JP2011111872A - 鋼管矢板の継手構造および鋼管矢板基礎 - Google Patents

鋼管矢板の継手構造および鋼管矢板基礎 Download PDF

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Abstract

【課題】良好な施工性および安定した品質を確保して建設コストの削減および施工期間の短縮が実現できるとともに、継手部のせん断耐力を向上させることができる鋼管矢板の継手構造および鋼管矢板基礎を提供すること。
【解決手段】雌型継手5および雄型継手6にL−L継手の構造を採用したことで、継手部3における第1充填空間Aや第2充填空間Bの土砂の掘削を確実に行うことができ、かつ空間A,B内部の洗浄を確実に行うことができ、さらに空間A,B内部への充填材7の充填を密実に行うことができる。さらに、雄型継手6の脚部61に突起が形成されているとともに突起を有する鋼板8が一対の雌型継手5の間に設けられていることで、第1充填空間Aと第2充填空間Bの両方の充填材7を拘束できる。
【選択図】図2

Description

本発明は、鋼管矢板の継手構造および鋼管矢板基礎に係り、詳しくは、互いに隣り合って打設される一対の鋼管矢板本管における一方の雌型継手と他方の雄型継手との嵌合によって当該鋼管矢板本管同士を連結する鋼管矢板の継手構造、および当該継手構造によって連結された複数の鋼管矢板本管を備えて構成される鋼管矢板基礎に関する。
従来、鋼管矢板の継手構造として、隣り合う鋼管矢板の各々にスリットを有する円形継手鋼管を固定しておき、これらの継手鋼管同士を嵌合させつつ鋼管矢板を地中に連続して建て込み、継手鋼管内の土砂を掘削、洗浄した後に、継手鋼管内にモルタルを充填して鋼管矢板同士を連結する継手構造が一般的に利用されている。このような継手構造は、継手鋼管(P:パイプ)同士を互いに嵌合することからP(パイプ)−P(パイプ)継手(P−P継手)と呼称されている。
また、P−P継手の他に鋼管矢板の継手構造としては、軸方向にスリットを有する継手鋼管とT形鋼からなるT型の雄継手とを互いに嵌合させて鋼管矢板を連結するP−T継手(特許文献1参照)や、間隔をおいて平行に内向きに設置される一対のL形鋼による雌継手と、1つのT形鋼からなる雄継手とを互いに嵌合させて鋼管矢板を連結するL−T継手などが用いられることもある。
特許文献1に記載の嵌合継手部構造では、表面に複数個の突起が設けられた雄型嵌合継手である突起付T型鋼と、内面に複数個の突起が設けられた雌型嵌合継手である突起付継手鋼管とを嵌合させ、当該突起付継手鋼管の内部にモルタルを打設している。
以上のような従来の継手構造では、以下のような不都合があった。
先ず、P−P継手の場合には、継手相互が嵌合した状態の嵌合継手部に3つの空間が形成されるために、継手嵌合後に狭隘な継手部の各空間で土砂掘削や洗浄、モルタル充填などの各作業を行う必要がある。このことから、継手部の確実な洗浄および密実にモルタル充填を行うことが困難であり、品質が不安定になる可能性があることから、モルタルの付着強度が十分に確保されず、継手部のせん断耐力が確実に発揮できない可能性がある。
また、P−T継手やL−T継手においても、P−P継手の場合と同様に、継手嵌合空間が狭隘であるために、継手部の確実な洗浄および密実なモルタルの充填を行うことは困難であり、品質が不安定になる恐れがあるため、継手部のせん断耐力が確実に発揮できない可能性がある。さらに、P−T継手やL−T継手では、地震や土圧、水圧などにより鋼管矢板に水平力が作用した際に、鋼管矢板間に生じるせん断力が継手部に伝わり継手同士が相対的にずれることで、モルタルと継手との間で相対変位が生じてモルタルが膨張することにより、継手鋼管やL形鋼からなる雌継手が開く方向に変形することから、継手部の継手鋼管やT形鋼とモルタルとの付着力が低減し、継手部のせん断耐力がさらに低下してしまうという不都合も発生する。
