JP2011117668A - 空気調和装置、および空気調和装置の洗浄運転方法 - Google Patents

空気調和装置、および空気調和装置の洗浄運転方法 Download PDF

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Abstract

【課題】空気調和装置の設置条件や運転状態に応じて、洗浄時間を決定することができる空気調和装置、および空気調和装置の洗浄運転方法を得る。
【解決手段】圧縮機1、熱源機側熱交換器3、絞り手段5i、および利用側熱交換器6iを第1の接続配管Cおよび第2の接続配管Dで接続した冷媒回路を備え、該冷媒回路を循環する旧冷媒が新冷媒に置換された後、圧縮機1を駆動源として、第1の接続配管Cおよび第2の接続配管Dおよび利用側熱交換器6iに新冷媒を流して第1の接続配管Cおよび第2の接続配管D内の洗浄運転を行う空気調和装置において、第1の接続配管Cおよび第2の接続配管Dの配管径、第1の接続配管Cおよび第2の接続配管Dの配管長、新冷媒の質量流束、新冷媒の冷媒温度、新冷媒の冷媒圧力のうち少なくとも1つを含む特徴量に基づいて、洗浄運転による洗浄時間を決定する制御手段を備えた。
【選択図】図1

Description

本発明は、冷媒回路を循環する旧冷媒が新冷媒に置換された後、冷媒配管内の洗浄運転を行う空気調和装置、および空気調和装置の洗浄運転方法に関するものである。
従来から一般に用いられているセパレート形の空気調和装置(冷凍サイクル装置)では、冷媒として、CFC(クロロフルオロカーボン)やHCFC(ハイドロクロロフルオロカーボン)が用いられてきたが、これらの分子に含まれる塩素が成層圏でオゾン層を破壊するため、CFCは既に全廃され、HCFCでも生産規制が開始されている。
これらに替わって、分子に塩素を含まないHFC(ハイドロフルオロカーボン)を使用する空気調和装置が実用化されている。CFC・HCFCを用いた空気調和装置が老朽化した場合、これらの冷媒は全廃・生産規制されているため、HFC(R407C、R410A等の冷媒)を用いた空気調和装置に入れ替える必要がある。また、熱源機は、HFCで使用する冷凍機油・有機材料・熱交換器がCFC、HCFCとは異なるため、HFC専用のものと交換する必要があり、かつ元々CFC・HCFC用の熱源機は老朽化しているため交換する必要があるものであり、交換も比較的容易である。
一方、熱源機と室内機を接続する第1の接続配管と第2の接続配管(冷媒配管)は、配管長が長い場合や、パイプシャフトや天井裏などの建物に埋設されている場合には、新規配管に交換することは困難で、しかも老朽化もしないため、CFC・HCFCを用いた空気調和装置で使用していた第1の接続配管と第2の接続配管をそのまま使用できれば、配管工事が簡略化できる。さらに、室内機についても建物の中に数多く設置されている場合には新規に交換することは困難なため、CFC・HCFCを用いた空気調和装置で使用していた室内機を使用することで、室内機の交換工事を省略できる。
しかし、CFC・HCFCを用いた空気調和装置で使用していた室内機、第1の接続配管と第2の接続配管には、CFC・HCFCを用いた空気調和装置の冷凍機油である鉱油やCFC・HCFCや冷凍機油の劣化物がスラッジとなったものが残留している。
HFCを用いた空気調和装置の冷凍機油(エステル油やエーテル油などの合成油)に鉱油が一定以上混入すると、HFC冷媒との相溶性が失われ、アキュムレータに液冷媒が溜まっている場合にHFC用冷凍機油が液冷媒の上に分離・浮遊するため、アキュムレータの下部にある返油穴から圧縮機へ冷凍機油が戻らず圧縮機の摺動部が焼き付く。また、鉱油が混入するとHFC用冷凍機油が劣化する。また、CFC・HCFCが混入するとこれらに含まれる塩素成分によりHFC用冷凍機油が劣化する。また、CFC・HCFC用冷凍機油の劣化物がスラッジとなったものに含まれる塩素成分によりHFC用冷凍機油が劣化する。
このため、従来はCFCやHCFCを用いた空気調和装置で使用していた第1の接続配管と第2の接続配管を、既設の空気調和装置について、熱源機を新規に交換し、あるいは熱源機と室内機を新規に交換し、室内機と熱源機とを接続する接続配管を交換しないで、熱源機側の冷媒配管に接続配管に流通する冷媒から異物を捕捉する手段を設ける。あるいは、他のバイパス路を設けて冷媒中の冷凍機油を分離するなどして、また、複数台の室内機が並列に接続されている場合、洗浄に必要な十分な液量を確保するために接続配管径もしくは接続配管長が実質的に同じものを組とし、組ごとに配管洗浄を行う配管洗浄運転をした後に、通常運転をすることが提案されている(例えば特許文献1参照)。
特開2002−107011号公報(要約、図1)
しかし、従来の洗浄運転の洗浄時間に関しては設置条件や室内、室外の空気温度などの環境条件等は考慮されていない。このため、室内機が複数台並列接続された場合や各室内機の接続配管の長さが長い場合、あるいは冬期に洗浄を行うなどの熱源機の周囲温度が低い場合はHFC冷媒が熱源機側熱交換器で凝縮してしまうため、洗浄に必要な流量が出せなくなり、その結果、洗浄性能が悪化し、洗浄時間が多大に要する。そこで、従来の洗浄運転においては、確実に洗浄するため、最も洗浄性能が低くなる運転条件での必要最大洗浄時間をもって洗浄運転時間を規定していた。したがって、接続配管長が短い場合は殆ど鉱油(冷凍機油等)が残留していないにもかかわらず、必要以上の洗浄を行うことで、洗浄工程の時間に多大な時間を要し、空気調和装置の冷媒更新に時間がかかる、という問題点があった。
この発明は、上記のような課題を解決するためになされたもので、冷媒回路を循環する旧冷媒が新冷媒に置換された後の洗浄運転において、空気調和装置の設置条件や運転状態に応じて、洗浄時間を決定することができる空気調和装置、および空気調和装置の洗浄運転方法を得るものである。
