以下に、上記低温駆動時間に対する接触燃焼式ガスセンサの出力の関係について、図8〜図15を参照して説明する。
接触燃焼式ガスセンサは、検出対象ガスと感応する感応素子を備えている。そして、この感応素子の温度が、検出対象ガスが燃焼しない低温(吸着燃焼式の場合は、検出対象ガスが吸着する低温)、及び、検出対象ガスが燃焼する高温、になるように、接触燃焼式ガスセンサの駆動制御(即ち、通電や電圧供給)が行われる。このような駆動制御によって、感応素子の温度が上記高温にされると、感応素子が備える触媒による反応によって、検出対象ガスが燃焼する。そして、この検出対象ガスの燃焼熱で白金コイル(白金ヒータ)の抵抗値が変化して、この変化量に基づきガス濃度やガス種を検出する。
このような接触燃焼式ガスセンサは、検出対象ガスの燃焼に際し、感応素子表面にカーボンやシリコンなどの被毒物質が付着、堆積することが一般的に知られている。そして、接触燃焼式ガスセンサは、温度変化に対する応答特性を向上させるために、熱容量が小さくなるように非常に微小に形成されているが、上記被毒物質の付着量(即ち、被毒量)に応じて熱容量が大きくなり、応答特性が悪化してしまう。
ところで、接触燃焼式ガスセンサを吸着燃焼式ガスセンサとして使用した場合においては、時間差吸着方式という制御方式を用いてガス検出が行われることがある。この時間差吸着方式では、図8に示すように、(1)感応素子の温度が上記低温となる低温駆動電圧を、該感応素子に検出対象ガスが吸着する吸着時間b1にわたって供給し、続いて、感応素子の温度が上記高温となる高温駆動電圧を、該感応素子に吸着した検出対象ガスが燃焼する吸着燃焼時間B1にわたって供給し、(2)このときの吸着燃焼時間B1における吸着燃焼式ガスセンサの出力の積分値(吸着燃焼積分値Sb)を計測し、(3)続いて、上記低温駆動電圧を、該感応素子に検出対象ガスが吸着しない非吸着時間a1(低温駆動時間に相当、非吸着時間a1は吸着時間b1より短い)にわたって供給し、続いて、上記高温駆動電圧を、該感応素子に所定の接触燃焼時間A1(吸着燃焼時間B1と同じ長さ)にわたって供給し、(4)このときの接触燃焼時間A1における吸着燃焼式ガスセンサの出力の積分値(接触燃焼積分値Sa)を計測し、(5)吸着燃焼積分値Sbから接触燃焼積分値Saを差し引いた値をガス検出値(吸着ピーク積分値S)として算出して、(6)このガス検出値である吸着ピーク積分値Sと、予備計測などによって予め取得した吸着ピーク積分値Sと検出対象ガスの濃度との関係情報と、に基づいて、検出対象ガスの濃度を求める。なお、感応素子に検出対象ガスが吸着するためには、相応の時間が必要である。そして、上述した感応素子に検出対象ガスが吸着する吸着時間とは、感応素子に検出対象ガスが吸着するのに十分な長さの時間のことであり、また、感応素子に検出対象ガスが吸着しない非吸着時間とは、上記吸着時間に満たない、感応素子に検出対象ガスが吸着するのに不十分な長さの時間のことである。
このように、時間差吸着方式は、検出対象ガスを吸着させたときの吸着燃焼出力(吸着燃焼積分値Sb)から検出対象ガスを吸着させないときの接触燃焼出力(接触燃焼積分値Sa)を差し引くので、吸着した検出対象ガスに係るピーク出力のみをとりだすことができ、そのため、検出対象ガスの吸着燃焼に係る特徴をより明確に得ることができる。図9に、吸着燃焼時間B1における吸着燃焼式ガスセンサの出力(吸着燃焼出力電圧Vb)の一例を示し、図10に、接触燃焼時間A1における吸着燃焼式ガスセンサの出力(接触燃焼出力電圧Va)の一例を示し、図11に、吸着燃焼出力電圧Vbから接触燃焼出力電圧Vaを差し引いた値(吸着ピーク出力電圧Vb−Va)の一例を示す。吸着燃焼積分値Sb、接触燃焼積分値Sa、及び、吸着ピーク積分値S、はこれらグラフの面積を求めたものである。なお、時間差吸着方式の詳細については、特許文献1等を参照されたい。
そして、本発明者らは、接触燃焼式ガスセンサの被毒による上記応答特性の変化に着目して、図12に示すガス濃度検出装置801において、被毒程度(劣化度合)の異なる吸着燃焼式ガスセンサを適用して、濃度の異なる一種類の検出対象ガス(ここではトルエンを用いた)について、上述した時間差吸着方式における非吸着時間a1の時間を5m秒〜500m秒の間で変化させたときの吸着ピーク積分値Sを測定した。
図12のガス濃度検出装置801は、検出対象ガスと感応する感応素子811及び検出対象ガスと感応しない補償素子812を備える吸着燃焼式ガスセンサ815と、感応素子811及び該感応素子811と直列に接続された固定抵抗器814からなるセンサ回路部810、並びに、センサ回路部810と並列接続されるとともに、補償素子812及び該補償素子812と直列接続された固定抵抗器813からなるレファレンス回路部820、で構成されたブリッジ回路802と、感応素子811の温度が検出対象ガスを吸着する低温となる低温駆動電圧、及び、感応素子811の温度が感応素子811に吸着した検出対象ガスを燃焼させる高温となる高温駆動電圧、をブリッジ回路802に順次供給する電圧供給源805と、感応素子811及び固定抵抗器814間に生じる第1電圧V1と補償素子812及び固定抵抗器813間に生じる第2電圧V2とが入力されるように、センサ回路部810の中点とレファレンス回路部820の中点とに接続されて、これら第1電圧V1と第2電圧V2との電位差Vc(即ち、吸着燃焼式ガスセンサの出力)を所定の増幅率で増幅する計装アンプ806と、計装アンプ806で増幅された上記出力をアナログ値からデジタル値に変換するA/Dコンバータ807と、A/Dコンバータ807によってデジタル値に変換された上記出力の積分値を算出して、該積分値に基づいて検出対象ガスの濃度を検出する周知のマイクロコンピュータ(MPU)860と、を備えている。