ここでは、下記の順序に従って本発明の実施の形態について説明する。
(1)ナビゲーション装置の構成:
(2)運転支援処理:
(3)他の実施形態:
(3−1)変速比の変更を許可した実施形態:
(3−1−1)登坂路変速比設定処理:
(3−1−2)降坂路変速比設定処理:
(1)ナビゲーション装置の構成:
図1は、本発明にかかる運転支援装置を含むナビゲーション装置10の構成を示すブロック図である。ナビゲーション装置10は、CPU,RAM,ROM等を備える制御部20、記録媒体30を備えており、記録媒体30やROMに記憶されたプログラムを制御部20で実行することができる。本実施形態においては、このプログラムとして運転支援プログラム21を実行可能である。運転支援プログラム21は、制御部20がナビゲーション処理を実行している状態において実行される。
本実施形態における車両は、GPS受信部41と車輪センサ42とジャイロセンサ43と加速部44と変速部45と制動部46とユーザーI/F部47とを備えており、各部を必要に応じて利用して制御部20が運転支援プログラム21による機能を実現する。
GPS受信部41は、GPS衛星からの電波を受信し、図示しないインタフェースを介して車両の現在位置を算出するための情報を出力する。制御部20は、この信号を取得して車両の現在位置を取得する。車速センサ42は、車両が備える車輪の回転速度に対応した信号を出力する。制御部20は、図示しないインタフェースを介してこの信号を取得し、車両の速度を取得する。ジャイロセンサ43は、車両に作用する角速度に対応した信号を出力する。制御部20は図示しないインタフェースを介してこの信号を取得し、車両の走行方向を取得する。車輪センサ42およびジャイロセンサ43は、GPS受信部41の出力信号から特定される車両の現在位置を補正するなどのために利用される。また、車両の現在位置は、当該車両の走行軌跡に基づいて適宜補正される。
加速部44は、車両に搭載された駆動源(エンジン)に対して供給する燃料を調整するためのスロットルバルブと当該スロットルバルブの開度を調整するための燃料供給量調整ペダルとを備えている。すなわち、運転者が燃料供給量調整ペダルを操作することによって駆動源に対して供給する燃料を調整することができる。また、運転者が燃料供給量調整ペダルを操作しない状態において、運転者の意志に基づく駆動源に対する燃料供給は停止する。
変速部45は、前進について計6速、後進について計1速およびニュートラルからなる複数の変速段を有する有段のトルクコンバータを含む変速機を備えており、当該変速機においては各変速段に対応した変速比で回転数を調整しながら駆動源の駆動力を車輪に伝達することができる。なお、本実施形態においては、前進1速〜前進6速のように変速段がハイギアになるにつれて変速比が小さくなるように構成されている。また、制御部20は図示しないインタフェースを介して変速部45に対して制御信号を出力し、現在設定されている変速比を取得することが可能である。
なお、本実施形態における駆動源は、回転停止を防止するための図示しない制御部を備えており、当該制御部の制御により、走行中に駆動源の回転が停止することを防止するための最低限の燃料供給が行われる。すなわち、変速機によってニュートラルに設定されている場合、制御部は、燃料供給量調整ペダルが操作されていない状態であっても最低限の回転数を維持するために最低限の燃料供給を行うようにスロットルバルブを制御する。また、ニュートラル以外の変速段に設定されている場合、制御部は、燃料供給量調整ペダルが操作されていない状態であっても駆動源の回転数が所定の回転数以下になると最低限の回転数を維持するために最低限の燃料供給を行うようにスロットルバルブを制御する。
制動部46は、車輪に搭載された摩擦ブレーキによる減速量を調整するホイールシリンダの圧力を制御する装置と、当該圧力を調整するための制動力調整ペダルとを備えている。すなわち、運転者が制動力調整ペダルを操作することで摩擦ブレーキによって車両に作用する制動力を調整することができる。
ユーザーI/F部47は、運転者の指示を入力し、また運転者に各種の情報を提供するためのインタフェース部であり、図示しないタッチパネルディスプレイやスイッチ、スピーカ等を備えている。制御部20は、ユーザーI/F部47に対して制御信号を出力することによって各種の案内を出力させる。
運転支援プログラム21は、燃料供給量調整ペダルの操作を行うことなく、かつ、制動力調整ペダルの操作を行うことなく、所定の車速範囲内で判定対象区間の走行を完了することができるか否かを判定するため、勾配情報取得部21aと判定対象区間設定部21bと加速度情報取得部21cと走行完了判定部21dと案内部21eとを備えている。また、記録媒体30には地図情報30aと加速度情報30bとが予め記録されている。
地図情報30aは、車両が走行する道路上に設定されたノードを示すノードデータ,ノード間の道路の形状を特定するための形状補間点データ,ノード同士の連結を示すリンクデータ,道路やその周辺に存在する地物(道路上の停止線や白線、横断歩道など)を示すデータ等を含んでいる。なお、本実施形態において、ノードデータおよび形状補間点データにおいては、各ノードや各形状補間点の位置および高度を示す情報が含まれている。
加速度情報30bは、車両に対してエンジンブレーキを作用させている状態における車速と車両に作用する加速度とを対応付けて示す情報であり、変速部45が備える変速機によって設定される変速比毎に当該車速と、燃料供給量調整ペダルの操作が行われず、かつ、制動部46による減速が行われない状態での加速度との対応関係が定義され、加速度情報30bとして記録媒体30に記録されている。なお、車両の車速と駆動源の回転数とが直接的に対応し、当該駆動源の回転数と車両に作用する加速度とが直接的に対応するが、本実施形態においては、予め車速と回転数との関係および回転数と加速度との関係に基づいて車速と加速度との対応関係を定義することによって加速度情報30bを規定している。
(2)運転支援処理:
図2は、以上の構成において制御部20が運転支援プログラム21の処理によって実現する処理を示すフローチャートである。運転支援プログラム21が実行されると、制御部20は、勾配情報取得部21aの処理により、まず、車両の現在位置を取得する(ステップS100)。すなわち、制御部20は、GPS受信部41,車速センサ42,ジャイロセンサ43の出力信号を取得し、地図情報30aを参照して車両の現在位置を特定する。
