JP2011140165A - ガラス繊維織物強化ポリカーボネート樹脂成形体の製造方法、樹脂含浸シート及びガラス繊維織物強化ポリカーボネート樹脂成形体 - Google Patents

ガラス繊維織物強化ポリカーボネート樹脂成形体の製造方法、樹脂含浸シート及びガラス繊維織物強化ポリカーボネート樹脂成形体 Download PDF

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Abstract

【課題】煩雑な工程を経なくとも気泡がなく熱膨張係数の低いガラス繊維織物強化ポリカーボネート樹脂成形体を提供可能な製造方法を提供すること。
【解決手段】ポリカーボネート樹脂の溶液を含浸させたガラス繊維織物から、前記溶液中の溶媒を除去して得た樹脂含浸シートと、ポリカーボネート樹脂フィルムとの積層体を、加熱及び加圧する、ガラス繊維織物強化ポリカーボネート樹脂成形体の製造方法であって、前記樹脂含浸シートのガラス含有率は60〜95質量%であり、前記ガラス繊維織物強化ポリカーボネート樹脂成形体のガラス含有率は5〜40質量%である、製造方法。
【選択図】図1

Description

本発明は、ガラス繊維織物強化ポリカーボネート樹脂成形体の製造方法、樹脂含浸シート及びガラス繊維織物強化ポリカーボネート樹脂成形体に関する。
ポリカーボネート樹脂は透明性、耐衝撃性に優れていることから、板ガラスの代替品として注目されている。しかしながら、ポリカーボネート樹脂の熱膨張係数は7.0×10−5/℃と高いため、例えば、自動車のサンルーフに用いた場合、温度による伸縮が大きすぎてサンルーフを大型化することができない場合がある。このため、熱膨張係数が低いポリカーボネート樹脂の複合材料が求められている。
ポリカーボネート樹脂の複合材料の1つとして、ガラス繊維織物強化ポリカーボネート樹脂成形体が考えられる。従来、ガラス繊維織物に熱可塑性樹脂を含浸させて成形体を製造する方法としては、ガラス繊維織物と熱可塑性樹脂のフィルムとを積層し、加熱プレスを用いて熱可塑性樹脂をガラス繊維織物に含浸させる方法が一般的であった(例えば、特許文献1参照)。
特開2008−179808号公報
しかしながら、ガラス繊維織物と熱可塑性樹脂であるポリカーボネート樹脂とを積層し、加熱プレスによりガラス繊維織物強化ポリカーボネート樹脂成形体を製造すると、成形体中に気泡が形成され、その気泡が白濁して見えるため美観に欠ける。これは、成形体中のガラス繊維織物に樹脂含浸不良部分が形成されるためである。気泡のないガラス繊維織物強化ポリカーボネート樹脂成形体を製造するためには、真空プレスやオートクレーブなどの高額な設備と煩雑な工程により、気泡を抜く操作が必要である。
そこで本発明は、煩雑な工程を経なくとも気泡がなく熱膨張係数の低いガラス繊維織物強化ポリカーボネート樹脂成形体を提供可能な製造方法を提供する。本発明はまた、気泡がなく熱膨張係数が低いガラス繊維織物強化ポリカーボネート樹脂成形体、及びこのようなガラス繊維織物強化ポリカーボネート樹脂成形体の材料に特に適した樹脂含浸シートを提供する。
本発明は、ポリカーボネート樹脂の溶液(以下、場合により「ポリカーボネート樹脂溶液」という。)を含浸させたガラス繊維織物から、溶液中の溶媒を除去して得た樹脂含浸シートと、ポリカーボネート樹脂フィルムとの積層体を、加熱及び加圧する、ガラス繊維織物強化ポリカーボネート樹脂成形体の製造方法であって、樹脂含浸シートのガラス含有率は60〜95質量%であり、ガラス繊維織物強化ポリカーボネート樹脂成形体のガラス含有率は5〜40質量%である、製造方法を提供する。なお、「ガラス含有率」はガラス繊維織物に由来するガラスの含有率である。
この製造方法によれば、真空プレスやオートクレーブなどの設備や煩雑な工程を必要とせずとも、気泡のないガラス繊維織物強化ポリカーボネート樹脂成形体を製造することが可能である。また、この製造方法により製造されたガラス繊維織物強化ポリカーボネート樹脂成形体は、ポリカーボネート樹脂の熱膨張係数よりも格段に低い熱膨張係数を有する。
上記製造方法の実施形態としては、例えば、ガラス繊維織物に、ポリカーボネート樹脂を溶媒に溶解してなるポリカーボネート樹脂溶液(ポリカーボネート樹脂の少なくとも一部を溶解した溶液であればよく、膨潤・分散が生じていてもよい)を含浸させる樹脂含浸工程と、ポリカーボネート樹脂溶液を含浸させたガラス繊維織物から、溶媒を除去して樹脂含浸シートを得る溶媒除去工程と、樹脂含浸シートとポリカーボネート樹脂フィルムとの積層体を加熱及び加圧により成形してガラス繊維織物強化ポリカーボネート樹脂成形体を得る成形工程とを備えるガラス繊維織物強化ポリカーボネート樹脂成形体の製造方法であって、樹脂含浸シートのガラス含有率は60〜95質量%であり、ガラス繊維織物強化ポリカーボネート樹脂成形体のガラス含有率は5〜40質量%である、製造方法が挙げられる。
