JP2011116098A - 流体噴射装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】簡単な構成でクリーニング(フラッシング)動作を短時間で行うことが可能な流体噴射装置を提供する。
【解決手段】フラッシングモードになると、吸収部材12は走査方向Rに沿って一端側RSから他端側まで、一定の速度で途中停止することなく移動(走査)される。こうした吸収部材12の走査の途上で、図6(b)に示すように、吸収部材12がノズル列Lのうち、1列目のノズル列L(Bk)と重なる位置に達したと、検出機構からの位置情報に基づき検出されると、制御装置は1列目のノズル列L(Bk)が走査方向Rに沿って移動中の吸収部材12に対してフラッシング動作を行うよう制御する。吸収部材12は、1列目のノズル列L(Bk)から噴射(フラッシング)された流体(インク)を吸収する。
【選択図】図6

Description

本発明は、流体噴射装置に関し、詳しくは記録ヘッドのフラッシング動作に関する。
従来から、インク滴を記録紙(媒体)に対して噴射させる流体噴射装置として、インクジェット式プリンタ(以下、「プリンタ」という。)が広く知られている。このようなプリンタにおいては、記録ヘッドのノズルからインクが蒸発することによるインクの増粘や固化、塵埃の付着、さらには気泡の混入などによりノズルに目詰まりを生じ、印刷不良を引き起こすという問題があった。そこで、通常、プリンタは、記録紙に対しての噴射とは別に、ノズル内のインクを強制的に吐出させるフラッシング動作を行うようになっている。
走査タイプのプリンタでは、記録ヘッドを記録領域以外のエリアに移動させてフラッシング動作を行うが、記録ヘッドが固定されたラインヘッドを備えるプリンタでは、フラッシング動作時に記録ヘッドを移動させることができない。そこで、例えば、記録紙の搬送ベルトの表面に設けられた吸収部材に向けてインクを吐出する方法が考えられている(特許文献1)。
特開2005−119284号公報
しかしながら、特許文献1では、搬送ベルト上に複数の吸収材が記録紙のサイズに合わせて等間隔に配置されているため、フラッシング時においては記録紙間の隙間を狙ってインクを噴射しなければならず、記録紙のサイズや搬送速度に制約が生じてしまうという問題が生じる。また、平面形状の吸収材に対してフラッシングを行うと、インク滴の吐出に伴う風圧によってミスト状のインクが散ってしまい、記録紙や搬送ベルト上を汚してしまうおそれもある。
本発明にかかるいくつかの態様は、前記事情に鑑みてなされたものであり、簡単な構成でクリーニング(フラッシング)動作を短時間で行うことが可能な流体噴射装置を提供することを目的としている。
前記課題を解決するために、本発明のいくつかの態様は次のような流体噴射装置を提供した。
すなわち、本発明の流体噴射装置は、ノズルの配列方向と交差する方向に複数配列されるノズル列を備える流体噴射装置であって、
前記ノズル列に対して平行、または所定の角度で傾斜して張架される線状の吸収部材と、前記吸収部材及び前記ノズル列の少なくとも一方を前記ノズル列と交差する方向に相対移動させる第一移動手段と、前記第一移動手段による移動を行いながら、前記吸収部材と対向した前記ノズルから選択的に前記吸収部材に向けて流体を噴射させるフラッシング動作を行う制御手段と、を備えることを特徴とする。
前記吸収部材は前記ノズル列よりも数が少なければよい。
前記吸収部材に対向した前記ノズルを検知する検知手段と、をさらに備え、
前記制御手段は、前記検知手段を用いて予め作成された、それぞれのノズルの噴射タイミングを記憶した噴射タイミングデータを参照して、フラッシング動作時の各ノズルの噴射制御を行えばよい。
また、前記吸収部材に対向した前記ノズルを検知する検知手段と、をさらに備え、
前記制御手段は、フラッシング動作時において、前記吸収部材に対して順次対向していくノズルの位置情報を出力し、前記制御手段は、前記検知手段からリアルタイムに出力される前記位置情報に基づいて、前記吸収部材に対向した前記ノズルだけ選択的に流体を噴射させればよい。
前記吸収部材をその張架方向に沿って移動させる第二移動手段を備えるのが好ましい。
前記第二移動手段は、前記吸収部材を巻取り可能な回転体を備えるのが好ましい。
本発明の第1実施形態のプリンタ(流体噴射装置)の概略構成を示す斜視図である。 本発明の第1実施形態のプリンタが備えるヘッドユニットの下面側を示す斜視図である。 本発明の第1実施形態のプリンタが備えるヘッドユニット及びフラッシングユニットを下方から見上げた斜視図である。 本発明の第1実施形態のプリンタが備えるヘッドユニットとフラッシングユニットとを記録紙の搬送方向から見た模式図である。 本発明の第1実施形態のプリンタが備える吸収部材の一例を示す模式図である。 本発明の第1実施形態のプリンタにおけるフラッシング動作を説明するための説明図である。 本発明の第1実施形態のプリンタにおけるフラッシング動作を説明するための説明図である。 本発明の第1実施形態のプリンタにおけるフラッシング動作を説明するフローチャートである。 本発明の第1実施形態のプリンタにおける記録ヘッドの変形例を示す模式図である。 本発明の他の実施形態のプリンタにおけるフラッシング動作を説明するための説明図である。 本発明の他の実施形態のプリンタにおけるフラッシング動作を説明するフローチャートである。 本発明の他の実施形態のプリンタにおける流体吸収の検出方法の一例を説明する説明図である。 図12における電圧変化を示すグラフである。
以下、図面を参照して、本発明に係る流体噴射装置の一実施形態について説明する。なお、以下の図面においては、各部材を認識可能な大きさとするために、各部材の縮尺を適宜変更している。また、以下の説明においては、本発明の流体噴射装置の一例であるインクジェットプリンタ(以下、単にプリンタと称す)について説明する。
図1は、本実施形態のプリンタ1の概略構成を示す斜視図である。この図に示すように、本実施形態のプリンタ1は、ヘッドユニット2と、記録紙(媒体)を搬送する搬送装置3と、記録紙を供給する給紙ユニット4と、ヘッドユニット2によって印字された記録紙を排出する排紙ユニット5と、ヘッドユニット2に対してメンテナンス処理を行うメンテナンス装置10とを備えている。
