JP2011132784A - 外壁はく落防止構造及び外壁はく落防止工法 - Google Patents

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厚 小森谷
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Abstract

【課題】補修前の外壁に意匠性が与えられていた場合の美観を活かすことができるうえ、溶剤を配合した透明な樹脂による臭気、硬化収縮、ひび割れ・白化などの問題を除去することができる外壁はく落防止構造及び外壁はく落防止工法を提供する。
【解決手段】コンクリート構造物の外壁としてのコンクリート躯体1の表面又は該コンクリート躯体1上に形成された仕上材層2の表面に、不揮発分が92質量%以上の透明な硬化性液状樹脂組成物8と、該硬化性液状樹脂組成物8が含浸した状態で光透過性になる繊維から成る織物9とを含み硬化して光透過性とされる繊維強化プラスチックを、はく落防止層3として形成したものである。
【選択図】図1

Description

本発明は、コンクリート構造物の外壁としてのコンクリート躯体の表面又は該コンクリート躯体上に形成された仕上材層の表面の浮き部分のはく落を防止する外壁のはく落防止技術に関し、詳しくは、外壁の表面に光透過性部材によるはく落防止層を形成することで補修前の外壁に意匠性が与えられていた場合の美観を活かすようにする外壁はく落防止構造及び外壁はく落防止工法に係るものである。
土木構造物並びに公共建築物及び集合住宅等の大型建築物は、鉄筋コンクリート構造物が主であり、その外壁は、打放しのコンクリート躯体のままで使用される外、コンクリート躯体上にモルタル等の下地層が形成され、その上に塗材やタイル等の仕上材によって仕上げられて使用される。ところが、これらの外壁は、長期間使用されるうちに、浮きやひび割れ、欠損等を生じて、外壁のはく落事故が発生することがあった。そこで、この外壁のはく落事故を防止するために、従来からはく落防止構造が工夫されてきた。
従来の外壁はく落防止構造は、例えば、適度な孔径の小孔が多数開口した繊維素材からなるメッシュシートを、外壁上に適宜のアンカー手段により固定し、該メッシュシートの表面にポリマーセメントを塗布して構成されていた(例えば、特許文献1参照)。
また、他の外壁はく落防止構造は、コンクリート建造物の外壁の下地上に樹脂系仕上げ塗材からなる樹脂系仕上げ層を形成し、コンクリート躯体から表面まで形成されたひび割れの開口部を覆った状態で上記樹脂系仕上げ層上に補強テープを貼り、この補強テープで覆った状態の上に無機系仕上げ塗材からなる無機系仕上げ層を形成して構成されていた(例えば、特許文献2参照)。
そのような中、本発明者らは鋭意研究の結果、透明な有機系仕上げ層を形成する外壁はく落防止構造及び工法を見出した(特許文献3及び特許文献4参照)。これらの外壁はく落防止構造及び工法は、ガラス繊維、ポリエステル繊維あるいはナイロン繊維等の無機物の繊維又は有機物の繊維の織物と、透明な樹脂とで構成される透明な繊維強化プラスチックからはく落防止層を形成させることで、補修前の外壁に意匠性が与えられていた場合の美観を活かすことができるものであった。
特開平4−52365号公報(第3図) 特開2002−38690号公報(図1(d)) 特開2008−002183号公報 特開2008−231881号公報
しかし、特許文献1に記載の外壁はく落防止構造においては、外壁上に繊維素材からなるメッシュシートを適宜のアンカー手段により固定し、該メッシュシートの表面にポリマーセメントを塗布して外壁のはく落防止をすることができるが、外表面に塗布されたポリマーセメントが透明材料ではないので、補修前の躯体コンクリートの外壁に意匠性を有する仕上材層が形成されていた場合に、該既存仕上材層が見えなくなり、その美観を活かすことができないものであった。したがって、上記ポリマーセメントの表面に、改めて新規仕上材層を形成する必要があった。このことから、外壁のはく落防止の工期が長くなり、コストも増大するという問題があった。
また、特許文献2に記載の外壁はく落防止構造においては、コンクリート建造物の外壁の下地上に樹脂系仕上げ層を形成し、コンクリート躯体から表面まで形成されたひび割れ部分に補強テープを貼り、この補強テープで覆った状態の上に無機系仕上げ層を形成して外壁のはく落防止をすることができるが、主として外壁のひび割れ補修兼仕上げを行うものであり、このような部分補修では、補修時には健全であった他の箇所が経年変化によって劣化し、その都度補修を行わなければならなかった。この場合、そのまま放置しておくと、外壁のはく落事故に繋がってしまうため、点検やメンテナンスのサイクルを短くする必要があった。また、外表面に形成された無機系仕上げ層が透明材料ではないので、上述と同様に、既存仕上材層が見えなくなりその美観を活かすことができず、上記無機系仕上げ層の表面に、改めて新規仕上材層を形成する必要があった。
さらに、特許文献3及び特許文献4に記載の外壁はく落防止構造及び工法においては、外壁のはく落防止効果及びその美観維持(透明性が高い、変色性が低い)という観点では有用であったが、はく落防止層を形成させる透明な樹脂が、溶剤に溶解させたアクリルシリコン系樹脂であることから、その溶剤の臭気、溶剤が揮発することによる硬化収縮による織物の浮き、さらにはその収縮から引き起こされる繊維強化プラスチックのひび割れ・白化などの問題があった。また、このようなはく落防止性能を発現させるアクリルシリコン系樹脂は、溶剤を除くと固形の樹脂であり、溶剤なしに塗工することは不可能であった。
このような問題点に対処し、本発明が解決しようとする課題は、補修前の外壁に意匠性が与えられていた場合の美観を活かすことができるうえ、溶剤を配合した透明な樹脂による臭気、硬化収縮、ひび割れ・白化などの問題を除去することができる外壁はく落防止構造及び外壁はく落防止工法を提供することにある。
