JP2010194620A - ボルト締付装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】ネジ面の摩擦係数そのものを変更することなく、ボルト軸力の高軸力化を図る。
【解決手段】太陽歯車130は、自転しながら外輪歯車の回転中心を振動中心として直径上を振動する。このような太陽歯車130の動きによって、ソケットレンチ150は、ボルト10を締め付ける際に、回転軸Lに直交する半径方向(ボルト座面13Aに平行)に振動(横荷重F)をボルト頭部12に付与しつつ回転トルクを付与させることができる。
【選択図】図5

Description

本発明は、ボルト締付装置に関する。
複数の被締結部品を締結させる方法の一つとして、ボルトを用いて各被締結部品を締結する方法が挙げられる。ボルトを用いて各被締結部品を締結する場合、特に、せん断外力が作用した際における被締結部品間のすべりを締結部品間の摩擦力によって防止又は抑制すべく各被締結部品を締結する場合、ボルトの締め付けによりもたらされるボルト軸線方向の軸力(以降、「ボルト軸力」と称す)を高くし、しかも安定させることが重要となる。
例えば、ボルトの締め付けによりもたらされたボルト軸力が低軸力の場合、各被締結部品間に十分な摩擦力がもたらされないので、被締結部品がせん断外力を受けた場合に被締結部品間にすべりが生じ、その結果、ボルトの弛みを引き起こす可能性が高いとされている。
よって、ボルトの締め付けによってもたらされるボルト軸力を安定させるために、ボルトの雄ネジ部と被締結部品の雌ネジ部との係合面(螺合面)であるネジ面(ネジ部)に、摩擦係数安定剤を付着させることが知られている(例えば、特許文献1、特許文献2を参照)。
特開平9−40991号公報 特開2002−323023号公報
しかしながら、特許文献1及び特許文献2に示されているような摩擦係数安定剤を使用することで、ボルト軸力の安定化を図る場合、ボルト軸力の高軸力化という点に課題が残されている。
すなわち、ボルトを用いて各被締結部品を締結する場合、ボルト締め付け後に容易にボルトが緩むことがないようにする必要があり、少なくともボルト締め付け後において、ネジが自立していなければならない、というネジの自立条件を満たす必要がある。
ここで、「ネジが自立している」との表現は、ボルトの雄ネジ部を、被締結部品の雌ネジ部に挿入した際に、雄ネジ部と雌ネジ部とが係合(螺合)する面(以降、「ネジ面」と称す)及び底面の摩擦係数が小さ過ぎて、ボルト頭部に回転トルクを付与した後、ボルトが戻り回転してしまうことがない状態を意図している。
そして、ネジが自立していない状態においては、ボルト頭部に回転トルクを付与してボルトの締め付けを行なっても、ボルト頭部への回転トルクの付与を解除した際に、ボルトの締め付けによってもたらされたボルト軸力により雄ネジ部と雌ネジ部とが相対的に回転移動してしまい、ボルト軸力が低下する。
よって、ボルト軸力の高軸力化を図るべく、潤滑剤などの摩擦係数の極めて小さな摩擦係数安定剤をネジ面に付着させ、ネジ面そのものの摩擦係数を低減させる場合、ボルト締め付け後の上述したネジの自立が問題となる。この問題を解消すべく、摩擦係数安定剤によるネジ面の摩擦係数の低下には、設計条件に応じて、ある一定の制限が課されることになる。したがって、摩擦係数安定剤の使用によるボルト軸力の高軸力化には、ある一定の制限が課せられることになる。
なお、ボルトを用いて各被締結部品を締結する場合、ボルトの締め付けの際にもたらされるボルト軸力が高ければ高いほど、より強固な各被締結部品の摩擦接合がもたらされることになる。
よって、せん断外力が作用した際における被締結部品間のすべりを、被締結部品間の摩擦力によって防止又は抑制すべく各被締結部品を締結する場合においては、ボルトを締め付ける際にもたらされるボルト軸力の高軸力化を図ることが重要である。したがって、ボルト締め付け後のネジの自立という点を考慮する必要がない手段を見出すことが重要な課題である。
