JP2012015422A - 液体噴射ヘッドの製造方法、液体噴射装置及び圧電素子の製造方法並びに圧電体膜形成用組成物 - Google Patents

液体噴射ヘッドの製造方法、液体噴射装置及び圧電素子の製造方法並びに圧電体膜形成用組成物 Download PDF

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Abstract

【課題】環境負荷が小さく且つクラックの発生が抑制された圧電体層を有する液体噴射ヘッドの製造方法を提供する。
【解決手段】液体を噴射するノズル開口に連通する圧力発生室と、第1電極と圧電体層と第2電極とを備えた圧電素子を具備する液体噴射ヘッドの製造方法であって、第1電極を形成する工程と、前記第1電極上に、焼成によりビスマス、ナトリウム、カリウム、バリウム及びチタンを含む複合酸化物を形成する有機金属化合物と、ポリオキシエチレンアルキルエーテルとを含む圧電体膜形成用組成物により圧電体前駆体膜を形成する工程と、前記圧電体前駆体膜を焼成することによりペロブスカイト型構造の複合酸化物からなる圧電体層を形成する工程と、前記圧電体層上に第2電極を形成する工程と、を有する。
【選択図】なし

Description

本発明は、圧電体層とその両側に電極とが設けられた圧電素子を有する液体噴射ヘッドの製造方法、液体噴射装置及び圧電素子の製造方法並びに圧電体膜形成用組成物に関する。
液体噴射ヘッドに用いられる圧電素子としては、電気的機械変換機能を呈する圧電材料、例えば、結晶化した誘電材料からなる圧電体層を、2つの電極で挟んで構成されたものがある。このような圧電素子は、例えば撓み振動モードのアクチュエーター装置として液体噴射ヘッドに搭載される。液体噴射ヘッドの代表例としては、例えば、インク滴を吐出するノズル開口と連通する圧力発生室の一部を振動板で構成し、この振動板を圧電素子により変形させて圧力発生室のインクを加圧してノズル開口からインク滴として吐出させるインクジェット式記録ヘッドがある。
このような圧電素子を構成する圧電体層(圧電セラミックス)として用いられる圧電材料には高い圧電特性が求められており、代表例として、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)が挙げられる(特許文献1参照)。そして、圧電体層の製造方法としては、有機金属化合物を溶媒に溶解したコロイド溶液を被対象物上に塗布等して圧電体前駆体膜を形成した後、これを焼成するゾル−ゲル法やMOD(Metal Organic Deposition)法等の化学溶液法が知られている。
特開2001−223404号公報
しかしながら、このような方法で圧電体層を形成すると、製造時に圧電体層にクラックが発生してしまう場合があるという問題がある。また、環境問題の観点から、鉛の含有量を抑えた圧電材料からなる圧電体層が求められている。
本発明はこのような事情に鑑み、環境負荷が小さく且つクラックの発生が抑制された圧電体層を有する液体噴射ヘッドの製造方法、液体噴射装置及び圧電素子の製造方法並びに圧電体膜形成用組成物を提供することを目的とする。
上記課題を解決する本発明の態様は、液体を噴射するノズル開口に連通する圧力発生室と、第1電極と圧電体層と第2電極とを備えた圧電素子を具備する液体噴射ヘッドの製造方法であって、第1電極を形成する工程と、前記第1電極上に、焼成によりビスマス、ナトリウム、カリウム、バリウム及びチタンを含む複合酸化物を形成する有機金属化合物と、ポリオキシエチレンアルキルエーテルとを含む圧電体膜形成用組成物により圧電体前駆体膜を形成する工程と、前記圧電体前駆体膜を焼成することによりペロブスカイト型構造の複合酸化物からなる圧電体層を形成する工程と、前記圧電体層上に第2電極を形成する工程と、を有することを特徴とする液体噴射ヘッドの製造方法にある。
かかる態様では、焼成によりビスマス、ナトリウム、カリウム、バリウム及びチタンを含む複合酸化物を形成する有機金属化合物と、ポリオキシエチレンアルキルエーテルとを含む圧電体膜形成用組成物を用いて圧電体層を形成することにより、圧電体層のクラックの発生を抑制することができる。また、鉛の含有量を抑えられるため環境への負荷を低減できる。
そして、前記ポリオキシエチレンアルキルエーテルは、下記式(1)で表されることが好ましい。これによれば、確実に圧電体層のクラックの発生を防ぐことができる。
2m+1−O−(CH−CH−O)−H (1)
(式中、mは10〜22の数を表わし、nは2〜25の数を表わす。)
本発明の他の態様は、上記態様の液体噴射ヘッドの製造方法により製造された液体噴射ヘッドを具備することを特徴とする液体噴射装置にある。これによれば、クラックの発生が抑制された圧電体層を有するため、信頼性に優れた液体噴射装置となる。
また、本発明の他の態様は、第1電極を形成する工程と、前記第1電極上に、焼成によりビスマス、ナトリウム、カリウム、バリウム及びチタンを含む複合酸化物を形成する有機金属化合物と、ポリオキシエチレンアルキルエーテルとを含む圧電体膜形成用組成物により圧電体前駆体膜を形成する工程と、前記圧電体前駆体膜を焼成することによりペロブスカイト型構造の複合酸化物からなる圧電体層を形成する工程と、前記圧電体層上に前記第2電極を形成する工程と、を有することを特徴とする圧電素子の製造方法にある。これによれば、焼成によりビスマス、ナトリウム、カリウム、バリウム及びチタンを含む複合酸化物を形成する有機金属化合物と、ポリオキシエチレンアルキルエーテルとを含む圧電体膜形成用組成物を用いて圧電体層を形成することにより、圧電体層のクラックの発生を抑制することができる。また、鉛の含有量を抑えられるため環境への負荷を低減できる。