上記課題を解決するために、本発明による外壁はく落防止構造は、コンクリート構造物の外壁としてのコンクリート躯体の表面又は該コンクリート躯体上に形成された仕上材層の表面に、不揮発分が92質量%以上の透明な硬化性液状樹脂組成物と、該硬化性液状樹脂組成物が含浸した状態で光透過性になる繊維から成る織物とを含み硬化して光透過性とされる繊維強化プラスチックを、はく落防止層として形成したものである。
このような構成により、不揮発分が92質量%以上の透明な硬化性液状樹脂組成物と、該硬化性液状樹脂組成物が含浸した状態で光透過性になる繊維から成る織物とを含み硬化して光透過性とされる繊維強化プラスチックを、コンクリート構造物の外壁としてのコンクリート躯体の表面又は該コンクリート躯体上に形成された仕上材層の表面に、はく落防止層として形成したことで、外壁の表面に光透過性部材によるはく落防止層を形成する。
そして、上記硬化性液状樹脂組成物は、脂肪族ウレタン系樹脂組成物とされている。
この場合、脂肪族ウレタン系樹脂組成物は、各種無機系織物及び有機系織物に対して含浸性が良く、硬化後に光透過性が得られるので、比較的容易に光透過性の繊維強化プラスチックが形成される。
また、上記織物は、網目状に形成された織物である。
この場合、網目状に形成された織物は、透明な硬化性液状樹脂組成物が十分含浸して光透過性になり、且つはく落防止性能(耐荷重性が大きい)を有しているので、透明な硬化性液状樹脂組成物との組み合わせにより、光透過性の繊維強化プラスチックが形成される。
さらに、上記織物の網目は、15〜100メッシュ/インチの粗さに形成されている。
この場合、15〜100メッシュ/インチの粗さで網目状に形成された織物は、透明な硬化性液状樹脂組成物の含浸性が良く、且つはく落防止層の平滑性を保つことができるので、透明な硬化性液状樹脂組成物との組み合わせにより、光透過性の繊維強化プラスチックが形成される。
また、上記織物は、ポリエステル製又はナイロン製とされている。
この場合、ポリエステル製又はナイロン製の織物は、織物としての強度が高く、また、透明な硬化性液状樹脂組成物との密着性がよいので、はく落防止性能が向上する。
さらにまた、上記はく落防止層の上から、コンクリート躯体に達するアンカーピンを打設し、該はく落防止層を上記コンクリート躯体に対して一体的に結合させてもよい。
これにより、はく落防止層の上から、コンクリート躯体に達するアンカーピンを打設し、該はく落防止層を上記コンクリート躯体に対して一体的に結合させることで、はく落防止層をコンクリート躯体に対してより強固に固定する。
そして、上記アンカーピンは、先端部に孔やスリットを穿設すると共に先端部内側には拡張子を配置させた中空の筒状に形成され、上記はく落防止層の上からコンクリート躯体に打設した状態で後端部側からの棒状部材の打ち込みにより上記拡張子の先端部を拡開させて上記コンクリート躯体に固定するものとしてもよい。
これにより、先端部に孔やスリットを穿設すると共に先端部内側には拡張子を配置させた中空の筒状に形成されたアンカーピンを、上記はく落防止層の上からコンクリート躯体に打設した状態で後端部側から棒状部材を打ち込んで上記拡張子の先端部を拡開させて上記コンクリート躯体に固定することで、はく落防止層をコンクリート躯体に対してより強固に固定すると共に、中空筒状のアンカーピンを介してコンクリート躯体と外気とが直接触れるようにして該コンクリート躯体からの湿気放散を適度に保つようにする。
また、本発明による外壁はく落防止工法は、コンクリート構造物の外壁としてのコンクリート躯体の表面又は該コンクリート躯体上に形成された仕上材層の表面に、不揮発分が92質量%以上の透明な硬化性液状樹脂組成物を層状に塗布する工程と、この層状に塗布された硬化性液状樹脂組成物の上に該硬化性液状樹脂組成物が含浸した状態で光透過性になる繊維から成る織物を層状に貼り付ける工程と、さらに上記層状に貼り付けられた織物を覆うように上記硬化性液状樹脂組成物を層状に塗布する工程と、その後、上記織物を含んで層状に塗布された硬化性液状樹脂組成物を硬化させて光透過性とされる繊維強化プラスチックを構成してはく落防止層を形成する工程と、を行うものである。
このような方法により、外壁としてのコンクリート躯体の表面又は該コンクリート躯体上に形成された仕上材層の表面に、不揮発分が92質量%以上の透明な硬化性液状樹脂組成物を層状に塗布し、この層状に塗布された硬化性液状樹脂組成物の上に該硬化性液状樹脂組成物が含浸した状態で光透過性になる繊維から成る織物を層状に貼り付け、さらに上記層状に貼り付けられた織物を覆うように上記硬化性液状樹脂組成物を層状に塗布し、その後、上記織物を含んで層状に塗布された硬化性液状樹脂組成物を硬化させて光透過性とされる繊維強化プラスチックを構成してはく落防止層を形成することにより、外壁の表面に光透過性部材によるはく落防止層を形成する。
請求項1に係る外壁のはく落防止構造によれば、不揮発分が92質量%以上の透明な硬化性液状樹脂組成物と、該硬化性液状樹脂組成物が含浸した状態で光透過性になる繊維から成る織物とを含み硬化して光透過性とされる繊維強化プラスチックを、コンクリート構造物の外壁としてのコンクリート躯体の表面又は該コンクリート躯体上に形成された仕上材層の表面に、はく落防止層として形成したことで、外壁の表面に光透過性部材によるはく落防止層を形成ことができる。これにより、補修前の外壁に意匠性が与えられていた場合、例えば仕上材層が形成されていた場合に、光透過性の繊維強化プラスチックによるはく落防止層を通して既存仕上材層が見え、その既存仕上材層の美観を活かすことができる。したがって、上記光透過性の繊維強化プラスチックの表面に、改めて新規仕上材層を形成する必要がなく、外壁のはく落防止の工期を短縮でき、コストも低減することができる。さらに、上記透明な硬化性液状樹脂組成物は、不揮発分が92質量%以上であるので、溶剤を配合した樹脂による臭気、硬化収縮、ひび割れ・白化などの問題を除去することができる。