本発明に係る空気調和装置は、圧縮機、熱源機側熱交換器、絞り手段、および利用側熱交換器を冷媒配管で接続した冷媒回路を備え、該冷媒回路を循環する旧冷媒が新冷媒に置換された後、前記圧縮機を駆動源として、前記冷媒配管および前記利用側熱交換器に新冷媒を流して前記冷媒配管内の洗浄運転を行う空気調和装置において、前記冷媒配管の配管径、前記冷媒配管の配管長、前記新冷媒の質量流束、前記新冷媒の冷媒温度、前記新冷媒の冷媒圧力のうち少なくとも1つを含む特徴量に基づいて、前記洗浄運転による洗浄時間を決定する制御手段を備えたものである。
本発明に係る空気調和装置の洗浄運転方法は、圧縮機、熱源機側熱交換器、絞り手段、および利用側熱交換器を冷媒配管で接続した冷媒回路を備え、該冷媒回路を循環する旧冷媒が新冷媒に置換された後、前記圧縮機を駆動源として、前記冷媒配管および前記利用側熱交換器に新冷媒を流して前記冷媒配管内の洗浄運転を行う空気調和装置の洗浄運転方法において、前記冷媒配管の配管径、前記冷媒配管の配管長、前記新冷媒の質量流束、前記新冷媒の冷媒温度、前記新冷媒の冷媒圧力のうち少なくとも1つを含む特徴量に基づいて、前記洗浄運転による洗浄時間を決定するものである。
本発明は、冷媒配管の配管径、冷媒配管の配管長、新冷媒の質量流束、新冷媒の冷媒温度、新冷媒の冷媒圧力のうち少なくとも1つを含む特徴量に基づいて、洗浄運転による洗浄時間を決定する。このため、空気調和装置の設置条件や運転状態に応じて、洗浄時間を決定することができる。よって、過度の洗浄運転を行う必要が無くなり、短時間で洗浄運転を終了することができ、空気調和装置の更新を迅速に行うことができる。
この発明の実施の形態1に係る空気調和装置の冷媒回路を示す図である。 HFC用冷凍機油に塩素が混入している場合(175℃)の劣化の時間変化を示す図である。 冷媒状態(気相冷媒、液または気液二相冷媒)、鉱油動粘性係数、質量流束の違いによる必要洗浄時間の関係を示す図である。 鉱油温度と鉱油の動粘性係数を示す図である。
実施の形態1.
以下、図面を参照してこの発明の実施の形態について説明する。なお、各図中、同一または相当する部分については、同一符号を付してその説明を適宜省略または簡略化する。
図1は、この発明の実施の形態1に係る空気調和装置の冷媒回路を示す図である。図1において、Aは熱源機であり、圧縮機1、四方弁2、熱源機側熱交換器3、第1の操作弁4、第2の操作弁7、アキュムレータ8、油分離器9、および異物捕捉手段13を内蔵している。また、31は圧縮機1の吐出冷媒の圧力を検出する高圧圧力センサであり、32は圧縮機1の吸入冷媒の圧力を検出する低圧圧力センサである。
なお、「低圧圧力センサ32」は、本発明における「圧力センサ」に相当する。
油分離器9は、圧縮機1の吐出配管に設けられ、圧縮機1から冷媒とともに吐出される冷凍機油を分離する。異物捕捉手段13は、四方弁2とアキュムレータ8の間に設けられている。9aは油分離器9の底部より端を発し、異物捕捉手段13の出口下流の冷媒配管に至るバイパス路である。また、アキュムレータ8のU字管状の流出配管の下部には返油穴8aが設けられている。
Biはi番目の室内機であり、絞り手段5i、利用側熱交換器6i、および利用側熱交換器6iを流れる冷媒の飽和温度を検出する温度センサ21iを備えている。
Cは、第1の接続配管であり、その一端は第1の操作弁4を介して熱源機側熱交換器3と接続され、他の一端は、第1の接続配管の分岐配管Ciを介してi番目の絞り手段5iと接続されている。Dは、第2の接続配管であり、その一端は第2の操作弁7を介して四方弁2と接続され、他の一端は第2の接続配管の分岐配管Diを介して利用側熱交換器6iと接続されている。
なお、「第1の接続配管C」および「第2の接続配管D」は、本発明における「冷媒配管」に相当する。
熱源機Aと室内機Bは離れた場所に設置され、第1の接続配管C、第2の接続配管Dにより接続されて、冷凍サイクルを形成する。なお、この空気調和装置は冷媒としてHFC(以下適宜、新冷媒と称する)を使うものである。
図1に示す冷媒回路は、室内機Biを複数台並列に備えている。第1の接続配管Cは、それぞれの室内機Biに冷媒を流通させるための分岐配管Ciを部分として有している。第2の接続配管Dも同様である。第1の接続配管Cの所定部分(分岐配管Ci)と利用側熱交換器6と第2の接続配管Dの所定部分(分岐配管Di)との接続を利用側冷媒回路部分と称することにすると、図1に示す冷媒回路は、この利用側冷媒回路部分を並列に複数備えている。表現を変えれば、利用側熱交換器6とこの利用側熱交換器6に接続された第1および第2の接続配管の所定部分(分岐配管Ci、Di)を含む利用側冷媒回路部分を複数並列に備えている。なお、この明細書において、複数の利用側冷媒回路部分を構成する各要素(例えば室内機)を総称して符号で示すときは添字なしで(例えば室内機B)、任意のものあるいは特定のものを指すときはiを添字にして(例えば室内機Bi)表すこととする。
また、制御手段100は、空気調和装置の動作を統括制御する。制御手段100は、マイコン等で構成されており、各種検出手段での検出情報およびリモコン等からの指示に基づいて、圧縮機1の駆動周波数、送風手段の回転数(ON/OFF含む)、四方弁2の切り替え、絞り手段5iの開度等を制御し、空気調和を行う通常運転や、後述する洗浄運転を実行する。また、制御手段100は、第1の接続配管Cおよび第2の接続配管Dの配管径、第1の接続配管Cおよび第2の接続配管Dの配管長、新冷媒の質量流束、新冷媒の冷媒温度、新冷媒の冷媒圧力のうち少なくとも1つを含む特徴量に基づいて、洗浄運転による洗浄時間を決定する。詳細は後述する。
さらに、制御手段110には、所定の配管長の冷媒配管(接続配管)内を洗浄するのに必要な洗浄時間と冷媒の質量流束との関係の情報が、冷媒状態(気相冷媒、液または気液二相冷媒)ごとに記憶されている。
