JP2011117495A - 樹脂製プーリ及び転がり軸受 - Google Patents

樹脂製プーリ及び転がり軸受 Download PDF

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Abstract

【課題】樹脂部の精度,強度特性,耐熱性,及び耐薬品性が優れており、安価且つ高信頼性で長寿命な樹脂製プーリを提供する。
【解決手段】樹脂製プーリ10は、転がり軸受11と樹脂部12とからなる。この転がり軸受11は、内輪1と、外輪2と、前記両輪1,2の間に転動自在に配された複数の転動体3と、前記両輪1,2の間に転動体3を保持する保持器4と、前記両輪1,2の間の開口部をほぼ覆うシール装置5,5と、を備えている。樹脂部12は、樹脂材料の射出成形により形成され、転がり軸受11の外輪2の外周面に一体的に取り付けられている。樹脂製プーリ10の樹脂部12の表面には、塩化ビニリデン系共重合体を含有するラテックスを固化してなり且つガスバリア性,水蒸気バリア性,及び接着性を有する被膜が設けられている。
【選択図】図1

Description

本発明は、樹脂製プーリ及び転がり軸受に関する。
従来から、自動車のエンジン補機類を駆動するベルトの案内用プーリとして、転がり軸受の外周に樹脂部を一体成形してなる樹脂製プーリが採用されている。この樹脂製プーリにおいては、ベルトを案内する樹脂部の外周部の成形精度、ベルトの張力に耐える強度特性、連続負荷使用による高温に対する耐熱性、及び耐塩化カルシウム性(耐薬品性)等が要求される。
そこで、上記のような成形精度,強度特性,耐熱性,及び耐塩化カルシウム性を向上させるため、樹脂材料として、ガラス繊維を15〜40質量%程度配合した強化ナイロン66、強化ナイロン610、強化ナイロン612、或いは、ポリフェニレンサルファイドとミネラルの複合材料やナイロン6,ナイロン66,ナイロン11,ナイロン12等のポリアミド樹脂を用いた樹脂製プーリが提案されている(例えば特許文献1,2を参照) 。
また、特許文献3には、耐熱性,強度特性,及び耐塩化カルシウム性をバランス良く有する、ナイロン66,ナイロン612,及びガラス繊維からなるポリアミド樹脂組成物を用いた樹脂製プーリが提案され、実用化されている。
さらに、特許文献4には、耐熱性,強度特性,及び耐塩化カルシウム性のバランスをより一層向上させた、ナイロン66,非晶性芳香族ポリアミド,低吸水性ナイロン,及びガラス繊維からなるポリアミド樹脂組成物を用いた樹脂製プーリが提案され、実用化されている。
しかしながら、上記のような耐熱性,強度特性,及び耐塩化カルシウム性を併せ持つ樹脂製プーリは、ナイロン66以外に、高価な低吸水性ナイロンを使用しているので、樹脂組成物が高コストであった。また、低吸水性ナイロンを使用しているため耐塩化カルシウム性は向上しているものの、耐熱性及び強度特性は、ナイロン66のみ使用したものよりも低かった。そのため、長期間にわたる使用によって、樹脂製プーリに何らかの不具合が発生するおそれがあった。
一方、転がり軸受に組み込まれる樹脂製の保持器は、その使用温度,使用環境等によって、材料である樹脂の種類が決定される。従来、一般的に使用されている樹脂としては、ガラス繊維や炭素繊維で強化されたナイロン66,ナイロン46,ポリフェニレンサルファイド,ポリエーテルエーテルケトン等があげられる。これらの樹脂の中では、ガラス繊維で強化されたナイロン66が、適度な耐熱性,強度特性,コストのバランスから、最も多く使用されている。
ただし、ナイロン66が十分に使用可能な温度環境であっても、ナイロン66の化学構造中に存在するアミド結合に攻撃性を有する薬剤によって影響を受けるような環境下で転がり軸受が使用される場合には、ナイロン66よりも耐薬品性に優れるポリフェニレンサルファイド,ポリエーテルエーテルケトン等が保持器の材料として使用されることがあった。
しかしながら、ポリフェニレンサルファイドやポリエーテルエーテルケトンは高価であるため、これらの樹脂を保持器の材料として使用することは、転がり軸受全体のコストの上昇につながっていた。また、一般的にナイロン66等のナイロン系樹脂(特にガラス繊維強化品) は、剛性の向上や吸水寸法変化の抑制を目的として、一定量の水分を意図的に含有させる調湿処理が施されている。しかしながら、このナイロン系樹脂中に吸収された水分は、転がり軸受の回転による遠心力や温度上昇で、保持器外へ排出されるため、それによって寸法変化が起こり、何らかの不具合が生じるおそれがあった。
特許第3506735号公報 特許第2838037号公報 特開2000−2317号公報 特開2007−232106号公報
そこで、本発明は上記のような従来技術が有する問題点を解決し、樹脂部の精度,強度特性,耐熱性,及び耐薬品性が優れており、安価且つ高信頼性で長寿命な樹脂製プーリを提供することを課題とする。また、本発明は、樹脂製の保持器の精度,強度特性,耐熱性,及び耐薬品性が優れているとともに寸法変化が生じにくく、安価且つ高信頼性で長寿命な転がり軸受を提供することを併せて課題とする。
前記課題を解決するため、本発明は次のような構成からなる。すなわち、本発明に係る樹脂製プーリは、転がり軸受と、前記転がり軸受の内輪又は外輪に一体的に取り付けられた樹脂部と、を備える樹脂製プーリにおいて、塩化ビニリデン系共重合体を含有するラテックスを固化してなり且つガスバリア性,水蒸気バリア性,及び接着性を有する被膜を、前記樹脂部の表面に設けたことを特徴とする。
このような本発明に係る樹脂製プーリにおいては、前記塩化ビニリデン系共重合体は、89質量%以上93質量%以下の塩化ビニリデンと2質量%以上8質量%以下のメタクリロニトリルと0.5質量%以上3質量%以下のアクリル酸(2−ヒドロキシエチル)とを共重合したものであり、前記ラテックスは、この塩化ビニリデン系共重合体の粒子が分散したエマルジョンであることが好ましい。