また、請求項2に係る発明によれば、脂肪族ウレタン系樹脂組成物は、各種無機系織物及び有機系織物に対して含浸性が良く、硬化後に光透過性が得られるので、比較的容易に光透過性の繊維強化プラスチックが形成される。したがって、光透過性の繊維強化プラスチックによるはく落防止層を通して例えば既存仕上材層が見え、その既存仕上材層の美観を活かすことができる。また、上記脂肪族ウレタン系樹脂組成物の硬化物は、耐候性が良く、光透過性の繊維強化プラスチックが紫外線による劣化で黄変することがなく、ひび割れやチョーキングもほとんど発生しない。
さらに、請求項3に係る発明によれば、網目状に形成された織物は、透明な硬化性液状樹脂組成物が十分含浸して光透過性になり、且つはく落防止性能(耐荷重性が大きい)を有しているので、透明な硬化性液状樹脂組成物との組み合わせにより、光透過性の繊維強化プラスチックが形成される。したがって、光透過性の繊維強化プラスチックによるはく落防止層を通して例えば既存仕上材層が見え、その既存仕上材層の美観を活かすと共に、はく落防止機能を向上することができる。
さらにまた、請求項4に係る発明によれば、15〜100メッシュ/インチの粗さで網目状に形成された織物は、透明な硬化性液状樹脂組成物の含浸性が良く、且つはく落防止層の平滑性を保つことができるので、透明な硬化性液状樹脂組成物との組み合わせにより、光透過性の繊維強化プラスチックが形成される。したがって、光透過性の繊維強化プラスチックによるはく落防止層を通して例えば既存仕上材層が見え、その既存仕上材層の美観を活かすと共に、はく落防止機能を向上することができる。
また、請求項5に係る発明によれば、ポリエステル製又はナイロン製の織物は、織物としての強度が高く、また、透明な硬化性液状樹脂組成物との密着性がよいので、はく落防止性能が向上する。したがって、光透過性の繊維強化プラスチックによるはく落防止層を通して例えば既存仕上材層が見え、その既存仕上材層の美観を活かすと共に、はく落防止機能を向上することができる。
さらに、請求項6に係る発明によれば、はく落防止層の上から、コンクリート躯体に達するアンカーピンを打設し、該はく落防止層を上記コンクリート躯体に対して一体的に結合させることで、はく落防止層をコンクリート躯体に対してより強固に固定することができる。したがって、はく落防止層が安定して保持され、点検やメンテナンスのサイクルを長くして保守を容易とすることができる。
さらにまた、請求項7に係る発明によれば、先端部に孔やスリットを穿設すると共に先端部内側には拡張子を配置させた中空の筒状に形成されたアンカーピンを、はく落防止層の上からコンクリート躯体に打設した状態で後端部側から棒状部材を打ち込んで上記拡張子の先端部を拡開させて上記コンクリート躯体に固定することで、はく落防止層をコンクリート躯体に対してより強固に固定すると共に、中空筒状のアンカーピンを介してコンクリート躯体と外気とが直接触れるようにして該コンクリート躯体からの湿気放散を適度に保つことができる。したがって、上記コンクリート躯体から放散される湿気によりはく落防止層と仕上材層との間の界面圧力の上昇によって上記はく落防止層と仕上材層との界面がはく離するのを防止することができる。
また、請求項8に係る外壁はく落防止工法によれば、外壁としてのコンクリート躯体の表面又は該コンクリート躯体上に形成された仕上材層の表面に、不揮発分が92質量%以上の透明な硬化性液状樹脂組成物を層状に塗布し、この層状に塗布された硬化性液状樹脂組成物の上に該硬化性液状樹脂組成物が含浸した状態で光透過性になる繊維から成る織物を層状に貼り付け、さらに上記層状に貼り付けられた織物を覆うように上記硬化性液状樹脂組成物を層状に塗布し、その後、上記織物を含んで層状に塗布された硬化性液状樹脂組成物を硬化させて光透過性とされる繊維強化プラスチックを構成してはく落防止層を形成することにより、外壁の表面に光透過性部材によるはく落防止層を形成することができる。これにより、補修前の外壁に意匠性が与えられていた場合、例えば仕上材層が形成されていた場合に、光透過性の繊維強化プラスチックによるはく落防止層を通して既存仕上材層が見え、その既存仕上材層の美観を活かすことができる。したがって、上記光透過性の繊維強化プラスチックの表面に、改めて新規仕上材層を形成する必要がなく、外壁のはく落防止の工期を短縮でき、コストも低減することができる。さらに、上記透明な硬化性液状樹脂組成物は、不揮発分が92質量%以上であるので、溶剤を配合した樹脂による臭気、硬化収縮、ひび割れ・白化などの問題を除去することができる。
本発明による外壁はく落防止構造の実施形態を示す断面図である。 上記外壁はく落防止構造の他の実施形態を示す断面図である。 本発明による外壁はく落防止構造を施工する外壁はく落防止工法の実施形態を示す工程説明図である。 コンクリート躯体に対するアンカーピンの打設状態の変形例を示す断面図である。 本発明に係る外壁はく落防止構造と従来の外壁はく落防止構造とを試作し、はく落防止層が形成されたコンクリート躯体を用いてひび割れ、透明性の比較並びに押し抜き試験を行った結果を示す表である。
以下、本発明の実施形態を添付図面に基づいて詳細に説明する。
図1は本発明による外壁はく落防止構造の実施形態を示す断面図である。この外壁はく落防止構造は、コンクリート構造物の外壁としてのコンクリート躯体の表面又は該コンクリート躯体上に形成された仕上材層の表面の浮き部分のはく落を防止するもので、コンクリート構造物の外壁としてのコンクリート躯体1上に形成された仕上材層2の表面に、光透過性部材から成るはく落防止層3が形成されている。
なお、ここで言う「光透過性」とは、ある部材が光を透過する性質のことであり、光を100%透過する透明状態と、光を透過する度合いが0%より高く100%未満である半透明状態とを含むものである。特に本発明では、コンクリート構造物の外壁に意匠性が与えられていた場合に、その意匠性を損なわない程度に光を透過する性質を意味する。以下、本明細書においては、光透過性とは、透明状態、半透明状態、意匠性を損なわない程度に光を透過する性質、などを含むものとして用いる。