本発明は、上記課題を解決すべく成されたもので、ボルトを締め付ける際にもたらされるボルト軸力の高軸力化を図るべく、ネジ面の摩擦係数そのものを変更することなくネジ面の摩擦係数を小さくしたのと同様の効果をもたらすことが可能なボルト締付装置を提供することが目的である。
請求項1に記載のボルト締付装置は、回転自在に設けられ、内歯が形成され外輪歯車と、前記外輪歯車の内側に回転自在に設けられ、外歯が形成された太陽歯車と、前記太陽歯車に回転軸と同軸上に一体的に設けられると共に複数の被締結部品を締結するボルトのボルト頭部が先端部に差し込まれ、前記太陽歯車と一体となって回転し、前記ボルト頭部を回転させて前記ボルトを締め込むボルト締付部と、前記外輪歯車と前記太陽歯車との間に回転自在に設けられ、前記外輪歯車と前記太陽歯車とに噛み合う外歯が形成され、前記太陽歯車を間に挟んで半径方向に対向して配置された一対の遊星歯車と、を有し、前記太陽歯車又は前記遊星歯車が非円形歯車とされ、非円形歯車とされた前記太陽歯車又は前記遊星歯車の歯車ピッチ曲線が、前記太陽歯車が自転しながら前記外輪歯車の回転中心を振動中心として前記外縁歯車の歯車ピッチ円の直径上を振動し、且つ、前記太陽歯車の振動周期が自転周期よりも短くなるように設定されている。
請求項1に記載のボルト締付装置では、太陽歯車は、自転しながら外輪歯車の回転中心を振動中心として外縁歯車の歯車ピッチ円の直径上を振動する。このような太陽歯車の動きによって、太陽歯車に一体的に設けられたボルト締付部でボルトを締め付ける際、回転軸方向と直交する半径方向の振動(横荷重)がボルト頭部に付与されつつ、ボルト頭部に回転トルクが付与され、ボルトが締め込まれる。
よって、ボルトを極めて僅かな角度ではあるが所定の角度を有して傾斜させつつボルトを締め込むことができる。この結果、ボルトを締め込む際にもたらされるネジ面及びボルト座面の面圧を所望の状態に偏らせることが可能となる。
このように、ボルトの締め込みの際にもたらされるネジ面及びボルト座面の面圧を意図的に偏らせることで、ボルトを締め込む際の実際のボルトの回転中心線をボルトの中心軸線からネジ面及びボルト座面の高面圧側方向へ移動させることができる。これにより、ボルトの締め付けに必要な締め付け回転トルクを低減しボルト軸部(ネジ部)に発生する捩じり応力を低減させ、ボルト軸部(ネジ部)の有する引っ張り許容応力を安定して発生し、その結果、ボルト軸力の高軸力化を図ることが可能となる。
ここで、互いに押し付けられた二つの物体(被締結部材とボルトとに相当)の平面の摩擦力には、「アモントン・クローンの摩擦の法則」に従い、最大摩擦力が存在すると考えられる。言い換えると、互いに押し付けられた二つの物体(被締結部材とボルトとに相当)の平面の摩擦力には最大摩擦力があり、その最大摩擦力で二つの物体を互いにすべらせると、すべり中に発生する荷重は最大摩擦力以上にはならない、というものである。
よって、逆に、二つの物体の接合面で一方の方向にすべりが発生している場合、一方の方向と異なる他方の方向に荷重を負荷すると、小さな荷重で他方の方向に移動が可能となる。
このような作用を被締結部材のネジによる締結に適用(応用)したのが本願発明である。すなわち、ボルト頭部に回転軸に直交する半径方向に振動(横荷重)を付与しながら(一方の方向にすべらせながら)、ボルトを回転軸回りに回転させて締め付けると(他方の方向にすべらせると)、ボルトを締め付ける締付トルクが小さくなる。つまり、小さな締め付けトルクで締付が可能となる。
そして、前述したように、本発明が適用されたボルト締付装置を用いると、回転軸と直交する半径方向に振動(横荷重)がボルト頭部に付与されつつ、ボルト頭部に回転トルクが付与され、ボルトが締め込まれる。
したがって、本発明が適用されたボルト締付装置を用いてボルトを締め付けると、小さな締め付けトルクでボルトを締め付けることが可能となる。すなわち、ネジ面の摩擦係数そのものを変更することなくネジ面の摩擦係数を小さくしたのと同様の効果がもたらされる。