ポリカーボネート樹脂の溶液のポリカーボネート樹脂の濃度は、4〜14質量%であることが好ましい。ポリカーボネート樹脂の濃度がこの範囲にあると、効率よく好適な量のポリカーボネート樹脂をガラス繊維織物に付着させることが可能となる。
ガラス繊維織物を構成するガラスの屈折率は、1.580〜1.590であることが好ましい。さらには、ガラス繊維織物を構成するガラスの屈折率とポリカーボネート樹脂の屈折率とが、いずれも1.580〜1.590であることが好ましい。これにより、透明度がより高いガラス繊維織物強化ポリカーボネート樹脂成形体を製造することが可能となる。
ガラス繊維織物を構成するガラスの組成は、ガラスの全量基準で、SiOが50〜54質量%、Alが7〜12質量%、CaOとBaOとの合計が16〜32質量%、Laが3〜15質量%、ZnOが4〜10質量%であることがより好ましい。
この組成のガラスは、屈折率を1.580〜1.590とすることができるため、この組成のガラスを材料に用いることにより、透明度が高いガラス繊維織物強化ポリカーボネート樹脂成形体を製造することができるようになる。
本発明はまた、ポリカーボネート樹脂の溶液を含浸させたガラス繊維織物から、溶液中の溶媒を除去して得ることのできる、樹脂含浸シートであって、ガラス含有率が60〜95質量%の樹脂含浸シートを提供する。
このような樹脂含浸シートは、煩雑な工程を必要とせずに、気泡がなく、熱膨張係数がポリカーボネート樹脂よりも低い、ガラス繊維織物強化ポリカーボネート樹脂成形体を製造するための材料として特に適している。
本発明は、ポリカーボネート樹脂の溶液を含浸させたガラス繊維織物から、前記溶液中の溶媒を除去して得た、ガラス含有率が60〜95質量%の樹脂含浸シートと、ポリカーボネート樹脂フィルムとの積層体を、加熱及び加圧して得られる、ガラス繊維織物強化ポリカーボネート樹脂成形体であって、ガラス含有率は5〜40質量%であり、ヘーズが5〜91%である、ガラス繊維織物強化ポリカーボネート樹脂成形体を提供する。なお、ヘーズは5〜25%が好ましく、5〜15%がより好ましい。
このようなガラス繊維織物強化ポリカーボネート樹脂成形体は、低コストで製造することができ、成形体中に気泡が存在せず、熱膨張係数が低く、透明度が高い。
上記ガラス繊維織物強化ポリカーボネート樹脂成形体においては、ガラス繊維織物を構成するガラスの屈折率は、1.580〜1.590であるのがよく、ガラス繊維織物を構成するガラスの組成は、ガラスの全量基準で、SiOが50〜54質量%、Alが7〜12質量%、CaOとBaOとの合計が16〜32質量%、Laが3〜15質量%、ZnOが4〜10質量%であることが好ましい。
本発明によれば、煩雑な工程を経なくとも気泡がなく熱膨張係数の低いガラス繊維織物強化ポリカーボネート樹脂成形体を提供可能な製造方法が提供される。また、本発明によれば、気泡がなく熱膨張係数がポリカーボネート樹脂よりも格段に低いガラス繊維織物強化ポリカーボネート樹脂成形体、及びこのようなガラス繊維織物強化ポリカーボネート樹脂成形体の材料に特に適した樹脂含浸シートが提供される。
(a)実施例3のガラス繊維織物強化ポリカーボネート樹脂成形体の写真である。(b)比較例4のガラス繊維織物強化ポリカーボネート樹脂成形体の写真である。(c)比較例5のガラス繊維織物強化ポリカーボネート樹脂成形体の写真である。
実施形態に係るガラス繊維織物強化ポリカーボネート樹脂成形体の製造方法は、ガラス繊維織物に、ポリカーボネート樹脂を溶媒に溶解してなるポリカーボネート樹脂溶液を含浸させる樹脂含浸工程と、ポリカーボネート樹脂溶液を含浸させたガラス繊維織物から、溶媒を除去して樹脂含浸シートを得る溶媒除去工程と、樹脂含浸シートとポリカーボネート樹脂フィルムとの積層体を加熱及び加圧により成形してガラス繊維織物強化ポリカーボネート樹脂成形体を得る成形工程とを備えており、樹脂含浸シートのガラス含有率は60〜95質量%であり、ガラス繊維織物強化ポリカーボネート樹脂成形体のガラス含有率は5〜40質量%である、製造方法である。
まず、樹脂含浸工程におけるガラス繊維織物について説明する。
樹脂含浸工程においては、ガラス繊維織物に、ポリカーボネート樹脂を溶媒に溶解してなるポリカーボネート樹脂溶液を含浸させる。
ここで、ガラス繊維ではなく、ガラス繊維織物を使用することにより、ポリカーボネート樹脂成形体の熱膨張係数をより低下させ、透明性をより高めることが可能である。例えば、チョップドストランド、ロービング、マット、ミルドファイバーなどのガラス繊維を使用した場合、ガラス繊維織物とよりも表面積が大きいため、界面が多くの光を乱反射してポリカーボネート樹脂成形体の透明性が低下してしまう。これに対し、ガラス繊維織物は界面の光の乱反射がより少ないため、ポリカーボネート樹脂成形体のより高い透明性を実現することができる。
