JP2011148030A - ボルト締付装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】単純な構造でボルト締付時にボルト軸直角方向にボルトを微小振動させるボルト締付装置を提供する。
【解決手段】入力回転軸14に直結した減速用偏芯カム16は、外周に設けられた外歯で、ケース12Aの内周に設けられた内歯と嵌合する。内歯歯車12は同軸に設けられた低速回転ロータ20を回転伝達ピン22で同期回転させソケットレンチ150を回転させることでボルト110を締結する。減速用偏芯カム16の回転中心には変位量制御用偏芯カム24が固定され、低速回転ロータ20の回転中心を貫通している。変位量制御用偏芯カム24は軸心を変位量制御用ピン26が貫き、その周囲を二重の偏芯リング24で保持される構造とされる。外歯は内歯より歯数が少なく、入力回転軸14と変位量制御用ピン26の回転軸はオフセットしており、オフセット量は二重の偏芯リング24の回転位置により調整される。
【選択図】図4

Description

本発明はボルト締付装置に関する。
複数の被締結部材を締結させる方法の一つとして、ボルトを用いて各被締結部材を締結する方法が挙げられる。ボルトを用いて各被締結部材を締結する場合、特に、せん断力が作用した際における被締結部材間のすべりを締結部材間の摩擦力によって防止又は抑制すべく各被締結部材を締結する場合、ボルトの締め付けによりもたらされるボルト軸線方向の軸力(以降「ボルト軸力」と称す)を高くし、しかも安定させることが重要となる。
例えば、ボルトの締め付けによりもたらされたボルト軸力が低軸力の場合、各被締結部材間に十分な摩擦力がもたらされないので、被締結部材がせん断外力を受けた場合に被締結部材間にすべりが生じ、その結果、ボルトの弛みを引き起こす可能性が高いとされている。
よって、ボルトの締め付けによってもたらされるボルト軸力を安定させるために、ボルトの雄ネジ部と被締結部材の雌ネジ部との係合面(螺合面)であるネジ面(ネジ部)に、摩擦係数安定剤を付着させ、ネジ面の摩擦係数を座面の摩擦係数の0.7倍以下とする例が示されている(例えば、特許文献1参照)。
しかしながら、ネジ部や座面の摩擦係数はバラツキが大きく制御しにくいため、摩擦係数を特定の値に維持するための方法が必要となる。また特許文献1に示されているようなボルト軸力の高軸力化を図る場合、摩擦係数安定剤を使用するという点に課題が残されている。
すなわち、ボルトを用いて各被締結部材を締結する場合、ボルト締め付け後に容易にボルトが緩むことがないようにする必要があり、少なくともボルト締め付け後において、ネジが自立していなければならない、というネジの自立条件を満たす必要がある。
ここで、「ネジが自立している」との表現は、ボルトの雄ネジ部を、被締結部材の雌ネジ部に挿入した際に、雄ネジ部と雌ネジ部とが係合(螺合)する面(以降、「ネジ面」と称す)及び座面の摩擦係数が小さ過ぎて、ボルト頭部に回転トルクを付与した後、ボルトが戻り回転してしまうことがない状態を意図している。
そして、ネジが自立していない状態においては、ボルト頭部に回転トルクを付与してボルトの締め付けを行なっても、ボルト頭部への回転トルクの付与を解除した際に、ボルトの締め付けによってもたらされたボルト軸力により雄ネジ部と雌ネジ部とが相対的に回転移動してしまい、ボルト軸力が低下する。
よって、ボルト軸力の高軸力化を図るべく、摩擦係数を極めて小さくすると、ボルト締め付け後の上述したネジの自立が問題となる。この問題を解消すべく、摩擦係数安定剤によるネジ面の摩擦係数の低下には、設計条件に応じて、ある一定の制限が課されることになる。
なお、ボルトを用いて各被締結部材を締結する場合、ボルトの締め付けの際にもたらされるボルト軸力が高ければ高いほど、より強固な各被締結部材の摩擦接合がもたらされることになる。