次に、制御部20は、勾配情報取得部21aの処理により、車両が走行する予定の道路の勾配を示す勾配情報を取得し、判定対象区間設定部21bの処理により、当該勾配情報に基づいて、車両の現在位置から、当該現在位置より前方において道路の勾配が所定量以上となった後、道路の勾配が所定量未満となるまでの区間を判定対象区間として設定する(ステップS110)。すなわち、制御部20は、車両の現在位置を判定対象区間の開始位置として設定する。さらに、制御部20は地図情報30aを参照して当該車両の前方の道路に存在するノードおよび形状補間点に対応するノードデータおよび形状補間点データを車両に近い位置に存在するものから順に取得し、ノードや形状補間点の高度を勾配情報として取得する。
そして、当該勾配情報を参照し、車両の前方において勾配が所定量以上(例えば、勾配の角度の絶対値が所定値以上)となる位置を特定し、さらにそれより前方の道路において、勾配が所定量未満となる位置を特定し、前者の位置を開始位置、後者の位置を終了位置とする区間を判定対象区間として特定する。なお、判定対象区間の終了位置は勾配が所定量未満となる位置であれば良いが、本実施形態においては当該終了位置より前方の所定距離以内において再度勾配が所定量以上変化しない位置を終了位置とする。すなわち、勾配が所定量未満となる位置より前方において勾配が所定量未満となる道路がさらに所定距離以上連続する平坦路であるか否かを特定し、勾配が所定量未満となる位置より前方の道路が平坦路である場合に当該平坦路の開始位置を判定対象区間の終了位置とする。図3Aは、車両Cの前方における道路の形状を模式的に示す図である。同図3Aに示す道路においては車両Cの前方において道路の勾配が変化して登坂路、降坂路、登坂路、降坂路、平坦路が順に形成されている。従って、この例においては、車両Cの現在位置P1が判定対象区間Zの開始位置となり、最初に現れる平坦路の開始位置P5が判定対象区間Zの終了位置となる。
なお、判定対象区間の開始位置は、燃料消費を抑制可能であるか否かを判定する対象となる区間の始点として定義されれば良く、車両の現在位置の他、登坂路の開始位置(最下点)、降坂路の開始位置(最上点)等を当該判定対象区間の開始位置とすることが可能である。また、判定対象区間の終了位置は、当該終了位置よりも前方の所定範囲において勾配が変化しないような位置に設定することができればよい。
加速度情報取得部21cは、制御部20に、燃料供給量調整ペダルを操作していない状態で、車両に搭載された変速機にて任意の変速比に設定した場合に車両に作用する加速度を示す加速度情報を取得する機能を実現させるモジュールである。制御部20は、ステップS110にて判定対象区間を設定すると、次に、加速度情報取得部21cの処理によって、車両にて現在設定された変速比に対応した加速度情報を取得する(ステップS115)。すなわち、本実施形態においては、現在設定された変速比を維持した状態で判定対象区間の走行を完了可能であるか否かを判定する構成を採用しており、当該判定を行うため、制御部20は、各変速比に関する加速度情報30bの中から、現在設定された変速比に対応する加速度情報30bを選択して取得する。
次に、制御部20は、走行完了判定部21dの処理により、勾配情報と加速度情報とに基づいて、燃料供給量調整ペダルを操作することなく、かつ、制動力調整ペダルを操作することなく、所定の車速範囲内で判定対象区間の走行を完了することが可能であるか否かを判定する(ステップS120)。すなわち、制御部20は、単位時間毎の車速および加速度を特定する処理を繰り返すことによって判定対象区間内の複数の位置の車速および加速度を特定して、各位置の車速と所定の車速範囲とを比較する。具体的には、時刻Tの単位時間後の車速は時刻Tにおける車速および加速度の総和によって特定することができる。すなわち、制御部20は、現在位置における車速から加速度情報30bに基づいて現在位置において車両に作用する加速度を特定し、当該加速度と勾配によって特定される加速度によって車両に作用する加速度との総和を特定し、当該加速度の総和に基づいて単位時間経過後の車速を決定する。以上の処理を繰り返すことによって判定対象区間内の複数の位置における車速が特定されるので、各位置の車速を所定の車速範囲と比較することによって、所定の車速範囲内で判定対象区間の走行を完了することが可能であるか否かを判定することができる。
例えば、図3Aに示す例において、車両が同図に示す現在位置P1に存在する状態において、制御部20は、車速センサ42の出力信号に基づいて車両Cの現在車速V1を特定する。また、制御部20は、変速部45に対して制御信号を出力して現在設定されている変速比を特定し、加速度情報30bを参照して当該変速比に対応する加速度a11を特定する。さらに、制御部20は、勾配情報に基づいて当該車両Cの現在位置P1における勾配に起因して車両Cに作用する加速度a12を特定する。
以上の処理によれば、現在時刻における車両Cの車速V1と車両Cに作用する加速度(a11+a12)とが特定されたことになる。そこで、制御部20は、単位時間後における車両Cの位置がP1より(V1×単位時間)(m)前方の位置であるとともに、当該位置における車速V2が(V1+((a11+a12)×単位時間))(km/h)であるとみなす。そして、制御部20は、加速度情報に基づいて車速V2に対応する加速度a21を特定し、勾配情報に基づいてP1より(V1×単位時間)前方の位置における加速度a22を特定し、以下同様の処理を位置P5まで繰り返す。なお、ここでは車両の進行方向を正の方向として加速度を定義しているため、登坂路であればa11<0,a12<0であり、降坂路であればa11<0,a12>0である。従って、登坂路においては加速度(a11+a12)が負となり、降坂路においては加速度(a11+a12)が正あるいは負となり得る。図3Bは、車両Cが図3Aに示す判定対象区間Zを走行する際の車速を、縦軸を車速,横軸を位置として実線の曲線によって模式的に示しており、上述の繰り返し処理によって、同図3Bに示すような車速の推移が特定される。