本発明の他の態様は、焼成によりビスマス、ナトリウム、カリウム、バリウム及びチタンを含む複合酸化物を形成する有機金属化合物と、ポリオキシエチレンアルキルエーテルとを含むことを特徴とする圧電体膜形成用組成物にある。この圧電体膜形成用組成物を用いることにより、クラックの発生が抑制された圧電体層を形成することができる。また、この圧電体膜形成用組成物は保存安定性に優れる。そして、鉛の含有量を抑えられるため環境への負荷を低減できる。
実施形態1に係る記録ヘッドの概略構成を示す分解斜視図である。 実施形態1に係る記録ヘッドの平面図及び断面図である。 実施形態1の圧電体層のP−Vヒステリシスを表す図である。 実施形態1の圧電体層のP−V曲線及びS−V曲線を表す図である。 実施形態1の圧電体層のP−V曲線を表す図である。 実施形態1に係る記録ヘッドの製造工程を示す断面図である。 実施形態1に係る記録ヘッドの製造工程を示す断面図である。 実施形態1に係る記録ヘッドの製造工程を示す断面図である。 実施形態1に係る記録ヘッドの製造工程を示す断面図である。 実施形態1に係る記録ヘッドの製造工程を示す断面図である。 実施例1の圧電体層の表面を金属顕微鏡により観察した写真である。 比較例1の圧電体層の表面を金属顕微鏡により観察した写真である。 比較例2の圧電体層の表面を金属顕微鏡により観察した写真である。 比較例3の圧電体層の表面を金属顕微鏡により観察した写真である。 比較例4の圧電体層の表面を金属顕微鏡により観察した写真である。 実施例1の圧電体層の断面をSEM観察した写真である。 比較例1の圧電体層の断面をSEM観察した写真である。 実施例1及び比較例1のXRD測定結果を示すグラフである。 実施例2及び比較例1のP−V曲線を示す図である。 本発明の一実施形態に係る記録装置の概略構成を示す図である。
(実施形態1)
図1は、本発明の実施形態1に係る液体噴射ヘッドの一例であるインクジェット式記録ヘッドの概略構成を示す分解斜視図であり、図2は、図1の平面図(a)及びそのA−A′断面図(b)である。図1及び図2に示すように、本実施形態の流路形成基板10は、シリコン単結晶基板からなり、その一方の面には二酸化シリコンからなる弾性膜50が形成されている。
流路形成基板10には、複数の圧力発生室12がその幅方向に並設されている。また、流路形成基板10の圧力発生室12の長手方向外側の領域には連通部13が形成され、連通部13と各圧力発生室12とが、各圧力発生室12毎に設けられたインク供給路14及び連通路15を介して連通されている。連通部13は、後述する保護基板のマニホールド部31と連通して各圧力発生室12の共通のインク室となるマニホールドの一部を構成する。インク供給路14は、圧力発生室12よりも狭い幅で形成されており、連通部13から圧力発生室12に流入するインクの流路抵抗を一定に保持している。なお、本実施形態では、流路の幅を片側から絞ることでインク供給路14を形成したが、流路の幅を両側から絞ることでインク供給路を形成してもよい。また、流路の幅を絞るのではなく、厚さ方向から絞ることでインク供給路を形成してもよい。本実施形態では、流路形成基板10には、圧力発生室12、連通部13、インク供給路14及び連通路15からなる液体流路が設けられていることになる。
また、流路形成基板10の開口面側には、各圧力発生室12のインク供給路14とは反対側の端部近傍に連通するノズル開口21が穿設されたノズルプレート20が、接着剤や熱溶着フィルム等によって固着されている。なお、ノズルプレート20は、例えば、ガラスセラミックス、シリコン単結晶基板、ステンレス鋼等からなる。
一方、このような流路形成基板10の開口面とは反対側には、上述したように弾性膜50が形成され、この弾性膜50上には、酸化ジルコニウムからなる絶縁体膜55が形成されている。また、絶縁体膜55上には、酸化チタン等からなり、絶縁体膜55と第1電極60との密着性を向上させるための密着層56が設けられている。
さらに密着層56上には、第1電極60と、第1電極60の上方に設けられて厚さが例えば2μm以下、好ましくは0.3〜1μmの薄膜である圧電体層70と、第2電極80とが、積層形成されて、圧電素子300を構成している。ここで、圧電素子300は、第1電極60、圧電体層70及び第2電極80を含む部分をいう。一般的には、圧電素子300の何れか一方の電極を共通電極とし、他方の電極及び圧電体層70を各圧力発生室12毎にパターニングして構成する。本実施形態では、第1電極60を圧電素子300の共通電極とし、第2電極80を圧電素子300の個別電極としているが、駆動回路や配線の都合でこれを逆にしても支障はない。また、ここでは、圧電素子300と当該圧電素子300の駆動により変位が生じる振動板とを合わせてアクチュエーター装置と称する。なお、上述した例では、弾性膜50、絶縁体膜55、密着層56、第1電極60が振動板として作用するが、勿論これに限定されるものではなく、例えば、弾性膜50、絶縁体膜55や密着層56を設けなくてもよい。また、圧電素子300自体が実質的に振動板を兼ねるようにしてもよい。