また、前記ラテックスは、89質量%以上93質量%以下の塩化ビニリデンと2質量%以上8質量%以下のメタクリロニトリルと0.5質量%以上3質量%以下のアクリル酸(2−ヒドロキシエチル)との乳化重合により得られるエマルジョンであることが好ましい。
さらに、本発明に係る転がり軸受は、内輪と、外輪と、前記内輪及び前記外輪の間に転動自在に配された複数の転動体と、前記内輪及び前記外輪の間に前記転動体を保持する樹脂製の保持器と、を備える転がり軸受において、塩化ビニリデン系共重合体を含有するラテックスを固化してなり且つガスバリア性,水蒸気バリア性,及び接着性を有する被膜を、前記保持器の表面に設けたことを特徴とする。
このような本発明に係る転がり軸受においては、前記塩化ビニリデン系共重合体は、89質量%以上93質量%以下の塩化ビニリデンと2質量%以上8質量%以下のメタクリロニトリルと0.5質量%以上3質量%以下のアクリル酸(2−ヒドロキシエチル)とを共重合したものであり、前記ラテックスは、この塩化ビニリデン系共重合体の粒子が分散したエマルジョンであることが好ましい。
また、前記ラテックスは、89質量%以上93質量%以下の塩化ビニリデンと2質量%以上8質量%以下のメタクリロニトリルと0.5質量%以上3質量%以下のアクリル酸(2−ヒドロキシエチル)との乳化重合により得られるエマルジョンであることが好ましい。
本発明に係る樹脂製プーリは、樹脂部の精度,強度特性,耐熱性,及び耐薬品性が優れており、安価且つ高信頼性で長寿命である。また、本発明に係る転がり軸受は、樹脂製の保持器の精度,強度特性,耐熱性,及び耐薬品性が優れているとともに寸法変化が生じにくく、安価且つ高信頼性で長寿命である。
本発明に係る樹脂製プーリの一実施形態の構造を示す正面図である。 図1の樹脂製プーリのA−A断面図である。 本発明に係る転がり軸受の一実施形態である円筒ころ軸受の構造を示す部分縦断面図である。 図3の円筒ころ軸受に組み込まれる保持器の斜視図である。 本発明に係る転がり軸受の別の実施形態であるアンギュラ玉軸受の構造を示す部分縦断面図である。 図5のアンギュラ玉軸受に組み込まれる保持器の斜視図である。 本発明に係る転がり軸受の別の実施形態である深溝玉軸受の構造を示す部分縦断面図である。 図7の深溝玉軸受に組み込まれる冠形保持器の斜視図である。
本発明に係る樹脂製プーリ及び転がり軸受の実施の形態を、図面を参照しながら詳細に説明する。
〔第一実施形態〕
図1は、本発明に係る樹脂製プーリの一実施形態の構造を示す正面図であり、図2は、図1の樹脂製プーリのA−A断面図である。
本実施形態の樹脂製プーリ10は、転がり軸受11と樹脂部12とからなる。この転がり軸受11は、内輪1と、外輪2と、前記両輪1,2の間に転動自在に配された複数の転動体3と、前記両輪1,2の間に転動体3を保持する保持器4と、前記両輪1,2の間の開口部を覆うシール装置5,5と、を備えている。なお、保持器4及びシール装置5は、備えていなくてもよい。また、シール装置5は、図2に示すような接触ゴムシールでもよいし、シールドのような非接触シールでもよい。
また、樹脂部12は、樹脂材料の射出成形により形成され、転がり軸受11の外輪2の外周面に一体的に取り付けられている。具体的には、樹脂部12は、転がり軸受11の外輪2が嵌合される内径側円筒部12aと、外径側円筒部12bと、両円筒部12a,12bを連結する円板部12cと、樹脂部12を補強するために放射状に形成された複数のリブ12dと、からなる。そして、外径側円筒部12bの外周面12eが、図示しない駆動用ベルトのベルト案内面をなす。なお、外輪2の外周面には、樹脂部12の脱着を防止する凹溝が形成されている。
樹脂部12を構成する樹脂材料の種類は特に限定されるものではないが、樹脂製プーリにおいては、駆動時におけるベルトの振れに起因する振動の発生を抑制して騒音を低減するために、ベルトを案内する外径側円筒部12bの外周面12eの真円度(凹凸量) が良好であることが求められるとともに、ベルトの張力に耐える機械的強度と耐熱性が良好であることが求められる。そのため、樹脂部12を構成する樹脂材料としては、ガラス繊維,炭素繊維等の充填材や各種添加剤(潤滑剤,熱安定剤,酸化防止剤,熱伝導性改良剤,可塑剤等)を樹脂に配合した樹脂組成物が好ましい。
好ましい樹脂の例としては、ポリアミド樹脂,ポリフェニレンサルファイド,ポリエーテルエーテルケトンがあげられる。ポリアミド樹脂としては、ポリアミド11,ポリアミド12,ポリアミド46,ポリアミド6,ポリアミド66,ポリアミド610,ポリアミド612等の脂肪族ポリアミド樹脂や、変性ポリアミド6T,ポリアミド9T等の芳香族ポリアミド樹脂があげられる。
そして、樹脂組成物のコスト,耐熱性,及び強度特性のバランスから判断すると、耐熱性と耐疲労性に優れるポリアミド66をベース樹脂としガラス繊維を強化材とする樹脂組成物が最も好適である。ガラス繊維の配合量は、樹脂組成物全体の25質量%以上55質量%以下が好ましい。ガラス繊維の配合量が25質量%未満であると、樹脂組成物の耐熱性や強度特性が不十分となるおそれがある。一方、55質量%超過であると、樹脂組成物の溶融粘度が高くなり、成形性が不十分となるおそれがある。
また、ポリアミド66の分子量は、射出成形性を考慮すると、数平均分子量で13000以上30000以下が好ましく、耐疲労性及び高成形精度をさらに考慮すると、数平均分子量で18000以上26000以下がより好ましい。ポリアミド66の数平均分子量が13000未満であると、分子量が低すぎるため耐疲労性が低くなり、実用性が低くなる。一方、ポリアミド66の数平均分子量が30000超過であると、耐疲労性は優れているものの、樹脂製プーリに必要な衝撃強度等の機械的強度を達成するためにガラス繊維を25質量%以上55質量%以下含有させると、樹脂組成物の溶融粘度が高くなり、樹脂部12を射出成形法により高精度で製造することが困難となる。