ステップS120において判定対象区間の走行を完了することが可能であるか否かを判定するための指標となる所定の車速範囲は、車両が実際に道路を走行する際の車速として現実的な範囲として定義されていればよい。本実施形態においては、所定の車速範囲の上限値を判定対象区間の制限車速とし、所定の車速範囲の下限値を車両の停止を防止するための最低限の車速としている。すなわち、車速の上限値を判定対象区間の制限車速とすることで、法定の制限を遵守するとともに過度に大きな車速になることを防止した状態で判定対象区間の走行を完了できるか否かを判定することができる。また、車速の下限値を車両の停止を防止するための最低限の車速とすることで、車両が停止することなく判定対象区間の走行を完了できるか否かを判定することができる。なお、車両の停止を防止するための最低限の車速として0km/hを設定し、判定対象区間の全区間で当該0km/h以上であることを検証しても良いし、多少の誤差が生じても車両が停止しないように0に近い所定値を当該最低限の車速としても良い。図3Bにおいては、所定の車速範囲の上限値である制限車速をVmaxとして示している。従って、所定の車速範囲の下限値が0km/hであれば、図3Bに示すような車速の推移において位置P1〜位置P5における車速が下限値以上、上限値以下であり、所定の車速範囲内で判定対象区間の走行を完了することができると判定することができる。
ステップS120にて、所定の車速範囲内で判定対象区間の走行を完了することができると判定されない場合、制御部20はステップS125をスキップして処理を終了する。ステップS120にて、所定の車速範囲内で判定対象区間の走行を完了することができると判定された場合、制御部20は、案内部21eの処理により、判定対象区間において燃料供給量調整ペダルを操作する必要がないことを示す案内を行う(ステップS125)。すなわち、制御部20は、ユーザーI/F部47に制御信号を出力し、所定の音声および画像によって燃料供給量調整ペダルを操作することなく、次の平坦路まで走行可能であることを示す情報を出力するようにユーザーI/F部47を制御する。むろん、当該案内は種々の装置によって行うことが可能であり、例えば、インストルメントパネルに設置されたランプを点灯させること等によって案内を行っても良い。
以上の処理においては、車両の駆動源に燃料供給がなされず、運転者の意図による減速がなされない状態において、判定対象区間の走行を完了することができるか否かを判定するため、燃料消費が極めて少なく、かつ、車両のエネルギーを極めて効率的に車両の前進に利用可能な状態において、判定対象区間の走行を完了することができるか否かを判定することができる。さらに、所定の車速範囲内で判定対象区間の走行を完了することができるか否かを判定するため、燃料消費を抑制した状態で、かつ、制限車速を遵守しながら判定対象区間の走行を完了できるか否かを判定することができる。さらに、判定対象区間の走行を完了することができると判定された場合の案内に従って運転者が燃料供給量調整ペダルを操作せずに判定対象区間を走行することにより、燃料消費を抑制して安全に走行することが可能である。
(3)他の実施形態:
以上の実施形態は本発明を実施するための一例であり、燃料供給量調整ペダルを操作することなく、かつ、制動力調整ペダルの操作を行うことなく、所定の車速範囲内で判定対象区間の走行を完了することができるか否かを判定する限りにおいて、他にも種々の実施形態を採用可能である。例えば、本発明にかかる運転支援装置を備える車両の先行車や後続車の挙動に合わせて判定対象区間の走行を完了できるか否かを判定しても良い。すなわち、先行車や後続車との車間距離が過小とならない範囲で判定対象区間の走行を完了できるか否かを判定する。例えば、先行車や後続車の車速や挙動に基づいて当該先行車や後続車の車速の推移を予測し、先行車や後続車との距離が閾値以下となる場合に走行完了が不可能であると判定する構成を採用可能である。また、先行車や後続車との距離が過小にならないように所定の車速範囲を調整しても良い。例えば、先行車との距離が過小となることを防止するために所定の車速範囲の上限値を小さくする補正をし、また、後続車との距離が過小となることを防止するために所定の車速範囲の下限値を大きくする補正をする構成等を採用可能である。さらに、先行車や後続車が存在する場合には燃料供給量調整ペダルを操作する必要がないことを示す案内を行わないように構成してもよい。
さらに、所定の車速範囲の上限値や下限値は各種の要素に基づいて修正可能である。例えば、地図情報30aの正確性を示す指標を地図情報30aに対応付け、正確性が低いほど上限値や下限値に余裕を持たせる構成を採用可能である。例えば、正確性が低いほど上限値を制限車速よりも小さく、下限値を特定の値(例えば、0km/h)よりも大きくなるように構成する。すなわち、上限値と下限値とに誤差を超えるマージンを加える構成とする。この構成によれば、地図情報30aの誤差に起因して加速度情報等に誤差が含まれる場合であっても、判定対象区間の走行を完了することができるか否かを正確に判定することが可能である。
さらに、勾配情報は車両が走行する予定の道路の勾配を示す情報であれば良く、走行予定経路が設定されている場合には当該走行予定経路内に含まれる任意の区間の勾配情報を取得すればよい。また、勾配情報は道路の勾配を示していればよく、単位距離あたりの高度変化を示す位置毎の情報であっても良い。
さらに、燃料供給量調整ペダルは、駆動源に対する燃料供給量を運転者の意図に応じて調整するためのペダルであればよく、スロットルバルブを調整するためのペダルの他、インジェクタによる燃料供給量を調整するためのペダル等であっても良い。
さらに、所定の車速範囲の構成例として、上限値を判定対象区間の制限車速とし、下限値を当該制限車速に対して所定の関係にある値として所定の車速範囲を定義する構成を採用しても良い。すなわち、判定対象区間を走行している際の車速の変動範囲を制限する目的で、判定対象区間において許容される最大の車速の変動範囲として予め決められた範囲を所定の車速範囲として設定する構成とする。この構成によれば、判定対象区間における車速の変動範囲が制限車速と当該制限車速に対して所定の関係にある範囲内に制限された状態で走行を完了できるか否かを判定することができる。なお、下限値を規定する所定の関係は、乗り心地など種々の観点に基づいて特定することが可能である。例えば、車速の変動範囲の下限値を制限車速に対して一定の定数(<1、例えば0.8)を乗じた値とすれば、急激に車速が変動しない状態で判定対象区間における走行を完了できるか否かを判定することが可能である。