上記コンクリート躯体1は、コンクリート構造物の外壁の主要部をなすもので、予め定められた厚さの鉄筋コンクリート作りとされている。
上記コンクリート躯体1の上には、既存の仕上材層2が形成されている。この仕上材層2は、上記コンクリート躯体1の上を覆って外表面の美観を整えたり、意匠性を与えたりするもので、コンクリート躯体1のすぐ上には浮きを調整するための下地モルタル4が塗布され、この下地モルタル4の上には後述のタイル6を貼り付けるためのタイル貼付けモルタル5が塗布され、このタイル貼付けモルタル5によってタイル(例えば磁器質タイル)6が貼り付けられ、最後に、隣り合うタイル6,6間の目地部に目地詰め用モルタル7が充填されて仕上げられている。
ここで、本発明においては、上記仕上材層2の表面に、光透過性部材から成るはく落防止層3が形成されている。このはく落防止層3は、上記仕上材層2の下地モルタル4やタイル貼付けモルタル5及びタイル6に発生する浮き部分のはく落を防止するもので、不揮発分が92質量%以上の透明な硬化性液状樹脂組成物8と、該硬化性液状樹脂組成物8が含浸した状態で光透過性になる繊維から成る織物9とを含み硬化して光透過性とされる繊維強化プラスチックから成る。上記硬化性液状樹脂組成物8は、脂肪族ウレタン系樹脂組成物が好適に用いられる。また、上記織物9は、網目状に形成された織物が好適に用いられる。さらに、その織物9の網目は、15〜100メッシュ/インチの粗さであるものが好適に用いられる。なお、メッシュ/インチとは、長さ1インチ(25.4mm)当たりの糸の本数を表し、例えば15メッシュ/インチは1インチに糸が15本あることを示している。そして、15メッシュ/インチの粗さとは網目の一辺が1.7mmのものを言い、100メッシュ/インチの粗さとは網目の一辺が0.25mmのものをいう。
以下に、本発明における不揮発分が92質量%以上の透明な硬化性液状樹脂組成物8について詳細に説明する。この透明な硬化性液状樹脂組成物は、硬化前に透明な液状樹脂組成物であり、かつ、硬化後も透明性を維持する樹脂組成物である。該硬化性液状樹脂組成物は液状樹脂を主体とするため、塗工のために溶剤に溶解させる必要がない。そのため、従来の溶剤系で問題となっていた、溶剤が揮発することによる硬化収縮による織物の浮き、さらにはその収縮から引き起こされる硬化物のひび割れ・白化などの現象が、本発明においては起こらない。このような問題は、溶剤が揮発することによる硬化収縮の程度に左右されるものであるが、特に、不揮発分が92質量%以上の硬化性液状樹脂組成物においては、問題を回避することが可能である。また、本発明においては硬化性液状樹脂組成物の粘度を低減するために希釈剤・可塑剤が添加されていてもよいが、元来液状の樹脂が主体であることから希釈剤・可塑剤の添加量は若干でよいため、上述のような問題を回避しやすい。
なお、本発明における不揮発分(質量%)は、透明な硬化性液状樹脂組成物を120℃に加熱して1時間暴露した後の質量の割合を示すもので、下記に示す計算式で算出される数値である。
不揮発分(質量%)=(暴露後の重量/暴露前の重量)×100
そして、この値は、120℃に加熱して1時間暴露した後の加熱減量分が8質量%未満であることと同義である。
上記硬化性液状樹脂組成物としては、脂肪族ウレタン系樹脂組成物を好適に用いることができる。該脂肪族ウレタン系樹脂組成物としては、分子内に脂肪族イソシアネート基を有するウレタンプレポリマーを用いる1液型、分子内に水酸基を有するポリオール成分(a)と分子内に脂肪族イソシアネート基を有するポリイソシアネート成分(b)とを用いる多液型が含まれる。1液型の場合、該ウレタンプレポリマー中の脂肪族イソシアネート基が水と反応することで硬化し、ポリウレタン硬化物となる。また、多液型の場合は、該ポリオール成分(a)中の水酸基と該ポリイソシアネート成分(b)中のイソシアネート基が反応することで硬化し、ポリウレタン硬化物となる。
上記ポリオール成分(a)としては、ポリアクリルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオール等が挙げられるが、これらに限定されるわけではない。ポリアクリルポリオールの具体例としては、水酸基を有するアクリレートを汎用モノマーと共重合した従来公知のアクリルポリオールが好適に用いられる。また、ポリエステルポリオールの具体例としては、セバシン酸やアジピン酸から誘導されるポリエステル骨格、カプロラクトンから誘導されるポリカプロラクトン骨格を有するポリオール等が好適に用いられる。また、ポリカーボネートポリオールの具体例としては、1,6−ヘキサンジオール、1,5−ペンタンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオールなどから誘導されるポリカーボネート骨格を有するポリオール等が好適に用いられる。さらに、1分子中にポリエステル骨格とポリカーボネート骨格を有するポリオールも好適に用いられる。これらの中では、ポリカーボネート骨格を有するポリオールが、光透過性、はく落防止効果に寄与する硬化物の強靱性などが高いため、特に好ましい。