そして、本発明においては、圧電体層70は、詳しくは後述する所定の圧電体膜形成用組成物を用いて作成されたものであり、ビスマス(Bi)、ナトリウム(Na)、カリウム(K)、バリウム(Ba)及びチタン(Ti)を含みペロブスカイト型構造を有する圧電材料からなる。具体的には、例えばチタン酸ビスマスナトリウム(例えば(Bi,Na)TiO)と、チタン酸ビスマスカリウム(例えば(Bi,K)TiO)と、チタン酸バリウム(例えばBaTiO)を含むペロブスカイト構造を有する複合酸化物であり、例えばチタン酸ビスマスナトリウムと、チタン酸ビスマスカリウムとチタン酸バリウムが均一に固溶した固溶体になっていてもよい。なお、ペロブスカイト構造、すなわち、ABO3型構造のAサイトは酸素が12配位しており、また、Bサイトは酸素が6配位して8面体(オクタヘドロン)をつくっている。このAサイトにBi、Na、K及びBaが、BサイトにTiが位置している。
また、圧電体層70は、後述する所定の圧電体膜形成用組成物を用いて作成されることにより製造時のクラックの発生が抑制されたものであるため、クラックを有さない。
また、圧電体層70は、下記式(2)で表される組成比であることが好ましく、さらに好ましくは、一般式(2)において、0.6≦x≦0.8や0<y≦0.1である。なお、[(Bi,Na1−a)TiO]:[(Bi,K1−b)TiO]=x:1-x(モル比)であり、[(Bi,Na1−a)TiO]と[(Bi,K1−b)TiO]の総量:[BaTiO]=1:y(モル比)である。
{x[(Bia,Na1-a)TiO3]-(1-x)[(Bib,K1-b)TiO3]}-y[BaTiO3] (2)
(0.4<a<0.6,0.4<b≦0.6,0.5≦x≦0.9,0<y≦0.2)
さらに、本実施形態の圧電体層70は、飽和分極P及び残留分極Pが25℃において0≦P/P≦0.25、好ましくは0≦P/P≦0.20、さらに好ましくは0≦P/P≦0.15を満たすものである。なお飽和分極Pは、200〜1000kV/cm程度の十分高い電圧Vのもとでの分極量をいい、残留分極Pとは、印加電圧を下げ0Vにしたときの分極をいう。本願では、前述の電界範囲を満たす電圧30Vでの分極量をPとした。
このように圧電体層70が、ペロブスカイト型構造を有しアルカリ金属を含む複合酸化物が形成されていることで、圧電体層70の鉛の含有量が低くなると共に、分極処理及び中間電位が実質的に不要となり、圧電素子300を低い電圧で駆動することができる。
詳述すると、本実施形態に係る圧電素子300を構成する圧電体層70に印加する電圧を徐々に変化させると、図3に示すようなP−V曲線が得られる。図3に示すように、本実施形態に係る圧電素子300においては、圧電体層70のPは比較的小さい値、例えば、6μC/cm以下となり、P/Pは比較的大きくなる。また、抗電界Eとなる電圧Vも極めて小さくなる。
図4は、チタン酸ビスマスナトリウム、チタン酸ビスマスカリウム及びチタン酸バリウムを含む圧電材料からなる圧電体層を有する圧電素子に電圧を印加した際の分極量Pと電圧Vとの関係を示す図である。これらの図に示すように、チタン酸ビスマスナトリウム、チタン酸ビスマスカリウム及びチタン酸バリウムを含む圧電材料からなる圧電体層70を有する圧電素子300に対して、5V〜30Vの電圧を5V間隔で印加すると、図4(a)(5V)、図4(b)(10V)、図4(c)(15V)、図4(d)(20V)、図4(e)(25V)、図4(f)(30V)にそれぞれ示すようなP−V曲線及びS−V曲線が得られる。各図中太線が分極量を示し、細線が変位量を示す。
このように本実施形態においては、電圧が5Vであっても圧電体層70に変位が生じていることから、低い電圧でも圧電素子300を駆動させることができることが分かる。このように低い電圧であっても圧電素子300を駆動することができれば、従来、圧電素子を駆動させる際に必要であった中間電位が実質的に不要になる。もちろん本実施形態においても、圧電素子に中間電位をかけながら駆動させることもできる。その場合でも、中間電位は実質的に不要なので、中間電位の値に制限がなく、任意の駆動波形を設定することができる。
ここで、下記表1に示すx、y、a及びbの上記式(2)で表されるペロブスカイト型構造を有する複合酸化物を圧電体層とした圧電素子(サンプル1〜13)を作成し、電圧を印加して、P(分極量)−V(電圧)の関係を求めたところ、表1に示すように、全てPに対しPが極端に小さく、25℃において0≦P/P≦0.25を満たすものであった。結果の一例として、図5にサンプル3の結果を示す。なお、P(分極量)−V(電圧)の関係は、東陽テクニカ社製「FCE−1A」で、φ=400μmの電極パターンを使用し、室温で周波数1kHzの三角波を印加して求めた。
このような圧電素子300の個別電極である各第2電極80には、インク供給路14側の端部近傍から引き出され、絶縁体膜55上にまで延設される、例えば、金(Au)等からなるリード電極90が接続されている。
