JP2011121052A - 酸化分解処理装置 - Google Patents

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Hiroshi Kondo
浩 近藤
Shogo Suzuki
章悟 鈴木
Noriaki Okada
典晃 岡田
Shozo Murata
省蔵 村田
Hideyuki Miyazawa
秀之 宮澤
Aya Utsugi
綾 宇津木
Kimio Aoki
公生 青木
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Abstract

【課題】有機物及び水を含む処理液を触媒存在下の高温高圧水中で酸化反応させることで、該処理液中の有機物を分解する際に、触媒と処理液及び酸化剤の接触効率を向上させつつ、連続的な酸化反応処理が可能な酸化分解処理装置を提供する。
【解決手段】有機物及び水を含む処理液Lと酸化剤が投入され、該処理液Lに含まれる有機物を処理液L中で加熱及び加圧して分解する反応器5と、反応器5に処理液Lと酸化剤を連続的に投入し、該反応器5で生成した分解物を排出する流通手段と、反応器5内部に挿入した攪拌羽6aを回動させて、該処理液L及び酸化剤を攪拌する攪拌手段6と、を具備し、攪拌羽6aの少なくとも表面が反応器5における反応を促進するための触媒からなる。
【選択図】図2

Description

この発明は、有機系廃液、有機物含有廃水あるいはそれらのスラリーを高温高圧状態で酸化反応を利用して低コスト、低環境負荷で分解処理する酸化分解処理装置に関するものである。
従来、廃水や廃スラリーの分解処理法としては、焼却処理や生物処理する方法が知られている。しかしながら、焼却処理の場合は前処理に脱水や固形分凝集に多大なエネルギーや新たな薬品が必要となること、焼却時に焼却炉の燃焼温度を低下させることからダイオキシン類が発生すること、また、生物処理の場合は処理時間が極めて長いこと、処理後に発生する活性汚泥が新たな廃棄物となることが問題となっている。
これらの問題を解決するための技術の一つとして、亜臨界水、過熱水蒸気または超臨界水といった熱水中での廃水処理技術が知られている。非特許文献1には、超臨界水中で廃水を燃焼させることでダイオキシン類やPCBなどの有害な有機物を分解する技術が記述されており、高温高圧水のなかで有機物は容易にCO2やH2Oといった無害で安定な物質に変換されている。しかしながら、これらの処理法は有用であるが、処理のために高いエネルギーを要する場合が多く、低い処理コストが求められる一般廃水や工業廃水への適用は困難であった。
また、処理に必要なエネルギーを低減させるため、反応器内に反応を促進させる触媒を具備する例も開示されている。特許文献1では、図1に示す様に反応器内部にハニカム状の微細な穴に触媒を坦持させた固定床触媒24を設置している。この微細な穴に処理液(廃水)を通過させることで、処理液と触媒の接触面積を増大させ、処理液中の有害な有機物を無害な物質に分解している。
しかし、一般に廃水中にはスラリー(固形物)を含有しており、これが微細な穴を通過することで徐々に触媒表面に堆積し、最終的には穴の目詰まりを発生させる原因となっていた。この目詰まりにより、連続的な廃水処理を行うことが出来なくなり、装置を一旦止めて目詰まりを除去して装置を再起動することになるが、これにより装置のメンテナンスコストの増加に加え、装置起動のためのエネルギーが必要となるといった問題が生じていた。
また、図1の固定床触媒24に示される構造の担持体を作製する場合において、その担持体を用いる装置や製品の台数が多い場合、例えば乗用車などは金型成型し大量生産することでコストダウンが可能であるが、この特許文献1に記載されたような反応処理装置の場合、一般に乗用車と比較するとその台数は極めて少なく、金型成型した場合大幅なコストアップといった問題を有していた。
また、高温高圧水を用いた汚泥などの廃棄物処理法として、特許文献2に固形及び液状の有機性廃棄物を水熱反応させ、メタンガス、水素ガスなどの燃焼ガスに変換し、再利用する技術が記載されている。しかしながら、この処理法は反応が吸熱反応であり、ランニングコストが非常に高くなるという問題を抱えている。また発生したガスには精製が必要であり、反応器後段にガス精製塔を備えるため、装置の簡便性が削がれるという問題があった。
本発明は、以上の従来技術における問題に鑑みてなされたものであり、有機系廃液、有機物含有廃水あるいはそれらスラリーの処理液を触媒存在下の高温高圧水中で酸化反応させることで、該処理液中の有機物を分解する際に、触媒と処理液及び酸化剤の接触効率を向上させつつ、連続的な酸化反応処理が可能な酸化分解処理装置を提供することを目的とする。