また、ガラス長繊維の方がガラス短繊維よりも熱膨張係数を低下させる効果が大きいが、ガラス繊維織物は、ガラス長繊維よりも繊維の絡み合い効果が高いため、熱膨張係数を低下させる効果がより高い。ポリカーボネート樹脂単体の熱膨張係数が7.0×10−5/℃であるのに対し、例えば、ガラス短繊維であるチョップドストランドを10質量%含有させたポリカーボネート樹脂成形体の熱膨張係数は4.8×10−5/℃であり、ガラス繊維織物を10質量%含有させたポリカーボネート樹脂成形体の熱膨張係数は、4.0〜4.3×10−5/℃である。
ガラス繊維織物は、サイジング剤で処理されていてもよく、処理されていなくてもよい。サイジング剤で処理されたガラス繊維織物を用いる場合、サイジング剤に特に制限はなく、一般的なものを用いることができる。
ガラス繊維織物を形成するガラス繊維の太さは3〜25μmであることが好ましい。番手4〜70texのヤーンを束ねて50〜1200texとしたものが好ましく用いられる。ガラス繊維織物は、平織りや綾織りで織られていることが好ましく、平織りで織られていることがより好ましい。ガラス繊維織物の単位重量は10〜250g/mであり、厚さは10〜300μmであることが好ましい。ガラス繊維織物の厚さは0.04〜0.2mmであることが好ましい。
ガラス繊維織物とポリカーボネート樹脂との親和性を向上させ、密着性を増大して樹脂含浸工程における空隙の形成を抑制するために、ガラス繊維織物を、シランカップリング剤を含む処理剤で表面処理することがより好ましい。
次に、ポリカーボネート樹脂について説明する。樹脂含浸工程においては、ガラス繊維織物に、ポリカーボネート樹脂を溶媒に溶解してなるポリカーボネート樹脂溶液を含浸させる。
ポリカーボネート樹脂の種類は特に限定されない。例えば、ビスフェノールAとホスゲンを反応させて得られるものが使用できる。形状はフィルム状でもペレット状でもよい。フィルム状のものとしては、例えばポリカーボネート樹脂フィルム(三菱エンジニアリングプラスチック、ユーピロンS3000)が好適に使用でき、ペレット状のものとしては、例えばポリカーボネート樹脂ペレット(三菱エンジニアリングプラスチック、ユーピロンH3000)が好適に使用できる。これらのポリカーボネート樹脂を、下記の溶媒に溶解して使用する。
ポリカーボネート樹脂の溶媒としては、塩化メチレン、クロロホルム、エチルメチルケトン、メタノール、エタノール、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、アセトン、酢酸エチルTHF(テトラヒドロフラン)などが使用できるが、塩化メチレンが好ましい。例えば、塩化メチレンにフィルム状又はペレット状のポリカーボネート樹脂を添加し、撹拌して溶解させ、ポリカーボネート樹脂溶液を得る。ポリカーボネート樹脂溶液の温度は溶媒の沸点以下である必要がある。
ポリカーボネート樹脂溶液中のポリカーボネート樹脂の濃度は3〜14質量%が好ましく、6〜10質量%がより好ましい。ポリカーボネート樹脂の濃度が3質量%未満の場合、ガラス繊維織物にポリカーボネート樹脂溶液を含浸させても、ガラス繊維織物に十分な量のポリカーボネート樹脂が付着しない場合がある。また、サイジング処理されたガラス繊維織物を用いた場合には、溶媒がサイジンブ剤を洗い落としてしまい、そのサイジング剤の塊などが不純物としてガラス繊維織物の繊維の間に入り込んでしまい、不良の原因となる場合がある。一方、ポリカーボネート樹脂の濃度が14質量%より高いと、ポリカーボネート樹脂の溶媒への溶解に時間がかかることと、ポリカーボネート樹脂溶液の粘度が高くなり、ガラス繊維織物に含浸しにくくなる場合がある。また、ポリカーボネート樹脂の濃度が高いと、ガラス繊維織物が気泡を含んでしまい、ボイドが発生してしまう場合がある。ポリカーボネート樹脂溶液の粘度は、含浸性が良好であることから7〜50mPa・sであることが好ましい。
次に、樹脂含浸工程の具体的な操作を説明する。
上記に説明したガラス繊維織物を、上記に説明したポリカーボネート樹脂溶液に含浸させる。含浸時間は、1〜120秒であることが好ましい。含浸の回数は1〜2回でよい。3回以上含浸させても、ガラス繊維織物に付着したポリカーボネート樹脂が溶解してしまい、ポリカーボネート樹脂の付着量が変化しなくなる。また、含浸後、溶媒の除去を行い再び含浸させることによりポリカーボネート樹脂の付着量を更に高めることは可能であるが、操作が煩雑になり生産性が低下する場合がある。
続いて、ポリカーボネート樹脂溶液を含浸させたガラス繊維織物から、溶媒を除去して樹脂含浸シートを得る溶媒除去工程について説明する。
溶媒除去工程においては、ガラス繊維織物に含浸させたポリカーボネート樹脂溶液から溶媒を除去する。この工程により、溶媒の含有量を、ポリカーボネート樹脂に対して0.05質量%以下にすることが好ましい。