このような圧電素子300が形成された流路形成基板10上、すなわち、第1電極60及びリード電極90上には、マニホールド100の少なくとも一部を構成するマニホールド部31を有する保護基板30が接着剤35を介して接合されている。このマニホールド部31は、本実施形態では、保護基板30を厚さ方向に貫通して圧力発生室12の幅方向に亘って形成されており、上述のように流路形成基板10の連通部13と連通されて各圧力発生室12の共通のインク室となるマニホールド100を構成している。また、流路形成基板10の連通部13を圧力発生室12毎に複数に分割して、マニホールド部31のみをマニホールドとしてもよい。さらに、例えば、流路形成基板10に圧力発生室12のみを設け、流路形成基板10と保護基板30との間に介在する部材(例えば、弾性膜50、絶縁体膜55等)にマニホールドと各圧力発生室12とを連通するインク供給路14を設けるようにしてもよい。
また、保護基板30の圧電素子300に対向する領域には、圧電素子300の運動を阻害しない程度の空間を有する圧電素子保持部32が設けられている。圧電素子保持部32は、圧電素子300の運動を阻害しない程度の空間を有していればよく、当該空間は密封されていても、密封されていなくてもよい。
このような保護基板30としては、流路形成基板10の熱膨張率と略同一の材料、例えば、ガラス、セラミック材料等を用いることが好ましく、本実施形態では、流路形成基板10と同一材料のシリコン単結晶基板を用いて形成した。
また、保護基板30には、保護基板30を厚さ方向に貫通する貫通孔33が設けられている。そして、各圧電素子300から引き出されたリード電極90の端部近傍は、貫通孔33内に露出するように設けられている。
また、保護基板30上には、並設された圧電素子300を駆動するための駆動回路120が固定されている。この駆動回路120としては、例えば、回路基板や半導体集積回路(IC)等を用いることができる。そして、駆動回路120とリード電極90とは、ボンディングワイヤー等の導電性ワイヤーからなる接続配線121を介して電気的に接続されている。
また、このような保護基板30上には、封止膜41及び固定板42とからなるコンプライアンス基板40が接合されている。ここで、封止膜41は、剛性が低く可撓性を有する材料からなり、この封止膜41によってマニホールド部31の一方面が封止されている。また、固定板42は、比較的硬質の材料で形成されている。この固定板42のマニホールド100に対向する領域は、厚さ方向に完全に除去された開口部43となっているため、マニホールド100の一方面は可撓性を有する封止膜41のみで封止されている。
このような本実施形態のインクジェット式記録ヘッドIでは、図示しない外部のインク供給手段と接続したインク導入口からインクを取り込み、マニホールド100からノズル開口21に至るまで内部をインクで満たした後、駆動回路120からの記録信号に従い、圧力発生室12に対応するそれぞれの第1電極60と第2電極80との間に電圧を印加し、弾性膜50、絶縁体膜55、第1電極60及び圧電体層70をたわみ変形させることにより、各圧力発生室12内の圧力が高まりノズル開口21からインク滴が吐出する。
次に、本実施形態のインクジェット式記録ヘッドの製造方法の一例について、図6〜図10を参照して説明する。なお、図6〜図10は、圧力発生室の長手方向の断面図である。
まず、図6(a)に示すように、シリコンウェハーである流路形成基板用ウェハー110の表面に弾性膜50を構成する二酸化シリコン(SiO2)等からなる二酸化シリコン膜を熱酸化等で形成する。次いで、図6(b)に示すように、弾性膜50上に、酸化ジルコニウムからなる絶縁体膜55を形成する。次に、絶縁体膜55上に、酸化チタン等からなる密着層56を、反応性スパッタ法や熱酸化等で形成する。
次に、図7(a)に示すように、密着層56上に、白金、イリジウム、酸化イリジウム又はこれらの積層構造等からなる第1電極60をスパッタリング法等により全面に形成する。
次いで、第1電極60上に、圧電体層70を積層する。圧電体層70は、MOD(Metal-Organic Decomposition)法やゾル−ゲル法等の化学溶液法を用いて形成できる。具体的には、所定の圧電体膜形成用組成物(前駆体溶液)により圧電体前駆体膜を形成し、圧電体前駆体膜を焼成して結晶化させることにより、圧電体層70を形成できる。
そして、本発明においては、圧電体膜形成用組成物は、焼成によりBi、Na、K、Ba及びTiを含む複合酸化物を形成する有機金属化合物、具体的には、Bi、Na、K、Ba及びTiのうち一種以上の金属を含有する有機金属化合物の混合物と、ポリオキシエチレンアルキルエーテルとを含むゾルやMOD溶液(前駆体溶液)等である。例えば、Bi、Na、K、Ba及びTiをそれぞれ含む有機金属化合物とポリオキシエチレンアルキルエーテルとを、アルコールなどの有機溶媒を用いて溶解または分散させたものである。Bi、Na、K、Ba及びTiをそれぞれ含む有機金属化合物としては、例えば、金属アルコキシド、有機酸塩、βジケトン錯体などを用いることができる。Biを含む有機金属化合物としては、例えば2−エチルヘキサン酸ビスマス、酢酸ビスマスなどが挙げられる。Naを含む有機金属化合物としては、例えば2−エチルヘキサン酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、ナトリウムアセチルアセトナートなどが挙げられる。Kを含む有機金属化合物としては、例えば2−エチルヘキサン酸カリウム、酢酸カリウム、カリウムアセチルアセトナートなどが挙げられる。Baを含む有機金属化合物としては、例えばバリウムイソプロポキシド、2−エチルヘキサン酸バリウム、バリウムアセチルアセトナートなどが挙げられる。Tiを含有する有機金属化合物としては、例えばチタニウムイソプロポキシド、2−エチルヘキサン酸チタン、チタン(ジ−i−プロポキシド)ビス(アセチルアセトナート)などが挙げられる。勿論、Bi、Na、K、Ba、Tiを二種以上含む有機金属化合物を用いてもよい。なお、各有機金属化合物は、各金属が所望のモル比となるように混合すればよい。
