JP2007285841A - ガス検知装置およびガス検知方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】接触燃焼式ガスセンサを用い、従来に比して小型化および低コスト化を図ったガス検知装置およびガス検知方法を提供すること。
【解決手段】ガス検知装置は、吸着燃焼式ガスセンサ40の感応素子部Rsおよび補償素子部Rrに、低温駆動するためのLレベルおよび高温駆動するためのHレベルの駆動電圧を交互に印加する駆動手段52と、高温駆動時の感応素子部Rsからの検出電圧を基準電圧と比較し、その比較結果により第1のトリガ信号を生成する第1のトリガ信号生成手段55と、高温駆動時の補償素子部Rrからの検出電圧を基準電圧と比較し、その比較結果により第2のトリガ信号を生成する第2のトリガ信号生成手段56と、第1のトリガ信号と第2のトリガ信号の両トリガ信号の時間間隔を計数する計数手段50とを備え、計数手段の計数結果に基づいて、ガス濃度を検知する。
【選択図】図1

Description

本発明は、ガス検知装置およびガス検知方法に関し、特に、吸着燃焼式ガスセンサを用いたガス検知装置およびガス検知方法に関する。
従来知られている接触燃焼式ガスセンサは、感応素子部と補償素子部を有し、検知すべきガスを感応素子部の触媒作用により燃焼させ、この燃焼熱を白金コイルの抵抗値変化として捉えるように構成されている。検知すべきガスのうちトルエン、酢酸やエタノール等のように、極性が大きく吸着力の大きなガスは、低温駆動時に、ガス分子が感応素子部の触媒表面に吸着し、高温駆動時に、吸着したガスが瞬時に燃焼すると共に接触燃焼反応も同時に起こるので、センサ出力は、短時間でピークに達しその後徐々に減少するピーク波形を生じる。一方、メタン、水素や一酸化炭素等の無極性または極性の小さいガスは、吸着力も小さいので上記のような現象は起こらず、センサ出力は、定常値で安定するまで徐々に増加していく。
このように、トルエン等の特定種類のガスにおいて固有のピーク波形を呈することを利用して、接触燃焼式ガスセンサを用いてガス濃度の検知ばかりでなくガス種を分別することができる。このような特定種類のガスの吸着現象を利用する接触燃焼式ガスセンサは、吸着燃焼式ガスセンサとも呼ばれている。
図7は、従来の吸着燃焼式ガスセンサを用いたガス検知装置の構成例を示すブロック図である。ガス検知装置1は、コントローラ10、駆動電源20、ガス検知出力手段30および検出用のブリッジ回路を含む吸着燃焼式ガスセンサ40を含んで構成される。コントローラ10には、駆動電源20、ガス検知出力手段30および吸着燃焼式ガスセンサ40が接続されている。
コントローラ10は、補正手段11、センサ駆動制御手段12、計時手段13、ピーク値取得手段14、格納手段15及び比較手段16を含んで構成される。このコントローラ10は、演算部、記憶部等を有するマイクロコンピュータにて具現化可能である。ピーク値取得手段14は、計時手段13から供給されるクロック信号を参照しつつ、通電直後の吸着燃焼式ガスセンサ40の出力値のピーク値を取得する。詳しくは、ピーク値取得手段14は、検知すべきガスのピーク値を検出するのに十分な通電直後の時間にわたって、補正手段11からのセンサ出力を所定のサンプリングレートでサンプリングすると共にこれらをそれぞれ保持しておき、この時間内におけるピーク値を取得する。
上記の構成を有するガス検知装置は、センサ駆動制御手段12により吸着燃焼式ガスセンサ40を所定時間だけ電源断とした後に通電し、通電直後の吸着燃焼式ガスセンサ40の出力値のピーク値をピーク値取得手段14で取得し、このピーク値と、格納手段15に予め格納されている、被検知ガスに対応するピーク値データを比較手段16で比較し、比較手段16による比較結果に基づき被検知ガスを検知してその結果を出力手段30から出力する(たとえば、特許文献1参照。)。
特開2004−69465号公報
しかしながら、上述のガス検知回路では、次のような問題点がある。
