以下、本発明につき図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、以下の発明を実施するための形態(以下実施形態という)の内容によりこの発明が限定されるものではない。また、以下に説明する構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のものが含まれる。以下においては、変形解析を実行し、その結果を表示する構造物を、回転体であるタイヤ(空気入りタイヤを含む)とするが、本発明の適用対象はこれに限定されるものではない。
図1は、タイヤの子午断面図である。タイヤ1は、回転軸(Y軸)を中心として回転する環状構造体であり、中心軸の周りに、周方向に向かって同様の形状の子午断面が展開される。図1に示すように、タイヤ1の子午断面には、カーカス2、ベルト3、ベルトカバー4、ビードコア5が現れている。タイヤ1は、母材であるゴムを、補強材であるカーカス2、ベルト3、あるいはベルトカバー4等の補強コードによって補強した複合材料の構造体である。ここで、カーカス2、ベルト3、ベルトカバー4等の、金属繊維や有機繊維等のコード材料で構成される補強コードの層をコード層という。
カーカス2は、タイヤ1に空気を充填した際に圧力容器としての役目を果たす強度メンバーであり、その内圧によって荷重を支え、走行中の動的荷重に耐えるようになっている。ベルト3は、キャップトレッド6とカーカス2との間に配置されたゴム引きコードを束ねた補強コードの層である。ラジアルタイヤにおいて、ベルト3は形状保持及び強度メンバーとして重要な役割を担っている。
ベルト3の踏面G側には、ベルトカバー4が配置されている。ベルトカバー4は、例えば有機繊維材料を層状に配置したものであり、ベルト3の保護層としての役割や、ベルト3の補強層としての役割を持つ。ビードコア5は、内圧によってカーカス2に発生するコード張力を支えているスチールワイヤの束である。ビードコア5は、カーカス2、ベルト3、ベルトカバー4及びトレッドとともに、タイヤ1の強度部材となる。キャップトレッド6の踏面G側には、溝7が形成される。これによって、雨天走行時の排水性を向上させる。また、タイヤ1の側部はサイドウォール8と呼ばれており、ビードコア5とキャップトレッド6との間を接続する。また、キャップトレッド6とサイドウォール8との間はショルダー部Shである。次に、本実施形態に係る解析情報表示方法を実行する装置について説明する。
図2は、本実施形態に係る解析情報表示方法を実行する解析情報表示装置を示す説明図である。本実施形態に係る解析情報表示方法は、図2に示す解析情報表示装置50によって実現できる。図2に示すように、解析情報表示装置50は、処理部52と記憶部54とで構成される。また、この解析情報表示装置50には、入出力装置51が電気的に接続されており、ここに備えられた入力手段53でタイヤモデルを構成するゴムの物性値や補強コードの物性値、あるいは変形解析における境界条件等を処理部52や記憶部54へ入力する。
ここで、入力手段53には、キーボード、マウス等の入力デバイスを使用することができる。記憶部54には、構造物(例えば、タイヤ)の解析(変形解析や転動解析等)や本実施形態に係る解析情報表示方法を含むコンピュータプログラムが格納されている。ここで、記憶部54は、ハードディスク装置や光磁気ディスク装置、又はフラッシュメモリ等の不揮発性のメモリ(CD−ROM等のような読み出しのみが可能な記憶媒体)や、RAM(Random Access Memory)のような揮発性のメモリ、あるいはこれらの組み合わせにより構成することができる。
また、上記コンピュータプログラムは、コンピュータシステムに既に記録されているコンピュータプログラムとの組み合わせによって、構造物の解析や本実施形態に係る解析情報表示方法を実現できるものであってもよい。また、処理部52の機能を実現するためのコンピュータプログラムをコンピュータで読み取り可能な記録媒体に記録して、この記録媒体に記録されたプログラムをコンピュータシステムに読み込ませ、実行することにより構造物の解析や本実施形態に係る解析情報表示方法を実行してもよい。なお、ここでいう「コンピュータシステム」とは、OS(Operating System)や周辺機器などのハードウェアを含むものとする。
処理部52は、モデル作成部52aと、解析部52bと、物理量取得部52cと、転写条件演算部52dと、転写制御部52eと、表示制御部52fと、処理条件判定部52gとを含む。モデル作成部52aは、解析対象の構造物を複数の節点で構成される複数の要素に分割して、解析に供する解析モデルを作成して、記憶部54に保存する。解析部52bは、モデル作成部52aが作成した解析モデルを記憶部54から読み出し、所定の条件の下で解析を実行し、解析結果を記憶部54の所定領域に保存する。物理量取得部52cは、解析部52bが変形解析を実行した後の解析モデルから、表示手段55に表示させる解析モデルの断面の物理量を取得し、記憶部54の所定領域へ一時的に保存する。より具体的には、物理量取得部52cは、記憶部54の所定領域に保存された解析終了後における解析モデルの解析結果から、表示手段55に表示させる解析モデルの断面の物理量を取得する。なお、この物理量は、解析モデルを構成する要素(より具体的には積分点)から取得される。
転写条件演算部52dは、表示手段55に表示させる解析モデルの断面と、この断面の物理量が転写される表示用モデルとの間における転写条件を求める。転写制御部52eは、得られた転写条件に基づき、転写モデルへ表示手段55に表示させる解析モデルの断面の物理量を転写する。具体的には、転写制御部52eは、転写モデルへ表示手段55に表示させる解析モデルの断面の物理量を記憶部54の所定領域から読み出し、得られた転写条件に基づいて読み出した断面の物理量を転写モデルに転写する。そして、転写制御部52eは、物理量を転写した後の転写モデルを記憶部54の所定領域へ一時的に保存する。表示制御部52fは、転写モデルへ表示手段55に表示させる解析モデルの断面の物理量が転写された転写モデルを記憶部54の所定領域から読み出し、表示手段55へ表示する。処理条件判定部52gは、本実施形態に係る解析情報表示方法における処理の分岐条件を判定する。