よって、せん断外力が作用した際における被締結部材間のすべりを、被締結部材間の摩擦力によって防止又は抑制すべく各被締結部材を締結する場合においては、ボルトを締め付ける際にもたらされるボルト軸力の高軸力化を図ることが重要である。
上記の問題を解決すべく、ボルト頭部に横方向の荷重を付与し、ボルトを締結する際にもたらされるボルト軸力の高軸力化を図る構成が開示されている(例えば、特許文献2、3、4参照)。
特開2002−323023号公報 特開2009−119577号公報 WO2006/126742 実公昭38−28909号公報
しかし特許文献4に開示された内容は板厚が一方向に減少している座金を使用し、ボルト軸と直角方向に加重を印加しながら締結する方法であり、クサビ状の断面を持つ座金や、横方向に加重を印加する補助ボルトを必要とするなど、必然的に通常のボルト締結部とは異なる構成となり、また締め付け作業自体も煩雑なものとなる。
また特許文献2、3に開示されている技術は、ボルト軸と直角方向の力を付与し、座面とネジ面とに微小なすべりを発生させてボルト締付回転時の回転抵抗を小さくする構成であり、ボルト軸と直角方向に高速で振動させる等によりネジ面と座面との間に最大摩擦力を発生させ易くなるが、締付け機の入力側回転軸と出力側(ソケットレンチ)が同一回転数で回転するため、締付け時のボルト回転数と、ボルト軸と直角方向の振動数との間に大きな差を設定することは難しい。すなわちドライブ(駆動)側とドリブン(被駆動)側の歯車の歯数の比が回転数と振動数との比となるため、大きなギア比を設けるためにはより大きな歯車と小さな歯車の組み合わせになるが、小さい側の歯車はボルトの締め付け力に耐えられる強度が要求されるため十分に小さくしにくく、要求される振動の周波数が高ければ大きい側の歯車は小型化しにくいという問題がある。
本発明は、上記課題を解決すべく成されたもので、より単純な構造でボルトを締め付ける際にもたらされるボルト軸力の高軸力化を図るべく、ネジ面の摩擦係数そのものを変更することなくネジ面の摩擦係数を小さくしたのと同様の効果をもたらすことが可能なボルト締付装置を提供することが目的である。
請求項1に記載のボルト締付装置は、内周面に内歯歯車が形成されたケースと、前記ケース内で回転自在に支持され、外部からの回転力が付与される入力回転軸と、前記入力回転軸の先端に設けられ、前記入力回転軸と一体的に回転する減速用偏芯カムと、前記減速用偏芯カムと前記内歯歯車との間に設けられ、前記減速用偏芯カムに内接され、前記内歯歯車に内接しつつ一部噛み合う外歯歯車と、前記外歯歯車と同軸に設けられ、回転伝達ピンで同期回転する低速回転ロータと、前記減速用偏芯カムの回転中心に固定され、前記低速回転ロータの回転中心を回転自在に貫通する変位量制御用偏芯カムと、前記変位量制御用偏芯カムの回転中心と前記低速回転ロータの回転中心とを貫通し、同軸に設けられた二重の偏芯リングで保持され、前記変位量制御用偏芯カムと前記低速回転ロータとを通してナットで固定する変位量制御用ピンと、前記低速回転ロータに同軸に設けられ、ボルトを保持するソケットレンチと、を備え、前記外歯歯車は前記内歯歯車より少ない歯数であり、前記入力回転軸の回転中心と前記変位量制御用ピンの回転中心とがオフセットしたことを特徴とする。
請求項1に記載のボルト締付装置では、入力回転軸に直結した減速用偏芯カムは、外周に設けられた外歯で、ケースの内周に設けられた内歯と噛み合う。さらに内歯歯車は同軸に設けられた低速回転ロータを回転伝達ピンで同期回転させる。
減速用偏芯カムの回転中心には変位量制御用偏芯カムが固定され、低速回転ロータの回転中心を回転自在に貫通している。変位量制御用偏芯カムは軸心を変位量制御用ピンが貫き、その周囲を二重の偏芯リングで保持される構造とされる。変位量制御用ピンは減速用偏芯カムと低速回転ロータとを貫通し、先端をナットで締結され、低速回転ロータ、変位量制御用偏芯カムなどの軸方向位置決めをする。
