JP2008184429A - 肝臓トリグリセリド濃度低下剤 - Google Patents

肝臓トリグリセリド濃度低下剤 Download PDF

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治 江崎
Kiyomi Yamazaki
聖美 山崎
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Abstract

【課題】肝臓トリグリセリド濃度低下剤、脂肪肝に有効な新規薬剤及びそれらの使用方法を提供すること。
【解決手段】魚油を含有する薬剤を、ヒト又はヒト以外の脊椎動物に投与することによって、炭水化物摂取により誘導された肝臓トリグリセリド濃度の上昇を低下させたり、炭水化物摂取により誘導された肝臓トリグリセリド濃度の上昇に起因する疾患に対して予防・治療をしたりする。ここで、肝臓トリグリセリド濃度の上昇に起因する疾患としては、例えば、脂肪肝、非アルコール性脂肪性肝炎、代謝障害性肝障害、肝硬変、肝線維症等が挙げられる。上記薬剤に含まれる魚油の量は、摂取するエネルギー所要量に対し、平均して約10%を占めていることが好ましい。
【選択図】図2

Description

本発明は、肝臓トリグリセリド濃度低下剤に関する。
脂肪肝とは、肝細胞へ中性脂肪(トリグリセリド)等の脂質が過剰に蓄積した状態をいい、例えば、組織学上、肝小葉を構成する肝細胞の30%以上に脂肪化が認められる状態をいう。このような肝臓へのトリグリセリドの蓄積は、トリグリセリド合成量の増加や、肝細胞からのトリグリセリドの除去能の低下によって引き起こされると考えられている。
一般に、トリグリセリドの合成量は、トリグリセリド合成酵素の活性化、遊離脂肪酸濃度の増加等によって増加するといわれているが、絶食状態の時に脂質含有量の高い食物を摂取した場合、又は糖質含有量の高い食物を摂取した場合に生じる代謝異常等によっても増加するといわれている(例えば、非特許文献1及び2参照)。
現在、脂肪肝を治療する方法としては、食事療法、運動療法、薬物療法等がある。しかしながら、薬物療法として市販されている治療薬は、ポリエンホスファチジルコリン(商品名EPL)一つしかなく、脂肪肝の病態によっては、この治療薬の効果を期待できない場合がある。そのため、脂肪肝の治療方法は、食事療法や運動療法が基本になっているのが現状である。
原書23版 ハーパー生化学,丸善株式会社,277頁 メルクマニュアル第16版,メディカルブックサービス,852〜854頁
以上のような現状から、脂肪肝を治療する薬剤の開発が期待されていた。
そこで、本発明は、肝臓トリグリセリド濃度低下剤、脂肪肝に有効な新規薬剤及びそれらの使用方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、以下の実施例に示すように、炭水化物又は脂肪をマウスに摂取させて脂肪肝のモデルマウスを作製し、これらのモデルマウスに魚油を投与したところ、炭水化物摂取により肝臓トリグリセリド濃度の上昇が誘導された個体において、肝臓トリグリセリド濃度が低下することを見出した。そして、この個体の肝臓組織を観察したところ、脂肪肝の組織像といわれている脂肪滴の量が減少していることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明にかかる肝臓トリグリセリド濃度低下剤は、炭水化物摂取により誘導された肝臓トリグリセリド濃度の上昇を低下させる剤であって、魚油を含有することを特徴とする。
また、本発明にかかる予防・治療剤は、炭水化物摂取により誘導された肝臓トリグリセリド濃度の上昇に起因する疾患に対する予防・治療剤であって、魚油を含有することを特徴とする。ここで、前記疾患は、例えば、脂肪肝等が挙げられる。