処理部52は、例えば、メモリ及びCPU(Central Processing Unit)により構成されている。変形解析時においては、モデル作成部52aが作成した解析モデルや入力データ等に基づいて、処理部52が前記プログラムを処理部52に組み込まれたメモリに読み込んで演算する。その際に処理部52は、記憶部54へ演算途中の数値を適宜格納し、また記憶部54へ格納した数値を取り出して演算を進める。なお、この処理部52は、前記コンピュータプログラムの代わりに専用のハードウェアによって、その機能を実現するものであってもよい。
ここで、表示手段55には、液晶表示装置やCRT(Cathode Ray Tube)等を使用することができる。また、予測結果は、必要に応じて設けられた印刷機により、紙等の被記録媒体に出力することもできるので、表示手段55として印刷機を用いてもよい。ここで、記憶部54は、他の装置(例えばデータベースサーバ)内にあってもよい。例えば、解析情報表示装置50は、入出力装置51を備えた端末装置から通信により処理部52や記憶部54にアクセスするものであってもよい。次に、本実施形態に係る解析情報表示方法を説明する。なお、本実施形態に係る解析情報表示方法は、上述した解析情報表示装置50により実現できる。
図3は、本実施形態に係る解析情報表示方法の手順を示すフローチャートである。図4は、タイヤモデルの一例を示す斜視図である。本実施形態に係る解析情報表示方法を実行するにあたり、ステップST1で、図2に示す解析情報表示装置50のモデル作成部52aは、タイヤの解析モデル(以下タイヤモデルという)10を作成する。本実施形態において、タイヤは、解析の対象となる構造物であり、その解析結果は、本実施形態に係る解析情報表示方法によって表示手段55に表示される。解析モデルとは、コンピュータを用いて数値解析可能なモデルであり、数学的モデルや数学的離散化モデルを含む。
タイヤモデル10は、有限要素法や有限差分法等の数値解析手法を用いて解析(変形解析や転動解析等)を行うために用いるモデルである。例えば、本実施形態では、タイヤモデル10の解析に有限要素法(Finite Element Method:FEM)を使用するので、タイヤモデル10は、有限要素法に基づいて作成される。なお、本実施形態に係る解析に適用できる解析手法は有限要素法に限られず、有限差分法(Finite Differences Method:FDM)や境界要素法(Boundary Element Method:BEM)等も使用できる。また、境界条件等によって最も適当な解析手法を選択し、又は複数の解析手法を組み合わせて使用することもできる。なお、有限要素法は、構造解析に適した解析手法なので、特にタイヤのような構造体に対して好適に適用できる。
ステップST1において、モデル作成部52aは、環状構造体であるタイヤを、複数かつ有限個の要素E1、E2・・・Enに分割して、図4に示すようなタイヤモデル10を作成する。複数の要素E1、E2・・・Enは、それぞれ複数の節点で構成される。本実施形態では、タイヤモデル10は図4に示すような3次元形状の解析モデルとなる。
タイヤモデル10を構成する要素は、例えば、3次元体では四面体ソリッド要素、五面体ソリッド要素、六面体ソリッド要素等のソリッド要素や三角形シェル要素、四角形シェル要素等のシェル要素、面要素等、コンピュータで取り扱い得る要素とすることが望ましい。このようにして分割された要素は、解析の過程においては、3次元モデルでは3次元座標や円筒座標を用いて逐一特定される。
ステップST1でタイヤモデル10が作成されたらステップST2へ進む。ステップST2において、解析情報表示装置50の処理部52が備える解析部52bは、ステップST1で作成されたタイヤモデル10の解析を実行する。解析を実行するにあたっては、解析条件(使用環境の条件や負荷する荷重等)が設定される。解析条件は、例えば、図2に示す解析情報表示装置50の入力手段53を介して入力されて、記憶部54へ一時的に保存される。解析条件が設定されたら、解析部52bは、記憶部54から解析条件を取得しながら、タイヤモデル10の変形解析を実行する。
解析には、例えば、解析モデルと平面あるいは曲面との静的、動的な接触解析や、荷重や内圧を解析モデルに負荷した場合の変形解析がある。また、タイヤのような回転体を解析の対象とする場合、解析としては、例えば、解析モデル(タイヤの場合はタイヤモデル10)と平面あるいは曲面との静的、動的な接触解析、荷重や内圧を解析モデルに負荷した場合の変形解析や、解析モデルが平面あるいは曲面と接触した状態での転動解析(動的転動解析や定常輸送解析)がある。
ステップST2で解析部52bの解析が終了したら、解析部52bは、解析結果を記憶部54の所定領域へ一時的に保存する。次に、ステップST3へ進み、図2に示す表示手段55へ表示させる物理量(表示物理量)が設定される。この物理量は、例えば、応力、ひずみ、位置、変位、速度、力、粘弾性損失エネルギー等である。表示手段55へ表示させる物理量は、例えば、図2に示す解析情報表示装置50の入力手段53を介して入力されて、記憶部54へ一時的に保存される。次に、ステップST4へ進み、解析情報表示装置50は、表示物理量を表示手段55へ表示させる表示処理を実行する。次に、表示処理を説明する。
図5は、本実施形態に係る解析情報表示方法における表示処理の手順を示すフローチャートである。図6は、図4に示すタイヤモデルの概略を示す側面図である。図7は、図4に示すタイヤモデルを構成する一部の子午断面を示す図である。図8は、転写モデルを示す図である。図9−1は、子午断面モデルを示す平面図である。図9−2は、子午断面を周方向に展開する状態を示す図である。なお、子午断面は、図4に示すタイヤモデル10の回転軸(Y軸)を含み、かつ回転軸(Y軸)に平行な平面でタイヤモデル10を切った場合の断面である。
本実施形態では、タイヤモデル10の解析が終了した後、タイヤモデル10内の断面(本実施形態では子午断面)の解析結果を効率よく、かつ理解しやすい態様で表示手段55へ表示させる。このため、本実施形態に係る解析情報表示方法の表示処理では、タイヤモデル10の子午断面の物理量を転写させて表示手段55へ表示させる転写モデル20(図8参照)を作成しておき、この転写モデル20に、表示手段55へ表示させるタイヤモデル10の子午断面の物理量を転写する。そして、物理量が転写された転写モデル20を表示手段55へ表示させる。
