JP2011142146A - 圧電セラミックス膜形成用組成物、圧電素子及び液体噴射ヘッド並びに液体噴射装置 - Google Patents

圧電セラミックス膜形成用組成物、圧電素子及び液体噴射ヘッド並びに液体噴射装置 Download PDF

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Abstract

【課題】硝酸塩や溶媒としてのPRTR対象物質を使用せず且つ廃液も生じさせずに製造できる鉛を含有しない圧電セラミックス膜形成用組成物、圧電素子及び液体噴射ヘッド並びに液体噴射装置を提供する。
【解決手段】Bi3+、Fe3+及びMn3+を含み、溶媒としてアセチルアセトン及び2−エチルヘキサン酸を含む圧電セラミックス膜形成用組成物とする。
【選択図】なし

Description

本発明は、液体噴射ヘッド等に使用される圧電素子を構成する圧電セラミックス膜等を形成するための圧電セラミックス膜形成用組成物、圧電素子及び液体噴射ヘッド並びに液体噴射装置に関する。
液体噴射ヘッドに用いられる圧電素子としては、電気的機械変換機能を呈する圧電材料、例えば、結晶化した誘電材料からなる圧電体層(圧電セラミックス膜)を、2つの電極で挟んで構成されたものがある。このような圧電素子は、例えば撓み振動モードのアクチュエーター装置として液体噴射ヘッドに搭載される。液体噴射ヘッドの代表例としては、例えば、インク滴を吐出するノズル開口と連通する圧力発生室の一部を振動板で構成し、この振動板を圧電素子により変形させて圧力発生室のインクを加圧してノズル開口からインク滴として吐出させるインクジェット式記録ヘッドがある。
このような圧電素子を構成する圧電セラミックス膜として用いられる圧電材料には高い圧電特性が求められており、代表例として、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)が挙げられるが(特許文献1参照)、チタン酸ジルコン酸鉛には鉛が含まれており、環境問題の観点から、鉛を含有しない圧電材料が求められている。鉛を含有しない圧電材料は種々あり、例えばABOで示されるペロブスカイト構造を有するBiFeOがある。
ところで、圧電素子を構成する圧電セラミックス膜を製造する方法として、例えば、固相法、気相法、溶液法などが挙げられる。固相法は、酸化物粉末を物理的に混合・粉砕・成形を行った後に、1000〜1300℃で焼成することで圧電セラミックスを作製するため、焼成温度が高温であるという問題がある。また、気相法であるスパッタリング法は、真空中で酸化物ターゲットに対し、例えばイオン化されたアルゴンなどを衝突させ、それによってはじき出された元素を基板に蒸着させることで圧電セラミックスを作製する方法であるが、ターゲットとして使用した酸化物から組成がずれるという問題があり、多元素を利用するセラミックスの作製手法としては不向きである。それに加え、高真空が必要であることから、装置の大型化は避けられない。
一方、溶液法は、目的組成の金属元素を含む前駆体溶液を用いて、例えばスピンコート法、ディップコート法、インクジェット法などにより基板上に成膜し、焼成することで圧電セラミックスを作製する手法であるため、固相法と比較して低温で圧電セラミックスを作製することができ、また、高真空を必要としないため小型の装置で作製可能であるため好ましい。
しかしながら、一般的に圧電セラミックスの前駆体溶液の溶媒には、例えば2−メトキシエタノール、トルエン、キシレンなど危険有害性の高いPRTR対象物質が使用されるため、作業者の健康への影響および揮発溶媒の環境への拡散の問題が懸念される。
例えば、鉛を含有しない圧電材料である上記BFO系の圧電セラミックス膜を溶液法で製造する際に必要となるBiを含む圧電セラミックスの前駆体溶液には、トルエンやキシレンなどのPRTR対象物質が溶媒として使用されている。これは、例えば特許文献2に示すように、2−エチルヘキサン酸ビスマスの作製プロセスとして、硝酸ビスマス水溶液中で2−エチルヘキサン酸ビスマスを作成後、トルエンなどの非プロトン性溶媒で抽出する工程を経る必要があるからである。そのため、従来のビスマス溶液作製プロセスでは、トルエン等のPRTR対象物質からなる溶媒を削減することは難しい。それに加え、前述のプロセスは、抽出プロセスを経るため、Bi分離後の水溶液が廃液として発生するという問題もある。
また、抽出プロセスを用いず、PRTR対象物質ではない溶媒を用いたBiを含む圧電セラミックスの前駆体溶液として、原料に硝酸ビスマスを使用し、溶媒にエチレングリコール、配位子にクエン酸を使用した方法がある(非特許文献1)。この方法では、危険有害性の低い溶媒を用い、廃液も発生しないが、硝酸塩は危険物第1類に分類され、例えば危険物第4類に分類されるヒドロキシル基を持つ有機物と触媒下で爆発性を有する硝酸エステルを生成する可能性があるため、硝酸塩を使用することは望ましくない。
特開2001−223404号公報 特開2000−178291号公報 A. Z. Simoes et al., JOURNAL OF APPLIED PHYSICS, 101,074108(2007)