(1)ガスセンサ40の出力が小さいため、ピーク値取得手段14において、補正手段11からのセンサ出力を増幅するための高精度な増幅器と、増幅器で増幅されたセンサ出力をサンプリングしてA/D変換するためのA/D変換器を備える必要がある。
(2)上記(1)の必要性により、部品点数が増え、小型化、低コスト化が困難である。
(3)A/D変換のサンプリングレートによる制約で、真のピーク値を取得することが困難である。
そこで、本発明は、上記のような課題に着目し、接触燃焼式ガスセンサを用い、従来に比して小型化および低コスト化を図ったガス検知装置およびガス検知方法を提供することを目的とする。
上記課題を解決するためになされた請求項1記載の発明は、吸着燃焼式ガスセンサを用いたガス検知装置であって、前記吸着燃焼式ガスセンサの感応素子部および補償素子部に、低温駆動するためのLレベルおよび高温駆動するためのHレベルの駆動電圧を交互に印加する駆動手段と、前記高温駆動時の前記感応素子部からの検出電圧を基準電圧と比較し、その比較結果により第1のトリガ信号を生成する第1のトリガ信号生成手段と、前記高温駆動時の前記補償素子部からの検出電圧を前記基準電圧と比較し、その比較結果により第2のトリガ信号を生成する第2のトリガ信号生成手段と、前記第1のトリガ信号生成手段からの前記第1のトリガ信号と前記第2のトリガ信号生成手段からの前記第2のトリガ信号が入力され、両トリガ信号の時間間隔を計数する計数手段とを備え、前記計数手段の計数結果に基づいて、ガス濃度を検知することを特徴とするガス検知装置に存する。
上記課題を解決するためになされた請求項2記載の発明は、請求項1記載のガス検知装置において、前記高温駆動時の前記感応素子部からの検出電圧が高くなった場合に、前記検出電圧を所定の制限値以内に制限する第1の制限手段と、前記高温駆動時の前記補償素子部からの検出電圧が高くなった場合に、前記検出電圧を所定の制限値以内に制限する第2の制限手段とをさらに備えたことを特徴とするガス検知装置に存する。
上記課題を解決するためになされた請求項3記載の発明は、吸着燃焼式ガスセンサを用いたガス検知方法であって、前記吸着燃焼式ガスセンサの感応素子部および補償素子部に、低温駆動するためのLレベルおよび高温駆動するためのHレベルの駆動電圧を交互に印加し、前記高温駆動時の前記感応素子部からの検出電圧が基準電圧を超えた時に発生する第1のトリガ信号と、前記高温駆動時の前記補償素子部からの検出電圧が前記基準電圧を超えた時に発生する第2のトリガ信号の時間間隔を計数し、その計数結果に基づいて、ガス濃度を検知することを特徴とするガス検知方法に存する。
請求項1記載の発明によれば、吸着燃焼式ガスセンサを用いたガス検知装置であって、吸着燃焼式ガスセンサの感応素子部および補償素子部に、低温駆動するためのLレベルおよび高温駆動するためのHレベルの駆動電圧を交互に印加する駆動手段と、高温駆動時の感応素子部からの検出電圧を基準電圧と比較し、その比較結果により第1のトリガ信号を生成する第1のトリガ信号生成手段と、高温駆動時の補償素子部からの検出電圧を基準電圧と比較し、その比較結果により第2のトリガ信号を生成する第2のトリガ信号生成手段と、第1のトリガ信号生成手段からの第1のトリガ信号と第2のトリガ信号生成手段からの第2のトリガ信号が入力され、両トリガ信号の時間間隔を計数する計数手段とを備え、計数手段の計数結果に基づいて、ガス濃度を検知するので、以下の利点が得られる。
(1)高価な高精度の増幅器やA/D変換器が不要であるため、コストを低減できる。
(2)部品点数が減り、小型化が可能になる。
(3)時間の計測は、アナログ電圧を扱うよりも安定性がよく、高精度な検出ができる。
請求項2記載の発明によれば、高温駆動時の感応素子部からの検出電圧が高くなった場合に、検出電圧を所定の制限値以内に制限する第1の制限手段と、高温駆動時の補償素子部からの検出電圧が高くなった場合に、検出電圧を所定の制限値以内に制限する第2の制限手段とをさらに備えているので、第1のトリガ信号と第2のトリガ信号それぞれにおいて、トリガを検出後に各センサ電圧の制限を行うため、センサの過度な昇温を抑制することが可能で、消費電力とセンサ劣化を抑えることができる。