前記課題を解決するために提供する本発明は、以下の通りである。
〔1〕 有機物及び水を含む処理液(処理液L)と酸化剤が投入され、該処理液に含まれる有機物を処理液中で加熱及び加圧して分解する反応器(反応器5,25)と、該反応器に前記処理液と酸化剤を連続的に投入し、該反応器で生成した分解物(処理液L’)を排出する流通手段(スラリータンク1、送液ポンプ2、圧送手段3、配管R1,R2、背圧弁V)と、前記反応器内部に挿入した攪拌部材(攪拌羽6a,26a)を回動させて、該処理液及び酸化剤を攪拌する攪拌手段(攪拌手段6,26)と、を具備し、前記攪拌部材の少なくとも表面の一部が前記反応器における反応を促進するための触媒からなることを特徴とする酸化分解処理装置(酸化分解処理装置10,10A,10B,20、図3,図5,図6,図7)。
〔2〕 前記反応器は、所定長さの筒状容器であって、該筒状容器の長手方向の一方の端部側に前記処理液及び酸化剤を投入する投入口を有し、前記筒状容器の長手方向の他方の端部側に前記分解物を排出する排出口を有することを特徴とする前記〔1〕に記載の酸化分解処理装置。
〔3〕 前記反応器(反応器5)は、前記筒状容器内部において重力加速度方向の上方となる前記排出口側に前記攪拌手段が前記処理液及び酸化剤を攪拌する攪拌領域を有し、重力加速度方向の下方となる前記投入口側に非攪拌領域を有することを特徴とする前記〔2〕に記載の酸化分解処理装置(酸化分解処理装置10,10A,10B、図3,図5,図6)。
〔4〕 前記攪拌手段(攪拌手段26)は、前記反応器(反応器25)の筒状容器内壁に近接し前記投入口から前記排出口まで延びる前記攪拌部材(攪拌羽26a)を有することを特徴とする前記〔2〕に記載の酸化分解処理装置(酸化分解処理装置20、図7)。
〔5〕 前記攪拌部材の少なくとも前記排出口側の所定領域の表面が前記触媒からなることを特徴とする前記〔4〕に記載の酸化分解処理装置。
〔6〕 前記攪拌手段は、所定の時間間隔で前記攪拌部材の回転方向を反転して前記処理液及び酸化剤を攪拌することを特徴とする前記〔1〕〜〔5〕のいずれかに記載の酸化分解処理装置。
〔7〕 前記攪拌部材における触媒と反応器の容器部材との間が電気的に絶縁されていることを特徴とする前記〔1〕〜〔6〕のいずれかに記載の酸化分解処理装置(図4)。
〔8〕 前記分解処理前の処理液、または分解処理後の処理液に対して塩基性物質を投入することを特徴とする前記〔1〕〜〔7〕のいずれかに記載の酸化分解処理装置。
〔9〕 前記反応器が、加圧容器(加圧容器7,27)内に設置されていることを特徴とする前記〔1〕〜〔8〕のいずれかに記載の酸化分解処理装置(酸化分解処理装置10B,20、図6,図7)。
本発明によれば、攪拌部材の少なくとも表面の一部が触媒からなるため、処理液を微細な穴を通過させる構造をとることなく触媒と処理液の接触効率を向上させることができるとともに、連続的な酸化反応処理を行うことが可能となる。
固定床触媒及び攪拌システムを含む固定床触媒ホルダーの組立図である。 本発明に係る酸化分解処理装置の構成例(1)を示す概略図である。 図2の酸化分解処理装置に用いる反応器の構成例(1)を示す切断図である。 図2の酸化分解処理装置に用いる反応器の構成例(2)を示す切断図である。 本発明に係る酸化分解処理装置の構成例(2)を示す概略図である。 本発明に係る酸化分解処理装置の構成例(3)を示す概略図である。 本発明に係る酸化分解処理装置の構成例(4)を示す概略図である。 図7の酸化分解処理装置に用いる反応器の構成例(3)を示す切断図である。 図7の酸化分解処理装置に用いる反応器の構成例(4)を示す切断図である。
以下に、本発明に係る酸化分解処理装置の構成について説明する。
図2は、本発明に係る酸化分解処理装置の第1の構成例を示す概略図である。
図2に示すように、酸化分解処理装置10は、廃液である有機物及び水を含む処理液(処理液L)と酸化剤が投入され、該処理液に含まれる有機物を処理液中で加熱及び加圧して分解する反応器(反応器5)と、該反応器に前記処理液と酸化剤を連続的に投入し、該反応器で生成した分解物を排出する流通手段(スラリータンク1、送液ポンプ2、圧送手段3、配管R1,R2、背圧弁V)と、前記反応器内部の前記処理液及び酸化剤と接触する攪拌部材(攪拌羽6a)を回動させて、該処理液及び酸化剤を攪拌する攪拌手段(攪拌手段6)と、を具備する。