このような樹脂製プーリ10の樹脂部12の表面には、塩化ビニリデン系共重合体を含有するラテックスを固化してなり且つガスバリア性,水蒸気バリア性,及び接着性を有する被膜(図示せず)が設けられている。この塩化ビニリデン系共重合体とは、塩化ビニリデンを含む複数のモノマーの共重合体である。前記被膜(すなわち、ラテックスを固化したもの)は接着性を有するので、樹脂部12を構成する樹脂材料の種類にかかわらず樹脂部12に対する付着性が良好である。よって、付着性を向上させる前処理を樹脂部12に対して施さなくても差し支えない。ただし、樹脂部12との付着性をより向上させるために、プラズマ処理,プライマー処理等の前処理を樹脂部12に対して施してもよい。
本実施形態の樹脂製プーリ10は、樹脂部12の表面に前記被膜が設けられているので、各種薬品(例えば塩化カルシウム)に対する耐性が優れている。そのため、樹脂部12を構成する樹脂組成物のベース樹脂として、耐薬品性にやや劣るポリアミド66等のポリアミド樹脂を使用したとしても、樹脂部12が薬品に侵されにくい。よって、例えば融雪剤(塩化カルシウム)に起因する不具合が抑制されるので、本実施形態の樹脂製プーリ10は、高信頼性で長寿命である。
また、ポリアミド66等のポリアミド樹脂を繊維強化材で補強した樹脂組成物は、成形精度,強度特性,及び耐熱性が優れるとともに比較的安価であるので、樹脂部12を構成する樹脂組成物のベース樹脂としてポリアミド66等のポリアミド樹脂を使用すれば、本実施形態の樹脂製プーリ10は、安価且つ高信頼性で長寿命である。
さらに、前記被膜はガスバリア性を有しているので、樹脂の劣化の原因となる酸素等のガスを遮断することができる。また、前記被膜は水蒸気バリア性も有しているので、水蒸気が透過しにくく、水分(水蒸気) を遮断することができる。よって、樹脂部12の劣化や吸水による寸法変化に起因する樹脂製プーリ10の不具合の発生が抑制されるので、本実施形態の樹脂製プーリ10は高信頼性で長寿命である。
このような樹脂製プーリ10は、例えば、自動車に搭載されるエンジン補機類の駆動用ベルトやその他のベルトのテンショナ用プーリ、又はアイドラプーリとして好適に使用することができる。なお、前記被膜は、樹脂部12の表面全体に設けることが最も好ましいが、樹脂部12の表面の一部分に設けてもよい。
ここで、塩化ビニリデン系共重合体を含有するラテックス及び該ラテックスを固化してなる被膜について、詳細に説明する。
本発明における塩化ビニリデン系共重合体とは、塩化ビニリデンを含む複数のモノマーの共重合体であるが、前記塩化ビニリデン系共重合体は、3種のモノマー、すなわち塩化ビニリデン,メタクリロニトリル,及びアクリル酸(2−ヒドロキシエチル)の共重合体であることが好ましい。そして、前記被膜は高温下においても塩化水素を放出しにくいことが好ましいので、前記ラテックス1Lを120℃で10分間保持した場合に放出される塩化水素の量(以降においては、脱塩化水素速度と記すこともある)は、1mg以下であることが好ましい。1mg超過であると、前記被膜に変色が生じやすい(耐変色性が低い)。
前記3種のモノマーの配合比は、塩化ビニリデンが89質量%以上93質量%以下、メタクリロニトリルが2質量%以上8質量%以下、アクリル酸(2−ヒドロキシエチル)が0.5質量%以上3質量%以下である。塩化ビニリデンが89質量%未満であると、前記被膜のガスバリア性が不十分となるおそれがある。一方、93質量%超過であると、ラテックス中で前記塩化ビニリデン系共重合体が短時間で結晶化してしまうため、ラテックスを成膜用途に使用することが困難となる。
また、メタクリロニトリルが2質量%未満であると、前記被膜のガスバリア性が不十分となるおそれがある。一方、8質量%超過であると、脱塩化水素速度が1mg超過となり前記被膜の耐変色性が不十分となるおそれがある。さらに、アクリル酸(2−ヒドロキシエチル)が0.5質量%未満であると、脱塩化水素速度が1mg超過となり前記被膜の耐変色性が不十分となるおそれがある。一方、3質量%超過であると、前記被膜のガスバリア性や水蒸気バリア性が不十分となるおそれがある。
上記のような不都合がより生じにくくするためには、前記3種のモノマーの配合比は、塩化ビニリデンが90質量%以上92質量%以下、メタクリロニトリルが4質量%以上6質量%以下、アクリル酸(2−ヒドロキシエチル)が1質量%以上2質量%以下とすることがより好ましい。なお、これら3種のモノマーの配合比の合計が100質量%に満たない場合は、これら3種のモノマーと共重合可能な1種類以上のビニル系モノマーが3質量%以下の範囲で配合され、合計100質量%とされる。
このビニル系モノマーの種類は特に限定されるものではなく、一般的に用いられるものを問題なく使用することができる。