JP2011111872A - 鋼管矢板の継手構造および鋼管矢板基礎 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】雌型継手5および雄型継手6にL−L継手の構造を採用したことで、継手部3における第1充填空間Aや第2充填空間Bの土砂の掘削を確実に行うことができ、かつ空間A,B内部の洗浄を確実に行うことができ、さらに空間A,B内部への充填材7の充填を密実に行うことができる。さらに、雄型継手6の脚部61に突起が形成されているとともに突起を有する鋼板8が一対の雌型継手5の間に設けられていることで、第1充填空間Aと第2充填空間Bの両方の充填材7を拘束できる。
【選択図】図2
Description
また、P−P継手の他に鋼管矢板の継手構造としては、軸方向にスリットを有する継手鋼管とT形鋼からなるT型の雄継手とを互いに嵌合させて鋼管矢板を連結するP−T継手(特許文献1参照)や、間隔をおいて平行に内向きに設置される一対のL形鋼による雌継手と、1つのT形鋼からなる雄継手とを互いに嵌合させて鋼管矢板を連結するL−T継手などが用いられることもある。
特許文献1に記載の嵌合継手部構造では、表面に複数個の突起が設けられた雄型嵌合継手である突起付T型鋼と、内面に複数個の突起が設けられた雌型嵌合継手である突起付継手鋼管とを嵌合させ、当該突起付継手鋼管の内部にモルタルを打設している。
先ず、P−P継手の場合には、継手相互が嵌合した状態の嵌合継手部に3つの空間が形成されるために、継手嵌合後に狭隘な継手部の各空間で土砂掘削や洗浄、モルタル充填などの各作業を行う必要がある。このことから、継手部の確実な洗浄および密実にモルタル充填を行うことが困難であり、品質が不安定になる可能性があることから、モルタルの付着強度が十分に確保されず、継手部のせん断耐力が確実に発揮できない可能性がある。
また、P−T継手やL−T継手においても、P−P継手の場合と同様に、継手嵌合空間が狭隘であるために、継手部の確実な洗浄および密実なモルタルの充填を行うことは困難であり、品質が不安定になる恐れがあるため、継手部のせん断耐力が確実に発揮できない可能性がある。さらに、P−T継手やL−T継手では、地震や土圧、水圧などにより鋼管矢板に水平力が作用した際に、鋼管矢板間に生じるせん断力が継手部に伝わり継手同士が相対的にずれることで、モルタルと継手との間で相対変位が生じてモルタルが膨張することにより、継手鋼管やL形鋼からなる雌継手が開く方向に変形することから、継手部の継手鋼管やT形鋼とモルタルとの付着力が低減し、継手部のせん断耐力がさらに低下してしまうという不都合も発生する。
特許文献2に記載のL−L継手では、雌型継手と雄型継手における各L型鋼材で挟まれる本管外周面に、複数本の突起付き棒状鋼材を所定間隔で固定することで、モルタルとの付着強度を確実に発揮させることができ、優れたせん断耐力を確実に発揮することができるようになっている。さらに、L型鋼材の脚部長さが建て込み精度を確保するように適切に設定されている継手部であることにより、継手部が適度な嵌合余裕を有しているために、鋼管矢板の建て込み時のガイドとして用いることができ、かつ鋼管矢板の建て込みを高い精度で実施することができるようになっている。そして、嵌合継手内の土砂掘削洗浄およびモルタル等のセメント系常温硬化性材料(充填材)の充填作業に十分な空間を有しているために、嵌合継手内の土砂の掘削を確実に行うことができ、かつ嵌合継手内の洗浄を確実に行うことができ、さらに嵌合継手内への充填材の充填を密実に行うことができる。従って、特許文献2に記載の継手構造では、施工性が飛躍的に向上し、かつ安定した品質になるとともに、鋼管矢板本管の外周面の棒状鋼材により充填材との付着を確実にし、継手部のせん断耐力を向上させることができることから、基礎全体の安定性を向上させることにより鋼管本数の低減や鋼管板厚の減少など建設コストの削減および施工期間の短縮が実現できるようになっている。