本発明はこのような事情に鑑み、硝酸塩や溶媒としてのPRTR対象物質を使用せず且つ廃液も生じさせずに製造できる鉛を含有しない圧電セラミックス膜形成用組成物、圧電素子及び液体噴射ヘッド並びに液体噴射装置を提供することを目的とする。
上記課題を解決する本発明の態様は、Bi3+、Fe3+及びMn3+を含み、溶媒としてアセチルアセトン及び2−エチルヘキサン酸を含むことを特徴とする圧電セラミックス膜形成用組成物にある。
かかる態様では、溶媒をアセチルアセトン及び2−エチルヘキサン酸とすることにより、硝酸塩や溶媒としてのPRTR対象物質を使用しない圧電セラミックス膜形成用組成物(圧電セラミックスの前駆体溶液)とすることができるため、危険有害性が低く安全に使用できるものとなる。また、この圧電セラミックス膜形成用組成物は廃液を生じさせずに製造できるものである。そして鉛を含有しないものである。したがって、圧電セラミックス膜や、圧電セラミックス膜を電極で挟んだ圧電素子を製造等する際の製造者や環境への負荷を低減することができる。
また、酢酸マンガン(III)及びアセチルアセトナトマンガン(III)の少なくとも一方と、酢酸ビスマス(III)と、アセチルアセトナト鉄(III)とを含むことが好ましい。これによれば、扱いが容易で手に入りやすい酢酸マンガン(III)、アセチルアセトナトマンガン(III)、酢酸ビスマス(III)やアセチルアセトナト鉄(III)を用いた圧電セラミックス膜形成用組成物となる。
上記圧電セラミックス膜形成用組成物は、La3+を含んでいてもよい。これによれば、鉄マンガン酸ビスマスランタンを含有する圧電セラミックス膜を形成できる圧電セラミックス膜形成用組成物となる。
そして、アセチルアセトナトランタン(III)を含むことが好ましい。これによれば、扱いが容易で手に入りやすいアセチルアセトナトランタン(III)を用いた圧電セラミックス膜形成用組成物となる。
さらに、ポリエチレングリコールを含んでいてもよい。これによれば、クラックの発生が抑制された圧電セラミック膜を形成できる圧電セラミックス膜形成用組成物となる。
本発明の他の態様は、上記態様の圧電セラミックス膜形成用組成物により形成された圧電セラミックス膜と、前記圧電セラミックス膜に電圧を印加する電極とを有することを特徴とする圧電素子にある。かかる態様では、圧電セラミックス膜が、硝酸塩や溶媒としてのPRTR対象物質を使用せず且つ廃液も生じさせずに製造でき鉛を含有しない圧電セラミックス膜形成用組成物により形成されているので、環境等への負荷が低減された圧電素子となる。また、Bi、Fe及びMnを含有する圧電セラミックス膜を具備するので、圧電特性も優れている。
本発明の他の態様は、上記態様の圧電素子を、ノズル開口に連通する圧力発生室内の液体を前記ノズル開口から吐出させるための圧力を発生させる圧力発生手段として具備することを特徴とする液体噴射ヘッドにある。かかる態様では、環境等への負荷が低減され且つ吐出特性に優れた液体噴射ヘッドとなる。
また、本発明の他の態様は、上記態様の液体噴射ヘッドを具備することを特徴とする液体噴射装置にある。かかる態様では、環境等への負荷が低減され且つ吐出特性に優れた液体噴射装置となる。
実施例1のP−V曲線を表す図である。 実施例1のX線回折パターンを表す図である。 実施例2のP−V曲線を表す図である。 実施例1のX線回折パターンを表す図である。 実施形態2に係る記録ヘッドの概略構成を示す分解斜視図である。 実施形態2に係る記録ヘッドの平面図及び断面図である。 本発明の一実施形態に係る記録装置の概略構成を示す図である。
(実施形態1)
本発明の圧電セラミックス膜形成用組成物は、強誘電体薄膜等の圧電セラミックス膜を形成するのに用いられる組成物であり、Bi3+、Fe3+およびMn3+、さらに必要に応じてLa3+を含み、溶媒としてアセチルアセトン及び2−エチルヘキサン酸を含むものである。
このように、本発明の圧電セラミックス膜形成用組成物においては、溶媒をアセチルアセトン及び2−エチルヘキサン酸とする。ここで、一般的な圧電セラミックス膜形成用組成物の溶媒としては、トルエン、キシレン、エチレングリコール、酢酸、2−メトキシエタノール等、様々な有機溶媒があるが、アセチルアセトン及び2−エチルヘキサン酸の両者を溶媒とすることで、Bi3+、Fe3+、Mn3+や、La3+の各金属塩を全て溶解することができる。これにより、圧電セラミックス膜を構成する材料となる金属がBi(III)、Fe(III)及びMn(III)であるBFM膜や、圧電セラミックス膜を構成する材料となる金属がBi(III)、Fe(III)、Mn(III)及びLa(III)であるBLFM膜を形成することができる圧電セラミックス膜形成用組成物であって、硝酸塩や溶媒としてのトルエンやキシレンといったPRTR対象物質を使用せず且つ廃液も生じさせずに製造でき、鉛を含有しないものとなる。
ここで、アセチルアセトンや、2−エチルヘキサン酸をそれぞれ単独で溶媒としても、後述する試験例に示すように、Bi(III)、Fe(III)、Mn(III)やLa(III)の各金属塩を全て溶解させることはできないため、単一溶媒とすることはできない。なお、各金属塩を全て溶解することができなければ、均一な溶液とはならないため圧電特性が良好な圧電セラミックス膜を形成することはできない。アセチルアセトンと2−エチルヘキサン酸との混合比は特に限定されず、圧電セラミックス膜を構成する材料となる金属原料(金属塩)を溶解できればよいが、例えば、体積比でアセチルアセトン:2−エチルヘキサン酸=1:4〜4:1程度であればよい。