請求項3記載の発明によれば、吸着燃焼式ガスセンサを用いたガス検知方法であって、前記吸着燃焼式ガスセンサの感応素子部および補償素子部に、低温駆動するためのLレベルおよび高温駆動するためのHレベルの駆動電圧を交互に印加し、前記高温駆動時の前記感応素子部からの検出電圧が基準電圧を超えた時に発生する第1のトリガ信号と、前記高温駆動時の前記補償素子部からの検出電圧が前記基準電圧を超えた時に発生する第2のトリガ信号の時間間隔を計数し、その計数結果に基づいて、ガス濃度を検知するので、以下の利点が得られる。
(1)高価な高精度の増幅器やA/D変換器が不要であるため、コストを低減できる。
(2)部品点数が減り、小型化が可能になる。
(3)時間の計測は、アナログ電圧を扱うよりも安定性がよく、高精度な検出ができる。
以下、本発明の実施の形態について、図面に基づき説明する。
図1は、本発明のガス検知装置で使用される吸着燃焼式ガスセンサの構造を示す図であり、(A)は平面図、(B)は底面図および(C)は平面図におけるA−A線断面図である。吸着燃焼式ガスセンサ40は、図1に示すように、感応素子部Rsおよび補償素子部Rrから構成されている。感応素子部Rsは、白金(Pt)からなるヒータ42および白金族、たとえばパラジウム(Pd)を担持したアルミナ(Al2 3 )からなるPd/Al2 3 触媒層43を含み、補償素子部Rrは、白金(Pt)からなるヒータ44およびアルミナ(Al2 3 )層45を含む。詳しくは、この吸着燃焼式ガスセンサ40は、シリコン(Si)ウエハ41の上に、酸化シリコン(SiO2 )膜48c、窒化シリコン(SiN)膜48bおよび酸化ハフニウム(HfO2 )膜48aからなる絶縁薄膜が成膜され、その上に、感応素子部Rsとして白金(Pt)からなるヒータ42およびPd/Al2 3 触媒層43、補償素子部Rrとして白金(Pt)ヒータ42およびアルミナ(Al2 3 )層45が形成されている。また、吸着燃焼式ガスセンサ40は、異方性エッチングにより凹部46及び47を形成して、それぞれ、薄膜ダイアフラムDs及びDrを形成することにより熱容量を小さくしている。
接触燃焼式ガスセンサ40は、固定抵抗とヒータ42および44とのブリッジ接続によるセンサブリッジ回路に駆動電圧を印加することにより駆動される。まず、Lレベルの駆動電圧を所定の時間だけ印加して低温で駆動し、雰囲気中のガスを感応素子部Rsの触媒層43に吸着させる。次に、駆動電圧をLレベルからHレベルに切り替えて所定の時間だけ印加することにより高温で駆動し、吸着したガスを燃焼させる。低温駆動から高温駆動に切り替えた際、吸着燃焼式ガスセンサ40の温度上昇は、センサへ供給されるエネルギーに依存し、ガスのない雰囲気中で感応素子部Rsおよび補償素子部Rrを同じ駆動電圧で駆動すれば、所定の温度に達するまでの時間は等しくなる。また、ガスの存在する雰囲気中で同様の駆動を行えば、吸着されたガスが燃焼する感応素子部Rs側はその燃焼エネルギーにより補償素子部Rr側よりも早く所定温度に達する。
以上のことにより、感応素子部Rsと補償素子部Rrでは、所定温度に達するまでの時間の差が発生する。そこで、発生する昇温時間の差を計数することで、ガス濃度の検出が可能である。また、検出対象が時間であるため、マイコン等に内蔵のカウンタ等を利用して簡単にガス検知回路を構成することができる。
図2は、上述の吸着燃焼式ガスセンサを用いた本発明の実施の形態に係るガス検知方法を実施するガス検知装置の構成を示すブロック図、図3は、図1のガス検知装置の具体的構成例を示す回路図、図4は、図1のガス検知装置で用いられる駆動電圧の波形例を示すタイミングチャート、図5は、図1のガス検知装置の動作を説明するフローチャートである。