搬送装置3は、ヘッドユニット2を構成する記録ヘッド21のノズル面23(図2参照)との間に所定の間隔をあけた状態で記録紙を保持するようになっている。搬送装置3は、駆動ローラー部31と、従動ローラー部32と、これらローラー部31,32との間に架け回された複数のベルトから構成された搬送ベルト部33とを備えている。また、搬送装置3の記録紙の搬送方向下流側(排紙ユニット5側)であって、排紙ユニット5との間に、記録紙を保持する保持部材34が設けられている。
駆動ローラー部31は、回転軸方向の一端側が不図示の駆動モータに接続されており、駆動モータにより回転駆動されるようになっている。駆動ローラー部31の回転動力が搬送ベルト部33に伝達され、搬送ベルト部33が回転駆動される。駆動ローラー部31と駆動モータとの間には必要に応じて伝達ギアが設置される。従動ローラー部32は、いわゆるフリーローラーであり、搬送ベルト部33を支持するとともに搬送ベルト部33(駆動ローラー部31)の回転駆動に従動して回転される。
排紙ユニット5は、排紙用ローラー51と、排紙用ローラー51により搬送された記録紙を保持する排紙トレー52とを備えている。
図2は、ヘッドユニット2の下面側を示す斜視図である。この図に示すように、ヘッドユニット2は、ライン状の記録ヘッド21(流体噴射ヘッド)と、この記録ヘッド21を支持する取付板22とを有している。
記録ヘッド21は、ヘッドユニット2の有効印字幅に亘って形成されており、インクを吐出する複数のノズル24を備えている。そして、同一種類(例えば、ブラックB、マゼンタM、イエローY、シアンC)のインクを吐出するノズル24が、記録ヘッド21の延在方向に配列され、1つのノズル列Lを構成している。つまり、本実施形態のプリンタ1は、インクを噴射する複数のノズル24からなるノズル列Lを有する記録ヘッド21を備えている。
より詳細には、記録ヘッド21は、4色(イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(Bk))に対応したノズル列(L(Y),L(M),L(C),L(Bk))を4列有している。各ノズル列(L(Y),L(M),L(C),L(Bk))において、当該ノズル列(L(Y),L(M),L(C),L(Bk))を構成するノズル24は、記録紙の搬送方向と交差する水平方向に配列され、より好適には記録紙の搬送方向と直交する水平方向に配列されている。
図2に示すように、ヘッドユニット2は、取付板22に形成された開口部25内に記録ヘッド21が配置されている。具体的には、記録ヘッド21が取付板22の裏面22b側に螺子止めされることで、ノズル面23が前記開口部25を介して取付板22の表面22a側から突出した状態に配置されている。また、ヘッドユニット2は、前記取付板22が不図示のキャリッジに固定され、これによって後述するメンテナンス位置まで移動可能に構成されている。
本実施形態におけるヘッドユニット2は、前記不図示のキャリッジによって記録位置とメンテナンス位置との間で移動可能とされている。ここで、記録位置とは、搬送装置3に対向し且つ記録紙に対して記録を行う位置である。一方、メンテナンス位置とは、搬送装置3上から退避した位置であってメンテナンス装置10が備えるキャップユニット6(図1参照)と対向する位置である。このメンテナンス位置においてヘッドユニット2に対するメンテナンス処理(吸引処理、ワイピング処理)が実施される。
再び図1を参照して、メンテナンス装置10は、ヘッドユニット2に対して吸引処理を行うキャップユニット6と、フラッシング動作により吐出されたインクを受けるためのフラッシングユニット11とを有して構成されている。
キャップユニット6は、前記ヘッドユニット2に対するキャッピングや吸引動作等のメンテナンス処理を行うもので、記録ヘッド21に対応するキャップ部61を有している。
このキャップユニット6は、ヘッドユニット2の記録エリアから外れた場所に配置されている。
キャップ部61は、記録ヘッド21のノズル面23に当接可能に構成されている。このキャップ部61が、記録ヘッド21のノズル面23に対してそれぞれ密着することにより、良好にキャッピングが可能になると共に、吸引動作においてノズル面23からインクを排出させる吸引動作を良好に行うことができるようになる。
また、キャップユニット6は、記録ヘッド21のノズル面23を払拭するワイピング処理時に用いられるワイプ部材63を有している。
図3は、ヘッドユニット2とフラッシングユニット11とを搬送装置3側から見た斜視図である。また、図4は、ヘッドユニット2とフラッシングユニット11とを記録紙の搬送方向から見た模式図である。
これら図3、4に示すように、フラッシングユニット11は、フラッシング動作時に吐出されたインクを吸収する吸収部材12と、この吸収部材12を支持する支持機構9とを備えている。
吸収部材12は、各ノズル24から吐出されたインクを吸収する線状部材であって、各色のノズル24が配列されて構成されるノズル列(L(Y),L(M),L(C),L(Bk))に沿って延在し、ノズル面23と記録紙の搬送領域との間に位置している。
そして、本実施形態のプリンタ1においては、上述の吸収部材12が、1本のみ設けられている。すなわち、吸収部材12は、ノズル列Lよりも数が少ない。
ここで、本実施形態のプリンタ1において、好適に用いることが可能な吸収部材12の具体的な構成について説明する。
吸収部材12は、例えば、SUS304、ナイロン、親水性コートを施したナイロン、アラミド、絹、綿、ポリエステル、超高分子量ポリエチレン、ポリアリレート、ザイロン(商品名)等の繊維、あるいはこれらの複数を含む複合繊維から形成することができる。
より詳細には、前記繊維あるいは複合繊維から形成される繊維束が、複数本、撚り合わされるあるいは束ねられることによって吸収部材12が形成可能である。
図5は、吸収部材12の一例を示す模式図であり、(a)が断面図、(b)が平面図である。この図に示すように、吸収部材12は、例えば、繊維から形成される繊維束12aが2本(複数)撚り合わされることによって形成される。図5に示すように、複数の繊維束12aを撚り合わすことによって吸収部材12が形成される場合には、繊維束12aの間に形成される谷部12bにおいてもインクを保持することが可能となり、吸収部材12のインク吸収量を増加させることができる。