更に、ボルト締付装置は、太陽歯車(ボルト締付部)の振動周期が自転周期よりも短くなるように設定されている。よって、ボルト座面における横方向のすべり速度が大きくなり、消費される摩擦力が最大摩擦力に近づく。したがって、回転方向の摩擦抵抗(ねじ面の摩擦係数)がより小さくなり、その結果、締付トルクがより小さくなる。
なお、ボルトの締め付けが完了し、ボルト頭部に付与されていた回転トルクが解放された後は、ネジ面そのものの摩擦係数に応じてもたらされる摩擦力により雄ネジ部と雌ネジ部との係合を維持することができる。
また、太陽歯車又は遊星歯車を非円形歯車とし、太陽歯車が自転しながら振動するように、太陽歯車の歯車ピッチ曲線又は遊星歯車の歯車ピッチ曲線を設定することで、複雑な機構を用いることなく、回転軸と直交する半径方向の振動(横荷重)をボルト頭部に付与しつつ、ボルト頭部に回転トルクを付与してボルトを締め込む機構が実現される。
なお、ネジ面とは、ボルトのボルト軸部の周面に形成された雄ネジ部と、雄ネジ部に対応する例えば被締結部品に形成されたネジ穴の雌ネジ部と、が係合(螺合)する面を意図する。ボルト座面とは、被締結部品とボルト頭部とが係合(当接)する面を意図している。ボルト頭部と被締結部品との間に、例えば平座金やバネ座金など座金が配置される場合には、座金と被締結部品とが係合(当接)する面を意図する。
また、本太陽歯車は、前述したように自転しながら直径上を振動する。よって、正確には、一般的な遊星歯車機構における太陽歯車とは言えないが、本明細書においては、この歯車を太陽歯車と記す。
請求項1に記載のボルト締付装置によれば、ボルトを締め付ける際に、回転軸に直交する半径方向の振動(横荷重)をボルト頭部に付与しつつ、ボルト頭部に回転トルクを付与してボルトを締め込むことができ、その結果、ネジ面の摩擦係数そのものを変更することなく、ボルト軸力の高軸力化を図ることができる、という優れた効果を有する。
回転軸と直交する半径方向の横荷重がボルト頭部に付与されていない状態のボルトを示す断面図である。 回転軸と直交する半径方向の横荷重がボルト頭部に付与され、更にソケットにボルト頭部を回転させる回転トルクが付与された状態のボルトを示す断面図である。 回転軸に直交する半径方向の振動がボルト頭部に付与された状態を説明するための説明図である。 本発明に係る第一実施形態のボルト締付装置を模式的に示す斜め下側から見た斜視図である。 図4に示す第一実施形態のボルト締付装置を示す平面図である。 第一実施形態のボルト締付装置の遊星歯車機構部を構成する遊星歯車を示す平面図である。 本発明に係る第二実施形態のボルト締付装置を示す平面図である。 第二実施形体のボルト締付装置の遊星歯車機構部を構成する太陽歯車を示す平面図である。
先ず、本発明が適用されたボルト締付装置によるボルト締付方法の基本概念について、図1〜図3を用いて説明する。なお、図1及び図2では、縦断面が図示されているが、断面を示すハッチングは、見易くするため省略している。
図1に示すように、ボルト10は、六角座付きボルトとされている。ボルト10のボルト軸部14の上端部には平面視において略六角形状のボルト頭部12が設けられている。ボルト頭部12の下部には、円板状の座金部13が形成されており、この座金部13の下面がボルト座面13Aとされる。また、ボルト軸部14の周面には、雄ネジ部16が形成されている。そして、このボルト10によって、積層された板状の被締結部品80と被締結部品90とが締結されている。なお、ボルト軸部14の軸心(回転軸L)はボルト座面13Aに直交するように構成されている。
図における上側の被締結部品80には、図における上下方向に貫通孔81が形成されている。また、図における下側の被締結部品90には、図における上下方向に貫通したネジ穴82が形成されている。このネジ穴82の内周面には、ボルト10のボルト軸部14の雄ネジ部16と係合(螺合)する雌ネジ部84が形成されている。
