以下、添付図面を参照して本発明の実施形態について説明する。図1は、車両に搭載された制御装置100の機能構成図である。同図を用いて車両1の制御装置100の構成および機能を説明する。この制御装置100が搭載される車両(自車両)1は、例えば、二輪や三輪、四輪等の自動車であり、ディーゼルエンジンやガソリンエンジン等の内燃機関を動力源とした自動車や、電動機を動力源とした電気自動車、内燃機関および電動機を兼ね備えたハイブリッド自動車等を含む。また、上述した電気自動車は、例えば、二次電池、水素燃料電池、金属燃料電池、アルコール燃料電池等の電池により放電される電力を使用して駆動される。
車両制御装置100は、外部状況取得部12、経路情報取得部13、走行状態取得部14など車両の外部からの各種情報を取り入れるための手段を備える。また、アクセルペダル70、ブレーキペダル72、およびステアリングホイール74、切替スイッチ80等の操作デバイスと、アクセル開度センサ71、ブレーキ踏量センサ(ブレーキスイッチ)73、およびステアリング操舵角センサ(またはステアリングトルクセンサ)75等の操作検出センサと、報知装置(出力部)82とを備える。また、車両の駆動又は操舵を行うための装置として、走行駆動力出力装置(駆動装置)90と、ステアリング装置92と、ブレーキ装置94を備えると共に、これらを制御するための車両制御装置100を備える。これらの装置や機器は、CAN(Controller Area Network)通信線等の多重通信線やシリアル通信線、無線通信網等によって互いに接続される。なお、例示した操作デバイスについてはあくまで一例であり、ボタン、ダイヤルスイッチ、GUI(Graphical User Interface)スイッチ等が車両に搭載されても構わない。
外部状況取得部12は、車両の外部状況、例えば、走行路の車線や車両周辺の物体といった車両周辺の環境情報を取得するように構成される。外部状況取得部12は、例えば、各種カメラ(単眼カメラ、ステレオカメラ、赤外線カメラ等)や各種レーダ(ミリ波レーダ、マイクロ波レーダ、レーザレーダ等)等を備える。また、カメラにより得られた情報とレーダにより得られた情報を統合するフュージョンセンサを使用することも可能である。
経路情報取得部13は、ナビゲーション装置を含む。ナビゲーション装置は、GNSS(Global Navigation Satellite System)受信機や地図情報(ナビ地図)、ユーザインターフェースとして機能するタッチパネル式表示装置、スピーカ、マイク等を有する。ナビゲーション装置は、GNSS受信機によって車両の位置を特定し、その位置からユーザによって指定された目的地までの経路を導出する。ナビゲーション装置により導出された経路は、経路情報144として記憶部140に格納される。車両の位置は、走行状態取得部14の出力を利用したINS(Inertial Navigation System)によって特定または補完されてもよい。また、ナビゲーション装置は、車両制御装置100が手動運転モードを実行している際に、目的地に至る経路について音声やナビ表示によって案内を行う。なお、車両の位置を特定するための構成は、ナビゲーション装置とは独立して設けられてもよい。また、ナビゲーション装置は、例えば、ユーザの保有するスマートフォンやタブレット端末等の端末装置の一機能によって実現されてもよい。この場合、端末装置と車両制御装置100との間で無線または有線による通信によって情報の送受信が行われる。
走行状態取得部14は、車両の現在の走行状態を取得するように構成される。走行状態取得部14は、走行位置取得部26と、車速取得部28と、ヨーレート取得部30と、操舵角取得部32と、走行軌道取得部34とを含む。
走行位置取得部26は、走行状態の1つである車両の走行位置及び車両の姿勢(進行方向)を取得するように構成される。走行位置取得部26は、各種測位装置、例えば、衛星や路上装置から送信される電磁波を受信して位置情報(緯度、経度、高度、座標等)を取得する装置(GPS受信機、GNSS受信機、ビーコン受信機等)やジャイロセンサや加速度センサ等を備える。車両の走行位置は車両の特定部位を基準に測定される。
車速取得部28は、走行状態の1つである車両の速度(車速という。)を取得するように構成される。車速取得部28は、例えば、1以上の車輪に設けられる速度センサ等を備える。
ヨーレート取得部30は、走行状態の1つである車両のヨーレートを取得するように構成される。ヨーレート取得部30は、例えば、ヨーレートセンサ等を備える。
操舵角取得部32は、走行状態の1つである操舵角を取得するように構成される。操舵角取得部32は、例えば、ステアリングシャフトに設けられる操舵角センサ等を備える。ここでは、取得された操舵角に基づいて操舵角速度及び操舵角加速度も取得される。