このような構成によれば、鋼管矢板本管の外周方向に沿った板状部材の凹凸部分の幅寸法(以下、単に雌側凹凸幅寸法という)と、鋼管矢板本管の連結方向に沿った雄L型鋼材脚部の凹凸部分の長さ寸法(以下、単に雄側凹凸長さ寸法という)の設定により、せん断破壊のメカニズムを適切にコントロールでき、安定したせん断耐力を発揮できる。すなわち、雌側凹凸幅寸法が雄側凹凸長さ寸法の2倍を超える場合、第1充填空間にせん断破壊面が生じてしまう可能性がある。第1充填空間における鋼管矢板本管の連結方向に沿った寸法(以下、単に本管連結方向寸法という)は、第2充填空間の本管連結方向寸法よりも大きいため、高さ位置によりせん断破壊面の本管連結方向の位置が大きくずれてしまう。このため、充填材の引っ張りに伴う曲げ破壊が引き起こされ、垂直方向に対して斜めのせん断ひび割れ(以下、単に斜めせん断ひび割れという)が生じやすくなり、せん断耐力が急激に低下する恐れがある。これに対して、本発明では、雌側凹凸幅寸法を雄側凹凸長さ寸法の2倍未満として、第1充填空間にせん断破壊面を生じさせずに、第2充填空間にせん断破壊面を生じさせることで、高さによるせん断破壊面の本管連結方向の位置ずれを最小限に抑えることができる。このため、斜めせん断ひび割れの発生を抑制でき、安定したせん断耐力を発揮できる。
なお、雌側凹凸幅寸法は、雄側凹凸長さ寸法の1倍以上とすることが好ましく、すなわち、1倍未満とした場合には、前述したようなせん断耐力の向上という効果が十分に発揮できないためである。
このような構成によれば、雌型継手の曲げ剛性を雄型継手よりも高くすることで、打設時は雄型継手が雌型継手より、曲げ剛性が低いため変形性能が高く雄型継手と雌型継手が競り合った状態になっても雄型継手が変形することで打設抵抗が低くなり、効率よく打設できることに加えて、せん断耐力を発揮する際には雄型継手の変形を、雄形継手より剛性の高い雌型継手が外側から押さえ込むことで抑制でき、高いせん断耐力を発揮できる。
このような構成によれば、打設時に継手が競った場合に雄型継手を変形しやすくすることができ、打設抵抗を小さく抑えることができる。また、雌型継手の剛性を雄型継手よりも高くすることで、せん断耐力を発揮する際の継手の変形を抑制でき、高いせん断耐力を発揮できる。
このような構成によれば、前述したように、L−L継手の構造を採用したことで、嵌合継手内の土砂の掘削を確実に行うことができ、かつ嵌合継手内の洗浄を確実に行うことができ、さらに第1充填空間と第2充填空間の充填材を拘束できる。従って、施工性が飛躍的に向上し、かつ安定した品質になるとともに、各L型鋼材と充填材との付着を確実にし、継手部のせん断耐力を向上させることができることから、建設コストの削減および施工期間の短縮が実現できる。
この際、雄型継手6の表面に縞状の突起63が形成されるとともに、表面に縞状の突起81が形成された鋼板8が一方の本管4に設けられていることで、雄型継手6と第1充填空間Aの充填材7との付着、一方の本管4と第2充填空間Bの充填材7との付着がそれぞれ高まり、継手部3のせん断耐力が向上できるように構成されている。
本実施例では、雌型継手5の脚部51間に突起81を有する鋼板8を設けることの効果と、雌側凹凸幅寸法Yを雄側凹凸長さ寸法Xの2倍未満にすることの効果とを確認した。
そして、一対の支柱91をその間に載荷柱93を配置できるように地盤G1に固定して、雄型継手6と雌型継手5を図5および図6に示すように嵌合させるとともに、第1充填空間Aと第2充填空間Bに充填材7を充填することで実施例の試験体を完成させた。