さらに、本発明にかかる肝臓PPARγ発現抑制剤は、炭水化物摂取により誘導された、肝臓におけるPPARγ2(peroxisome proliferator-activated receptor gamma 2)の発現を抑制する発現抑制剤であって、魚油を含有することを特徴とする。
また、本発明にかかる肝臓SREBP−1c発現抑制剤は、炭水化物摂取により誘導された、肝臓におけるSREBP−1c(sterol regulatory element binding protein 1c)の発現を抑制する発現抑制剤であって、魚油を含有することを特徴とする。
なお、前記魚油は、摂取するエネルギー所要量に対し、平均して約10%を占めることが好ましい。
また、本発明にかかる治療方法は、ヒト又はヒト以外の脊椎動物において、炭水化物摂取により誘導された肝臓トリグリセリド濃度の上昇を低下させるための治療方法であって、魚油を前記脊椎動物に投与することを特徴とする。
さらに、本発明にかかる治療方法は、ヒト又はヒト以外の脊椎動物において、炭水化物摂取により誘導された肝臓トリグリセリド濃度の上昇に起因する疾患を予防・治療するための治療方法であって、魚油を前記脊椎動物に投与することを特徴とする。
また、本発明にかかる機能性食品は、炭水化物摂取により誘導された肝臓トリグリセリド濃度の上昇を低下させる作用を有する機能性食品である。この機能性食品は、摂取するエネルギー所要量に対し、平均して約10%の魚油を供給することが好ましい。なお、本明細書に記載する「機能性食品」には、保健機能食品、特定保健用食品、栄養機能食品、いわゆる健康食品が含まれる。
また、本発明にかかる食品は、魚油を含有し、炭水化物摂取により誘導された肝臓トリグリセリド濃度上昇を低下させる作用を有するものであることを特徴とし、炭水化物摂取により誘導された肝臓トリグリセリド濃度上昇を低下するために用いられるものである旨の表示を付した食品であることを特徴とする。
本発明によって、肝臓トリグリセリド濃度低下剤、脂肪肝に有効な新規薬剤及びそれらの使用方法を提供することができるようになった。
以下に、本発明の実施の形態において実施例を挙げながら具体的かつ詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
実施の形態及び実施例に特に説明がない場合には、J. Sambrook, E. F. Fritsch & T. Maniatis (Ed.), Molecular cloning, a laboratory manual (3rd edition), Cold Spring Harbor Press, Cold Spring Harbor, New York (2001); F. M. Ausubel, R. Brent, R. E. Kingston, D. D. Moore, J.G. Seidman, J. A. Smith, K. Struhl (Ed.), Current Protocols in Molecular Biology, John Wiley & Sons Ltd.等の標準的なプロトコール集に記載の方法、あるいはそれを修飾したり、改変した方法を用いる。また、市販の試薬キットや測定装置を用いる場合には、特に説明が無い場合、それらに添付のプロトコールを用いる。
なお、本発明の目的、特徴、利点、及びそのアイデアは、本明細書の記載により、当業者には明らかであり、本明細書の記載から、当業者であれば、容易に本発明を再現できる。以下に記載された発明の実施の形態及び具体的な実施例等は、本発明の好ましい実施態様を示すものであり、例示又は説明のために示されているのであって、本発明をそれらに限定するものではない。本明細書で開示されている本発明の意図ならびに範囲内で、本明細書の記載に基づき、様々に修飾ができることは、当業者にとって明らかである。
(1)魚油の薬理作用及び魚油を含有する薬剤