ブリッジ回路802は、検出対象ガスを含まない雰囲気中において高温駆動電圧を供給されたときに、各素子の温度変化が収束した定常状態で平衡(即ち、電位差Vcが0)となるように、固定抵抗器813、814の抵抗値が定められている。吸着燃焼式ガスセンサ815として、使用期間が1月の吸着燃焼式ガスセンサ(以下、ガスセンサPという)と、このガスセンサPをさらに5ヶ月使用して、使用期間を6月とした吸着燃焼式ガスセンサ(以下、ガスセンサQという)と、を用いている。ガスセンサPは、ほぼ未使用で被毒量が少なく、即ち、劣化していない吸着燃焼式ガスセンサである。ガスセンサQは、被毒量が多く、即ち、劣化した吸着燃焼式ガスセンサである。
図13に、図12のガス濃度検出装置801を用いて測定した、非吸着時間a1に対する吸着ピーク積分値Sのグラフを示す。このグラフによれば、各グラフは、非吸着時間a1が20m秒付近でピークとなり、その後、なだらかに低下して一定の値に収束する傾向にある。また、劣化していないガスセンサPと劣化したガスセンサQとでは、測定に用いた非吸着時間a1の値の範囲全体にわたり、それぞれの吸着ピーク積分値Sが一致しない(即ち、差異がある)が、検出対象ガスの濃度毎に、これらの差異が無くなり、又は、差異が小さくなる、特定の非吸着時間a1が存在している。
このことから、非吸着時間a1を、吸着燃焼式ガスセンサの劣化度合及び検出対象ガスの濃度に応じて適切な値とすることで、劣化していないガスセンサPと劣化したガスセンサQとの出力の差異(差分)を小さくして、ガスセンサQの吸着ピーク積分値Sを、ガスセンサPの吸着ピーク積分値Sとほぼ同一にでき(例えば、濃度0.1ppmで140m秒(矢印A)、濃度1ppmで20m秒(矢印B))、又は、ガスセンサQの吸着ピーク積分値Sを、ガスセンサPの吸着ピーク積分値Sに近づけることができる(例えば、濃度10ppmで20m秒(矢印C))。この理由について、以下に説明する。
図14(a)は、劣化していないガスセンサPにおいて、非吸着時間a1を比較的長いa1TLとしたときの感応素子及び補償素子の温度変化波形並びにガスセンサPの出力を模式的に示した図であり、図14(b)は、劣化したガスセンサQにおいて、非吸着時間a1をa1TLとしたときの感応素子及び補償素子の温度変化波形並びにガスセンサQの出力を模式的に示した図である。また、図15(a)は、劣化していないガスセンサPにおいて、非吸着時間a1を比較的短いa1TSとしたときの感応素子及び補償素子の温度変化波形並びにガスセンサPの出力を模式的に示した図であり、図15(b)は、劣化したガスセンサQにおいて、非吸着時間a1をa1TSとしたときの感応素子及び補償素子の温度変化波形並びにガスセンサQの出力を模式的に示した図である。吸着燃焼式ガスセンサの出力を決定する白金コイルの抵抗値は温度に応じて変化するので、これら温度変化波形は、接触燃焼式ガスセンサの感応素子及び補償素子の出力の変化とみなすことができる。なお、図14、図15では、検出対象ガスの濃度がゼロであり、補償素子の熱容量が、感応素子の熱容量より大きい場合について示している。
吸着燃焼式ガスセンサの感応素子は、非吸着時間a1を長くしたとき(a1=a1TL)、被毒量にかかわらず、吸着燃焼時間B1において高温にされた感応素子の温度が、該非吸着時間a1内で、高温から低温に下がりきることができる(図14(a)、(b))。
その一方で、吸着燃焼式ガスセンサの感応素子は、非吸着時間a1を短くしたとき(a1=a1TS)、被毒量が少なければ熱容量が小さいので、吸着燃焼時間B1において高温にされた感応素子の温度が、該非吸着時間a1内で高温から低温に下がりきることができる(図15(a))が、被毒量が多いと熱容量が大きくなるので、吸着燃焼時間B1において高温にされた感応素子の温度が、該非吸着時間a1内で高温から低温まで下がりきることができず、そのため、続く接触燃焼時間A1において、低温より高い温度から加熱が始まって、より早く高温に到達してしまい、これにより、接触燃焼積分値Sa(Q)TSが、非吸着時間a1を長くしたとき(接触燃焼積分値Sa(Q)TL)に比べて変化する(図15(b))。つまり、非吸着時間a1を変化させると、被毒量に応じて接触燃焼積分値Saが変化する。
各ガスセンサの吸着ピーク積分値Sは、吸着燃焼積分値Sbから接触燃焼積分値Saを差し引くことにより算出されるものであるが、上記より、図13のグラフにおいて、ガスセンサQの吸着ピーク積分値SがガスセンサPの吸着ピーク積分値Sと同一となる非吸着時間a1では、ガスセンサQの吸着燃焼積分値Sb及び接触燃焼積分値Saに含まれる、劣化による出力の経時変化分が、非吸着時間a1に応じた接触燃焼積分値Saの変化分によって相殺されていると考えられる。
また、同様に、ガスセンサQの吸着ピーク積分値SがガスセンサPの吸着ピーク積分値Sに最も近づく(差分が最も小さくなる)非吸着時間a1では、ガスセンサQの吸着燃焼積分値Sb及び接触燃焼積分値Saに含まれる、劣化による出力の経時変化分の一部が、非吸着時間a1に応じた接触燃焼積分値Saの変化分によって相殺されていると考えられる。
なお、上記は吸着燃焼式ガスセンサについて説明したものであるが、主に低温駆動時間に対する接触燃焼出力に係るものであるので、非吸着動作の接触燃焼式ガスセンサについても上記と同様である。また、感応素子のみからなる接触燃焼式ガスセンサについても上記と同様である。また、上記はトルエンを用いて検証を行ったものであるが、他のガス種についても原理的には上記と同様である。