上記ポリイソシアネート成分(b)としては、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、キシリレンジイソシアネート(XDI)、シクロヘキサンジイソシアネート、4,4′−メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)、1,3−ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン、リジンジイソシアネート、リジントリイソシアネート及びその多量体等が挙げられるが、これらに限定されるわけではない。該多量体としては、ウレトジオン型ダイマー、ビュレット型トリマー、イソシアヌレート型トリマー、トリメチロールプロパンアダクト型トリマー、アロファネート変性イソシアヌレート型多量体等が好適に用いられる。また、これらのポリイソシアネート化合物の一部のイソシアネート基が、他の官能基で変性されていてもよい。他の官能基で変性する場合、アルキルアルコール系化合物、ポリエチレングリコール系化合物、ポリプロピレングリコール系化合物、アルキルアミン系化合物、アミノ酸系化合物、アミノスルホン酸系化合物、アルキルチオール系化合物などが好適に用いられる。これらのなかでは、ビュレット型HDIトリマー、イソシアヌレート型HDIトリマー、トリメチロールプロパンアダクト型HDIトリマー及びその誘導体が、入手が容易であり、透明性が高く、経時での黄変性が少ないため、より好ましく、イソシアヌレート型HDIトリマーが耐久性が高いため、特に好ましい。
上記硬化性液状樹脂組成物は、硬化することではく落防止層として用いられる。たとえば、多液型脂肪族ウレタン系樹脂組成物の場合、上記ポリオール成分(a)と上記ポリイソシアネート成分(b)が反応してポリウレタンとなることで硬化する。その際、所望の反応速度に調整するため、必要に応じて硬化触媒を用いてもよい。硬化触媒としては、金属触媒,塩基触媒,酸触媒等の従来公知の触媒を用いることができる。金属触媒としては、有機スズ化合物や有機亜鉛化合物等に代表される有機金属触媒、ラウリン酸スズやオクチル酸ビスマス等に代表されるカルボン酸金属塩等の無機金属触媒があり、塩基触媒としては、ジメチルシクロヘキシルアミンや1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ−7−エン等に代表される三級アミン等のアミン触媒があり、酸触媒としては、リン酸やカルボン酸等のブレンステッド酸触媒などが挙げられるが、これらに限定されるわけではない。
なお、上記硬化性液状樹脂組成物8として脂肪族ウレタン系樹脂組成物が好適に用いられるのは、脂肪族ウレタン系樹脂組成物は、上記織物9に対して含浸性が良く光透過性が得られることと、耐候性が良いことからである。
また、上記織物9として網目状に形成されているものが好適に用いられるのは、網目状に形成された織物9は、上記硬化性液状樹脂組成物8が十分含浸して光透過性が得られ、かつはく落防止性能(耐荷重性が大きい)を有しているからである。さらに、網目状に形成された織物9は、容易な含浸作業性、良好な光透過性の観点から、15〜100メッシュ/インチの粗さのものが好ましい。更に好ましくは、20〜80メッシュの網目状の織物であり、最も好ましくは、30〜60メッシュの網目状の織物である。網目状の織物は、必要に応じて2層以上積層しても良い。なお、織物のメッシュとして15〜100メッシュ/インチの粗さのものが好ましい理由は、15メッシュより粗いとはく落防止層3の平滑性を保つのが困難となって外壁の美観を損ねることがあるからであり、100メッシュより細かいと硬化性液状樹脂組成物8の含浸性が悪くなって実用上の含浸作業性が低下するからである。
そして、上記織物9は、ガラス繊維等の無機系織物、ポリエステル製又はナイロン製の有機物繊維から成る有機系織物が好適に用いられる。なかでも、ポリエステル製又はナイロン製の織物9は、織物としての強度が高く、また、硬化性液状樹脂組成物8との密着性がよいので、はく落防止性能が極めて向上する。なお、ガラス繊維等の無機系織物、ポリエステル製又はナイロン製の有機系織物だけに限られず、ポリエチレン製又はポリプロピレン製を始めとして、硬化性液状樹脂組成物8が含浸して光透過性になるものであれば、どのような組成の織物を使用してもよい。
このような状態で、図1に示すように、硬化性液状樹脂組成物8と、その樹脂が含浸して光透過性になる織物9とを、例えば3層状に積層して光透過性の繊維強化プラスチックが形成されている。そして、この光透過性の繊維強化プラスチックをはく落防止層3として、上記仕上材層2の表面に形成している。この場合、既存の仕上材層2の表面に、まず1層目の硬化性液状樹脂組成物8を層状に塗布し、その上に2層目として網目状に形成された織物9を層状に貼り付け、さらにその上に3層目として硬化性液状樹脂組成物8を層状に塗布して、最終的に光透過性の繊維強化プラスチック(3)を形成してもよい。或いは、予め、硬化性液状樹脂組成物8と網目状に形成された織物9とを例えば3層状に積層して光透過性の繊維強化プラスチックを形成し、その光透過性の繊維強化プラスチックを上記仕上材層2の表面に接着等により固定してもよい。
なお、図1においては、コンクリート躯体1上に既存の仕上材層2が形成された状態で、該仕上材層2の表面に光透過性の繊維強化プラスチックをはく落防止層3として形成したものとしたが、本発明はこれに限られず、仕上材層2が形成されていないコンクリート躯体1の表面に直接、光透過性の繊維強化プラスチックをはく落防止層3として形成してもよい。
図2は、本発明による外壁はく落防止構造の他の実施形態を示す断面図である。この実施形態は、上記はく落防止層3の上から、コンクリート躯体1に達するアンカーピン10を打設し、該はく落防止層3を上記コンクリート躯体1に対して一体的に結合させたものである。この場合、はく落防止層3の上から、仕上材層2のタイル6の目地部に、例えばハンマードリルを用いてコンクリート躯体1に達するまで穴11を穿設した後、注入口を有するアンカーピン10を上記穴11の入口からワッシャー12を通して挿入し、このアンカーピン10の先端部内側に配置させている拡張子を、該アンカーピン10の注入口から打込み棒を打ち込んでその先端部を拡開させて、上記アンカーピン10をコンクリート躯体1に固定すればよい。これにより、上記はく落防止層3をコンクリート躯体1に対してより強固に固定することができる。したがって、はく落防止層3が安定して保持され、点検やメンテナンスのサイクルを長くして保守を容易とすることができる。