Bi3+となる金属塩としては、酢酸ビスマス(III)が挙げられる。酢酸ビスマス(III)の他、Biのアルコキシドや、2−エチルヘキサン酸ビスマス、硝酸ビスマス等様々な化合物があるが、Biのアルコキシドは固体であり扱い難い。また、2−エチルヘキサン酸ビスマスは安定ではなく、高価である。そして、硝酸ビスマスは、ヒドロキシル基を持つ有機物と触媒下で爆発性を有する硝酸エステルを生成する可能性があり危険だという問題がある。
また、Fe3+となる金属塩としては、アセチルアセトナト鉄(III)が挙げられる。そして、Mn3+となる金属塩としては、酢酸マンガン(III)やアセチルアセトナトマンガン(III)が挙げられる。また、La3+となる金属塩としては、アセチルアセトナトランタン(III)が挙げられる。
このように、硝酸ビスマス、硝酸鉄、硝酸ランタン等の硝酸塩を含有しない圧電セラミックス膜形成用組成物とすることができるため、硝酸エステルを生成する危険を回避できる。
なお、圧電特性を良好にする等のために、Bi3+、Fe3+、Mn3+、La3+以外の金属を含有していてもよいが、勿論、硝酸塩の形態で含有させない必要があり、また、溶媒に溶解できる必要がある。
そして、本発明の圧電セラミックス膜形成用組成物は、Bi3+、Fe3+及びMn3+、必要に応じてLa3+を含むため、これを焼成等して得られる圧電セラミックス膜は、Bi(III)、Fe(III)及びMn(III)、又は、Bi(III)、Fe(III)、Mn(III)及びLa(III)を含むABO型の複合酸化物である。これらは後述する実施例に示すように圧電体とすることができる。したがって、本発明の圧電セラミックス膜形成用組成物を用いると、鉛を含有しない圧電セラミックス膜を形成することができる。なお、ABO型構造、すなわち、ペロブスカイト構造のAサイトは酸素が12配位しており、また、Bサイトは酸素が6配位して8面体(オクタヘドロン)をつくっている。そして、AサイトにBiやLaが、BサイトにFeやMnが位置している。そしてBi、Fe、Mn及びLaを含有する場合、圧電セラミックス膜は例えば下記一般式(1)で表されるABO型の複合酸化物である。なお、Bi、La、Fe及びMnを含むABO型の複合酸化物は、その組成比によって、強誘電体となったり、反強誘電体となったり、常誘電体となったりするものであり、下記一般式(1)において、0.10≦x≦0.20,0.01≦y≦0.09の場合は強誘電体、0.21≦x≦0.38,0.01≦y≦0.09の場合は反強誘電体である。
(Bi1−x,La)(Fe1−y,Mn)O (1)
ここで、自発分極が互い違いに並んでいる物質である反強誘電体、すなわち、電界誘起相転移を示すものを圧電体層とした場合、一定印加電圧以上で電界誘起相転移を示し、大きな歪を発現するため、強誘電体を超える大きな歪を得ることが可能であるが、一定電圧以下では駆動せず、歪み量も電圧に対して直線的に変化しない。なお、電界誘起相転移とは、電場によって起こる相転移であり、反強誘電相から強誘電相への相転移や、強誘電相から反強誘電相への相転移を意味する。そして、強誘電相とは、分極軸が同一方向に並んでいる状態であり、反強誘電相とは分極軸が互い違いに並んでいる状態である。例えば、反強誘電相から強誘電相への相転移は、反強誘電相の互い違いに並んでいる分極軸が180度回転することにより分極軸が同一方向になって強誘電相になることであり、このような電界誘起相転移によって格子が膨張又は伸縮して生じる歪みが、電界誘起相転移により生じる電界誘起相転移歪みである。このような電界誘起相転移を示すものが反強誘電体であり、換言すると、電場のない状態では分極軸が互い違いに並んでおり、電場により分極軸が回転して同一方向にならぶものが反強誘電体である。このような反強誘電体は、反強誘電体の分極量Pと電圧Vの関係を示すP−V曲線において、正の電界方向と負の電界方向で2つのヒステリシスループ形状を持つダブルヒステリシスとなる。そして、分極量が急激に変化している領域が観察されるが、この領域が強誘電相から反強誘電相への相転移や、強誘電相から反強誘電相への相転移している箇所である。
一方、強誘電体は、反強誘電体のようにP−V曲線がダブルヒステリシスとはならず、分極方向を一方向に揃えることで歪み量が印加電圧に対して直線的に変化する。したがって、歪み量の制御が容易なので吐出させる液滴サイズ等も容易であり、微振動を発生させる小振幅振動及び大きな排除体積を発生させる大振幅振動の両者を一つの圧電素子により発生させることができる。
また、本発明の圧電セラミックス膜形成用組成物は、添加剤を含有していてもよい。添加剤としては、ポリエチレングリコール等の増粘材が挙げられる。ポリエチレングリコール等の増粘材の添加により、形成される圧電セラミックス膜のクラックの発生を防止することができる。
