JP2018003444A - コンクリート剥落防止工法 - Google Patents
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Abstract
Description
従来のコンクリート剥落防止工法には、エポキシ樹脂系の下塗り材にシートを配置し、翌日に上塗りを塗装する工法がある。このエポキシ樹脂系下塗り材を上塗りとして用いると1日で施工することは可能であるが、エポキシ樹脂の耐候性の低さにより耐久性に劣るため、上塗りに耐候性を有するウレタン樹脂系塗料やふっ素樹脂系塗料を用いる必要がある。また、エポキシ樹脂系下塗り材に異なる樹脂系、例えばウレタン樹脂系の上塗りを1日の内に塗装すると、エポキシ樹脂系塗料の硬化剤に用いられるアミンなどの影響により、上塗り塗膜の硬化不良や剥離などの不具合の原因となるため、塗装間隔の保持のために施工に2日を要する。
下塗り塗料でコンクリート構造物の表面を塗装し、下塗り塗膜を形成させる第1の工程と、下塗り塗膜上に繊維シートを配置させる第2の工程と、下塗り塗膜及び繊維シートを覆うように上塗り塗料による塗装を行い、上塗り塗膜を形成させる第3の工程とを含み、
前記下塗り塗料及び前記上塗り塗料が、数平均分子量が300〜10,000であり且つ1分子あたりの水酸基の数が2.0〜9.0であるポリオールと、イソシアネート基の割合が10.0〜20.0質量%であるポリイソシアネートとを含み、該ポリイソシアネートは、ポリオールの水酸基に対するイソシアネート基が0.5〜1.5当量であり、該ポリイソシアネートは、脂肪族ポリイソシアネート及び脂環式ポリイソシアネートよりなる群から選択される少なくとも1種である2液硬化型塗料であることを特徴とする。
n=Mn(g/mol)×OHV(mgKOH/g)/56110
ここで、水酸基価とは、試料1g中の遊離水酸基を無水酢酸で完全にアセチル化した後、それを中和するのに要する水酸化カリウムのmg数である。また、数平均分子量は、ゲル浸透クロマトグラフィーによって測定されるポリスチレン換算した数平均分子量である。
ポリオールの数平均分子量が300未満であると、不粘着性が十分な塗膜が得られないため好ましくない。また、数平均分子量が10,000を超えると塗装作業性が不良となるため好ましくない。
ポリオール1分子あたりの水酸基の数が2.0未満であり、且つポリオールの水酸基に対するイソシアネート基が0.5〜1.5当量の場合、塗膜の不粘着性が十分な塗膜が得られないため好ましくない。また、1分子あたりの水酸基の数が9.0を超え、且つポリオールの水酸基に対するイソシアネート基が0.5〜1.5当量である場合、コンクリートのひび割れに対する追従性が十分でなく、塗膜の耐久性が得られない。また、二酸化炭素が発生した際に気泡が塗膜内を移動できずに泡が残存してしまい、この点からも塗膜の耐久性が低下し得る。
なお、上記2液硬化型塗料が、クリヤー塗料である場合、例えば、顔料体積濃度は0体積%以上で且つ10体積%未満である。
R=(塗膜形成成分の質量)×100/(塗料組成物の質量)
主剤としては表1に示されるA液を用い、硬化剤としては表2に示されるB液を用いた。
2液硬化型塗料組成物は、表5〜8に示されるA液とB液の組み合わせからなる。なお、パテ材に骨材を配合する場合は、表3に示される6号珪砂を用いた。
また、比較例で使用する市販の材料については表4に示す。
主剤、パテ材及び塗料組成物の調製については、原料を小型ホモディスパーを用いて回転速度1200rpmで攪拌しながら投入し、全ての原料を投入後、均一に分散したことを確認し、これを使用した。
(注2)URIC H−368(伊藤製油社製ポリオール、加熱残分100質量%、数平均分子量700、水酸基価200、1分子あたりの水酸基の数2.5、粘度1,300mPa・s)
(注3)URIC H−102(伊藤製油社製ポリオール、加熱残分100質量%、数平均分子量880、水酸基価320、1分子あたりの水酸基の数5.0、粘度1,100mPa・s)