圧電体膜形成用組成物に含有させるポリオキシエチレンアルキルエーテルに特に限定はないが、下記式(1)で表されるポリオキシエチレンアルキルエーテルであることが好ましく、さらに好ましくは下記式(1)においてm=11〜15、n=8〜10である。なお、C2m+1で表されるアルキル基は、直鎖状でも分岐状でもよい。また、ポリオキシエチレンアルキルエーテルの添加量に限定はないが、金属元素の総量に対して、モル比で1/5〜1の範囲内であることが好ましく、さらに好ましくは、1/4〜1/2の範囲内である。ポリオキシエチレンアルキルエーテルの添加量が多すぎると圧電体前駆体膜の結晶化を妨げる傾向があり、また、ポリオキシエチレンアルキルエーテルの添加量が少なすぎるとクラックの発生を抑制する効果が顕著ではなくなる傾向がある。
2m+1−O−(CH−CH−O)−H (1)
(式中、mは10〜22の数を表わし、nは2〜25である数を表わす。)
また、圧電体膜形成用組成物の溶媒は特に限定されないが、例えば、ブタノール、酢酸イソアミル、オクタン、キシレン等の有機溶剤が挙げられる。
このように、焼成によりBi、Na、K、Ba及びTiを含む複合酸化物を形成する有機金属化合物とポリオキシエチレンアルキルエーテルとを含む圧電体膜形成用組成物を用いることにより、後述する実施例に示すように、製造時のクラックの発生を抑制することができ、Bi、Na、K、Ba及びTiを含む複合酸化物からなりクラックを有さない圧電体層70を形成することができる。これは、非イオン系の界面活性剤で沸点が高いポリオキシエチレンアルキルエーテルを圧電体膜形成用組成物に添加することにより、圧電体膜形成用組成物の安定性が増し、気孔等の欠陥の発生を抑制し、焼成する際に発生する応力が緩和されるためと推測される。なお、このポリオキシエチレンアルキルエーテルは、焼成する際に消失し、圧電体層70には残存しないものである。
ここで、圧電体膜形成用組成物にポリオキシエチレンアルキルエーテルを添加することにより圧電体層のクラックの発生が抑制されるという効果は、焼成によりビスマス、ナトリウム、カリウム、バリウム及びチタンを含む複合酸化物を形成する有機金属化合物を含む圧電体膜形成用組成物に特徴的な効果である。他の材料、例えば、後述する比較例に示すように、Bi、Fe、Mn、K及びTiを含む有機金属化合物を含む圧電体膜形成用組成物にポリオキシエチレンアルキルエーテルを添加しても、圧電体層のクラックの発生が抑制されるという効果は得られない。また、ポリオキシエチレンアルキルエーテルのかわりに他の添加剤、例えば、ポリビニルピロリドンや、ポリエチレングリコール、エチルセルロース等を添加しても、圧電体層のクラックの発生が抑制されるという効果は得られない。
また、この焼成によりBi、Na、K、Ba及びTiを含む複合酸化物を形成する有機金属化合物とポリオキシエチレンアルキルエーテルとを含む圧電体膜形成用組成物は、保存安定性に優れるものである。
圧電体層70の具体的な形成手順例としては、まず、図7(b)に示すように、第1電極60上に、上記圧電体膜形成用組成物(前駆体溶液)を、スピンコート法、ディップコート法、インクジェット法等を用いて、塗布して圧電体前駆体膜71を形成する(塗布工程)。
次いで、この圧電体前駆体膜71を所定温度(例えば130〜180℃)に加熱して一定時間(例えば2〜4分間)乾燥させる(乾燥工程)。次に、乾燥した圧電体前駆体膜71を所定温度(例えば340〜450℃)に加熱して一定時間(例えば2〜6分間)保持することによって脱脂する(脱脂工程)。なお、ここで言う脱脂とは、圧電体前駆体膜71に含まれる有機成分を、例えば、NO2、CO2、H2O等として離脱させることである。乾燥工程や脱脂工程の雰囲気は限定されず、大気中でも不活性ガス中でもよい。
次に、図7(c)に示すように、圧電体前駆体膜71を所定温度、例えば600〜800℃程度に加熱して一定時間(例えば2〜6分間)保持することによって結晶化させ、圧電体膜72を形成する(焼成工程)。なお、焼成工程においても、雰囲気は限定されず、大気中でも不活性ガス中でもよい。
このような焼成工程の際、圧電体層にクラックが発生し易くなるが、本発明においては、圧電体膜形成用組成物として、焼成によりBi、Na、K、Ba及びTiを含む複合酸化物を形成する有機金属化合物とポリオキシエチレンアルキルエーテルとを含むものを用いているため、圧電体膜形成用組成物の安定性が増し、気孔等の欠陥の発生を抑制し、焼成する際に発生する応力が緩和されるため、圧電体層70のクラックの発生が抑制される。特に、膜厚400nm以上の圧電体層70を形成する場合に焼成工程の際のクラックの発生が顕著になるが、本発明においては膜厚400nm以上の圧電体層70であっても、クラックを発生させずに形成することができる。