また外歯は内歯より歯数が少なく、入力回転軸と変位量制御用ピンの回転軸はオフセットしており、そのオフセット量は二重の偏芯リングの回転位置により調整される。
この構造としたことで、入力回転軸に入力された回転力は減速用偏芯カムを回転させ、その外側に設けられた外歯歯車をケース内周面の内歯歯車に押し付け、歯車を嵌合させつつ回転させる。内歯歯車は外歯歯車より歯数が多いので、入力回転軸の回転より減速されて外歯歯車はケース内で回転駆動される。この外歯歯車の回転が回転伝達ピンで低速回転ロータに伝達され、さらにソケットレンチを回転させることでボルトを締結する。
一方、外歯歯車は大きな偏芯変位と共に回転し、逆方向に偏芯している減速用偏芯カムと偏芯量を互いに打ち消し合って小さな偏芯変位をもち振動する。すなわち入力回転軸の回転は減速されてボルトを締結すると共に、小さな偏芯変位をもち内部のカム、歯車等を振動させる。この振動により、ネジ面と座面との間に微小なすべりが発生する。
ここで、互いに押し付けられた二つの物体(被締結部材とボルトとに相当)の平面の摩擦力には、「アモントン・クーロンの摩擦の法則」に従い、最大摩擦力が存在すると考えられる。言い換えると、互いに押し付けられた二つの物体(被締結部材とボルトとに相当)の平面の摩擦力には最大摩擦力(静摩擦係数に由来)があり、その最大摩擦力で二つの物体を互いにすべらせると、すべり中に発生する荷重は最大摩擦力以上にはならない(動摩擦係数に由来)、というものである。
よって、逆に、二つの物体の接合面で一方の方向にすべりが発生している場合、一方の方向と異なる他方の方向に荷重を負荷すると、小さな荷重で他方の方向に移動が可能となる。
このような作用を被締結部材のネジによる締結に適用(応用)したのが本願発明である。すなわち、ボルト頭部に回転軸に直交する半径方向に振動(横荷重)を付与しながら(一方の方向にすべらせながら)、ボルトを回転軸回りに回転させて締め付けると(他方の方向にすべらせると)、ボルトを締め付ける締付トルクが小さくなる。つまり、小さな締め付けトルクで締付が可能となる。
そして、前述したように、本発明が適用されたボルト締付装置を用いると、回転軸と直交する半径方向の振動(横荷重)がボルト頭部に付与されつつ、ボルト頭部に回転トルクが付与され、ボルトが締め込まれる。
したがって、本発明が適用されたボルト締付装置を用いてボルトを締め付けると、小さな締め付けトルクでボルトを締め付けることが可能となる。すなわち、ネジ面の摩擦係数そのものを変更することなくネジ面の摩擦係数を小さくしたのと同様の効果がもたらされる。
さらに、減速用偏芯カムと外歯歯車、内歯歯車を組み合わせたことにより高い周波数で微小な振動を発生させる構造を単純なものとすることができ、且つ二重の偏芯リングを用いた変位量制御用偏芯カムを備えることで、偏芯変位の大きさを調節可能とし、ボルトごとに最適な偏芯変位量を設定することができる。
なお、ここでいうネジ面とは、ボルトのボルト軸部の周面に形成された雄ネジ部と、雄ネジ部に対応する例えば被締結部材に形成されたネジ穴の雌ネジ部と、が係合(螺合)する面を指す。ボルト座面とは、被締結部材とボルト頭部とが係合(当接)する面であり、ボルト頭部と被締結部材との間に、例えば平座金やバネ座金など座金が配置される場合には、座金と被締結部材とが係合(当接)する面もボルト座面とみなすことができる。
本発明のボルト締付装置によれば、ボルトを締め付ける際に回転軸に直交する半径方向の振動(横荷重)をボルト頭部に付与しつつ、ボルト頭部に回転トルクを付与してボルトを締め込むことができ、より単純な構造でボルト軸力の高軸力化を図ることができるという優れた効果を有する。