以下の実施例に示すように、魚油を投与することにより、炭水化物摂取により肝臓トリグリセリド濃度の上昇が誘導された個体において、肝臓トリグリセリド濃度の上昇を低下させることができる。さらに、魚油を投与することにより、炭水化物摂取により肝臓トリグリセリド濃度の上昇が誘導された個体において、肝臓組織の脂肪滴の量を減少させることができる。従って、魚油を含有する薬剤は、肝臓トリグリセリド濃度の上昇を低下させることや、肝臓トリグリセリド濃度の上昇に起因する疾患に対する予防・治療等に用いることができる。ここで、肝臓トリグリセリド濃度の上昇に起因する疾患としては、例えば、脂肪肝、非アルコール性脂肪性肝炎、代謝障害性肝障害、肝硬変、肝線維症等が挙げられる。
同時に、魚油を投与することにより、炭水化物摂取により誘導された、肝臓におけるPPARγ2遺伝子の発現及びSREBP−1c遺伝子の発現を抑制することができる。従って、魚油を含有する薬剤は、炭水化物摂取により誘導された、肝臓におけるPPARγ2又はSREBP−1cの発現を抑制するのに用いることができる。なお、PPARγ2(peroxisome proliferator-activated receptor gamma 2;ペルオキシゾーム増殖促進受容体ガンマ2)及びSREBP−1c(sterol regulatory element binding protein 1c;ステロール調節エレメント結合蛋白質1c)は共に核内受容体型転写因子で、脂肪肝の発症に関与している(Am. J. Physiol Endocrinol Metab., Schadinger SE. et al, 288 (6), E1195-1205, Epub 2005 Jan 11 (2005 Jun), J Clin Invest., Shimano H., et al, 99 (5), 846-854 (1997 Mar 1))。
これより、魚油を含有する薬剤は、炭水化物摂取により誘導された、肝臓におけるPPARγ2又はSREBP−1cの発現を抑制すると共に、炭水化物摂取により誘導された肝臓トリグリセリド濃度の上昇を低下させ、肝臓組織の脂肪滴の量を減少させるという、従来の脂肪肝治療薬にはない新しいメカニズムを有する。
(2)本発明の薬剤を投与する対象
肝臓トリグリセリド濃度を上昇させる炭水化物としては特に限定されないが、例えば、グルコース、フルクトース、ガラクトース等の単糖類、スクロース、ラクトース、マルトース等の二糖類、デンプン(スターチ)等の多糖類が挙げられる。魚油を含有する薬剤は、このような炭水化物の摂取、特に過剰摂取により肝臓トリグリセリド濃度の上昇が誘導されたヒト又はヒト以外の脊椎動物において、肝臓トリグリセリド濃度の上昇を低下させたり、肝臓トリグリセリド濃度の上昇に起因する疾患に対して予防・治療したりするのに有用である。なお、肝臓トリグリセリド濃度の上昇に起因する疾患は、(1)に記載の通りである。
ここで、炭水化物の過剰摂取をする場合として、例えば、消化性潰瘍、急性膵炎、慢性膵炎、胆道系疾患等、脂肪食の摂取が機能的・相対的に制限されている場合等が考えられる。従って、これらの疾病に罹患した患者に対し、魚油を含有する薬剤は有用である。
また、炭水化物の過剰摂取をする場合には、ジュース等の飲料水やお菓子等の糖質を摂取する場合等も考えられる。従って、このような環境下におかれているヒト又はヒト以外の脊椎動物に対し、魚油を含有する薬剤は有用である。
さらに、炭水化物の過剰摂取をする場合には、糖尿病を合併している場合等も考えられる。例えば、成人発症型の糖尿病は、多くの場合において、肥満を伴い、余分な脂肪が肝臓につきやすくなっている。そのため、高血糖状態が続くと、末梢での代謝機能が低下するため、肝臓における脂肪の再取り込みが増加し、脂肪肝を助長することがある。従って、このような糖尿病を合併している患者に対して、脂肪肝の進行を抑えるためにも、魚油を含有する薬剤は有用である。
また、本発明の薬剤は、(1)に記載の通り、炭水化物摂取によって誘導された、肝臓におけるPPARγ2の発現やSREBP−1cの発現を抑制するに用いてもよい。
(3)本発明の薬剤の製造