(3−1)変速比の変更を許可した実施形態:
さらに、判定対象区間の走行を完了できるか否かを判定する際に、現在設定されている変速比の変更を許可した状態で判定対象区間の走行を完了できるか否か判定する構成としてもよい。ここでは、判定対象区間を勾配の頂上や最下点を端点とした小区間に分類し、小区間毎に変速段を1段階変更し、あるいは、ニュートラルに設定することを許可した状態で判定対象区間の走行を完了できるか否かを判定する実施形態について説明する。
本実施形態は図1とほぼ同様の構成に示すような構成によって例えば図4〜図8に示すような処理を実行することによって実現可能である。なお、本実施形態においては、図示しないインタフェースを介して制御部20が変速部45に対して制御信号を出力して変速機における変速比を任意の変速段に対応した変速比に変更することが可能である。また、図示しないインタフェースを介して制御部20が制動部46に対して制御信号を出力して制動力調整ペダルの操作量を示す信号を取得することが可能である。
本実施形態において、運転支援プログラム21が実行されると、制御部20は、勾配情報取得部21aの処理により、ステップS100と同様に、車両の現在位置を取得する(ステップS200)。次に、制御部20は、勾配情報取得部21aの処理により、車両が走行する予定の道路の勾配を示す勾配情報を取得し、判定対象区間設定部21bの処理により、当該勾配情報に基づいて、判定対象区間として設定する(ステップS210)。ここで、判定対象区間を設定する処理は上述のステップS110と同様であるが、本実施形態においては、この処理に加えて判定対象区間を小区間に分類する処理も行う。すなわち、制御部20は、車両の現在位置と登降坂の変化位置と平坦路の開始位置とを特定し、各位置の中で隣接する点を端点とした区間を小区間として判定対象区間を複数の小区間に分類する。
例えば、図9Aに示すように、図3Aと同様の形状の道路においては、車両Cの現在位置P1〜最初の登坂路の頂点P2までの区間を小区間Z1,最初の登坂路の頂点P2〜最初の降坂路の最下点P3までの区間を小区間Z2,最初の降坂路の最下点P3〜2番目の登坂路の頂点P4までの区間を小区間Z3,2番目の登坂路の頂点P4〜2番目の降坂路の最下点(平坦路の開始位置)P5までの区間を小区間Z4と分類する。なお、本実施形態においては、各小区間において車両に設定すべき変速比と位置毎の車速とを示す小区間情報を小区間毎に定義し、小区間情報に基づいて各小区間の走行を完了することができるか否かを判定することによって判定対象区間の走行を完了できるか否かを判定する構成となっている。また、本実施形態においては、進行方向の後方で隣接する小区間における変速比に対して変速比を変化させるべきであるか否かを示す変数Rcによって小区間において車両に設定すべき変速比を特定する構成となっている。
判定対象区間および小区間が特定されると、制御部20は、小区間情報の特定対象となる小区間を最初の小区間(図9Aに示す例では小区間Z1)とし、最初の小区間における変速比を特定するため、走行完了判定部21dの処理により、ステップS220〜S245を実行する。なお、以下においては小区間情報の特定対象となっている小区間を対象小区間と呼ぶ。
当該ステップS220〜S245において、制御部20は、まず、対象小区間が登坂路であるか否かを判定する(ステップS220)。ステップS220において、対象小区間が登坂路であると判定されない場合、対象小区間が降坂路であるため、制御部20は、走行完了判定部21dの処理により、降坂路における変速比を設定するための降坂路変速比設定処理を実行する(ステップS230)。また、ステップS220において、対象小区間が登坂路であると判定された場合、制御部20は、走行完了判定部21dの処理により、登坂路における変速比を設定するための登坂路変速比設定処理を実行する(ステップS235)。
降坂路変速比設定処理、登坂路変速比設定処理の詳細は後述するが、これらの降坂路変速比設定処理、登坂路変速比設定処理によると、対象小区間において設定すべき変速比を示す変数Rcと当該変速比において対象小区間を走行した場合における対象小区間内の複数の位置における車速とが特定され、小区間情報としてRAMに記録された状態となる。なお、Rc=4は小区間の境界において小区間到達前に設定されている変速段よりも1段ダウンシフトすることを示し、Rc=3は小区間の境界以降において小区間到達前に設定されている変速段を維持することを示している。また、Rc=2は小区間の境界において小区間到達前に設定されている変速段よりも1段アップシフトすることを示し、Rc=1は小区間の境界においてニュートラルに設定することを示し、Rc=0は小区間の走行を完了できないことを示している。
以上のステップS230あるいはS235を実行すると、制御部20は、判定対象区間を構成する全ての小区間について小区間情報の特定が終了したか否かを判定する(ステップS240)。ステップS240において、全ての小区間について小区間情報の特定が終了したと判定されない場合、制御部20は、走行完了判定部21dの処理により、変数Rcが0であるか否かを判定する(ステップS245)。ステップS245において、変数Rcが0であると判定されない場合には、対象小区間を進行方向前方に隣接する小区間に切り替えてステップS220以降の処理を繰り返す。
ステップS240において全ての小区間について小区間情報の特定が終了したと判定された場合、あるいは、ステップS245において変数Rcが0であると判定された場合、制御部20は、案内部21eの処理により、燃料供給量調整ペダルの操作に関する案内を行うためのスロットルオフ案内処理を実行する(ステップS250)。図7は当該スロットルオフ案内処理を示すフローチャートであり、この処理において制御部20は、案内部21eの処理により、直前に実行されたステップS230あるいはS235によって特定された変数Rcの値が1以上4以下であるか否かを判定する(ステップS500)。ステップS500において変数Rcの値が1以上4以下であると判定された場合、制御部20は、ユーザーI/F部47に制御信号を出力し、所定の音声および画像によって燃料供給量調整ペダルを操作することなく、次の平坦路まで走行可能であることを示す情報を出力するようにユーザーI/F部47を制御する。運転者がこの案内に応じて燃料供給量調整ペダルの操作を行わないようにすることで、燃料消費を抑制しながら判定対象区間の走行を完了することができる。一方、ステップS500において変数Rcの値が1以上4以下であると判定されない場合、すなわち、変数Rcの値が0である場合には、燃料供給量調整ペダルの操作を行わない状態で判定対象区間の走行を完了することが不可能であるため、ステップS505をスキップする。