ステップS411において、解析情報表示装置50の処理部52が備える物理量取得部52cは、タイヤモデル10から、表示手段55へ表示させるタイヤモデル10の断面(子午断面、以下、表示対象断面という)11i(図6、図7参照)を選択する。なお、図7に示す表示対象断面11iの要素は、四角形の形状をした部分であるが、便宜上、符号Einは一つの要素のみに付してある。表示対象断面11i(iはタイヤモデル10の異なる子午断面を識別するための符号であり、整数)は、表示手段55に表示させるタイヤモデル10の子午断面であり、任意に設定される。例えば、タイヤモデル10の周方向に向かって36分割した場合(等分割である場合は中心角が10度間隔)、表示対象断面11iは36個存在する(この場合、i=1〜36)。
本実施形態において、表示対象断面11iは、例えば、解析前に予め設定されており、それぞれの表示対象断面11iを識別するための情報(表示対象断面識別情報、例えば、表示対象断面11iのID番号)と対応付けられて記憶部54に格納されている。そして、物理量取得部52cは、例えば、記憶部54から表示対象断面識別情報を取得し、これに基づいて、表示対象断面11iを選択する。表示対象断面11iが選択されたら、ステップS412へ進み、物理量取得部52cは、表示対象断面11iの物理量を取得する。このステップで物理量取得部52cが取得する物理量は、上述したステップST3で設定された表示物理量である。
物理量取得部52cは、ステップS411で選択した表示対象断面11iの表示対象断面識別情報及びステップST3で設定された表示物理量を記憶部54から読み出し、両者に基づいて、表示対象断面11iの表示物理量を記憶部54から取得する。より具体的には、物理量取得部52cは、表示対象断面識別情報によって特定される表示対象断面11iに存在する要素(より具体的には当該要素の積分点)から、ステップST3で設定された表示物理量を取得する。そして、物理量取得部52cは、取得した表示物理量を記憶部54の所定の領域へ一時的に保存する。
次に、ステップS413へ進み、図2に示す解析情報表示装置50の処理部52を構成する転写条件演算部52dは、転写条件、すなわち、表示対象断面11iの表示物理量を図8に示す転写モデル20へ転写するための条件を求める。ここで、本実施形態のステップST1において作成されるタイヤモデル10(図4参照)は、例えば、図9−1に示す2次元の解析モデルである子午断面モデル10CMを作成し、この子午断面モデル10CMをタイヤの回転軸に相当する軸(Y軸)の周りに(すなわち、タイヤの周方向、図9−2の矢印Cで示す方向に向かって)所定の間隔(例えば、要素1個の代表寸法)で展開して作成される。このようにして作成されたタイヤモデル10は、どの子午断面でも同じ形状であり、さらに同じ数の要素が同じ配列で配置される。タイヤモデル10の周方向に向かって子午断面モデル10CMがn個配置されると、子午断面モデル10CMのある特定の要素に着目した場合、タイヤモデル10の周方向に向かっては、n個の要素が配置されることになる。
本実施形態では、図8に示す転写モデル20は、解析対象の構造物であるタイヤ1の断面(より具体的には子午断面)、すなわち、タイヤモデル10の子午断面モデル10CMに基づいて作成される。本実施形態において、転写モデル20は、子午断面モデル10CMと同じ形状であり、さらに、子午断面モデル10CMと同じ数の表示要素21nが子午断面モデル10CMのそれぞれの要素Enと同じ配列で配置される。ここで、nは、それぞれの表示要素21nあるいは子午断面モデル10CMの要素Enを識別するための符号(要素識別符号)であり、整数である。
転写モデル20を構成するそれぞれの表示要素21nは、子午断面モデル10CMを構成するそれぞれの要素Enに対応する。すなわち、表示要素21nと子午断面モデル10CMを構成する要素Enとの間で要素識別符号nの値が同じであれば、転写モデル20と子午断面モデル10CMとの間で両者は同じ位置にある。そして、転写モデル20と子午断面モデル10CMとを重ね合わせると、転写モデル20のそれぞれの表示要素21nは、要素識別符号nが対応する子午断面モデル10CMのそれぞれの要素Enと重なり合う。なお、本実施形態において、転写モデル20は、予め作成されて記憶部54の所定領域に保存されているが、表示処理毎や解析毎等にモデル作成部52aが作成してもよい。ここで、図8に示す転写モデル20の表示要素は、四角形の形状をした部分であるが、便宜上、符号21nは一つの表示要素のみに付してある。
本実施形態において、タイヤモデル10は、子午断面モデル10CMを周方向に展開して作成されるので、図7に示す表示対象断面11iは、いずれも子午断面モデル10CMと同じ形状であり、さらに、子午断面モデル10CMと同じ数の要素Einが同じ配列で配置される。転写モデル20の各表示要素21nと子午断面モデル10CMの各要素Enとの関係は上述した通りなので、図7に示す表示対象断面11iを構成するそれぞれの要素Einは、転写モデル20を構成するそれぞれの表示要素21nに対応する。すなわち、表示要素21nと表示対象断面11iを構成するそれぞれの要素Einとの間で要素識別符号nの値が同じであれば、転写モデル20と表示対象断面11iとの間で両者は同じ位置にある。そして、転写モデル20と表示対象断面11iとを重ね合わせると、転写モデル20のそれぞれの表示要素21nは、要素識別符号nが対応する表示対象断面11iのそれぞれの要素Einと重なり合う。このように、転写モデル20に表示物理量が転写される領域、すなわち、表示要素21nの形状は、タイヤモデル10を構成する要素の断面形状、すなわち、表示対象断面11iに現れる要素Einの形状に基づいて決定される。