走行軌道取得部34は、走行状態の1つである車両の実走行軌道の情報(実走行軌道)を取得するように構成される。実走行軌道とは、実際に車両が走行した軌道(軌跡)を含み、これから走行する予定の軌道、例えば走行した軌道(軌跡)の進行方向前側の延長線を含んでいてもよい。走行軌道取得部34はメモリを備える。メモリは実走行軌道に含まれる一連の点列の位置情報を記憶する。また、延長線はコンピュータ等により予測可能である。
操作検出センサであるアクセル開度センサ71、ブレーキ踏量センサ73、ステアリング操舵角センサ75は、検出結果としてのアクセル開度、ブレーキ踏量、ステアリング操舵角を車両制御装置100に出力する。
切替スイッチ80は、車両の乗員によって操作されるスイッチである。切替スイッチ80は、乗員の操作を受け付ける。切替スイッチ80は、乗員の操作内容から、車両の運転モードを指定する運転モード指定信号を生成し、車両制御装置100に出力する。後述するように、車両制御装置100は、切替スイッチ80が受け付けた操作内容(運転モード指定信号の内容)から運転モード(例えば、自動運転モードと手動運転モード)の切り替えを行う。
また、本実施形態の車両は、運転者によりシフトレバーを介して操作されるシフト装置60を備える。シフト装置60におけるシフトレバー(図示せず)のポジションには、図1に示すように、例えば、P(パーキング)、R(後進走行)、N(ニュートラル)、D(自動変速モード(ノーマルモード)での前進走行)、S(スポーツモードでの前進走行)などがある。シフト装置60の近傍には、シフトポジションセンサ205が設けられる。シフトポジションセンサ205は、運転者によって操作されるシフトレバーのポジションを検出する。シフトポジションセンサ205で検出されたシフトポジションの情報は、車両制御装置100に入力される。なお、手動運転モードでは、シフトポジションセンサ205で検出されたシフトポジションの情報は、直接的に走行駆動力出力装置90(AT−ECU5)に出力される。
報知装置82は、情報を出力可能な種々の装置である。報知装置82は、例えば車両の乗員に、自動運転モードから手動運転モードへの移行を促すための情報を出力する。報知装置82としては、例えばスピーカ、バイブレータ、表示装置、および発光装置等のうち少なくとも1つが用いられる。
走行駆動力出力装置(駆動装置)90は、本実施形態の車両では、図2に示すように、エンジンEGおよび該エンジンEGを制御するFI−ECU(Electronic Control Unit)4と、自動変速機TM、トルクコンバータTC及びロックアップクラッチLC等を制御するAT−ECU5を備えて構成されている。なお、これ以外にも、走行駆動力出力装置90としては、車両が電動機を動力源とした電気自動車である場合には、走行用モータおよび走行用モータを制御するモータECUを備えてよい。車両がハイブリッド自動車である場合には、エンジンおよびエンジンECUと走行用モータおよびモータECUを備えてよい。本実施形態のように走行駆動力出力装置90がエンジンEG及び自動変速機TMで構成されている場合、FI−ECU4及びAT−ECU5は、後述する走行制御部120から入力される情報に従って、エンジンEGのスロットル開度や自動変速機TMのシフト段等を制御し、車両が走行するための走行駆動力(トルク)を出力する。また、走行駆動力出力装置90が走行用モータのみを含む場合、モータECUは、走行制御部120から入力される情報に従って、走行用モータに与えるPWM信号のデューティ比を調整し、上述した走行駆動力を出力する。また、走行駆動力出力装置90がエンジンおよび走行用モータを含む場合、FI−ECUおよびモータECUの双方は、走行制御部120から入力される情報に従って、互いに協調して走行駆動力を制御する。
ステアリング装置92は、例えば、電動モータを備える。電動モータは、例えば、ラックアンドピニオン機構に力を作用させて転舵輪の向きを変更する。ステアリング装置92は、走行制御部120から入力される情報に従って、電動モータを駆動させ、転舵輪の向きを変更する。
ブレーキ装置94は、例えば、ブレーキキャリパーと、ブレーキキャリパーに油圧を伝達するシリンダと、シリンダに油圧を発生させる電動モータと、制動制御部とを備える電動サーボブレーキ装置である。電動サーボブレーキ装置の制動制御部は、走行制御部120から入力される情報に従って電動モータを制御し、制動操作に応じた制動力を出力するブレーキトルク(制動力出力装置)が各車輪に出力されるようにする。電動サーボブレーキ装置は、ブレーキペダル72の操作によって発生させた油圧を、マスターシリンダを介してシリンダに伝達する機構をバックアップとして備えてよい。なお、ブレーキ装置94は、上記説明した電動サーボブレーキ装置に限らず、電子制御式油圧ブレーキ装置であってもよい。電子制御式油圧ブレーキ装置は、走行制御部120から入力される情報に従ってアクチュエータを制御して、マスターシリンダの油圧をシリンダに伝達する。また、ブレーキ装置94は、走行駆動力出力装置90が走行用モータを備える場合は、当該走行用モータによる回生ブレーキを含んでもよい。