本実施形態において制御部20は、以上のような案内を行った後、車両制御処理(ステップS255)を実行して判定対象区間を実際に走行している過程において変速比を自動で制御する構成を採用している。図8は、当該車両制御処理を示すフローチャートである。なお、制御部20は、小区間に対して進行方向後方から順に1,2,3、、、と番号をつけ、小区間を示す変数Nを1に初期化した状態で車両制御処理を実行する。また、ステップS255における車両制御処理は、制動力調整ペダルの操作が行われていない場合に実行される。すなわち、制御部20は、制動部46に制御信号を出力して制動力調整ペダルの操作量を示す信号を取得し、当該信号に基づいて制動力調整ペダルが操作されていると判定される場合にはステップS255をスキップする。
車両制御処理において、制御部20は、小区間Nの小区間情報を取得する(ステップS600)。次に、制御部20は、ステップS600で取得した小区間情報を参照して変数Rcが4であるか否かを判定し(ステップS605)、変数Rcが4であると判定された場合、制御部20は、車両の現在位置が小区間Nの開始位置となった時点において変速部45に対して制御信号を出力して直前の設定よりも1段ダウンシフトさせた変速段に設定させる(ステップS610)。なお、Nが1である場合、小区間1の後方に隣接する小区間は存在しないため、ステップS605の判定を行った直後に現在設定されている変速段よりも1段ダウンシフトさせる。
一方、ステップS605において、変数Rcが4であると判定されない場合、制御部20は、ステップS600で取得した小区間情報を参照して変数Rcが2であるか否かを判定する(ステップS615)。ステップS615において、変数Rcが2であると判定された場合、制御部20は、車両の現在位置が小区間Nの開始位置となった時点において変速部45に対して制御信号を出力して直前の設定よりも1段アップシフトさせた変速段に設定させる(ステップS620)。なお、Nが1である場合、ステップS615の判定を行った直後に現在設定されている変速段よりも1段アップシフトさせる。
さらに、ステップS615において、変数Rcが2であると判定されない場合、制御部20は、ステップS600で取得した小区間情報を参照して変数Rcが1であるか否かを判定する(ステップS625)。ステップS625において、変数Rcが1であると判定された場合、制御部20は、車両の現在位置が小区間Nの開始位置となった時点において変速部45に対して制御信号を出力して変速段をニュートラルにシフトさせる(ステップS630)。なお、Nが1である場合、ステップS625の判定を行った直後にニュートラルにシフトさせる。
以上のようにステップS610,S620,S630のいずれかによって小区間Nの開始位置における変速比を設定すると、制御部20は、変数Nをインクリメント(ステップS635)して、判定対象区間を構成する全ての小区間について処理を終えたか否か判定する(ステップS640)。そして、ステップS640にて、全ての小区間について処理を終えたと判定されるまでステップS600以降の処理を繰り返す。以上の処理により、各小区間の開始位置において、より高燃費となる変速比に設定しながら所定の車速範囲内で判定対象区間を走行することが可能である。
(3−1−1)登坂路変速比設定処理:
次に、登坂路変速比設定処理を詳細に説明する。図5は、当該登坂路変速比設定処理を示すフローチャートである。登坂路変速比設定処理において、制御部20は、対象小区間に対して進行方向後方にて隣接する小区間の小区間情報を取得する(ステップS300)。なお、対象小区間が判定対象区間の最初の小区間である場合、それより進行方向後方に小区間は定義されていないため、ステップS300では現在設定されている変速比および現在の車速を取得する。以下においては、対象小区間に対して進行方向後方にて隣接する小区間を後方隣接小区間と呼ぶ。
次に、制御部20は、勾配情報と加速度情報とに基づいて、後方隣接小区間の小区間情報が示す変速比(対象小区間が最初の小区間であれば現在設定されている変速比)にて、燃料供給量調整ペダルを操作することなく、かつ、制動力調整ペダルを操作することなく、所定の車速範囲内で対象小区間の走行を完了することが可能であるか否かを判定する(ステップS305)。すなわち、制御部20は、加速度情報30bを参照し、加速度情報取得部21cの処理により、後方隣接小区間の小区間情報が示す変速比(対象小区間が最初の小区間であれば現在設定されている変速比)に対応する加速度を取得し、対象小区間の開始位置における加速度が当該取得した加速度と勾配情報から特定される加速度の和であるとみなす。また、対象小区間の開始位置における車速は後方隣接小区間の小区間情報が示す後方隣接小区間の終了位置における車速(対象小区間が最初の小区間であれば現在の車速)であるとみなす。さらに、各加速度および車速に基づいて単位時間毎の車速および加速度の推移を特定する。そして、対象小区間の終了位置(登坂路の頂点)における車速が下限値より大きいか否かを判定することによって、所定の車速範囲内で判定対象区間の走行を完了することができるか否かを判定する。すなわち、ここでは登坂路が対象小区間であるため、小区間の開始位置から終了位置に向けて車速が逓減する。そこで、小区間の開始位置においては制限車速を超えていないと言う前提の下に、最も車速が小さくなる小区間の終了位置について車速を判定することとしている。