(注4)URIC HF−2009(伊藤製油社製ポリオール、加熱残分100質量%、数平均分子量2,550、水酸基価44、1分子あたりの水酸基の数2.0、粘度1,500mPa・s)
(注5)アクリディック WTU−152(DIC社製ポリオールワニス、加熱残分66質量%、数平均分子量5,100、水酸基価100、1分子あたりの水酸基の数9.1、加熱残分の粘度は100,000mPa・sを超える)
(注6)AEROSIL 200(日本アエロジル社製親水性フュームドシリカ、ホワイトカーボン、平均粒子径12nm)
(注7)サイリシア350(フジシリシア社製シリカ、平均粒子径3.9μm)
(注8)バリファインBF−20(堺化学社製沈降性硫酸バリウム、平均粒子径0.03μm)
(注9)NITTALC S(日本タルク(株)製タルク、珪酸マグネシウム)
(注10)BYK−358N(BYK社製レベリング剤)
(注11)BYK−A535(BYK社製消泡剤)
(注12)チヌビン400(BASF社製、ヒドロキシフェニルトリアジン(HPT)系紫外線吸収剤)
(注13)デュラネートAE700−100(旭化成ケミカルズ社製ヘキサメチレンジイソシアネートのアダクト変性体、加熱残分100質量%、ポリイソシアネートに占めるイソシアネート基の割合11.9質量%、粘度800mPa・s)
(注14)デュラネートTSS−100(旭化成ケミカルズ社製ヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート変性体、加熱残分100質量%、ポリイソシアネートに占めるイソシアネート基の割合17.6質量%、粘度420mPa・s)
(注15)タケネートD−140N(三井化学社製イソホロンジイソシアネートのビュレット変性体の酢酸エチル溶液、加熱残分75質量%、ポリイソシアネートに占めるイソシアネート基の割合10.5質量%、粘度2500mPa・s)
(注16)デスモジュールN3400(バイエル社製ヘキサメチレンジイソシアネートのウレトジオン変性体、加熱残分100質量%、ポリイソシアネートに占めるイソシアネート基の割合21.8質量%、粘度175mPa・s)
(注17)デスモジュールE21(バイエル社製芳香族ポリイソシアネート、加熱残分100質量%、ポリイソシアネートに占めるイソシアネート基の割合16.0質量%、粘度5400mPa・s)
(注18)レジガードボンドSD(大日本塗料製エポキシ樹脂系プライマー兼パテ材)
塗料組成物の塗装作業性、タレ限界、発泡性、不粘着性、耐候性、剥落防止性能、付着性を測定及び評価した。結果を表5〜8に示す。
表5〜8に示されるコンクリート基材の水平面にパテ材又は塗料組成物を膜厚700μmとなるようにコテで塗装し、下記の基準に従って評価した。このコンクリート基材は、表面が平滑な基材が、JIS A 5372:2004(プレキャスト鉄筋コンクリート製品)に規定するU形ふた、呼び名1種(400×600×60mm)であり、パテ材の評価に用いた基材は、上記の平滑な基材にデスクサンダーにて表面に約5mmの窪み、幅が約2mm、長さが約50mm、最大深さ約5mmの割れ、電動式ドリルにて直径約7mm、深さ約5mmの穴等を作製したものである。
〇:塗料組成物を容易に塗りつけられ、均一に仕上がり、規定の膜厚に容易に塗装できる。
△:塗料組成物を容易に塗りつけられ、均一に仕上がるが、規定の膜厚に容易に塗装できない。
×:塗料組成物を容易に塗りつけられない、または均一に仕上がらない。
ポリプロピレン板(厚み150mm、幅70mm)の垂直面に、下塗塗料組成物をヘラでタレが生じるまで塗装し、温度23℃相対湿度50%で168時間乾燥させた後、基材上端から20mmの位置の膜厚をタレ限界とした。なお、膜厚は塗膜を基材から剥離し、ノギスを用いて測定した。