本実施形態のボルト締付装置の要部に係り、回転軸と直交する半径方向の横荷重がボルト頭部に付与されていない状態のボルトを示す断面図である。 本実施形態のボルト締付装置の要部に係り、回転軸と直交する半径方向の横荷重がボルト頭部に付与され、更にソケットにボルト頭部を回転させる回転トルクが付与された状態のボルトを示す断面図である。 回転軸に直交する半径方向の振動がボルト頭部に付与された状態を説明するための説明図である。 本実施形態に係るボルト締付装置を示す断面図である。 本実施形態に係るボルト締付装置を示す図4のA−A線断面図である。 本実施形態に係るボルト締付装置を示す図4のB−B線断面図である。
<概要>
先ず、本発明が適用されたボルト締付装置によるボルト締付方法の基本概念について、図1〜図3を用いて説明する。なお、図1及び図2では、縦断面が図示されているが、断面を示すハッチングは、見易くするため省略している。
図1に示すように、ボルト110は、円形フランジ付きボルトとされている。ボルト110のボルト軸部114の上端部には平面視において略六角形状のボルト頭部112が設けられている。ボルト頭部112の下部には、円板状のフランジ部113が形成されており、このフランジ部113の下面がボルト座面113Aとされる。また、ボルト軸部114の周面には、雄ネジ部116が形成されている。そして、このボルト110によって、積層された板状の被締結部材180と被締結部材190とが締結されている。なお、ボルト軸部114の軸心(回転軸L)はボルト座面113Aに直交するように構成されている。
図1における上側の被締結部材180には、図における上下方向に貫通孔181が形成されている。また、図1における下側の被締結部材190には、板厚方向に貫通したネジ穴182が形成されている。このネジ穴182の内周面には、ボルト110のボルト軸部114の雄ネジ部116と螺合する雌ネジ部184が形成されている。
なお、ボルト頭部112のフランジ部113の下面、すなわちボルト座面113Aが被締結部材180と当接する面とされる。また、ボルト110の雄ネジ部116と被締結部材190の雌ネジ部184とが螺合する面がネジ面186とされる。更に、被締結部材180と被締結部材190とが当接した面が(被締結部材間の)摩擦接合面192とされる。
また、ボルト締付部としてのソケットレンチ150の先端部には、ボルト頭部112と略同形状(本実施形態では六角形状)の断面形状とされた凹部152が形成されている(図4も参照)。そして、ソケットレンチ150の凹部152にボルト頭部112が嵌合されると共に、ボルト頭部112が嵌合された状態で、ソケットレンチ150をその軸線回りに回転させることで、回転トルクがボルト頭部112に伝達されてボルト頭部112が回転し、ボルト110が締め込まれる。
図2は、回転軸Lと直交する半径方向の(ボルト座面113Aと平行な)横荷重Fがソケットレンチ150を介してボルト頭部112に付与され、且つ、ソケットレンチ150にボルト頭部112を回転させる回転トルクが付与されたボルト110の状態を示す図である。
この図2に示されるように、回転軸Lと直交する半径方向の(ボルト座面113Aと平行な)横荷重Fがボルト頭部112にソケットレンチ150を介して付与されると、ボルト軸線G2が被締結部材側の垂線G1に対して傾斜した状態とされ、且つボルト座面113Aが被締結部材180に対して傾斜した状態とされる。言い換えると、ボルト110全体が角度θ1だけ傾斜した状態とされる。なお、図2においては、傾斜の状態を明からにすべく、実際よりも大きく傾斜して図示されている。実際には、角度θ1は、例えば、0.01°のような極めて僅かな角度である。