より具体的には、例えば次のようにして溶媒を除去するとよい。まず、ポリカーボネート樹脂溶液を含浸させたガラス繊維織物を常温で30分間以上放置して溶媒を揮発させる。この工程で、溶媒の含有量をポリカーボネート樹脂に対して20質量%以下にすることが好ましい。溶媒の量をある程度減少させることにより、次の工程でポリカーボネート樹脂の発泡を防ぐことができる。ポリカーボネート樹脂が発泡してしまうと、表面に凹凸ができ、プレス成形時に欠点を生じてしまう。
溶媒の含有量が、ポリカーボネート樹脂に対して20質量%以下になったら、真空乾燥又は熱風乾燥により、残りの溶媒を揮発させる。以上の操作により、溶剤を揮発させる時間を短縮することができる。真空乾燥又は熱風乾燥は、100〜150℃で行うことが好ましい。150℃を超えると溶媒が突沸してしまうおそれがあり、突沸は表面に凹凸ができる原因となる。真空乾燥は、例えば、110℃で2時間以上の条件で行うことができる。また、熱風乾燥は、例えば、120℃で3時間以上の条件で行うことができる。以上の工程により、樹脂含浸シートが得られる。
この樹脂含浸シートのガラス含有率は60〜95質量%であることが好ましく、75〜86質量%であることがより好ましい。樹脂含浸シートのガラス含有率が95質量%より高いと、ポリカーボネート樹脂が十分にガラス繊維織物の繊維の間に入り込まない場合がある。また、樹脂含浸シートのガラス含有率が60質量%より低いと、ポリカーボネート樹脂が収縮してシワになる場合がある。樹脂含浸シートにシワが形成された状態で以下の成形工程を行うと、シワが伸びる時にポリカーボネート樹脂が不足する部分が発生し、ガラス繊維織物強化ポリカーボネート樹脂成形体が気泡を巻き込んで白濁する場合がある。
続いて、成形工程について説明する。成形工程では、上記の樹脂含浸シートとポリカーボネート樹脂フィルムとの積層体を加熱プレスにより成形してガラス繊維織物強化ポリカーボネート樹脂成形体を製造する。
ポリカーボネート樹脂フィルムには特に制限はなく、例えば、三菱エンジニアリングプラスチック製のユーピロンS3000(商品名)を用いることができる。
ガラス繊維織物強化ポリカーボネート樹脂成形体の厚さは0.1〜5mmであることが好ましく、0.5〜3mmであることがより好ましく、約2mmがより好ましい。厚さが0.1mm未満になると、プレス時にガラスが破損して成形体の強度が低下する場合がある。厚さが5mmを超えると、成形体の透明度が低下する場合がある。したがって、樹脂含浸シートとポリカーボネート樹脂フィルムとを上記の厚さとなるように積層し、加熱プレスにより成形するとよい。樹脂含浸シートとポリカーボネート樹脂フィルムはどのような順序で積層してもよいが、ガラス繊維織物がガラス繊維織物強化ポリカーボネート樹脂成形体中に均一に含まれるように、交互に積層することが好ましい。
加熱プレスの成形条件は一般的な条件でよい。成形温度はポリカーボネート樹脂の融点よりも高い温度で加熱して行う。成形温度は、250〜300℃が好ましく、260〜290℃がより好ましく、270〜280℃が特に好ましい。プレス時間は5〜15分間程度が好ましい。また、プレス圧力は、最初に低圧で加圧した後に、高圧で加圧することが好ましい。例えば、2〜3kg/cmで5分間加圧した後、10〜15kg/cmで10分間加圧するとよい。
ガラス繊維織物強化ポリカーボネート樹脂成形体のガラス含有率は5〜40質量%であることが好ましく、7〜35質量%であることがより好ましく、10〜25質量%であることが特に好ましい。ガラス含有率が5質量%より少ない場合には、ガラス繊維に対して樹脂量が多すぎ、ガラス繊維による成形体の補強効果が発揮されず、樹脂が収縮してガラス繊維織物強化ポリカーボネート樹脂成形体にシワが発生したり、反ったりする場合がある。また、このシワ部分に気泡が混入して白濁する場合がある。また、ガラス含有率が5質量%より少ないと、ガラス繊維織物による補強効果が発揮されず、ガラス繊維織物強化ポリカーボネート樹脂成形体の熱膨張率が高くなる場合がある。一方、ガラス含有率が40質量%より多い場合には、加熱プレスによる成形時にガラス繊維同士がぶつかり破損してしまい、十分な強度や低い熱膨張係数が得られない場合がある。
以下、本発明の実施例を示して、本発明を更に具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではなく、本発明の技術的思想を逸脱しない範囲での種々の変更が可能である。
(実施例1)
以下のようにして、樹脂含浸シート及びガラス繊維織物強化ポリカーボネート樹脂成形体を作製した。
(樹脂含浸シートの作製)