ステップS413において転写条件を求めるにあたり、転写条件演算部52dは、転写条件の一つとして、ステップS411で選択された表示対象断面11iを構成する要素Einの表示物理量を、転写モデル20のどの表示要素21nへ転写するかを求める。表示対象断面11iと転写モデル20との関係は上述した通りなので、図7に示すように、表示対象断面11iの要素Einと要素識別符号nの値が等しい転写モデル20の表示要素21nが、要素Einの表示物理量を転写する表示要素21nとなる。転写条件演算部52dは、すべての表示対象断面11iについて、要素識別符号nに基づいてそれぞれの表示対象断面11iを構成する要素Einの転写条件を求め、記憶部54の所定領域へ保存する。なお、転写条件としては、例えば、ステップS411で選択された表示対象断面11iを構成する要素Einの表示物理量を、転写モデル20の表示要素21nへどのように転写するかというものがあるが、この例では、要素Einの積分点の表示物理量を、転写モデル20の表示要素21nへそのまま転写するものとする。
転写条件演算部52dが転写条件を求めたら、ステップS414へ進み、解析情報表示装置50の処理部52を構成する転写制御部52eは、表示物理量を転写モデル20へ転写する。この場合、転写制御部52eは、表示対象断面11iの要素Einの表示物理量を記憶部54から読み出し、記憶部54に格納されている転写条件に基づいて、転写モデル20の対応する表示要素21nへ転写する。なお、表示物理量を転写モデル20の表示要素21nに転写する場合、表示物理量を変換してから転写してもよい。この変換には、例えば、所定の係数を表示物理量に乗じたり、表示物理量の最大値と最小値とを用いて正規化したりするものがある。次に、ステップS415へ進み、解析情報表示装置50の処理部52を構成する表示制御部52fは、表示対象断面11iの表示物理量が転写された転写モデル20を、図2に示す表示手段55へ表示する。
表示物理量の転写された転写モデル20を表示手段55へ表示するにあたっては、表示制御部52fは、表示物理量の大きさ毎に異なる態様で転写モデル20を表示することが好ましい。例えば、表示物理量の大きさ毎に異なる色で転写モデル20に表現してもよいし(いわゆるコンター表示)、表示物理量の値を直接転写モデル20に表してもよい。また、シンボルを転写モデル20の所定位置に配置して表示物理量を表現するとともに、表示物理量の大きさに応じてシンボルの大きさを変更(例えば、表示物理量が大きくなるにしたがってシンボルを大きくする等)してもよい。このようにすれば、表示物理量が同じ転写モデル20に表示され、かつ表示物理量の大きさによって異なる態様で表示されるので、解析の結果が理解しやすくなる。
図10は、タイヤモデルに対して接地解析を実行した例を示す模式図である。図11−1〜図11−4は、図10に示す接地解析の結果を示す平面図である。図10に示すように、タイヤモデル10を路面モデル30に接触させ、荷重Fを路面モデル30に向かって負荷することにより、タイヤモデル10の接地解析を実行した場合を考える。この解析は、タイヤと物体(路面)との接触状態における解析である。この接地解析の結果は、表示対象断面111、112、113、114の表示物理量が、図11−1〜図11−4に示す転写モデル201、202、203、204に転写されて、図2に示す表示手段55に表示されるものとする。このとき表示物理量は、タイヤモデル10の表示対象断面111、112、113、114の各部における変位(座標)とする。表示制御部は、前記変位の大きさに基づいて、転写モデル201、202、203、204の少なくとも一部の形状を変更して表示手段55に表示する。
表示対象断面111は、タイヤモデル10の子午断面のうち、タイヤモデル10の回転軸(Y軸)を通り、かつ路面モデル30と直交する軸(Z軸)を含む子午断面であり、タイヤモデル10が路面モデル30に接している部分である。このように、本実施形態において、表示手段55に表示させるタイヤモデル10の断面、すなわち、表示対象断面111は、タイヤが物体(路面)に接触している領域に相当する領域(接触領域)Hを含んでいる。これによって、タイヤの接地解析を実行した場合において、最もタイヤの変形が大きくなる部分の情報を得ることができる。なお、表示対象断面112、113、114は、表示対象断面111の位置を0度として、Y軸の周りに半時計回りにそれぞれ10度、30度、60度回転した位置における子午断面である。
図11−1に示すように、表示対象断面111の表示物理量が転写された転写モデル201の径方向(タイヤモデル10の径方向)における変形が最も大きく、転写モデル202、203、204の順に径方向における変形が小さくなっている。このように、転写モデル201、202、203、204に転写した表示物理量の大きさに基づいて、転写モデル201、202、203、204の少なくとも一部の形状を変更することにより、解析結果が直感的に理解できる。
次に、ステップS416へ進む。ステップS416では、解析情報表示装置50の処理部52を構成する処理条件判定部52gが、現在表示手段55へ表示されている転写モデル20とは異なる転写モデル20を、表示手段55へ表示するか否かを判定する。ここで、現在表示手段55へ表示されている転写モデル20とは異なる転写モデル20とは、現在の転写モデル20へ転写されている表示対象断面11iの表示物理量とは異なる表示対象断面11iの表示物理量を転写した転写モデル20である。このように、ステップS416において、処理条件判定部52gは、表示処理を終了するか否かを判定する。
表示処理を終了しない場合、すなわち、処理条件判定部52gが、現在転写モデル20へ転写されている表示物理量とは異なる表示対象断面11iの表示物理量を転写モデル20へ転写して、表示手段55へ表示させると判定した場合(ステップS416、No)、解析情報表示装置50は、ステップS411へ戻ってステップS411以降の手順を実行する。これによって、表示制御部52fは、異なる表示対象断面11iの表示物理量を、表示手段55に連続して表示することになる。処理条件判定部52gが表示処理を終了すると判定した場合(ステップS416、Yes)、すなわち、現在表示手段55へ表示されている転写モデル20とは異なる転写モデル20を表示手段55へ表示させない場合、解析情報表示装置50は表示処理を終了させて、図3に示すステップST4に戻る。
なお、本実施形態において、解析情報表示装置50は、上述したステップS411からステップS415の手順を繰り返して実行することにより、複数の異なる表示対象断面11iの表示物理量を順次転写モデル20に転写して、タイヤモデル10の周方向に対する表示対象断面11iの配列順に、連続して表示手段55へ表示させてもよい。この場合、ステップS416における表示処理の終了の判定は、例えば、すべての表示対象断面11iについて表示が終了したか否かを基準とすることができる。
