JP2011116684A - アディポサイトカイン生産改善剤 - Google Patents

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Abstract

【課題】酸化しにくく、コストが低廉であり、アディポネクチンを増加させると共に、レプチンを減少させるアディポサイトカイン生産改善剤を提供すること。
【解決手段】ビンチョウ鮪の頭部から抽出したビンチョウ鮪油と、キハダ鮪の頭部から抽出したキハダ鮪油との混合油より成る。ビンチョウ鮪油及びキハダ鮪油は、それぞれ鮪頭部に同量の水を加え、圧力−0.088MPaG〜−0.0971MPaG,温度30℃〜55℃で低圧・加熱しながら、少なくとも60分間蒸気を除去した後、容器を密封したまま、圧力0.2MPaG,温度60℃〜120℃で、少なくとも60分間加圧・加熱して得た抽出物を液分と固形分とに分離し、液分を静置して上澄みとして回収する。
【選択図】なし

Description

本発明は、ビンチョウ鮪油及びキハダ鮪油を利用したアディポサイトカイン生産改善剤に関する。
エイコサペンタエン酸(EPA)やドコサヘキサエン酸(DHA)等のn-3系PUFA(多価不飽和脂肪酸)を豊富に含む魚油は、その機能性から健康に良い油として認識され、世界中で需要が高まっている。その機能性としては、中性脂肪の低下や脳の記憶力の改善、冠動脈系の疾患の軽減等が世界中で確認されている。
また、魚油に含まれるDHAは、脂肪細胞から分泌される生理活性物質であるアディポサイトカインの分泌調整作用を有することも知られている(特許文献1参照)。
アディポサイトカインの一種であるアディポネクチンは、内臓脂肪の減少や血圧降下作用、抗動脈硬化、抗炎症作用が知られている。体が通常の状態では、アディポネクチンの量が増えると内臓脂肪や血中の脂肪が減る。現在最先端領域として寿命延長・糖尿病・アルツハイマー病抑制への効果が研究されている。
一方、同じくアディポサイトカインの一つであるレプチンは、肥満遺伝子に由来するホルモンとして過食症の原因とされている。レプチン濃度は殆どの肥満者で体脂肪濃度に比例している。活性酸素の産生を増加させ、動脈硬化などの肥満に関係する心血管障害やインスリン抵抗、II型糖尿病を引き起こす。
レプチンは通常の体脂肪状態では、減少することにより体脂肪を減少させる。レプチン受容体の6つのアイソフォームの一つ、obRbが変異して、レプチンが結合できなくなり肥満を引き起こすと言われている。
ところが、上記特許文献1には、DHAはアディポネクチンを増加させると記載されているだけであって、レプチンを減少させると言う記述はない。
また、特許文献2には、アディポネクチンとレプチン双方に作用する機能水が記載されている。
しかし、このものは、魚を利用したものではないばかりか、アディポネクチン及びレプチンを共に増加させるものであって、両サイトカインの性質を考えるとその作用が疑問視される。
特開2006−306866号公報 特開2008−156320号公報
本発明が解決しようとする課題は、酸化しにくく、コストが低廉であり、アディポネクチンを増加させると共に、レプチンを減少させるアディポサイトカイン生産改善剤を提供することにある。
本発明のアディポサイトカイン生産改善剤は、ビンチョウ鮪の頭部から抽出したビンチョウ鮪油と、キハダ鮪の頭部から抽出したキハダ鮪油との混合油より成る。
前記ビンチョウ鮪油及びキハダ鮪油は、それぞれビンチョウ鮪の頭部及びキハダ鮪の頭部に同量の水を加え、圧力−0.088MPaG〜−0.0971MPaG,温度30℃〜55℃で低圧・加熱しながら、少なくとも60分間蒸気を除去した後、容器を密封したまま、圧力0.2MPaG,温度60℃〜120℃で、少なくとも60分間加圧・加熱して得た抽出物を液分と固形分とに分離し、液分を静置して上澄みとして回収すると良い。
ビンチョウ鮪及びキハダ鮪の頭部は、酸化を防ぐために、冷凍保存したものを用いるのが望ましい。