本発明の薬剤に含有させる魚油は、魚から精製されて、製造される。精製率は特に限定されないが、精製率が高い方が好ましい。また、どんな魚から製造されてもよいが、DHAやEPA等の不飽和脂肪酸を多く含む魚から製造されることが好ましい。DHAやEPA等の不飽和脂肪酸を多く含む魚としては、例えば、青背の魚が挙げられる。ここで、DHAを多く含む魚としては、ニシン科、サバ科、アジ科、サンマ科の魚、又はサメが好ましく、マグロ、ブリ、サバ、サンマ、カツオ、メバチマグロ、ネコザメ、キハダマグロ、クロマグロが特に好ましい。また、EPAを多く含む魚としては、ニシン科、サバ科、アジ科、サンマ科の魚が好ましく、マイワシ、マグロ、サバ、ブリ、サンマ、アジ、カツオ、メバチマグロ、カンパチが特に好ましい。
魚油を含有する薬剤に用いられ得る薬学的に許容される担体としては、製剤素材として慣用の各種有機あるいは無機担体物質を用いてもよく、例えば固形製剤における賦形剤、滑沢剤、結合剤及び崩壊剤、あるいは液状製剤における溶剤、溶解補助剤、懸濁化剤、等張化剤、緩衝剤及び無痛化剤等を含有してもよい。さらに必要に応じて、通常の防腐剤、抗酸化剤、着色剤、甘味剤、吸着剤、湿潤剤等の添加物を適宜、適量含有してもよい。また、剤形としては、経口剤は、例えば、錠剤、カプセル剤、顆粒剤、散剤、細粒剤、シロップ剤、徐放性錠・カプセル・顆粒剤、カシュー剤、咀嚼錠剤又はドロップ剤等が、注射剤は、例えば、溶液性注射剤、乳濁性注射剤、又は固形注射剤等が挙げられる。
(4)本発明の薬剤の投与量及び投与方法
本発明の薬剤の投与量は、年齢、体重、適応症又は投与・摂取経路によって異なり、上記作用が発揮でき、かつ、生じる副作用が許容し得る範囲内であれば特に限定されないが、摂取するエネルギー所要量に対し、平均して約10%の魚油をヒト又はヒト以外の脊椎動物に投与することが好ましい。
また、投与方法としては、例えば、ヒト又はヒト以外の脊椎動物が炭水化物を摂取しているかどうかを問診や聞き取りによって確認し、炭水化物を摂取している場合に、本発明の魚油を含有する薬剤を投与すればよい。特に、ヒト又はヒト以外の脊椎動物において、肝生検や腹腔鏡検査施行時に肝臓組織を採取して、肝臓組織あたりの肝臓トリグリセリド濃度を測定し、肝臓トリグリセリド濃度が異常高値以上である場合に、あるいは、肝臓組織を観察し、肝細胞の30%以上に脂肪滴が認められる場合に、本発明の魚油を含有する薬剤を投与すれば、より効果的である。また、AST、ALT、γ−GTP等の肝機能検査値を測定し、これらの値のいずれかが所定値以上である場合や、超音波検査、CT検査、MRI検査、血管造影検査、肝シンチグラフィー等の画像検査において脂肪肝の所見が認められる場合にも、より効果的である。
なお、本発明の薬剤の投与の他に、肝水解物(プロヘパール)、UDCA(ウルソ)、小柴胡湯、グリチルリチン(グリチロン)、プロトポルフィリン(プロルモン)、ポリエンホスファチジルコリン(EPL)、タウリン等の薬剤の投与や、食事療法、運動療法等を組み合わせてもよい。
(5)魚油を含有する食品又は機能性食品
ヒト又はヒト以外の脊椎動物に対して魚油を含有する食品又は機能性食品を与えることは、炭水化物摂取により誘導された肝臓トリグリセリド濃度の上昇の低下、肝臓トリグリセリド濃度の上昇予防、又は脂肪肝の予防もしくは脂肪肝の治療を可能にする。
ここで、魚油を含有する食品又は機能性食品は、摂取するエネルギー所要量に対して低濃度の魚油を含有していればよく、例えば、摂取するエネルギー所要量に対し、平均して約10%の魚油を含有していればよいが、特に含有濃度が限定されることはない。なお、ここで使用する魚油は、どんな魚から得られたものでもよいが、DHAやEPA等の不飽和脂肪酸を多く含む魚から得られたものが好ましい。この時、本発明の食品又は機能性食品は、例えば、脂肪肝を有する患者用の食事(いわゆる脂肪肝食)等(食事キットを含む)に使用してもよい。