ここで、上記アンカーピン10は、先端部に孔やスリットを穿設すると共に先端部内側には拡張子を配置させた中空の筒状に形成され、上記はく落防止層3の上からコンクリート躯体1に打設した状態で後端部側からの棒状部材(打込み棒)の打ち込みにより上記拡張子の先端部を拡開させて上記コンクリート躯体1に固定するものとしてもよい。この場合は、はく落防止層3をコンクリート躯体1に対してより強固に固定すると共に、中空筒状のアンカーピン10を介してコンクリート躯体1と外気とが直接触れるようにして該コンクリート躯体1からの湿気放散を適度に保つことができる。したがって、上記コンクリート躯体1から放散される湿気によりはく落防止層3と仕上材層2との間の界面圧力の上昇によって上記はく落防止層3と仕上材層2との界面がはく離するのを防止することができる。
なお、図2においては、コンクリート躯体1上に既存の仕上材層2が形成された状態で、該仕上材層2の表面に光透過性の繊維強化プラスチックをはく落防止層3として形成した場合について示したが、本発明はこれに限られず、仕上材層2が形成されていないコンクリート躯体1の表面に直接、光透過性の繊維強化プラスチックをはく落防止層3として形成した場合についても、該はく落防止層3の上から、コンクリート躯体1に達するアンカーピン10を打設し、該はく落防止層3を上記コンクリート躯体1に対して一体的に結合させてもよい。
次に、上記のような構成の外壁はく落防止構造を施工する外壁はく落防止工法について、図3を参照して説明する。まず、図3(a)は、本発明による外壁はく落防止構造を施工する前のコンクリート構造物の外壁を示す断面図である。このコンクリート構造物の外壁は、図1に示すと同様に、コンクリート構造物の外壁の主要部をなすコンクリート躯体1の上に、既存の仕上材層2が形成されている。この仕上材層2は、上記コンクリート躯体1の上を覆って外表面の美観を整えたり、意匠性を与えたりするもので、コンクリート躯体1のすぐ上には浮きを調整するための下地モルタル4が塗布され、この下地モルタル4の上にはタイル6を貼り付けるためのタイル貼付けモルタル5が塗布され、このタイル貼付けモルタル5によってタイル(例えば磁器質タイル)6が貼り付けられ、最後に、隣り合うタイル6,6間の目地部に目地詰め用モルタル7が充填されて仕上げられている。
このようなコンクリート構造物の外壁に対して、まず、図3(b)に示すように、コンクリート躯体1上に形成された仕上材層2の表面に、不揮発分が92質量%以上の透明な硬化性液状樹脂組成物8aを層状に塗布する。このとき、硬化性液状樹脂組成物8aを、仕上材層2の表面のタイル6に対して、例えばペイントローラー等で塗布する。これにより、硬化性液状樹脂組成物8aが、タイル6及び目地詰め用モルタル7に染み込んで仕上材層2の表面に固着される。上記のようにペイントローラー等で塗布するには、硬化性液状樹脂組成物8aに適切な作業性がなくてはならない。
ここで、適切な作業性とは、上記ペイントローラーで既存仕上材層2上に透明な硬化性液状樹脂組成物8aを塗布し、或いは、網目状に形成された織物9に対して透明な硬化性液状樹脂組成物8aが含浸するのに十分な流動性を有し、一方、後工程の網目状の織物9を貼り付けるのに十分な塗布厚が確保できるダレ止め性、いわゆるチクソトロピックがなければならない。そのため、硬化性液状樹脂組成物8aにダレが起こる場合は、ダレ止めを施す必要がある。そこで、本発明者は、鋭意研究の結果、硬化性液状樹脂組成物8aに表面処理された疎水性シリカを配合することで、光透過性を維持しつつ、ペイントローラーでの塗布性、網目状に形成された織物9の貼り付け作業中のダレ止め性、上記織物9に対する良好な含浸性を付与することが可能であることを見出した。なお、上述の表面処理された疎水性シリカを添加した硬化性液状樹脂組成物8aを施工後に、必要に応じてトップコートとして、紫外線吸収剤や光安定剤などの耐候性付与剤、疎水性シリカなどのダレ止め剤、アクリル微粒子やシリカなどの艶消し剤、及び、消泡剤やレベリング剤などの流動性改質剤を適宜配合した表面保護剤(光透過性を有する)を塗布することで、表面の仕上がりをより高めることができる。
次に、図3(c)に示すように、上記塗付された透明な硬化性液状樹脂組成物層(8a)の上にその樹脂が含浸して光透過性になる網目状の織物9を層状に貼り付ける。このとき、該貼り付けられた網目状の織物9の隙間から硬化性液状樹脂組成物層(8a)として塗付された硬化性液状樹脂組成物8aを十分染み出させるように、脱泡ローラーやゴム製へら等を用いて押圧し、含浸させる。
次に、図3(d)に示すように、上記貼り付けられた網目状の織物層(9)の上に該網目状の織物層(9)を覆うように透明な硬化性液状樹脂組成物8bを層状に塗布する。このとき、硬化性液状樹脂組成物8bを、網目状の織物層(9)に対して、例えばペイントローラー等で塗布し、ゴム製へら又は左官鏝等により平滑に仕上げる。
その後、図3(d)の状態で、上記層状に積層された硬化性液状樹脂組成物8a,8bと網目状の織物9とを硬化させて光透過性の繊維強化プラスチックを構成してはく落防止層3を形成する。これにより、図1に示すと同様の構成の外壁はく落防止構造が形成される。
さらにその後、図3(e)に示すように、上記のように形成されたはく落防止層3の上から、コンクリート躯体1に達するアンカーピン10を打設し、該はく落防止層3を上記コンクリート躯体1に対して一体的に結合させてもよい。この場合、はく落防止層3の上から、仕上材層2のタイル6の目地部に、例えばハンマードリルを用いてコンクリート躯体1に達するまで穴11を穿設した後、注入口を有するアンカーピン10を上記穴11の入口からワッシャー12を通して挿入し、このアンカーピン10の先端部内側に配置させている拡張子を、該アンカーピン10の注入口から打込み棒を打ち込んでその先端部を拡開させて、上記アンカーピン10をコンクリート躯体1に固定する。これにより、図2に示すと同様の構成の外壁はく落防止構造が形成される。