《熱源機Aおよび室内機B交換の手順》
次に、CFC、HCFC(旧冷媒)を使った空気調和装置が老朽化した場合の熱源機Aおよび室内機B交換の手順を示す。既存の空気調和装置からCFCまたはHCFCを回収し、熱源機Aと室内機Bを図1に示すHFC(新冷媒)を用いるものに交換する。第1の接続配管Cと第2の接続配管Dは、HCFCを使った空気調和装置のものを再利用する。そして、図1に示す冷媒回路を形成する。
熱源機Aには予めHFC(新冷媒)が充填されているので、第1の操作弁4と第2の操作弁7は閉じたまま、室内機B、第1の接続配管C、第2の接続配管Dを接続状態で真空引きをし、その後第1の操作弁4と第2の操作弁7の開弁とHFCの追加充填を実施する。その後、まず洗浄運転を実施し、その後通常の空調運転を実施する。
《洗浄運転方法》
次に、洗浄運転の内容を図1に添って説明する。図中、実線矢印が冷房運転の流れを、破線矢印が暖房運転の流れを示す。
≪冷房洗浄運転≫
まず、冷房時の洗浄運転の流れを説明する。洗浄運転開始前に、各室内機Biに設けられた制御基板上のマイコンにより各室内機Biの容量が分かり、その容量で各利用側冷媒回路部分の接続配管径がおおよそ予想でき、それぞれi番目の利用側冷媒回路部分に接続された配管径が一意的に求められる。ここで、求められた各室内機Biの利用側冷媒回路部分の配管径により配管断面積の合計が所定の値以下のものを組として一纏めにして、その中の1組を選択する。選択された組以外の室内機Biの絞り手段5iを閉止して洗浄運転を開始する。
上記のように、各室内機Biに接続された複数の利用側冷媒回路部分の接続配管の合計断面積が所定の値以下となるように、複数の利用側冷媒回路部分を1または複数の組に分ける。そして組ごとに冷媒を流通させて洗浄運転をする。このようにすれば、同時に冷媒を流通させている複数の利用側冷媒回路部分の冷媒の質量流束を所定の値以上に維持することができる。
さて、圧縮機1で圧縮された高温高圧のガス冷媒は、HFC用冷凍機油と共に圧縮機1を吐出され、油分離器9へ流入する。ここで、HFC用冷凍機油は完全に分離され、ガス冷媒のみが四方弁2を経て、熱源機側熱交換器3へと流入し、ここで空気・水など熱源媒体と熱交換して凝縮液化する。凝縮液化した冷媒は、第1の操作弁4を経て、第1の接続配管Cに流入する。
HFCの液冷媒が第1の接続配管Cを流れるときに、第1の接続配管Cに残留しているCFC・HCFC・鉱油・鉱油劣化物(以下残留異物と称する)を少しずつ洗浄してHFCの液冷媒と共に流れ、選択された各室内機Biの絞り手段5iへ流入し、ここで低圧まで減圧されて低圧二相状態となり、利用側熱交換器6iでファンなどの利用側送風手段(図示せず)によって送出される空気などの利用媒体と熱交換して蒸発・ガス化する。
蒸発・ガス化した冷媒は、第1の接続配管Cおよびその分岐配管Ciの残留異物とともに第2の接続配管D、分岐配管Diに流入する。第2の接続配管D、分岐配管Diに残留している残留異物は、ここを流れる冷媒がガス状のため、配管内面に付着した残留異物の一部は、ガス冷媒中にミスト状になって流れるが、大半の液状残留異物はガス・液境界面に発生するせん断力によりガス冷媒に引きずられる形で、配管内面を環状に流れるため、洗浄時間は第1の接続配管C、分岐配管Ciよりは遅いが、確実に洗浄される。
その後、蒸発・ガス化した気液二相状態の冷媒は、第1の接続配管C、その分岐配管Ciの残留異物と第2の接続配管D、分岐配管Diの残留異物と共に、第2の操作弁7、四方弁2を経て異物捕捉手段13へ流入する。残留異物は、沸点の違いにより相が異なり、固体異物・液体異物・気体異物の3種類に分類される。
異物捕捉手段13では、固体異物と液体異物は完全にガス冷媒と分離され捕捉される。気体異物はその一部が捕捉され、一部は捕捉されない。その後、ガス冷媒は、異物捕捉手段13で捕捉されなかった気体異物と共にアキュムレータ8を経て圧縮機1に戻る。このような洗浄運転を他の組についても行い、室内機Biすべてについて同様の操作を行う。
なお、冷房運転時の冷媒回路、すなわち、圧縮機1から熱源機側熱交換器3と絞り手段5iと利用側熱交換器6iとアキュムレータ8とを順次に経て再び圧縮機に戻る冷媒回路を、本明細書では、第1の冷媒回路とする。
油分離器9で、ガス冷媒と完全に分離されたHFC用冷凍機油は、バイパス路9aを経て、異物捕捉手段13の下流で本流と合流して、圧縮機1に戻るので、第1の接続配管Cや第2の接続配管Dに残留していた鉱油と混ざることはなく、HFC用冷凍機油はHFCに対して非相溶化することはなく、またHFC用冷凍機油は鉱油により劣化することはない。
また、固形異物もHFC用冷凍機油と混合することはなく、HFC用冷凍機油を劣化しない。また、気体異物はHFC冷媒が冷媒回路を1サイクル循環して、異物捕捉手段13を1回通る間には一部が捕捉されるだけで、HFC用冷凍機油と気体異物は混合されるが、HFC用冷凍機油の劣化は化学反応で、急激には進まない。
その劣化の一例を図2に示す。図2は、HFC用冷凍機油に塩素が混入している場合(175℃)の劣化の時間変化を示す図である。図2において、横軸は時間(hr)、縦軸は全酸化(mgKOH/g)を示す。異物捕捉手段を1回通る間に捕捉されなかった気体異物は、HFC冷媒の循環と共に何回も異物捕捉手段13を通るので、HFC用冷凍機油が劣化するよりも遅く、異物捕捉手段13で捕捉すれば良い。
《暖房洗浄運転》
次に暖房時の洗浄運転の流れを説明する。各室内機Biの配管径により接続配管の合計断面積が所定の値以下となるような組を一纏めにして、その中の1組を選択する。選択された組以外の室内機Biの絞り手段を閉止して洗浄運転を開始する。
さて、圧縮機1で圧縮された高温高圧のガス冷媒はHFC用冷凍機油と共に圧縮機1を吐出され、油分離器9へ流入する。ここで、HFC用冷凍機油は完全に分離され、ガス冷媒のみが四方弁2、第2の操作弁7を経て第2の接続配管Dへ流入する。