また、これらの食品又は機能性食品は、「炭水化物摂取により誘導された肝臓トリグリセリド濃度の上昇を低下させるために用いられるもの」、又は「炭水化物摂取により誘導された肝臓トリグリセリド濃度の上昇に起因する脂肪肝を治療するために用いられるもの」である旨の表示を付しておくことが好ましい。あるいは、「脂肪肝のリスクを低減する可能性がある」等、疾病リスク低減表示を行ってもよい。
魚油を含有する食品又は機能性食品が経口から摂取される場合は、固形状又は液状等の任意の形態で構わないが、経鼻投与する場合は、液状化されていることが好ましい。
なお、本発明の食品又は機能性食品の投与量は、年齢、体重、適応症又は投与・摂取経路によって異なるが、炭水化物摂取により誘導された肝臓トリグリセリド濃度の上昇を低下させる作用が発揮でき、肝臓トリグリセリド濃度に起因する脂肪肝を治療・予防でき、かつ、生じる副作用が許容し得る範囲内であれば特に限定されない。
このように、本発明の食品及び機能性食品は、ヒト又はヒト以外の脊椎動物に投与し、摂取させることによって、炭水化物摂取により誘導された肝臓トリグリセリドの濃度の上昇を低下させたり、肝臓トリグリセリド濃度の上昇を予防したり、あるいは炭水化物摂取により誘導された肝臓トリグリセリド濃度の上昇に起因する脂肪肝を予防したり治療したりすることができる。従って、本発明の食品及び機能性食品は、例えば、疾病用食品として、消化性潰瘍、急性膵炎、慢性膵炎、胆道系疾患等を有する患者に炭水化物食を摂取させるときに予防的に投与したり、炭水化物摂取により肝臓トリグリセリド濃度が上昇した場合に治療的に投与したりするのに有用である。
さらに、脂肪肝には自覚症状はないが、その病態の特徴から継続的に治療しなければならない疾患であるため、本発明のように食品又は機能性食品として日常的に魚油を摂取することができれば、脂肪肝を合併した患者に対するコンプライアンスはとても高くなる。
以下、実施例を用いて、以上に説明した実施態様を具体的に説明するが、これは例示であって、本発明をこの実施例に限定するものではない。
<実施例>
[1]動物及びその動物への食餌方法
本実施例において用いた動物実験は、独立行政法人国立健康・栄養研究所の動物委員会のガイドラインに従った。まず、6週齢ddY系統雄マウス(日本エスエルシー株式会社)に対して、代謝の状態を一定に保つために、実験動物用固形飼料(CE2、日本クレア株式会社)を1週間摂取させ、明暗サイクルを12時間とし、温度22℃にて飼育した。7週齢の時点で、これらのマウスを食餌の違いに基づいて6群に分けた。食餌は以下に示す。なお、これらの具体的な組成を表1に、また、1日あたりのエネルギー摂取量及びエネルギー比組成を図1A及び図1Bに示す。
[食餌の組成]
(1)St;スターチ・サフラワー油食(スターチ食)、水
(2)St+FO;スターチ・魚油食((1)のサフラワー油を魚油に変えたもの)、水
(3)Suc;スターチ・サフラワー油食、スクロース水(高ショ糖食)
(4)Suc+FO;スターチ・魚油食((3)のサフラワー油を魚油に変えたもの)、スクロース水
(5)HF;サフラワー油食(高脂肪食)、水
(6)HF+FO;サフラワー油・魚油食((5)のサフラワー油のエネルギー比10%分を魚油に置換したもの)、水
上記食餌(1)及び(3)において、炭水化物として、スターチ(1)又はスクロース水(3)を与えた。また、食餌(5)においては、サフラワー油の濃度を増加させ、脂肪の消費を促進するために、炭水化物としてスクロースを用いた。これらコントロールの食餌に対し、魚油の効果を見るために、サフラワー油全量を魚油に置換した(2)、(4)及びエネルギー比10%分のみを魚油に置換した(6)の飼料を作製した。