また、ある表示対象断面11iの表示物理量が転写された転写モデル20を表示手段55へ表示させた状態で、解析結果を評価したい場合がある。この場合、例えば、図2に示す入力手段53からの表示切替指令をステップS416における表示処理の継続判定(ステップS416、No)とし、図2に示す入力手段53からの表示終了指令をステップS416における表示処理の終了判定(ステップS416、Yes)としてもよい。このように、複数の異なる表示対象断面11iの表示物理量を順次転写モデル20に転写して表示手段55へ表示させることにより、解析結果を効率よく、かつ理解しやすく表示手段55へ表示させることができる。また、複数の異なる表示対象断面11iの表示物理量を連続して表示手段55へ表示させることにより、解析結果をさらに効率よく表示手段55へ表示させることができる。次に、表示処理の変形例を説明する。
(表示処理の変形例)
図12は、本実施形態に係る解析情報表示方法における表示処理の変形例の手順を示すフローチャートである。本変形例に係る表示処理は、上述した表示処理と一部同様であるが、図4、図6に示すタイヤモデル10を構成する複数の表示対象断面11iのうち、図2に示す表示手段55へ表示させるものすべての表示物理量を、それぞれ異なる転写モデル20に転写した後、それぞれの転写モデル20を表示手段55へ順次表示する点に特徴がある。本変形例のステップS421〜ステップS424は、上述した表示処理のステップS411〜ステップS414と同様なので、説明を省略する。
ステップS424において、転写制御部52eが、表示物理量を転写モデル20へ転写したら、ステップS425に進み、転写制御部52eは、表示物理量が転写された転写モデル20を、上述した表示対象断面識別情報と対応付けて記憶部54の所定領域に保存する。次に、ステップS426へ進み、処理条件判定部52gは、すべての表示対象断面11iについて、それぞれの表示物理量が転写された転写モデル20が作成されたか否かを判定する。この判定は、例えば、次のようにして実行される。まず、表示手段55に表示させる表示対象断面11iを予め設定して、それぞれの表示対象断面11iに対応する表示対象断面識別情報を記憶部54の所定領域へ保存しておく。そして、処理条件判定部52gは、新たに記憶部54に保存された表示対象断面識別情報と、予め記憶部54に保存されている表示対象断面識別情報とを比較して、両者がすべて一致した場合には、すべての表示対象断面11iについて転写モデル20が作成されたと判定する。
ステップS426でNoと判定された場合、すなわち、処理条件判定部52gが、すべての表示対象断面11iについて転写モデル20が作成されていないと判定した場合、解析情報表示装置50は、すべての表示対象断面11iについて転写モデル20が作成されるまで、ステップS421〜ステップS425を繰り返す。ステップS426でYesと判定された場合、すなわち、処理条件判定部52gが、すべての表示対象断面11iについて転写モデル20が作成されたと判定したら、ステップS427へ進む。
ステップS427において、表示制御部52fは、表示対象断面11iの表示物理量が転写された転写モデル20を、図2に示す表示手段55へ表示する。この場合、表示制御部52fは、記憶部54に格納されている複数の転写モデル20を、例えば、タイヤモデル10の周方向における表示対象断面11iの配列順に表示手段55へ連続して表示させる。このように、複数の異なる表示対象断面11iの表示物理量が転写された複数の転写モデル20を順次表示手段55へ表示させることにより、解析結果を効率よく、かつ理解しやすく表示手段55へ表示させることができる。また、複数の異なる表示対象断面11iの表示物理量が連続して表示手段55へ表示されるので、解析結果がさらに効率よく表示手段55へ表示される。
次に、ステップS428へ進み、処理条件判定部52gは、表示処理を終了するか否かを判定する。例えば、それぞれの表示対象断面11iについての複数の転写モデル20がすべて表示手段55へ表示された場合、処理条件判定部52gは、表示処理を終了すると判定する。また、解析情報表示装置50の入出力装置51から表示終了指令が入力された場合、処理条件判定部52gは、表示処理を終了すると判定する。
表示処理を終了しない場合、すなわち、処理条件判定部52gが表示処理を終了しないと判定した場合(ステップS428、No)、表示制御部52fは、ステップS427へ戻り、表示手段55への転写モデル20の表示を継続する。表示処理を終了する場合、処理条件判定部52gが表示処理を終了すると判定した場合(ステップS426、Yes)、解析情報表示装置50は表示処理を終了させて、図3に示すステップST4に戻る。このように、本変形例においては、複数の異なる表示対象断面11iの表示物理量が転写された複数の転写モデル20を順次表示手段55へ表示させるので、解析結果を効率よく、かつ理解しやすく表示手段55へ表示させることができる。次に、表示処理において、表示対象断面とは異なる転写モデルを用いる例を説明する。
(表示対象断面とは異なる転写モデルを用いる表示処理の第1例)
図13−1は、第1例で用いる転写モデルを示す平面図である。図13−2は、図13−1に示す転写モデルの一部拡大図である。図14−1は、第1例における表示対象断面を示す平面図である。図14−2〜図14−4は、図14−1に示す表示対象断面の一部拡大図である。図15は、表示物理量が転写された転写モデルを示す平面図である。ここで、図13−1、図14−1、図15は、タイヤモデルの幅方向中心TCに対して一方を示している。ここで、タイヤモデルの幅方向とは、タイヤモデルの回転軸と平行な方向である。第1例は、表示対象断面11iの表示物理量(例えば、せん断ひずみやせん断応力等)を表示対象断面11iとは異なる形状の転写モデル20aへ転写して、表示手段55へ表示させるものであり、転写モデル20aは、表示対象断面11iを含むタイヤモデルの子午断面形状を簡略化して作成される点に特徴がある。