なお、ボルト頭部12の座金部13の下面、すなわちボルト座面13Aが被締結部品80と係合(当接)する面とされる。また、ボルト10の雄ネジ部16と被締結部品90の雌ネジ部84とが係合(螺合)する面がネジ面86とされる。更に、被締結部品80と被締結部品90とが当接した面が(被締結部品間の)摩擦接合面92とされる。
また、ボルト締付部としてのソケットレンチ150の先端部には、ボルト頭部12と略同形状(本実施形態では六角形状)の断面形状とされた凹部152が形成されている(図4及び図5も参照)。そして、ソケットレンチ150の凹部152にボルト頭部12が差し込まれると共に、ボルト頭部12が差し込まれた状態でソケットレンチ150を回転させることで、回転トルクがボルト頭部12に伝達されてボルト頭部12が回転し、ボルト10が締め込まれる。
図2は、回転軸Lと直交する半径方向の(ボルト座面13Aと平行な)横荷重Fがソケットレンチ150を介してボルト頭部12に付与され、且つ、ソケットレンチ150にボルト頭部12を回転させる回転トルクが付与されたボルト10の状態を示す図である。
この図2に示されるように、回転軸Lと直交する半径方向の(ボルト座面13Aと平行な)横荷重Fがボルト頭部12にソケットレンチ150を介して付与されると、ボルト軸線G2が被締結部品側の垂線G2に対して傾斜した状態とされ、且つボルト座面13Aが被締結部品80に対して傾斜した状態とされる。言い換えると、ボルト10全体が角度θ1、傾斜した状態とされる。なお、図2においては、傾斜の状態を明からにすべく、実際よりも大きく傾斜して図示されている。実際には、角度θ1は、例えば、0.01°のような極めて僅かな角度である。
図2のような状態、すなわち、ボルト軸線G2が被締結部品側の垂線G1に対して僅かに傾斜された状態とされ、且つ、ボルト座面13Aが被締結部品80に対して傾斜した状態で、ソケットレンチ150を介して回転トルクがボルト10のボルト頭部12に付与されると、ボルト座面13A及びネジ面86の面圧が偏った状態で、ボルト10が締め込まれることになる。
本出願人は、このように横荷重Fをボルト頭部12に付与し、ボルト10の締め込みの際にもたらされるボルト座面13A及びネジ面86の面圧を偏らせた状態でボルト10を締め込むことで、実際の回転中心線(「瞬間回転中心線」とも称す)を軸線G1からボルト座面13A及びネジ面86の高面圧側方向へ移動させることができ、これにより、ボルト頭部12に横荷重Fを付与しない場合と比較し、より少ない締め付けトルクでボルト10の締め付けが可能とされると共に、より高いボルト軸力をもたらすことが可能であることを、有限要素法解析(FEA)を用いて見出した。
ここで、「アモントン・クローンの摩擦の法則」により、摩擦力には最大摩擦力があり、すべり中に発生する荷重は最大摩擦力以上にはならない、ことが知られている。よって、一方の方向にすべらせながら、一方と異なる他方の方向に荷重を負荷すると、小さな荷重で他方の方向に移動が可能となる。
すなわち、ボルト10と締結部材80、90との間の摩擦力には最大摩擦力があるので、図3に示すように、ボルト10を回転軸Lに直交する半径方向に振動(往復)させながら(一方のS方向にすべらせながら)、ボルト10を回転軸Lに回りに回転させると(一方の方向と異なる他方のT方向にすべらせると)、比較的に小さな荷重(回転トルク)でボルト10を回転させることが可能となる(他方の方向Tに移動が可能となる)。すなわち、ボルト10を締め付ける締付トルクが小さくなる(小さな締め付けトルクで締付が可能となる)。