図2のような状態、すなわち、ボルト軸線G2が被締結部材側の垂線G1に対して僅かに傾斜された状態とされ、且つ、ボルト座面113Aが被締結部材180に対して傾斜した状態で、ソケットレンチ150を介して回転トルクがボルト110のボルト頭部112に付与されると、ボルト座面113A及びネジ面186の面圧が偏った状態で、ボルト110が締め込まれることになる。
本出願人は、このように横荷重Fをボルト頭部112に付与し、ボルト110の締め込みの際にもたらされるボルト座面113A及びネジ面186の面圧を偏らせた状態でボルト110を締め込むことで、実際の回転中心線(「瞬間回転中心線」とも称す)を軸線G1からボルト座面113A及びネジ面186の高面圧側方向へ移動させることができ、これにより、ボルト頭部112に横荷重Fを付与しない場合と比較し、より少ない締め付けトルクでボルト110の締め付けが可能とされると共に、より高いボルト軸力をもたらすことが可能であることを、有限要素法解析(Finite Element Analysis:FEA)を用いて見出した。
ここで、「アモントン・クーロンの摩擦の法則」により、摩擦力には最大摩擦力があり、すべり中に発生する荷重は最大摩擦力以上にはならない。よって、一方の方向にすべらせながら、一方と異なる他方の方向に荷重を負荷すると、小さな荷重で他方の方向に移動が可能となる。
すなわち、ボルト110と被締結部材180、190との間の摩擦力には最大摩擦力があるので、図3に示すように、ボルト110を回転軸Lに直交する半径方向に振動(往復)させながら(一方のS方向にすべらせながら)、ボルト110を回転軸Lに回りに回転させると(一方の方向と異なる他方のT方向にすべらせると)、比較的に小さな荷重(回転トルク)でボルト110を回転させることが可能となる(他方の方向Tに移動が可能となる)。すなわち、ボルト110を締め付ける締付トルクが小さくなる(小さな締め付けトルクで締付が可能となる)。
そして、ボルト110の振動速度(一方のS方向のすべり速度)を大きくすると、つまり、高い周波数で振動させると(横荷重Fの荷重方向を素早く反転させると)、回転方向(他方のT方向)との区別が明確になり、発生する摩擦力が最大摩擦力に近づく。したがって、回転方向の摩擦抵抗(ネジ面186の摩擦係数)がより小さくなり、その結果、締付トルクがより小さくなる。なお、図3は判りやすくするために、実際より振幅を極端に大きく図示している。実際の振幅は僅かである。
以上のように、上述したボルト110の締め付け方法によれば、具体的には、回転軸Lと直交する半径方向の(ボルト座面113Aと平行な)振動(横荷重F)をボルト頭部112に付与しつつ、ボルト110を回転させて締め込むことにより、ネジ面186の摩擦係数を小さくしたのと同じ効果を奏する、すなわち、ボルト110を締め込む際のボルト軸力の高軸力化を実現する効果を有する。
また、ボルト110の締め付けが完了し、ボルト頭部112にソケットレンチ150によって付与されていた縮め付け回転トルクが解放された後は、ネジ面186そのものの摩擦係数に応じてもたらされる摩擦力により雄ネジ部116と、被締結部材190のネジ穴182の雌ネジ部184と、の係合(螺合)を維持することができる。
この高いボルト軸力は、各被締結部材180、190間の摩擦接合面192に強固な摩擦接合をもたらし、この強固な摩擦接合により、せん断外力が作用した際における名被締結部180、190間のすべりを、より万全に防止又は抑制することができる。よって、各被締結部材180、190間のすべりを回避しボルト110(ネジ面186)の緩みを、より万全に防止又は抑制することが可能となる。
<構造の概要>
つぎに、本発明が適用された、すなわち、回転軸Lに直交する半径方向(ボルト座面113Aに平行)に振動(横荷重F)をボルト頭部112に付与しながら、ボルト頭部112に回転トルクを付与して、ボルト110を回転させて締め付けるボルト締付装置の実施形態について、図4〜図6を用いて説明する。