乾燥工程、脱脂工程及び焼成工程で用いられる加熱装置としては、例えば、赤外線ランプの照射により加熱するRTA(Rapid Thermal Annealing)装置やホットプレート等が挙げられる。
次に、図8(a)に示すように、圧電体膜72上に所定形状のレジスト(図示無し)をマスクとして第1電極60及び圧電体膜72の1層目をそれらの側面が傾斜するように同時にパターニングする。
次いで、レジストを剥離した後、上述した塗布工程、乾燥工程及び脱脂工程や、塗布工程、乾燥工程、脱脂工程及び焼成工程を所望の膜厚等に応じて複数回繰り返して複数の圧電体膜72からなる圧電体層70を形成することで、図8(b)に示すように複数層の圧電体膜72からなる所定厚さの圧電体層70を形成する。例えば、塗布溶液の1回あたりの膜厚が0.1μm程度の場合には、例えば、10層の圧電体膜72からなる圧電体層70全体の膜厚は約1.1μm程度となる。なお、本実施形態では、圧電体膜72を積層して設けたが、1層のみでもよい。
このような方法で圧電体層70を製造すると、Bi、Na、K、Ba及びTiを含みペロブスカイト型構造を有する複合酸化物からなる圧電体層70となる。そして、この圧電体層70はクラックの発生が抑制されたものである。また、飽和分極P及び残留分極Pが25℃において0≦P/P≦0.25を満たす圧電材料からなる圧電体層70を製造することができる。なお、この圧電体層70を形成する工程で、乾燥工程、脱脂工程や焼成工程で加熱すると、圧電体膜形成用組成物に含まれていた溶媒等が揮発するため、圧電体層の体積収縮が発生し、それに伴い基板や電極等の下地からの応力を受けて、製造される圧電体層70は引っ張り応力を有するものとなる。
このように圧電体層70を形成した後は、図9(a)に示すように、圧電体層70上に白金等からなる第2電極80をスパッタリング法等で形成し、各圧力発生室12に対向する領域に圧電体層70及び第2電極80を同時にパターニングして、第1電極60と圧電体層70と第2電極80からなる圧電素子300を形成する。なお、圧電体層70と第2電極80とのパターニングでは、所定形状に形成したレジスト(図示なし)を介してドライエッチングすることにより一括して行うことができる。その後、必要に応じて、600℃〜800℃の温度域でポストアニールを行ってもよい。これにより、圧電体層70と第1電極60や第2電極80との良好な界面を形成することができ、かつ、圧電体層70の結晶性を改善することができる。
次に、図9(b)に示すように、流路形成基板用ウェハー110の全面に亘って、例えば、金(Au)等からなるリード電極90を形成後、例えば、レジスト等からなるマスクパターン(図示なし)を介して各圧電素子300毎にパターニングする。
次に、図9(c)に示すように、流路形成基板用ウェハー110の圧電素子300側に、シリコンウェハーであり複数の保護基板30となる保護基板用ウェハー130を接着剤35を介して接合した後に、流路形成基板用ウェハー110を所定の厚さに薄くする。
次に、図10(a)に示すように、流路形成基板用ウェハー110上に、マスク膜52を新たに形成し、所定形状にパターニングする。そして、図10(b)に示すように、流路形成基板用ウェハー110をマスク膜52を介してKOH等のアルカリ溶液を用いた異方性エッチング(ウェットエッチング)することにより、圧電素子300に対応する圧力発生室12、連通部13、インク供給路14及び連通路15等を形成する。
その後は、流路形成基板用ウェハー110及び保護基板用ウェハー130の外周縁部の不要部分を、例えば、ダイシング等により切断することによって除去する。そして、流路形成基板用ウェハー110の保護基板用ウェハー130とは反対側の面のマスク膜52を除去した後にノズル開口21が穿設されたノズルプレート20を接合すると共に、保護基板用ウェハー130にコンプライアンス基板40を接合し、流路形成基板用ウェハー110等を図1に示すような一つのチップサイズの流路形成基板10等に分割することによって、本実施形態のインクジェット式記録ヘッドIとする。
以下、実施例を示し、本発明をさらに具体的に説明する。なお、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
(実施例1)
(圧電体膜形成用組成物の作成)
ビスマス、カリウム、ナトリウム、バリウム、チタンの有機金属化合物が溶解したブタノール溶液を所定の割合で混合して、これに上記式(1)で表されるポリオキシエチレンアルキルエーテル(m=11〜15、n=9、エマルゲン709:花王社製)を添加し、前駆体溶液を調製した。なお、ポリオキシエチレンアルキルエーテルは、ビスマス、カリウム、ナトリウム、バリウム及びチタンの総量に対してモル比で1/2、すなわち、ポリオキシエチレンアルキルエーテルのモル数/ビスマス、カリウム、ナトリウム、バリウム及びチタンの総モル数=1/2となるように添加した。
(圧電体素子の作成)
まず、シリコン基板の表面に熱酸化により二酸化シリコン膜を形成した。次に、二酸化シリコン膜上にスパッタ法によりジルコニウム膜を作製し、熱酸化することで酸化ジルコニウム膜を形成した。次に、酸化ジルコニウム膜上に40nmの二酸化チタンを積層し、その上部に(111)に配向した白金を150nm積層し、第1電極とした。