一般に、タイヤは、トレッドセンター部、ショルダー部、サイド部、ビード部に分けることができる。図13−1に示す転写モデル20aは、例えば、図9−1に示す子午断面モデル10CMを、トレッドセンター部Ce、ショルダー部Sh、サイド部Si、ビード部Beに大別して、それぞれの部分を複数の転写領域A1、A2、・・A18等に分割することにより作成される。このようにして作成される転写モデル20aの形状は、子午断面モデル10CMの形状を簡略化したものとなる。このような簡略化した転写モデル20aを用いることにより、それぞれの転写領域A1、A2等に表示物理量が転写された転写モデル20aを見れば、表示物理量の分布等の概略を一見して把握できる。これによって、解析結果を直感的に理解できるので、解析結果を把握しやすくなる。
上述したように、図4に示すタイヤモデル10は、子午断面モデル10CMをタイヤの周方向に向かって展開して作成されるものであるため、すべての子午断面は同一になる。このため、転写モデル20aとタイヤモデル10の表示対象断面11iとは形状が異なり、また、転写モデル20aの転写領域A1、A2等と表示対象断面11iの要素とは通常一致しない。したがって、転写モデル20aに表示対象断面11iに存在する各要素の表示物理量を転写する場合には、転写モデル20aと表示対象断面11iとの対応を定めておく必要がある。このため、第1例では、次のような手法で前記対応を定め、表示対象断面11iに存在する各要素の表示物理量を転写モデル20aの転写領域A1、A2等に転写する。
転写モデル20aは、例えば、図2に示すモデル作成部52aによって予め作成され、記憶部54の所定領域に保存されているものとする。図13−1に示すように、転写モデル20aの幅方向中心(トレッドセンター)TCを始点SPとし、ビード部先端Btを終点FPとし、転写モデル20aの内面20aiに沿った始点SPから終点FPまでの距離(転写モデル内面距離)をLaとする。Laは、作成された転写モデル20aから求めておき、記憶部54の所定領域に保存しておいてもよいし、表示処理において転写条件演算部52dが転写モデル20aから計算して求めてもよい。
転写条件演算部52dは、始点SPからそれぞれの転写領域A1、A2等の端部(それぞれの転写領域A1、A2等の端部のうち、始点SPからより離れた端部)までの距離(転写領域距離)S1、S2等(図13−2参照)を求める。また、転写条件演算部52dは、転写領域距離S1、S2等と、転写モデル内面距離Laとの比(転写領域距離比)R1=S1/La、R2=S2/La等(図13−2参照)を求め、記憶部54の所定領域に保存する。
図14−1に示す表示対象断面11iについても転写モデル20aと同様に、表示対象断面11iの幅方向中心TCを始点SPとし、ビード部先端Btを終点FPとし、表示対象断面11iの内面11iiに沿った始点SPから終点FPまでの距離(表示対象断面内面距離)をLbとする。Lbは、表示対象断面11iから求めておき、記憶部54の所定領域に保存しておいてもよいし、表示処理において転写条件演算部52dが表示手段55へ表示させる表示対象断面11iから計算して求めてもよい。
そして、図14−2〜図14−4に示すように、転写条件演算部52dは、転写領域距離比R1、R2等と、表示対象断面内面距離Lbとを用いて、転写モデル20aのそれぞれの転写領域A1、A2、A3等に対応する、表示対象断面11iの領域(対応領域)Ab1、Ab2、Ab3等を定める。まず、図14−2に示すように、転写領域A1に対応する対応領域Ab1の、表示対象断面11iの内面11iiに沿った距離(対応領域内面距離)Sb1を、表示対象断面内面距離Lbと転写領域距離比R1(=S1/La)との積(Lb×R1)で求める。
図14−3に示すように、転写領域A2に対応する対応領域Ab2の対応領域内面距離Sb2は、表示対象断面内面距離Lbと転写領域距離比R2(=S2/La)との積(Lb×R2)から、対応領域内面距離Sb1を減算して求める(Sb2=Lb×R2−Sb1)。同様に、図14−4に示すように、転写領域A3に対応する対応領域Ab3の対応領域内面距離Sb3は、表示対象断面内面距離Lbと転写領域距離比R3(=S3/La)との積(Lb×R3)から対応領域内面距離Sb1と対応領域内面距離Sb2との和を減算して求める(Sb3=Lb×R3−(Sb1+Sb2))。すなわち、対応領域内面距離Sb3は、表示対象断面内面距離Lbと転写領域距離比R3(=S3/La)との積(Lb×R3)から、表示対象断面内面距離Lbと転写領域距離比R2(=S2/La)との積(Lb×R2)を減算して求めた値(Sb3=Lb×R3−Lb×R2)である。そして、このような手法で、転写モデル20aを構成するすべての転写領域A1、A2、・・・A18に対応する対応領域内面距離Sb1、Sb2、・・・Sb18を定める。
次に、転写条件演算部52dは、対応領域内面距離Sb1の両端から、表示対象断面11iのトレッド面Gmに向かってそれぞれ垂線Nl1、Nl2を伸ばし、垂線Nl1、Nl2で区切られた内面11iiの一部と、垂線Nl1、Nl2と、垂線Nl1、Nl2で区切られたトレッド面Gmの一部とで囲まれる領域を、転写領域A1に対応する表示対象断面11iの対応領域Ab1と定義する。同様に、転写条件演算部52dは、対応領域内面距離Sb2の両端から、表示対象断面11iのトレッド面Gmに向かってそれぞれ垂線Nl2、Nl3を伸ばし、垂線Nl2、Nl3で区切られた内面11iiの一部と、垂線Nl2、Nl3と、垂線Nl2、Nl3で区切られたトレッド面Gmの一部とで囲まれる領域を、転写領域A2に対応する表示対象断面11iの対応領域Ab2と定義する。そして、転写条件演算部52dは、表示対象断面11iの全領域について、同様の手法を用いて、転写モデル20aを構成するすべての転写領域A1、A2、・・・A18に対応する対応領域Ab1、Ab2、・・・Ab18を定める。定められた対応領域Ab1、Ab2、・・・Ab18の情報(座標やそれぞれの対応領域Ab1、Ab2等に含まれる要素の情報(座標や物理量等))は、転写条件演算部52dが記憶部54の所定領域に格納する。