このような本発明の圧電セラミックス膜形成用組成物は、アセチルアセトン及び2−エチルヘキサン酸からなる溶媒に、酢酸ビスマス(III)、アセチルアセトナト鉄(III)、アセチルアセトナトマンガン(III)、アセチルアセトナトランタン(III)等の金属塩を添加して、必要に応じて加熱等して溶解させることにより、製造することができる。このように、本発明の圧電セラミックス膜形成用組成物は、抽出工程を経ずに製造することができるため、製造時に有害な廃液も生じない。なお、各金属塩を溶媒に添加する順序に特に制限はなく、同時に添加しても別々に添加してもよく、また、各金属塩を溶媒へ溶解した溶液をそれぞれ作成し、その後各金属塩の溶液を混合するようにしてもよい。
上述したように、本発明の圧電セラミックス膜形成用組成物は、硝酸塩を含有せず且つ溶媒としてのPRTR対象物質を含有しないため危険有害性が低く安全に使用でき、また、廃液も生じさせずに製造でき、さらに、鉛を含有しないものである。したがって、圧電セラミックス膜や、圧電セラミックス膜を電極で挟んだ圧電素子を製造する際に、製造者及び環境への負荷を低減することができる。
なお、本発明の圧電セラミックス膜形成用組成物を用いて圧電セラミックス膜を形成する方法に特に制限はないが、例えば、圧電セラミックス膜形成用組成物を塗布乾燥し、さらに高温で焼成することで金属酸化物からなる圧電体層を得る、MOD(Metal−Organic Decomposition)法を用いて圧電体層を形成できる。具体的には例えば、圧電セラミックス膜形成用組成物を被対象物上にスピンコート法、ディップコート法、インクジェット法等で塗布し圧電セラミックス膜前駆体膜を形成する(塗布工程)。次いで、この圧電セラミックス膜前駆体膜を所定温度に加熱して一定時間乾燥させる(乾燥工程)。次に、乾燥した圧電セラミックス膜前駆体膜を所定温度に加熱して一定時間保持することによって脱脂する(脱脂工程)。なお、ここで言う脱脂とは、圧電セラミックス膜前駆体膜に含まれる有機成分を、例えば、NO、CO、HO等として離脱させることである。
次に、圧電セラミックス膜前駆体膜を所定温度、例えば600〜700℃程度に加熱して一定時間保持することによって結晶化させ、圧電セラミックス膜を形成する(焼成工程)。なお、乾燥工程、脱脂工程及び焼成工程で用いられる加熱装置としては、例えば、赤外線ランプの照射により加熱するRTA(Rapid Thermal Annealing)装置やホットプレート等が挙げられる。
なお、上述した塗布工程、乾燥工程及び脱脂工程や、塗布工程、乾燥工程、脱脂工程及び焼成工程を所望の膜厚等に応じて複数回繰り返すことにより、複数層の圧電セラミックス膜からなるものとしてもよい。
このように、本発明の圧電セラミックス膜形成用組成物を用いることにより圧電セラミックス膜を溶液法で形成できるため、酸化物粉末を混合・粉砕成形を行った後焼成する固相法のように高温で焼成する工程を経る必要があるという問題はなく、また、スパッタリング法のように、ターゲットとして使用した酸化物から組成がずれるという問題や、高真空のための装置の大型化の問題もなく、容易に圧電セラミックス膜を製造することができる。
以下、本発明の圧電セラミックス膜形成用組成物について、下記試験例等に基づいてさらに詳細に説明する。
(試験例)金属塩の溶解性
<金属塩>
金属塩として、酢酸ビスマス(III)、アセチルアセトナトランタン(III)、アセチルアセトナト鉄(III)、アセチルアセトナトマンガン(III)、酢酸マンガン(III)を選定した。
<単一溶媒への溶解性>
上記金属塩について、アセチルアセトン、エチレングリコール、氷酢酸、2−エチルヘキサン酸への溶解挙動を調べた。結果を表1に示す。なお、溶解挙動は、各溶媒に対して金属塩を0.1mol/L程度添加して調べた。
表1に示すように、酢酸ビスマス(III)は氷酢酸では良好な溶解性を示し、2−エチルヘキサン酸に少し溶けた。しかしながら、アセチルアセトン及びエチレングリコールにはほとんど溶けなかった。これは、Bi3+が酸性溶媒下で安定化されるからである。また、アセチルアセトナト鉄(III)はアセチルアセトンや氷酢酸に良好な溶解性を示し、エチレングリコール及び2−エチルヘキサン酸への溶解度は低かった。そして、酢酸マンガン(III)及びアセチルアセトナトマンガン(III)は、アセチルアセトン及びエチレングリコールには良好な溶解性を示したが、氷酢酸には溶けなかった。また、酢酸マンガン(III)は2−エチルヘキサン酸に良好な溶解性を示したが、アセチルアセトナトマンガン(III)は溶解度が低かった。
したがって、各種溶媒においてBi3+,Fe3+,Mn3+の全てを良好に溶かす溶媒はなかった。なお、Mnに関しては、2価の酢酸塩であれば氷酢酸に良好な溶解性を示すが、良好な絶縁性を示す圧電セラミックス膜を作製するためには、3価のMnである必要があるため、氷酢酸は溶媒として不適格であるといえる。
<配位子を添加した溶媒への溶解性>