ビニル系モノマーの具体例としては、メチルアクリレート、メチルメタクリレート、エチルアクリレート、エチルメタクリレート、プロピルアクリレート、プロピルメタクリレート、n−ブチルアクリレート、n−ブチルメタクリレート、t−ブチルアクリレート、t−ブチルメタクリレート、ヘキシルアクリレート、ヘキシルメタクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、ノニルアクリレート、ノニルメタクリレート、ベンジルアクリレート、ベンジルメタクリレート、シクロヘキシルアクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、ラウリルアクリレート、ラウリルメタクリレート、n−オクチルアクリレート、n−オクチルメタクリレート、2−メトキシエチルアクリレート、2−メトキシエチルメタクリレート、ブトキシエチルアクリレート、ブトキシエチルメタクリレート、メトキシトリエチレングリコールアクリレート、メトキシトリエチレングリコールメタクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルメタクリレート、3−クロロ−2−ヒドロキシプロピルアクリレート、3−クロロ−2−ヒドロキシプロピルメタクリレート、テトラヒドロフルフリルアクリレート、テトラヒドロフルフリルメタクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピルアクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピルメタクリレート、ジエチレングリコールアクリレート、ジエチレングリコールメタクリレート、ポリエチレングリコールアクリレート、ポリエチレングリコールメタクリレート、2−(ジメチルアミノ)エチルアクリレート、2−(ジメチルアミノ)エチルメタクリレート、N,N−ジメチルアクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド、N−メチロールメタクリルアミド、N−ビニルピロリドン、プロピオン酸ビニル、ステアリン酸ビニル、塩化ビニル、塩化ビニリデン、酢酸ビニル、スチレンがあげられる。
前記塩化ビニリデン系共重合体の分子量は特に限定されるものではないが、低分子量の塩化ビニリデン系共重合体は熱や光に対する安定性が劣ることが知られており、耐変色性はこれらの安定性に相関することが認められているので、前記塩化ビニリデン系共重合体の分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーによって測定された重量平均分子量で10万以上であることが好ましい。
また、前記ラテックスは、前記塩化ビニリデン系共重合体の粒子が分散したエマルジョンであることが好ましい。ラテックスの製造方法は特に限定されるものではないが、前記ラテックスは、前記3種のモノマーを乳化重合することにより得られるエマルジョンであることが好ましい。
乳化重合に用いる乳化剤,重合開始剤,界面活性剤の種類は特に限定されるものではないが、これらの物質は、ラテックスから形成した前記被膜中に残存して、ガスバリア性及び水蒸気バリア性を劣化させる要因となり得るので、その使用量は可能な限り少量であることが好ましい。そして、乳化重合に引き続きエマルジョンに透析処理を施すことにより、前記物質を可能な限り除去することがさらに好ましい。
このようなラテックスの例としては、旭化成ケミカルズ株式会社製のサランテックスL549BやサランテックスL140Aがあげられる。
前記ラテックスには、顔料や補強材などを添加してもよい。顔料としては、例えば、タルク,炭酸カルシウム,カオリン等の無機材料や、カーボンブラック,アントラキノン系等の油溶性有機染料があげられる。また、補強材としては、例えば、ガラス繊維,炭素繊維があげられる。
さらに、前記被膜のガスバリア性をさらに向上するためには、前記被膜中に層状珪酸塩を分散させることが好ましいので、前記ラテックスに層状珪酸塩を添加することが好ましい。前記被膜中に層状珪酸塩が分散状態で存在すると、ガスの浸透を迂回させるため、結果としてガスバリア性が向上する。
前記ラテックスに層状珪酸塩を添加する場合は、前記被膜中の層状珪酸塩の含有量が0.1質量%以上10質量%以下となるように、前記ラテックスへの添加量を調整する。前記被膜中の層状珪酸塩の含有量が0.1質量%未満であると、前記被膜のガスバリア性がほとんど向上しない。一方、10質量%超過であると、前記被膜中に層状珪酸塩を均一に分散させることが困難となる。
層状珪酸塩としては、マイカ,バーミキュライト,スメクタイト,モンモリロナイト,バイデライト,ノントロナイト,ヘクトライト等が使用可能であり、この中でもモンモリロナイトが特に好ましい。モンモリロナイトは、高膨潤性を有し、浸透膨潤が起こり、層間が広がりやすいため、前記被膜中に分散しやすい。
この層状珪酸塩には、有機膨潤化剤で表面改質を施すことがより好ましい。そうすれば、層状珪酸塩の層間が広がり、分散性が向上する。有機膨潤化剤としては、炭素数が12以上のアルキル基を1つ以上有する4級アンモニウム塩が好ましい。
前記被膜は、前記ラテックスを所望の箇所に塗装(膜状に配する)した後に、その塗膜を乾燥することにより形成することができる。液状の前記ラテックスを塗装する方法は、特に限定されるものではないが、塗布(例えば刷毛塗り法),浸漬,噴霧(例えばエアースプレー法)等の方法があげられる。塗装は1回又は複数回行って、塗膜を所望の厚さとする。また、塗膜の乾燥条件は特に限定されるものではないが、常温又は高温下、具体的には10℃以上100℃以下(より好ましくは30℃以上50℃以下)で、24〜72時間保持することが好ましい。このような条件で乾燥を行えば、結晶化が進み、十分なガスバリア性を有する被膜が形成される。
前記被膜の厚さは、3μm以上100μm以下が好ましい。前記被膜の厚さが3μm未満であると、十分なガスバリア性を発揮することが困難となるおそれがある。一方、前記被膜の厚さを100μm超過としても、ガスバリア性がそれ以上向上することはほとんどないばかりでなく、膜厚が大きすぎて、均一な膜厚とするのが困難となる。
また、前記被膜を形成する箇所(以降は被膜形成面と記す)には、コロナ放電処理,プラズマ活性化処理,グロー放電処理,逆スパッタ処理,粗面化処理等の公知の表面活性化処理や、エチレンイミン系,アミン系,エポキシ系,ウレタン系,ポリエステル系等のプライマー剤でプライマー処理を施してもよい。このような処理により、前記被膜と被膜形成面との密着性を向上させることができる。