対応領域Ab1、Ab2、・・・Ab18が定められたら、転写制御部52eは、それぞれの対応領域Ab1、Ab2、・・・Ab18から、転写モデル20aの転写領域A1、A2、・・・A18に、それぞれの対応領域Ab1、Ab2、・・・Ab18の表示物理量を転写する。この場合、転写条件演算部52dは、それぞれの対応領域Ab1、Ab2、・・・Ab18を構成するそれぞれの要素の表示物理量を記憶部54から読み出し、それぞれの対応領域Ab1、Ab2、・・・Ab18における表示物理量の平均値を算出する。そして、転写制御部52eは、転写モデル20aの転写領域A1、A2、・・・A18に、算出した表示物理量の平均値を転写する。なお、対応領域Ab1、Ab2、・・・Ab18と、表示対象断面11iの要素の境界とが一致しない場合、転写条件演算部52dは、補間を用いて対応領域Ab1、Ab2等の平均値を算出することが好ましい。
表示物理量が転写された後の転写モデル20aは、例えば、図15に示すようになり、表示制御部52fは、転写後の転写モデル20aを表示手段55へ表示させる。転写後の転写モデル20aを見れば、表示物理量の分布等の概略を一見して把握できるので、解析結果を直感的に理解でき、その結果、解析結果を把握しやすくなる。これによって、解析結果の評価においては、例えば、まず、簡略化された転写モデル20aを用いて解析結果を大まかに把握し、特に注目すべき断面を抽出することができるので、効率的に解析結果を評価できる。その結果、タイヤを効率的に開発できるので、開発期間を短縮したり開発コストを低減したりすることができる。
(表示対象断面とは異なる転写モデルを用いる表示処理の第2例)
第2例は、解析対象とするタイヤの子午断面の形状が、当該タイヤの周方向において異なる場合の表示処理に適している。このようなタイヤとしては、例えば、周方向溝及びラグ溝を有するタイヤがある。次においては、子午断面の形状が周方向において異なるタイヤとして、周方向溝及びラグ溝を有するタイヤを例とするが、第2例の適用対象はこのようなタイヤに限定されるものではない。
図16−1は、周方向溝及びラグ溝を有するタイヤモデルのトレッドパターンを示す平面図である。図16−2、図16−3は、図16−1に示すタイヤモデルの異なる子午断面を示す平面図である。図16−1に示すタイヤモデル10bは、周方向溝及びラグ溝を有するタイヤを解析モデル化したものである。タイヤモデル10bは、周方向溝17及びラグ溝19を有するため、タイヤモデル10bの子午断面は、自身の周方向における位置によって異なる形状となる。例えば、図16−2に示す子午断面モデル10CM1と図16−3に示す子午断面モデル10CM2とは、タイヤモデル10bの周方向における異なる位置の子午断面であるが、それぞれ異なる形状となる。したがって、タイヤモデル10bの解析モデルの子午断面モデルを当該解析モデルの転写モデルとして用いる場合、適切な子午断面モデルを選択する必要がある。
図17−1は、第2例で用いる転写モデルを示す平面図である。図17−2は、図17−1に示す転写モデルの一部拡大図である。図18は、図17−1に示すタイヤモデルの表示対象断面を示す平面図である。周方向溝及びラグ溝を有するタイヤを、図2に示すモデル作成部52aがコンピュータで解析可能な解析モデル化すると、例えば、図16−1に示すようなタイヤモデル10bとなる。なお、前記タイヤは、周方向に向かって子午断面の形状が異なるため、図9−1に示すような子午断面モデル10CMをタイヤの周方向に相当する方向に向かって360度展開することによって作成することはできない。この場合、モデル作成部52aは、前記タイヤの座標データに基づいて、前記タイヤを有限個の節点で構成される有限個の要素に分割して、タイヤモデル10bを作成する。
このタイヤモデル10bから、周方向溝17のみ存在する子午断面(子午断面モデル)が抽出され、抽出された子午断面モデルの形状及び要素から、図17−1、図17−2に示す転写モデル20bが作成される。このため、転写モデル20bは、タイヤモデル10bの複数の子午断面モデルのうち、周方向溝17のみ存在する子午断面モデルと同一の形状及び要素を有することになる。図17−2に示すように、転写モデル20bは、複数の表示要素21bnで構成される。なお、図17−2に示す転写モデル20bの表示要素は、四角形の形状をした部分であるが、便宜上、符号21bnは一つの表示要素のみに付してある。ここで、nは、上述した要素識別符号である。転写モデル20bは、例えば、図2に示すモデル作成部52aによって予め作成され、記憶部54の所定領域に保存されているものとする。
第2例では、上述した表示処理の転写条件を求めるステップ(ステップS413あるいはステップS423)において、次のような手法によって、例えば、図18に示す表示対象断面11biの表示物理量を、図17−1に示す転写モデル20bに転写する。まず、図2に示す転写条件演算部52dは、記憶部54に保存されている転写モデル20b、及び選択された表示対象断面11biを記憶部54から読み出し、転写モデル20bと表示対象断面11biとを重ね合わせる。そして、転写条件演算部52dは、転写モデル20bの表示要素21bnの一部と重複する表示対象断面11biの要素の物理量を表示要素21bnに転写される表示物理量として演算し、転写制御部52eは、演算された表示物理量を表示要素21bnに転写する(ステップS414あるいはステップS424)。
図19は、転写モデルの表示要素に表示対象断面の表示物理量を転写する手法を示す概念図である。図19に示す転写モデル20bの表示要素21bnは、4個の表示要素節点NB1、NB2、NB3、NB4で構成される。また、表示要素21bnは、その一部が、表示対象断面11biを構成する4個の要素Eb1、Eb2、Eb3、Eb4それぞれの一部と重なっている。これによって、表示要素21bnの表示要素節点NB1は表示対象断面11biの要素Eb1に含まれ、表示要素節点NB2は要素Eb2に含まれ、表示要素節点NB3は要素Eb3に含まれ、表示要素節点NB4は要素Eb4に含まれることになる。
表示対象断面11biの表示物理量を転写モデル20bの表示要素21bnへ転写する場合を考える。この場合、転写条件演算部52dは、表示要素21bnの表示要素節点NB1に対して、表示要素節点NB1が含まれる表示対象断面11biの要素Eb1の表示物理量を転写する。ここで、要素Eb1は、4個の節点NA1、NA2、NA3、NA4で構成されている。そして、転写条件演算部52dは、表示要素節点NB1と、要素Eb1の節点NA1、NA2、NA3、NA4との関係(位置関係)に基づき、節点NA1、NA2、NA3、NA4の表示物理量から補間を用いて表示要素節点NB1に転写される表示物理量を演算する(表示物理量を転写モデル20bのそれぞれの表示要素節点にマッピングする)。この補間は、例えば、アイソパラメトリック要素の形状関数による補間を用いる。また、補間の代わりに、例えば、節点NA1、NA2、NA3、NA4の表示物理量の平均値を表示要素節点NB1に転写される表示物理量としてもよい。