次に、車両制御装置100について説明する。車両制御装置100は、自動運転制御部110と、走行制御部120と、記憶部140とを備える。自動運転制御部110は、自車位置認識部112と、外界認識部114と、行動計画生成部116と、目標走行状態設定部118とを備える。自動運転制御部110の各部、走行制御部120の一部または全部は、CPU(Central Processing Unit)等のプロセッサがプログラムを実行することにより実現される。また、これらのうち一部または全部は、LSI(Large Scale Integration)やASIC(Application Specific Integrated Circuit)等のハードウェアによって実現されてもよい。また、記憶部140は、ROM(Read Only Memory)やRAM(Random Access Memory)、HDD(Hard Disk Drive)、フラッシュメモリ等で実現される。プロセッサが実行するプログラムは、予め記憶部140に格納されていてもよいし、車載インターネット設備等を介して外部装置からダウンロードされてもよい。また、プログラムは、そのプログラムを格納した可搬型記憶媒体が図示しないドライブ装置に装着されることで記憶部140にインストールされてもよい。また、車両制御装置100は、複数のコンピュータ装置によって分散化されたものであってもよい。これにより、車両の車載コンピュータに対して、上述したハードウェア機能部と、プログラム等からなるソフトウェアとを協働させて、本実施形態における各種処理を実現することができる。
自動運転制御部110は、切替スイッチ80からの信号の入力に従って運転モードの切り替えが行われた場合に、その切り替えられた運転モードに対応する制御を行う。運転モードとしては、車両の加減速および操舵を自動的に制御する運転モード(自動運転モード)や、車両の加減速をアクセルペダル70やブレーキペダル72等の操作デバイスに対する操作に基づいて制御し、操舵をステアリングホイール74等の操作デバイスに対する操作に基づいて制御する運転モード(手動運転モード)があるが、これに限定されるものではない。他の運転モードとして、例えば、車両の加減速および操舵のうち一方を自動的に制御し、他方を操作デバイスに対する操作に基づいて制御する運転モード(半自動運転モード)を含んでいてもよい。なお、以下の説明で「自動運転」というときは、上記の自動運転モードに加えて半自動運転モードも含むものとする。
なお、手動運転モードの実施時においては、自動運転制御部110は動作を停止し、操作検出センサからの入力信号が走行制御部120に出力されるようにしてもよいし、直接的に走行駆動力出力装置90(FI−ECU又はAT−ECU)、ステアリング装置92、またはブレーキ装置94に供給されるようにしてもよい。
自動運転制御部110の自車位置認識部112は、記憶部140に格納された地図情報142と、外部状況取得部12、経路情報取得部13、または走行状態取得部14から入力される情報とに基づいて、車両が走行している車線(走行車線)、および、走行車線に対する車両の相対位置を認識する。地図情報142は、例えば、経路情報取得部13が有するナビ地図よりも高精度な地図情報であり、車線の中央の情報あるいは車線の境界の情報等を含んでいる。より具体的には、地図情報142には、道路情報や、交通規制情報、住所情報(住所・郵便番号)、施設情報、電話番号情報等が含まれる。道路情報には、高速道路、有料道路、国道、都道府県道といった道路の種別を表す情報や、道路の車線数、各車線の幅員、道路の勾配、道路の位置(経度、緯度、高さを含む3次元座標)、車線のカーブの曲率、車線の合流および分岐ポイントの位置、道路に設けられた標識等の情報が含まれる。交通規制情報には、工事や交通事故、渋滞等によって車線が封鎖されているといった情報が含まれる。
自車位置認識部112は、例えば、車両の基準点(例えば重心)の走行車線中央からの乖離、および車両の進行方向の走行車線中央を連ねた線に対してなす角度を、走行車線に対する車両の相対位置として認識する。なお、これに代えて、自車位置認識部112は、自車線の何れかの側端部に対する車両の基準点の位置等を、走行車線に対する車両の相対位置として認識してもよい。