この場合も、図2において説明したと同様に、上記アンカーピン10は、先端部に孔やスリットを穿設すると共に先端部内側には拡張子を配置させた中空の筒状に形成され、上記はく落防止層3の上からコンクリート躯体1に打設した状態で後端部側からの棒状部材(打込み棒)の打ち込みにより上記拡張子の先端部を拡開させて上記コンクリート躯体1に固定するものとしてもよい。そして、同じく上記コンクリート躯体1から放散される湿気によりはく落防止層3と仕上材層2との間の界面圧力の上昇によって上記はく落防止層3と仕上材層2との界面がはく離するのを防止することができる。
図4は、コンクリート躯体1に対するアンカーピン10の打設状態の変形例を示す断面図である。前述の図3(e)においては、はく落防止層3の上からコンクリート躯体1に対してアンカーピン10を打設したものとしたが、これに限られず、図4(a)に示すように、コンクリート躯体1の上に既存の仕上材層2が形成された状態にてはく落防止層3を施工する前に、上記仕上材層2のタイル6の上からアンカーピン10を打設してもよい。また、図4(b)に示すように、既存の仕上材層2の表面に透明な硬化性液状樹脂組成物8aを層状に塗布した後にて網目状の織物9を層状に貼り付ける前に、上記硬化性液状樹脂組成物層(8a)の上からアンカーピン10を打設してもよい。さらに、図4(c)に示すように、上記硬化性液状樹脂組成物層(8a)の上に網目状の織物9を層状に貼り付けた後にて透明な硬化性液状樹脂組成物8bを層状に塗布する前に、上記織物9の上からアンカーピン10を打設してもよい。
また、前述の図3(a)〜(e)においては、コンクリート躯体1上に既存の仕上材層2が形成された状態で、該仕上材層2の表面に光透過性の繊維強化プラスチックをはく落防止層3として形成したものとしたが、本発明はこれに限られず、仕上材層2が形成されていないコンクリート躯体1の表面に直接、光透過性の繊維強化プラスチックをはく落防止層3として形成してもよい。このとき、図3(e)の工程では、仕上材層2が形成されていないコンクリート躯体1の表面に直接、光透過性の繊維強化プラスチックをはく落防止層3として形成した状態で、そのはく落防止層3の上から、コンクリート躯体1に達するアンカーピン10を打設し、該はく落防止層3を上記コンクリート躯体1に対して一体的に結合させることとなる。
なお、コンクリート構造物の外壁としてのコンクリート躯体1の表面又は該コンクリート躯体1上に形成された仕上材層2の表面に対して、上記硬化性液状樹脂組成物8と上記織物9から構成されるはく落防止層3の密着性が十分ではない場合、プライマー層を設けてもよい。該プライマー層を形成させるプライマーは、紫外線による劣化で黄変することがないものであれば特に限定されない。たとえば、脂肪族イソシアネート系成分やシランカップリング剤成分などを成分として溶剤あるいは水で希釈されたプライマーなどを用いることができる。特に、上記仕上材層2の表面がタイルであった場合、各種表面処理されたタイルに対して密着性を発現させるため、上記プライマーを用いることが好ましい。上記プライマーの具体例としては、ウレタン系溶剤形プライマーが、密着性の発現性が高いため、特に好ましい。
以下、本発明に係る外壁はく落防止構造を試作し、はく落防止層が形成されたコンクリート躯体を用いて押し抜き試験を行った実施例に基づいて本発明を更に具体的に説明する。ただし、本発明はこの実施例に限定されるものではない。
本発明に係る外壁はく落防止構造及び外壁はく落防止工法と、従来の外壁はく落防止構造及び外壁はく落防止工法との比較をするため、コンクリート躯体の表面にはく落防止層として光透過性の繊維強化プラスチックを形成して押し抜き性能を確認した。
〔実施例1〕
本発明の実施例1に係る外壁はく落防止構造を構成する部材は次のとおりである。
・コンクリート躯体:30cm×30cm×10cmのコンクリート片
・タイル:50二丁タイル
・繊維強化プラスチック:ポリカーボネート骨格を有する脂肪族ウレタン系樹脂組成物(不揮発分が99.5質量%)と40メッシュのナイロンネットとを含む。
・プライマー:ウレタン系溶剤形プライマー
〔実施例2〕
本発明の実施例2に係る外壁はく落防止構造を構成する部材は次のとおりである。
・コンクリート躯体:30cm×30cm×10cmのコンクリート片
・タイル:50二丁タイル
・繊維強化プラスチック:ポリカーボネート骨格を有する脂肪族ウレタン系樹脂組成物(不揮発分が92.0質量%)と40メッシュのナイロンネットとを含む。
・プライマー:ウレタン系溶剤形プライマー
〔比較例〕
従来の外壁はく落防止構造を構成する部材は次のとおりである。
・コンクリート躯体:30cm×30cm×10cmのコンクリート片
・タイル:50二丁タイル
・繊維強化プラスチック:溶剤形アクリルシリコン系樹脂組成物(不揮発分が75.0質量%)と40メッシュのナイロンネットとを含む。
・プライマー:ウレタン系溶剤形プライマー
〔押し抜き試験〕
コア削孔用ダイヤモンドドリル(内径100mm)を用いて、あらかじめ中心部にコア削孔を施した上記コンクリート躯体の上に、上記タイルを有機系接着剤で貼り付けた。一定期間養生後、タイルの上から実施例1、実施例2のポリカーボネート骨格を有する脂肪族ウレタン系樹脂又は比較例の溶剤形アクリルシリコン系樹脂を1.0kg/m2で塗工した後、上記ナイロンネットを貼り付け、ローラーで押圧し、含浸させた。室温で2週間養生させ、上記脂肪族ウレタン系樹脂又は溶剤形アクリルシリコン系樹脂を硬化させることで、それぞれ押し抜き用試験体を得た。得られた試験体について、5mm/分の速度で押し抜き試験を行った。その押し抜き試験の結果を、図5の表に示す。図5の表に示す押し抜き試験の評価方法及び評価基準は以下の通りである。
〔不揮発分測定〕
実施例1、実施例2のポリカーボネート骨格を有する脂肪族ウレタン系樹脂組成物、及び比較例の溶剤形アクリルシリコン系樹脂組成物をそれぞれ120℃に加熱して1時間暴露した後の質量を求め、下記に示す計算式で算出した数値を不揮発分(質量%)とした。