詳しくは、酸化分解処理装置10は、処理液供給部(スラリータンク1、送液ポンプ2)、酸化剤供給部(圧送手段3)、反応部(反応器5、攪拌手段6)、熱交換部(熱交換器8)を有する。
ここで、処理液供給部(スラリータンク1、送液ポンプ2)は、有機系廃液、有機物含有廃水あるいはそれらスラリーである処理液Lを反応部へ連続高圧送液するものであり、スラリータンク1と送液ポンプ2を有する。なお、本発明における有機物とは、その構造式中に少なくとも炭素、水素を含有している有機化合物である。また、PCBやダイオキシン等、その構造式に塩素を有するものやアルキルベンゼンスルホン酸やスルホンアミドなどその構造式に硫黄を有するものも含む。
スラリータンク1は、処理液Lを内部で攪拌しながら貯蔵しており、処理液Lは成分を良好な分散状態で送液ポンプ2で昇圧される。また、反応部へ送液する処理液Lの圧力を送液ポンプ2側に設けられた圧力計Pで検出して所定の圧力になるように送液ポンプ2を制御する。なお、送液ポンプ2には、シリンジポンプ、スラリーポンプ、ギヤーポンプ、スクリューポンプ、ダイヤフラムポンプ等の市販のポンプが適用可能である。
酸化剤供給部(圧送手段3)は、酸化剤を処理液供給部と同圧以上に圧縮し反応部へ連続高圧供給するものであり、コンプレッサなどの圧送手段3を有する。また、反応部へ供給する酸化剤の圧力を圧送手段3側に設けられた圧力計Pで検出して所定の圧力になるように圧送手段3を制御する。さらにこのときの酸化剤の供給量は処理する処理液Lを完全酸化させるための化学量論的量以上となるように圧送手段3を制御する。なお、図2では、処理液Lと酸化剤が投入側の配管R1の途中で合流した上で反応器5に投入されるようになっている。
反応器5に酸化剤を導入することにより、酸化剤を導入しない場合と比較して、処理液Lに含まれる有機物の分解反応を促進することが可能となる。本発明に適用可能な酸化剤として、空気、酸素、オゾン等の気体、過酸化水素水、過炭酸ソーダ等の過酸化物が挙げられる。なお、処理液Lに含まれる有機物の含有割合が小さい場合など、酸化剤を投入しなくても、処理液L中に含まれる酸化剤成分(酸素など)だけで分解反応が可能な場合がある。
有機物がメタノールであって、酸化剤として酸素を使用した場合の有機物の分解反応例を化学式(1)に示す。メタノールは、式(1)に示される通り、酸素と反応することで分解し無害な水と二酸化炭素となる。
CH3OH(液体)+
3/2 O2 → 2H2O(気体)+
CO2(気体)+ 639kJ ・・・(1)
反応部(反応器5、攪拌手段6)は、前記処理液供給部と前記酸化剤供給部から供給された処理液Lと酸化剤が投入される反応器5と、反応器5内の処理液L及び酸化剤を攪拌する攪拌部材6a,攪拌軸6b,攪拌モータ6cからなる攪拌手段6と、を有する。
反応器5は、重力加速度方向を長手とする筒状容器であって、図中上下方向に立設されており、処理液L及び酸化剤が反応器5の下部(底部)に所定の圧力で投入され、処理液L中のスラリーのうち、比重の大きな固形物等は反応器下部(非攪拌領域)に溜まるようにして分離することが可能である。なお、反応器5は、図2では重力加速度方向に直立した状態で設置されているが、重力加速度方向にある程度傾けた状態にしてもよい。
また、反応器5の内部温度は温度計Tで検出し、反応器5に取り付けられたヒータ(不図示)により所定の反応温度に加熱されるが、処理液Lに含まれる有機物と酸化剤の酸化反応(発熱反応)が開始した後はヒータによる加熱は停止してもよい。また、酸化反応開始後は、処理液Lあるいは酸化剤の温度や供給量を変化させることで反応温度に保たれる。このときの反応器5内の温度範囲は100℃〜600℃、好ましくは200℃〜550℃である。
また、反応器5の内部圧力は背圧弁V側の圧力計Pで検出し、背圧弁Vの調整により所定の圧力に保たれる。このときの反応器5内の圧力範囲は0.5MPa〜40MPa、好ましくは8MPa〜25MPaである。
なお、反応器5の内面は、酸に対する耐食性が良好な材料からなることが好ましい。これは、処理液Lに含まれる有機物が分解する際に、蟻酸等の有機酸及び塩酸、硫酸、硝酸等の無機酸が副生成物として生成する場合があるからである。よって本発明では、Ti及びTi-Pd等のTi合金、Ta、Nb、及びAu、Pt、Ir、Rh等の貴金属を適用することが好ましい。また、インコネル、ハステロイ等のNi系合金、SUS316等のステンレスを適用してもよい。また、ガラスやグラスファイバー、カーボンファイバー等の非金属材料も適用可能である。
