粘度の測定
ポリエステルに非相溶な他のポリマー成分および顔料を除去したポリエステル1gを精秤し、フェノール/テトラクロロエタン=50/50(重量比)の混合溶媒100mlを加えて溶解させ、30℃で測定した。
(2)無機粒子の平均粒径、粒度分布測定
平均粒径は電子顕微鏡による写真法で測定し、粒度分布は約1000個の粒子の粒径を測定し、大粒子側から体積を積算し、総体積に対し、10%時の粒径をd10とし、90%時の粒径をd90としてその比〔d10/d90〕の値で粒度分布のシャープさを示した。
(3)ポリエステルフィルムの透過率測定
分光光度計(島津製作所社製「UV3100」)を使用して、合わせガラスの340〜1800nmの透過率を測定し、JIS Z 8722、JIS R 3106、及びJIS Z 8701に準拠して380〜780nmの可視光透過率Tv、340〜1800nmの日射透過率Tsを評価した。次のような基準で判断する。
・380〜780nmの可視光透過率Tv
○:80%を超える透過率
△:75〜80%の範囲内の透過率
×:75%より低い透過率
・340〜1800nmの日射透過率Tsについて
○:60%より低い透過率
△:61〜70%の範囲内の透過率
×:70%より高い透過率
(4)分光光線透過率測定
分光光度計(株式会社島津製作所UV−3100PC型)により、スキャン速度を低速、サンプリングピッチを2nm、波長300〜700nm領域で連続的に光線透過率を測定し、380nmの波長での光線透過率を検出した。次のような基準で判断する。
○:380nmで2.0%以下
×:380nmで2.0%より高い
(5)ポリエステルフィルムのヘーズ(濁度)測定
JIS − K7105に準じ、日本電色工業社製積分球式濁度計NDH−300Aによりポリエステルフィルムのヘーズを測定した。次のような基準で判断する。
○:1.0%より値が低い
△:1.0〜2.0%
×:2.0%より値が高い
(6)フィルム外観目視評価
以下基準に従って評価を行った。
○:キズがなく、色目も綺麗で、表面性状が綺麗なもの
△:キズがなく、表面性状が綺麗だが、色目が少しきついもの
×:キズがあるもの
実施例および比較例において使用したポリエステルは、以下のようにして準備したものである。
<ポリエステル(A)の製造方法>
テレフタル酸ジメチル100重量部とエチレングリコール60重量部とを出発原料とし、触媒としてテトラブトキシチタネートを加えて反応器にとり、反応開始温度を150℃とし、メタノールの留去とともに徐々に反応温度を上昇させ、3時間後に230℃とした。4時間後、実質的にエステル交換反応を終了させた後、4時間重縮合反応を行った。
すなわち、温度を230℃から徐々に昇温し280℃とした。一方、圧力は常圧より徐々に減じ、最終的には0.3mmHgとした。反応開始後、反応槽の攪拌動力の変化により、極限粘度0.61に相当する時点で反応を停止し、窒素加圧下ポリマーを吐出させ、極限粘度0.61のポリエステル(A)を得た。
<ポリエステル(B)の製造方法>
6%ATOマスターバッチは、次の方法で得た。ポリエステル(A)の製造途中において、重合時にNYACOL製 ATO(SN900SD,Particle Size 〜15nm)をポリエステル(A)全重量部に対して、6.0重量%添加し、極限粘度0.60のポリエステル(C)を得た。
〈ポリエステルの製造〉
ポリエステル(A)、(B)をそれぞれ50%、50%の割合で混合した混合原料を中間層の原料とし、ポリエステル(A)を最外層(表層)の原料として、2台の押出機に各々を供給し、各々290℃で溶融した後、口金から押出し静電印加密着法を用いて表面温度を40℃に設定した冷却ロール上に、2種3層(表層/中間層/表層=1/8/1)の層構成で共押出し冷却固化させて未延伸シートを得た。次いで、ロール周速差を利用してフィルム温度85℃で縦方向に3.7倍延伸した後、この縦延伸フィルムをテンターに導き、横方向に120℃で4.3倍延伸し、230℃で熱処理を行った後、横方向に2%弛緩し、厚さ100μm(表層10μm、中間層80μm)、全層換算でATO2.4g/mの透明なポリエステルフィルムを得た。このポリエステルフィルムの380〜780nmの可視光透過率Tvは82%、340〜1800nmの日射透過率Tsは67%、分光光線透過率は380nmで1.6%、ヘーズは0.8%であった。
実施例2〜5では実施例1と同様の方法であるが、ATOの含有量を変更した、つまり中間層粒子MBの含有量の変更を行った。以上、得られた結果をまとめて下記表1に示す。
Figure 2011148187
比較例1〜3では実施例1と同様の方法であるが、ATOの含有量を変更した、つまり中間層粒子MBの含有量の変更を行った。以上、得られた結果をまとめて下記表2に示す。
Figure 2011148187
本発明のポリエステルフィルムは、耐候性を必要とする光学および非光学用途へ好適に利用することができる。

Claims (1)

  1. 積層構造を有するポリエステルフィルムの少なくとも1つの層中にATOナノ粒子を含有し、当該粒子のフィルム中の含有量が2.0〜5.0g/mであることを特徴とする積層ポリエステルフィルム。
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