塩化ビニリデン系ポリマーの樹脂層をコーティングするような場合には、プライマーとして接着性組成物層を設けることが提案されているが、このような接着性組成物層を本発明に適用することができる。例えば、米国特許第3023126号明細書には、ポリウレタン系プライマーを用いることが提案されており、米国特許第4214039号明細書には、酸中和されたアミノ基含有ポリマーとエポキシ樹脂との水系硬化性プライマーを用いることが提案されている。
なお、この第一実施形態は本発明の一例を示したものであって、本発明は本実施形態に限定されるものではない。例えば、本実施形態においては、転がり軸受の例として深溝玉軸受をあげて説明したが、本発明は、他の種類の様々な転がり軸受に対して適用することができる。例えば、アンギュラ玉軸受,自動調心玉軸受,円筒ころ軸受,円すいころ軸受,針状ころ軸受,自動調心ころ軸受等のラジアル形の転がり軸受や、スラスト玉軸受,スラストころ軸受等のスラスト形の転がり軸受である。
また、転がり軸受11の接触ゴムシールに使用されるゴムの種類は特に限定されるものではないが、ニトリルゴム,水素添加ニトリルゴム,アクリルゴム等を原料ゴムとし、それに各種充填材を配合したものを用いることができる。さらに、転がり軸受11内に充填される潤滑剤の種類は特に限定されるものではなく、一般的な潤滑油やグリースを用いることができるが、樹脂製プーリ10の使用温度を考慮して、ポリα−オレフィン油,アルキルジフェニルエーテル油等を基油、ジウレア等を増ちょう剤とし、酸化防止剤,摩耗防止剤等の添加剤が配合されたグリースが好ましい。
〔実施例〕
図1の樹脂製プーリとほぼ同様の構成の樹脂製プーリの樹脂部の表面に、塩化ビニリデン系共重合体を含有するラテックスを固化してなる被膜を形成したものを用意して、その耐塩化カルシウム性を評価した。
樹脂製プーリは、呼び番号6203DDL18の深溝玉軸受をコアとしたインサート成形により、深溝玉軸受の外輪の外周に樹脂部を一体形成してなるものである。また、樹脂部を構成する樹脂材料は、ガラス繊維を30質量%含有するポリアミド66(宇部興産株式会社製のUBEナイロン2020GU6)である。このポリアミド66の数平均分子量は20000である。また、この樹脂材料は、ヨウ化銅系の熱安定剤を含有している。
塩化ビニリデン系共重合体を含有するラテックスとしては、旭化成ケミカルズ株式会社製のサランテックスL549Bを用いた。そして、軸受部をマスキングした樹脂製プーリの樹脂部の表面全体に、ラテックスをエアースプレー法により塗装し、風乾後に40℃で48時間熱処理して、塗膜を乾燥させて固化した。こうして得られた被膜の厚さは、40μmであった。
上記のようにして製造した実施例の樹脂製プーリと、被膜を備えていないことを除いては実施例と全く同様の構成の比較例の樹脂製プーリとについて、耐塩化カルシウム性を評価した。試験方法は以下の通りである。
まず、樹脂製プーリを80℃の熱水中に2時間浸潰して吸水させた後に、濃度50質量%の塩化カルシウム水溶液に5分間浸漬した。次に、1470Nのラジアル荷重を負荷した状態で、樹脂製プーリを恒温槽内に放置して、恒温槽内の温度を以下のように変化させた。すなわち、20℃から110℃まで30分かけて昇温した後に、110℃で2時間保持し、さらに30分かけて20℃まで降温した後、20℃で1時間保持した。
そして、前記温度変化を1サイクルとして繰り返し、2サイクル毎に樹脂製プーリを前記塩化カルシウム水溶液に5分間浸漬した。樹脂部のクラックの発生の有無を2サイクル毎に確認しながら、10サイクルまで試験を行った。
その結果、実施例は10サイクルでもクラックが発生しなかったのに対し、比較例は4サイクルでクラックが発生した。この結果から、塩化ビニリデン系共重合体を含有するラテックスを固化してなる被膜を樹脂部の表面に形成したことにより、樹脂部への水分(塩化カルシウム水溶液)の浸入が遮断されたため、耐塩化カルシウム性が向上したことが分かる。
〔第二実施形態〕
図3は、本発明に係る転がり軸受の一実施形態である円筒ころ軸受の構造を示す部分縦断面図であり、図4は、図3の円筒ころ軸受に組み込まれる保持器の斜視図である。
第二実施形態の円筒ころ軸受20は、軌道面を有する内輪21と、内輪21の軌道面に対向する軌道面を有する外輪22と、前記両軌道面間に転動自在に配された複数の転動体(円筒ころ)23と、内輪21と外輪22との間に転動体23を保持する樹脂製の保持器24と、を備えている。この保持器24は、外輪22の内径面22a(保持器案内面)によって案内される外輪案内方式の保持器である。なお、図示はしていないが、ゴムシールやシールドのようなシール装置を備えていてもよい。また、内輪21と外輪22の間に形成される軸受内部空間には、潤滑油,グリース等の潤滑剤を配してもよい。
保持器24は、例えば樹脂材料の射出成形により形成される。保持器24を構成する樹脂材料の種類は特に限定されるものではないが、保持器においては、寸法精度が良好であることが求められるとともに、機械的強度と耐熱性が良好であることが求められる。そのため、保持器24を構成する樹脂材料としては、ガラス繊維,炭素繊維等の充填材や各種添加剤(潤滑剤,熱安定剤,酸化防止剤,熱伝導性改良剤,可塑剤等)を樹脂に配合した樹脂組成物が好ましい。
好ましい樹脂の例としては、ポリアミド樹脂,ポリフェニレンサルファイド,ポリエーテルエーテルケトンがあげられる。ポリアミド樹脂としては、ポリアミド11,ポリアミド12,ポリアミド46,ポリアミド6,ポリアミド66,ポリアミド610,ポリアミド612等の脂肪族ポリアミド樹脂や、変性ポリアミド6T,ポリアミド9T等の芳香族ポリアミド樹脂があげられる。