また、一例としては、SUS304からなる繊維束が複数本撚り合わされた線状部材、ナイロンからなる繊維束が複数本撚り合わされた線状部材、親水性コートが施されたナイロンからなる繊維束が複数本撚り合わされた線状部材、アラミドからなる繊維束が複数本撚り合わされた線状部材、絹からなる繊維束が複数本撚り合わされた線状部材、綿からなる繊維束が複数本撚り合わされた線状部材、ベリーマ(商品名)からなる繊維束が束ねられた線状部材、ソアリオン(商品名)からなる繊維束が束ねられた線状部材、ハミロン03T(商品名)からなる繊維束が束ねられた線状部材、ダイニーマハミロンDB−8(商品名)からなる繊維束が束ねられた線状部材、ベクトランハミロンVB−30からなる繊維束が束ねられた線状部材、ハミロンS−5コアケブラースリーブポリエステル(商品名)からなる繊維束が束ねられた線状部材、ハミロンS−212コアカブラースリーブポリエステル(商品名)からなる繊維束が束ねられた線状部材、ハミロンSZ−10コアザイロンスリーブポリエステル(商品名)からなる繊維束が束ねられた線状部材、ハミロンVB−3ベクトラン(商品名)からなる繊維束が束ねられた線状部材を吸収部材12として好適に用いることができる。
ナイロンの繊維を用いた吸収部材12は、汎用水糸として広く用いられるナイロンによって形成されているため、安価なものとなる。
SUS材の金属繊維を用いた吸収部材12は、耐腐食性に優れるため多様なインクを吸収可能となると共に、樹脂と比較して磨耗性が高いため繰り返しの使用が可能となる。
超高分子ポリエチレンの繊維を用いた吸収部材12は、切断強度及び耐薬品性が高く、有機溶剤や酸、アルカリに強いものとなる。このように、超高分子ポリエチレンの繊維を用いた吸収部材12は、切断強度が高いため、強いテンションで引っ張ることが可能となり、撓みを抑止することができる。このため、例えば、吸収部材12の径を太くして吸収容量を増加させたり、また吸収部材12の径を太くしない場合には記録ヘッド21から記録紙の搬送領域までの距離を狭くし印刷精度を向上させることができる。また、ザイロンやアラミドの繊維を用いた吸収部材12も、超高分子ポリエチレンの繊維を用いた吸収部材12と同様の効果を期待できる。
綿の繊維を用いた吸収部材12は、インク吸収性に優れたものとなる。
このような吸収部材12では、滴下されたインクは、表面張力によって繊維間及び繊維束12a間に形成される谷部12b(図5参照)に保持されることによって吸収された状態となる。
また、吸収部材12の表面に滴下したインクは、一部が直接吸収部材12の内部に浸透し、残りが繊維束12a間に形成される谷部12bを伝う。そして、吸収部材12の内部に浸透したインクは、吸収部材12の内部において一部が徐々に吸収部材12の延在方向に移動し吸収部材12の延在方向に分散して保持される。吸収部材12の谷部12bを伝うインクは、谷部12bを伝いながら、徐々にその一部が吸収部材12の内部に浸透し、残りが谷部12bに残存し、これによって吸収部材12の延在方向に分散して保持される。つまり、吸収部材12の表面に滴下したインクは、全てが滴下された箇所に留まるわけではなく、滴下された箇所の周囲に分散して吸収される。
なお、実際にプリンタ1に設置する吸収部材12の形成材料は、吸インク性、保持インク性、引張強度、耐インク性、成形性(けばやほつれの発生量)、ねじれ性、コスト等を考慮して選択される。
また、吸収部材12のインク吸収量は、吸収部材12の繊維間に保持できるインク量と谷部12bに保持できるインク量の合計である。このため、このインク吸収量が、吸収部材12の交換頻度等を考慮して、フラッシングによって吐出されるインク量よりも十分に大きくなるように吸収部材12の形成材料を選ぶこととなる。
なお、吸収部材12の繊維間に保持できるインク量及び谷部12bに保持できるインク量は、インクと繊維との接触角、インクの表面張力に依存する繊維隙間における毛細管力によって規定することができる。つまり、細い繊維によって形成することで、繊維間の隙間を多くし全体として繊維の表面積を増加することによって、吸収部材12の断面積が同一であっても、吸収部材12は、より多量のインクを吸収可能となる。したがって、より繊維間の隙間を多く得るために、繊維束12aを形成する繊維として、マイクロファイバー(極細繊維)を用いるようにしても良い。
ただし、吸収部材12のインク保持力は、繊維間の隙間が大きくなって毛細管力が低下することによって低減する。このため、繊維間の隙間は、吸収部材12におけるインク保持力が吸収部材12の移動によってインクが垂れない程度に設定する必要がある。
また、吸収部材12の太さは、上述のインク吸収量を満足するように設定される。具体的には、例えば、吸収部材12の太さは、0.2〜1.0mmに設定され、より好適には0.5mm程度に設定する。
ただし、吸収部材12の太さは、記録ヘッド21及び記録紙への接触を防止すべく、その断面最大寸法が、記録ヘッド21から記録紙の搬送領域までの離間距離から吸収部材12の撓みに起因する変位量を除いた寸法以下となるように設定される。
また、この吸収部材12は、ノズル径に対して、例えば10〜50倍程度の幅を有している。本実施形態では、記録ヘッド21におけるノズル面23と記録紙との間のギャップが2mm程度、ノズル径が約0.02mmとなっていることから、吸収部材12は、直径が1mm以下であれば、ノズル面と記録紙との間に配置することができ、かつ直径が0.2mm以上であれば、部品の誤差を考慮しても吐出されたインクを吸収部材で捕捉することができる。
なお、吸収部材12の断面形状は、必ずしも円形である必要はなく、多角形等であっても良い。ここで、吸収部材は完全な円形に作るのは難しいので、円形とは略円形も含む。
また、吸収部材12の長さは、ヘッドユニット2の有効印字幅に対して十分な長さを有していることが好ましい。後に詳説するが、本実施形態のプリンタ1においては、吸収部材12の使用済み(インク吸収済み)の領域が順次巻き取られ、吸収部材12の全領域においてインクが吸収された場合に吸収部材12そのものを取り替える構成を採用している。このため、吸収部材12の取替え期間を実用に耐えうる時間とすべく、吸収部材12の長さは、ヘッドユニット2の有効印字幅の数百倍程度であることが好ましい。ただし、プリンタ1内において洗浄等を行うことにより吸収部材12の再生を行う場合には、吸収部材12の長さは、ヘッドユニット2の有効印字幅の2倍よりも若干程度長ければ良い。