以上より、接触燃焼式ガスセンサの劣化度合及び検出対象ガスの濃度に応じて、劣化による出力の経時変化分を相殺するように、即ち、非劣化時のガス検出値と劣化時のガス検出値との差分が最も小さくなるように、低温駆動時間を適切な値に調節して積極的に接触燃焼出力を変化させることにより、劣化した接触燃焼式ガスセンサの出力を、劣化していない状態と同一にし、又は、劣化していない状態に近づけることができる。
次に、本発明に係るガス検出装置の一実施形態としてのガス濃度検出装置を、図2〜図7を参照して説明する。
ガス濃度検出装置1は、図2に示すように、ブリッジ回路2と、電圧供給源5と、計装アンプ6と、A/Dコンバータ7と、マイクロコンピュータ60と、図示しない気体収容室と、図示しない表示装置と、を備えている。
ブリッジ回路2は、第1固定抵抗器13と、第2固定抵抗器14と、吸着燃焼式ガスセンサとしてのガスセンサユニット15と、を備えている。このガスセンサユニット15は、感応素子11と補償素子12とを備えている。そして、第2固定抵抗器14と感応素子11とを互いに直列接続することでセンサ回路部10を構成し、第1固定抵抗器13と補償素子12とを互いに直列接続することでレファレンス回路部20を構成している。また、センサ回路部10とレファレンス回路部20とを互いに並列接続することでブリッジ回路2を構成している。ブリッジ回路2における第1固定抵抗器13と第2固定抵抗器14とを接続する信号線は、電圧供給源5に接続されている。ブリッジ回路2における感応素子11と補償素子12とを接続する信号線は接地点(GND)に接続されている。
ガスセンサユニット15は、図3(A)〜(C)に示すように、所定厚さ(例えば、400μm程度)のシリコン(Si)ウェハ41上に、所定厚さ(例えば、600nm程度)の酸化シリコン(SiO2)膜48c、所定厚さ(例えば、250nm程度)の窒化シリコン(SiN)膜48b、および所定厚さ(例えば、30nm程度)の酸化ハフニウム(HfO2)膜48aの絶縁薄膜が順次成膜され、多層絶縁膜が形成されている。
この多層絶縁膜上に、感応素子11として、所定厚さ(例えば、250nm程度)の第1のヒータとしての白金(Pt)ヒータ42(即ち、白金コイル)が形成されていると共に、この白金ヒータ42と熱的に接触するとともに、触媒物質として、例えば、検出対象ガスを吸着及び燃焼させるパラジウム(Pd)などの白金族を担持した酸化アルミニウム(Al2O3)からなる触媒層43が所定厚さ(例えば、1〜40μm程度)で形成されている。
また、多層絶縁膜上には、補償素子12として、所定厚さ(例えば、250nm程度)の第2のヒータとしての白金(Pt)ヒータ44(即ち、白金コイル)と、この白金ヒータ44と熱的に接触する酸化アルミニウム(Al2O3)のみからなる非触媒層45が所定厚さ(例えば、1〜40μm程度)で形成されている。
また、図3(C)に示すように、シリコンウェハ41を異方性エッチングして、感応素子11及び補償素子12に対応する位置に凹部46、47を形成し、それにより、上述の各絶縁薄膜による薄膜ダイヤフラムDsおよびDrが形成されている。
感応素子11及び補償素子12は、検出対象ガスを含まない雰囲気中において、後述する電圧供給源5によって低温駆動電圧及び高温駆動電圧が供給されたのちにそれらの温度変化が収束した定常状態では、感応素子11の白金ヒータ42と補償素子12の白金ヒータ44とが同一の抵抗値となるように形成されている。
また、感応素子11は触媒層43を備えているとともに、補償素子12は非触媒層45を備えている(即ち、触媒を備えていない)ので、電圧供給源5によってブリッジ回路2(センサ回路部10及びレファレンス回路部20)に所定の低温駆動電圧が供給されると、感応素子11では検出対象ガスが触媒層43に吸着され、その一方で、補償素子12では検出対象ガスが非触媒層45に吸着されず、そして、電圧供給源5によってブリッジ回路2に所定の高温駆動電圧が供給されると、感応素子11では触媒により検出対象ガスが燃焼し、その一方で、補償素子12では検出対象ガスが燃焼しない。即ち、感応素子11は検出対象ガスと感応し、補償素子12は検出対象ガスと感応しない。
このため、感応素子11及び補償素子12は、検出対象ガスを含む雰囲気中において、電圧供給源5によって低温駆動電圧が供給されたのちに高温駆動電圧が供給されると、感応素子11に吸着した検出対象ガスが爆発的に燃焼する。すると、この燃焼エネルギーにより感応素子11の温度が補償素子12の温度より高くなり、感応素子11と補償素子12とのそれぞれに検出対象ガスの濃度に応じた温度差が生じて、この温度差によって感応素子11の白金ヒータ42と補償素子12の白金ヒータ44との抵抗値に差が生じる。そして、この抵抗値の差が、第2固定抵抗器14及び感応素子11間(即ち、センサ回路部10の中点)と第1固定抵抗器13及び補償素子12間(即ち、レファレンス回路部20の中点)との間、つまり、ブリッジ回路2における一対の中点間に、電位差として現れる。この一対の中点間の電位差を「中点電位差Vc」といい、この中点電位差Vcに基づいてガス濃度が検出される。この中点電位差Vcが、ガスセンサユニット15の出力となる。
ガスセンサユニット15は、図示しない気体収容室内に設置されている。この気体収容室には、検出対象ガスの濃度が既知の雰囲気(基準濃度ガス)、又は、検出対象ガスの濃度を検出する雰囲気(被検ガス)が、後述するマイクロコンピュータ60の制御によって充填される。