そして、ボルト10の振動速度(一方のS方向のすべり速度)を大きくすると、つまり、高い周波数で振動させると(横荷重Fの荷重方向を素早く反転させると)、回転方向(他方のT方向)との区別が明確になり、消費される摩擦力が最大摩擦力に近づく。したがって、回転方向の摩擦抵抗(ネジ面86の摩擦係数)がより小さくなり、その結果、締付トルクがより小さくなる。なお、図3は判りやすくするために、実際より振幅を極端に大きく図示している。実際の振幅は僅かである。
以上のように、上述したボルト10の締め付け方法によれば、具体的には、回転軸Lと直交する半径方向の(ボルト座面13Aと平行な)振動(横荷重F)をボルト頭部12に付与しつつ、ボルト10を回転させて締め込むことにより、ネジ面86の摩擦係数を小さくしたのと同じ効果を奏する、すなわち、ボルト10を締め込む際のボルト軸力の高軸力化を実現する効果を有する。
また、ボルト10の締め付けが完了し、ボルト頭部12にソケットレンチ150によって付与されていた縮め付け回転トルクが解放された後は、ネジ面86そのものの摩擦係数に応じてもたらされる摩擦力により雄ネジ部16と、被締結部品90のネジ穴82の雌ネジ部84と、の係合(螺合)を維持することができる。
この高いボルト軸力は、各被締結部品80、90間の摩擦接合面92に強固な摩擦接合をもたらし、この強固な摩擦接合により、せん断外力が作用した際における名被締結部80、90間のすべりを、より万全に防止又は抑制することができる。よって、各被締結部品80、90間のすべりを回避しボルト10(ネジ面86)の緩みを、より万全に防止又は抑制することが可能となる。
なお、このような方法でボルト10の締め付けが完了した際、ボルト座面13Aと被締結部品80との間には、極めて僅かではあるが隙間が残存する可能性がある。しかしながら、ボルト締め付け完了時に残存する隙間は、ボルト頭部12に付与されていた回転トルクを解放する際に、あるいは、せん断外力が被締結部品80、90に作用した際に、ボルト10自体がバランスを取るように移動し、実質的になくなることが想定され、例えば、メガネのヒンジ部等のような頻繁にボルトに回転トルクが作用するような締結部への適応を除いては、ボルト軸力に対する当該隙間の影響は無視できるものと考える。
また、ボルト締め付けの際、雄ネジ部16(ボルト軸部14)は、対応する雌ネジ部84(ネジ穴82)に対して傾斜して挿入されることになる。よって、その傾斜の度合いによっては、ネジ噛みが問題となる可能性がある。しかし、その場合には、ボルト締め付け後の「ネジの自立」が問題とならない範囲で、ネジ面86に摩擦係数安定剤を付着させることにより、ネジ噛みを緩和することが可能とされる。
つぎに、本発明が適用された、すなわち、回転軸Lに直交する半径方向(ボルト座面13Aに平行)に振動(横荷重F)をボルト頭部12に付与しながら、ボルト頭部12に回転トルクを付与して、ボルト10を回転させて締め付けるボルト締付装置の第一実施形態について、図4と図5を用いて説明する。
なお、図4は本実施形態のボルト締付装置100を模式的に示す斜め下側から見た斜視図である。図5は、図4に示すボルト締付装置100を模式的に示す平面図である。図6は、図5に示す遊星歯車機構部110を構成する遊星歯車140を模式的に示す平面図である。
図4と図5とに示すように、本発明に係る第一実施形態のボルト締付装置100は、外輪歯車120、太陽歯車(擬似太陽歯車)130、二つの遊星歯車140が主要な構成部品とされた遊星歯車機構部110を有している。
遊星歯車機構部110は、内歯が形成された外輪歯車120の中に外歯が形成された太陽歯車130と二つの遊星歯車140とが回転自在に設けられている。二つの遊星歯車140は、外輪歯車120と太陽歯車130との間に回転自在に設けられると共に外輪歯車120と太陽歯車130とに外歯が噛み合されている。また、二つの遊星歯車140は、太陽歯車130を間に挟んで半径方向に対向して配置されている。
太陽歯車130の中心部分には円形の孔132が形成されている。孔32の円中心と太陽歯車130の回転中心とは、同一線上に配置されている。