魚油又はサフラワー油の配合率は、食餌(1)〜(4)においては総エネルギー(一日摂取量:約18cal/匹/日)(図1A)比の10%とし(図1B)、食餌(5)及び(6)においては総エネルギー(一日摂取量:約22cal/匹/日)(図1A)比の60%とした(図1B)。なお、魚油は、マグロ由来の7%エイコサペンタエン酸(EPA,20:5n−3)及び23%ドコサヘキサエン酸(DHA,22:6n−3)を含有し、サフラワー油は、総脂肪酸に対して46%オレイン酸(18:1n−9)及び43%リノール酸(18:2n−6)を含有する。また、魚油(組成:DHA23%、EPA7%)は日本油脂(株)(品名:サンオメガDHA23)から、サフラワー油は紅花食品(株)から、スターチ(α−スターチ)、スクロース、セルロースパウダー、シスチン(L−シスチン)及びカゼインはオリエンタル酵母工業(株)から、ビタミン混合及びミネラル混合は日本クレア(株)からそれぞれ入手した。
まず、各群の5〜9匹のマウスに対して、上記(1)〜(6)の食餌を11週間自由に与えた。なお、水は自由に摂取させた。
[2]肝臓トリグリセリド濃度の測定
[1]に記載の(1)〜(6)の食餌を11週間与えた後、解剖によりマウスの肝臓組織を採取した。採取した肝臓組織を分割し、重量あたり10倍量のクロロホルム:メタノール(2:1)を加えて氷冷下でホモジナイズした。その後、Folchらの方法(Folch, J., Lees, Mm., and Sloane-Stanley, G. H. (1957) J. Biol. Chem. 226, 497-509)により、これらの内容物に含まれる脂質を抽出した。この抽出物に含まれるトリグリセリド量は、血清TG分析用キット(トグリセライドEテスト Wakoキット(和光純薬工業株式会社))を用いて測定した。その結果を図2に示す。なお、群間の有意差は、二元配置分散分析(two-way ANOVA)で検定した。
図2に示すように、スターチ食(食餌(1))に比べ、高ショ糖食(食餌(3))又は高脂肪食(食餌(5))を摂取させた群の肝臓トリグリセリド濃度は増加した。このように、高ショ糖食又は高脂肪食は、肝臓トリグリセリド濃度を増加させた。
一方、魚油を含有した高脂肪食(食餌(6))を摂取させた群では、高脂肪食(食餌(5))を摂取させた群と比較しても肝臓トリグリセリド濃度の変化はあまり認められなかったが、魚油を含有したスターチ食(食餌(2))又は高ショ糖食(食餌(4))を摂取させた群では、魚油を含有しないスターチ食(食餌(1))又は高ショ糖食(食餌(3))を摂取させた群より、肝臓トリグリセリド濃度が低かった。このように、炭水化物食を与えたマウスに対し、魚油は、肝臓トリグリセリド濃度を低下させた。
[3]組織学的検査
肝臓内の脂肪量を組織学的に観察するために、肝臓組織切片を作製し、この切片に対してオイルレッドO染色を行った。
マウスに[1]に記載の(1)〜(6)の食餌を11週間与えた後、屠殺し、各マウスの肝臓を摘出した。摘出した肝臓を4%パラホルムアルデヒドで固定し、4μmのパラフィン切片を作製した。脂肪滴を染色するために、この切片に対してオイルレッドO染色を行ない、顕微鏡で観察した。なお、オイルレッドO染色法は、当業者に公知の方法を用いて行なった。その結果を図3に示す。
図3に示されるように、魚油を含有していないスターチ食(食餌(1))、高ショ糖食(食餌(3))及び高脂肪食(食餌(5))に比べ、魚油を含有したスターチ食(食餌(2))、高ショ糖食(食餌(4))及び高脂肪食(食餌(6))を摂取させた群では、脂肪滴(図3の白色の箇所)は減少した。特に、魚油を含有した炭水化物食(飼料組成(2)及び(4))を摂取させた群では、コントロール(食餌(1)及び(3)を摂取させた群)に比べ、顕著に脂肪滴は減少した。このように、炭水化物食を与えたマウスに魚油を投与することにより、マウスの肝臓内の脂肪量を低下させた。
[4]遺伝子発現