また、図3(a)に示すように、反応器5の上部(攪拌領域)では、攪拌手段6の攪拌部材として攪拌羽6aが挿入されており、攪拌羽6aに連結された攪拌軸6bを攪拌モータ6cが回転させることにより該攪拌羽6aが回動し、処理液L及び酸化剤を攪拌する。なお、反応器5の攪拌軸6bを導入する部分は耐圧シール5aでシールしている。
ここで、本発明は、攪拌部材(攪拌羽6a)の少なくとも表面(図3における主平面)が反応器5における酸化反応を促進するための触媒からなることを特徴としている。これにより、反応器5の攪拌領域において、処理液L及び酸化剤が攪拌羽6aにより攪拌されながら触媒と接触することになり、反応器5の非攪拌領域で低分子化された処理液L中の有機物は完全酸化され、無害化される。
本発明に適用可能な触媒は、Ru,Pd,Rh,Pt,Au,Ir,Os,Fe,Cu,Zn,Ni,Co,Ce,Ti,Mnを含む少なくとも一種の金属、合金及びその酸化物、炭化物等の化合物が挙げられる。また、それらのうちから選ばれる複数種類の触媒を適用してもよい。
また、攪拌部材(攪拌羽6a)の少なくとも表面が反応器5における反応を促進するための触媒からなるとは、攪拌部材である攪拌羽6aそのものが触媒材料(例えば、Ti,Pt,Ta等の耐食性良好で且つ触媒となりうる金属)によって形成されている態様と、攪拌羽6aが触媒と異なる材料から成り、その表面に触媒となる物質で被覆されている態様とのいずれかを意味する。なお、攪拌部材表面に触媒が担持されているともいう。
攪拌羽6aの所定の表面に触媒を被覆する方法としては、スパッタ法、CVD法等の真空成膜法が挙げられ、このうちCVD法は攪拌羽6aの所定の表面が凹凸の大きい、複雑な形状であった場合においても、その形状に追従し均一な薄膜を得やすい。また、金属酸化物を触媒として被覆する場合において、金属アルコキシドを攪拌羽6aの表面に塗布成膜し数百度の高温で加熱することで、金属酸化物の皮膜とするゾルゲル法を用いてもよい。なお、金属アルコキシドは、一般に金属をM、アルキル基をRとすると、M(OR)n(nは金属元素の酸化数)で表される。
なお、攪拌羽6aの長手方向が、図3(a)に示すように、攪拌軸6bの長手方向に対して平行に設置されていても良いし、攪拌軸6bの長手方向に対して角度をもって設置されていても良い。また、複数枚の攪拌羽6aを攪拌軸6b上に設置することができ、その枚数が多いほど処理液Lと触媒の接触面積が増大し、反応効率を向上させることができる。
また、攪拌羽6aの回動として、同一方向に連続して回転してもよいし、所定時間ごとに回転方向が反転するものとしてもよい。所定時間ごとに回転方向が反転する反転機構を備えることで、反応器5内部の攪拌効率を向上させることが可能となる。また、前記反転機構を設けることで攪拌羽6a表面に存在する触媒全体に、有機物及び酸化物を均一に接触させることが可能となる。これは、図3(b)における、攪拌羽6aの回動方向前面と後面では、流体の流れが異なる場合があるからである。
反応器5内では、まず反応器5の下部(非攪拌領域)において、投入された処理液L及び酸化剤が所定の高圧下で加熱され、分解反応を開始し、処理液L中の有機物の低分子化が行われる。つぎに、反応器5の上部(攪拌領域)において、低分子化された有機物を含む処理液L及び酸化物が攪拌羽6aの回動により攪拌されながら、攪拌羽6aで坦持されている触媒と接触することにより、処理液L中の低分子化された有機物がさらに酸化分解され無害化される。ついで、反応器5の上部に接続された配管R2から反応処理後の分解物を含む高温高圧水(処理液L’)を排出する。
このように、本発明の酸化分解処理装置10は、特許文献1に記載のようなハニカム状の微細な穴に触媒を担持させることなく、触媒と処理液の接触確率を増大させて効率的に酸化反応を促進させることが可能となり、これにより反応器5の目詰まりを防止すると共に、より単純な構造で触媒担持体を実現することが可能となる。
熱交換部(熱交換器8)は、向流型熱交換方式であり二重管構造の熱交換器8を有し、この熱交換器8に反応器5から排出された高温高圧水を通すことで、前記処理液Lの処理により生成した高温高圧水の熱エネルギーを回収することが可能である。すなわち、この熱交換器8には熱交換媒体の水を供給する送液ポンプ(不図示)を有しており、所望の温度、圧力の蒸気製造が可能となる。製造される蒸気の温度、圧力、量は送液ポンプの流量を制御することで任意に変更可能となる。
ついで、熱交換器8で所定の温度まで冷却された反応処理後の処理液L’は、背圧弁Vを通じて酸化分解処理装置10の外部に排出される。なお、排出された処理液L’はわずかな無機酸などを含む水(液体)と二酸化炭素ガス、窒素ガスなどを主成分とした気体とに分離され、液体のみ捕集される。捕集された液体は水質基準を確認したのち工業用水として再利用される。