第1固定抵抗器13及び第2固定抵抗器14は、予め定められた固定値の電気抵抗を生じる周知の電子部品である。第1固定抵抗器13及び第2固定抵抗器14は、複数の固定抵抗器を直列、並列、または、直列及び並列に組み合わせて構成してもよく、或いは、ガス濃度測定時に抵抗値を固定して用いるものであれば、例えば、平衡調整のためなどに抵抗値を変更できる、可変抵抗器であってもよい。第1固定抵抗器13及び第2固定抵抗器14は、検出対象ガスを含まない雰囲気中において、これら第1固定抵抗器13、第2固定抵抗器14及びガスセンサユニット15で構成されたブリッジ回路2に電圧供給源5によって高温駆動電圧が供給されたときに、感応素子11の温度及び補償素子12の温度の変化が収束した定常状態で平衡となるように、即ち、一対の中点間に生じる中点電位差Vcが0となるように、それぞれの抵抗値が定められている。本実施形態においては、第1固定抵抗器13の抵抗値が200Ω、第2固定抵抗器14の抵抗値が200Ωに設定されている。
感応素子11の抵抗値をRs、補償素子12の抵抗値をRr、第1固定抵抗器13の抵抗値をR1、第2固定抵抗器14の抵抗値をR2、ブリッジ回路2への供給電圧をVbrg、とすると、上記中点電位差Vcは、以下の式で表される。
Vc=((Rs/(R2+Rs))−(Rr/(R1+Rr)))×Vbrg
電圧供給源5は、ブリッジ回路2に所定の電圧を供給する電圧供給回路である。電圧供給源5は、後述するMPU60に接続されるとともに、該MPU60からの電圧制御信号に応じて、感応素子11の温度が検出対象ガスを吸着する低温(例えば、200度)となる低温駆動電圧、及び、感応素子11の温度が感応素子11に吸着した検出対象ガスを燃焼させる高温(例えば、400度)となる高温駆動電圧、などのパルス状の供給電圧Vbrgをブリッジ回路2に供給する。即ち、低温駆動制御として上記低温駆動電圧を供給し、高温駆動制御として上記高温駆動電圧を供給する。また、本実施形態では、電圧供給源によって電圧を供給して、接触燃焼式ガスセンサとしてのガスセンサユニット15を駆動するものであるが、これに限らず、例えば、電流源などによって感応素子の温度が低温又は高温になるような電流を通電して、ガスセンサユニット15を駆動するものであってもよい。
計装アンプ6は、差動入力・シングルエンド出力の平衡入力アンプであり、同相信号除去比(CMRR)を大きくとれるという特徴を有する周知の増幅器である。計装アンプ6は、それぞれ高インピーダンスの一対の差動入力端子に入力された信号の電位差を、所定の増幅率で増幅して出力する。計装アンプ6の差動入力端子の一方(V+)には、センサ回路部10の第2固定抵抗器14及び感応素子11間(中点)の信号線が接続されており、他方(V−)には、レファレンス回路部20の第1固定抵抗器13及び補償素子12間(中点)の信号線が接続されている。つまり、計装アンプ6は、センサ回路部10の中点の電位(以下、「第1電圧V1」という)と、レファレンス回路部20の中点の電位(以下、「第2電圧V2」という)と、が入力されて、これら第1電圧V1と第2電圧V2の電位差(即ち、中点電位差Vc)を、所定の増幅率で増幅して出力端子から出力する。
A/Dコンバータ7は、入力されたアナログ信号をデジタル信号に変換して出力する周知のアナログ−デジタル変換器である。A/Dコンバータ7の入力部には、計装アンプ6において増幅された中点電位差Vcが入力される。また、A/Dコンバータ7の出力部は、MPU60に接続されており、デジタル信号に変換された中点電位差VcがMPU60に向けて出力される。
マイクロコンピュータ(MPU)60は、周知のように、予め定めたプログラムに従って各種の処理や制御などを行う中央演算処理装置(CPU)61、CPU61のためのプログラムや各種パラメータを格納した読み出し専用のメモリであるROM62、各種データを格納するとともにCPU61の処理作業に必要な領域を有する読み出し書き込み自在のメモリであるRAM63、及び、電力供給が断たれた場合でも、格納された各種データの保持が可能であり、CPU61の処理作業に必要な各種格納エリアを有するEEPROM64等を備えている。
ROM62には、CPU61を、接触燃焼駆動制御手段、接触燃焼出力測定手段、ガス検出手段、劣化度合検出手段、濃度予備検出手段、低温駆動時間設定手段、補正情報取得手段、出力補正手段等の各種手段として機能させるプログラムが予め記憶されている。CPU61は、ROM62に格納された各種プログラムを実行することにより、これら手段等として機能する。
RAM63には、吸着燃焼積分値Sb、接触燃焼積分値Sa、吸着ピーク積分値S、非吸着時間a1m、などを格納する領域が設けられている。EEPROM64には、吸着時間b1、吸着燃焼時間B1、非吸着時間a1p、接触燃焼時間A1(A1=B1)、低温駆動時間関係情報J1、補正情報関係情報J2、濃度情報J3、基準吸着ピーク積分値Ss、センサ感度K、劣化度合W、サンプリング間隔時間、低温駆動電圧値、高温駆動電圧値など、が予め記憶されている。EEPROM64に記憶された上記各種データは、検出対象ガスの種類などに応じて適宜書き換えられる。なお、EEPROM64は、請求項中の低温駆動時間記憶手段、補正情報記憶手段に相当する。