図4に示すボルト締付装置10は、内部に内歯歯車12が設けられ、回転軸Lのまわりに略円筒形状とされたケース12Aの内部に、図示しない締付機から回転力を入力される入力回転軸14が回転自在に保持される構造とされている。入力回転軸14はラジアルベアリング30を介してケース12Aの内部で回転可能とされ、先端に設けられた減速用偏芯カム16に、入力された回転力を伝達する。
図4、5に示すように減速用偏芯カム16と、内歯歯車12との間には円筒状の外歯歯車18が設けられている。外歯歯車18の内周面には減速用偏芯カム16が内接し、内歯歯車12に向けて外歯歯車18を付勢している。
図5に示すように外歯歯車18は内側から減速用偏芯カム16に押圧され内歯歯車12に嵌合し、減速用偏芯カム16の回転に従って内歯歯車12の内周面を回転可能とされている。ここで、外歯歯車18の歯数は内歯歯車12よりも少なく設定され、両者の歯数とそれらの比が後述するボルト締付時の回転数と振動の周波数との比とされる。外歯歯車18と内歯歯車12の、歯の形状および歯数の差について特に制限はないが、例えば液送ポンプ等に用いられるトロコイド歯車であれば歯数の差が1であってもよい。
外歯歯車18の内周側かつ減速用偏芯カム16よりも先端側には、図4に示すようにスラストベアリング32を介して、低速回転ロータ20がケース12A内で回転自在に設けられている。低速回転ロータ20の外周には複数の回転伝達ピン22が径方向外側に向けて突出しており、外歯歯車18に設けられた係合穴18Aに回転伝達ピン22が係合することで、外歯歯車18の回転に同期して回転する。
減速用偏芯カム16の回転中心には変位量制御用偏芯カム24が貫通して設けられており、減速用偏芯カム16に対してこれをリジッドに軸支し、等しい速度で回転する。さらにその先端側で変位量制御用偏芯カム24は低速回転ロータ20の回転中心を貫通し、ラジアルベアリング34を介して変位量制御用偏芯カム24は低速回転ロータ20を互いに異なる速度で回転可能に軸支している。
図5、6に示すように変位量制御用偏芯カム24は軸心に変位量制御用ピン26が設けられ、変位量制御用ピン26の外周を二重の偏芯リング24A、24Bで支持する構成とされている。偏芯リング24A、24Bは減速用偏芯カム16に対して回転可能とされ、偏芯リング24A、24Bの回転方向位置を変えることで、変位量制御用ピン26の回転軸Lと直交する平面内での位置決めが可能とされている。
図4に示すように変位量制御用ピン26は入力回転軸14、減速用偏芯カム16、低速回転ロータ20を貫通し、先端をナット13で締付けられ固定される。このとき入力回転軸14の回転中心である中心線C1と、変位量制御用ピン26の軸心である中心線C2とがオフセットするように偏芯リング24A、24Bの回転位置が設定される。
低速回転ロータ20の、さらに先端側にはアダプタ28を介してソケットレンチ150が固定され、ボルト110のボルト頭部112をチャックして締付作業を行う。このとき低速回転ロータ20とソケットレンチ150の回転中心は中心線C2と一致した位置に設定される。
<締付動作の説明>
つぎに、本発明が適用されたボルト締付装置の締付動作について、図4〜図6を用いて説明する。
ボルト締付装置10を図1に示すように被締付物に接触させ、それ自身が締付動作の反動で回転しないように固定する。このとき、複数個(例:3本以上)のボルト110を同時に締結する場合は3軸のボルト締付装置となり、3軸それぞれが互いに締付動作時の回転トルクを反力として受けるため、締付装置全体を回転させる力とはならず、ボルト締付装置10を回転方向に固定する必要はない。
先ず入力側端の入力回転軸14に対してナットランナー(電動トルクレンチ)等の外部駆動手段より回転力を入力すると、入力回転軸14の先端側に設けられた減速用偏芯カム16が同じ回転速度で回転する。図4、5に示すように減速用偏芯カム16は外歯歯車18の内周面に当接し、内歯歯車12に向けて付勢しながら回転するので、外歯歯車18の歯を内歯歯車12に嵌合させながら、入力回転軸14の回転方向に順次噛み合わせつつ外歯歯車18を回転させる。