外界認識部114は、外部状況取得部12等から入力される情報に基づいて、周辺車両の位置、および速度、加速度等の状態を認識する。本実施形態における周辺車両とは、車両の周辺を走行する他の車両であって、車両と同じ方向に走行する車両である。周辺車両の位置は、車両の重心やコーナー等の代表点で表されてもよいし、車両の輪郭で表現された領域で表されてもよい。周辺車両の「状態」とは、上記各種機器の情報に基づいて周辺車両の加速度、車線変更をしているか否か(あるいは車線変更をしようとしているか否か)を含んでもよい。また、外界認識部114は、周辺車両に加えて、ガードレールや電柱、駐車車両、歩行者その他の物体の位置を認識してもよい。
行動計画生成部116は、自動運転の開始地点、自動運転の終了予定地点、および/または自動運転の目的地を設定する。自動運転の開始地点は、車両の現在位置であってもよいし、車両の乗員により自動運転を指示する操作がなされた地点でもよい。行動計画生成部116は、その開始地点と終了予定地点の間の区間や、開始地点と自動運転の目的地との間の区間において、行動計画を生成する。なお、これに限定されるものではなく、行動計画生成部116は、任意の区間について行動計画を生成してもよい。
行動計画は、例えば、順次実行される複数のイベントで構成される。イベントには、例えば、車両を減速させる減速イベントや、車両を加速させる加速イベント、走行車線を逸脱しないように車両を走行させるレーンキープイベント、走行車線を変更させる車線変更イベント、車両に前走車両を追い越させる追い越しイベント、分岐ポイントにおいて所望の車線に変更させたり、現在の走行車線を逸脱しないように車両を走行させたりする分岐イベント、本線に合流するための合流車線において車両を加減速させ、走行車線を変更させる合流イベント等が含まれる。例えば、有料道路(例えば高速道路等)においてジャンクション(分岐点)が存在する場合、車両制御装置100は、車両を目的地の方向に進行するように車線を変更したり、車線を維持したりする。従って、行動計画生成部116は、地図情報142を参照して経路上にジャンクションが存在していると判明した場合、現在の車両の位置(座標)から当該ジャンクションの位置(座標)までの間に、目的地の方向に進行することができる所望の車線に車線変更するための車線変更イベントを設定する。なお、行動計画生成部116によって生成された行動計画を示す情報は、行動計画情報146として記憶部140に格納される。
目標走行状態設定部118は、行動計画生成部116により決定された行動計画と、外部状況取得部12、経路情報取得部13、及び走行状態取得部14により取得される各種情報に基づいて、車両の目標とする走行状態である目標走行状態を設定するように構成される。目標走行状態設定部118は、目標値設定部52と目標軌道設定部54とを含む。また、目標走行状態設定部118は、偏差取得部42、補正部44も含む。
目標値設定部52は、車両が目標とする走行位置(緯度、経度、高度、座標等)の情報(単に目標位置ともいう。)、車速の目標値情報(単に目標車速ともいう。)、ヨーレートの目標値情報(単に目標ヨーレートともいう。)を設定するように構成される。目標軌道設定部54は、外部状況取得部12により取得される外部状況、及び、経路情報取得部13により取得される走行経路情報に基づいて、車両の目標軌道の情報(単に目標軌道ともいう。)を設定するように構成される。目標軌道は、単位時間毎の目標位置の情報を含む。各目標位置には、車両の姿勢情報(進行方向)が対応づけられる。また、各目標位置に車速、加速度、ヨーレート、横G、操舵角、操舵角速度、操舵角加速度等の目標値情報が対応づけられてもよい。上述した目標位置、目標車速、目標ヨーレート、目標軌道は目標走行状態を示す情報である。
偏差取得部42は、目標走行状態設定部118で設定される目標走行状態と、走行状態取得部14で取得される実走行状態とに基づいて、目標走行状態に対する実走行状態の偏差を取得するように構成される。
補正部44は、偏差取得部42により取得される偏差に応じて、目標走行状態を補正するように構成される。具体的には、偏差が大きくなるほど、目標走行状態設定部118により設定された目標走行状態を、走行状態取得部14により取得された実走行状態に近づけて、新たな目標走行状態を設定する。
走行制御部120は、車両の走行を制御するように構成される。具体的には、車両の走行状態を、目標走行状態設定部118により設定された目標走行状態、又は、補正部44により設定された新たな目標走行状態に一致あるいは近づけるように走行制御の指令値を出力する。走行制御部120は、加減速指令部56と、操舵指令部58とを含む。
加減速指令部56は、車両の走行制御のうち、加減速制御を行うように構成される。具体的には、加減速指令部56は、目標走行状態設定部118又は補正部44により設定された目標走行状態(目標加減速度)と実走行状態(実加減度)とに基づいて、車両の走行状態を目標走行状態に一致させるための加減速度指令値を演算する。