第2の接続配管Dに残留している残留異物は、ここを流れる冷媒がガス状のため、配管内面に付着した残留異物の一部は、ガス冷媒中にミスト状になって流れるが、大半の液状残留異物はガス・液境界面に発生するせん断力によりガス冷媒に引きずられる形で、配管内面を環状に流れるため、洗浄時間は第1の接続配管Cよりは遅いが、確実に洗浄される。
その後、ガス冷媒は、第2の接続配管Dの残留異物と共に、選択された各室内機Biの利用側熱交換器6iへと流入し、ここで空気など利用側媒体と熱交換して完全に凝縮液化する。凝縮液化した冷媒は絞り手段5iへ流入し、ここで低圧まで減圧されて低圧二相状態となり、第1の接続配管Cに流入する。流入した冷媒は気液二相状態のため、流速も速く、かつ液冷媒と共に、残留異物は洗浄され、冷房運転時の第1の接続配管Cより速い速度で洗浄される。
第2の接続配管D、分岐配管Diおよび第1の接続配管C、分岐配管Ciから洗浄された異物と共に、気液二相状態の冷媒は、第1の操作弁4を経て、熱源機側熱交換器3で空気・水などの熱源媒体と熱交換して蒸発・ガス化する。蒸発・ガス化した冷媒は、四方弁2を経て異物捕捉手段13へ流入する。
残留異物は、沸点の違いにより相が異なり、固体異物・液体異物・気体異物の3種類に分類される。異物捕捉手段13では、固体異物と液体異物は完全にガス冷媒と分離され捕捉される。気体異物はその一部が捕捉され、一部は捕捉されない。その後、ガス冷媒は、異物捕捉手段13で捕捉されなかった気体異物と共にアキュムレータ8を経て圧縮機1へ戻る。
このような洗浄運転を他の組についても行い、室内機Biすべてについて同様の操作を行う。
なお、暖房時の洗浄運転の冷媒回路、すなわち、圧縮機1から利用側熱交換器6iと絞り手段5iと熱源機側熱交換器3とアキュムレータ8とを順次に経て再び圧縮機に戻る冷媒回路を、本明細書では、第2の冷媒回路とする。
油分離器9で、ガス冷媒と完全に分離されたHFC用冷凍機油は、バイパス路9aを経て、異物捕捉手段13の下流で本流と合流して、圧縮機1に戻るので、第1の接続配管Cや第2の接続配管Dに残留していた鉱油と混ざることはなく、HFC用冷凍機油はHFCに対して非相溶化することはなく、またHFC用冷凍機油は鉱油により劣化することはない。
また、固形異物もHFC用冷凍機油と混合することはなく、HFC用冷凍機油を劣化しない。また、気体異物はHFC冷媒が冷媒回路を1サイクル循環して、異物捕捉手段13を1回通る間には一部が捕捉されるだけで、HFC用冷凍機油と気体異物は混合されるが、HFC用冷凍機油の劣化は化学反応で、急激には進まない。その劣化の一例を図2に示す。異物捕捉手段を1回通る間に捕捉されなかった気体異物は、HFC冷媒の循環と共に何回も異物捕捉手段13を通るので、HFC用冷凍機油が劣化するよりも遅く、異物捕捉手段13で捕捉すれば良い。
以上のように、油分離器9と異物捕捉手段13を熱源機Aに内蔵し、さらに第1の接続配管Cと各室内機Biの間に絞り手段5iを設け、熱源機Aと室内機Bのみを新規に交換し、第1の接続配管Cと第2の接続配管Dを交換しないで、老朽化したCFC、HCFCを用いた空気調和装置を新しいHFCを用いた空気調和装置に入れ替えることができる。
この実施の形態では、熱源機側熱交換器3と直列または並列に氷蓄熱槽や水蓄熱槽(湯を含む)が設置されても同様の効果を奏することは明らかである。また、熱源機Aが複数台並列に接続された空気調和装置においても同様の効果を奏することは明らかである。また、空気調和装置に限らず、蒸気圧縮式の冷凍サイクル応用品で、熱源機側熱交換器3が内蔵されたユニットと利用側熱交換器6が内蔵されたユニットが離れて設置されるものであれば、同様の効果を奏することは明らかである。
《洗浄運転の制御方法》
次に、この実施の形態1に係る空気調和装置について、冷媒置換後の洗浄運転の制御方法について説明する。
(1)冷房時の洗浄運転の制御方法
実施の形態1の空気調和装置の冷房時の洗浄運転の洗浄制御方法としては、CFCやHCFC等(旧冷媒)を使った空気調和装置(冷媒回路)の熱源機Aおよび室内機Bを、HFC(新冷媒)を用いたものと置換し、さらにHFCを追加充填した後、冷房運転を実施する。この洗浄運転の制御方法では、選択された室内機Biについて、図1の実線矢印のように、圧縮機1を駆動源として、冷媒を圧縮機1から熱源機側熱交換器3を経て、第1の接続配管C、分岐配管Ciに通し、絞り手段5と利用側熱交換器6を経て、分岐配管Di、第2の接続配管Dへ通し、さらに異物捕捉手段13とアキュムレータ8を経て圧縮機1へと流して洗浄する。さらに、同様の操作を他の組の室内機Biについて行う。
上記のように、室内機Biが複数台並列接続された場合には、各室内機Biに分岐する分岐配管Ci、Diで、配管の合計断面積が増加するため、1つの室内機Biあたりの質量流束が低下し、洗浄に十分な質量流束が確保されないということが発生し得る。
そこで、各室内機Biのうち、接続配管径の各組から選択された室内機Bi以外の室内機Biの絞り手段5iを閉止すると、選択された室内機Biの配管に冷媒が流れるので、その室内機Biには十分な質量流束の冷媒が確保される。他の組の絞り手段5iについても同様に室内機Biごとに順次開弁していくことで、すべての室内機Biに洗浄に十分な質量流束の冷媒が確保されることになり、第1の接続配管Cおよび第2の接続配管Dの鉱油は十分に洗浄される。さらに、第1、第2の接続配管のi番目の分岐配管Ci、Diの残留異物のばらつきも無くなり、洗浄時間も短くなる。