本発明のガス検知装置1は、マイコン50、電源51、ブリッジ駆動回路52、分圧回路53、センサブリッジ回路54、比較回路55および56、Rs保護用リミット回路57およびRr保護用リミット回路58から構成されている。マイコン50は、請求項における計数手段に相当し、比較回路55は、請求項における第1のトリガ信号生成手段に相当し、比較回路56は、請求項における第2のトリガ信号生成手段に相当し、Rs保護用リミット回路57は、請求項における第1の制限手段に相当し、Rr保護用リミット回路58は、請求項における第2の制限手段に相当する。
マイコン(以下、MCUという)50は、ブリッジ駆動基準電圧Vref(D/A出力)と駆動パルスを出力し、ブリッジ駆動回路52は、電源51からの電源電圧を調整し、ブリッジ駆動基準電圧Vref信号に応じた電圧Vbがセンサブリッジ回路54に印加されるように制御を行う。また、駆動パルスのLレベル/Hレベルに同期して、電圧Vbを低温駆動用のLレベル、高温駆動用のHレベルに変化させている。ブリッジ駆動回路52から供給された電圧Vbは、センサブリッジ回路54と分圧回路53へ供給される。
センサブリッジ回路54は、固定抵抗R1と吸着燃焼式ガスセンサ40における感応素子部Rsのヒータ42との直列接続と、固定抵抗R2と吸着燃焼式ガスセンサ40における補償素子部Rrのヒータ44との直列接続で構成されている。また、分圧回路53は、抵抗R3,R4およびR5からなり、電圧Vbを分圧し、制限値Vref1および基準電圧Vref2を出力する。
吸着燃焼式ガスセンサ40における感応素子部Rsと補償素子部Rrのヒータ42および44は、それぞれ、白金抵抗体で構成されているため、電流が流れることにより発熱し、自身の抵抗値が上昇する。つまり、感応素子部Rsと補償素子部Rrのヒータ42および44の抵抗値は、その温度を表している。感応素子部Rsのヒータ42の抵抗値変化は、固定抵抗R1との接続点電圧V+として出力され、比較回路55に入力される。補償素子部Rrのヒータ44の抵抗値変化は、固定抵抗R2との接続点電圧V−として出力され、比較回路56に入力される。
比較回路55は、電圧Vbを分圧した基準電圧Vref2とセンサブリッジ回路54の電圧V+を比較し、感応素子部Rsの抵抗値が所定値(所定温度)になったことを判定し、Hレベルのトリガ信号T1を出力する。比較回路56も、同様に、電圧Vbを分圧した基準電圧Vref2とセンサブリッジ回路54の電圧V−を比較し、補償素子部Rrの抵抗値が所定値(所定温度)になったことを判定し、Hレベルのトリガ信号T2を出力する。
以上より、比較回路のトリガ信号T1,T2は、感応素子部Rsと補償素子部Rrが、それぞれ、所定温度に達したときに出力されるように構成されている。
低温駆動により、ガス吸着が行われた吸着燃焼式ガスセンサ40は、高温駆動に切り替わると、触媒層43が設けられている感応素子部Rsのみのガスが燃焼し、その温度上昇が補償素子部Rr側よりも早くなる。したがって、トリガ信号T2よりも早く、トリガ信号T1がHレベルになる。つまり、Hレベルのトリガ信号T1の発生時点からHレベルのトリガ信号T2の発生時点までの時間間隔は、ガス濃度に依存し、その濃度が高くなるほど上記時間間隔が広くなる。この時間間隔を、MCU50の内蔵カウンタで計数することにより、ガス濃度を取得する。すなわち、計数値を、MCU50の内部メモリに予め格納されている計数値対ガス濃度テーブルを参照して、対応するガス濃度値を取得する。
なお、図2では、トリガ信号T1およびT2を別々にMCU50に入力しているが、後述するようにロジック回路59(図3参照)でT1・/T2のロジックを構成することで、トリガ信号T1がHレベルになってからトリガ信号T2がHレベルになるまでの期間だけ、上記時間間隔を表すHレベルの論理出力をロジック回路59からMCU50に入力することも可能である。この場合、MCU50は、Hレベルの論理出力のH期間の長さを計数すればよい。
トリガ信号T1およびT2が発生した後、MCU50が駆動パルスをLレベルに切り替えるまでの期間は、吸着燃焼式ガスセンサ40は、電圧Vbによって自身に流れる電流と、その発熱による抵抗値の増加が平衡するまで温度が上昇する。この温度上昇は、センサ劣化の原因になる。そこで、過剰な温度上昇を抑えるために、Rs保護用リミット回路57は、分圧回路53でVref1>Vref2が成立するように設定された制限値Vref1と電圧V+を比較し、電圧V+が制限値Vref1を超えないように制御している。Rr保護用リミット回路58も、同様に、制限値Vref1と電圧V−を比較し、電圧V−が制限値Vref1を超えないように制御している。