この孔132には、円柱状のソケットレンチ150(図1、図2参照)が圧入されており、太陽歯車130とソケットレンチ150とは一体となって回転する。
前述したように、ソケットレンチ150の先端部には、ボルト10のボルト頭部12と略同形状(本実施形態では六角形状)の断面形状の凹部152が形成され、この凹部152にボルト頭部12が差し込まれる(図1と図2を参照)。ソケットレンチ150の回転中心は、孔142の円中心と一致する。したがって、太陽歯車130の回転軸とソケットレンチ150の回転軸とは一致している。
また、図4に示すように、太陽歯車130からは締付回転軸136が延出されている。
外輪歯車120及び太陽歯車130は円形歯車とされている。言い換えると、外輪歯車120の歯車ピッチ円P1及び太陽歯車130の歯車ピッチ円P2(図4参照)は真円とされている。
これに対して、図4〜図6に示すように、二つの遊星歯車140は楕円形の非円形歯車とされている。つまり、遊星歯車140の歯車ピッチ曲線(歯車のかみあう位置を結んだ曲線)P3は楕円形とされている。なお、二つの遊星歯車140の楕円形の歯車ピッチ曲線P3の長軸L1の長さをa、短軸L2の長さをbとする。また、図5に示すように、太陽歯車130の歯車ピッチ円P1の直径をcとし、外輪歯車120の歯車ピッチ円P1の直径をdとする。そして、これらの関係をa+b+c=dとなるように設定する。
なお、外輪歯車120の歯車ピッチ円P1の中心をQ1とし、Q1を通る直径T上に、二つの遊星歯車140の中心(長軸L1と短軸L2の交点)Q3、太陽歯車130の中心Q2が配置されている。また、二つの遊星歯車140は、移動することなくその場で自転する。
つぎに、本実施形態の作用及び効果について説明する。
ソケットレンチ150の凹部152にボルト頭部12を差し込む(図1参照)。なお、このとき外輪歯車120は被締結部材80に接触させると共に、外輪歯車120が移動しないように、図示しない固定手段によって固定する。
この状態で、図示しない駆動手段を用いて締付回転軸(ナットランナー)136を回転させることによって、太陽歯車130を自転(回転)させる。太陽歯車130の自転(回転)に伴い、遊星歯車140がその場で自転(回転)する。遊星歯車140の歯車ピッチ曲線P3は楕円形とされているので、太陽歯車130が外輪歯車120の直径上を振動する。つまり、太陽歯車130は、自転しながら外輪歯車の回転中心を振動中心として直径上を振動する。なお、太陽歯車130は、自転、一回転につき、[b÷(a+c)÷2]回振動する。
このような太陽歯車130の動きによって、ソケットレンチ150は、ボルト10を締め付ける際に、回転軸Lに直交する半径方向(ボルト座面13Aに平行)に振動(横荷重F)をボルト頭部12に付与しつつ回転トルク(図3矢印T)を付与させることができる(図3参照)。
また、太陽歯車130は、自転一回につき、[b÷(a+c)÷2]回振動する。よって、太陽歯車(ボルト締付部)の振動周期は、自転周期よりも短い。これにより、ボルト座面13Aにおける横方向のすべり速度が大きくなり、消費される摩擦力が最大摩擦力に近づく。したがって、回転方向の摩擦抵抗(ネジ面86(図1参照)の摩擦係数)がより効果的に小さくなる。
したがって、小さな締め付けトルクでボルト10を締め付けることが可能となる。すなわち、ネジ面86の摩擦係数そのものを変更することなくネジ面86の摩擦係数を小さくしたのと同様の効果がもたらされる。また、この結果、ボルト軸力の高軸力化が図られる。
そして、このようにして得られた高いボルト軸力は、各被締結部品80、90間の摩擦接合面92に強固な摩擦接合をもたらし、この強固な摩擦接合により、せん断外力が作用した際における各被締結部80、90間のすべりを、より万全に防止又は抑制することができる。よって、各被締結部品80、90間のすべりを回避しボルト10の緩みを、より万全に防止又は抑止することが可能となる。