SREBP−1c遺伝子及びPPARγ2遺伝子の発現は、肝臓の脂肪合成に関与していることが知られている(Am. J. Physiol Endocrinol Metab., Schadinger SE. et al, 288 (6), E1195-1205, Epub 2005 Jan 11 (2005 Jun), J Clin Invest., Shimano H., et al, 99 (5), 846-854 (1997 Mar 1))。ここでは、高脂肪食や炭水化物食を摂取させたマウスにおいて、これらの遺伝子及びこれらの標的遺伝子の発現の、肝臓内における変化を調べた。なお、SREBP−1cの標的遺伝子としてFAS(脂肪酸合成酵素)遺伝子、SCD1(ステアロイルCoA不飽和化酵素)遺伝子及びACC(アセチルCoAカルボキシラーゼ)遺伝子、PPARγ(PPARγ1及びPPARγ2)の標的遺伝子はCD36遺伝子、PPARαの標的遺伝子はACO(アシルCoAオキシダーゼ)遺伝子、CPTI(carnitine-palmitoyl-transferase 1)遺伝子、MCAD(medium chain acyl-CoA dehydrogenase)遺伝子及びTRB3(Tribble 3)遺伝子を用いた。
まず、[1]に記載の(1)〜(6)の食餌を11週間与えた後、解剖により各マウスの肝臓組織を採取した。次に、TRIzol試薬(インビトロジェン株式会社)を用いて、採取した肝臓組織から総RNAをそれぞれ抽出し、得られた総RNAの5μgから、ReverTra Ace(東洋紡株式会社)を用いてcDNAを合成した。cDNA20μlを1mlのトリス−EDTA緩衝液に希釈し、そのうち5μlを用いてSYBR Green PCR Master Mix(Applied Biosystems, Foster City, CA)を使用し、7500 Real-Time PCR SystemにてPCRを行なった。定量RT−PCRに用いたプライマーは、表2に示す通りである。なお、コントロールは、36B4(酸性リボゾーマルリン酸化タンパク質PO)mRNA量とした。
増幅産物量(X)は、式X=2−ΔCtを用いて計算した。(ここで、ある反応で得られた蛍光が閾値(Threshold)に達するときのサイクル数をCtとし、各遺伝子のCtと36B4遺伝子(コントロール)のCtとの比をΔCtとした時、各遺伝子のΔCtと36B4遺伝子のΔCtの比を算出し、ΔCtとした。)その結果を図4に示す。なお、群間の有意差は、二元配置分散分析(two-way ANOVA)で検定した。
このようにして肝臓組織においてSREBP−1c遺伝子、PPARγ遺伝子、PPARα遺伝子及びこれらの標的遺伝子の発現量を測定し、コントロールに対する発現量を計算したところ、魚油を含有したスターチ食(食餌(2))及び高ショ糖食(食餌(4))を摂取させると、SREBP−1c遺伝子、PPARγ2遺伝子、及びSREBP−1c遺伝子の標的遺伝子の発現量が有意に低下した(p<0.05)。一方、魚油を含有した高脂肪食(食餌(6))を摂取させても、SREBP−1c遺伝子、PPARγ1遺伝子、及びこれらの標的遺伝子の発現量の低下は認められなかった。また、魚油を含有した飼料(食餌(2)、(4)、(6))を摂取させても、PPARα遺伝子及びこの標的遺伝子の発現量の低下は、ほとんどの場合において認められなかった。
このように、炭水化物食を与えたマウスに魚油を摂取させることにより、SREBP−1c遺伝子及びPPARγ2遺伝子の発現が著しく抑制された。
(A)本発明の一実施例において、1マウスあたりにおける1日あたりのエネルギー摂取量(kcal)を示した図である。なお、Stはスターチ・サフラワー油食を、St+FOはスターチ・魚油食を、Sucはスターチ・スクロース・サフラワー油食を、Suc+FOはスターチ・スクロース・魚油食を、HFはサフラワー油食を、HF+FOはサフラワー油・魚油食を示す。(B)本発明の一実施例において、スターチ・サフラワー油食(St)、スターチ・魚油食(St+FO)、スターチ・スクロース・サフラワー油食(Suc)、スターチ・スクロース・魚油食(Suc+FO)、サフラワー油食(HF)、サフラワー油・魚油食(HF+FO)、のエネルギー比組成を示す図である。 