ポリカーボネート樹脂ペレット(三菱エンジニアリングプラスチック、ユーピロンH3000)を塩化メチレンに溶解し、ポリカーボネート樹脂の濃度が4質量%のポリカーボネート樹脂溶液を調製した。ポリカーボネート樹脂溶液の粘度は8mPa・sであった。
屈折率が1.585であるガラスで作製されたガラス繊維織物(日東紡、WEA1078、48g/m)を、ポリカーボネート樹脂の溶液に1分間浸漬し、ポリカーボネート樹脂溶液を含浸させた。ガラス繊維織物の厚さは0.05mmであった。続いて、ポリカーボネート樹脂溶液を含浸させたガラス繊維織物を室温で30分間放置した後、乾燥機を用いて125℃で3時間熱風乾燥し、溶媒を除去した。これにより、樹脂含浸シートが得られた。樹脂含浸シートのガラス含有率は95質量%であった。
(ガラス繊維織物強化ポリカーボネート樹脂成形体の作製)
上記の樹脂含浸シートとポリカーボネート樹脂フィルム(三菱エンジニアリングプラスチック、ユーピロンS3000)とを積層して加熱プレスにより成形し、ガラス繊維織物強化ポリカーボネート樹脂成形体を得た。ポリカーボネート樹脂フィルムの厚さは0.1mmであった。加熱プレスは270℃で行い、2〜3kg/cmで5分間加圧した後、10〜15kg/cmで10分間加圧することにより行った。樹脂含浸シートとポリカーボネート樹脂フィルムの量は、ガラス含有率がガラス繊維織物強化ポリカーボネート樹脂成形体の5.4質量%となるように調整した。ガラス繊維織物強化ポリカーボネート樹脂成形体の厚さは約2mmであった。
(実施例2)
以下のようにして、樹脂含浸シート及びガラス繊維織物強化ポリカーボネート樹脂成形体を作製した。
(樹脂含浸シートの作製)
ポリカーボネート樹脂ペレット(三菱エンジニアリングプラスチック、ユーピロンH3000)を塩化メチレンに溶解し、ポリカーボネート樹脂の濃度が6質量%のポリカーボネート樹脂溶液を調製した。ポリカーボネート樹脂溶液の粘度は10mPa・sであった。
屈折率が1.585であるガラスで作製されたガラス繊維織物(日東紡、WEA1078、48g/m)を、ポリカーボネート樹脂の溶液に1分間浸漬し、ポリカーボネート樹脂溶液を含浸させた。ガラス繊維織物の厚さは0.05mmであった。続いて、ポリカーボネート樹脂溶液を含浸させたガラス繊維織物を室温で30分間放置した後、乾燥機を用いて125℃で3時間熱風乾燥し、溶媒を除去した。これにより、樹脂含浸シートが得られた。樹脂含浸シートのガラス含有率は86質量%であった。
(ガラス繊維織物強化ポリカーボネート樹脂成形体の作製)
上記の樹脂含浸シートとポリカーボネート樹脂フィルム(三菱エンジニアリングプラスチック、ユーピロンS3000)とを積層して加熱プレスにより成形し、ガラス繊維織物強化ポリカーボネート樹脂成形体を得た。ポリカーボネート樹脂フィルムの厚さは0.1mmであった。加熱プレスは270℃で行い、2〜3kg/cmで5分間加圧した後、10〜15kg/cmで10分間加圧することにより行った。樹脂含浸シートとポリカーボネート樹脂フィルムの量は、ガラス含有率がガラス繊維織物強化ポリカーボネート樹脂成形体の5.9質量%となるように調整した。ガラス繊維織物強化ポリカーボネート樹脂成形体の厚さは約2mmであった。
(実施例3)
積層して成形する樹脂含浸シートとポリカーボネート樹脂フィルムの量を、ガラス繊維織物強化ポリカーボネート樹脂成形体の12.4質量%となるように調整した以外は実施例2と同様にして、実施例3のガラス繊維織物強化ポリカーボネート樹脂成形体を作製した。
(実施例4)
以下のようにして、樹脂含浸シート及びガラス繊維織物強化ポリカーボネート樹脂成形体を作製した。
(樹脂含浸シートの作製)
ポリカーボネート樹脂ペレット(三菱エンジニアリングプラスチック、ユーピロンH3000)を塩化メチレンに溶解し、ポリカーボネート樹脂の濃度が10質量%のポリカーボネート樹脂溶液を調製した。ポリカーボネート樹脂溶液の粘度は20mPa・sであった。
屈折率が1.555であるガラス(Eガラス)で作製されたガラス繊維織物(日東紡、A1078、48g/m)を、上記のポリカーボネート樹脂溶液に1分間浸漬し、ポリカーボネート樹脂溶液を含浸させた。続いて、ポリカーボネート樹脂溶液を含浸させたガラス繊維織物を室温で30分間放置した後、乾燥機を用いて125℃で3時間熱風乾燥し、溶媒を除去した。これにより、樹脂含浸シートが得られた。樹脂含浸シートのガラス含有率は75質量%であった。
(ガラス繊維織物強化ポリカーボネート樹脂成形体の作製)
上記の樹脂含浸シートとポリカーボネート樹脂フィルム(三菱エンジニアリングプラスチック、ユーピロンS3000)とを積層して加熱プレスにより成形し、ガラス繊維織物強化ポリカーボネート樹脂成形体を得た。加熱プレスは270℃で行い、2〜3kg/cmで5分間加圧した後、10〜15kg/cmで10分間加圧することにより行った。樹脂含浸シートとポリカーボネート樹脂フィルムの量は、ガラス含有率がガラス繊維織物強化ポリカーボネート樹脂成形体の39.8質量%となるように調整した。ガラス繊維織物強化ポリカーボネート樹脂成形体の厚さは約2mmであった。