ステップS305にて、対象小区間の走行を完了することが可能であると判定された場合、制御部20は、後方隣接小区間の小区間情報が示す変速比(対象小区間が最初の小区間であれば現在設定されている変速比)に対応する変速段をダウンシフトした場合に対象小区間の走行が完了可能であるか否かを判定する(ステップS310)。すなわち、制御部20は、後方隣接小区間の小区間情報が示す変速比(対象小区間が最初の小区間であれば現在設定されている変速比)に対応する変速段を1段ダウンシフトした変速段の変速比に対応する加速度情報30bを取得する。また、対象小区間の開始位置における加速度は当該加速度情報30bが示す加速度と勾配情報から特定される加速度の和であるとみなす。また、対象小区間の開始位置における車速は後方隣接小区間の小区間情報が示す後方隣接小区間の終了位置における車速(対象小区間が最初の小区間であれば現在の車速)であるとみなす。さらに、各加速度および車速に基づいて単位時間毎の車速および加速度の推移を特定する。そして、対象小区間の終了位置(登坂路の頂点)における車速が下限値より大きいか否かを判定することによって、所定の車速範囲内で判定対象区間の走行を完了することができるか否かを判定する。
ステップS310にて、ダウンシフトした場合に対象小区間の走行が完了可能であると判定された場合、対象小区間における変速比の設定値を示す変数Rcを4に設定する(ステップS315)。ステップS310にて、ダウンシフトした場合に対象小区間の走行が完了可能であると判定されない場合には、対象小区間における変速比の設定値を示す変数Rcを3に設定する(ステップS320)。
一方、ステップS305にて、対象小区間の走行を完了することが可能であると判定されない場合、制御部20は、後方隣接小区間の小区間情報が示す変速比(対象小区間が最初の小区間であれば現在設定されている変速比)に対応する変速段をアップシフトした場合に、対象小区間の走行が完了可能であるか否かを判定する(ステップS325)。すなわち、制御部20は、後方隣接小区間の小区間情報が示す変速比(対象小区間が最初の小区間であれば現在設定されている変速比)に対応する変速段を1段アップシフトした変速段の変速比に対応する加速度情報30bを取得する。また、対象小区間の開始位置における加速度は当該加速度情報30bが示す加速度と勾配情報から特定される加速度の和であるとみなす。また、対象小区間の開始位置における車速は後方隣接小区間の小区間情報が示す後方隣接小区間の終了位置における車速(対象小区間が最初の小区間であれば現在の車速)であるとみなす。さらに、各加速度および車速に基づいて単位時間毎の車速および加速度の推移を特定する。そして、対象小区間の終了位置(登坂路の頂点)における車速が下限値より大きいか否かを判定することによって、所定の車速範囲内で判定対象区間の走行を完了することができるか否かを判定する。
ステップS325にて、アップシフトした場合に対象小区間の走行が完了可能であると判定された場合、対象小区間における変速比の設定値を示す変数Rcを2に設定する(ステップS330)。ステップS325にて、アップシフトした場合に対象小区間の走行が完了可能であると判定されない場合には、変速段をニュートラルに設定した場合に、対象小区間の走行が完了可能であるか否かを判定する(ステップS335)。
すなわち、制御部20は、変速機において変速段をニュートラルに設定した場合の加速度を0とみなし、対象小区間の開始位置における加速度は勾配情報から特定される加速度であるとみなす。また、対象小区間の開始位置における車速は後方隣接小区間の小区間情報が示す後方隣接小区間の終了位置における車速(対象小区間が最初の小区間であれば現在の車速)であるとみなす。さらに、各加速度および車速に基づいて単位時間毎の車速および加速度の推移を特定する。そして、対象小区間の終了位置(登坂路の頂点)における車速が下限値より大きいか否かを判定することによって、所定の車速範囲内で判定対象区間の走行を完了することができるか否かを判定する。
ステップS335にて、変速段をニュートラルに設定した場合に対象小区間の走行が完了可能であると判定された場合、対象小区間における変速比の設定値を示す変数Rcを1に設定する(ステップS340)。ステップS335にて、変速段をニュートラルに設定した場合に対象小区間の走行が完了可能であると判定されない場合、対象小区間における変速比の設定値を示す変数Rcを0に設定する(ステップS345)。以上の処理によって変速比の設定値を示す変数Rcと上述の処理で算出した各変速比における小区間内の複数の位置における車速とが特定されると、これらの変数Rcおよび車速を小区間情報としてRAMに記録する(ステップS350)。
以上の処理においては、後方隣接小区間から、対象小区間に向けて走行する際に変速比を変更することなく走行を続けて対象小区間の走行を完了できるか否かをまず判定し、次にダウンシフトした場合に小区間の走行を完了できるか否かを判定し、次にアップシフトした場合、最後にニュートラルに設定した場合について判定している。
この判定順序は、変速比毎の燃費と走行距離との特性に基づいて決められている。すなわち、本実施形態においては、まず、ある小区間にて設定されていた変速比を変更することなく次の小区間の走行を完了することが可能であるか否かをまず判定し、その判定結果に応じて、より燃費の良い状態での走行が可能であるか否かを優先的に(先に)判定している。
より具体的には、本実施形態においては、燃料供給量調整ペダルが操作されていない状態にて車両を走行させることを想定しているが、燃料供給量調整ペダルが操作されていない状態であっても、本実施形態にかかる駆動源には駆動源の回転数(rpm)が所定の回転数以下になると最低限の回転数を維持するために最低限の燃料供給が行われるように構成されている。
一方、変速比が小さくなるほど駆動源の回転数が特定の回転数である場合における車輪の回転数が大きくなり、駆動源の回転数が特定の回転数である場合における車速は、変速比が小さいほど大きくなる。従って、燃料供給量調整ペダルが操作されていない状態で、車両の車速を特定の車速から減速させていくことを想定した場合、変速比が小さいほど最低限の燃料供給が開始される時点での車速が大きくなる。このため、判定対象区間において特定の車速を下限値の0km/h付近まで徐々に低下させることを想定した場合、変速比が小さいほど下限値との差が大きな車速で最低限の燃料供給が開始される状態に移行し、変速比が大きいほど下限値との差が小さい車速になるまで最低限の燃料供給が開始される状態に移行しない。従って、燃料供給量調整ペダルが操作されていない状態で、判定対象区間において特定の車速を下限値の0km/h付近まで徐々に低下させることを想定した場合、より変速比が大きい変速段(よりローギアの変速段)を選択した方が燃料消費を抑制することができる。