ところで、一般に金属の腐食は強酸・強塩基によるものと、局部電池形成によるものと二つに大別され、このうち局部電池形成は、電位の異なる金属(または化合物)の接触部が電解液中に置かれている場合において、電位が貴な金属(または化合物)から、電位が卑な金属(または化合物)に向かって電流が流れ、電位が卑な金属(または化合物)表面が腐食するようになる。ここで、反応器5と攪拌羽6aにおける触媒は、各々異なる材質で構成されるため、その両者が電気的に接触していた場合、その接触部で局部電池が形成され、電位が卑ないずれか一方(例えば、反応器5の容器部材)が腐食される可能性がある。
そこで、反応器5の腐食を防止するために、攪拌羽6aにおける触媒と反応器5の容器部材との間が電気的に絶縁されていることが好ましい。その構成例を図4に示す。
図4では、反応器5の挿入口に設けられた耐圧シール5aが攪拌軸6bを保持し、さらに攪拌軸6bが攪拌羽6aを保持している。これにより、攪拌羽6a及び該攪拌羽6aの少なくとも表面に坦持されている触媒は、反応器5の内面と接触しない状態で保持されている。また、攪拌軸6bは導電性材料で構成されているが、該攪拌軸6bの途中に設けられた絶縁ジョイント6dにより、攪拌羽6a及び該攪拌羽6aの少なくとも表面に坦持されている触媒は反応器5の容器部材と電気的に絶縁されている。この絶縁ジョイント6dは、例えばガラス等の耐食性のある絶縁材料からなるものとするとよい。
なお、図4の構成例以外にも、攪拌軸6bを絶縁材料で形成されてなるものとしてもよいし、攪拌羽6aをガラス等の耐食性の良好な絶縁体とし、その表面に前記触媒を担持させたものとしてもよい。
また、処理液Lとして、PCBやダイオキシン等、その構造式に塩素を有するものや、アルキルベンゼンスルホン酸やスルホンアミドなどその構造式に硫黄を有するものは、分解するとそれぞれ塩酸や硫酸等に変化する場合がある。この場合、分解後の溶液のpHが大きく下がり、その廃液を系外に放出することができなくなる。
そこで、酸化分解処理装置10において、反応器5における分解処理前の処理液L、または分解処理後の処理液L’に対して塩基性物質を投入することが好ましい。これにより、予め反応処理前に分解しようとする有機物を含む処理液Lと共に塩基性化合物を投入する、若しくは分解処理後(有機物が分解された後)の処理液L’に塩基性化合物を投入することで、分解後の溶液(処理液L’)が中和されこれを系外に放出することが可能となる。
図5に、その構成例(第2の構成例)を示す。
図5に示す酸化分解処理装置10Aの基本的構成は、図2に示す酸化分解処理装置10と同じであり、背圧弁V以降に送液ポンプ9a及び塩基性物質を含む中和液Mを貯蔵するタンク9bを備える点で異なる。これにより、反応器5から熱交換器8、背圧弁Vを経て出てきた処理液L’に対して、送液ポンプ9aによりタンク9bから塩基性物質を含む中和液Mを送り込み、中和させた上で、系外に排出することができる。
このとき、使用可能な塩基性化合物としては、酢酸、リン酸、クエン酸、酒石酸、炭酸等の弱酸の塩が挙げられる。特に、炭酸ナトリウム/カリウムは安価であり、人体への悪影響がないため好適であり、弱塩基性化合物であるため酸化分解処理装置が腐食し難い。また水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等の水酸化物も、酸化分解処理装置を腐食させない程度であれば適用可能である。
また、この図5の構成例以外にも、処理液L中に、前記塩基性化合物を投入するようにしてもよいが、このときの温度範囲を400℃以下とすることが望ましい。これは一般にこれ以上の温度領域において、塩基性化合物の溶解度が非常に小さくなり、反応器5内部に析出し、これが反応器5内部の閉塞を発生させるためである。この温度範囲は、閉塞の状況を鑑みて適宜設定することができる。
また、酸化分解処理装置10において、反応器5が、加圧容器内に設置されていることが好ましい。これにより、反応器5の加熱・加圧による膨張を防ぎ、装置の破損を防止することができる。
図6に、その構成例(第3の構成例)を示す。