以上のような従来の継手構造の不都合を解消し、継手部の土砂の掘削、洗浄およびモルタル充填に関する作業性を良好にするとともに、継手部のせん断耐力の確保を図った継手構造として、一対のL型鋼材のアーム部を内向きに配置した雌型継手と、一対のL型鋼材のアーム部を外向きに配置した雄型継手とを互いに嵌合させるL−L継手が提案されている(特許文献2参照)。
特許文献2に記載のL−L継手では、雌型継手と雄型継手における各L型鋼材で挟まれる本管外周面に、複数本の突起付き棒状鋼材を所定間隔で固定することで、モルタルとの付着強度を確実に発揮させることができ、優れたせん断耐力を確実に発揮することができるようになっている。さらに、L型鋼材の脚部長さが建て込み精度を確保するように適切に設定されている継手部であることにより、継手部が適度な嵌合余裕を有しているために、鋼管矢板の建て込み時のガイドとして用いることができ、かつ鋼管矢板の建て込みを高い精度で実施することができるようになっている。そして、嵌合継手内の土砂掘削洗浄およびモルタル等のセメント系常温硬化性材料(充填材)の充填作業に十分な空間を有しているために、嵌合継手内の土砂の掘削を確実に行うことができ、かつ嵌合継手内の洗浄を確実に行うことができ、さらに嵌合継手内への充填材の充填を密実に行うことができる。従って、特許文献2に記載の継手構造では、施工性が飛躍的に向上し、かつ安定した品質になるとともに、鋼管矢板本管の外周面の棒状鋼材により充填材との付着を確実にし、継手部のせん断耐力を向上させることができることから、基礎全体の安定性を向上させることにより鋼管本数の低減や鋼管板厚の減少など建設コストの削減および施工期間の短縮が実現できるようになっている。
特開平8−27774号公報 特開2005−282174号公報
しかしながら、特許文献2記載の継手構造では、本管外周面の、複数本の突起付き棒状鋼材と充填材との付着を期待する構造であり、本管とL型鋼材で囲まれる充填材からなる断面の本管側の両端部に大きな付着力が発生するため充填材に引張力が働き、最大せん断力が発揮した後すぐに充填材の長手方向、一方の本管から他方の本管に亘って斜めせん断ひび割れが生じる。最大せん断力発生後に斜めせん断ひび割れが生じると、せん断力が急激に低下することが知られており、これは地震による水平力や土圧などによる水平力を鋼管矢板基礎が受けた際、鋼管矢板同士に鉛直方向の相対的な変位が発生し、継手部でせん断抵抗力が発揮されるが、継手部の相対変形量が増加した際にせん断力が急激に低下するため吸収できるエネルギーが小さいためである。
本発明の目的は、良好な施工性および安定した品質を確保して建設コストの削減および施工期間の短縮が実現できるとともに、安定した継手部のせん断耐力を発揮させることができる鋼管矢板の継手構造および鋼管矢板基礎を提供することにある。
本発明の鋼管矢板の継手構造は、互いに隣り合って打設される一対の鋼管矢板本管のうち一方の雌型継手と他方の雄型継手との嵌合によって当該鋼管矢板本管同士を連結する鋼管矢板の継手構造であって、前記雌型継手は、前記一方の鋼管矢板本管の外面に脚部が固定された一対の雌L型鋼材を有するとともに、当該一対の雌L型鋼材のアーム部が互いに近づく内向きに配置され、前記雄型継手は、前記他方の鋼管矢板本管の外面に脚部が固定された一対の雄L型鋼材を有するとともに、当該一対の雄L型鋼材のアーム部が互いに離れる外向きに配置され、前記一対の雄L型鋼材の脚部における互いに対向する面には、凹凸が設けられ、前記一方の鋼管矢板本管の外周面における前記一対の雌L型鋼材の脚部で挟まれる領域には、当該領域の少なくとも一部を覆うとともに、表面に凹凸が形成された板状部材が設けられていることを特徴とする。