また、ボルト10の締め付けが完了し、ソケットレンチ150がボルト頭部12から外れボルト頭部12に付与されていた回転トルクが解放された後は、ネジ面86そのものの摩擦係数に応じてもたらされる摩擦力により雄ネジ部16と、被締結部品90のネジ穴82の雌ネジ部84と、の係合(螺合)を維持することができる(図1参照)。
また、この結果、本発明の適用に加え摩擦係数安定剤を併用することで、より高いボルト軸力をもたらすことが可能となる。
また、本実施形態のような遊星歯車機構部110を用いることで、回転軸Lに直交する半径方向の振動(横荷重F)をボルト頭部12に付与しつつ、ボルト頭部12に回転トルクを付与してボルトを締め込む機構が容易に実現される。
つぎに、本発明が適用されたボルト締付装置の第二実施形態について、図7と図8を用いて説明する。なお、第一実施形態と同一の部材には同一の符号を付し、重複する説明は週略する。図7は第二実施形態のボルト締付装置500の要部である遊星歯車機構部510を模式的に示す平面図である。図8は遊星歯車機構部510を構成する太陽歯車530を示す平面図である。
図7に示すように、本発明に係る第二実施形態のボルト締付装置500の遊星歯車機構部510は、外輪歯車120、太陽歯車(擬似太陽歯車)530、二つの遊星歯車540が主要な構成部品とされている。
内歯が形成された外輪歯車120の中に外歯が形成された略星型(花びら型)の太陽歯車530と二つの遊星歯車540とが回転自在に設けられている。
二つの遊星歯車540は、外輪歯車120と太陽歯車530との間に回転自在に設けられると共に外輪歯車120と太陽歯車530とに外歯が噛み合されている。また、二つの(一対の)遊星歯車540は、太陽歯車530を間に挟んで半径方向に対向して配置されている。
太陽歯車530の中心部分には円形の孔132が形成されている。孔132の円中心と太陽歯車530の回転中心とは、同一線上に配置されている。
この孔132には、円柱状のソケットレンチ150(図1、図2参照)が圧入されており、太陽歯車530とソケットレンチ150とは一体となって回転する。
外輪歯車120及び遊星歯車540は円形歯車とされている。言い換えると、外輪歯車120の歯車ピッチ円P1及び遊星歯車540の歯車ピッチ円P33は真円とされている。
これに対して、図8に示すように、太陽歯車530は略星型の非円形歯車とされている。より詳しく説明すると、太陽歯車530の歯車ピッチ曲線P22は五つの突起部532、534、536、538、540を有する略星型とされている。そして、略星型の各突起部532、534、536、538、540の頂点部542、544、546、548、550と突起部間の凹部状の底部572、574、576、578、580との間の長さ(距離)はfとされ、中心Q2を通る歯車ピッチ円曲線P22の長さ(距離)は常に一定の長さfとなっている。
また、図7に示すように、遊星歯車540の歯車ピッチ円P33の直径をgとし、外輪歯車120の歯車ピッチ円P1の直径をdとする。そして、f+2g=dとなるように設定されている。
なお、外輪歯車120の歯車ピッチ円P1の中心をQ1とし、Q1を通る直径T上に、二つの遊星歯車540の中心Q33、太陽歯車530の中心Q22が配置されている。また、二つの遊星歯車540は、移動することなくその場で自転する。
つぎに、本実施形態の作用及び効果について説明する。
第一実施形体のボルト締付装置100(図4〜図6参照)と同様に、第二実施形態のボルト締付装置500も、太陽歯車530は、自転しながら外輪歯車120の回転中心Q1を振動中心として直径上を振動する。
このような太陽歯車130の動きによって、ソケットレンチ150は、ボルト10を締め付ける際に、回転軸Lに直交する半径方向(ボルト座面13Aに平行)に振動(横荷重F)をボルト頭部12に付与しつつ回転トルク(図3の矢印T)を付与させることができる(図3参照)。