前述のように外歯歯車18の歯数は前述の通り内歯歯車12の歯数より少ないので、減速用偏芯カム16の回転につれて、外歯歯車18は減速用偏芯カム16よりも遅い速度で逆方向に回転する。このとき、外歯歯車の歯数をn1、内歯歯車の歯数をn2とすると(n1<n2)、減速用偏芯カム16の回転1回あたり外歯歯車18は(n2−n1)/n2(回)だけ回転する。
上記のように入力回転軸14よりも減速されて回転する外歯歯車18は、図6に示すように外歯歯車18に設けられた係合穴18Aに係合する回転伝達ピン22を介して、低速回転ロータ20を回転させる。低速回転ロータ20に伝達された回転力は、その先端側に設けられたアダプタ28を介してソケットレンチ150に伝達され、さらに図1に示されるようにボルト110のボルト頭部112を回転させ、ボルト締付作業を行う。
<偏芯と振動>
つぎに、本発明が適用されたボルト締付装置の振動について、図4〜図6を用いて説明する。
前述のように入力回転軸14の先端側に設けられた減速用偏芯カム16が回転し、外歯歯車18を内周面側から内歯歯車12に向けて押圧し、押し付けながら歯を順次噛み合わせて行くことで、外歯歯車18は減速用偏芯カム16と同期しながら、大きな偏芯変位を伴いつつ回転する。
上記の偏芯変位は外歯歯車18・内歯歯車12の全歯たけ(whole depth)以上の大きさとなるが、ボルト110の締付トルクは上記のように内歯歯車12・外歯歯車18を経由して伝達されるため、その伝達トルクに耐えられるように各歯車の歯を十分に大きくする必要がある。このため偏芯変位も同様に増大するが、ソケットレンチ150に付与される振動は高周波かつ微小変位であることが望ましい。
上記の点に関して、本実施形態に係るボルト締付装置10においては図5に示されるように、外歯歯車18の偏芯と減速用偏芯カム16の偏芯とが互いに逆方向となるように設定されており、互いに偏芯量を打ち消し合うことで、最終的にソケットレンチ150に伝達される振動の偏芯量を小さなものとしている。
また、入力回転軸14の回転中心である中心線C1と、ソケットレンチ150の回転中心である中心線C2とは図4〜6に示すようにオフセットして配されることが望ましい。すなわち、中心線C1と中心線C2とがオフセットしていれば回転軸Lより僅かに傾くようにボルト110を締め付けることになる。このため、図2に示すように一旦、被締結物のボルト穴182の中で傾いたボルト110のボルト軸部114は、傾きをなくし、回転軸Lに近付く方向に戻ろうとする力が生じ、その力が同時に外歯歯車18と内歯歯車12との噛み合い部分を互いに押し付け合う方向に作用することで、両歯車の噛み合いをより確実なものとすることができる。
さらに、ボルト110の締付作業を行う際に、ボルト頭部112に付与される横方向の荷重(横荷重F)を振動として付加する際の最適な偏芯量は締結される箇所の大きさや形状等により異なるため、偏芯変位の大きさを調節できることが望ましい。
本実施形態では、減速用偏芯カム16の偏芯量を変位量制御用偏芯カム24により調節可能な構成としている。変位量制御用偏芯カム24は軸心に変位量制御用ピン26を備え、これを二重の偏芯リング24A、24Bでカバーする構成とされている。
図5、6に示すように二重の偏芯リング24A、24Bは入れ子構造とされており、周方向において互いの偏芯最大位置を合致させれば変位量制御用偏芯カム24全体として偏芯量は最大となり、逆に互いの偏芯最大位置を周方向に180度ずれた逆位置とすれば、変位量制御用偏芯カム24全体の偏芯量は最小となる。これにより偏芯リング24A、24Bを回転させることで偏芯変位の大きさを調節可能な構成とされている。