ここで、質量流束と洗浄時間との関係について説明する。図3は、冷媒状態(気相冷媒、液または気液二相冷媒)、鉱油動粘性係数、質量流束の違いによる必要洗浄時間の関係を示す図である。図3においては、HFC冷媒の一種であるR410Aが気相の冷媒状態と液または気液二相の冷媒状態とで、ある所定の長さの配管内の鉱油を洗浄した場合、質量流束と配管内の鉱油残留が無くなるのに必要な洗浄時間(以下、必要洗浄時間と称する)との関係を示している。この図3から分かるように、気相の冷媒状態に比較し、液または気液二相の冷媒状態の方が、洗浄効果が高く、また、質量流束が高いほど洗浄効果が高いことが示されている。なお、当然、必要洗浄時間は配管長が長いほど増加する。
また、鉱油の動粘性係数も、洗浄効果へ影響しており、図3に示すように、動粘性係数が低いほど必要洗浄時間が短くなる。図4は、鉱油温度と鉱油の動粘性係数を示す図である。図4に示すように、鉱油の温度が高いほど動粘性係数は低下する。このため、冷媒の温度が高いほど、鉱油の温度が高くなり鉱油の動粘性係数が低下し、冷媒に引きずられ易くなり、洗浄効果が高くなる。
したがって、接続配管に、気液二相冷媒を流すことにより、気相の冷媒による洗浄の場合に比べて、洗浄時間を短くすることができる。また、冷媒の温度を上昇させることにより洗浄能力を向上させることができる。
このようなことから洗浄運転においては、通常運転時よりも絞り手段5iの開度を間欠的に通常より大きく設定する。すなわち、室内機Biの膨張率を通常時より低下させると、絞り手段5iを流通して室内機Biに流入する液冷媒の冷媒量が増大する。このため、利用側熱交換器6iを流通した冷媒は、一部に蒸発しなかった液冷媒を含んだ気液二相状態(湿り状態)となり、この気液二相状態の冷媒が第2の接続配管Dを通って異物捕捉手段13に流入する。
上記冷媒循環により、第2の接続配管には、気液二相冷媒が流れることで洗浄時間を短くすることができる。また、絞り手段5iの開度増加により、蒸発温度が上昇し、鉱油の動粘性係数が低下する効果もある。このため、第2の接続配管および第1の接続配管内に残留する旧冷媒用の冷凍機油が、湿り状態の冷媒によって引きずられ、結果、気相の冷媒による洗浄の場合に比べて、配管洗浄能力を向上させることができる。
なお、第2の接続配管Dを気液二相冷媒にする方法はこれに限らず、利用側熱交換器6iのファンなどの利用側送風手段(図示せず)の風量を、間欠的に通常運転時よりも低下させるようにしても良い。その場合、室内空気が利用側熱交換器6iに送り込まれないので、利用側熱交換器6iでの冷媒の蒸発量が減少し、冷媒を確実に湿り状態にすることができる。
また、圧縮機1の運転容量を所定値以下に低下させるようにしても良い。例えば圧縮機1の駆動周波数を通常運転時における周波数より間欠的に低減させるようにする。この場合、圧縮機1に吸入される冷媒量が減少し、見かけ上、利用側熱交換器6iにおける冷媒量が増大するので、絞り手段5iの開度を調節した場合と同様の作用により冷媒を気液二相冷媒にすることができる。
(洗浄運転時間の決定方法)
図3に示したように、必要洗浄運転時間は、質量流束、冷媒の状態(液相または気液二相冷媒あるいは気相冷媒)、鉱油の動粘性係数によって変化する。また、冷媒配管(第1の接続配管Cおよび第2の接続配管D)の配管長が長いほど必要洗浄時間が増加する。本実施の形態における空気調和装置の制御手段100は、これらの特徴量をパラメータとして洗浄運転における洗浄時間を決定する。以下、必要洗浄運転時間の決定方法について説明する。
制御手段100は、第1の接続配管Cおよび第2の接続配管Dの配管長、洗浄運転時の新冷媒の質量流束および冷媒状態を求める。そして、これらの特徴量をパラメータとし、制御手段110に予め記憶された、冷媒状態ごとの、質量流束と必要洗浄時間との関係の情報に基づいて、洗浄運転による洗浄時間を決定する。各特徴量は以下により求める。
[質量流束]
質量流束[kg/m2s]は、単位時間当たりの冷媒循環量[kg/s]を配管断面積[m2]で除することで、それぞれの接続配管を流れる新冷媒の質量流束を演算できる。なお、冷媒循環量[kg/s]は、圧縮機1の吸入部の低圧圧力センサ32から冷媒密度を推測し、圧縮機の運転周波数[Hz]と圧縮機1の押しのけ量[m3]から推測できる。また、熱源機Aと接続する第1の接続配管Cと第2の接続配管Dは、熱源機Aより一意に決まるため、それぞれの配管仕様から配管断面積が決定される。
同様に、各室内機Biのそれぞれの分岐配管Ci、分岐配管Diを流れる冷媒の質量流束は、冷媒循環量を各利用側冷媒回路部分の接続配管の断面積で除することで演算できる。なお、各室内機Biに設けられた制御基板上のマイコンにより、各室内機Biの容量が分かり、その容量で各利用側冷媒回路部分の接続配管径が予想でき、この配管径からそれぞれi番目の利用側冷媒回路部分に接続された配管の断面積が求められる。
[冷媒状態]
配管内を流れる冷媒の冷媒状態(気相、液相、気液二相状態)は、それぞれの配管部位での冷媒の圧力と温度を検出することによって推測可能である。例えば、第1の接続配管Cおよび第2の接続配管Dに、それぞれ配管内を流れる冷媒の温度、圧力を検出するセンサを設けて検出する。
[配管長]
既設の空気調和装置の配管(第1の接続配管Cおよび第2の接続配管D)を再利用する場合、既設の空気調和装置の配管が埋設されている場合には配管長を容易に推測することができない。そこで、制御手段100は、以下の演算により配管長を推測する。まず、利用側熱交換器6iの飽和温度を温度センサ21iにて検出し、圧縮機1吸入の圧力を低圧圧力センサ32で検出する。そして、温度センサ21iの値を飽和圧力に換算し、両方の圧力差から、第2の接続配管Dおよび分岐配管Diを含めた配管部分の圧力損失を求める。そして、圧力損失は質量流束の2乗に比例し、配管長に比例する特徴を利用し、求めた圧力損失と上述した圧縮機1の運転容量から求まる質量流束とから、配管長を推測することができる。
