JP6201929B2 - 橋台の洗掘防止構造 - Google Patents
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Description
洗掘対策としては、例えば非特許文献1に開示されたように、橋台や橋脚の周辺を鋼矢板で締切り、洗掘された部分に充填材を、橋台の背面側に背面処理材を充填する方法がとられる。この場合、鋼矢板としては、一般的にはU形鋼矢板が用いられる。
U形鋼矢板は断面の高さが高いため地盤への打設時に地盤を押しのける体積が大きく、近傍の地盤を乱す程度が大きい。
また、断面剛性が高いので、既設基礎の水平抵抗に及ぼす影響が大きい。
しかし、鋼矢板の打設は、作業空間の狭い桁下で行う必要があるが、短く切断したU形鋼矢板を打設時に現地で縦継ぎしながら施工することになる。縦継は、一般的には溶接によって行うが、U形鋼矢板は断面形状において曲線部分が多く、また継手部分は形状が複雑なため溶接が行えず断面欠損が生じるため、さらに添接板を溶接する必要がある。これらの作業は特殊な技能を必要とし、時間も要するため、施工コストが上昇する。
また、直線形鋼矢板を用いることで、縦継ぎ箇所の構造を、打設時に作用する荷重に耐えられる程度に簡素化することが可能なことから、施工コストや作業時間を大幅に改善することが可能となる。
本実施の形態に係る橋台の洗掘防止構造1は、図1、図2に示すように、橋桁3を支持する橋台5の洗掘防止構造であって、
橋台5の近傍であって、橋桁3を挟んで打設された一対の反力杭7と、複数の直線形鋼矢板9を連結して橋台5を囲むように打設すると共に両端に配置された直線形鋼矢板9を一対の反力杭7にそれぞれ連結してなる直線形鋼矢板壁11とを備え、
直線形鋼矢板壁11で囲まれた領域に充填材13を充填してなることを特徴とするものである。
以下、詳細に説明する。
橋梁やその橋桁3の構造等については特に限定されない。ただ、橋梁の両端にあって、取り付け道路と橋梁を接続し、上部構造からの荷重および背面盛土からの土圧荷重を支持する下部構造である「橋台」を有するものが対象となる。
橋台5の下部は基礎杭15が支持層17まで打設されて支持されている。
反力杭7は、橋台5の近傍であって、橋桁3を挟んで打設された一対の杭体からなる。各反力杭7は、直線形鋼矢板壁11が連結され、反力をとるための構造物であり、特に杭の種類は限定されない。
直線形鋼矢板9は、図3に示すように、両端に設けられた主爪部と副爪部からなる継手部9aと、継手部9a同士を繋ぐウェブ部9bとによって構成されている。図3に示すように、隣の直線形鋼矢板9の継手部9aを連結することで、後述の直線形鋼矢板壁11が形成される。
なお、直線形鋼矢板9の継手部9aに作用する荷重としては、打設時に生じる圧縮力と引張力が主となるので、施工方法および地盤条件を考慮して最大荷重を算定し、それに耐えられる構造とすればよい。
なお、直線形鋼矢板9は、ウェブ部9bについては防食するのが望ましいことは言うまでもないが、継手部9a近傍も防食が必要な場合には、継手部9aについても容易な防食方法とするのが望ましい。
直線形鋼矢板壁11は、隣接する直線形鋼矢板9の継手部9aを連結すると共に縦方向の直線形鋼矢板9を溶接によって接合して形成され、橋台5の河川側を囲むように設置されている。
直線形鋼矢板壁11は、橋台5側から河川側に突出する円弧状であることが望ましい。
直線形鋼矢板壁11を円弧状にすることで、直線形鋼矢板壁11に作用する土圧をフープテンションに変換し、部材の引張耐力で支えるため、U形鋼矢板と比べて小さな断面剛性で構造が成立する。このような構造の場合、部材長方向で曲げはほとんど生じないため、継手部9aにおいても剛性を確保する必要が無い。また、縦継ぎ箇所についても、打設時に作用する荷重に耐えられる程度の構造にすれば足り、施工コストを抑えることができる。
なお、縦方向の直線形鋼矢板9同士の接合は、地盤条件や施工条件によるが、溶接だけでなく、ボルト継手や機械式継手等を用いることが出来る。
また、直線形鋼矢板壁11を構成している最下部の直線形鋼矢板9を根入れする必要がないので、ボイリング現象の発生に注意する必要もない。
充填材13は、図1に示すように、直線形鋼矢板壁11で囲まれた領域に充填されるもので、例えば流動化処理土、モルタルなどである。充填材料は、自己充填性に優れ、水中施工可能なことが望ましい。固化する材料の場合、フーチングや基礎等の既存構造物と一体化し、橋台に作用する荷重の分布が変化する恐れがあるので、適用にあたっては検討が必要である。
図4(a)は施工前の状態を示しており、橋台5の下面に洗掘が生じて杭頭が露出しており、また橋台5の背面土も流出し、橋台5の背面の路面が陥没している。