このような保持器24の表面には、塩化ビニリデン系共重合体を含有するラテックスを固化してなり且つガスバリア性,水蒸気バリア性,及び接着性を有する被膜(図示せず)が設けられている。この塩化ビニリデン系共重合体とは、塩化ビニリデンを含む複数のモノマーの共重合体である。前記被膜(すなわち、ラテックスを固化したもの)は接着性を有するので、保持器24を構成する樹脂材料の種類にかかわらず保持器24に対する付着性が良好である。よって、付着性を向上させる前処理を保持器24に対して施さなくても差し支えない。ただし、保持器24との付着性をより向上させるために、プラズマ処理,プライマー処理等の前処理を保持器24に対して施してもよい。なお、前記被膜は、保持器24の表面全体に設けることが最も好ましいが、保持器24の表面の一部分に設けてもよい。
本実施形態の保持器24は、その表面に前記被膜が設けられているので、各種薬品(例えば塩化カルシウム)に対する耐性が優れている。そのため、保持器24を構成する樹脂組成物のベース樹脂として、耐薬品性にやや劣るポリアミド66等のポリアミド樹脂を使用したとしても、保持器24が薬品に侵されにくい。よって、例えば融雪剤(塩化カルシウム)に起因する不具合が抑制されるので、本実施形態の円筒ころ軸受20は、高信頼性で長寿命である。
また、ポリアミド66等のポリアミド樹脂を繊維強化材で補強した樹脂組成物は、成形精度,強度特性,及び耐熱性が優れるとともに比較的安価であるので、保持器24を構成する樹脂組成物のベース樹脂としてポリアミド66等のポリアミド樹脂を使用すれば、本実施形態の円筒ころ軸受20は、安価且つ高信頼性で長寿命である。
さらに、前記被膜はガスバリア性を有しているので、樹脂の劣化の原因となる酸素等のガスを遮断することができる。また、前記被膜は水蒸気バリア性も有しているので、水蒸気が透過しにくく、水分(水蒸気) を遮断することができる。よって、保持器24の劣化や吸水による寸法変化に起因する円筒ころ軸受20の不具合の発生が抑制されるので、本実施形態の円筒ころ軸受20は高信頼性で長寿命である。
ここで、塩化ビニリデン系共重合体を含有するラテックス及び該ラテックスを固化してなる被膜について、詳細に説明する。
本発明における塩化ビニリデン系共重合体とは、塩化ビニリデンを含む複数のモノマーの共重合体であるが、前記塩化ビニリデン系共重合体は、3種のモノマー、すなわち塩化ビニリデン,メタクリロニトリル,及びアクリル酸(2−ヒドロキシエチル)の共重合体であることが好ましい。そして、前記被膜は高温下においても塩化水素を放出しにくいことが好ましいので、前記ラテックス1Lを120℃で10分間保持した場合に放出される塩化水素の量(以降においては、脱塩化水素速度と記すこともある)は、1mg以下であることが好ましい。1mg超過であると、前記被膜に変色が生じやすい(耐変色性が低い)。
前記3種のモノマーの配合比は、塩化ビニリデンが89質量%以上93質量%以下、メタクリロニトリルが2質量%以上8質量%以下、アクリル酸(2−ヒドロキシエチル)が0.5質量%以上3質量%以下である。塩化ビニリデンが89質量%未満であると、前記被膜のガスバリア性が不十分となるおそれがある。一方、93質量%超過であると、ラテックス中で前記塩化ビニリデン系共重合体が短時間で結晶化してしまうため、ラテックスを成膜用途に使用することが困難となる。
また、メタクリロニトリルが2質量%未満であると、前記被膜のガスバリア性が不十分となるおそれがある。一方、8質量%超過であると、脱塩化水素速度が1mg超過となり前記被膜の耐変色性が不十分となるおそれがある。さらに、アクリル酸(2−ヒドロキシエチル)が0.5質量%未満であると、脱塩化水素速度が1mg超過となり前記被膜の耐変色性が不十分となるおそれがある。一方、3質量%超過であると、前記被膜のガスバリア性や水蒸気バリア性が不十分となるおそれがある。
上記のような不都合がより生じにくくするためには、前記3種のモノマーの配合比は、塩化ビニリデンが90質量%以上92質量%以下、メタクリロニトリルが4質量%以上6質量%以下、アクリル酸(2−ヒドロキシエチル)が1質量%以上2質量%以下とすることがより好ましい。なお、これら3種のモノマーの配合比の合計が100質量%に満たない場合は、これら3種のモノマーと共重合可能な1種類以上のビニル系モノマーが3質量%以下の範囲で配合され、合計100質量%とされる。
このビニル系モノマーの種類は特に限定されるものではなく、一般的に用いられるものを問題なく使用することができる。ビニル系モノマーの具体例としては、メチルアクリレート、メチルメタクリレート、エチルアクリレート、エチルメタクリレート、プロピルアクリレート、プロピルメタクリレート、n−ブチルアクリレート、n−ブチルメタクリレート、t−ブチルアクリレート、t−ブチルメタクリレート、ヘキシルアクリレート、ヘキシルメタクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、ノニルアクリレート、ノニルメタクリレート、ベンジルアクリレート、ベンジルメタクリレート、シクロヘキシルアクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、ラウリルアクリレート、ラウリルメタクリレート、n−オクチルアクリレート、n−オクチルメタクリレート、2−メトキシエチルアクリレート、2−メトキシエチルメタクリレート、ブトキシエチルアクリレート、ブトキシエチルメタクリレート、メトキシトリエチレングリコールアクリレート、メトキシトリエチレングリコールメタクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルメタクリレート、3−クロロ−2−ヒドロキシプロピルアクリレート、3−クロロ−2−ヒドロキシプロピルメタクリレート、テトラヒドロフルフリルアクリレート、テトラヒドロフルフリルメタクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピルアクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピルメタクリレート、ジエチレングリコールアクリレート、ジエチレングリコールメタクリレート、ポリエチレングリコールアクリレート、ポリエチレングリコールメタクリレート、2−(ジメチルアミノ)エチルアクリレート、2−(ジメチルアミノ)エチルメタクリレート、N,N−ジメチルアクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド、N−メチロールメタクリルアミド、N−ビニルピロリドン、プロピオン酸ビニル、ステアリン酸ビニル、塩化ビニル、塩化ビニリデン、酢酸ビニル、スチレンがあげられる。