次に、図3は、図2のガス検知装置の具体的構成を示す回路図である。
ブリッジ駆動回路52は、オペアンプU5、pnp型トランジスタQ1、npn型トランジスタQ2および抵抗R6〜R12からなり、電源51としての+Vcc電圧が供給されている。ブリッジ駆動回路52は、MCU50から出力されるブリッジ駆動基準電圧Vref(D/A出力)と駆動パルスにより制御され、ブリッジ駆動基準電圧Vref信号に応じた電圧Vbをセンサブリッジ回路54に印加する。駆動パルスのLレベル/Hレベルに同期して、電圧Vbを低温駆動用のLレベル、高温駆動用のHレベルに変化させている。
オペアンプU5の反転入力端子には、ブリッジ駆動基準電圧Vref信号が入力され、非反転入力端子には、電圧Vbを抵抗R9,R11,R12で分圧し、抵抗R11およびR12に発生する電圧が入力される。上記両電圧が比較され、反転入力端子より非反転入力端子の電位が高い場合、オペアンプU5の出力電圧が高くなる。オペアンプU5の出力電圧は、トランジスタQ1のベースに供給され、その電圧が高くなるにしたがい、トランジスタQ1のエミッタ−コレクタ間の抵抗が増加し、電圧Vbが低下する。以上により、電圧Vbは、抵抗R9,R11,R12とブリッジ駆動基準電圧Vref信号により任意の電圧に定電圧制御される。
Vb=(R9+R11+R12)/(R11+R12)×Vref・・・(1)
駆動パルスがHレベルの場合、トランジスタQ2がオン状態になるため、上記(1)式の抵抗R12は短絡され、ゼロオームとなる。この状態は、駆動パルスがLレベルの場合と比較して、電圧Vbが高い電圧に制御される。したがって、駆動パルスをL/Hレベルに切り替えることで、電圧VbをL/Hレベルに切り替えることができ、低温駆動状態と高温駆動状態を選択することができる。
ブリッジ駆動基準電圧Vrefを一意的に決めた場合、抵抗R9と(R11+R12)の抵抗比は、低温駆動時の電圧Vbを決定し、抵抗R11と抵抗R12の抵抗比は、高温駆動時の電圧Vbを決定する。ブリッジ駆動回路52からの電圧Vbは、センサブリッジ回路54と分圧回路53に供給される。
センサブリッジ回路54は、固定抵抗R1と感応素子部Rsのヒータ42の直列接続、固定抵抗R2と補償素子部Rrのヒータ44の直列接続で構成されている。また、分圧回路53は、電圧Vbを抵抗R3,R4,R5で分圧し、第1および基準電圧Vref1およびVref2を出力する。
吸着燃焼式ガスセンサ40における感応素子部Rsと補償素子部Rrのヒータ42および44は、それぞれ、白金抵抗体で構成されているため、電流が流れることにより発熱し、自身の抵抗値が上昇する。つまり、感応素子部Rsと補償素子部Rrのヒータ42および44の抵抗値は、その温度を表していることになる。感応素子部Rsのヒータ42の抵抗値変化は、固定抵抗R1との接続点電圧V+として出力され、比較回路55に入力される。補償素子部Rrのヒータ44の抵抗値変化は、固定抵抗R2との接続点電圧V−として出力され、比較回路56に入力される。
比較回路55は、オペアンプからなるコンパレータU1と抵抗R13,R14から構成され、比較回路56は、オペアンプからなるコンパレータU2と抵抗R15,R16から構成されている。
コンパレータU1は、電圧Vbを抵抗分圧した基準電圧Vref2とセンサブリッジ回路54の電圧V+を比較し、V+>Vref2の状態でHレベルのトリガ信号T1を出力する。たとえば、電圧Vbが低温駆動から高温駆動に切り替わると、感応素子部Rsに流れる電流が増加し、その温度上昇に伴って感応素子部Rsの抵抗値が大きくなり、V+電位が上昇する。V+とVref2の電圧が等しくなる感応素子部Rsの抵抗値の条件は、以下の(2)式で表される。
Rs=R1・R5/(R3+R4)・・・(2)