次いで、第1電極上に圧電体層をスピンコート法により形成した。その手法は以下のとおりである。まず、上記圧電体膜形成用組成物(前駆体溶液)を酸化チタン膜及び第1電極が形成された上記基板上に滴下し、2500rpmで基板を回転させて圧電体前駆体膜を形成した(塗布工程)。次に400℃で3分間乾燥・脱脂を行った(乾燥及び脱脂工程)。この塗布工程・乾燥及び脱脂工程を3回繰り返した後に、Rapid Thermal Annealing (RTA)で750℃、3分間焼成を行った(焼成工程)。この塗布工程・乾燥及び脱脂工程を3回繰り返した後に一括して焼成する焼成工程を行う工程を2回繰り返すことで、計6回の塗布により全体で厚さ500nmの圧電体層70を形成した。
その後、圧電体層70上に、第2電極80としてDCスパッタ法により膜厚100nmの白金膜を形成した後、RTAを用いて750℃、5分間焼成を行うことで、x=0.7、y=0.03、a=0.5、b=0.5の上記一般式(2)で表されるペロブスカイト構造を有する複合酸化物を圧電体層70とする圧電素子300を形成した。
(実施例2)
ポリオキシエチレンアルキルエーテルを、ビスマス、カリウム、ナトリウム、バリウム及びチタンの総量に対してモル比で1/2添加するかわりに、ビスマス、カリウム、ナトリウム、バリウム及びチタンの総量に対してモル比で1/4添加した以外は、実施例1と同様にして、圧電素子300を形成した。
(比較例1)
圧電体膜形成用組成物にポリオキシエチレンアルキルエーテルを添加しなかった以外は、実施例1と同様にして、圧電素子300を形成した。
(比較例2)
圧電体膜形成用組成物にポリオキシエチレンアルキルエーテルを添加するかわりにポリビニルピロリドン(K90、東京化成工業社製、粘度平均分子量630,000)を添加した以外は、実施例1と同様にして、圧電素子300を形成した。
(比較例3)
圧電体膜形成用組成物にポリオキシエチレンアルキルエーテルを添加するかわりにポリエチレングリコール(♯600、関東化学社製)を添加した以外は、実施例1と同様にして、圧電素子300を形成した。
(比較例4)
ビスマス、カリウム、ナトリウム、バリウム、チタンの有機金属化合物が溶解したブタノール溶液のかわりに、ビスマス、カリウム、鉄、マンガン、チタンの各元素のキシレン、オクタン及びブタノール溶液を用いて、ビスマス、カリウム、鉄、マンガン及びチタンを含有しペロブスカイト構造を有する複合酸化物、すなわち、鉄酸マンガン酸ビスマス及びチタン酸ビスマスカリウムを含有しペロブスカイト構造を有する複合酸化物からなる圧電体層70を形成した以外は、実施例1と同様にして、圧電素子300を形成した。
(試験例1)
実施例1〜2及び比較例1〜4において、第2電極を形成する前に、圧電体層の表面を500倍の金属顕微鏡により観察した。この結果、実施例1〜2は、クラックが観察されなかった。一方、比較例1〜4では、クラックが発生していた。また、実施例1〜2は比較例1よりも表面モホロジーが向上していた、すなわち緻密な膜が形成されていた。実施例1の結果を図11に、比較例1の結果を図12に、比較例2の結果を図13に、比較例3の結果を図14に、比較例4の結果を図15に示す。
(試験例2)
実施例1〜2及び比較例1〜4において、第2電極を形成する前に、断面を5,000倍の走査電子顕微鏡(SEM)により観察した。この結果、実施例1〜2では気孔の発生は見られなかったが、比較例1〜4では気孔が発生していた。結果の一例として、実施例1の結果を図16に、比較例1の結果を図17に示す。
(試験例3)
実施例1〜2及び比較例1〜4の各圧電素子について、Bruker AXS社製の「D8 Discover」を用い、X線源にCuKα線を使用し、室温で、圧電体層の薄膜X線回折パターンを求めた。その結果、全ての実施例1〜2及び比較例1〜4において、ペロブスカイト型構造(ABO型構造)を形成しており、その他の異相に起因するピークは観測されなかった。また、実施例1〜2と比較例1はほぼ同じ挙動を示し、圧電体膜形成用組成物へのポリオキシエチレンアルキルエーテルの添加の有無により、得られる圧電体層の薄膜X線回折パターンは変わらないことが分かった。結果の一例として、回折強度−回折角2θの相関関係を示す図であるX線回折パターンを、実施例1及び比較例1について、図18に示す。
(試験例4)
実施例1〜2及び比較例1〜3の各圧電素子について、東陽テクニカ社製「FCE−1A」で、φ=400μmの電極パターンを使用し、室温で周波数1kHzの三角波を印加して、分極量と電圧の関係(P−V曲線)を求めた。実施例1〜2及び比較例1〜3は全てPに対しPが極端に小さく、P/Pが0≦P/P≦0.25を満たすものであった。また、実施例2と比較例1はほぼ同じ挙動を示し、圧電体膜形成用組成物へのポリオキシエチレンアルキルエーテルの添加の有無により、得られる圧電体層のP−V曲線は変わらないことが分かった。結果の一例として、実施例2及び比較例1について、図19に示す。
(試験例5)
実施例1〜2及び比較例1〜3の圧電体膜形成用組成物を3週間放置して、圧電体膜形成用組成物の保存安定性を調べた。この結果、実施例1〜2の圧電体膜形成用組成物は、3週間放置しても沈殿が生じなかった。一方、比較例1〜3の圧電体膜形成用組成物は、1週間経過後に金属元素が凝集し、沈殿が生じていた。
(他の実施形態)