以上の本発明によれば、一対の雄L型鋼材の脚部における互いに対向する面と、一対の雌L型鋼材の脚部で挟まれる鋼管矢板本管の外周面に設けた板状部材の外周面とに凹凸を設けることで、これらの凹凸により、一対の雄L型鋼材の脚部と、一対の雄L型鋼材の脚部とアーム部との境界部分同士を結ぶ仮想面(以下、単に境界仮想面という)と、他方の鋼管矢板本管との間の充填空間(以下、第1充填空間という)に充填された充填材を拘束できる。特に、板状部材を設けることで、境界仮想面と、雌L型鋼材と、当該雌L型鋼材が設けられている一方の鋼管矢板本管側との間(以下、第2充填空間という)に充填された充填材も拘束できるため、せん断耐力を向上できる。また、従来ある鋼管矢板本管に板状部材を溶接などの方法により設けるだけでせん断耐力を向上でき、コストの増加を最小限に抑えることができる。さらに、本発明では、雌型継手および雄型継手にL−L継手の構造を採用しているため、前記特許文献2の継手構造と同様に、嵌合継手内の土砂の掘削を確実に行うことができ、かつ嵌合継手内の洗浄を確実に行うことができ、さらに嵌合継手内への充填材の充填を密実に行うことができる。従って、施工性が飛躍的に向上し、かつ安定した品質になるとともに、前述のように各L型鋼材と充填材との付着を確実にし、継手部のせん断耐力を向上させることができることから、建設コストの削減および施工期間の短縮が実現できる。
この際、本発明の鋼管矢板の継手構造では、前記板状部材の前記鋼管矢板本管の外周方向に沿った幅寸法は、前記雄L型鋼材の脚部の前記鋼管矢板本管の連結方向に沿った長さ寸法の2倍未満に設定されていることが好ましい。
このような構成によれば、鋼管矢板本管の外周方向に沿った板状部材の凹凸部分の幅寸法(以下、単に雌側凹凸幅寸法という)と、鋼管矢板本管の連結方向に沿った雄L型鋼材脚部の凹凸部分の長さ寸法(以下、単に雄側凹凸長さ寸法という)の設定により、せん断破壊のメカニズムを適切にコントロールでき、安定したせん断耐力を発揮できる。すなわち、雌側凹凸幅寸法が雄側凹凸長さ寸法の2倍を超える場合、第1充填空間にせん断破壊面が生じてしまう可能性がある。第1充填空間における鋼管矢板本管の連結方向に沿った寸法(以下、単に本管連結方向寸法という)は、第2充填空間の本管連結方向寸法よりも大きいため、高さ位置によりせん断破壊面の本管連結方向の位置が大きくずれてしまう。このため、充填材の引っ張りに伴う曲げ破壊が引き起こされ、垂直方向に対して斜めのせん断ひび割れ(以下、単に斜めせん断ひび割れという)が生じやすくなり、せん断耐力が急激に低下する恐れがある。これに対して、本発明では、雌側凹凸幅寸法を雄側凹凸長さ寸法の2倍未満として、第1充填空間にせん断破壊面を生じさせずに、第2充填空間にせん断破壊面を生じさせることで、高さによるせん断破壊面の本管連結方向の位置ずれを最小限に抑えることができる。このため、斜めせん断ひび割れの発生を抑制でき、安定したせん断耐力を発揮できる。
なお、雌側凹凸幅寸法は、雄側凹凸長さ寸法の1倍以上とすることが好ましく、すなわち、1倍未満とした場合には、前述したようなせん断耐力の向上という効果が十分に発揮できないためである。
さらに、本発明の鋼管矢板の継手構造では、前記一対の雄L型鋼材の脚部における前記鋼管矢板本管の連結方向に沿った長さが、前記一対の雌L型鋼材の脚部における前記連結方向に沿った長さよりも長く設定されていることが好ましい。
このような構成によれば、雌型継手の曲げ剛性を雄型継手よりも高くすることで、打設時は雄型継手が雌型継手より、曲げ剛性が低いため変形性能が高く雄型継手と雌型継手が競り合った状態になっても雄型継手が変形することで打設抵抗が低くなり、効率よく打設できることに加えて、せん断耐力を発揮する際には雄型継手の変形を、雄形継手より剛性の高い雌型継手が外側から押さえ込むことで抑制でき、高いせん断耐力を発揮できる。
また、本発明の鋼管矢板の継手構造では、前記一対の雄L型鋼材の板厚は、前記一対の雌L型鋼材の板厚よりも小さく設定されていることが好ましい。
このような構成によれば、打設時に継手が競った場合に雄型継手を変形しやすくすることができ、打設抵抗を小さく抑えることができる。また、雌型継手の剛性を雄型継手よりも高くすることで、せん断耐力を発揮する際の継手の変形を抑制でき、高いせん断耐力を発揮できる。
一方、本発明の鋼管矢板基礎は、前記いずれかの鋼管矢板の継手構造によって隣り合う鋼管矢板本管同士が連結されたことを特徴とする。