操舵指令部58は、車両の走行制御のうち、操舵制御を行うように構成される。具体的には、操舵指令部58は、目標走行状態設定部118又は補正部44により設定された目標走行状態と、実走行状態とに基づいて、車両の走行状態を目標走行状態に一致させるための操舵角速度指令値を演算する。
図2は、車両が備える走行駆動力出力装置(駆動装置)90の構成を示す概略図である。同図に示すように、本実施形態の車両の走行駆動力出力装置90は、駆動源である内燃機関(エンジン)EGと、ロックアップクラッチ(同期機構)LC付きのトルクコンバータ(トルク増幅機構)TCを介してエンジンEGと連結される自動変速機TMとを備える。自動変速機TMは、エンジンEGから伝達された駆動力による回転を変速して駆動輪側に出力する変速機であって、前進走行用の複数の変速段と後進走行用の一の変速段とを設定可能な有段式の自動変速機である。また、走行駆動力出力装置90は、エンジンEGを電子的に制御するFI−ECU(燃料噴射制御装置)4と、ロックアップクラッチLC及びトルクコンバータTCを含む自動変速機TMを電子的に制御するAT−ECU(自動変速制御装置)5と、AT−ECU5の制御に従いトルクコンバータTCの回転駆動やロックアップ制御および自動変速機TMが備える複数の摩擦係合機構の締結(係合)・解放を油圧制御する油圧制御装置6とを備えている。
エンジンEGの回転出力は、クランクシャフト(エンジンEGの出力軸)221に出力され、トルクコンバータTCを介して自動変速機TMの入力軸227に伝達される。
トルクコンバータTCは、その内部構造の詳細な図示及び説明は省略するが、エンジンEGの出力軸221に連結されたドライブプレートを含むカバー部材と、カバー部材及び出力軸221を介してエンジンEGに連結されるポンプインペラと、ポンプインペラに対向配置されて作動油(ATF)が供給されると共に、入力軸227を介して自動変速機TMに連結されるタービンランナと、これらポンプインペラとタービンランナとを直結自在なロックアップクラッチLCとを備える。
そして、走行制御部120は、ロックアップクラッチLCの制御として、車速Vとアクセル開度AP(エンジンEGに対する要求駆動力)とで規定される車両1の走行状態に基づき、LCタイト領域(ポンプインペラとタービンランナを直結する直結位置に制御)と、LC解放領域(ポンプインペラとタービンランナを完全に解放する解放位置に制御)と、LCタイト領域とLC解放領域の間のLCスリップ領域(直結位置と解放位置の間のスリップ位置に制御)の3種のいずれにあるか判定し、それに応じた制御を選択するように設定される。また、LCスリップ領域では、ロックアップクラッチLCのスリップ量を適宜に増減させて任意のスリップ量とすることが可能である。また、走行制御部120は、走行駆動力出力装置90が備えるロックアップクラッチLC(トルクコンバータLC)の温度又はロックアップクラッチLC(トルクコンバータTC)で発生する発熱量を推定する機能を有している。
また、クランクシャフト221(エンジンEG)の回転数Neを検出するクランクシャフト回転数センサ201が設けられる。また、入力軸227の回転数(自動変速機TMの入力軸回転数)Niを検出する入力軸回転数センサ202が設けられる。また、出力軸228の回転数(自動変速機TMの出力軸回転数)Noを検出する出力軸回転数センサ203が設けられる。各センサ201〜203により検出された回転数データNe,Ni,No及びNoから算出される車速データがAT−ECU5に与えられる。また、エンジン回転数データNeは、FI−ECU(燃料噴射制御装置)4に与えられる。また、エンジンEGのスロットル開度THを検出するスロットル開度センサ206が設けられている。スロットル開度THのデータは、FI−ECU4に与えられる。
また、自動変速機TMを制御するAT−ECU5は、車速センサで検出した車速とアクセル開度センサ71で検出したアクセル開度とに応じて自動変速機TMで設定可能な変速段の領域を定めたシフトマップ(変速特性)55を有している。シフトマップ55は、変速段毎に設定されたシフトアップ線及びダウンシフト線を含むもので、特性の異なる複数種類のシフトマップが予め用意されている。自動変速機TMの変速制御では、AT−ECU5は、これら複数種類のシフトマップから選択したシフトマップに従い自動変速機TMの変速段を切り替える制御を行う。
[自動運転制御の概要]