あるいは、空気調和装置の冷媒回路に封入されている冷媒量が分かれば、封入冷媒量の情報から配管長を推測しても良い。ここで、冷媒封入量から接続配管の配管長を求める方法について説明する。まず、熱源機Aの熱源機側熱交換器3に存在する冷媒量は、熱源機側熱交換器3の内容積に冷房運転時の適正冷媒密度(例えば、500kg/m3)を乗ずることで冷媒量が算出できる。そして、冷媒回路に封入されている冷媒量から熱源機側熱交換器3に存在する冷媒量を差し引くことで、液冷媒が存在する第1の接続配管Cおよび分岐配管Ciに存在する冷媒量を求めることができる。
次に、第1の接続配管Cの冷媒密度は液冷媒であるため、その温度から冷媒密度を推測でき、先ほど求めた第1の接続配管Cおよび分岐配管Ciに存在する冷媒量をその冷媒密度で除することにより、第1の接続配管Cおよび分岐配管Ciの内容積を求めることができる。次に、算出された内容積を、それぞれの接続配管の断面積にて除することで、おおよその配管長を推測することができる。
なお、配管長が予め把握されているのであれば、予め配管長の情報を入力するようにし、上記の算出動作を省略しても良い。
[鉱油の動粘性係数]
上記の特徴量に加え、旧冷媒に含まれる冷凍機油などの鉱油の動粘性係数を用いて洗浄時間を決定しても良い。この場合、制御手段110には、予め、旧冷媒に含まれる冷凍機油の動粘性係数と温度との関係の情報(例えば図4)と、冷凍機油の動粘性係数に応じた、所定の配管長の配管内を洗浄するのに必要な洗浄時間と冷媒の質量流束との関係の情報(例えば図3)が、冷媒状態ごとに記憶される。制御手段100は、新冷媒の温度に基づいて冷凍機油などの鉱油の動粘性係数を求める。そして、この冷凍機油の動粘性係数、配管長、新冷媒の質量流束および冷媒状態をパラメータとし、制御手段110に記憶された情報に基づいて、洗浄運転による洗浄時間を決定する。
なお、動粘性係数は鉱油の種類によって異なるため、鉱油の種類によって動粘性係数の算出式を変更可能なように、熱源機Aの制御基盤(制御手段100)にディップスイッチなどの選択手段を設けて選択できるようにしても良い。例えば、旧冷媒に含まれる冷凍機油などの鉱油の種類ごとに、動粘性係数と温度との関係の情報を、予め制御手段110に記憶させ、制御手段100は、新冷媒の温度に基づいて、ディップスイッチなどにより選択された鉱油の種類の動粘性係数を求めるようにしても良い。これにより、鉱油の種類に応じた動粘性係数を算出することが可能となる。
以上のように、機器の設置条件や、冷凍サイクルの運転状態から必要洗浄時間に影響する特徴量である質量流束、冷媒の状態、鉱油の動粘性係数および配管長を求めることができる。特徴量をパラメータとした、洗浄運転時間を規定しておけば、機器の設置条件、運転状態に応じて、必要洗浄時間が決定されるので、過度の洗浄運転を行う必要が無くなり、短時間で洗浄運転を終了することができ、空気調和装置の更新を迅速に行うことができる。
また、冷媒交換前のCFCやHCFCを使った空気調和装置では、第1の接続配管C、第1の接続配管のi番目の分岐配管Ciは冷房運転でも暖房運転でも液冷媒単相状態もしくは気液二相状態であり、ここには鉱油はあまりたくさん分布していない。一方、第2の接続配管D、分岐配管Diは、冷房運転でも暖房運転でもガス単相状態であり、鉱油は液膜状に管壁内部をガス冷媒に引きずられるように流れるため、ここには鉱油が多く分布する。したがって、前述のように洗浄運転の最初に第1の接続配管Cを上流に、第2の接続配管Dを下流になるようにすることで、第2の接続配管D、分岐配管Diに多く分布している鉱油を第1の接続配管C、分岐配管Ciに混入させることなく、異物捕捉手段13に回収することができる。これにより、洗浄時間が短くできる上に、第1、第2の接続配管C、Dに残留する鉱油の量を低減することができる。
(2)暖房時の洗浄運転の制御方法
実施の形態1の空気調和装置の暖房時の洗浄運転の洗浄制御方法としては、CFCやHCFC等(旧冷媒)を使った冷媒回路(空気調和装置)の熱源機Aおよび室内機BをHFC(新冷媒)を用いたものと置換し、さらにHFCを追加充填した後、暖房運転を実施する。この洗浄運転の制御方法では、選択された室内機Biについて、図1の破線矢印のように、圧縮機1を駆動源として、冷媒を圧縮機1から第2の接続配管D、分岐配管Diへ通し、利用側熱交換器6と絞り手段5を経て、分岐配管Ci、第1の接続配管Cに通し、熱源機側熱交換器3を経てさらに異物捕捉手段13とアキュムレータ8を経て圧縮機1へと流して洗浄する。さらに、同様の操作を他の組の室内機Biについて行う。
上記のように、室内機Biが複数台並列接続された場合には、各室内機Biに分岐する分岐配管Ci、Diで、配管の合計断面積が増加するため、1つの室内機Biあたりの質量流束が低下し、洗浄に十分な質量流束が確保されないということが発生し得る。
そこで、各室内機Biのうち、接続配管径の各組から選択された室内機Bi以外の室内機Biの絞り手段5iを閉止すると、選択された室内機Biの配管に冷媒が流れるので、その室内機Biには十分な質量流束の冷媒が確保される。他の組の絞り手段5iについても同様に室内機Biごとに順次開弁していくことで、すべての室内機Biに洗浄に十分な質量流束の冷媒が確保されることになり、第1の接続配管Cおよび第2の接続配管Dの鉱油は十分に洗浄される。さらに、第1、第2の接続配管のi番目の分岐配管Ci、Diの残留異物のばらつきも無くなり、洗浄時間も短くなる。
この洗浄運転の制御方法では、第2の接続配管D、分岐配管Di、分岐配管Ci、第1の接続配管Cの順に冷媒を流して洗浄することになる。一般に、実施の形態1の図1に示す空気調和装置では、第1の接続配管のi番目の分岐配管Ciの方が第2の接続配管のi番目の分岐配管Diより、また第1の接続配管Cの方が第2の接続配管Dよりも配管内径が小さい。これは、冷房運転において第2の接続配管D、分岐配管Diでの摩擦損失の大小は蒸発温度に関係し冷房能力への影響が大きいため可能な限り太くするのに対して、第1の接続配管C、分岐配管Ciでの摩擦損失は蒸発温度や凝縮温度へ直接与える影響はなく、むしろここを流れる冷媒が液単相または気液二相であることから冷媒充填量を増加させない観点から可能な限り細くするためである。