前記塩化ビニリデン系共重合体の分子量は特に限定されるものではないが、低分子量の塩化ビニリデン系共重合体は熱や光に対する安定性が劣ることが知られており、耐変色性はこれらの安定性に相関することが認められているので、前記塩化ビニリデン系共重合体の分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーによって測定された重量平均分子量で10万以上であることが好ましい。
また、前記ラテックスは、前記塩化ビニリデン系共重合体の粒子が分散したエマルジョンであることが好ましい。ラテックスの製造方法は特に限定されるものではないが、前記ラテックスは、前記3種のモノマーを乳化重合することにより得られるエマルジョンであることが好ましい。
乳化重合に用いる乳化剤,重合開始剤,界面活性剤の種類は特に限定されるものではないが、これらの物質は、ラテックスから形成した前記被膜中に残存して、ガスバリア性及び水蒸気バリア性を劣化させる要因となり得るので、その使用量は可能な限り少量であることが好ましい。そして、乳化重合に引き続きエマルジョンに透析処理を施すことにより、前記物質を可能な限り除去することがさらに好ましい。
このようなラテックスの例としては、旭化成ケミカルズ株式会社製のサランテックスL549BやサランテックスL140Aがあげられる。
前記ラテックスには、顔料や補強材などを添加してもよい。顔料としては、例えば、タルク,炭酸カルシウム,カオリン等の無機材料や、カーボンブラック,アントラキノン系等の油溶性有機染料があげられる。また、補強材としては、例えば、ガラス繊維,炭素繊維があげられる。
さらに、前記被膜のガスバリア性をさらに向上するためには、前記被膜中に層状珪酸塩を分散させることが好ましいので、前記ラテックスに層状珪酸塩を添加することが好ましい。前記被膜中に層状珪酸塩が分散状態で存在すると、ガスの浸透を迂回させるため、結果としてガスバリア性が向上する。
前記ラテックスに層状珪酸塩を添加する場合は、前記被膜中の層状珪酸塩の含有量が0.1質量%以上10質量%以下となるように、前記ラテックスへの添加量を調整する。前記被膜中の層状珪酸塩の含有量が0.1質量%未満であると、前記被膜のガスバリア性がほとんど向上しない。一方、10質量%超過であると、前記被膜中に層状珪酸塩を均一に分散させることが困難となる。
層状珪酸塩としては、マイカ,バーミキュライト,スメクタイト,モンモリロナイト,バイデライト,ノントロナイト,ヘクトライト等が使用可能であり、この中でもモンモリロナイトが特に好ましい。モンモリロナイトは、高膨潤性を有し、浸透膨潤が起こり、層間が広がりやすいため、前記被膜中に分散しやすい。
この層状珪酸塩には、有機膨潤化剤で表面改質を施すことがより好ましい。そうすれば、層状珪酸塩の層間が広がり、分散性が向上する。有機膨潤化剤としては、炭素数が12以上のアルキル基を1つ以上有する4級アンモニウム塩が好ましい。
前記被膜は、前記ラテックスを所望の箇所に塗装(膜状に配する)した後に、その塗膜を乾燥することにより形成することができる。液状の前記ラテックスを塗装する方法は、特に限定されるものではないが、塗布(例えば刷毛塗り法),浸漬,噴霧(例えばエアースプレー法)等の方法があげられる。塗装は1回又は複数回行って、塗膜を所望の厚さとする。また、塗膜の乾燥条件は特に限定されるものではないが、常温又は高温下、具体的には10℃以上100℃以下(より好ましくは30℃以上50℃以下)で、24〜72時間保持することが好ましい。このような条件で乾燥を行えば、結晶化が進み、十分なガスバリア性を有する被膜が形成される。
前記被膜の厚さは、3μm以上100μm以下が好ましい。前記被膜の厚さが3μm未満であると、十分なガスバリア性を発揮することが困難となるおそれがある。一方、前記被膜の厚さを100μm超過としても、ガスバリア性がそれ以上向上することはほとんどないばかりでなく、膜厚が大きすぎて、均一な膜厚とするのが困難となる。
また、前記被膜を形成する箇所(以降は被膜形成面と記す)には、コロナ放電処理,プラズマ活性化処理,グロー放電処理,逆スパッタ処理,粗面化処理等の公知の表面活性化処理や、エチレンイミン系,アミン系,エポキシ系,ウレタン系,ポリエステル系等のプライマー剤でプライマー処理を施してもよい。このような処理により、前記被膜と被膜形成面との密着性を向上させることができる。
塩化ビニリデン系ポリマーの樹脂層をコーティングするような場合には、プライマーとして接着性組成物層を設けることが提案されているが、このような接着性組成物層を本発明に適用することができる。例えば、米国特許第3023126号明細書には、ポリウレタン系プライマーを用いることが提案されており、米国特許第4214039号明細書には、酸中和されたアミノ基含有ポリマーとエポキシ樹脂との水系硬化性プライマーを用いることが提案されている。