車両では、運転者による切替スイッチ80の操作で自動運転モードが選択された場合、自動運転制御部110は車両の自動運転モードによる制御を行う。この自動運転モードによる制御では、自動運転制御部110は、外部状況取得部12、経路情報取得部13、走行状態取得部14などから取得した情報、あるいは自車位置認識部112及び外界認識部114で認識した情報に基づいて、車両の現在の走行状態(実走行軌道や走行位置等)を把握する。目標走行状態設定部118は、行動計画生成部116で生成した行動計画に基づいて、車両の目標とする走行状態である目標走行状態(目標軌道や目標位置)を設定する。偏差取得部42は、目標走行状態に対する実走行状態の偏差を取得する。走行制御部120は、偏差取得部42により偏差が取得される場合に、車両の走行状態を目標走行状態に一致あるいは近づけるように走行制御を行う。
補正部44は、走行位置取得部26により取得される走行位置に基づいて目標軌道又は目標位置を補正する。走行制御部120は、新たな目標軌道又は目標位置に車両が追従するように、車速取得部により取得される車速等に基づいて、走行駆動力出力装置90及びブレーキ装置94による車両の加減速制御を行う。
また、補正部44は、走行位置取得部26により取得される走行位置に基づいて目標軌道を補正する。走行制御部120は、新たな目標軌道に車両が追従するように、操舵角取得部32により取得される操舵角速度に基づいて、ステアリング装置92による操舵制御を行う。
[スリップ量増加制御]
そして、本実施形態の車両制御装置100(自動運転制御部110及び走行制御部120)では、上記自動運転モードの実施中に車両の駆動力の増加要求がある場合、ロックアップクラッチLCのスリップ量を増加させることで車両の要求駆動力を満たす制御(以下、この制御を「スリップ量増加制御」という。)を行うようになっている。なお、ここでいう、「ロックアップクラッチLCのスリップ量を増加させる」ことには、ロックアップクラッチLCのスリップ状態においてスリップ量を更に増加させることのみならず、ロックアップクラッチLCの締結状態(完全締結状態)又は解放状態(完全解放状態)からスリップを開始させることも含まれる。以下、このスリップ量増加制御について説明する。
図3は、スリップ量増加制御の手順を示す示すフローチャートである。このフローチャートに示す処理では、まず、自動運転制御部110及び走行制御部120による制御モードが自動運転モードであるか否かを判断する(ステップST1)。その結果、自動運転モードでなければ(NO)、すなわち手動運転モードであれば、そのまま処理を終了する。一方、自動運転モードであれば(YES)、続けて、車両の駆動力の増加要求があるか否かを判断する(ステップST2)。ここでの駆動力の増加要求の有無は、自動運転モードにおいて予想される車両の走行経路に基づく車両の目標駆動力の推移から判断することができる。また、ここでいう車両の駆動力の増加要求には、その一態様として車両の加速要求が含まれる。その結果、駆動力の増加要求があった場合(YES)には、続けて、当該増加要求に対応する要求駆動力がロックアップクラッチLCの締結(完全締結)状態(LCタイト領域)において、自動変速機TMで現在選択されている変速段又は目標変速段のまま出力可能な駆動力(以下、「LCタイト現段維持駆動力」という。)以下であるか否かを判断する(ステップST3)。その結果、要求駆動力がLCタイト現段維持駆動力以下である場合(YES)には、ロックアップクラッチLCの完全締結状態(LCタイト領域)で、自動変速機TMで選択されている現在の変速段又は目標変速段を維持することで要求駆動力を実現する(ステップST4)。
一方、ステップST3で要求駆動力がLCタイト現段維持駆動力よりも大きい場合(NO)には、続けて、要求駆動力がロックアップクラッチLCのスリップ制御状態(LCスリップ領域)において、自動変速機TMで現在選択されている変速段又は目標変速段のまま出力可能な駆動力(以下、「LCスリップ現段維持駆動力」という。)以下であるか否かを判断する(ステップST5)。その結果、要求駆動力がLCスリップ現段維持駆動力以下である場合(YES)には、ロックアップクラッチLC及びトルクコンバータTCを含む自動変速機TMの温度の予測値が所定値以下であり(ステップST6でYES)、かつ、ロックアップクラッチLC及びトルクコンバータTCを含む自動変速機TMの温度の実値が所定値以下である(ステップST7でYES)ことを条件として、ロックアップクラッチLCのスリップ状態(LCスリップ領域)で、自動変速機TMで選択されている現在の変速段又は目標変速段を維持することで要求駆動力を実現する(ステップST8)。すなわちこの場合は、ロックアップクラッチLCをタイト状態又は解放状態からスリップ状態にすること、あるいは既にスリップ状態にあるロックアップクラッチLCのスリップ量を増加させることで、エンジンEGからの入力トルクを増幅して自動変速機TMに伝達して要求駆動力を実現する。
一方、先のステップST5で要求駆動力がLCスリップ現段維持駆動力よりも大きい場合(NO)、あるいは、ステップST6又はステップST7でNOの場合には、自動変速機TMの変速段を現在の変速段又は目標変速段からダウンシフトする(低速段側の変速段に切り替える)ことで要求駆動力を実現する(ステップST9)。