前述したとおりBi3+は酸性下で安定化されるため、酸性配位子の検討を行った。組み合わせとして、溶媒にエチレングリコールを使用し、配位子として、1価のカルボン酸である酢酸、2価のカルボン酸であるシュウ酸、3価のカルボン酸であるクエン酸の3種類について検討を行った。上記金属塩の溶解挙動を表1に示す。なお、溶解挙動は、酢酸に関してはエチレングリコール:酢酸=3:1程度の容量比で混合した溶媒に対して金属塩を0.1mol/L程度添加して調べた。シュウ酸に関してはモル比で金属あたり1.5倍量、クエン酸に関してはモル比で金属あたり等量添加し、金属塩を0.1mol/L程度添加して調べた。
表1に示すように、配位子として酢酸を使用すると、上記と同様に3価のマンガン塩の溶解度が極端に落ちた。このため、酢酸は配位子としては不適格であるといえる。また、シュウ酸に関しては酢酸ビスマスが溶けなかったため、配位子としては不適格であるといえる。クエン酸に関しては、クエン酸よりも酢酸ビスマスの溶解度が向上するものの、圧電セラミックス膜形成用組成物として使用するには十分な溶解度を得ることが出来なかった。
<混合溶媒への溶解性>
溶媒兼配位子として働き、アセチルアセトナト鉄に対し良好な溶解度を示すアセチルアセトンと、溶媒兼配位子として働き、ビスマスに配位し2−エチルヘキサン酸ビスマスを形成する2−エチルヘキサン酸の混合溶媒について検討を行った。上記金属塩の溶解挙動を表1に示す。なお、アセチルアセトン:2−エチルヘキサン酸=2:1の容量比で混合した混合溶媒に対して金属塩を0.1mol/L程度添加して調べた。
表1に示すように、酢酸ビスマス(III)、アセチルアセトナト鉄(III)、酢酸マンガン(III)、アセチルアセトナトマンガン(III)のいずれにおいても良好な溶解性を示した。
また、上記と同様のアセチルアセトン:2−エチルヘキサン酸=2:1の容量比で混合した混合溶媒へのアセチルアセトナトランタン(III)の溶解性を調べた。結果を表1に示す。表1に示すように、良好な溶解性を示した。
したがって、アセチルアセトン及び2−エチルヘキサン酸を溶媒とすることにより、酢酸ビスマス(III)、アセチルアセトナト鉄(III)、酢酸マンガン(III)、アセチルアセトナトマンガン(III)及びアセチルアセトナトランタン(III)を全て溶解することができ、Bi3+、Fe3+、及びMn3+、さらにはLa3+を含む圧電セラミックス膜形成用組成物を作成することができることがわかった。
<増粘材を添加した溶媒への溶解性>
溶媒兼配位子としてアセチルアセトン及び2−エチルヘキサン酸を使用し、増粘材としてポリエチレングリコールを使用した混合溶媒について、上記金属塩の溶解挙動を調べた。なお、アセチルアセトン:2−エチルヘキサン酸:ポリエチレングリコール=2:1:1の容量比で混合した混合溶媒に対して金属塩を0.1mol/L程度添加して調べた。
この結果、酢酸ビスマス(III)、アセチルアセトナト鉄(III)、酢酸マンガン(III)、アセチルアセトナトマンガン(III)及びアセチルアセトナトランタン(III)のいずれにおいても良好な溶解性を示した。
Figure 2011142146
(実施例1)
アセチルアセトン、2−エチルヘキサン酸及びポリエチレングリコールを、アセチルアセトン:2−エチルヘキサン酸:ポリエチレングリコール=2:1:1の容量比で混合した溶液を溶媒とした。この溶媒に、酢酸ビスマス(III)、アセチルアセトナト鉄(III)及びアセチルアセトナトマンガン(III)を、それぞれ添加し、90℃に加熱・還流し、各金属塩の溶液を作製した。そして、作製した各金属塩の溶液を、酢酸ビスマス(III):アセチルアセトナト鉄(III):アセチルアセトナトマンガン(III)=21:20:1の物質量比となるように混合して、BFM膜前駆体溶液(圧電セラミックス膜形成用組成物)を作製した。
このBFM原料溶液を使用し、基板上に形成された(111)面配向した白金膜(Pt電極)上に、スピンコート法により圧電セラミックス薄膜を形成した。その手法は以下のとおりである。まず、BFM膜前駆体溶液を上記Pt電極上に滴下し、1000rpmで基板を回転させてBFM膜前駆体膜(圧電セラミックス膜前駆体膜)を形成した(塗布工程)。次に150℃で1分間加熱した後に、400℃で3分間加熱を行った(乾燥及び脱脂工程)。この塗布工程・乾燥及び脱脂工程を5回繰り返した後に、Rapid Thermal Annealing (RTA)で650℃、3分間焼成を行った(焼成工程)。この塗布工程・乾燥及び脱脂工程を5回繰り返した後に一括して焼成する焼成工程を行う工程を2回繰り返すことで、計10回の塗布により全体で厚さ202nmの圧電セラミックス膜を形成した。
その後、圧電セラミックス膜上に、DCスパッタ法により膜厚100nmの白金膜を形成した後、RTAを用いて650℃、5分間焼成を行うことで、Bi(Fe0.95,Mn0.05)Oで表されるABO型の複合酸化物からなる圧電セラミックス膜を電極で挟んだ圧電素子を形成した。
この圧電セラミックス膜について、東陽テクニカ社製「FCE−1A」で、φ=400μmの電極パターンを使用し、周波数1kHzにて、9Vの三角波を印加して、P(分極量)−V(電圧)の関係を求めた。結果を図1に示す。図1に示すように、強誘電体に特徴的なヒステリシスループ形状が観測され、強誘電体であることが明らかとなった。