こうした吸収部材12は、支持機構9によって、ノズル列Lの延長方向と平行に張架(支持)されている。
図3及び図4に示すように、支持機構9は、巻取り機構(第二移動手段)13及び移動機構(第一移動手段)14を備えている。
移動機構14(第一移動手段)は、吸収部材12をノズル列の延在方向と交差(本実施形態においては直交)する方向に移動させることにより、吸収部材12をノズル24に対向するフラッシング位置と対向しない退避位置との間で移動させる。また、巻取り機構13(第二移動手段)は、吸収部材12を巻き取ることにより、吸収部材12をノズル列の延在方向に沿って移動させる。
巻取り機構(第二移動手段)13は、図3及び図4に示すように、ノズル配列方向におけるヘッドユニット2の両側であって、取付板22の裏面22b側(記録ヘッド21のノズル面23と反対側)に各々の回転軸を記録紙の搬送方向に平行とされた回転部15,16を有している。回転部15,16は、後述するようにその一方(本実施形態では回転部15)が吸収部材12を巻き出すように構成されており、他方(本実施形態では回転部16)が吸収部材12を巻き取るように構成されている。したがって、巻取り機構13は、実際には「巻き出し」と「巻き取り」の両方の動作を組み合わせることで、前記したように吸収部材12を移動させるようになっている。これら回転部15,16は、プリンタ1の筐体内に設置される支持板17上に設置されている。
このような巻取り機構13及び移動機構14は、制御機構(制御手段)19によってその移動量や移動速度が適宜、制御される。また、制御機構19には、検出機構(検知手段)29が接続される。この検出機構29は、巻取り機構13の移動量を検出する装置、例えばリニアエンコーダ等からなり、後述するフラッシンク時に、吸収部材12が、ノズル列の延在方向と交差する方向においてどの位置にあるかをリアルタイムで検出し、その位置信号(位置情報)を制御機構19に送出する。
回転部15,16は、不図示の駆動モータに接続され、それぞれの回転によって前記した吸収部材12の巻き出し及び巻き取りを行うようになっている。本実施形態においては、一方の回転部15を巻出し用、他方の回転部16を巻取り用として用いている。そして、これらの回転部15,16は、着脱可能に構成されている。
移動機構14は、支持板17を支持すると共に当該支持板17を記録紙の搬送方向に移動させることによって回転部15,16ごと吸収部材12を記録紙の搬送方向(ノズル列の延在方向と直交する方向)に移動するものである。この移動機構14としては、例えば、リニアスライド装置を用いることができる。
なお、支持機構9は、支持板17の裏面(回転部15,16が設置される面と反対の面)に軸支されて固定される一対のプーリー20(20A,20B)を備える。
プーリー20(20A,20B)は、軸部20aに凸条部20bが螺旋状に巻回されてなる構造を有しており、各支持板17に対してそれぞれに設置されている。そして、軸部20aと凸条部20bとによって形成される案内溝内に吸収部材12が保持されるようになっている。ここで、このように凸条部20bが螺旋状に巻回されてなる構造のプーリー20A,20Bを用いた場合には、前記移動機構14として、支持板17を記録紙の搬送方向に移動させる構成に代えて、プーリー20A,20Bを回転させる構成を採用してもよい。すなわち、このようにプーリー20A,20Bを回転させることにより、吸収部材12は凸条部20bによって螺旋状に形成された溝内を、記録紙の搬送方向(ノズル列の延在方向と直交する方向)に送られるようになる。したがって、プーリー20A,20Bの回転数を制御することにより、吸収部材12を記録紙の搬送方向に、所望の距離、移動させることができるようになる。
なお、本実施形態では、プーリー20A,20B間に吸収部材12を一本しか張架していないので、これらプーリー20A,20Bについては、少なくとも一つの溝を形成したものであれば、前記の凸条部20bが螺旋状に巻回されてなる構造のものに代えて、使用することができる。もちろん、吸収部材12を複数本張架する場合にも、張架する吸収部材12の数と同じかそれ以上の数の溝を形成したものであれば、プーリー20A,20Bとして使用可能となる。
そして、プーリー20A,20Bは、図3及び図4に示すように、軸支部18を介して支持板17に設置されおり、ノズル配列方向におけるヘッドユニット2の両側であって、取付板22の表面22a(記録ヘッド21のノズル面23)側に配置されている。巻取り機構13の回転部15と回転部16とに巻架されている吸収部材12は、プーリー20A,20Bに架け渡されている。そして、ノズル面23と垂直方向において案内溝の端部は、ノズル面23に対してノズル面23より離れる方向にある。そのため、プーリー20A,20Bに架け渡された吸収部材12は、記録ヘッド21のノズル面23に接触させることなく保持される。すなわち、プーリー20A,20Bは、記録ヘッド21のノズル面23と吸収部材12との間の距離を一定に保つ、位置決め部材としても機能するようになっている。
なお、プーリー20A,20Bを設けることなく、これらプーリー20A,20Bの位置に直接回転部15,16を配置すると、吸収部材12は回転部15,16間を移動するに連れて、ノズル面23に対する位置がずれてしまい、好ましくない。すなわち、回転部15から巻き出されるとともに回転部16に巻き取られる吸収部材12は、回転部15,16間を移動するに連れて、その巻き出される位置や巻き取られる位置が、回転部15(16)上にて、それぞれの軸の長さ方向においても、軸と直交する方向(厚さ方向)においても変化する。すると、このように巻き出される位置や巻き取られる位置が変化することにより、結果として吸収部材12は、ノズル面23に対する水平方向での位置や垂直方向での位置が共にずれてしまう。
そして、支持機構9は、不図示の制御装置において回転部15,16の回転速度をそれぞれ制御することによって、吸収部材12を撓ませることなく適度にテンションを与えた状態で保持する。これにより、吸収部材12が撓んで、ノズル面23や記録紙に接触することを防止する。