このような構成によれば、前述したように、L−L継手の構造を採用したことで、嵌合継手内の土砂の掘削を確実に行うことができ、かつ嵌合継手内の洗浄を確実に行うことができ、さらに第1充填空間と第2充填空間の充填材を拘束できる。従って、施工性が飛躍的に向上し、かつ安定した品質になるとともに、各L型鋼材と充填材との付着を確実にし、継手部のせん断耐力を向上させることができることから、建設コストの削減および施工期間の短縮が実現できる。
以上のような本発明の鋼管矢板の継手構造および鋼管矢板基礎によれば、L−L継手の嵌合継手内の土砂の掘削を確実に行うことができ、かつ嵌合継手内の洗浄を確実に行うことができ、さらに第1充填空間と第2充填空間の充填材を拘束できる。そして、雌型継手および雄型継手の各L型鋼材間に充填材を確実に充填することができ、充填材と各L型鋼材との付着を高めて継手部のせん断耐力を向上させることができる。
本発明の実施形態に係る鋼管矢板基礎を示す平面図および断面図である。 前記鋼管矢板基礎における鋼管矢板の継手構造を示す断面図である。 前記鋼管矢板の雄型継手の固定部分を拡大して示す斜視図である。 前記鋼管矢板の雌型継手と鋼板の固定部分を拡大して示す斜視図である。 本発明の実施例の試験体を示す側面図である。 前記実施例の試験体を示す横断面図である。 比較例1の試験体を示す横断面図である。 比較例2の試験体を示す横断面図である。 実施例、比較例1,2の試験結果を示すグラフである。 本発明の変形例に係る鋼管矢板の鋼板の固定部分を拡大して示す斜視図である。
以下、本発明の各実施形態を図面に基づいて説明する。
図1において、本実施形態の鋼管矢板基礎1は、河川や海岸近傍などに設けられる橋の橋脚を支持する井筒基礎であって、川底や海底の地盤Gに貫入される複数の鋼管矢板2を平面円形に並設するとともに、これらの鋼管矢板2同士を継手部3を介して互いに連結して構成されている。各鋼管矢板2は、図2に示すように、それぞれ円形鋼管からなる鋼管矢板本管4(以下、単に本管4という)と、当該本管4の側面に設けられる雌型継手5と、この雌型継手5の反対側の側面に設けられる雄型継手6とを有して構成されている。そして、継手部3は、隣り合って打設される一対の鋼管矢板2のうち、一方(図2における下側)の鋼管矢板2Aの雌型継手5と、他方(図2における上側)の鋼管矢板2Bの雄型継手6とが互いに嵌合するとともに、嵌合した雌型継手5および雄型継手6で構成される空間A,Bにモルタルなどのセメント系常温硬化性充填材7(以下、単に充填材7という)を充填することで、鋼管矢板2A,2B同士を連結するように構成されている。
雌型継手5は、一方の鋼管矢板2Aにおける本管4の外面に固定される一対の雌L型鋼材50を有して構成され、これら一対の雌L型鋼材50は、それぞれ本管4の外面に溶接固定されて本管4外面から外方に延びる脚部51と、この脚部51の先端から略直角に折れ曲がるアーム部52とを有して断面略L字形に形成されている。そして、一対の雌L型鋼材50は、各々のアーム部52の先端が互いに近づく内向きに配置され、これらのアーム部52の先端間に雄型継手6を受け入れる開口部53を有して構成されている。
雄型継手6は、他方の鋼管矢板2Bにおける本管4の外面に固定される一対の雄L型鋼材60を有して構成され、これら一対の雄L型鋼材60は、それぞれ本管4の外面に溶接固定されて本管4外面から外方に延びる脚部61と、この脚部61の先端から略直角に折れ曲がるアーム部62とを有して断面略L字形に形成されている。そして、一対の雄L型鋼材60は、各々のアーム部62の先端が互いに離れる外向きに配置されるとともに、各脚部61が雌型継手5の開口部53に挿通されるようになっている。また、雄L型鋼材60は、図3にも示すように、一対の脚部61が互いに対向する側の表面に縞状の突起63(凹凸)を有した縞鋼板から形成され、この縞鋼板を折り曲げたアーム部62の外側表面にも縞状の突起63が形成されている。さらに、雄L型鋼材60の脚部61の水平方向(鋼管矢板本管4の連結方向)の長さは、雌L型鋼材50の脚部51の長さよりも長く設定されている。また、雄L型鋼材60の板厚は、雌L型鋼材50の板厚よりも小さく設定されている。