容器に投入した原料は、鮪油の融点に近い30〜40℃、圧力−0.0939MPaG〜−0.0971MPaGで沸騰させるのが理想的であるが、真空ポンプの能力は大きなものが要求され、コストもかかることから、工業生産的には、鮪油の品質に悪影響を与えない55℃、−0.088MPaG程度で十分であると考えられる。
低圧状態で沸騰させる時間、及び、次工程において加熱・加圧する時間は60分から90分が適当であるが、それ以上であっても良い。
また、必要に応じて、上澄みとなった鮪油に6000G〜10000Gで遠心分離処理を行えば、更に清澄な魚油を採取できる。
原料処理の段階から抽出終了時まで、一切大気と触れさせない閉ざされた環境下で、最初は、低温で沸騰させ、含有脂肪を遊離しやすくさせ、次に昇温させることによって、熱抽出により効率良く脂質を回収する。真空中で低温沸騰させる際に有害揮発性成分が系外に排出され、更に、昇温した後、降圧・降温する際に、非常に激しく沸騰が起こり、この間にも有害な揮発性成分が系外に排出される。
なお、ビンチョウ鮪油を35%とキハダ鮪油を65%の割合で混合すると良い。
さらに、本発明のアディポサイトカイン生産改善剤は、ソーセージ等の食品に添加することもできる。
本発明によれば、廃棄されることが多かったビンチョウ鮪及びキハダ鮪の頭部を利用しているので、コストが低廉で済み、抗酸化作用のあるビタミンE・Dを高濃度で含有するため、酸化し難い。
また、少量摂取することにより、短期間でアディポネクチンを増加させると共に、レプチンを減少させて、血圧を降下させ、中性脂肪・総コレステロール量を低下させ、HDLを増加させ、LDLを減少させることができ、この結果、生活習慣病の予防・改善に役立ち、副作用も殆どない。これは、ビンチョウ鮪油とキハダ鮪油を混合することにより、魚油に高度に含有されるEPAやDHA等のPUFA(多価不飽和脂肪酸)だけでなく、天然のビタミンE・Dを共に高濃度で含有するためではないかと考えられる。
血中アディポネクチン濃度の測定結果を示す図である。 血中レプチン濃度の測定結果を示す図である。 収縮期血圧(最高血圧)の測定結果を示す図である。 拡張期血圧(最低血圧)の測定結果を示す図である。 血中中性脂肪濃度の測定結果を示す図である。 血中総コレステロール値の測定結果を示す図である。 血中HDLコレステロール値の測定結果を示す図である。 血中LDLコレステロール値の測定結果を示す図である。
以下、本発明の実施例を詳細に説明する。
−70℃で冷凍保存されたビンチョウ鮪の頭部16kgを冷凍のまま4つに分け、半解凍の状態になるまで放置した後、16kgの水と共に真空・圧力釜に投入した。
次に、圧力−0.088MPaG、温度55℃の条件下で60分間激しく沸騰させながら、発生した蒸気を真空ポンプにより継続的に吸引除去した。
次いで、真空吸引を停止し、真空・圧力釜を密封したまま、直ちに圧力を0.2MPaGに加圧設定すると共に、103℃まで昇温させ、60分間この加圧・加熱条件を維持した。真空状態を保ちながら加熱するため、真空・圧力釜の水蒸気の蒸発により、真空から徐々に圧力が高まり、激しい沸騰を続け、大気圧を超えた状態で沸騰が停止する。即ち、0.2MPaG、103℃の条件下では油液分は沸騰しない。
加圧・加熱処理後、真空・圧力釜から取り出した物質を、24.5kgの液分と、骨、筋組織等から成る6.2kgの固形分とに分離した。
さらに、液分を5分間静置して、上澄み部分5.3kgをビンチョウ鮪油として回収した。
また、−70℃で冷凍保存されたキハダ鮪の頭部16kgから、同じ方法で5.3kgのキハダ鮪油を回収した。
そして、ビンチョウ鮪の頭部から回収したビンチョウ鮪油を35%と、キハダ鮪の頭部から回収したキハダ鮪油を65%の割合で混合し、アディポサイトカイン生産改善剤を得た。
本実施例で得られたアディポサイトカイン生産改善剤の成分分析結果を表1に示す。表1からこのアディポサイトカイン生産改善剤は、EPA、DHA、ビタミンD,Eの含有量が非常に多く、重金属、PCBの含有量が低いことがわかった。