(実施例5)
ガラス繊維織物として、屈折率が1.585であるガラスで作製されたもの(日東紡、WEA1078、48g/m)を使用した以外は、実施例4と同様にして、実施例5の樹脂含浸シートを作製した。
(実施例6)
以下のようにして、樹脂含浸シート及びガラス繊維織物強化ポリカーボネート樹脂成形体を作製した。
(樹脂含浸シートの作製)
ポリカーボネート樹脂ペレット(三菱エンジニアリングプラスチック、ユーピロンH3000)を塩化メチレンに溶解し、ポリカーボネート樹脂の濃度が14質量%のポリカーボネート樹脂溶液を調製した。ポリカーボネート樹脂溶液の粘度は50mPa・sであった。
屈折率が1.585であるガラスで作製されたガラス繊維織物(日東紡、WEA1078、48g/m)を、上記のポリカーボネート樹脂溶液に1分間浸漬し、ポリカーボネート樹脂溶液を含浸させた。続いて、ポリカーボネート樹脂溶液を含浸させたガラス繊維織物を室温で30分間放置した後、乾燥機を用いて125℃で3時間熱風乾燥し、溶媒を除去した。これにより、樹脂含浸シートが得られた。樹脂含浸シートのガラス含有率は60質量%であった。
(ガラス繊維織物強化ポリカーボネート樹脂成形体の作製)
上記の樹脂含浸シートとポリカーボネート樹脂フィルム(三菱エンジニアリングプラスチック、ユーピロンS3000)とを積層して加熱プレスにより成形し、ガラス繊維織物強化ポリカーボネート樹脂成形体を得た。加熱プレスは270℃で行い、2〜3kg/cmで5分間加圧した後、10〜15kg/cmで10分間加圧することにより行った。樹脂含浸シートとポリカーボネート樹脂フィルムの量は、ガラス含有率がガラス繊維織物強化ポリカーボネート樹脂成形体の39.8質量%となるように調整した。ガラス繊維織物強化ポリカーボネート樹脂成形体の厚さは約2mmであった。
(比較例1)
以下のようにして、樹脂含浸シート及びガラス繊維織物強化ポリカーボネート樹脂成形体を作製した。
(樹脂含浸シートの作製)
ポリカーボネート樹脂ペレット(三菱エンジニアリングプラスチック、ユーピロンH3000)を塩化メチレンに溶解し、ポリカーボネート樹脂の濃度が1質量%のポリカーボネート樹脂溶液を調製した。
屈折率が1.555であるガラス(Eガラス)で作製されたガラス繊維織物(日東紡、A1078、48g/m)を、上記のポリカーボネート樹脂溶液に1分間浸漬し、ポリカーボネート樹脂溶液を含浸させた。続いて、ポリカーボネート樹脂溶液を含浸させたガラス繊維織物を室温で30分間放置した後、乾燥機を用いて125℃で3時間熱風乾燥し、溶媒を除去した。これにより、樹脂含浸シートが得られた。樹脂含浸シートのガラス含有率は97.5質量%であった。
(ガラス繊維織物強化ポリカーボネート樹脂成形体の作製)
上記の樹脂含浸シートとポリカーボネート樹脂フィルム(三菱エンジニアリングプラスチック、ユーピロンS3000)とを積層して加熱プレスにより成形し、ガラス繊維織物強化ポリカーボネート樹脂成形体を得た。加熱プレスは270℃で行い、2〜3kg/cmで5分間加圧した後、10〜15kg/cmで10分間加圧することにより行った。樹脂含浸シートとポリカーボネート樹脂フィルムの量は、ガラス含有率がガラス繊維織物強化ポリカーボネート樹脂成形体の12.9質量%となるように調整した。ガラス繊維織物強化ポリカーボネート樹脂成形体の厚さは約2mmであった。
(比較例2)
以下のようにして、樹脂含浸シート及びガラス繊維織物強化ポリカーボネート樹脂成形体を作製した。
(樹脂含浸シートの作製)
ポリカーボネート樹脂ペレット(三菱エンジニアリングプラスチック、ユーピロンH3000)を塩化メチレンに溶解し、ポリカーボネート樹脂の濃度が3質量%のポリカーボネート樹脂溶液を調製した。ポリカーボネート樹脂溶液の粘度は7mPa・sであった。
屈折率が1.585であるガラスで作製されたガラス繊維織物(日東紡、WEA1078、48g/m)を、ポリカーボネート樹脂の溶液に1分間浸漬し、ポリカーボネート樹脂溶液を含浸させた。続いて、ポリカーボネート樹脂溶液を含浸させたガラス繊維織物を室温で30分間放置した後、乾燥機を用いて125℃で3時間熱風乾燥し、溶媒を除去した。これにより、樹脂含浸シートが得られた。樹脂含浸シートのガラス含有率は95質量%であった。
(ガラス繊維織物強化ポリカーボネート樹脂成形体の作製)
上記の樹脂含浸シートとポリカーボネート樹脂フィルム(三菱エンジニアリングプラスチック、ユーピロンS3000)とを積層して加熱プレスにより成形し、ガラス繊維織物強化ポリカーボネート樹脂成形体を得た。加熱プレスは270℃で行い、2〜3kg/cmで5分間加圧した後、10〜15kg/cmで10分間加圧することにより行った。樹脂含浸シートとポリカーボネート樹脂フィルムの量は、ガラス含有率がガラス繊維織物強化ポリカーボネート樹脂成形体の4.1質量%となるように調整した。ガラス繊維織物強化ポリカーボネート樹脂成形体の厚さは約2mmであった。