以上、本発明の一実施形態を説明したが、本発明の基本的構成は上述したものに限定されるものではない。例えば、上述した実施形態では、流路形成基板10として、シリコン単結晶基板を例示したが、特にこれに限定されず、例えば、SOI基板、ガラス等の材料を用いるようにしてもよい。
さらに、上述した実施形態では、基板(流路形成基板10)上に第1電極60、圧電体層70及び第2電極80を順次積層した圧電素子300を例示したが、特にこれに限定されず、例えば、圧電材料と電極形成材料とを交互に積層させて軸方向に伸縮させる縦振動型の圧電素子にも本発明を適用することができる。
また、これら実施形態のインクジェット式記録ヘッドは、インクカートリッジ等と連通するインク流路を具備する記録ヘッドユニットの一部を構成して、インクジェット式記録装置に搭載される。図20は、そのインクジェット式記録装置の一例を示す概略図である。
図20に示すインクジェット式記録装置IIにおいて、インクジェット式記録ヘッドIを有する記録ヘッドユニット1A及び1Bは、インク供給手段を構成するカートリッジ2A及び2Bが着脱可能に設けられ、この記録ヘッドユニット1A及び1Bを搭載したキャリッジ3は、装置本体4に取り付けられたキャリッジ軸5に軸方向移動自在に設けられている。この記録ヘッドユニット1A及び1Bは、例えば、それぞれブラックインク組成物及びカラーインク組成物を吐出するものとしている。
そして、駆動モーター6の駆動力が図示しない複数の歯車およびタイミングベルト7を介してキャリッジ3に伝達されることで、記録ヘッドユニット1A及び1Bを搭載したキャリッジ3はキャリッジ軸5に沿って移動される。一方、装置本体4にはキャリッジ軸5に沿ってプラテン8が設けられており、図示しない給紙ローラーなどにより給紙された紙等の記録媒体である記録シートSがプラテン8に巻き掛けられて搬送されるようになっている。
なお、上述した実施形態では、液体噴射ヘッドの一例としてインクジェット式記録ヘッドを挙げて説明したが、本発明は広く液体噴射ヘッド全般を対象としたものであり、インク以外の液体を噴射する液体噴射ヘッドにも勿論適用することができる。その他の液体噴射ヘッドとしては、例えば、プリンター等の画像記録装置に用いられる各種の記録ヘッド、液晶ディスプレイ等のカラーフィルターの製造に用いられる色材噴射ヘッド、有機ELディスプレイ、FED(電界放出ディスプレイ)等の電極形成に用いられる電極材料噴射ヘッド、バイオchip製造に用いられる生体有機物噴射ヘッド等が挙げられる。
また、本発明は、インクジェット式記録ヘッドに代表される液体噴射ヘッドに搭載される圧電素子に限られず、超音波発信機等の超音波デバイス、超音波モーター等他の装置に搭載される圧電素子にも適用することができる。
I インクジェット式記録ヘッド(液体噴射ヘッド)、 II インクジェット式記録装置(液体噴射装置)、 10 流路形成基板、 12 圧力発生室、 13 連通部、 14 インク供給路、 20 ノズルプレート、 21 ノズル開口、 30 保護基板、 31 マニホールド部、 32 圧電素子保持部、 40 コンプライアンス基板、 60 第1電極、 70 圧電体層、 80 第2電極、 90 リード電極、 100 マニホールド、 120 駆動回路、 300 圧電素子

Claims (5)

  1. 液体を噴射するノズル開口に連通する圧力発生室と、第1電極と圧電体層と第2電極とを備えた圧電素子を具備する液体噴射ヘッドの製造方法であって、
    第1電極を形成する工程と、
    前記第1電極上に、焼成によりビスマス、ナトリウム、カリウム、バリウム及びチタンを含む複合酸化物を形成する有機金属化合物と、ポリオキシエチレンアルキルエーテルとを含む圧電体膜形成用組成物により圧電体前駆体膜を形成する工程と、
    前記圧電体前駆体膜を焼成することによりペロブスカイト型構造の複合酸化物からなる圧電体層を形成する工程と、
    前記圧電体層上に第2電極を形成する工程と、を有することを特徴とする液体噴射ヘッドの製造方法。
  2. 前記ポリオキシエチレンアルキルエーテルは、下記式(1)で表されることを特徴とする請求項1に記載の液体噴射ヘッドの製造方法。
    2m+1−O−(CH−CH−O)−H (1)
    (式中、mは10〜22の数を表わし、nは2〜25の数を表わす。)
  3. 請求項1または2に記載の液体噴射ヘッドの製造方法により製造された液体噴射ヘッドを具備することを特徴とする液体噴射装置。
  4. 第1電極を形成する工程と、
    前記第1電極上に、焼成によりビスマス、ナトリウム、カリウム、バリウム及びチタンを含む複合酸化物を形成する有機金属化合物と、ポリオキシエチレンアルキルエーテルとを含む圧電体膜形成用組成物により圧電体前駆体膜を形成する工程と、
    前記圧電体前駆体膜を焼成することによりペロブスカイト型構造の複合酸化物からなる圧電体層を形成する工程と、
    前記圧電体層上に前記第2電極を形成する工程と、を有することを特徴とする圧電素子の製造方法。
  5. 焼成によりビスマス、ナトリウム、カリウム、バリウム及びチタンを含む複合酸化物を形成する有機金属化合物と、ポリオキシエチレンアルキルエーテルとを含むことを特徴とする圧電体膜形成用組成物。
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