ポリプロピレン板(厚み150mm、幅70mm)に塗料組成物を膜厚700μmとなるようにヘラで塗装し、温度35℃相対湿度90%で168時間乾燥させた塗膜について、基材に対し垂直に断面をとり、泡のない連続膜が得られている塗膜の表面積が占める割合を求め、その割合について下記の基準に従って評価した。
◎:70%以上である。
○:50%以上で且つ70%未満である。
×:50%未満である。
塗装作業性の評価に用いた平滑なコンクリート板と同様の板に下塗塗料組成物を、ヘラにより膜厚が300μmとなるように塗装し、ガラス繊維シート配置後、上塗塗料組成物をヘラにより膜厚が300μmとなるように塗装し、温度35℃相対湿度90%で168時間乾燥させた試験体について、目視で観察し、下記の基準に従って評価を行った。
ガラス繊維シートには、ガラスクレネット G44126[倉敷紡績株式会社製、引張強度、縦:480 横:420(N/5cm(糸本数、縦:20本、横:15本))、厚み:0.20(mm)]を用いた。
◎:基材表面を鮮明に確認できる。
〇:鮮明ではないものの基材表面を確認することが出来る。
×:基材表面を確認することが出来ない。
ガラス板に調製した塗料組成物を膜厚700μmとなるようにヘラで塗装し、温度35℃相対湿度90%で168時間乾燥させた塗膜に砂を撒き、刷毛で払い落とした際に塗膜に砂が残存するかを観察し、下記の基準に従って評価した。
〇:砂が残存しない。
×:砂が残存する。
1.クリヤー塗料を用いた場合
ヘラにより、膜厚が300μmとなるように、塗料で表5〜8に示されるコンクリート基材(表面が平滑な基材及び表面に窪み、割れ、穴等を有する基材としては<塗装作業性>の評価に記載される基材を用いた)を塗装して下塗り塗膜を形成させ、次いで表5〜8に示される繊維シートを配置させ、次いで、ヘラにより、膜厚が300μmとなるように、塗料で下塗り塗膜及び繊維シートを塗装して上塗り塗膜を形成させた。その後、積層体を温度35℃相対湿度90%で168時間乾燥させ、試験板を作製した。得られた試験板に、岩崎電気社製EYE SUPER UV TESTER SUV−W23を用いて400時間の照射試験を行った。照射後の試験板に対して、下記基準により評価を行った。
なお、ガラス繊維シートは、ガラスクレネット G44126[倉敷紡績株式会社製、引張強度、縦:480 横:420(N/5cm(糸本数、縦:20本、横:15本))、厚み:0.20(mm)]であり、エステル繊維シートは、ポリエステルクレネット E4400[倉敷紡績株式会社製、引張強度、縦:320 横:350(N/5cm(糸本数、縦:10本、横:10本))、厚み:0.26(mm)]である。
<<クリヤー塗料を用いた場合の評価基準>>
積層体の上からコンクリート基材を目視で観察し、下記評価基準で評価した。
◎:基材表面を鮮明に確認できる。
〇:鮮明ではないものの基材表面を確認することが出来る。
△:塗膜が黄変したものの基材表面を確認することが出来る。
×:基材表面を確認することが出来ない。
2.エナメル塗料を用いた場合
コンクリート基材をガラス板に変更した以外は、クリヤー塗料を用いた場合の耐候性試験と同様の方法により、試験板を作製した。
<<エナメル塗料を用いた場合の評価基準>>
試験板に対して、JIS K5600−4−7に記載の方法で照射試験前と照射試験後の60°鏡面光沢度を測定し、60°鏡面光沢度保持率を計算し、またJIS K5600−4−6 3.2に記載の方法でサカタインクス株式会社製マクベス分光光度計CE−3100を用いて、照射試験前と照射試験後の色相を測定し、色差ΔEを算出した。この方法で、下記評価基準で評価した。
◎:60°鏡面光沢度保持率70%以上、かつ、ΔEが1.0未満
〇:60°鏡面光沢度保持率70%未満、60%以上、または、ΔEが1.0以上、1.5未満
△:60°鏡面光沢度保持率60%未満、50%以上、または、ΔEが1.5以上、2.0未満
×:60°鏡面光沢度保持率50%未満、または、ΔEが2.0以上