電圧V+と基準電圧Vref2の関係をコンパレータU1で比較することにより、感応素子部Rsが所定値(所定温度)になったことを判定することができる。さらに、この所定値は、抵抗R1,R3,R4およびR5の抵抗値のみに依存するため、容易に決めることが可能である。同様に、電圧V−と基準電圧Vref2が等しくなる補償素子部Rrの抵抗値の条件は以下の(3)式で表される。
Rr=R2・R5/(R3+R4)・・・(3)
以上により、コンパレータU1、U2の出力は、感応素子部Rsと補償素子部Rrが、それぞれ、所定温度に達した時にHレベルのトリガ信号T1,T2の出力を行うように構成されている。
高温駆動時には、感応素子部Rsおよび補償素子部Rrの抵抗値が、上記(2)および(3)式の右辺よりも大きくなるように、低温駆動時には、感応素子部Rsおよび補償素子部Rrの抵抗値が上記(2)および(3)式の右辺よりも小さくなるように、電圧Vbまたは抵抗R1〜R5を設定する必要がある。
Rs保護用リミット回路57は、オペアンプU3、npn型トランジスタQ3および抵抗R17〜R20から構成される。Rr保護用リミット回路58は、オペアンプU4、npn型トランジスタQ4および抵抗R21〜R24から構成される。
トリガ信号T1およびT2が発生した後、MCU50が駆動パルスをLレベルに切り替えるまでの期間に、吸着燃焼式ガスセンサ40は、高温駆動された電圧Vbによって自身に流れる電流と、その発熱による抵抗値の増加が平衡するまで温度上昇する。この温度上昇は、センサ劣化の原因となるため、電圧Vbは必要以上に上げないか、または、MCU50がトリガ信号T2を検出後すぐに駆動パルスをLレベルに切り替える必要がある。しかし、電圧Vbをあまり低く設定すると、基準電圧Vref2付近でセンサ温度が平衡してしまい、コンパレータによる基準電圧Vref2との比較が困難である。また、ガス濃度が高い場合には、トリガ信号T1の出力後トリガ信号T2出力までの期間が長くなり、MCU50が駆動パルスをLレベルに切り替える前に、感応素子部Rs側の温度が上昇してしまう。
そこで、分圧回路53によりVref1>Vref2が成立するように制限値Vref1を設定し、この制限値Vref1と電圧V+をRs保護用リミット回路57で監視している。Rs保護用リミット回路57は、制限値Vref1より電圧V+が高くなると、オペアンプU3の出力電圧が高くなり、トランジスタQ3のベース電圧を上昇させる。トランジスタQ3は、ベース電圧の上昇に伴い、コレクタ−エミッタ間の抵抗値が下がり、V+電位を接地電位GNDへバイパスさせるように作用する。つまり、感応素子部Rsの温度が、制限値Vref1で設定される温度を超えようとした場合に、電圧V+を制限値Vref1に固定する制御をしている。Rr保護用リミット回路58も、同様に、制限値Vref1と電圧V−を監視している。Rr保護用リミット回路58は、制限値Vref1より電圧V−が高くなると、オペアンプU4の出力電圧が高くなり、トランジスタQ4のベース電圧を上昇させる。トランジスタQ4は、ベース電圧の上昇に伴い、コレクタ−エミッタ間の抵抗値が下がり、V+電位を接地電位GNDへバイパスさせ、電圧V−を制限値Vref1に固定する制御をしている。
以上により、感応素子部Rsの最大許容温度は、制限値Vref1により制御することができ、感応素子部Rsは、抵抗R1,R3,R4,R5の抵抗値のみに依存する下記(4)式で制限されることになる。同様に、補償素子部Rrは、抵抗R2,R3,R4,R5の抵抗値のみに依存する下記(5)式の値で制限されることになる。
Rs=(R4+R5)・R1/R3・・・(4)
Rr=(R4+R5)・R2/R3・・・(5)
次に、上記の構成を有するガス検知装置の動作原理を説明する。まず、ガスが存在しない雰囲気に吸着燃焼式ガスセンサ40が置かれている場合の動作を考える。MCU50の指示により低温駆動を開始すると、吸着燃焼式ガスセンサ40は、吸着期間として動作する。しかし、雰囲気中にガスが存在しないため、吸着燃焼式ガスセンサ40へのガス吸着は発生しない。