既に説明したように、質量流束が高く動粘性係数が高いほど、洗浄効果は高いことが示されている。また、暖房運転をすると、配管内径の細い第1の接続配管C、分岐配管Ciでは冷媒の質量流束が大きく、非常に高い洗浄効果が得られる。一方、第2の接続配管D、分岐配管Diは配管内径が大きいため、冷媒の質量流束が小さいので、この点では洗浄効果が小さい。しかしながら、この流れ方向では第2の接続配管D、分岐配管Diが第1の接続配管C、分岐配管Ciよりも上流にあり、冷媒の温度が高いため、鉱油の動粘性係数が小さくなることで、冷媒に引きずられ易くなり、洗浄効果が高くなる。
また、冷房時の洗浄運転の制御方法と同様に、機器の設置条件や、冷凍サイクルの運転状態から必要洗浄時間に影響する特徴量である質量流束、冷媒の状態、鉱油の動粘性係数および配管長を求めることができる。また上記冷房時と同様に、特徴量をパラメータとした、洗浄運転時間を規定しておけば、機器の設置条件、運転状態に応じて、必要洗浄時間が決定されるので、過度の洗浄運転を行う必要が無くなり、短時間で洗浄運転を終了することができ、空気調和装置の更新を迅速に行うことができる。
以上のように本実施の形態においては、配管径、配管長、新冷媒の質量流束、新冷媒の冷媒温度、新冷媒の冷媒圧力のうち少なくとも1つを含む特徴量に基づいて、洗浄運転による洗浄時間を決定する。このため、空気調和装置の設置条件や運転状態に応じて、必要洗浄時間を決定することができる。よって、過度の洗浄運転を行う必要が無くなり、短時間で洗浄運転を終了することができ、空気調和装置の更新を迅速に行うことができる。したがって、接続配管などに残留している旧冷媒、並びに鉱油および鉱油劣化物を短時間で分離・捕獲し、環境上問題のないとされる新冷媒に置換することができる。
また、制御手段100は、新冷媒の冷媒温度および冷媒圧力に基づいて当該新冷媒の冷媒状態を推測し、単位時間当たりの冷媒循環量および接続配管の配管径に基づいて、新冷媒の質量流束を求め、配管長、新冷媒の質量流束および冷媒状態をパラメータとし、制御手段110に記憶された情報に基づいて、洗浄運転による洗浄時間を決定する。このため、接続配管の配管長、洗浄運転時の質量流束、冷媒状態に応じて、必要洗浄時間を決定することができる。よって、過度の洗浄運転を行う必要が無くなり、短時間で洗浄運転を終了することができ、空気調和装置の更新を迅速に行うことができる。
また、新冷媒の温度に基づいて冷凍機油の動粘性係数を求め、冷凍機油の動粘性係数を含む特徴量をパラメータとし洗浄運転による洗浄時間を決定する。このため、冷凍機油の動粘性係数に応じて、必要洗浄時間を決定することができる。よって、過度の洗浄運転を行う必要が無くなり、短時間で洗浄運転を終了することができ、空気調和装置の更新を迅速に行うことができる。
また、制御手段100は、新冷媒の質量流束、冷媒状態、接続配管の配管長を推測する。このため、空気調和装置の更新時にこれらの情報を入力する必要がなく、施工の省力化が図れる。
また、既設の空気調和装置の設置条件を機器の接続情報、および運転状態に応じて自動的に推測することが可能となるため、機器更新時に設定する入力項目が少なくなり、施工の省力化が図れる。
また、空気調和装置の洗浄運転において、冷房または暖房の何れの運転であっても、適切な洗浄時間により洗浄運転を行うことができる。
また、制御手段100は、洗浄運転において、利用側熱交換器6iから流出する新冷媒が気液二相状態となるように、絞り手段5iの開度、利用側送風手段、または圧縮機1の運転容量を制御する。このため、気相の冷媒による洗浄の場合に比べて、洗浄時間を短くすることができる。また、冷媒の温度を上昇させることにより洗浄能力を向上させることができる。
A 熱源機、B 室内機、C 第1の接続配管、D 第2の接続配管、Ci 分岐配管、Di 分岐配管、1 圧縮機、2 四方弁、3 熱源機側熱交換器、4 第1の操作弁、5 絞り手段、6 利用側熱交換器、7 第2の操作弁、8 アキュムレータ、8a 返油穴、9 油分離器、9a バイパス路、13 異物捕捉手段、21 温度センサ、31 高圧圧力センサ、32 低圧圧力センサ、100 制御手段、110 記憶手段。

Claims (16)

  1. 圧縮機、熱源機側熱交換器、絞り手段、および利用側熱交換器を冷媒配管で接続した冷媒回路を備え、
    該冷媒回路を循環する旧冷媒が新冷媒に置換された後、前記圧縮機を駆動源として、前記冷媒配管および前記利用側熱交換器に新冷媒を流して前記冷媒配管内の洗浄運転を行う空気調和装置において、
    前記冷媒配管の配管径、前記冷媒配管の配管長、前記新冷媒の質量流束、前記新冷媒の冷媒温度、前記新冷媒の冷媒圧力のうち少なくとも1つを含む特徴量に基づいて、前記洗浄運転による洗浄時間を決定する制御手段を備えたことを特徴とする空気調和装置。
  2. 所定の配管長の冷媒配管内を洗浄するのに必要な洗浄時間と冷媒の質量流束との関係の情報が、冷媒状態ごとに記憶された記憶手段を備え、
    前記制御手段は、
    前記新冷媒の冷媒温度および冷媒圧力に基づいて当該新冷媒の冷媒状態を推測し、
    単位時間当たりの冷媒循環量および前記冷媒配管の配管径に基づいて、前記新冷媒の質量流束を求め、
    前記冷媒配管の配管長、前記新冷媒の質量流束および冷媒状態をパラメータとし、前記記憶手段に記憶された情報に基づいて、前記洗浄運転による洗浄時間を決定する
    ことを特徴とする請求項1記載の空気調和装置。
  3. 前記記憶手段は、
    前記旧冷媒に含まれる冷凍機油の動粘性係数と温度との関係の情報と、