また、この圧電セラミックス膜について、Bruker AXS社製の「D8 Discover」を用い、X線源にCuKα線を使用し、室温で粉末X線回折パターンを求めた。結果を図2に示す。図2に示すように、ABO型構造を形成していること及び若干(100)面に配向していることがわかる。なお、若干の異相が出ているが、通常ビスマスと鉄の複合酸化物は異相が出来やすく、また、圧電特性に影響は無い程度のものである。
(実施例2)
アセチルアセトン、2−エチルヘキサン酸及びポリエチレングリコールを、アセチルアセトン:2−エチルヘキサン酸:ポリエチレングリコール=2:1:1の容量比で混合した溶液を溶媒とした。この溶媒に、酢酸ビスマス(III)、アセチルアセトナトランタン(III)、アセチルアセトナト鉄(III)及びアセチルアセトナトマンガン(III)を、それぞれ添加し、90℃に加熱・還流し、各金属塩の溶液を作製した。そして、作製した各金属塩の溶液を、酢酸ビスマス(III):アセチルアセトナトランタン(III):アセチルアセトナト鉄(III):アセチルアセトナトマンガン(III)=83:20:100:3の物質量比となるように混合して、BLFM膜前駆体溶液(圧電セラミックス膜形成用組成物)を作製した。
実施例1のBFM膜前駆体溶液のかわりにBLFM膜前駆体溶液を用いた以外は、実施例1と同様の操作を行い、(Bi0.90,La0.10)(Fe0.97,Mn0.03)Oで表されるABO型の複合酸化物からなる圧電セラミックス膜を電極で挟んだ圧電素子を形成した。この圧電セラミックス膜について、実施例1と同様の方法で、P(分極量)−V(電圧)の関係及び粉末X線回折パターンを求めた。結果を図3及び図4に示す。
図3に示すように、強誘電体に特徴的なヒステリシスループ形状が観測され、強誘電体であることが明らかとなった。また、図4に示すように、得られた粉末X線回折パターンにおいて、ABO型構造を形成し、また、(111)面に配向していた。なお、異相は観測されなかった。
(実施形態2)
以下、図5及び図6を参照して、本発明の上記圧電セラミックス膜形成用組成物を圧電素子に適用した液体噴射ヘッドの一例であるインクジェット式記録ヘッドについて詳細に説明する。図5は、本発明の実施形態2に係る液体噴射ヘッドの一例であるインクジェット式記録ヘッドの概略構成を示す分解斜視図であり、図6は、図5の平面図及びそのA−A′断面図である。
図5及び図6に示すように、本実施形態の流路形成基板10は、シリコン単結晶基板からなり、その一方の面には二酸化シリコンからなる弾性膜50が形成されている。
流路形成基板10には、複数の圧力発生室12がその幅方向に並設されている。また、流路形成基板10の圧力発生室12の長手方向外側の領域には連通部13が形成され、連通部13と各圧力発生室12とが、各圧力発生室12毎に設けられたインク供給路14及び連通路15を介して連通されている。連通部13は、後述する保護基板のリザーバー部31と連通して各圧力発生室12の共通のインク室となるリザーバーの一部を構成する。インク供給路14は、圧力発生室12よりも狭い幅で形成されており、連通部13から圧力発生室12に流入するインクの流路抵抗を一定に保持している。なお、本実施形態では、流路の幅を片側から絞ることでインク供給路14を形成したが、流路の幅を両側から絞ることでインク供給路を形成してもよい。また、流路の幅を絞るのではなく、厚さ方向から絞ることでインク供給路を形成してもよい。本実施形態では、流路形成基板10には、圧力発生室12、連通部13、インク供給路14及び連通路15からなる液体流路が設けられていることになる。
また、流路形成基板10の開口面側には、各圧力発生室12のインク供給路14とは反対側の端部近傍に連通するノズル開口21が穿設されたノズルプレート20が、接着剤や熱溶着フィルム等によって固着されている。なお、ノズルプレート20は、例えば、ガラスセラミックス、シリコン単結晶基板、ステンレス鋼等からなる。
一方、このような流路形成基板10の開口面とは反対側には、上述したように弾性膜50が形成され、この弾性膜50上には、酸化ジルコニウム等からなる絶縁体膜55が形成されている。
さらに、この絶縁体膜55上には、第1電極60と、厚さが2μm以下、好ましくは0.3〜1.5μmの薄膜の圧電体層70と、第2電極80とが、積層形成されて、圧電素子300を構成している。本実施形態の圧電体層70は、実施形態1の圧電セラミックス膜形成用組成物、具体的には、Bi3+、Fe3+、及びMn3+を含み、溶媒としてアセチルアセトン及び2−エチルヘキサン酸を含む圧電セラミックス膜形成用組成物を用いて形成されている。
なお、圧電素子300は、第1電極60、圧電体層70及び第2電極80を含む部分をいう。一般的には、圧電素子300の何れか一方の電極を共通電極とし、他方の電極及び圧電体層70を各圧力発生室12毎にパターニングして構成する。本実施形態では、第1電極60を圧電素子300の共通電極とし、第2電極80を圧電素子300の個別電極としているが、駆動回路や配線の都合でこれを逆にしても支障はない。また、ここでは、圧電素子300と当該圧電素子300の駆動により変位が生じる振動板とを合わせてアクチュエーター装置と称する。なお、上述した例では、弾性膜50、絶縁体膜55及び第1電極60が振動板として作用するが、勿論これに限定されるものではなく、例えば、弾性膜50及び絶縁体膜55を設けずに、第1電極60のみが振動板として作用するようにしてもよい。また、圧電素子300自体が実質的に振動板を兼ねるようにしてもよい。