図6に示す酸化分解処理装置10Bの基本的構成は、図2に示す酸化分解処理装置10と同じであり、反応器5が加圧された容器(加圧容器7)内に設置され、該加圧容器7がその外部に設置された加圧容器用のコンプレッサ4により加圧される点で異なる。ここで、加圧容器7内の圧力は、コンプレッサ4により反応器5内の圧力と同等に設定される。また、反応器5内部の圧力を検知するようにして、この圧力に追従するように加圧容器7内部の圧力を制御してもよい。これにより、反応器5内外の圧力差を極小化でき、反応器5の材料選択の幅を大きく広げることができる。
ところで、有機物を水中で加熱・加圧し分解する反応器を具備する酸化分解処理装置においては、反応器内部が極めて高温であるため、反応器に投入された処理液の水分が蒸発し、処理液の一部が反応器の内壁で固化することがある。このため、反応器内の処理液の流れが固化したもの(固形物)で塞がれ反応器の目詰まりとなり、処理液を円滑に反応器内に供給することができなくなり、処理液の処理効率が低下するという可能性があった。
そこで、本発明では、有機系廃液、有機物含有廃水あるいはそれらスラリーの処理液の酸化処理の反応性を向上させるとともに、その処理効率の低下を防止する工夫を施した。
図7に、その構成例(第4の構成例)を示す。
図7に示すように、酸化分解処理装置20は、所定長さの筒状容器であって、該筒状容器の長手方向の一方の端部側(図中上側)に設けられる投入口(投入口25in)に廃液である有機物及び水を含む処理液(処理液L)と酸化剤が投入され、該処理液に含まれる有機物を処理液中で加熱及び加圧して分解し、前記筒状容器の長手方向の他方の端部側(図中下側)に設けられる排出口(排出口25out)から前記分解物を排出する反応器(反応器25)と、該反応器に前記処理液と酸化剤を連続的に投入し、該反応器で生成した分解物を排出する流通手段(スラリータンク1、送液ポンプ2、配管R1,R2、背圧弁V)と、前記反応器の筒状容器内壁に近接し前記投入口から前記排出口まで延びる攪拌部材(攪拌羽26a)を有し、該攪拌部材を回動させて、該処理液及び酸化剤を攪拌する攪拌手段(攪拌手段26)と、を具備し、前記攪拌部材の少なくとも表面の一部が前記反応器における反応を促進するための触媒からなることを特徴とするものとする。
これにより、触媒を微細化することなく触媒と処理液の接触確率を増大させることが可能となるとともに、攪拌部材が回動して反応器内壁に析出した固形物を掻き取るようになるので、反応性向上及び反応器の目詰まり防止の両立が可能となる。
ここで、酸化分解処理装置20は、処理液供給部(スラリータンク1、送液ポンプ2)、酸化剤供給部(不図示)、反応部(反応器25、攪拌手段26)、熱交換部(熱交換器8)を有する。なお、図7中の符号のうち、第1〜3の構成例(図2,図5,図6)で同じものはその構成が同じであり、説明は省略する。
反応部(反応器25、攪拌手段26)は、前記処理液供給部と前記酸化剤供給部から供給された処理液Lと酸化剤が投入される反応器25と、反応器25内の処理液L及び酸化剤を攪拌する攪拌部材(攪拌羽)26a,攪拌軸26b,攪拌モータ26cからなる攪拌手段26と、を有する。
反応器25は、重力加速度方向を長手とする筒状容器であって、図中上下方向に立設されており、処理液L及び酸化剤が反応器25上部の投入口25inから所定の圧力で投入される。なお、処理液L中のスラリーのうち、比重の大きな固形物等は反応器25の排出口25outより下方に設けられた下部空間に溜まるようにして分離するとよい。
また、反応器25の内部温度は温度計Tで検出し、反応器25に取り付けられたヒータ(不図示)により所定の反応温度に加熱されるが、処理液Lに含まれる有機物と酸化剤の酸化反応(発熱反応)が開始した後はヒータによる加熱は停止してもよい。また、酸化反応開始後は、処理液Lあるいは酸化剤の温度や供給量を変化させることで反応温度に保たれる。このときの反応器25内の温度範囲は100℃〜600℃、好ましくは200℃〜550℃である。
また、反応器25の内部圧力は背圧弁V側の圧力計Pで検出し、背圧弁Vの調整により所定の圧力に保たれる。このときの反応器25内の圧力範囲は0.5MPa〜40MPa、好ましくは8MPa〜25MPaである。
なお、反応器25の内面は、酸に対する耐食性が良好な材料からなることが好ましく、第1〜3の構成例における反応器5と同じ材料を用いればよい。
また、図8に示すように、反応器25の内部には、攪拌手段26の攪拌部材として攪拌羽26aが挿入されており、攪拌羽26aに連結された攪拌軸26bを攪拌モータ26cが回転させることにより該攪拌羽26aが回動し、処理液L及び酸化剤を攪拌する。なお、反応器25の攪拌軸26bを導入する部分は耐圧シール25aでシールしている。また、投入口25inは、廃液投入口25in1と酸化剤投入口25in2とからなっている。