EEPROM64に記憶される低温駆動時間関係情報J1の一例を図4に示す。低温駆動時間関係情報J1は、ガスセンサユニット15のセンサ感度Kに応じて区分された劣化度合W毎に、予備検出濃度Dpに対する非吸着時間a1mが設定されている。この非吸着時間a1mは、当該劣化度合W及び予備検出濃度Dpにおいて、ガスセンサユニット15の非劣化時の吸着ピーク積分値Sと劣化時(劣化度合W)の吸着ピーク積分値Sとの差分が最も小さくなる非吸着時間である。また、補正情報関係情報J2(図示なし)は、例えば、低温駆動時間関係情報J1において、非吸着時間a1mに代えて、ガスセンサユニット15の非劣化時の吸着ピーク積分値Sと劣化時(劣化度合W)の吸着ピーク積分値Sとの差分が最も小さくなる非吸着時間における当該差分を補正する補正係数(請求項中の出力補正量に関する補正情報に相当)が設定されている。この補正係数は、測定に基づいて算出された吸着ピーク積分値Sに乗ぜられることにより、吸着ピーク積分値Sを補正する。特に、非吸着時間a1mを適切な値にすることにより、劣化時の吸着ピーク積分値Sが非劣化時の吸着ピーク積分値Sと同一になるような場合(例えば、図13で劣化時のグラフと非劣化時のグラフが重なる非吸着時間など)には、補正係数として1が設定される。また、補正情報関係情報J2には、このような補正係数に代えて、測定に基づいて算出された吸着ピーク積分値Sに加算される補正情報としての出力補正量などが設定されていてもよい。このような低温駆動時間関係情報J1及び補正情報関係情報J2は、例えば、ガスセンサユニット15の劣化度合、検出対象ガスの濃度、非吸着時間、及び、吸着ピーク積分値の関係について予め測定を行った結果などに基づいて設定される。
MPU60は、図示しない入出力ポートや各種インタフェース機能を備えた外部接続部をさらに備えている。MPU60は、この外部接続部を介して、A/Dコンバータ7及び電圧供給源5と接続されている。MPU60は、A/Dコンバータ7からデジタル信号に変換された中点電位差Vcを受信して、この中点電位差Vcに基づいて、ガス濃度を検出する。MPU60は、処理に応じて、例えば、所定の低温駆動時間(吸着時間b1、非吸着時間a1p、非吸着時間a1m)にわたって低温駆動電圧を供給(即ち、低温駆動制御)した後、所定の高温駆動時間(吸着燃焼時間B1、接触燃焼時間A1)にわたって高温駆動電圧を供給(即ち、高温駆動制御)するように、電圧供給源5に向けて電圧制御信号を送信する。
また、MPU60は、この外部接続部を介して、図示しない表示装置に接続されており、例えば、検出した検出対象ガスの濃度に関する情報を含む表示制御信号を、該表示装置に向けて送信する。また、MPU60は、この外部接続部を介して、ガスセンサユニット15の故障情報を含む表示制御信号を、該表示装置に向けて送信する。そして、表示装置は、この表示制御信号に応じた情報、即ち、検出対象ガスの濃度、又は、ガスセンサユニット15の故障通知メッセージ、などを表示する。また、MPU60は、この外部接続部を介して、ポンプなどを備えた気体収容室に接続されており、処理に応じて各種気体を該気体収容室に充填する。
次に、上述したCPU61が実行する本発明に係る処理(劣化度合検出処理)の一例を、図5に示すフローチャートを参照して、以下に説明する。
ガス濃度検出装置1に電源が投入され、使用者などにより劣化度合検出処理を選択する操作が入力されると、CPU61は、その処理をステップS110に進め、気体収容室内に濃度既知の基準濃度ガスを充填し、並行して、RAM63上に設けられた各種変数を初期化する(吸着燃焼積分値Sb=0、接触燃焼積分値Sa=0)。そして、ステップS120に進む。
ステップS120では、電圧供給源5に対して、ブリッジ回路2に低温駆動電圧を供給するための電圧制御信号を送信して、EEPROM64に予め設定された吸着時間b1(例えば、60秒)が経過するまで待つ。そして、吸着時間b1が経過した後、電圧供給源5に対して、ブリッジ回路2に、高温駆動電圧を供給するための電圧制御信号を送信して、EEPROM64に予め設定された吸着燃焼時間B1(例えば、400m秒)が経過するまで、所定のサンプリング間隔時間(例えば、1m秒)毎に計装アンプ6で増幅されるとともにA/Dコンバータ7でデジタル信号に変換された中点電位差Vcを取得して、この中点電位差VcをRAM63上に設けた吸着燃焼積分値Sbに積算する。そして、燃焼時間B1が経過した後、ステップS130に進む。
ステップS130では、電圧供給源5に対して、ブリッジ回路2に低温駆動電圧を供給するための電圧制御信号を送信して、EEPROM64に予め設定された非吸着時間a1p(例えば、100m秒)が経過するまで待つ。そして、非吸着時間a1pが経過した後、電圧供給源5に対して、ブリッジ回路2に、高温駆動電圧を供給するための電圧制御信号を送信して、EEPROM64に予め設定された接触燃焼時間A1(例えば、400m秒)が経過するまで、所定のサンプリング間隔時間(例えば、1m秒)毎に上記中点電位差Vcを取得して、この中点電位差VcをRAM63上に設けた接触燃焼積分値Saに積算する。そして、接触燃焼時間A1が経過した後、ステップS140に進む。
ステップS140では、ステップS120で測定した吸着燃焼積分値Sbから、ステップS130で測定した接触燃焼積分値Saを差し引いて、吸着ピーク積分値Sを算出する。そして、ステップS150に進む。