このような支持機構9においては、吸収部材12を、支持板17上に配置された回転部15,16と、取付板22の表面22a側に配置されたプーリー20A,20Bとにより支持することで、回転部15から巻き出された吸収部材12が記録ヘッド21のノズル面23と対向する位置(ノズル面23と搬送ベルト33との間)を経由して、回転部16において巻き取られるようになっている。このため吸収部材12は、回転部15,16の回転に伴い、ヘッドユニット2の各ノズル列Lの延在方向、すなわち記録紙の搬送方向に交差する方向へ移動されることになる。
また、移動機構14によって支持板17が記録紙の搬送方向に移動することによって、ヘッドユニット2(ノズル列L)に対する吸収部材12の位置を変化させることが可能である。具体的には、本実施形態においては、図3に示すようにノズル列Lの延在方向と交差する方向(以下、吸収部材12の走査方向Rと称することがある)に向けて、走査方向Rにおける記録ヘッド21の一端側RSと他端側REとの間で、吸収部材12がノズル面23に対して所定の間隔を保って一定の速度で走査(移動)される。これによって、吸収部材12は、1回の走査で全てのノズル列Lに対して順次対向する。
なお、フラッシング位置とは、図6(b)〜(d)、図7(a)に示すように、吸収部材12が各ノズル列L(ノズル列Lを構成する複数のノズル24)に対向した(ノズル面23に垂直方向で重なった)状態であって、フラッシング動作時に直上のノズル列Lから吐出されたインクを吸収部材12によって吸収できる位置(インクの飛行経路上の位置)である。一方、吸収部材12における退避位置とは、フラッシング位置以外の位置、即ち、吸収部材12が各ノズル列Lに対向する位置から外れた位置である。なお、ここでノズル列Lと吸収部材12とが対向するとは、必ずしもノズル24の中心と吸収部材12の中心とが平面視した状態で重なることのみを意味するのではなく、平面視した状態で吸収部材12の幅の中にノズル24が位置する状態のことを言う。このような状態であれば、ノズル24から吐出されたインクを吸収部材12は吸収することができる。
移動機構14によって支持板17が移動されてプーリー20が移動することで、図6及び図7に示すように、吸収部材12は、吸収部材12の走査方向Rに沿って、一回の走査で記録ヘッド21の一端側RSから他端側REまで、フラッシング位置と退避位置とを交互に繰り返しながら、一定の速度で途中停止せずに移動する。
このような本実施形態のプリンタ1においては、全ての動作が制御装置19によって統括され、フラッシング時には、吸収部材12が走査方向Rの一端側RSから他端側REに向けて、一定速度で移動(走査)する。そして、検出機構29が吸収部材12の走査方向Rにおける位置を常に制御装置19に向けて出力し、吸収部材12に対して対向したノズル列Lに対して、フラッシング動作を行うように制御する。
図8は、こうしたフラッシング動作時の制御の流れを示すフローチャートである。
例えば、図6(a)に示すように、フラッシング工程以外の時は、吸収部材12は走査方向Rにおける一端側RS(退避位置)に退避している。そして、フラッシングモードになると、吸収部材12は走査方向Rに沿って一端側RSから他端側RE(図7(b)参照)まで、一定の速度で途中停止することなく移動(走査)される(図8:S1)。こうした吸収部材12の走査の途上で、図6(b)に示すように、吸収部材12がノズル列Lのうち、1列目のノズル列L(Bk)と重なる位置に達したと、検出機構29からの位置情報に基づき検出されると(図8:S2)、制御装置19は1列目のノズル列L(Bk)が走査方向Rに沿って移動中の吸収部材12に対してフラッシング動作を行うよう制御する(図8:S3)。吸収部材12は、1列目のノズル列L(Bk)から噴射(フラッシング)された流体(インク)を吸収する。
次に、吸収部材12が走査の途上で、図6(c)に示すように、吸収部材12がノズル列Lのうち、2列目のノズル列L(C)と重なる位置に達したと、検出機構29によって検出されると(図8:S2)、制御装置19は2列目のノズル列L(C)が移動中の吸収部材12に対してフラッシング動作を行うよう制御する(図8:S3)。吸収部材12は、2列目のノズル列L(C)から噴射(フラッシング)された流体(インク)を吸収する。
更に吸収部材12が移動して、図6(d)に示すように、吸収部材12がノズル列Lのうち、3列目のノズル列L(M)と重なる位置に達したと、検出機構29によって検出されると、制御装置19は3列目のノズル列L(M)が移動中の吸収部材12に対してフラッシング動作を行うよう制御する。吸収部材12は、3列目のノズル列L(M)から噴射(フラッシング)された流体(インク)を吸収する。
そして、吸収部材12が図7(a)に示すように、吸収部材12がノズル列Lのうち、4列目のノズル列L(Y)と重なる位置に達したと、検出機構29によって検出されると、制御装置19は4列目のノズル列L(Y)が移動中の吸収部材12に対してフラッシング動作を行うよう制御する。吸収部材12は、4列目のノズル列L(Y)から噴射(フラッシング)された流体(インク)を吸収する。その後、吸収部材12は図7(b)に示す走査方向Rにおける他端側REである退避位置に達すると(図8:S4)、吸収部材12が停止する(図8:S5)。
なお、こうしたフラッシング時における吸収部材12の走査において、吸収部材12を走査方向Rに移動させつつ、巻取り機構13を駆動して、吸収部材12をその張架方向(本実施形態ではノズル列Lに沿った方向)に向けて移動させることにより、吸収部材12における流体(インク)を吸収した部分の巻き取り動作を行う。これにより、ノズル列(Bk),(C),(M),(Y)から吐出されたインクは、吸収部材12のインクを含まない新しい部分に常に吐出されることになるので吸収部材12内にすばやく吸収される。
巻取り機構13における吸収部材12の巻取り速度は、インクの吐出量に応じて調整し、吐出量が多いときには吸収部材12が飽和しないように巻取り速度を高めて、インクの吸収漏れが生じないように高速で巻き取るようにすることが好ましい。
また、巻取り機構13によって吸収部材12を巻き取ることによって、吸収部材12の全領域でインクを受けることが可能となり、より長時間、吸収部材12を交換することなく、使用することが可能となる。