このような圧電素子300を流路形成基板10上に形成する方法は特に限定されないが、例えば、以下の方法で製造することができる。まず、シリコンウェハーである流路形成基板用ウェハーの表面に弾性膜50を構成する二酸化シリコン(SiO)等からなる二酸化シリコン膜を形成する。次いで、弾性膜50(二酸化シリコン膜)上に、酸化ジルコニウム等からなる絶縁体膜55を形成する。次に、絶縁体膜55上に、白金やイリジウム等からなる第1電極60をスパッタリング法等により全面に形成した後パターニングする。
次いで、圧電体層70を積層する。圧電体層70の製造方法は、上述したように実施形態1の圧電セラミックス膜形成用組成物、具体的には、Bi3+、Fe3+、及びMn3+を含み、溶媒としてアセチルアセトン及び2−エチルヘキサン酸を含む圧電セラミックス膜形成用組成物を用いて形成されたものであれば特に限定されない。具体的な製造方法は実施形態1に記載した方法と同様であり、圧電セラミックス膜形成用組成物を塗布乾燥し、これを乾燥・脱脂した後、焼成して結晶化させることにより圧電セラミックス膜(圧電体層70)を製造することができる。
圧電体層70を形成した後は、圧電体層70上に、例えば、白金等の金属からなる第2電極80を積層し、圧電体層70及び第2電極80を同時にパターニングして圧電素子300を形成する。
その後、必要に応じて、600℃〜700℃の温度域でポストアニールを行ってもよい。これにより、圧電体層70と第1電極60や第2電極80との良好な界面を形成することができ、かつ、圧電体層70の結晶性を改善することができる。
このような圧電素子300の個別電極である各第2電極80には、インク供給路14側の端部近傍から引き出され、絶縁体膜55上にまで延設される、例えば、金(Au)等からなるリード電極90が接続されている。
このような圧電素子300が形成された流路形成基板10上、すなわち、第1電極60、絶縁体膜55及びリード電極90上には、リザーバー100の少なくとも一部を構成するリザーバー部31を有する保護基板30が接着剤35を介して接合されている。このリザーバー部31は、本実施形態では、保護基板30を厚さ方向に貫通して圧力発生室12の幅方向に亘って形成されており、上述のように流路形成基板10の連通部13と連通されて各圧力発生室12の共通のインク室となるリザーバー100を構成している。また、流路形成基板10の連通部13を圧力発生室12毎に複数に分割して、リザーバー部31のみをリザーバーとしてもよい。さらに、例えば、流路形成基板10に圧力発生室12のみを設け、流路形成基板10と保護基板30との間に介在する部材(例えば、弾性膜50、絶縁体膜55等)にリザーバーと各圧力発生室12とを連通するインク供給路14を設けるようにしてもよい。
また、保護基板30の圧電素子300に対向する領域には、圧電素子300の運動を阻害しない程度の空間を有する圧電素子保持部32が設けられている。圧電素子保持部32は、圧電素子300の運動を阻害しない程度の空間を有していればよく、当該空間は密封されていても、密封されていなくてもよい。
このような保護基板30としては、流路形成基板10の熱膨張率と略同一の材料、例えば、ガラス、セラミック材料等を用いることが好ましく、本実施形態では、流路形成基板10と同一材料のシリコン単結晶基板を用いて形成した。
また、保護基板30には、保護基板30を厚さ方向に貫通する貫通孔33が設けられている。そして、各圧電素子300から引き出されたリード電極90の端部近傍は、貫通孔33内に露出するように設けられている。
また、保護基板30上には、並設された圧電素子300を駆動するための駆動回路120が固定されている。この駆動回路120としては、例えば、回路基板や半導体集積回路(IC)等を用いることができる。そして、駆動回路120とリード電極90とは、ボンディングワイヤー等の導電性ワイヤーからなる接続配線121を介して電気的に接続されている。
また、このような保護基板30上には、封止膜41及び固定板42とからなるコンプライアンス基板40が接合されている。ここで、封止膜41は、剛性が低く可撓性を有する材料からなり、この封止膜41によってリザーバー部31の一方面が封止されている。また、固定板42は、比較的硬質の材料で形成されている。この固定板42のリザーバー100に対向する領域は、厚さ方向に完全に除去された開口部43となっているため、リザーバー100の一方面は可撓性を有する封止膜41のみで封止されている。
このような本実施形態のインクジェット式記録ヘッドIでは、図示しない外部のインク供給手段と接続したインク導入口からインクを取り込み、リザーバー100からノズル開口21に至るまで内部をインクで満たした後、駆動回路120からの記録信号に従い、圧力発生室12に対応するそれぞれの第1電極60と第2電極80との間に電圧を印加し、弾性膜50、絶縁体膜55、第1電極60及び圧電体層70をたわみ変形させることにより、各圧力発生室12内の圧力が高まりノズル開口21からインク滴が吐出する。