また、先のステップST2で駆動力の増加要求が無かった場合(NO)には、トルクコンバータTC(ロックアップクラッチLC)の温度の予測値が所定値以下であり(ステップST10でYES)、かつトルクコンバータTC(ロックアップクラッチLC)の温度の実値が所定値以下である(ステップST11でYES)ことを条件として、ロックアップクラッチLCのスリップ状態(LCスリップ領域)で、自動変速機TMで選択されている現在の変速段又は目標変速段をアップシフトすることで要求駆動力を実現(現状の駆動力を維持)する(ステップST12)。すなわちこの場合は、変速段のアップシフトをしながらも、ロックアップクラッチLCをタイト状態又は解放状態からスリップ状態にすること、あるいは既にスリップ状態にあるロックアップクラッチLCのスリップ量を増加させることで、エンジンEGからの入力トルクを増幅して自動変速機TMに伝達して現状の駆動力を維持する。なお、ステップST10でトルクコンバータTC(ロックアップクラッチLC)の温度の予測値が所定値以下でない場合(NO)、あるいは、ステップST11でトルクコンバータTC(ロックアップクラッチLC)の温度の実値が所定値以下でない場合(NO)には、そのまま処理を終了する。
図3のフローチャートにおけるステップST8及びステップST12の制御が上記のスリップ量増加制御に相当する制御である。一方、ステップST9の制御は変速段のダウンシフトにより要求駆動力を満たす制御である。
図4は、スリップ量増加制御における各値の変化を示すタイミングチャートである。同図及び後述する図5に示すタイミングチャートでは、車両の実現駆動力Wa及び目標駆動力Wt、自動変速機TMの目標変速段GT、エンジン回転数Ne、走行駆動力出力装置90から(車両の駆動輪へ)出力される出力トルクTr、トルクコンバータTCの温度Tm(ロックアップクラッチLCの温度を含む、以下同じ。)の予測値Tmt及び実値Tmaそれぞれの経過時間tに対する変化を示している。ここでのトルクコンバータTCの温度Tmの予測値Tmtは、自動運転モードにおける要求トルクの予想(いわゆる先読み)に基づいて予測・推定される温度である。
図4に示すタイミングチャートは、先の図3のフローチャートにおいて、要求駆動力がLCスリップ現段維持駆動力以下である場合(ステップST5でYES)に、トルクコンバータTCの温度の予測値及び実値がいずれも所定値以下である(ステップST6でYES、かつステップST7でYES)、ことを条件として、ロックアップクラッチLCのスリップ状態(LCスリップ領域)で自動変速機TMの現在の変速段又は目標変速段を維持し要求駆動力を実現する(ステップST8)場合の各値の変化を示したものである。
ここでは、時刻t11よりも少し前のタイミングで実現駆動力Waが上昇を開始し、また、さらにそれよりも前のタイミングからトルクコンバータTCの温度Tmの予測値Tmtが上昇を開始する。そして、時刻t11に自動変速機TMの目標変速段GTがN速段からN−1速段にダウンシフトし、それ以降、エンジン回転数Neが上昇する一方、トルクコンバータTCの温度Tmの予測値Tmtが下降に転ずる。また、時刻t11以降、目標駆動力Wtの値に対して実現駆動力Waの値に遅れが生じることで、実現駆動力Waが目標駆動力Wtよりも低い値として推移する。その後、時刻t12に自動変速機TMの現在の目標変速段GT(N−1速段)を維持したままロックアップクラッチLCのスリップ制御(又はロックアップクラッチLCのスリップ量をそれ以前よりも増加させる制御)を開始することで、出力トルクTrの値が上昇する。また、エンジンEGの回転数Neも若干上昇し、トルクコンバータTCの温度Tmの実値Tmaも次第に上昇する。その後、時刻t13に出力トルクTrの上昇が終了し、以降一定の値で推移する。一方、エンジン回転数Neは緩やかに上昇し続ける。その後、時刻t14にロックアップクラッチLCのスリップ制御が終了することで、以降、出力トルクTrの値が下降する。また、エンジン回転数Neの値も下降を開始し、トルクコンバータTCの温度Tmの実値Tmaも下降に転じる。また、時刻t13よりも後、かつ時刻t14よりも前のタイミングで実駆動力Waは減少を開始し、時刻t14を過ぎた後まで減少を続ける。
またここでは、ロックアップクラッチLCのスリップ制御による出力トルクTrの値が所定値(閾値)Tr1を超えないことを条件として上記のスリップ量増加制御が行われる。したがって、ロックアップクラッチLCのスリップ制御による出力トルクTrの値が所定値(閾値)Tr1を超えた場合には、このスリップ量増加制御に代えて、後述する図5に示す自動変速機TMの変速段のダウンシフトによって要求駆動力を実現する制御(ステップST9の制御)が行われる。