(比較例3)
以下のようにして、樹脂含浸シート及びガラス繊維織物強化ポリカーボネート樹脂成形体を作製した。
(樹脂含浸シートの作製)
ポリカーボネート樹脂溶液のポリカーボネート樹脂の濃度を18質量%とした以外は比較例2と同様にして樹脂含浸シートを作製した。ポリカーボネート樹脂溶液の粘度は100mPa・sであった。樹脂含浸シートのガラス含有率は40.5質量%であった。
(ガラス繊維織物強化ポリカーボネート樹脂成形体の作製)
上記の樹脂含浸シートのみを積層して加熱プレスにより成形し、ガラス繊維織物強化ポリカーボネート樹脂成形体を得た。加熱プレスは270℃で行い、2〜3kg/cmで5分間加圧した後、10〜15kg/cmで10分間加圧することにより行った。ガラス繊維織物強化ポリカーボネート樹脂成形体のガラス含有率は、40.5質量%であった。ガラス繊維織物強化ポリカーボネート樹脂成形体の厚さは約2mmであった。
(比較例4)
以下のようにして、ガラス繊維織物強化ポリカーボネート樹脂成形体を作製した。
(ガラス繊維織物強化ポリカーボネート樹脂成形体の作製)
屈折率が1.585であるガラスで作製されたガラス繊維織物(日東紡、WEA1078、48g/m)とポリカーボネート樹脂フィルム(三菱エンジニアリングプラスチック、ユーピロンS3000)とを積層して加熱プレスにより成形し、ガラス繊維織物強化ポリカーボネート樹脂成形体を得た。加熱プレス成形は270℃で行い、2〜3kg/cmで5分間加圧した後、10〜15kg/cmで10分間加圧することにより行った。ガラス繊維織物とポリカーボネート樹脂フィルムの量は、ガラス含有率がガラス繊維織物強化ポリカーボネート樹脂成形体の12.2質量%となるように調整した。ガラス繊維織物強化ポリカーボネート樹脂成形体の厚さは約2mmであった。
(比較例5)
以下のようにして、ガラス繊維織物強化ポリカーボネート樹脂成形体を作製した。屈折率が1.585であるガラスで作製されたガラス繊維織物(日東紡、WEA1078、48g/m)とポリカーボネート樹脂フィルム(三菱エンジニアリングプラスチック、ユーピロンS3000)とを積層して加熱プレスにより成形し、ガラス繊維織物強化ポリカーボネート樹脂成形体を得た。加熱プレスは、真空ポンプによって熱板全体を0〜13.3kPaに減圧し、270℃で、2〜3kg/cmで5分間加圧した後、10〜15kg/cmで10分間加圧することにより行った。
上記の実施例1〜6及び比較例1〜5のガラス繊維織物強化ポリカーボネート樹脂成形体又は樹脂含浸シートについて以下の測定を行い、表1にまとめた。
(ガラスの屈折率の測定)
多波長アッベ式屈折率計(アタゴ社製)を用い、D線(波長589nm)、温度25℃でガラスの屈折率を測定した。
(ポリカーボネート樹脂溶液のポリカーボネート樹脂の濃度)
ポリカーボネート樹脂溶液のポリカーボネート樹脂の濃度は次式(1)により計算した。式中、Wは溶媒に溶解したポリカーボネート樹脂の質量を示し、Wは溶媒の質量を示す。
/(W+W)×100[質量%]…(1)
(ポリカーボネート樹脂溶液の粘度の測定)
ポリカーボネート樹脂溶液の粘度はB型粘度計で、30rpm、25℃にて測定した。
(樹脂含浸シートのガラス含有率)
樹脂含浸シートのガラス含有率は次式(2)により計算した。式中、Wは樹脂含浸前のガラス繊維織物中のガラスの質量を示し、Wは樹脂含シートの質量を示す。
/W×100[質量%]…(2)
(ガラス繊維織物強化ポリカーボネート樹脂成形体のガラス含有率)
ガラス繊維織物強化ポリカーボネート樹脂成形体のガラス含有率は次式(3)により計算した。式中、Wはガラス繊維織物強化ポリカーボネート樹脂成形体に含まれるガラスの質量を示し、Wはガラス繊維織物強化ポリカーボネート樹脂成形体の質量を示す。
/W×100[質量%]…(3)
(白濁箇所の有無の評価)
ガラス繊維織物強化ポリカーボネート樹脂成形体の白濁(気泡)の有無を目視で確認して評価した。評価の基準は次の通りであった。A:白濁が全く認められなかった、B:白濁がわずかに認められた、C:白濁が認められた、D:全面に白濁が認められた。
(ガラス繊維織物強化ポリカーボネート樹脂成形体の透明性)
ヘーズ計(村上色彩社製HM−150)を用い、40×40mmに切断したサンプルでガラス繊維織物強化ポリカーボネート樹脂成形体の透明性を測定した。測定方法は JIS K 7105(JIS K 7105:1981)JIS K 7136(JIS K 7136:2000、ISO 14782:99)に準拠した。
(ガラス繊維織物強化ポリカーボネート樹脂成形体の熱膨張係数)