以上説明した本実施形態のインクジェット式記録ヘッドは、圧電体層70が、Bi3+、Fe3+、及びMn3+を含み、溶媒としてアセチルアセトン及び2−エチルヘキサン酸を含む圧電セラミックス膜形成用組成物で形成されているので、製造者及び環境への負荷が低減されたものである。
(他の実施形態)
以上、本発明の実施形態を説明したが、本発明の基本的構成は上述したものに限定されるものではない。例えば、上述した実施形態では、流路形成基板10として、シリコン単結晶基板を例示したが、特にこれに限定されず、例えば、SOI基板、ガラス等の材料を用いるようにしてもよい。
さらに、上述した実施形態では、基板(流路形成基板10)上に第1電極60、圧電体層70及び第2電極80を順次積層した圧電素子300を例示したが、特にこれに限定されず、例えば、圧電材料と電極形成材料とを交互に積層させて軸方向に伸縮させる縦振動型の圧電素子にも本発明を適用することができる。
また、これら実施形態のインクジェット式記録ヘッドは、インクカートリッジ等と連通するインク流路を具備する記録ヘッドユニットの一部を構成して、インクジェット式記録装置に搭載される。図7は、そのインクジェット式記録装置の一例を示す概略図である。
図7に示すインクジェット式記録装置IIにおいて、インクジェット式記録ヘッドIを有する記録ヘッドユニット1A及び1Bは、インク供給手段を構成するカートリッジ2A及び2Bが着脱可能に設けられ、この記録ヘッドユニット1A及び1Bを搭載したキャリッジ3は、装置本体4に取り付けられたキャリッジ軸5に軸方向移動自在に設けられている。この記録ヘッドユニット1A及び1Bは、例えば、それぞれブラックインク組成物及びカラーインク組成物を吐出するものとしている。
そして、駆動モーター6の駆動力が図示しない複数の歯車およびタイミングベルト7を介してキャリッジ3に伝達されることで、記録ヘッドユニット1A及び1Bを搭載したキャリッジ3はキャリッジ軸5に沿って移動される。一方、装置本体4にはキャリッジ軸5に沿ってプラテン8が設けられており、図示しない給紙ローラーなどにより給紙された紙等の記録媒体である記録シートSがプラテン8に巻き掛けられて搬送されるようになっている。
なお、上述した実施形態2では、液体噴射ヘッドの一例としてインクジェット式記録ヘッドを挙げて説明したが、本発明は広く液体噴射ヘッド全般を対象としたものであり、インク以外の液体を噴射する液体噴射ヘッドにも勿論適用することができる。その他の液体噴射ヘッドとしては、例えば、プリンター等の画像記録装置に用いられる各種の記録ヘッド、液晶ディスプレー等のカラーフィルターの製造に用いられる色材噴射ヘッド、有機ELディスプレー、FED(電界放出ディスプレー)等の電極形成に用いられる電極材料噴射ヘッド、バイオchip製造に用いられる生体有機物噴射ヘッド等が挙げられる。
また、本発明は、インクジェット式記録ヘッドに代表される液体噴射ヘッドに搭載される圧電素子に限られず、超音波発信機等の超音波デバイス、超音波モーター、圧力センサ等の圧電素子にも同様に適用することができる。また、本発明は強誘電体メモリー等の強誘電体素子にも同様に適用することができる。
I インクジェット式記録ヘッド(液体噴射ヘッド)、 II インクジェット式記録装置(液体噴射装置)、 10 流路形成基板、 12 圧力発生室、 13 連通部、 14 インク供給路、 20 ノズルプレート、 21 ノズル開口、 30 保護基板、 31 リザーバー部、 32 圧電素子保持部、 40 コンプライアンス基板、 60 第1電極、 70 圧電体層、 80 第2電極、 90 リード電極、 100 リザーバー、 120 駆動回路、 121 接続配線、 300 圧電素子

Claims (8)

  1. Bi3+、Fe3+及びMn3+を含み、溶媒としてアセチルアセトン及び2−エチルヘキサン酸を含むことを特徴とする圧電セラミックス膜形成用組成物。
  2. 酢酸マンガン(III)及びアセチルアセトナトマンガン(III)の少なくとも一方と、酢酸ビスマス(III)と、アセチルアセトナト鉄(III)とを含むことを特徴とする請求項1に記載の圧電セラミックス膜形成用組成物。
  3. La3+を含むことを特徴とする請求項1又は2に記載の圧電セラミックス膜形成用組成物。
  4. アセチルアセトナトランタン(III)を含むことを特徴とする請求項3に記載の圧電セラミックス膜形成用組成物。
  5. ポリエチレングリコールを含むことを特徴とする請求項1〜4の何れか一項に記載の圧電セラミックス膜形成用組成物。
  6. 請求項1〜5の何れか一項に記載する圧電セラミックス膜形成用組成物により形成された圧電セラミックス膜と、前記圧電セラミックス膜に電圧を印加する電極とを有することを特徴とする圧電素子。
  7. 請求項6に記載の圧電素子を、ノズル開口に連通する圧力発生室内の液体を前記ノズル開口から吐出させるための圧力を発生させる圧力発生手段として具備することを特徴とする液体噴射ヘッド。
  8. 請求項7に記載の液体噴射ヘッドを具備することを特徴とする液体噴射装置。
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