図4(b)に示すように、橋台5を挟んで一対の鋼管杭からなる反力杭7を打設する。また、橋台5の基礎杭15の支持層17を乱さないように、橋台5から十分な距離を離して直線形鋼矢板9を打設する。直線形鋼矢板9の打設は、桁下部では作業空間を確保するために2本に分割し、現場で溶接によって接続しながら打設する。
直線形鋼矢板9は、図2に示すように、平面視で円弧状になるように接続し、両端の直線形鋼矢板9はその継手部9aを、鋼管杭に取り付けた継手に接続することで反力杭7に連結する。
本実施の形態によれば、橋台5の周囲を仕切る壁体として直線形鋼矢板9によって形成される直線形鋼矢板壁11を用いたので、地盤への打設時に地盤を押しのける体積が少なくてすみ、近傍の地盤を乱す程度も小さくて済む。
また、直線形鋼矢板壁11を円弧状にしたので、直線形鋼矢板壁11に作用する土圧をフープテンションに変換して部材の引張耐力で支えるようにしたので、U形鋼矢板を地盤に打設する場合のように根入れの必要がなく、地盤を乱すこともない。このため、直線形鋼矢板壁11に土圧が作用した場合に、地盤反力で抵抗することがなく、この意味でも地盤を乱すことがない。
本発明の実施の形態2に係る橋脚の洗掘防止構造19は、図5、図6に示すように、橋桁3を支持する橋脚21の洗掘を防止するものであって、複数の直線形鋼矢板9を連結して橋脚21を囲むように打設すると共に両端に配置された直線形鋼矢板9を連結して筒状に形成した直線形鋼矢板筒状壁23を備え、直線形鋼矢板筒状壁23で囲まれた領域に充填材13を充填してなることを特徴とするものである。
実施の形態1と共通する部分は同一の符号を付して説明を省略する。
直線形鋼矢板筒状壁23は、隣接する直線形鋼矢板9の継手部9aを連結すると共に縦方向の直線形鋼矢板9を溶接によって接合して形成され、橋脚21を囲むように筒状に設置されている。直線形鋼矢板筒状壁23は、図6に示すように、橋脚21を囲む円筒形であることが望ましい。
直線形鋼矢板筒状壁23を円筒形にすることで、直線形鋼矢板筒状壁23に作用する土圧をフープテンションに変換し、部材の引張耐力で支えるため、U形鋼矢板と比べて小さな断面剛性で構造が成立する。このような構造の場合、部材長方向で曲げはほとんど生じないため、継手部9aにおいても剛性を確保する必要が無い。
地盤が軟弱な場合、U形鋼矢板の場合、根入れ長を大きくする必要があるが、円筒状に配置した直線形鋼矢板9の場合は、自重による沈下が防げる支持力が得られれば、根入れ長を大きくする必要は無い。
図7(a)は施工前の状態を示しており、橋脚21の下部に洗掘が生じて杭頭が露出している。
図7(b)に示すように、橋脚21の基礎杭15の支持層17を乱さないように、橋脚21から十分な距離を離して直線形鋼矢板9を打設する。直線形鋼矢板9の打設は、桁下部では作業空間を確保するために2本に分割し、現場で溶接によって接続しながら打設する。
直線形鋼矢板9の縦継ぎは、実施の形態1と同じ方法で実施する。直線形鋼矢板9は、図6に示すように、平面視で円形状になるように接続する。
なお、直線形鋼矢板9は、円周状に橋脚21を取り囲み、両端の直線形鋼矢板9同士を連結するため反力杭7は不要である。
本実施の形態によれば、橋脚21の周囲を仕切る壁体として直線形鋼矢板9によって形成される直線形鋼矢板筒状壁23を用いたので、地盤への打設時に地盤を押しのける体積が少なくてすみ、近傍の地盤を乱す程度も小さくて済む。
また、直線形鋼矢板壁9を円筒状にしたので、直線形鋼矢板筒状壁23に作用する土圧をフープテンションに変換して部材の引張耐力で支えるようにしたので、U形鋼矢板を地盤に打設する場合のように根入れの必要がなく、地盤を乱すこともない。このため、直線形鋼矢板筒状壁23に土圧が作用した場合に、地盤反力で抵抗することがなく、この意味でも地盤を乱すことがない。
3 橋桁
5 橋台
7 反力杭
9 直線形鋼矢板
9a 継手部
9b ウェブ部
11 直線形鋼矢板壁
13 充填材
14 背面処理材
15 基礎杭
17 支持層
19 橋脚の洗掘防止構造
21 橋脚
23 直線形鋼矢板筒状壁
Claims (3)
- 橋桁を支持する橋台の洗掘防止構造であって、
前記橋台の近傍であって、前記橋桁を挟んで打設された一対の反力杭と、
複数の直線形鋼矢板を連結して前記橋台の河川側を囲むように打設すると共に両端に配置された直線形鋼矢板を前記一対の反力杭にそれぞれ連結してなる直線形鋼矢板壁とを備え、
該直線形鋼矢板壁で囲まれた領域に充填材を充填してなることを特徴とする橋台の洗掘防止構造。 - 前記直線形鋼矢板壁は、前記橋台側から河川側に突出する円弧状であることを特徴とする請求項1記載の橋台の洗掘防止構造。
- 前記直線形鋼矢板の下端が支持層に到達していないことを特徴とする請求項1又は2に記載の橋台の洗掘防止構造。
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