なお、この第二実施形態は本発明の一例を示したものであり、本発明は本実施形態に限定されるものではない。例えば、本実施形態においては、転がり軸受の例として円筒ころ軸受をあげて説明したが、本発明は、他の種類の様々な転がり軸受に対して適用することができる。例えば、深溝玉軸受,アンギュラ玉軸受,自動調心玉軸受,円すいころ軸受,針状ころ軸受,自動調心ころ軸受等のラジアル形の転がり軸受や、スラスト玉軸受,スラストころ軸受等のスラスト形の転がり軸受である。
図5は、本発明に係る転がり軸受の第三実施形態であるアンギュラ玉軸受の構造を示す部分縦断面図であり、図6は、図5のアンギュラ玉軸受に組み込まれる保持器の斜視図である。また、図7は、本発明に係る転がり軸受の第四実施形態である深溝玉軸受の構造を示す部分縦断面図であり、図8は、図7の深溝玉軸受に組み込まれる冠形保持器の斜視図である。これらのアンギュラ玉軸受及び深溝玉軸受の構成は、第二実施形態の円筒ころ軸受とほぼ同様であるので、その説明は省略する。なお、図5〜8においては、図3,4と同一又は相当する部分には、図3,4と同一の符号を付してある。
〔実施例〕
図8の保持器とほぼ同様の構成の樹脂製の冠形保持器の表面に、塩化ビニリデン系共重合体を含有するラテックスを固化してなる被膜を形成したものを用意して、その水蒸気バリア性を評価した。
評価に用いる冠形保持器は、呼び番号6203の深溝玉軸受に組み込まれる保持器であり、樹脂材料の射出成形により形成されたものである。また、冠形保持器を構成する樹脂材料は、ガラス繊維を25質量%含有するポリアミド66(BASF社製のウルトラミッドA3HG5)又はガラス繊維を30質量%含有するポリアミド46(ディーエスエムジャパンエンジニアリングプラスチックス株式会社製のスタニールTW241F6)である。前者の樹脂材料はアミン系酸化防止剤を含有しており、後者の樹脂材料は銅系の熱安定剤を含有している。
塩化ビニリデン系共重合体を含有するラテックスとしては、旭化成ケミカルズ株式会社製のサランテックスL549Bを用いた。そして、冠形保持器の表面全体に、ラテックスをエアースプレー法により塗装し、風乾後に40℃で48時間熱処理して、塗膜を乾燥させて固化した。こうして得られた被膜の厚さは、40μmであった。
上記のようにして製造した実施例の冠形保持器と、被膜を備えていないことを除いては実施例と全く同様の構成の比較例の冠形保持器とについて、水蒸気バリア性を評価した。試験方法は以下の通りである。
まず、80℃の真空恒温槽内に冠形保持器を1週間保持し、絶乾状態とした。そして、絶乾状態の冠形保持器の質量を測定した。次に、この絶乾状態の冠形保持器を、温度60℃、相対湿度80%の高温高湿槽内に1週間保持し、吸湿させた。そして、吸湿させた冠形保持器の質量を測定し、下記式により吸湿率を算出した。なお、下記式における質量の単位は、いずれもgである。
吸湿率(%)=(吸湿後質量−絶乾質量)/絶乾質量×100
Figure 2011117495
結果を表1に示す。樹脂材料がいずれの場合でも、実施例の方が比較例よりも吸湿率が低く、比較例の約2割程度の吸湿率であった。これらの結果から、塩化ビニリデン系共重合体を含有するラテックスを固化してなる被膜を冠形保持器の表面に形成したことにより、外部及び内部の水蒸気に対してバリヤ性が優れていることが分かる。すなわち、前記被膜により、外部の水蒸気の吸収が抑制されるとともに、内部に吸収された水分の外部への排出が抑制される。
1 内輪
2 外輪
10 樹脂製プーリ
11 転がり軸受
12 樹脂部
21 内輪
22 外輪
23 転動体
24 保持器

Claims (6)

  1. 転がり軸受と、前記転がり軸受の内輪又は外輪に一体的に取り付けられた樹脂部と、を備える樹脂製プーリにおいて、塩化ビニリデン系共重合体を含有するラテックスを固化してなり且つガスバリア性,水蒸気バリア性,及び接着性を有する被膜を、前記樹脂部の表面に設けたことを特徴とする樹脂製プーリ。
  2. 前記塩化ビニリデン系共重合体は、89質量%以上93質量%以下の塩化ビニリデンと2質量%以上8質量%以下のメタクリロニトリルと0.5質量%以上3質量%以下のアクリル酸(2−ヒドロキシエチル)とを共重合したものであり、前記ラテックスは、この塩化ビニリデン系共重合体の粒子が分散したエマルジョンであることを特徴とする請求項1に記載の樹脂製プーリ。
  3. 前記ラテックスは、89質量%以上93質量%以下の塩化ビニリデンと2質量%以上8質量%以下のメタクリロニトリルと0.5質量%以上3質量%以下のアクリル酸(2−ヒドロキシエチル)との乳化重合により得られるエマルジョンであることを特徴とする請求項1に記載の樹脂製プーリ。
  4. 内輪と、外輪と、前記内輪及び前記外輪の間に転動自在に配された複数の転動体と、前記内輪及び前記外輪の間に前記転動体を保持する樹脂製の保持器と、を備える転がり軸受において、塩化ビニリデン系共重合体を含有するラテックスを固化してなり且つガスバリア性,水蒸気バリア性,及び接着性を有する被膜を、前記保持器の表面に設けたことを特徴とする転がり軸受。
  5. 前記塩化ビニリデン系共重合体は、89質量%以上93質量%以下の塩化ビニリデンと2質量%以上8質量%以下のメタクリロニトリルと0.5質量%以上3質量%以下のアクリル酸(2−ヒドロキシエチル)とを共重合したものであり、前記ラテックスは、この塩化ビニリデン系共重合体の粒子が分散したエマルジョンであることを特徴とする請求項4に記載の転がり軸受。
  6. 前記ラテックスは、89質量%以上93質量%以下の塩化ビニリデンと2質量%以上8質量%以下のメタクリロニトリルと0.5質量%以上3質量%以下のアクリル酸(2−ヒドロキシエチル)との乳化重合により得られるエマルジョンであることを特徴とする請求項4に記載の転がり軸受。
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