さらに、変速比が小さいほど特定の車速で走行している状態で車両に作用する負の加速度の大きさが小さくなるため、判定対象区間において特定の車速を下限値の0km/h付近まで徐々に低下させることを想定した場合、変速比が小さいほど減速の程度が小さくなり走行距離を長くすることができる。なお、変速段がニュートラルである状態においては、エンジンブレーキによる加速度が車両に作用しないため他の変速段と比較して最も走行距離が長くなるが、最低限の回転数を維持するために最低限の燃料供給が継続して行われるため他の変速段と比較して最も燃料消費が多くなる。
以上のように、本実施形態においては、ニュートラルにおいて最も燃料消費が多く、変速比が小さい状態から大きい状態になるにつれて燃料消費は抑制される。また、ニュートラルにおいて最も走行距離が長くなり、変速比が小さい状態から大きい状態になるにつれて走行距離は短くなる。そこで、図5に示す変速比設定処理においては、ステップS305において現在の変速比で小区間の走行を完了することができると判定された後、より高燃費での走行が可能であるか否かを判定するためにステップS310においてダウンシフトした場合について判定している。また、ステップS305において現在の変速比で小区間の走行を完了することができると判定されない場合には、ステップS325においてより低燃費になるとしても走行距離が延長されるアップシフトした場合について判定する構成としている。そして、ステップS325においてアップシフトしても小区間の走行を完了することができないと判定された場合には、最も走行距離が長くなるニュートラルについて小区間の走行を完了することができるか否かの判定を行うこととしている。
(3−1−2)降坂路変速比設定処理:
図6は、対象小区間が降坂路である場合に実行される降坂路変速比設定処理を示すフローチャートである。当該降坂路変速比設定処理において、制御部20は、後方隣接小区間の小区間情報を取得する(ステップS400)。なお、対象小区間が判定対象区間の最初の小区間である場合、それより進行方向後方に小区間は定義されていないため、ステップS400では現在設定されている変速比および現在の車速を小区間情報として取得する。
次に、制御部20は、勾配情報と加速度情報とに基づいて、後方隣接小区間の小区間情報が示す変速比(対象小区間が最初の小区間であれば現在設定されている変速比)にて、燃料供給量調整ペダルを操作することなく、かつ、制動力調整ペダルを操作することなく、所定の車速範囲内で対象小区間の走行を完了することが可能であるか否かを判定する(ステップS405)。
すなわち、制御部20は、加速度情報30bを参照し、加速度情報取得部21cの処理により、後方隣接小区間の小区間情報が示す変速比(対象小区間が最初の小区間であれば現在設定されている変速比)に対応する加速度を取得する。また、対象小区間の開始位置における加速度が当該取得した加速度と勾配情報から特定される加速度の和であるとみなす。また、対象小区間の開始位置における車速は後方隣接小区間の小区間情報が示す後方隣接小区間の終了位置における車速(対象小区間が最初の小区間であれば現在の車速)であるとみなす。さらに、各加速度および車速に基づいて単位時間毎の車速および加速度の推移を特定する。そして、対象小区間の終了位置(降坂路の最下点)における車速が上限値より大きいか否かを判定することによって、所定の車速範囲内で判定対象区間の走行を完了することができるか否かを判定する。すなわち、ここでは降坂路が対象小区間であるため、小区間の開始位置から終了位置に向けて車速が逓増する。そこで、小区間の開始位置においては下限値より車速が大きいと言う前提の下に、最も車速が大きくなる小区間の終了位置について車速を判定することとしている。これにより、変速比を維持した場合に小区間の走行を完了することができるか否かを判定する。
ステップS405にて、対象小区間の走行を完了することが可能であると判定されない場合、制御部20は、後方隣接小区間の小区間情報が示す変速比(対象小区間が最初の小区間であれば現在設定されている変速比)に対応する変速段をダウンシフトした場合に対象小区間の走行が完了可能であるか否かを判定する(ステップS410)。すなわち、制御部20は、後方隣接小区間の小区間情報が示す変速比(対象小区間が最初の小区間であれば現在設定されている変速比)に対応する変速段を1段ダウンシフトした変速段の変速比に対応する加速度情報30bを取得する。また、対象小区間の開始位置における加速度は当該加速度情報30bが示す加速度と勾配情報から特定される加速度の和であるとみなす。また、対象小区間の開始位置における車速は後方隣接小区間の小区間情報が示す後方隣接小区間の終了位置における車速(対象小区間が最初の小区間であれば現在の車速)であるとみなす。さらに、各加速度および車速に基づいて単位時間毎の車速および加速度の推移を特定する。そして、対象小区間の終了位置(降坂路の最下点)における車速が上限値より大きいか否かを判定することによって、所定の車速範囲内で判定対象区間の走行を完了することができるか否かを判定する。これにより、変速比を維持して走行する場合と比較して、より大きなエンジンブレーキを作用させて車速の上昇を抑制することによって走行を完了することが可能であるか否かを判定する。
ステップS410にて、ダウンシフトした場合に対象小区間の走行が完了可能であると判定された場合、対象小区間における変速比の設定値を示す変数Rcを4に設定する(ステップS415)。ステップS410にて、ダウンシフトした場合に対象小区間の走行が完了可能であると判定されない場合には、対象小区間における変速比の設定値を示す変数Rcを0に設定する(ステップS420)。
一方、ステップS405にて、対象小区間の走行を完了することが可能であると判定された場合、制御部20は、対象小区間における変速比の設定値を示す変数Rcを3に設定する(ステップS425)。
以上の処理によって変速比の設定値を示す変数Rcと上述の処理で算出した各変速比における小区間内の各位置における車速とが特定されると、これらの変数Rcおよび車速を小区間情報としてRAMに記録する(ステップS430)。