一方、ノズル径に対して吸収部材12の断面最大寸法を十分に大きく確保できる場合には、吸収部材12のインク吸収量が大きくなる。このため、フラッシング動作を行いながら吸収部材12の巻取り動作を行わなくても良い。この場合、吸収部材12を一端側RSから他端側REまで1回の移動(走査)を終えた後に、巻取り機構13を駆動して、吸収部材12をその張架方向に向けて移動させることにより、吸収部材12における流体(インク)を吸収した部分の巻き取り動作を行うことも好ましい。これにより、吸収部材12の使用量を少なくすることが可能になる。
こうしたフラッシング動作は、例えば、搬送装置3による記録紙の搬送を続けながら、記録紙と記録紙との間に行うことが好ましい。これによって、フラッシング動作の時間を特に設けることなく、連続して複数枚の記録紙にプリントを続けつつ、フラッシングも行うことができる。
また、各ノズル列Lにおけるフラッシング頻度が同じであることが好ましい。このために、各ノズル列L1〜L4のそれぞれの直下を吸収部材12が通過する時間の差が最小限(好ましくはゼロ)となることが好ましい。即ち、吸収部材12の走査時における移動速度を一定に保つことが好ましい。
なお、フラッシング時における吸収部材12の走査は、例えば、1回目のフラッシング工程で吸収部材12を走査方向Rの一端側RSから他端側REに向けて一定速度で移動(走査)させ、2回目のフラッシング工程で吸収部材12を他端側REから一端側RSに向けて一定速度で移動(走査)させればよい。
また、これ以外にも、1回目のフラッシング工程でノズル列(Bk),(C)だけをフラッシングさせ、2回目のフラッシング工程でノズル列(M),(Y)をフラッシングさせるなど、吸収部材12を移動(走査)させながらフラッシングを行う形態であれば、吸収部材12をノズル列Lに対してどのように移動(走査)させてもよい。
以上のように、本実施形態のプリンタ1においては、吸収部材12をノズル列Lの延在方向と交差する方向(走査方向R)に沿って所定の速度で移動(走査)させつつ、吸収部材12と重なった位置にあるノズル列Lを順次フラッシングさせることによって、フラッシング時に吸収部材をノズル列Lと重なる位置まで移動させた後、吸収部材をその都度停止させてからフラッシングを行う方法と比較して、ノズル列ごとに移動、停止を繰り返す複雑な制御を行わずに、全てのノズル列のフラッシングを短時間で完了させることが可能になる。
また、本願のような細い吸収部材12を移動して停止した場合、吸収部材12は大きく振動し、特に吸収部材12の中央付近ではノズル列Lとの対向する位置から外れる部分が出てくる。吸収部材12が振動してる状態でフラッシングを行うと、吐出されたインクが吸収部材に接触しない場合が出てくるので、他の部分を汚染してしまう可能性がある。もしくは、振動が収まるまで待機する必要があり、移動、停止を繰り返すのに加えてさらに時間と費やすことになる。本願のように吸収部材12を移動させながらフラッシングすることで、吸収部材12の振動を抑え、他の部位にインクが付着することや、振動が収まるまでの時間を待つことがなくなる。
このため、フラッシング動作を、例えば、搬送装置3による記録紙の搬送を続けながら、記録紙と記録紙との間に行うことも可能になり、フラッシング動作の時間を特に設けることなく、連続して複数枚の記録紙にプリントを続けつつ、フラッシングも行うことができ、効率的にプリンタを活用することができる。
また、吸収部材12を移動させることによって、走査方向Rに沿って移動させることにより、吸収部材12をノズル列Lよりも少ない本数、例えば1本の吸収部材12で全てのノズル列Lのフラッシングを行うことができ、吸収部材12を記録ヘッド21と記録紙8の搬送領域との間に配置した場合であっても、ノズル列Lの数と同じだけの吸収部材12を用いる場合と比較して、記録紙8と吸収部材12の端部との接触によるジャム(紙詰まり)の発生を抑制することができる。
また、本実施形態のプリンタ1によれば、ノズル列Lの数と同じだけの吸収部材12を用いる場合よりもメンテナンス対象となる吸収部材12の数が少なくなるため、吸収部材12を退避させておくスペースを縮小できる。
また、本実施形態のプリンタ1において巻取り機構13が、吸収部材12を巻取り可能でかつ着脱可能な回転部15,16を備える。このため、吸収部材12が巻回された回転部15,16を交換することによって、容易に吸収部材12の交換を行うことが可能となる。
以上、添付図面を参照しながら本発明に係る好適な実施形態について説明したが、本発明は係る例に限定されないことは言うまでもなく、前記各実施形態を組み合わせても良い。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
例えば、前記実施形態においては、単一のラインヘッドを記録ヘッド21として備える構成について説明した。しかしながら、本発明はこれに限定されるものではなく、複数のヘッドを有効印字幅に亘って配列しても良い。この際、図9に示すように、複数のヘッド21aは、一直線に配列する必要はなく、全体として千鳥配置となるように配列しても良い。
このように複数のヘッド21aを千鳥配置する場合には、ノズル列の配列方向(記録紙の搬送方向)において同一の位置に複数のノズル列が配置されることとなるが、フラッシング動作の際には、これらのノズル列の配列方向において同一の位置に配置される複数のノズル列を1つのノズル列とすることによって、前記実施形態と同様の制御でフラッシング動作を行うことができる。
また、前記実施形態のプリンタに吸収部材12の洗浄を行うクリーニング機構を設けてもよい。この場合、吸収部材12の移動方向下流側(プーリー20Bよりも下流側)に配置することにより、インクを吸収した吸収部材12を洗浄するなどクリーニング処理を実施できる。回転部16には、洗浄後の再利用可能な吸収部材12が巻き取られることになり、例えば回転部15,16を逆方向に回転させることで再びフラッシング動作を実施することが可能になる。
また、前記実施形態においては、吸収部材12がノズル列に平行に沿う構成について説明した。しかしながら、本発明はこれに限定されるものではなく、必ずしも吸収部材12の延在方向とノズル列の延在方向とが完全に平行となるようにする必要はない。つまり、本発明において、ノズル列に沿って延在するとは、ノズル列と完全に平行となる状態のみに限定されるものではなく、ノズル列の延在方向に延長した延長線と吸収部材の延在方向に延長した延長線とが先の領域において交差する場合も含む意味である。