コテ塗装により、500μmになるように塗料で表5〜8に示されるコンクリート基材を塗装して下塗り塗膜を形成させ、次いで表5〜8に示される繊維シートを配置させ、次いで、コテ塗装により、膜厚が500μmとなるように、塗料で下塗り塗膜及び繊維シートを塗装して上塗り塗膜を形成させ、その後、積層体を温度35℃相対湿度90%で168時間乾燥させた。コンクリート基材については<塗装作業性>を、繊維シートについては<耐候性試験>を参照されたい。
次いで、積層体を備えるコンクリート基材に対して、「首都高速道路株式会社 橋梁構造物設計要領 コンクリート片剥落防止編 平成18年8月版」に準拠して剥落防止性能試験を行い、下記基準に従い評価した。
・耐荷性
〇:φ10cmあたりの押抜き荷重1.0kN以上。
×:φ10cmあたりの押抜き荷重1.0kN未満。
コンクリート基材の種類及び積層体の乾燥条件以外は、<剥落防止性能>と同様に、積層体を形成させた。コンクリート基材としては、寸法20×70×70mmのモルタル片を用いた。乾燥条件としては、23℃の恒温室(湿度50%RH)にて、7日間養生を行った。次いで、積層体を備えるコンクリート基材に対して、建研式付着力試験機を用いた剥離試験を行い、剥離時の数値を下記基準により評価した。
〇:1.0N/mm2以上。
×:1.0N/mm2未満。
Claims (8)
- コンクリート構造物の表面に、下塗り塗膜、繊維シート及び上塗り塗膜を備える積層体を形成させて、コンクリート構造物からのコンクリートの剥落を防止する方法であって、
下塗り塗料でコンクリート構造物の表面を塗装し、下塗り塗膜を形成させる第1の工程と、下塗り塗膜上に繊維シートを配置させる第2の工程と、下塗り塗膜及び繊維シートを覆うように上塗り塗料による塗装を行い、上塗り塗膜を形成させる第3の工程とを含み、
前記下塗り塗料及び前記上塗り塗料が、数平均分子量が300〜10,000であり且つ1分子あたりの水酸基の数が2.0〜9.0であるポリオールと、イソシアネート基の割合が10.0〜20.0質量%であるポリイソシアネートとを含み、該ポリイソシアネートは、ポリオールの水酸基に対するイソシアネート基が0.5〜1.5当量であり、該ポリイソシアネートは、脂肪族ポリイソシアネート及び脂環式ポリイソシアネートよりなる群から選択される少なくとも1種である2液硬化型塗料であることを特徴とする方法。 - 前記ポリイソシアネートがヘキサメチレンジイソシアネートを少なくとも含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
- 前記2液硬化型塗料は、せん断速度0.1s−1における粘度が0.1〜10,000(Pa・s、23℃)であり、せん断速度1000s−1における粘度が0.05〜10(Pa・s、23℃)であることを特徴とする請求項1又は2に記載の方法。
- 前記2液硬化型塗料は、顔料体積濃度が10〜60体積%であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
- 前記2液硬化型塗料が、ホワイトカーボン及びシリカから選択される少なくとも1種の無機粉体を含むことを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法。
- 前記2液硬化型塗料が、沈降性硫酸バリウム及び珪酸マグネシウムから選択される少なくとも1種の無機粉体を含むことを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の方法。
- 前記2液硬化型塗料が、更に、脱水剤を含むことを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載の方法。
- 前記下塗り塗膜及び前記上塗り塗膜は、それぞれ独立して、乾燥膜厚が100〜800μmであることを特徴とする請求項1〜7のいずれか一項に記載の方法。
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