一方、比較例1では、相対変形量が約1.5mmを超えると、急激にせん断力が低下してしまうことが確認できた。これは、図7に二点鎖線で示すように、第1充填空間Aにおいて支柱91と載荷柱93の連結方向(図7の上下方向)の寸法が領域B1よりも大きい領域A1にせん断破壊面が生じたため、斜めせん断ひび割れが発生したためと考えられる。
また、比較例2では、相対変形量が3mmを超えると、急激にせん断力が低下してしまうことが確認できた。これは、図8に二点鎖線で示すように、支柱91と載荷柱93の連結方向の寸法が領域B1よりも大きい領域A2にせん断破壊面が生じたため、斜めせん断ひび割れが発生したためと考えられる。
以上から、雌L型鋼材50の間に鋼板8,96を設けた実施例と比較例2のせん断耐力が、同じ箇所に異形鉄筋95を設けた比較例1よりも優れていることが確認できた。また、雌側凹凸幅寸法を雄側凹凸長さ寸法の2倍未満とした実施例のせん断耐力が、2倍を超えるようにした比較例2よりも優れていることが確認できた。
例えば、前記実施形態では、橋脚の基礎として用いられる鋼管矢板基礎1について説明したが、本発明における鋼管矢板基礎は、橋脚に限らず、任意の構造物を支持する基礎として利用することが可能である。また、本発明の鋼管矢板の継手構造は、鋼管矢板基礎に限らず、土留め壁や護岸構造、地下構造物用連壁など任意の構造として利用可能であり、その用途は特に限定されるものではない。
また、図10に示すように、突起81を有する縞鋼板をV字状に曲げた鋼板8Aを鋼板8の代わりに設けてもよい。そして、鋼板8,8Aとしては、本管4の上端から下端にかけての部分のうちの一部のみを覆うような形状としてもよい。
従って、上記に開示した形状、材質などを限定した記載は、本発明の理解を容易にするために例示的に記載したものであり、本発明を限定するものではないから、それらの形状、材質などの限定の一部もしくは全部の限定を外した部材の名称での記載は、本発明に含まれるものである。
Claims (5)
- 互いに隣り合って打設される一対の鋼管矢板本管のうち一方の雌型継手と他方の雄型継手との嵌合によって当該鋼管矢板本管同士を連結する鋼管矢板の継手構造であって、
前記雌型継手は、前記一方の鋼管矢板本管の外面に脚部が固定された一対の雌L型鋼材を有するとともに、当該一対の雌L型鋼材のアーム部が互いに近づく内向きに配置され、
前記雄型継手は、前記他方の鋼管矢板本管の外面に脚部が固定された一対の雄L型鋼材を有するとともに、当該一対の雄L型鋼材のアーム部が互いに離れる外向きに配置され、
前記一対の雄L型鋼材の脚部における互いに対向する面には、凹凸が設けられ、
前記一方の鋼管矢板本管の外周面における前記一対の雌L型鋼材の脚部で挟まれる領域には、当該領域の少なくとも一部を覆うとともに、表面に凹凸が形成された板状部材が設けられていることを特徴とする鋼管矢板の継手構造。 - 請求項1に記載の鋼管矢板の継手構造において、
前記板状部材の前記鋼管矢板本管の外周方向に沿った幅寸法は、前記雄L型鋼材の脚部の前記鋼管矢板本管の連結方向に沿った長さ寸法の2倍未満に設定されていることを特徴とする鋼管矢板の継手構造。 - 請求項1または請求項2に記載の鋼管矢板の継手構造において、
前記一対の雄L型鋼材の脚部における前記鋼管矢板本管の連結方向に沿った長さが、前記一対の雌L型鋼材の脚部における前記連結方向に沿った長さよりも長く設定されていることを特徴とする鋼管矢板の継手構造。 - 請求項1から請求項3のいずれかに記載の鋼管矢板の継手構造において、
前記一対の雄L型鋼材の板厚は、前記一対の雌L型鋼材の板厚よりも小さく設定されていることを特徴とする鋼管矢板の継手構造。 - 請求項1から請求項4のいずれかに記載の鋼管矢板の継手構造によって隣り合う鋼管矢板本管同士が連結されたことを特徴とする鋼管矢板基礎。
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