ここで、攪拌羽26aは、投入口25inから排出口25outまで延びる攪拌軸26bに固設された複数(図8では2枚)の板状の羽部材であり、回動する際に回動外周側となる端部が投入口25in近傍から排出口25out近傍に渡って反応器25の筒状容器内壁に近接した状態となっている。これにより、酸化分解処理のときに、攪拌羽26aが回動すると、処理液L及び酸化剤を攪拌して反応を促進させるとともに、その端部が反応器25の内壁に析出した固形物を掻き取り、反応器25の目詰まりを防止するようになる。なお、掻き取られた比重の大きな固形物は反応器25の排出口25outより下方に設けられた下部空間に溜められる。
また、本発明は、攪拌部材(攪拌羽26a)の少なくとも表面(図8における板状羽部材の主平面部分)の一部が反応器25における酸化反応を促進するための触媒からなることを特徴としている。これにより、反応器25の攪拌領域において、処理液L及び酸化剤が攪拌羽26aにより攪拌されながら触媒と接触することになり、反応器25の非攪拌領域で低分子化された処理液L中の有機物は完全酸化され、無害化される。なお、適用可能な触媒は、第1の構成例で示したものと同じである。
また、攪拌部材(攪拌羽26a)の少なくとも表面が反応器25における反応を促進するための触媒からなるとは、攪拌部材である攪拌羽26aそのものが触媒材料(例えば、Ti,Pt,Ta等の耐食性良好で且つ触媒となりうる金属)によって形成されている態様と、攪拌羽26aが触媒と異なる材料から成り、その表面に触媒となる物質で被覆されている態様とのいずれかを意味する。なお、攪拌部材表面に触媒が担持されているともいう。攪拌羽26aの所定の表面に触媒を被覆する方法は、第1の構成例で示した方法によればよい。
また、攪拌羽26aの少なくとも排出口25out側の所定領域の表面が前記触媒からなることが好ましい。すなわち、反応器25の排出口25out側で触媒と接触させて処理液L中の有機物を効率的に完全酸化し無害化するためのものであり、攪拌羽26aの主面のうち、排出口25outから反応器25全長の1/3の長さのところまでの領域に前記触媒が形成されているとよい。なお、排出口25outから反応器25の長手方向中央部までの領域に前記触媒が形成されていてもよいし、攪拌羽26aの主面前面に前記触媒が形成されていてもよい。
また、攪拌羽26aの回動として、同一方向に連続して回転してもよいし、所定時間ごとに回転方向が反転するものとしてもよい。所定時間ごとに回転方向が反転する反転機構を備えることで、反応器25内部の攪拌効率を向上させることが可能となる。また、前記反転機構を設けることで攪拌羽26a表面に存在する触媒全体に、有機物及び酸化物を均一に接触させることが可能となる。
なお、攪拌羽26aの長手方向が、図8に示すように、攪拌軸26bの長手方向に対して平行に設置されていても良いが、図9に示すように、攪拌羽26aが攪拌軸26bの軸上を螺旋状に設置されていてもよい。図9に示す螺旋形状の攪拌羽26aの場合、同一方向に回動することで、反応器25内壁から掻き取った固形物を反応器25内の端部空間又は反応器25外へ搬送することが可能となる。
また、図7では、反応器25が加圧容器27内に設置されており、この加圧容器27内、すなわち加圧容器27内壁と反応器25外壁の間に、コンプレッサなどの圧送手段23により加圧された酸化剤が導入されている。これにより、反応器25の内圧と外圧を同等に保持することで反応器25の破損を防ぐことが可能である(プレッシャーバランス構造)。また、反応器25の酸化剤投入口25in2を開放しておけば、同時に、酸化剤投入口25in2から前記酸化剤(第1の構成例で示したものと同じもの)を投入することが可能となる。
なお、加圧容器27に使用される材料としては、SUS316、SUS304等の高温使用下における耐圧性が良好な材料が好適である。
以上の構成の酸化分解処理装置20を稼動させると、反応器25内では、まず反応器25上部の投入口25inから投入された処理液L及び酸化剤が攪拌羽26aの回動により攪拌されながら所定の高圧下で加熱され、分解反応を開始し、処理液L中の有機物の低分子化が行われる。つぎに、反応器5の下部において、低分子化された有機物を含む処理液L及び酸化物が攪拌羽26aの回動により攪拌されながら、攪拌羽26aで坦持されている触媒と接触することにより、処理液L中の低分子化された有機物がさらに酸化分解され無害化される。また、処理液Lが反応器25に投入された際に固形物が生成し、反応器25内部に固着したとしても、回動する攪拌羽26aによって掻き取られ、比重の大きな固形物は反応器25の底部に溜められる。