    前記冷凍機油の動粘性係数に応じた、所定の配管長の配管内を洗浄するのに必要な洗浄時間と冷媒の質量流束との関係の情報が、冷媒状態ごとに記憶され、
    前記制御手段は、
    前記新冷媒の温度に基づいて前記冷凍機油の動粘性係数を求め、
    該冷凍機油の動粘性係数、前記冷媒配管の配管長、前記新冷媒の質量流束および冷媒状態をパラメータとし、前記記憶手段に記憶された情報に基づいて、前記洗浄運転による洗浄時間を決定する
    ことを特徴とする請求項2記載の空気調和装置。
  4. 前記旧冷媒に含まれる冷凍機油の種類の選択情報を入力する選択手段を備え、
    前記記憶手段は、
    前記旧冷媒に含まれる冷凍機油の種類ごとに、前記冷凍機油の動粘性係数と温度との関係の情報が記憶され、
    前記制御手段は、
    前記新冷媒の温度に基づいて、前記選択手段により選択された冷凍機油の動粘性係数を求める
    ことを特徴とする請求項3記載の空気調和装置。
  5. 前記圧縮機の吸入圧力を検出する圧力センサを備え、
    前記制御手段は、
    前記圧縮機の吸入圧力に基づき前記新冷媒の冷媒密度を推測し、
    前記新冷媒の冷媒密度と前記圧縮機の運転容量とに基づき、単位時間当たりの冷媒循環量を推測し、
    該冷媒循環量を前記冷媒配管の配管径から求めた断面積で除することで、前記新冷媒の質量流束を求める
    ことを特徴とする請求項1〜4の何れかに記載の空気調和装置。
  6. 前記制御手段は、
    前記圧縮機の吸入圧力と前記利用側熱交換器の飽和圧力との圧力差から、前記冷媒配管の圧力損失を求め、
    該圧力損失と質量流束とに基づき、前記冷媒配管の配管長を推測する
    ことを特徴とする請求項1〜5の何れかに記載の空気調和装置。
  7. 前記利用側熱交換器を流れる冷媒の温度を検出する温度センサを備え、
    前記制御手段は、
    検出された前記新冷媒の飽和温度に基づいて、前記利用側熱交換器の飽和圧力を求める
    ことを特徴とする請求項6記載の空気調和装置。
  8. 前記制御手段は、
    前記冷媒回路に封入されている前記新冷媒の冷媒量の情報および前記熱源機側熱交換器の内容積の情報に基づき、前記冷媒配管の配管長を推測する
    ことを特徴とする請求項1〜7の何れかに記載の空気調和装置。
  9. 前記制御手段は、
    前記熱源機側熱交換器の内容積に洗浄運転時の適正冷媒密度を乗じて、前記熱源機側熱交換器に存在する冷媒量を求め、
    前記冷媒回路に封入されている前記新冷媒の冷媒量から、前記熱源機側熱交換器に存在する冷媒量を差し引いて、前記冷媒配管内に存在する冷媒量を求め、
    該冷媒配管内に存在する冷媒量を、当該冷媒配管内の冷媒密度で除して前記冷媒配管の内容積を求め、
    該冷媒配管の内容積を当該冷媒配管の断面積で除することで、前記冷媒配管の配管長を推測する
    ことを特徴とする請求項8記載の空気調和装置。
  10. 前記制御手段は、
    前記利用側熱交換器の熱交換器容量の情報から、前記冷媒配管の配管径または断面積を求める
    ことを特徴とする請求項1〜9の何れかに記載の空気調和装置。
  11. 前記制御手段は、前記洗浄運転において、
    前記熱源機側熱交換器と前記利用側熱交換器との間に設けられた前記絞り手段の開度を、通常運転時の開度より大きくし、前記利用側熱交換器から流出する前記新冷媒を気液二相状態にする
    ことを特徴とする請求項1〜10の何れかに記載の空気調和装置。
  12. 前記利用側熱交換器に空気を送風する利用側送風手段を備え、
    前記制御手段は、前記洗浄運転において、
    前記利用側送風手段の風量を、通常運転時の風量より低下させ、前記利用側熱交換器から流出する前記新冷媒を気液二相状態にする
    ことを特徴とする請求項1〜11の何れかに記載の空気調和装置。
  13. 前記制御手段は、前記洗浄運転において、
    前記圧縮機の運転容量を所定値以下に低下させ、前記利用側熱交換器から流出する前記新冷媒を気液二相状態にする
    ことを特徴とする請求項1〜12の何れかに記載の空気調和装置。
  14. 前記利用側熱交換器を複数備え、
    前記冷媒回路は、前記冷媒配管の所定部分と前記利用側熱交換器とを接続した利用側冷媒回路部分を並列に複数備え、
    前記制御手段は、前記洗浄運転において、
    前記複数の利用側冷媒回路部分を、前記冷媒配管の所定部分の合計断面積が所定の値以下となるように、1または複数の組に分け、
    前記圧縮機を駆動源とし、前記複数の利用側冷媒回路部分を組ごとに選択して、各々前記冷媒配管および前記利用側熱交換器に新冷媒を流して前記冷媒配管内に存在する冷凍機油を洗浄する
    ことを特徴とする請求項1〜13の何れかに記載の空気調和装置。
  15. 前記制御手段は、
    前記利用側熱交換器の熱交換器容量の情報から、前記冷媒配管の所定部分の合計断面積を推測する
    ことを特徴とする請求項14に記載の空気調和装置。
  16. 圧縮機、熱源機側熱交換器、絞り手段、および利用側熱交換器を冷媒配管で接続した冷媒回路を備え、該冷媒回路を循環する旧冷媒が新冷媒に置換された後、前記圧縮機を駆動源として、前記冷媒配管および前記利用側熱交換器に新冷媒を流して前記冷媒配管内の洗浄運転を行う空気調和装置の洗浄運転方法において、
    前記冷媒配管の配管径、前記冷媒配管の配管長、前記新冷媒の質量流束、前記新冷媒の冷媒温度、前記新冷媒の冷媒圧力のうち少なくとも1つを含む特徴量に基づいて、前記洗浄運転による洗浄時間を決定する
    ことを特徴とする空気調和装置の洗浄運転方法。
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