また、一方の本管4の外面における雌型継手5の脚部51間には、当該領域の上端から下端にかけての部分を覆うように鋼板8(板状部材)が溶接固定されている。この鋼板8は、図4にも示すように、表面に縞状の突起81(凹凸)を有した平板状の縞鋼板を一部ずつ徐々に曲げることで本管4と同じ曲率の円弧板状に形成されている。そして、鋼板8は、突起81が設けられた面が他方の本管4に対向するように一方の本管4に固定されている。また、鋼板8の円弧方向に沿った幅寸法(折り曲げ前の寸法(雌側凹凸幅寸法))Yは、雄L型鋼材60の脚部61の延出方向に沿った長さ寸法(雄側凹凸長さ寸法)Xの2倍未満の値に設定されている。
以上の継手部3において、雌型継手5と雄型継手6を図2に示すように嵌合させることで、雄L型鋼材60における各脚部61と、脚部61とアーム部62との境界部分同士を結ぶ境界仮想面と、他方の本管4の外面とで囲まれた位置には、充填材7が充填される第1充填空間Aが形成される。境界仮想面と、一方の本管4の外面と、雌L型鋼材50とで囲まれた位置には、第1充填空間Aに連続して充填材7が充填される第2充填空間Bが形成される。
この際、雄型継手6の表面に縞状の突起63が形成されるとともに、表面に縞状の突起81が形成された鋼板8が一方の本管4に設けられていることで、雄型継手6と第1充填空間Aの充填材7との付着、一方の本管4と第2充填空間Bの充填材7との付着がそれぞれ高まり、継手部3のせん断耐力が向上できるように構成されている。
以上の本実施形態によれば、雌型継手5および雄型継手6にL−L継手の構造を採用したことで、継手部3における第1充填空間Aや第2充填空間Bの土砂の掘削を確実に行うことができ、かつ空間A,B内部の洗浄を確実に行うことができ、さらに空間A,B内部への充填材7の充填を密実に行うことができる。さらに、雄型継手6の脚部61に突起63が形成されているとともに突起81を有する鋼板8が一対の雌型継手5の間に設けられていることで、第1充填空間Aと第2充填空間Bの両方の充填材7を拘束できる。従って、施工性が飛躍的に向上し、かつ安定した充填材7の品質が確保できるとともに、雌型継手5および雄型継手6と充填材7との付着を高めて、継手部3のせん断耐力の向上を図ることができる。また、地震による水平力や土圧などによる水平力を鋼管矢板基礎1が受けた際に、鋼管矢板2同士に鉛直方向の相対的な変位が発生し、継手部3でせん断抵抗力が発揮されるが、本実施形態では継手部3の相対変形量が増加しても安定したせん断耐力を発揮できることで大きなエネルギーを吸収し続けることができるため、鋼管矢板基礎1全体に及ぼす損傷を大幅に低減することができる。
また、雌側凹凸幅寸法Yが雄側凹凸長さ寸法Xの2倍未満に設定されているため、第1充填空間Aが凹凸で拘束されている面積の方が、第2充填空間Bが凹凸で拘束されている面積よりも大きくなり、第1充填空間Aの安定性が勝るために第1充填空間Aにせん断破壊面を生じさせずに、当該第1充填空間Aよりも本管連結方向の寸法が小さい第2充填空間Bにせん断破壊面を生じさせることができる。よって、斜めせん断ひび割れの発生を抑制でき、安定したせん断耐力を発揮できる。さらに、雄L型鋼材60の板厚が雌L型鋼材50の板厚よりも小さいため、打設抵抗を抑制できるとともに、せん断耐力を発揮する際の継手部3の変形を抑制でき、高いせん断力を発揮できる。そして、雄L型鋼材60の脚部61の鋼管矢板本管4の連結方向の長さを雌L型鋼材50の脚部51の長さよりも長くしているため、せん断耐力を発揮する際の継手部3の変形を抑制でき、高いせん断力を発揮できる。
以下、本発明の実施例について説明する。
本実施例では、雌型継手5の脚部51間に突起81を有する鋼板8を設けることの効果と、雌側凹凸幅寸法Yを雄側凹凸長さ寸法Xの2倍未満にすることの効果とを確認した。