次に、ガスが存在する雰囲気中に吸着燃焼式ガスセンサ40が置かれている場合を考える。MCU50の指示により低温駆動を開始すると、吸着燃焼式ガスセンサ40は吸着期間として動作する。雰囲気中にガスが存在するため、吸着燃焼式ガスセンサ40へのガス吸着が発生する。次に、高温駆動に切り替えると、吸着燃焼式ガスセンサ40は燃焼期間として動作する。上記により吸着燃焼式ガスセンサ40へのガス吸着が行われているため、触媒層43が設けられている感応素子部Rs側のみガスが燃焼し、その温度上昇が補償素子部Rr側よりも早くなる。したがって、トリガ信号T2よりも早くトリガ信号T1がHレベルになる。雰囲気中のガス濃度が高くなるほど、燃焼熱が多く発生するため、トリガ信号T1が、より早くHレベルになる。
つまり、トリガ信号T1の発生時点からトリガ信号T2の発生時点までの時間間隔は、ガス濃度に依存し、その濃度が高くなるほど時間間隔が広くなる。
MCU50は、このトリガ間隔をカウンタで計数することにより、ガス濃度を取得することができる。すなわち、計数値を、MCU50の内部メモリに予め格納されている計数値対ガス濃度テーブルを参照して、対応するガス濃度値を取得する。
図3の回路では、トリガ信号T1,T2に対してT1・/T2のロジックを構成するためのロジック回路59をさらに備えている。ロジック回路59は、NANDゲートN1〜N3からなる。NANDゲートN1は、両入力端子にトリガ信号T1が入力され、インバータとして動作する。NANDゲートN2は、一方の入力端子にトリガ信号、他方の入力端子にNANDゲートN1の出力が入力される。NANDゲートN3は、両入力端子にNANDゲートN2の出力が入力され、インバータとして動作する、NANDゲートN3の出力として、トリガ信号T1がHレベルになってからトリガ信号T2がHレベルになるまでの期間だけHレベルとなるT1・/T2のロジックがMCU50に入力される。この場合、MCU50は、T1・/T2のロジック出力のH期間の長さを計数すればよい。
たとえば、本発明のガス検知装置で検知されるトルエンガスのガス濃度とトリガ信号T1およびT2の時間間隔の関係は、図6に示す特性図の通りである。
次に、ガス検知装置1のMCU50の動作処理について図5のフローチャートを参照しながら説明する。まず、ブリッジ駆動基準電圧Vrefを既定値に設定し、D/A変換してブリッジ駆動回路52へ出力する(ステップS1)。次に、停止(電源オフ)期間中吸着燃焼式ガスセンサ40に吸着されたガスを燃焼させるため、駆動パルス(図4)をHレベルにして所定の期間P1(たとえば、数10秒〜数分程度であるが、ここでは3分とする)だけ高温駆動する(ステップS2)。
次に、駆動パルスをLレベルにして、所定期間P2だけ低温駆動し、センサにガスを吸着させる(ステップS3)。なお、低温駆動する所定期間P2は、1秒〜30秒程度であるが、対象とするガスや濃度範囲により異なり、低濃度の検出ほど長く設定する。ここでは、所定期間P2は、30秒とする。
次に、トリガ信号T1の発生時点からトリガ信号T2の発生時点までの期間(時間間隔)を計数するカウンタをリセットする(ステップS4)。次に、駆動パルスをHレベルにして高温駆動する(ステップS5)。この、ステップS5における高温駆動状態は、後述するようにステップS5〜S10の間維持される。次に、感応素子部Rsの温度が基準電圧Vref2で設定した値になり、T1が入力されるまで待機する(ステップS6)。
次に、トリガ信号T1からトリガ信号T2までの期間を計数するカウンタをスタートさせる(ステップS7)。次に、補償素子部Rrの温度が基準電圧Vref2で設定した値になり、トリガ信号T2が入力されるまで待機する(ステップS8)。次に、トリガ信号T1からトリガ信号T2までの期間を計数するカウンタをストップする(ステップS9)。次に、カウンタで計数したカウント値を出力し(ステップS10)、次いでステップS3に戻り、再び、駆動パルスをLレベルにして、所定期間P2だけ低温駆動し、センサにガスを吸着させ、以後、ステップS4〜S10の動作を繰り返す。なお、ステップ5のHレベル高温駆動は、ステップS5〜S10を経てステップS3に戻りLレベル低温駆動を開始するまで維持され、図4で示す期間P3となるが、この期間P3は、ガス濃度に応じてトリガ信号T1からトリガ信号T2までの期間が変わるので、ガス濃度により変化する期間である。