Figure 2011116684
このアディポサイトカイン生産改善剤の機能検証を、ヒトに対する二重盲検・プラセーボコントロール試験により行なった。
アディポサイトカイン生産改善剤(ビンチョウ鮪油とキハダ鮪油との混合油)及び大豆油をそれぞれ300mgずつフィッシュゼラチンカプセルに詰め、混合油投与群17名とプラセボ群17名の合計34名に対し、2ヶ月間1日2粒ずつ3回、計6粒(1.8g)服用してもらった。投与終了後1ヶ月間は服用を中止し、服用中及び服用休止中の変化を測定し、P群=プラセボ群17名、T群=混合油投与群17名の平均値を求めた。
図1及び表2に、被験者の血中アディポネクチン濃度を測定した結果(大塚製薬製アディポネクチン測定ELISAKIT使用)を示す。
Figure 2011116684
図2及び表3に、血中レプチン濃度を測定した結果(岩井化学薬品製Human Leptin ELISAKIT使用)を示す。
Figure 2011116684
血中アディポネクチン濃度及び血中レプチン濃度の測定結果から、このアディポサイトカイン生産改善剤を1日僅か1.8g摂取するだけで、アディポネクチン分泌を促進し、レプチン分泌を抑制する効果のあることがわかった。
また、被験者の血圧変化も測定した。
図3及び表4に収縮期血圧(最高血圧)の変化を示し、図4及び表5に拡張期血圧(最低血圧)の変化を示す。
P群では、最高血圧及び最低血圧がほとんど変化しなかったのに対し、T群では、服用中の最高・最低血圧が共に低下し、服用中止後は以前の状態に戻った。
被験者の血圧の平均値は殆ど正常値に近く、このような正常値との境界範囲で短期間に少量(1日1.8g)摂取で統計的有意に収縮期・拡張期血圧とも減少した。
Figure 2011116684
Figure 2011116684
図5及び表6に、被験者の血中中性脂肪濃度の変化を示す。
T群は、服用中に中性脂肪が低下し、服用中止後は以前の状態に戻った。
Figure 2011116684
さらに、被験者のコレステロール値を測定した。
図6及び表7に総コレステロール値の変化を示す。
また、図7及び表8に、HDLコレステロールの変化を示し、図8及び表9にLDLコレステロールの変化を示す。
Figure 2011116684
Figure 2011116684
Figure 2011116684
以上の試験結果から、このアディポサイトカイン生産改善剤を摂取した群は、プラセボ群と比較して、中性脂肪、総コレステロール及びLDLコレステロールが低下し、HDLコレステロールが増加したことが確認された。
なお、本発明のアディポサイトカイン生産改善剤は、カプセル、錠剤等として摂取するだけでなく、ソーセージ、ドレッシング等の食品に添加することもできる。

Claims (4)

  1. ビンチョウ鮪の頭部から抽出したビンチョウ鮪油と、キハダ鮪の頭部から抽出したキハダ鮪油との混合油より成ることを特徴としたアディポサイトカイン生産改善剤。
  2. 前記ビンチョウ鮪油及びキハダ鮪油は、それぞれビンチョウ鮪の頭部及びキハダ鮪の頭部から下記aの方法により抽出してある請求項1に記載のアディポサイトカイン生産改善剤。
    a.鮪頭部に同量の水を加え、圧力−0.088MPaG〜−0.0971MPaG,温度30℃〜55℃で低圧・加熱しながら、少なくとも60分間蒸気を除去した後、容器を密封したまま、圧力0.2MPaG,温度60℃〜120℃で、少なくとも60分間加圧・加熱して得た抽出物を液分と固形分とに分離し、液分を静置して鮪油を上澄みとして回収する。
  3. 前記ビンチョウ鮪油を35%とキハダ鮪油を65%の割合で混合した請求項1又は2に記載のアディポサイトカイン生産改善剤。
  4. 請求項1〜3のいずれかに記載のアディポサイトカイン生産改善剤を添加してあることを特徴とした食品。
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