ステップS150では、ステップS140で算出した吸着ピーク積分値Sを、EEPROM64に予め格納された、未使用(即ち、非劣化時)のガスセンサユニット15を用いて測定した、基準吸着ピーク積分値Ssで除した値をセンサ感度Kとして算出する。そして、センサ感度Kの値に対応する劣化度合W(0〜10)を取得して、EEPROM64に設けられたセンサ感度K及び劣化度合Wに格納する。そして、本フローチャートを終了する。なお、本ステップにおいて、センサ感度Kが、所定の劣化基準値(例えば、0.7)以下のときは、ガスセンサユニット15が劣化により使用不可能となったものとして、ガスセンサユニット15の故障を通知する処理(故障情報を含む表示制御信号を、表示装置に向けて送信する)などを行ってもよい。
次に、上述したCPU61が実行する本発明に係る処理(ガス濃度検出処理)の一例を、図6に示すフローチャートを参照して、以下に説明する。
ガス濃度検出装置1に電源が投入され、使用者によりガス濃度検出処理を選択する操作が入力されると、CPU61は、その処理をステップT110に進め、気体収容室内に検出対象ガスの濃度を検出する雰囲気(被検ガス)を充填し、並行して、RAM63上に設けられた各種変数を初期化する(吸着燃焼積分値Sb=0、接触燃焼積分値Sa=0)。そして、ステップT120に進む。
ステップT120では、電圧供給源5に対して、ブリッジ回路2に低温駆動電圧を供給するための電圧制御信号を送信して、EEPROM64に予め設定された吸着時間b1(例えば、60秒)が経過するまで待つ。そして、吸着時間b1が経過した後、電圧供給源5に対して、ブリッジ回路2に、高温駆動電圧を供給するための電圧制御信号を送信して、EEPROM64に予め設定された吸着燃焼時間B1(例えば、400m秒)が経過するまで、所定のサンプリング間隔時間(例えば、1m秒)毎に計装アンプ6で増幅されるとともにA/Dコンバータ7でデジタル信号に変換された中点電位差Vcを取得して、この中点電位差VcをRAM63上に設けた吸着燃焼積分値Sbに積算する。そして、燃焼時間B1が経過した後、ステップT130に進む。
ステップT130では、電圧供給源5に対して、ブリッジ回路2に低温駆動電圧を供給するための電圧制御信号を送信して、EEPROM64に予め設定された非吸着時間a1p(例えば、100m秒)が経過するまで待つ。そして、非吸着時間a1pが経過した後、電圧供給源5に対して、ブリッジ回路2に、高温駆動電圧を供給するための電圧制御信号を送信して、EEPROM64に予め設定された接触燃焼時間A1(例えば、400m秒)が経過するまで、所定のサンプリング間隔時間(例えば、1m秒)毎に上記中点電位差Vcを取得して、この中点電位差VcをRAM63上に設けた接触燃焼積分値Saに積算する。そして、接触燃焼時間A1が経過した後、ステップT140に進む。
ステップT140では、ステップT120で測定した吸着燃焼積分値Sbから、ステップT130で測定した接触燃焼積分値Saを差し引いて、吸着ピーク積分値Sを算出する。そして、ステップT150に進む。
ステップT150では、ステップT140で算出した吸着ピーク積分値Sを、EEPROM64に予め設定されたセンサ感度Kで除して該吸着ピーク積分値Sを補正し、この補正した吸着ピーク積分値Sを、EEPROM64上に予め格納された、予備測定やシミュレーションなどによって取得された吸着ピーク積分値Sとガス濃度の関係についての変換テーブルである濃度情報J3に当てはめて、被検ガス中の検出対象ガスのガス濃度Dpを予備的に検出する。そして、ステップT160に進む。
ステップT160では、劣化度合検出処理においてEEPROM64に予め格納された劣化度合W及びステップT150で予備的に検出されたガス濃度Dpを、EEPROM64上に予め格納された低温駆動時間関係情報J1に当てはめて、ガス濃度の本検出で用いられる非吸着時間a1m(即ち、低温駆動時間)を取得し、RAM63に格納する。そして、ステップT170に進む。
ステップT170では、電圧供給源5に対して、ブリッジ回路2に低温駆動電圧を供給するための電圧制御信号を送信して、ステップT160でRAM63に格納された非吸着時間a1mが経過するまで待つ。そして、非吸着時間a1mが経過した後、電圧供給源5に対して、ブリッジ回路2に、高温駆動電圧を供給するための電圧制御信号を送信して、EEPROM64に予め設定された接触燃焼時間A1(例えば、400m秒)が経過するまで、所定のサンプリング間隔時間(例えば、1m秒)毎に上記中点電位差Vcを取得して、この中点電位差VcをRAM63上に設けた接触燃焼積分値Saに積算する。そして、接触燃焼時間A1が経過した後、ステップT180に進む。
ステップT180では、ステップT120で測定した吸着燃焼積分値Sbから、ステップT170で測定した接触燃焼積分値Saを差し引いて、吸着ピーク積分値Sを算出する。そして、ステップT190に進む。
ステップT190では、劣化度合検出処理においてEEPROM64に予め格納された劣化度合W及びステップT150で予備的に検出されたガス濃度Dpを、EEPROM64上に予め格納された補正情報関係情報J2に当てはめて、吸着ピーク積分値Sを補正するための補正係数を取得する。そして、ステップT200に進む。
ステップT200では、ステップT190で取得した補正係数を、ステップT140で算出した吸着ピーク積分値Sに乗じて、該吸着ピーク積分値Sを補正する。そして、ステップT210に進む。
ステップT210では、ステップT200で補正した吸着ピーク積分値Sを、EEPROM64上に予め格納された濃度情報J3に当てはめて、被検ガス中の検出対象ガスのガス濃度Dを検出する(本検出)。そして、ステップT220に進む。
ステップT220では、ステップT210で検出したガス濃度Dについての情報を含む表示制御信号を生成して、表示装置に対して送信する。そして、本フローチャートの処理を終了する。