最初に、試験体について説明する。先ず、実施例の試験体を作製するにあたり、図5および図6に示すように、一面に半径が400mm〜800mmの円弧状の面(円弧面)92を有する一対の支柱91と、互いに対向する面に円弧面92と同じ曲率の円弧面94を有する載荷柱93とを準備した。そして、一方の支柱91の円弧面92と載荷柱93の一方の円弧面94とに、それぞれ一対ずつの雄L型鋼材60からなる雄型継手6を固定した。雄L型鋼材60は、表面に突起63が設けられるとともに板厚が6mmの縞鋼板を折曲することで形成され、幅寸法(雄側凹凸長さ寸法X)が150mmの脚部61と、幅寸法が90mmのアーム部62とを有している。また、他方の支柱91の円弧面92と載荷柱93の他方の円弧面94とに、それぞれ一対ずつの雌L型鋼材50からなる雌型継手5を固定するとともに、当該一対の雌L型鋼材50の間に円弧面92と同じ曲率を有する円弧板状の鋼板8を固定した。この雌L型鋼材50は、板厚が9mmの鋼板を折曲することで形成され、幅寸法が130mmの脚部51と、幅寸法が90mmのアーム部52とを有している。鋼板8は、表面に突起81を有するとともに、雌側凹凸幅寸法Yが雄側凹凸長さ寸法Xの2倍未満の250mmに設定されている。なお、雄L型鋼材60と雌L型鋼材50と鋼板8の高さ寸法(図5の上下方向の寸法)は、1mに設定されている。
そして、一対の支柱91をその間に載荷柱93を配置できるように地盤G1に固定して、雄型継手6と雌型継手5を図5および図6に示すように嵌合させるとともに、第1充填空間Aと第2充填空間Bに充填材7を充填することで実施例の試験体を完成させた。
比較例1の試験体は、図7に示すように、実施例の試験体において雌L型鋼材50の間に設けた鋼板8の代わりに、それぞれ3本ずつの異形鉄筋95を支柱91と載荷柱93の長手方向に沿って溶接固定するとともに、雄L型鋼材60の間にもそれぞれ3本ずつの異形鉄筋95を溶接固定したこと以外、実施例の試験体と同様の構成を有している。
比較例2の試験体は、図8に示すように、実施例の試験体において設けた鋼板8の代わりに、表面に突起81を有するとともに雌側凹凸幅寸法Yが雄側凹凸長さ寸法Xの2倍を超える500mmに設定された鋼板96を設けたこと以外、実施例の試験体と同様の構成を有している。
次に、試験方法について説明する。図5に示すように、実施例の試験体の載荷柱93を下方に押し下げながら、雄型継手6と雌型継手5の相対変形(移動)量と押し下げるための荷重、すなわち雌継手5と雄継手6の間で発生するせん断力とを測定した。比較例1,2の試験体に対しても、同様の測定を行った。各試験体における継手の相対変形量と、せん断力の最大値に対する割合との関係を図9に示す。
実施例では、安定したせん断耐力が発揮されていることが確認できた。これは、図6に二点鎖線で示すように、第2充填空間Bにおける領域B1にせん断破壊面が生じたため、斜めせん断ひび割れの発生が抑制されたためと考えられる。
一方、比較例1では、相対変形量が約1.5mmを超えると、急激にせん断力が低下してしまうことが確認できた。これは、図7に二点鎖線で示すように、第1充填空間Aにおいて支柱91と載荷柱93の連結方向(図7の上下方向)の寸法が領域B1よりも大きい領域A1にせん断破壊面が生じたため、斜めせん断ひび割れが発生したためと考えられる。
また、比較例2では、相対変形量が3mmを超えると、急激にせん断力が低下してしまうことが確認できた。これは、図8に二点鎖線で示すように、支柱91と載荷柱93の連結方向の寸法が領域B1よりも大きい領域A2にせん断破壊面が生じたため、斜めせん断ひび割れが発生したためと考えられる。
以上から、雌L型鋼材50の間に鋼板8,96を設けた実施例と比較例2のせん断耐力が、同じ箇所に異形鉄筋95を設けた比較例1よりも優れていることが確認できた。また、雌側凹凸幅寸法を雄側凹凸長さ寸法の2倍未満とした実施例のせん断耐力が、2倍を超えるようにした比較例2よりも優れていることが確認できた。