上記の構成とすることにより、図1に示すようにボルト110のボルト頭部112にソケットレンチ150を嵌めて締付を行うと、入力回転軸14に印加された回転力はソケットレンチ150を回転させると同時に、減速用偏芯カム16から低速回転ロータ20までの間で偏芯変位による振動を発生させる。
すなわち、入力回転軸14が1回転することで、ボルト締付装置10の内部に設けられた外歯歯車18が偏芯変位を伴いながら回転するため、1回(1往復)の振動が生じる。
また、入力回転軸14に印加された回転力により回転が1回生じると、ソケットレンチ150が設けられた低速回転ロータ20は外歯歯車の歯数をn1、内歯歯車の歯数をn2とすると、(n2−n1)/n2(回)だけ回転する。
これに対して、低速回転ロータ20の回転1回につきn2/(n2−n1)回の振動が生じる。従って、ボルト110の締付時には、締付の回転速度に比較して高い周波数で横荷重Fをボルト頭部112に印加する振動を生じ、ボルト座面113Aとネジ面186とに微小なすべりを発生させ、結果として、より少ない締め付けトルクでボルト110の締め付けが可能となる。
以上、実施形態を挙げて本発明の実施の形態を説明したが、これらの実施形態は一例であり、要旨を逸脱しない範囲内で種々変更して実施できる。また、本発明の権利範囲がこれらの実施形態に限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々なる態様で実施し得ることは言うまでもない。すなわち通常のボルト・ナットに限定せず種々の螺子部品、あるいはトルクを付与して対象物を回転させる装置に応用することができる。さらに前述のように内歯歯車および外歯歯車の歯の形状および歯数の差について特に制限はないが、例えばトロコイド歯車であれば歯数の差が1であってもよく、偏芯回転時に高周波の振動成分が重畳みされる等の効果が期待できる。
10 ボルト締付装置
12 内歯歯車
12A ケース
14 入力回転軸
16 減速用偏芯カム
18 外歯歯車
18A 係合穴
20 低速回転ロータ
22 回転伝達ピン
24 変位量制御用偏芯カム
24A 偏芯リング
24B 偏芯リング
26 変位量制御用ピン
28 アダプタ
30 ラジアルベアリング
32 スラストベアリング
34 ラジアルベアリング
C1 中心線
C2 中心線
110 ボルト
112 ボルト頭部
150 ソケットレンチ

Claims (1)

  1. 内周面に内歯歯車が形成されたケースと、
    前記ケース内で回転自在に支持され、外部からの回転力が付与される入力回転軸と、
    前記入力回転軸の先端に設けられ、前記入力回転軸と一体的に回転する減速用偏芯カムと、
    前記減速用偏芯カムと前記内歯歯車との間に設けられ、前記減速用偏芯カムに内接され、前記内歯歯車に内接しつつ一部噛み合う外歯歯車と、
    前記外歯歯車と同軸に設けられ、回転伝達ピンで同期回転する低速回転ロータと、
    前記減速用偏芯カムの回転中心に固定され、前記低速回転ロータの回転中心を回転自在に貫通する変位量制御用偏芯カムと、
    前記変位量制御用偏芯カムの回転中心と前記低速回転ロータの回転中心とを貫通し、同軸に設けられた二重の偏芯リングで保持され、前記変位量制御用偏芯カムと前記低速回転ロータとを通してナットで固定する変位量制御用ピンと、
    前記低速回転ロータに同軸に設けられ、ボルトを保持するソケットレンチと、
    を備え、
    前記外歯歯車は前記内歯歯車より少ない歯数であり、
    前記入力回転軸の回転中心と前記変位量制御用ピンの回転中心とがオフセットしたことを特徴とするボルト締付装置。
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