上述したステップS150が、請求項中の劣化度合検出手段に相当し、ステップT170が、請求項中の接触燃焼駆動制御手段及び接触燃焼出力測定手段に相当し、ステップT210が、請求項中のガス検出手段に相当し、ステップT150が、請求項中の濃度予備検出手段に相当し、ステップT160が、請求項中の低温駆動時間設定手段に相当し、ステップT190が、請求項中の補正情報取得手段に相当し、ステップT200が、請求項中の出力補正手段に相当し、ステップT120が、請求項中の吸着燃焼駆動制御手段及び吸着燃焼出力測定手段に相当する。
次に、上述したガス濃度検出装置1における本発明に係る動作(作用)について説明する。
ガス濃度検出装置1は、ガスセンサユニット15の劣化度合を検出するために、濃度既知の基準濃度ガスを気体収容室に充填したのち(S110)、吸着燃焼出力(吸着燃焼積分値Sb)及び接触燃焼出力(接触燃焼積分値Sa)を測定する(S120、S130)。この接触燃焼出力の測定は非吸着時間a1pを用いて行う。そして、これら出力からガス検出値(吸着ピーク積分値S)を算出し(S140)、この算出したガス検出値と、ガスセンサユニット15が非劣化時に測定した基準値(基準吸着ピーク積分値Ss)と、からガスセンサユニット15のセンサ感度Kと劣化度合Wとを求める(S150)。この劣化度合の検出動作は、例えば、ガス濃度検出を所定回数行う毎に又は所定期間毎に、定期的に行う。
次に、ガス濃度検出装置1は、被検ガスに含まれる検出対象ガスの濃度を検出するために、該被検ガスを気体収容室に充填したのち(T110)、吸着燃焼出力(吸着燃焼積分値Sb)及び接触燃焼出力(接触燃焼積分値Sa)を測定する(T120、T130)。この接触燃焼出力の測定は、上記劣化度合検出時と同じ非吸着時間a1pを用いて行う。そして、これら出力からガス検出値(吸着ピーク積分値S)を算出し(T140)、このガス検出値をセンサ感度Kで補正した値を用いて、ガス濃度Dpを予備的に検出する(T150)。
そして、予め検出した劣化度合W及び予備的に検出したガス濃度Dpを、低温駆動時間関係情報J1に当てはめて、接触燃焼出力の測定で用いる非吸着時間a1mを取得する(T160)。そして、この非吸着時間a1mを用いて接触燃焼出力(接触燃焼積分値Sa)を再度測定し(T170)、この接触燃焼出力と上記吸着燃焼出力とからガス検出値(吸着ピーク積分値S)を再度算出する(T180)。
そして、予め検出した劣化度合W及び予備的に検出したガス濃度Dpを、補正情報関係情報J2に当てはめて、ガス検出値を補正する補正係数を取得して(T190)、該補正係数を用いてガス検出値を補正する(T200)。そして、補正したガス検出値からガス濃度Dを検出して(T210)、表示装置に、被検ガスに含まれる検出対象ガスの濃度を出力する(T220)。図7に、上記ガス濃度検出処理でのガスセンサユニット15の駆動制御のイメージを示す。
以上より、本実施形態によれば、ガスセンサユニット15において、検出対象ガスを接触燃焼させたときの出力である接触燃焼出力を用いて算出したガス検出値に基づいて、検出対象ガスを検知する。また、検出対象ガスの劣化度合Wを検出するとともに、検出対象ガスの濃度Dpを予備的に検出して、そして、これら検出した劣化度合Wと、予備的に検出した濃度Dpと、ガスセンサユニット15の劣化度合W、検出対象ガスの濃度Dp、及び、ガスセンサユニット15の非劣化時のガス検出値と劣化時のガス検出値との差分が最も小さくなる非吸着時間a1m、の関係を示す低温駆動時間関係情報J1と、に基づいて、検出対象ガスを接触燃焼させるときに用いられる非吸着時間a1m(低温駆動時間)を設定する。このガスセンサユニット15の非劣化時のガス検出値と劣化時のガス検出値との差分は、ガスセンサユニット15の劣化度合、検出対象ガスの濃度、及び、非吸着時間、によって変化する。
また、検出したガスセンサユニット15の劣化度合Wと、予備的に検出した検出対象ガスの濃度Dpと、ガスセンサユニット15の劣化度合W、検出対象ガスの濃度Dp、及び、ガスセンサユニット15の非劣化時のガス検出値と劣化時のガス検出値との差分が最も小さくなる非吸着時間a1mにおけるガスセンサユニット15の出力を補正する補正係数(補正情報)、の関係を示す補正情報関係情報J2と、に基づいて、検出した前記劣化度合W及び予備的に検出した前記濃度Dpに応じた上記補正係数を取得して、この取得した補正係数に基づいて、ガスセンサユニット15の出力を補正する。この補正係数は、劣化度合W及び濃度Dpとの関係で、ガスセンサユニット15の非劣化時のガス検出値と劣化時のガス検出値との差分が最も小さくなるときのものであり、つまり、この補正係数は、当該劣化度合及び濃度において、ガスセンサユニット15の出力の補正量が最も少なくなるときのものである。
また、低温駆動時間の長さを、ガスセンサユニット15の感応素子11に前記検出対象ガスが吸着しない長さにして、検出対象ガスを接触燃焼させたときの出力である接触燃焼出力を測定する。
また、ガスセンサユニット15において、検出対象ガスを接触燃焼させたときの出力である接触燃焼出力とともに、検出対象ガスを吸着燃焼させたときの出力である吸着燃焼出力を用いて算出したガス検出値に基づいて、検出対象ガスを検知する。