ついで、反応器25下部の排出口25outに接続された配管R2から反応処理後の分解物を含む高温高圧水(処理液L’)を排出する。
ついで、熱交換器8で所定の温度まで冷却された反応処理後の処理液L’は、背圧弁Vを通じて酸化分解処理装置20の外部に排出される。なお、排出された処理液L’はわずかな無機酸などを含む水(液体)と二酸化炭素ガス、窒素ガスなどを主成分とした気体とに分離され、液体のみ捕集される。捕集された液体は水質基準を確認したのち工業用水として再利用される。
このように、本発明の酸化分解処理装置20は、特許文献1に記載のようなハニカム状の微細な穴に触媒を担持させることなく、触媒と処理液の接触確率を増大させて効率的に酸化反応を促進させることが可能となるとともに反応器25の目詰まりをより防止でき、より単純な構造で触媒担持体を実現することが可能となる。
なお、これまで本発明を図面に示した実施形態をもって説明してきたが、本発明は図面に示した実施形態に限定されるものではなく、他の実施形態、追加、変更、削除など、当業者が想到することができる範囲内で変更することができ、いずれの態様においても本発明の作用・効果を奏する限り、本発明の範囲に含まれるものである。
1 スラリータンク
2,9a 送液ポンプ
3,23 圧送手段
4 コンプレッサ
5,25 反応器
5a,25a 耐圧シール
6,26 攪拌手段
6a,26a 攪拌羽
6b,26b 攪拌軸
6c,26c 攪拌モータ
6d 絶縁ジョイント
7,27 加圧容器
8 熱交換器
9b タンク
10,10A,10B,20 酸化分解処理装置
24 固定床触媒
25in 投入口
25in1 廃液投入口
25in2 酸化剤投入口
25out 排出口
L 処理液
M 中和液
P 圧力計
R1,R2 配管
T 温度計
V 背圧弁
特許第3749523号公報 特開2005−179611号公報 荒井康彦、超臨界流体のすべて、テクノシステム(2002)

Claims (9)

  1. 有機物及び水を含む処理液と酸化剤が投入され、該処理液に含まれる有機物を処理液中で加熱及び加圧して分解する反応器と、
    該反応器に前記処理液と酸化剤を連続的に投入し、該反応器で生成した分解物を排出する流通手段と、
    前記反応器内部に挿入した攪拌部材を回動させて、該処理液及び酸化剤を攪拌する攪拌手段と、を具備し、
    前記攪拌部材の少なくとも表面の一部が前記反応器における反応を促進するための触媒からなることを特徴とする酸化分解処理装置。
  2. 前記反応器は、所定長さの筒状容器であって、該筒状容器の長手方向の一方の端部側に前記処理液及び酸化剤を投入する投入口を有し、前記筒状容器の長手方向の他方の端部側に前記分解物を排出する排出口を有することを特徴とする請求項1に記載の酸化分解処理装置。
  3. 前記反応器は、前記筒状容器内部において重力加速度方向の上方となる前記排出口側に前記攪拌手段が前記処理液及び酸化剤を攪拌する攪拌領域を有し、重力加速度方向の下方となる前記投入口側に非攪拌領域を有することを特徴とする請求項2に記載の酸化分解処理装置。
  4. 前記攪拌手段は、前記反応器の筒状容器内壁に近接し前記投入口から前記排出口まで延びる前記攪拌部材を有することを特徴とする請求項2に記載の酸化分解処理装置。
  5. 前記攪拌部材の少なくとも前記排出口側の所定領域の表面が前記触媒からなることを特徴とする請求項4に記載の酸化分解処理装置。
  6. 前記攪拌手段は、所定の時間間隔で前記攪拌部材の回転方向を反転して前記処理液及び酸化剤を攪拌することを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の酸化分解処理装置。
  7. 前記攪拌部材における触媒と反応器の容器部材との間が電気的に絶縁されていることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の酸化分解処理装置。
  8. 前記分解処理前の処理液、または分解処理後の処理液に対して塩基性物質を投入することを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の酸化分解処理装置。
  9. 前記反応器が、加圧容器内に設置されていることを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載の酸化分解処理装置。
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