なお、本発明は、前記実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる他の構成などを含み、以下に示すような変形なども本発明に含まれる。
例えば、前記実施形態では、橋脚の基礎として用いられる鋼管矢板基礎1について説明したが、本発明における鋼管矢板基礎は、橋脚に限らず、任意の構造物を支持する基礎として利用することが可能である。また、本発明の鋼管矢板の継手構造は、鋼管矢板基礎に限らず、土留め壁や護岸構造、地下構造物用連壁など任意の構造として利用可能であり、その用途は特に限定されるものではない。
また、図10に示すように、突起81を有する縞鋼板をV字状に曲げた鋼板8Aを鋼板8の代わりに設けてもよい。そして、鋼板8,8Aとしては、本管4の上端から下端にかけての部分のうちの一部のみを覆うような形状としてもよい。
その他、本発明を実施するための最良の構成、方法などは、以上の記載で開示されているが、本発明は、これに限定されるものではない。すなわち、本発明は、主に特定の実施形態に関して特に図示され、かつ説明されているが、本発明の技術的思想および目的の範囲から逸脱することなく、以上述べた実施形態に対し、形状、材質、数量、その他の詳細な構成において、当業者が様々な変形を加えることができるものである。
従って、上記に開示した形状、材質などを限定した記載は、本発明の理解を容易にするために例示的に記載したものであり、本発明を限定するものではないから、それらの形状、材質などの限定の一部もしくは全部の限定を外した部材の名称での記載は、本発明に含まれるものである。
1…鋼管矢板基礎、2,2A,2B…鋼管矢板、3…継手部、4…鋼管矢板本管、5…雌型継手、6…雄型継手、7…充填材、8,8A…鋼材(板状部材)、50…雌L型鋼材、51…脚部、52…アーム部、60…雄L型鋼材、61…脚部、62…アーム部、63,81…突起(凹凸)。

Claims (5)

  1. 互いに隣り合って打設される一対の鋼管矢板本管のうち一方の雌型継手と他方の雄型継手との嵌合によって当該鋼管矢板本管同士を連結する鋼管矢板の継手構造であって、
    前記雌型継手は、前記一方の鋼管矢板本管の外面に脚部が固定された一対の雌L型鋼材を有するとともに、当該一対の雌L型鋼材のアーム部が互いに近づく内向きに配置され、
    前記雄型継手は、前記他方の鋼管矢板本管の外面に脚部が固定された一対の雄L型鋼材を有するとともに、当該一対の雄L型鋼材のアーム部が互いに離れる外向きに配置され、
    前記一対の雄L型鋼材の脚部における互いに対向する面には、凹凸が設けられ、
    前記一方の鋼管矢板本管の外周面における前記一対の雌L型鋼材の脚部で挟まれる領域には、当該領域の少なくとも一部を覆うとともに、表面に凹凸が形成された板状部材が設けられていることを特徴とする鋼管矢板の継手構造。
  2. 請求項1に記載の鋼管矢板の継手構造において、
    前記板状部材の前記鋼管矢板本管の外周方向に沿った幅寸法は、前記雄L型鋼材の脚部の前記鋼管矢板本管の連結方向に沿った長さ寸法の2倍未満に設定されていることを特徴とする鋼管矢板の継手構造。
  3. 請求項1または請求項2に記載の鋼管矢板の継手構造において、
    前記一対の雄L型鋼材の脚部における前記鋼管矢板本管の連結方向に沿った長さが、前記一対の雌L型鋼材の脚部における前記連結方向に沿った長さよりも長く設定されていることを特徴とする鋼管矢板の継手構造。
  4. 請求項1から請求項3のいずれかに記載の鋼管矢板の継手構造において、
    前記一対の雄L型鋼材の板厚は、前記一対の雌L型鋼材の板厚よりも小さく設定されていることを特徴とする鋼管矢板の継手構造。
  5. 請求項1から請求項4のいずれかに記載の鋼管矢板の継手構造によって隣り合う鋼管矢板本管同士が連結されたことを特徴とする鋼管矢板基礎。
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