本発明の一実施例において、スターチ・サフラワー油食(St;白色バー)、スターチ・魚油食(St;黒色バー)、スターチ・スクロース・サフラワー油食(Suc;白色バー)、スターチ・スクロース・魚油食(Suc;黒色バー)、サフラワー油食(HF;白色バー)、サフラワー油・魚油食(HF;黒色バー)を11週間摂取させたマウスの、肝臓内におけるトリグリセリド濃度を測定した結果を示す図である。 本発明の一実施例において、(1)スターチ・サフラワー油食、(2)スターチ・魚油食、(3)スターチ・スクロース・サフラワー油食、(4)スターチ・スクロース・魚油食、(5)サフラワー油食、(6)サフラワー油・魚油食を11週間摂取させたマウスの肝臓組織において、オイルレッドO染色を行った結果を示す図である。白色の箇所は、脂肪滴を表わす。 本発明の一実施例において、スターチ・サフラワー油食(St;白色バー)、スターチ・魚油食(St;黒色バー)、スターチ・スクロース・サフラワー油食(Suc;白色バー)、スターチ・スクロース・魚油食(Suc;黒色バー)、サフラワー油食(HF;白色バー)、サフラワー油・魚油食(HF;黒色バー)を11週間摂取させたマウスの肝臓組織において、SREBP−1c遺伝子、PPARγ遺伝子、PPARα遺伝子及びこれらの標的遺伝子の発現量を、定量RT−PCRで調べた結果を示す図である。

Claims (9)

  1. 炭水化物摂取により誘導された肝臓トリグリセリド濃度の上昇を低下させる剤であって、
    魚油を含有することを特徴とする肝臓トリグリセリド濃度低下剤。
  2. 前記魚油は、摂取するエネルギー所要量に対し、平均して約10%を占めることを特徴とする請求項1に記載の肝臓トリグリセリド濃度低下剤。
  3. 炭水化物摂取により誘導された肝臓トリグリセリド濃度の上昇に起因する疾患に対する予防・治療剤であって、
    魚油を含有することを特徴とする予防・治療剤。
  4. 前記疾患が、脂肪肝であることを特徴とする請求項3に記載の予防・治療剤。
  5. 前記魚油は、摂取するエネルギー所要量に対し、平均して約10%を占めることを特徴とする請求項3又は4に記載の予防・治療剤。
  6. 炭水化物摂取によって誘導された、肝臓におけるPPARγ2(peroxisome proliferator-activated receptor gamma 2)の発現を抑制する発現抑制剤であって、
    魚油を含有することを特徴とする肝臓PPARγ発現抑制剤。
  7. 前記魚油は、摂取するエネルギー所要量に対し、平均して約10%を占めることを特徴とする請求項6に記載の肝臓PPARγ発現抑制剤。
  8. 炭水化物摂取によって誘導された、肝臓におけるSREBP−1c(sterol regulatory element binding protein 1c)の発現を抑制する発現抑制剤であって、
    魚油を含有することを特徴とする肝臓SREBP−1c発現抑制剤。
  9. 前記魚油は、摂取するエネルギー所要量に対し、平均して約10%を占めることを特徴とする請求項8に記載の肝臓SREBP−1c発現抑制剤。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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JP2011116684A (ja) * 2009-12-02 2011-06-16 Yashima Shoji Kk アディポサイトカイン生産改善剤
CN104888174A (zh) * 2015-06-16 2015-09-09 刘玉芝 一种治疗脾胃虚寒型消化性溃疡的药物制剂及其制备方法
JP2016515608A (ja) * 2013-04-22 2016-05-30 カディラ・ヘルスケア・リミテッド 非アルコール性脂肪性肝疾患(nafld)のための新規組成物

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