不揮発分(質量%)=(暴露後の重量/暴露前の重量)×100
〔ひび割れ〕
実施例1、実施例2のポリカーボネート骨格を有する脂肪族ウレタン系樹脂組成物、及び比較例の溶剤形アクリルシリコン系樹脂組成物を、スレート板上に厚さ3mm、面積15cm×15cmとなるように塗布し、23℃で3日間養生後、さらに50℃で10日養生することで硬化させた硬化物の表面を、目視で観察することによって、ひび割れを下記に示す4段階で評価した。以下のうち、評価が◎及び○であるものが使用可能であると判断される。
◎:ひび割れなし。
○:細かいひび割れがあるが、目視ではひび割れのラインが判別できない。
△:目視でひび割れのラインが判別できる程度の若干量のひび割れあり。
×:目視でひび割れのラインが判別できる程度の多量のひび割れあり。
〔透明性〕
実施例1、実施例2のポリカーボネート骨格を有する脂肪族ウレタン系樹脂組成物、及び比較例の溶剤形アクリルシリコン系樹脂組成物を、ガラス板上に厚さ3mm、面積15cm×15cmとなるように塗布し、23℃で7日間養生することで硬化させた。黒色で文字(フォントサイズ11ポイント)を印刷した上質紙を前記ガラス板の下に置き、その文字の見え方によって透明性を下記に示す4段階で評価した。以下のうち、評価が◎及び○であるものが使用可能であると判断される。
◎:文字が明確に見え、容易に判別できる。
○:文字がややぼやけるが、容易に判別できる。
△:文字がぼやけて見えるが、判別は可能。
×:文字の判別が不可能。
〔押し抜き強度〕
前述のようにして得られた実施例1、実施例2及び比較例の押し抜き用試験体について、5mm/分の速度で押し抜き試験を行い、押し抜き強度を示す数値を得た。
〔評価結果〕
図5に示す表の結果から、実施例1、実施例2は、溶剤を使用せず不揮発分が高いことから、ひび割れの問題がなく透明性が良好であることが分かる。さらに、押し抜き強度も、比較例の溶剤形アクリルシリコン系樹脂の場合は1500Nであるのに対して、実施例1の脂肪族ウレタン系樹脂組成物(不揮発分が99.5質量%)の場合は1800Nであり、実施例2の脂肪族ウレタン系樹脂組成物(不揮発分が92.0質量%)の場合は1700Nであり、比較例より大きい強度を発現している。これらのことから、本発明の実施例1、実施例2に係る外壁はく落防止構造及び外壁はく落防止工法は、比較例に比べて意匠性が高く、信頼性の高い外壁はく落防止構造及び外壁はく落防止工法であると言える。
本発明に係る外壁はく落防止構造及び外壁はく落防止工法は、従来の溶剤形あるいは水性型外壁はく落防止構造及び外壁はく落防止工法が適用されていた全ての用途に用いることができる。たとえば、コンクリート外壁、モルタル外壁、石材外壁、タイル外壁、煉瓦外壁等の用途に用いることができる。
1…コンクリート躯体
2…仕上材層
3…はく落防止層
4…下地モルタル
5…タイル貼付けモルタル
6…タイル
7…目地詰め用モルタル
8…透明な硬化性液状樹脂組成物
9…織物
10…アンカーピン

Claims (8)

  1. コンクリート構造物の外壁としてのコンクリート躯体の表面又は該コンクリート躯体上に形成された仕上材層の表面に、不揮発分が92質量%以上の透明な硬化性液状樹脂組成物と、該硬化性液状樹脂組成物が含浸した状態で光透過性になる繊維から成る織物とを含み硬化して光透過性とされる繊維強化プラスチックを、はく落防止層として形成したことを特徴とする外壁はく落防止構造。
  2. 上記硬化性液状樹脂組成物は、脂肪族ウレタン系樹脂組成物であることを特徴とする請求項1に記載の外壁はく落防止構造。
  3. 上記織物は、網目状に形成された織物であることを特徴とする請求項1又は2に記載の外壁はく落防止構造。
  4. 上記織物の網目は、15〜100メッシュ/インチの粗さに形成されていることを特徴とする請求項3に記載の外壁はく落防止構造。
  5. 上記織物は、ポリエステル製又はナイロン製であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の外壁はく落防止構造。
  6. 上記はく落防止層の上から、コンクリート躯体に達するアンカーピンを打設し、該はく落防止層を上記コンクリート躯体に対して一体的に結合させたことを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の外壁はく落防止構造。
  7. 上記アンカーピンは、先端部に孔やスリットを穿設すると共に先端部内側には拡張子を配置させた中空の筒状に形成され、上記はく落防止層の上からコンクリート躯体に打設した状態で後端部側からの棒状部材の打ち込みにより上記拡張子の先端部を拡開させて上記コンクリート躯体に固定するものであることを特徴とする請求項6に記載の外壁はく落防止構造。
  8. コンクリート構造物の外壁としてのコンクリート躯体の表面又は該コンクリート躯体上に形成された仕上材層の表面に、不揮発分が92質量%以上の透明な硬化性液状樹脂組成物を層状に塗布する工程と、
    この層状に塗布された硬化性液状樹脂組成物の上に該硬化性液状樹脂組成物が含浸した状態で光透過性になる繊維から成る織物を層状に貼り付ける工程と、
    さらに上記層状に貼り付けられた織物を覆うように上記硬化性液状樹脂組成物を層状に塗布する工程と、
    その後、上記織物を含んで層状に塗布された硬化性液状樹脂組成物を硬化させて光透過性とされる繊維強化プラスチックを構成してはく落防止層を形成する工程と、
    を行うことを特徴とする外壁はく落防止工法。
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JP2018003444A (ja) * 2016-07-01 2018-01-11 大日本塗料株式会社 コンクリート剥落防止工法

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