転写条件演算部52dは、他の表示要素節点NB2、NB3、NB4に対しても、要素Eb2、Eb3、Eb4の節点を用いて、表示要素節点NB1と同様にそれぞれの表示要素節点NB2、NB3、NB4に転写される表示物理量を、要素Eb2、Eb3、Eb4の表示物理量から演算する。表示要素21bnを構成するすべての表示要素節点NB1、NB2、NB3、NB4に対して転写される表示物理量が演算されたら、転写条件演算部52dは、転写モデル20bを構成する他の表示要素に対しても、表示対象断面11biの要素から転写される表示物理量を同様に演算する。なお、転写条件演算部52dは、必要に応じて、表示要素中心22biにおける表示物理量を、表示要素節点NB1、NB2、NB3、NB4の表示物理量から演算してもよい。この場合も、転写条件演算部52dは、補間を用いて演算する。
演算結果は、転写制御部52eによって表示要素節点NB1、NB2、NB3、NB4や表示要素中心22biに転写される。転写制御部52eは、転写モデル20bを構成するすべての表示要素に対して表示物理量の演算が終了してからそれぞれの表示要素の表示要素節点に表示物理量を転写してもよい。また、転写制御部52eは、一つの表示要素に対して表示物理量の演算が終了してから、その表示要素の表示要素節点に表示物理量を転写してもよい。
転写条件演算部52dは、すべての表示対象断面11biについて、上述した手法によって転写モデル20bの表示要素に転写される表示物理量を演算する。そして、転写制御部52eは、演算された表示物理量を、それぞれの表示対象断面11biについて異なる転写モデル20bに転写して、記憶部54の所定領域に保存する。すなわち、図12のフローチャートに示す常時処理と同様の手順で、複数の転写モデル20bが作成される。作成され、記憶部54に保存された複数の転写モデルは、表示制御部52fが必要に応じて読み出して、表示手段55へ表示させる。
なお、図5のフローチャートに示す表示処理においては、表示物理量が転写された転写モデル20bを表示制御部52fが表示手段55に表示させる毎に、これから表示手段55へ表示する表示対象断面11biについて転写条件演算部52dが転写モデル20bに転写される表示物理量を演算し、転写制御部52eが演算された表示物理量を転写モデル20bに転写する。しかし、第2例においては、このような手順に限定されるものではなく、転写条件演算部52dは、すべての表示対象断面11biについて転写モデル20bに転写される表示物理量を演算して、記憶部54の所定領域に保存しておき、転写制御部52eは、表示手段55に転写モデル20bが表示される毎に、記憶部54から演算された表示物理量を読み出して転写モデル20bへ転写し、表示制御部52fは転写後の転写モデル20bを表示手段55へ表示させてもよい。
また、図12のフローチャートに示す表示処理においては、表示物理量が転写された転写モデル20bを表示制御部52fが表示手段55に表示させる毎に、これから表示手段55へ表示する表示対象断面11biについて転写条件演算部52dが転写モデル20bに転写される表示物理量を演算し、転写制御部52eが演算された表示物理量を転写モデル20bに転写する。しかし、第2例においては、このような手順に限定されるものではなく、転写条件演算部52dは、すべての表示対象断面11biについて転写モデル20bに転写される表示物理量を演算して、記憶部54の所定領域に保存しておき、転写制御部52eは、表示手段55に転写モデル20bが表示される毎に、記憶部54から演算された表示物理量を読み出して転写モデル20bへ転写し、表示制御部52fは転写後の転写モデル20bを表示手段55へ表示させてもよい。
第2例によれば、解析対象とするタイヤの子午断面の形状が、当該タイヤの周方向において異なる場合であっても、表示対象断面11biの表示物理量を転写モデル20bに転写して、表示手段55へ表示させることができる。これによって、解析対象のタイヤの制限が少なくなるので、他種類のタイヤを解析し、評価する際に、解析結果を効率的に表示させることができる。なお、第2例では、表示要素21bnの表示要素節点NB1に対して、NB1を含む表示対象断面11biの要素Eb1の各節点NA1、NA2、NA3、NA4の表示物理量を転写した。しかし、これに限定されるものではなく、例えば、表示要素21bnの表示要素中心22biに対して、表示対象断面11biの要素Eb1の表示物理量を転写してもよい。
本実施形態に係る解析情報表示方法は、タイヤのような軸対称環状構造物以外にも適用できる。例えば、ホースに対する解析(例えば、変形解析、以下同様)の結果の表示や、コンベアベルトに対する解析の結果の表示に対して、本実施形態に係る解析情報表示方法を適用することができる。ここで、軸対称環状構造物とは、環状の構造物であって、その周方向に向かっていずれの子午断面(環状構造物の中心軸(例えば、タイヤの回転軸)と平行かつ前記中心軸を含む平面で環状構造物を切った断面)も同様の形状であるものである。また、本実施形態に係る解析情報表示方法が適用できる解析対象は、タイヤ、ホース、コンベアベルトに限定されるものではない。これらの他にも、パイプやシャフトの解析を実行し、それらの長手方向と直交する断面に空間変化情報等を配置して表示させたり、航空機の翼、あるいは風車や流体機械の翼に対して変形解析を実行し、空間変化情報等を翼の断面に表示させたりしてもよい。
以上、本実施形態は、複数の異なる表示対象断面の表示物理量が転写された転写モデルを順次表示手段へ表示させる。これによって、表示対象断面の表示物理量が時間とともに変化するように表示される。その結果、解析結果を効率よく、かつ理解しやすく表示手段へ表示させることができる。また、タイヤの接地解析を実行してその解析結果を表示手段へ表示させる場合、複数の異なる表示対象断面の表示物理量が表示手段へ順次表示されることにより、あたかもタイヤが転動しているような状態で解析結果を表示することができる。その結果、解析結果を直感的に理解しやすくなる。