以下、図10に、こうしたノズル列に対して所定の角度で傾斜して張架されたプリンタにおけるフラッシングユニットの構成と動作を段階的に示す。なお、図1に示した実施形態のプリンタと同様の構成については、その説明を略す。
また、図11に、この実施形態におけるフラッシング時の動作のフローチャートを示す。
図10に示すプリンタのフラッシングユニット71は、フラッシング動作時に吐出されたインクを吸収する線状の吸収部材72と、この吸収部材72を支持する支持機構73とを備えている。また、記録ヘッド81には、各色のノズル74が配列されて構成されるノズル列(L(Y),L(M),L(C),L(Bk))が形成されている。
吸収部材72は、ノズル列Lの延在方向における記録ヘッド81の両側にそれぞれ設けられたプーリー80A,80Bの軸部80aと凸条部80bとによって形成される案内溝内に保持される。そして、吸収部材72は、ノズル列Lの延在方向に対して、所定の角度で傾斜した張架方向Qに沿って、プーリー80Aとプーリ80Bとの間で張架されている。また、プーリー80Aとプーリ80Bは、吸収部材72をノズル列の延在方向と交差する方向Rに移動させる移動機構75(第一移動手段)を構成している。
こうした構成のプリンタは、フラッシング動作に移行するのに先立って、まず、方向Rに沿って移動する吸収部材72と、移動に伴ってこの吸収部材72と順次重なるノズル74(ノズル74の流体噴射方向に重なる吸収部材72)との対応関係を記録する。この吸収部材の移動に伴う全てのノズルの噴射タイミングを記憶したフラッシングパターン(噴射タイミングデータ)を参照して、フラッシング動作時の各ノズル74の噴射制御を行う。
フラッシングパターン(噴射タイミングデータ)を作成する手順としては、まず、吸収部材72を記録ヘッド81のノズル列の延在方向と交差する方向Rにおける一端側から他端側まで、一定の速度で途中停止せずに移動させる(図11:S1,S4)。これと同時に全てのノズル74のフラッシングを行い、吸収部材72の位置とその時に吸収した流体(インク)を噴射したノズルとの対応を表すフラッシングパターンを記録する。
ある特定のノズルから噴射された流体が、吸収部材72に吸収された、即ちある特定のノズルが定速で移動中の吸収部材72と重なったタイミングを検出する方法としては、例えば、静電誘導によって生じる誘導電圧を検知する方法が挙げられる。
図12は、こうした静電誘導によって生じる誘導電圧を利用して、吸収部材72に流体が吸収されたことを検知する手法を示す説明図である。即ち、図12(a)は流体(インク滴D)が吐出された直後の状態を示し、図12(b)はインク滴Dが吸収部材72に着弾(吸収)された状態を示している。
例えば、繊維状の基材77に細い電線などの導電体79を織り込んだもので吸収部材72を構成する。あるノズル74からインク滴Dを吐出させると、負極に帯電させたノズル74の一部の負電荷がインク滴Dに移動し、吐出されたインク滴Dは負に帯電する。そして、このインク滴Dが吸収部材72に織り込まれた導電体79に対して近づくにつれ、静電誘導によって導電体79の表面78では正電荷が増加する。
これにより、図13に示すようにノズル74と導電体79との間の電圧は、静電誘導によって生じる誘導電圧により、インク滴Dを吐出しない状態における当初の電圧値よりも高くなる(図13中の領域a)。
その後、図12(b)に示すように、インク滴Dが吸収部材72に着弾すると、インク滴Dの負電荷により導電体79の正電荷が中和される。このため、ノズル74と導電体79との間の電圧は当初の電圧値を下回る(図13中の領域b)。
そして、その後に、ノズル74と導電体79との間の電圧は当初の電圧値に戻る。したがって、図13に示すように、インク滴センサ7から出力される検出波形は、一旦電圧が上昇した後に、当初の電圧値を下回るまで下降し、その後当初の電圧値に戻る波形となる。
このような波形の変化を電圧センサーで検出することにより(図11:S2)、各ノズル74から吐出したインク滴Dが吸収部材72に着弾(吸収)されたか、即ちある特定のノズルが定速で移動中の吸収部材72と重なったタイミングを検知することができる。
そして、このノズル74に対応する吸収部材72の方向Rにおける位置を参照する(図11:S3)。
以上の手順で記録ヘッド81の全てのノズル74について、吸収部材72と重なるタイミングを記録したフラッシングパターン(噴射タイミングデータ)を作成記録する。
次に、こうしたフラッシングユニット71を用いたフラッシング時には、まず最初に上述した工程で作成したフラッシングパターン(噴射タイミングデータ)を読込む(図11:S5)。
次に、図10(a)に示すように、ノズル列Lの延在方向に対して所定の角度で傾斜して張架された吸収部材72を走査方向Rに沿って一端側から他端側まで、一定の速度で途中停止することなく移動(走査)させる(図11:S6)。こうした吸収部材12の走査を行いつつ、読み込んだフラッシングパターンを常に参照し、吸収部材72と重なる位置にあるノズルLvを順次フラッシングさせ(図11:S7)、ノズルLvから噴射された流体(インク滴)を吸収部材72で吸収していく(図10(b)〜(d))。
そして、吸収部材72が走査方向Rにおける他端側である退避位置に達すると(図11:S8)、吸収部材12が停止する(図11:S9)。
このように、吸収部材72をノズル列Lの延在方向に対して所定の角度で傾斜して張架することによって、記録紙8と吸収部材12の端部との接触によるジャム(紙詰まり)の発生を抑制することができる。
また、予め、吸収部材の移動に伴う全てのノズルの噴射タイミングを記憶したフラッシングパターン(噴射タイミングデータ)を記録し、フラッシング動作時に参照して各ノズル74の噴射制御を行うことにより、ノズル列の配列の変更など、多様な記録ヘッドのノズル配列にも柔軟に対応することができる。
以上、前記各実施形態においては、ラインヘッド方式のプリンタに適用した構成について説明した。しかしながら、本発明は、これに限定されるものではなく、シリアル方式のプリンタに適用することもできる。