なお、ステップS220〜S245のループ処理において、最小の変速段(1速)に設定されている場合にダウンシフトによる走行完了の可能性を判定するステップ(ステップS310,S410)が実行された場合には、ダウンシフトによる走行完了が不可能であると判定する。また、ニュートラルや最大の変速段(例えば6速)に設定されている場合にアップシフトによる走行完了の可能性を判定するステップS325が実行された場合には、アップシフトによる走行完了が不可能であると判定する。
次に、以上の処理による動作を実際の例に則して説明する。例えば、図9Aに示す判定対象区間について小区間Z1〜Z4を設定して図9Aに示す車両Cの現在位置において図4〜図8の処理を実行した場合、登坂路である小区間Z1については、図5に示す登坂路変速比設定処理によって変速比が設定される。ここで、現在設定されている変速比による各位置の車速の推移が破線で示す曲線C1である場合、登坂路の頂点P2における車速が下限値(0km/h)よりも大きいため、ステップS305にて小区間の走行を完了可能であると判定される。
この場合、ステップS310においてダウンシフトした場合の車速を特定するが、ダウンシフトした場合の車速の推移が実線で示す曲線C2のような形状の場合、登坂路の頂点P2における車速が下限値よりも大きいため、ステップS310にて小区間の走行を完了可能であると判定される。従って、破線で示す曲線C1、実線で示す曲線C2の双方の車速で小区間の走行を完了可能であるとしても、実線で示す曲線C2のような車速となるようにダウンシフトするように設定される。このようにダウンシフトする場合、最低限の燃料供給が開始される車速と下限値との差はダウンシフトしない場合よりも小さくなるため、登坂路の頂点P2に向けて車速が小さくなったとしても最低限の燃料供給が開始される可能性は低い。従って、燃費向上の可能性が高い変速比を選択することができる。
一方、ステップS310において、ダウンシフトした場合の車速の推移が一点鎖線で示す曲線C3のような形状の場合、登坂路の頂点P2における車速が下限値よりも小さくなるため、ステップS310にて小区間の走行を完了可能であると判定されない。従って、車速の推移が破線で示す曲線C1となるように設定され、燃料供給量調整ペダルを操作していない状態であることによる燃料消費の抑制を行いながら小区間の走行を完了できるように設定されることになる。
さらに、現在設定されている変速比による各位置の車速の推移が一点鎖線で示す曲線C3である場合を想定する。この場合、登坂路の頂点P2における車速が下限値よりも小さいため、ステップS305にて小区間の走行を完了可能であると判定されない。この場合、ステップS325においてアップシフトした場合の車速を特定するが、アップシフトした場合の車速の推移が実線で示す曲線C2のような形状の場合、登坂路の頂点P2における車速が下限値よりも大きいため、ステップS325にて小区間の走行を完了可能であると判定される。従って、変速比を維持する場合よりは燃料消費を抑制できる可能性が低くなるが、燃料供給量調整ペダルを操作していない状態であることによる燃料消費の抑制を行いながら安全に小区間の走行を完了できるように設定されることになる。
さらに、ステップS325においてアップシフトした場合の車速の推移が実線で示す曲線C2のような形状ではなく、小区間の走行を完了可能であると判定されない場合、ステップS335においてニュートラルにシフトした場合の車速を特定する。そして、ニュートラルにシフトした場合の車速の推移が破線で示す曲線C1のような形状の場合、登坂路の頂点P2における車速が下限値よりも大きいため、ステップS335にて小区間の走行を完了可能であると判定される。従って、変速比を維持する場合よりは燃料消費が多くなるが、燃料供給量調整ペダルを操作していない状態であることによる燃料消費の抑制を行いながら安全に小区間の走行を完了できるように設定されることになる。
同様に図9Aに示す例において、降坂路である小区間Z2については、図6に示す処理によって変速比が設定される。ここで、小区間Z1にて設定されている変速比を維持した場合における小区間Z2の各位置における車速の推移が一点鎖線で示す曲線C4である場合、降坂路の最下点P3における車速が上限値(Vmax)よりも大きいため、ステップS405にて小区間の走行を完了可能であると判定されない。
この場合、ステップS410においてダウンシフトした場合の車速を特定するが、ダウンシフトした場合の車速の推移が実線で示す曲線C5のような形状の場合、降坂路の最下点P3における車速が上限値よりも小さいため、ステップS410にて小区間の走行を完了可能であると判定される。従って、ダウンシフトによって実線で示す車速となるように設定される。このように、変速比を維持した場合に小区間の走行を完了できない場合であっても、ダウンシフトを想定することによって走行を完了できる可能性があるのか否かを検討し、燃料供給量調整ペダルを操作していない状態であることによる燃料消費の抑制を行いながら安全に小区間の走行を完了できる可能性を増加させることができる。
さらに、以上の実施形態においては、変速比を1段ダウンシフトあるいはアップシフトした場合に小区間の走行を完了することができるか否かを判定する構成について説明したが、むろん、2段以上のダウンシフトあるいはアップシフトを想定しても良い。例えば、全ての変速比において小区間の走行を完了可能であるか否かを判定し、走行完了可能である変速比であって最も燃費が良い変速比を選択する構成としても良い。
さらに、上述の実施形態においては、小区間毎に走行完了可能であるか否かを判定する構成としたが、複数の小区間にわたって走行完了可能であるか否かを判定する構成を採用しても良い。例えば、図6に示すステップS405において、対象小区間の走行を完了することができると判定された場合、さらに、変速比を維持、あるいはアップシフト、あるいはニュートラルにシフトした場合に次の小区間を含めて走行を完了することができるか否かを判定する構成としても良い。この構成によれば、降坂路において予めアップシフトやニュートラルにシフトしておかなければ次の登坂路の走行を完了することができないような状況であっても走行完了できるように変速比を設定することができる。
さらに、変速比を変更するタイミングは、小区間の開始位置に限定されず、小区間の途中で変速比を変更する構成であっても良い。