また、太陽歯車530は、自転一回転につき、5回振動する。よって、太陽歯車530の振動周期は、自転周期よりも短い。これにより、ボルト座面13Aにおける横方向のすべり速度が大きくなり、消費される摩擦力が最大摩擦力に近づく。したがって、回転方向の摩擦抵抗(ネジ面86(図1参照)の摩擦係数)がより効果的に小さくなる。
したがって、小さな締め付けトルクでボルト10を締め付けることが可能となる。すなわち、ネジ面86の摩擦係数そのものを変更することなくネジ面86の摩擦係数を小さくしたのと同様の効果がもたらされる。また、この結果、ボルト軸力の高軸力化が図られる。
なお、本実施形態において、太陽歯車530の歯車ピッチ曲線P22は五つの突起部532、534、536、538、540を有する略星型とされていたが、これに限定されない。他の奇数個の突起部を有する略星型であってもよい。
なお、本発明は上記実施形態に限定されない。
上記実施形態では、ボルト10は、頭部12に座金部13が形成された六角座付きボルトとされていたが、これに限定されない。ボルト頭部に座金部が形成されていない六角ボルトであってもよい。また、ボルト頭部と被締結部品との聞に、例えば平座金やバネ座金など座金が配置されてもよい。
また、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々なる態様で実施し得ることは言うまでもない。
また、上記実施形態以外の構成の機構であってもよい。要は、太陽歯車又は遊星歯車が非円形歯車とされ、非円形歯車とされた太陽歯車又は遊星歯車の歯車ピッチ曲線が、太陽歯車が自転しながら外輪歯車の回転中心を振動中心として外縁歯車の歯車ピッチ円の直径上を振動し、且つ、太陽歯車の振動周期が自転周期よりも短くなるように設定されていればよい。
10 ボルト
12 ボルト頭部
14 ボルト軸部
16 雄ネジ部
80 被締結部品
82 ネジ穴
84 雌ネジ部
86 ネジ面
90 被締結部品
100 ボルト締付装置
110 遊星歯車機構部
120 外輪歯車
130 太陽歯車
140 遊星歯車
150 ソケットレンチ(ボルト締付部)
500 ボルト締付装置
510 遊星歯車機構部
530 太陽歯車
540 遊星歯車
P1 歯車ピッチ円
P2 歯車ピッチ円
P3 歯車ピッチ曲線
P22 歯車ピッチ曲線
p33 歯車ピッチ円
Q1 外輪歯車の中心
Q2 太陽歯車の中心
Q3 遊星歯車の中心
Q22 太陽歯車の中心
Q33 遊星歯車の中心

Claims (1)

  1. 回転自在に設けられ、内歯が形成され外輪歯車と、
    前記外輪歯車の内側に回転自在に設けられ、外歯が形成された太陽歯車と、
    前記太陽歯車に回転軸と同軸上に一体的に設けられると共に複数の被締結部品を締結するボルトのボルト頭部が先端部に差し込まれ、前記太陽歯車と一体となって回転し、前記ボルト頭部を回転させて前記ボルトを締め込むボルト締付部と、
    前記外輪歯車と前記太陽歯車との間に回転自在に設けられ、前記外輪歯車と前記太陽歯車とに噛み合う外歯が形成され、前記太陽歯車を間に挟んで半径方向に対向して配置された一対の遊星歯車と、
    を有し、
    前記太陽歯車又は前記遊星歯車が非円形歯車とされ、
    非円形歯車とされた前記太陽歯車又は前記遊星歯車の歯車ピッチ曲線が、前記太陽歯車が自転しながら前記外輪歯車の回転中心を振動中心として前記外縁歯車の歯車ピッチ円の直径上を振動し、且つ、前記太陽歯車の振動周期が自転周期よりも短くなるように設定されたボルト締付装置。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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JP2019156201A (ja) * 2018-03-14 2019-09-19 しげる工業株式会社 車両内装材の装着構造

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