熱機械的分析装置(SII社製TMASS6100)を用い、5×15mmに切断したサンプルでガラス繊維織物強化ポリカーボネート樹脂成形体の熱膨張係数を測定した。測定方法はJIS R 3102(JIS R 3102:1995)に準拠した。
表1に示すように、実施例1〜4又は6のガラス繊維織物強化ポリカーボネート樹脂成形体は、真空プレスやオートクレーブなどの設備を使用せずに製造されたにもかかわらず、気泡がわずかであるか又は認められなかった。また、熱膨張係数は2.0〜5.0×10−5/℃と低かった。
比較例2のガラス繊維織物強化ポリカーボネート樹脂成形体には、加熱プレスの温度及び圧力の調整不足が原因と思われる微細な白濁が観察された。熱膨張係数は5.2×10−5/℃であり、実施例1〜4又は6のガラス繊維織物強化ポリカーボネート樹脂成形体よりも高かった。
比較例1、3、4のガラス繊維織物強化ポリカーボネート樹脂成形体には白濁が認められた。
屈折率1.585のガラスを材料に用いた実施例1〜3のガラス繊維織物強化ポリカーボネート樹脂成形体は、ヘーズ値がそれぞれ13、5、10%であり、透明性が高かった。これに対し、屈折率1.555のガラスを材料に用いた実施例4のガラス繊維織物強化ポリカーボネート樹脂成形体は、ヘーズ値が91%であった。
ポリカーボネート樹脂溶液のポリカーボネート樹脂濃度が4%未満である比較例1及び2のガラス繊維織物強化ポリカーボネート樹脂成形体は、実施例1〜4及び6のガラス繊維織物強化ポリカーボネート樹脂成形体と比較すると、ガラス繊維の周りに十分なポリカーボネート樹脂が付着しておらず、白濁していた。また、ポリカーボネート樹脂濃度が18%より高い比較例3のガラス繊維織物強化ポリカーボネート樹脂成形体は、ガラス繊維の間にポリカーボネート樹脂が含浸していない部分が存在し、その部分が白濁していた。
図1(a)、(b)、(c)に、それぞれ、実施例3、比較例4及び比較例5のガラス繊維織物強化ポリカーボネート樹脂成形体の写真を示す。
本発明によれば、真空プレスやオートクレーブなどの設備や煩雑な工程を必要としない、気泡がなく熱膨張係数が低いガラス繊維織物強化ポリカーボネート樹脂成形体の製造方法が提供される。さらに、気泡がなく熱膨張係数が低いガラス繊維織物強化ポリカーボネート樹脂成形体、及びこのようなガラス繊維織物強化ポリカーボネート樹脂成形体の材料に特に適した樹脂含浸シートが提供される。

Claims (8)

  1. ポリカーボネート樹脂の溶液を含浸させたガラス繊維織物から、前記溶液中の溶媒を除去して得た樹脂含浸シートと、ポリカーボネート樹脂フィルムとの積層体を、加熱及び加圧する、ガラス繊維織物強化ポリカーボネート樹脂成形体の製造方法であって、
    前記樹脂含浸シートのガラス含有率は60〜95質量%であり、
    前記ガラス繊維織物強化ポリカーボネート樹脂成形体のガラス含有率は5〜40質量%である、製造方法。
  2. 前記ポリカーボネート樹脂の溶液のポリカーボネート樹脂の濃度は、4〜14質量%である、請求項1に記載の製造方法。
  3. 前記ガラス繊維織物を構成するガラスの屈折率は、1.580〜1.590である、請求項1又は2に記載の製造方法。
  4. 前記ガラス繊維織物を構成するガラスの組成は、
    ガラスの全量基準で、SiOが50〜54質量%、Alが7〜12質量%、CaOとBaOとの合計が16〜32質量%、Laが3〜15質量%、ZnOが4〜10質量%である、請求項1〜3のいずれか一項に記載の製造方法。
  5. ポリカーボネート樹脂の溶液を含浸させたガラス繊維織物から、前記溶液中の溶媒を除去して得ることのできる、樹脂含浸シートであって、
    ガラス含有率が60〜95質量%の樹脂含浸シート。
  6. ポリカーボネート樹脂の溶液を含浸させたガラス繊維織物から、前記溶液中の溶媒を除去して得た、ガラス含有率が60〜95質量%の樹脂含浸シートと、ポリカーボネート樹脂フィルムとの積層体を、加熱及び加圧して得られる、ガラス繊維織物強化ポリカーボネート樹脂成形体であって、
    ガラス含有率は5〜40質量%であり、ヘーズが5〜91%である、ガラス繊維織物強化ポリカーボネート樹脂成形体。
  7. 前記ガラス繊維織物を構成するガラスの屈折率は、1.580〜1.590である、請求項6に記載のガラス繊維織物強化ポリカーボネート樹脂成形体。
  8. 前記ガラス繊維織物を構成するガラスの組成は、
    ガラスの全量基準で、SiOが50〜54質量%、Alが7〜12質量%、CaOとBaOとの合計が16〜32質量%、Laが3〜15質量%、ZnOが4〜10質量%である、請求項6又は7に記載のガラス繊維織物強化ポリカーボネート樹脂成形体。
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