また、前記各実施形態においては、吸収部材が常に記録ヘッドの直下(ノズル面と対向する位置)を移動する構成について説明した。しかしながら、本発明は、これに限定されるものではなく、吸収部材を退避させる際に、記録ヘッドの直下から外れた領域(例えば、記録ヘッドの側方)に移動させる構成を採用することもできる。もしくは、吸収部材を、記録ヘッドに対して搬送ベルト33等の搬送経路より離れた側に移動してもよい。これらにより、吸収部材と記録媒体が接触することがなく、吸収したインクにより記録媒体が汚染することを防ぐことが出来る。なお、吸収部材を搬送経路と記録ヘッドとの間に位置させる場合には、巻取り機構13によってインクを吸収していない部分が位置するようにすると、記録媒体の汚染を防ぐことができる。
また、前記各実施形態においては、吸収部材を移動することによって、吸収部材と記録ヘッドの位置関係を変化する構成を採用した。しかしながら、本発明はこれに限定されるものではなく、記録ヘッドを移動することによって、吸収部材と記録ヘッドの位置関係を変化する構成を採用しても良いし、記録ヘッドと吸収部材の両方を移動しても良い。ただし、記録ヘッドと吸収部材の両方を移動する場合には、これらが相対的に移動するよう、それぞれの移動方向又は移動速度を変えるのはもちろんである。
前記各実施形態では、インクジェット式のプリンタが採用されているが、インク以外の他の流体を噴射したり吐出したりする流体噴射装置と、その流体を収容した流体容器を採用しても良い。微小量の液滴を吐出させる流体噴射ヘッド等を備える各種の流体噴射装置に流用可能である。なお、液滴とは、前記流体噴射装置から吐出される流体の状態をいい、粒状、涙状、糸状に尾を引くものも含むものとする。また、ここでいう流体とは、流体噴射装置が噴射させることができるような材料であれ良い。
例えば、物質が液相であるときの状態のものであれば良く、粘性の高い又は低い液状態、ゾル、ゲル水、その他の無機溶剤、有機溶剤、溶液、液状樹脂、液状金属(金属融液)のような流状態、また物質の一状態としての流体のみならず、顔料や金属粒子などの固形物からなる機能材料の粒子が溶媒に溶解、分散または混合されたものなどを含む。また、流体の代表的な例としては前記実施例の形態で説明したようなインクや液晶等が挙げられる。ここで、インクとは一般的な水性インクおよび油性インク並びにジェルインク、ホットメルトインク等の各種流体組成物を包含するものとする。
流体噴射装置の具体例としては、例えば液晶ディスプレイ、EL(エレクトロルミネッセンス)ディスプレイ、面発光ディスプレイ、カラーフィルタの製造などに用いられる電極材や色材などの材料を分散または溶解のかたちで含む流体を噴射する流体噴射装置、バイオチップ製造に用いられる生体有機物を噴射する流体噴射装置、精密ピペットとして用いられ試料となる流体を噴射する流体噴射装置、捺染装置やマイクロディスペンサ等であってもよい。
さらに、時計やカメラ等の精密機械にピンポイントで潤滑油を噴射する流体噴射装置、光通信素子等に用いられる微小半球レンズ(光学レンズ)などを形成するために紫外線硬化樹脂等の透明樹脂液を基板上に噴射する流体噴射装置、基板などをエッチングするために酸又はアルカリ等のエッチング液を噴射する流体噴射装置を採用しても良い。そして、これらのうちいずれか一種の噴射装置および流体容器に本発明を適用することができる。
1 プリンタ、2 ヘッドユニット、3 搬送装置、4 給紙ユニット、5 排紙ユニット、6 キャップユニット、8 記録紙(媒体)、9 支持機構、L ノズル列、10 メンテナンス装置、11 フラッシングユニット、12 吸収部材、12a 繊維束、12b 谷部、13 巻取り機構(第二移動手段)、14 移動機構(第一移動手段)、15 回転部、16 回転部、17 支持板、18 軸支部、19 制御機構(制御手段)、20 プーリー、20A プーリー、20B プーリー、20a 軸部、20b 凸条部、21 記録ヘッド(流体噴射ヘッド)、21a 記録ヘッド(流体噴射ヘッド)、22 取付板、22a 表面、22b 裏面、23 ノズル面、24 ノズル、25 開口部、19 検出機構(検知手段)、31 駆動ローラー部、32 従動ローラー部、33 搬送ベルト部、34 保持部材、51 排紙用ローラー、52 排紙トレー、61 キャップ部、63 ワイプ部材。

Claims (6)

  1. ノズルの配列方向と交差する方向に複数配列されるノズル列を備える流体噴射装置であって、
    前記ノズル列に対して平行、または所定の角度で傾斜して張架される線状の吸収部材と、
    前記吸収部材及び前記ノズル列の少なくとも一方を前記ノズル列と交差する方向に相対移動させる第一移動手段と、
    前記第一移動手段による移動を行いながら、前記吸収部材と対向した前記ノズルから選択的に前記吸収部材に向けて流体を噴射させるフラッシング動作を行う制御手段と、 を備えることを特徴とする流体噴射装置。
  2. 前記吸収部材は前記ノズル列よりも数が少ないことを特徴とする請求項1記載の流体噴射装置。
  3. 前記吸収部材に対向した前記ノズルを検知する検知手段と、をさらに備え、
    前記制御手段は、前記検知手段を用いて予め作成された、それぞれのノズルの噴射タイミングを記憶した噴射タイミングデータを参照して、フラッシング動作時の各ノズルの噴射制御を行うことを特徴とする請求項1または2に記載の流体噴射装置。
  4. 前記吸収部材に対向した前記ノズルを検知する検知手段と、をさらに備え、
    前記制御手段は、フラッシング動作時において、前記吸収部材に対して順次対向していくノズルの位置情報を出力し、前記制御手段は、前記検知手段からリアルタイムに出力される前記位置情報に基づいて、前記吸収部材に対向した前記ノズルだけ選択的に流体を噴射させることを特徴とする請求項1または2に記載の流体噴射装置。
  5. 前記吸収部材をその張架方向に沿って移動させる第二移動手段を備えることを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1項に記載の流体噴射装置。
  6. 前記第二移動手段は、前記吸収部材を巻取り可能な回転体を備えることを特徴とする請求項1ないし5のいずれか1項に記載の流体噴射装置。
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