以上より、本発明によれば、検出対象ガスの劣化度合Wを検出するとともに、検出対象ガスの濃度Dpを予備的に検出して、そして、これら検出した劣化度合Wと、予備的に検出した濃度Dpと、ガスセンサユニット15の劣化度合W、検出対象ガスの濃度Dp、及び、ガスセンサユニット15の非劣化時のガス検出値と劣化時のガス検出値との差分が最も小さくなる非吸着時間a1m、の関係を示す低温駆動時間関係情報J1と、に基づいて、検出対象ガスを接触燃焼させるときに用いられる非吸着時間a1mを設定するので、ガスセンサユニット15の非劣化時のガス検出値と劣化時のガス検出値との差分は、ガスセンサユニット15の劣化度合、検出対象ガスの濃度、及び、低温駆動時間、によって変化するものであり、そのため、ガスセンサユニット15の劣化度合W及び検出対象ガスの濃度Dpを予め検出して、これら劣化度合W及び濃度Dpにおいて、該ガスセンサユニット15の非劣化時のガス検出値と劣化時のガス検出値との差分が最も小さくなる非吸着時間a1mを設定することにより、算出されるガス検出値を非劣化時のガス検出値と同一にし、又は、非劣化時のガス検出値に近づけることができる。したがって、ガス濃度の本検出において、劣化度合Wが進むにしたがい値が大きくなる補正係数を用いることがなくなり、ガスセンサユニット15の劣化が進んだ場合においても、ガス濃度検出の精度の悪化を防止できる。
また、検出したガスセンサユニット15の劣化度合Wと、予備的に検出した検出対象ガスの濃度Dpと、ガスセンサユニット15の劣化度合W、検出対象ガスの濃度Dp、及び、ガスセンサユニット15の非劣化時のガス検出値と劣化時のガス検出値との差分が最も小さくなる非吸着時間a1mにおけるガスセンサユニット15の出力を補正する補正係数、の関係を示す補正情報関係情報J2と、に基づいて、前記劣化度合W及び前記濃度Dpに応じた上記補正係数を取得して、この取得した補正係数に基づいて、ガスセンサユニット15の出力(即ち、吸着ピーク積分値S)を補正するので、劣化度合Wが進むにしたがい値が大きくなる補正係数を用いることなく、予め検出したガスセンサユニット15の劣化度合W及び検出対象ガスの濃度Dpにおいて、該ガスセンサユニット15の出力補正量が最も少なくなる補正係数に基づいて出力を補正でき、そのため、ガス検出の精度を向上させることができる。
また、接触燃焼出力の測定に用いられる低温駆動時間の長さを、感応素子11に前記検出対象ガスが吸着しない長さにして、検出対象ガスを接触燃焼させたときの出力である接触燃焼出力を測定するので、吸着性を有する検出対象ガスを検出する吸着燃焼式ガスセンサを用いた場合においても、ガス検出の精度の悪化を防止できる。
また、ガスセンサユニット15において、検出対象ガスを接触燃焼させたときの出力である接触燃焼出力とともに、検出対象ガスを吸着燃焼させたときの出力である吸着燃焼出力を用いて算出したガス検出値に基づいて、検出対象ガスを検知するので、吸着燃焼出力と接触燃焼出力とを用いることにより、検出対象ガスの特徴をより顕著に示す、吸着燃焼におけるピーク波形に係る出力(吸着ピーク出力)を取り出せるともに、環境温度、環境湿度、などの環境条件の影響を排除でき、そのため、ガス検出の精度を向上させることができる。
本実施形態においては、予め検出した劣化度合W及び予備的に検出したガス濃度Dpを、補正情報関係情報J2に当てはめて、ガス検出値を補正する補正係数を取得し、該補正係数を用いてガス検出値を補正するものであったが、例えば、図13の0.1ppmのグラフ、及び、1ppmのグラフのように、適切な非吸着時間を設定することにより非劣化時と劣化時とで値が略同一になる場合(図13の矢印A、B)などには、補正係数による補正処理を省略してもよい。
また、本実施形態においては、濃度既知の基準濃度ガスを用いて、ガスセンサユニット15の劣化度合Wを検出するものであったが、これに限らず、例えば、特許文献2に示されるように、ガス濃度を検出する途中に計測したエアベース濃度を、予め設定された各関係情報に当てはめることによりセンサ感度を求め、該センサ感度から劣化度合を求める方法など、他の方法を用いて、劣化度合Wを検出するものであってもよい。
また、本実施形態においては、検出対象ガスを吸着燃焼させて測定した吸着燃焼出力と、劣化度合検出時の非吸着時間a1pを用いて、検出対象ガスを接触燃焼させて測定した接触燃焼出力と、を用いて、ガス検出値を算出し、該ガス検出値に基づいて、検出対象ガスのガス濃度Dpを予備的に検出するものであったが、これに限らず、例えば、接触燃焼式ガスセンサ以外の方式のガスセンサを用いて、検出対象ガスのガス濃度Dpを予備的に検出するなど、検出対象ガスの濃度が検出できれば、予備的に行う濃度検出の方法は任意である。
また、本実施形態においては、低温駆動時間関係情報J1及び補正情報関係情報J2がEEPROM64に記憶されているものであったが、これに限らず、例えば、ROM62や、外部記憶装置(外付ハードディスク装置、CD−ROM等)に記憶されるなど、本発明の目的に反しない限り、これら情報を記憶する記憶手段は任意である。
また、本実施形態では、吸着燃焼式ガスセンサとしてのガスセンサユニット15を備えるものであったが、これに限らず、非吸着燃焼を行う接触燃焼式ガスセンサを備えるものであってもよい。
また、本実施形態は検出対象ガスの濃度を検出するものであったが、これに限らず、本発明は、成分不明の被検ガスに含まれるガスの種別を検出するガス種別検出装置など、他の種類のガス検出装置に適用してもよい。
なお、前述した実施形態は本発明の代表的な形態を示したに過ぎず、本発明は、実施形態に限定されるものではない。即ち、本発明の骨子を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。