以上説明したように、本発明によれば、以下の利点が得られる。
(1)高価な増幅器やA/D変換器が不要であるため、コストを低減できる。
(2)部品点数が減り、小型化が可能になる。
(3)時間の計測は、アナログ電圧を扱うよりも安定性がよく、高精度な検出ができる。
(4)センサの昇温中に検出が完了するため、高温駆動する時間を最低限に抑えることが可能で、消費電力とセンサ劣化を抑えることができる。
以上の通り、本発明の実施の形態について説明したが、本発明はこれに限らず、種々の変形、応用が可能である。
発明のガス検知装置で使用される吸着燃焼式ガスセンサの構造を示す図であり、(A)は平面図、(B)は底面図および(C)は平面図におけるA−A線断面図である。 本発明の実施の形態に係るガス検知方法を実施するガス検知装置の構成を示すブロック図である。 図1のガス検知装置の具体的構成例を示す回路図である。 図1のガス検知装置で用いられる駆動電圧の波形例を示すタイミングチャートである。 図1のガス検知装置の動作を説明するフローチャートである。 本発明のガス検知装置で検知されるトルエンガスのガス濃度とトリガ信号T1およびT2の時間間隔の関係を示す特性図である。 従来の吸着燃焼式ガスセンサを用いたガス検知装置の構成例を示すブロック図である。
符号の説明
1 ガス検知装置
40 吸着燃焼式ガスセンサ
Rs 感応素子部
Rr 補償素子部
50 MCU(マイコン)(計数手段)
52 ブリッジ駆動回路(駆動手段)
53 分圧回路
54 センサブリッジ回路
55 比較回路(第1のトリガ信号生成手段)
56 比較回路(第2のトリガ信号生成手段)
57 Rs保護用リミット回路(第1の制限手段)
58 Rr保護用リミット回路(第2の制限手段)

Claims (3)

  1. 吸着燃焼式ガスセンサを用いたガス検知装置であって、
    前記吸着燃焼式ガスセンサの感応素子部および補償素子部に、低温駆動するためのLレベルおよび高温駆動するためのHレベルの駆動電圧を交互に印加する駆動手段と、
    前記高温駆動時の前記感応素子部からの検出電圧を基準電圧と比較し、その比較結果により第1のトリガ信号を生成する第1のトリガ信号生成手段と、
    前記高温駆動時の前記補償素子部からの検出電圧を前記基準電圧と比較し、その比較結果により第2のトリガ信号を生成する第2のトリガ信号生成手段と、
    前記第1のトリガ信号生成手段からの前記第1のトリガ信号と前記第2のトリガ信号生成手段からの前記第2のトリガ信号が入力され、両トリガ信号の時間間隔を計数する計数手段とを備え、
    前記計数手段の計数結果に基づいて、ガス濃度を検知することを特徴とするガス検知装置。
  2. 請求項1記載のガス検知装置において、
    前記高温駆動時の前記感応素子部からの検出電圧が高くなった場合に、前記検出電圧を所定の制限値以内に制限する第1の制限手段と、
    前記高温駆動時の前記補償素子部からの検出電圧が高くなった場合に、前記検出電圧を所定の制限値以内に制限する第2の制限手段とをさらに備えたことを特徴とするガス検知装置。
  3. 吸着燃焼式ガスセンサを用いたガス検知方法であって、
    前記吸着燃焼式ガスセンサの感応素子部および補償素子部に、低温駆動するためのLレベルおよび高温駆動するためのHレベルの駆動電圧を交互に印加し、
    前記高温駆動時の前記感応素子部からの検出電圧が基準電圧を超えた時に発生する第1のトリガ信号と、前記高温駆動時の前記補償素子部からの検出電圧が前記基準電圧を超えた時に発生する第2のトリガ信号の時間間隔を計数し、
    その計数結果に基づいて、ガス濃度を検知することを特徴とするガス検知方法。
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