またここでは、トルクコンバータTCの温度Tmの予測値Tmtと実値Tmaのいずれもが所定値(閾値)Tm1を超えないことを条件として上記のスリップ量増加制御が行われる。ここでの温度Tmの所定値(閾値)Tm1は、トルクコンバータTCに異常が発生しないと判断される温度である。したがって、ロックアップクラッチLCのスリップ制御に伴うトルクコンバータTCの温度Tmの予測値Tmt又は実値Tmaが所定値(閾値)Tm1を超えた場合には、ロックアップクラッチLCのスリップ制御によるトルクの増幅を行わない(禁止する)ようにする。
図5は、要求駆動力を満たすために自動変速機TMの変速段のダウンシフトを行う場合の各値の変化を示すタイミングチャートである。すなわち、図5に示すタイミングチャートは、先の図3のフローチャートにおいて、要求駆動力がLCスリップ現段維持駆動力よりも大きい場合(ステップST5でNO)に、自動変速機TMの変速段(目標変速段)を現在の変速段又は目標変速段からダウンシフトすることで要求駆動力を実現する(ステップST9)場合の各値の変化を示したものである。
ここでは、図4の場合と同様、時刻t21よりも少し前のタイミングから実現駆動力Waの値が上昇を開始し、また、さらにそれよりも前からトルクコンバータTCの温度Tmの予測値Tmtが上昇を開始する。そして、時刻t21に目標変速段GTがN速段からN−1速段にダウンシフトし、それ以降、エンジン回転数Neが上昇する一方、トルクコンバータTCの温度Tmの予測値Tmtが下降に転ずる。また、時刻t21以降、目標駆動力Wtの値に対して実現駆動力Waの値に遅れが生じることで実現駆動力Waが目標駆動力Wtよりも低い値として推移する。その後、時刻t22に自動変速機TMの目標変速段GTがN−1速段からN−2速段にダウンシフトすることで、それ以降、エンジンEGの回転数Neの値が上昇する。このときのエンジンEGの回転数Neの値の上昇幅は、図4に示すスリップ量増加制御を行う場合の上昇幅よりも大きな値となっている。その一方で、自動変速機TMの変速段をN−1速段からN−2速段にダウンシフトする場合には、出力トルクTrの値は上昇せず一定値のままとなる。その後、時刻t23に実現駆動力Waの値が目標駆動力Wtと一致する。その後、時刻t24に自動変速機TMの目標変速段GTを再びN−2速段からN−1速段にアップシフトすることで、以降、エンジン回転数Neの値が下降を開始し、トルクコンバータTCの温度Tmの実値Tmaも下降に転じる。またこの場合も、時刻t23よりも後、かつ時刻t24よりも前の時点で実駆動力Waは減少を開始し、時刻t24を過ぎた後まで減少を続ける。
以上に説明したように、本実施形態の車両制御装置100(自動運転制御部110及び走行制御部120)によるスリップ量増加制御では、自動運転モードの実施中に車両の駆動力の増加要求がある場合、ロックアップクラッチLCのスリップ量を増加させることで車両の駆動力を増加させるようにしている(ステップST8)。
このように、本実施形態では、自動変速機TMのダウンシフトに代えてロックアップクラッチLCのスリップ量を増加させることで車両の駆動力を増加させる制御を行うことで、エンジンEGの駆動力の増加要求があったときにエンジンEGの回転数を必要以上に上昇させることなく駆動力の増加要求を満たすことができる。したがって、自動運転モードの実施中の車両の振動・騒音の低減を図ることができる。すなわち、一時的な加速など駆動力の増加要求に対してエンジンEGの回転数が大きく変化しないことから、車両の乗り心地が向上する。その一方で、自動運転モードの実施中であるので、運転者の操作に基づく手動運転モードと比較して、自動変速機TMのダウンシフトに代えてロックアップクラッチLCをスリップさせることによる駆動力の増加の遅れ(駆動力の応答性の遅れ)を車両の乗員が感じる可能性は少ない。
また、本実施形態のスリップ量増加制御では、車両の駆動力の増加要求は、車両の車速の増加要求に伴うものであってよい。この構成によれば、車両の車速の増加要求があったときにエンジンEGの回転数を必要以上に上昇させることなく要求車速を満たすことができる。したがって、車両の乗員に振動・騒音等の増加による不快感を与えることなく、自動運転モードにおけるレーンチェンジや車両の前方道路が空いた場合の加速要求に対しての適切な対応が可能となる。
また、本実施形態では、要求駆動力又は要求加速度が自動変速機TMの現在の変速段(目標変速段)でロックアップクラッチLCを締結(完全締結)した場合に達成される駆動力又は加速度を超える場合に、当該スリップ量増加制御を行うようにしている。
この構成によれば、要求駆動力又は要求加速度が自動変速機TMの現在の変速段(目標変速段)でロックアップクラッチLCを締結状態とした場合に達成される駆動力又は加速度を超える場合にスリップ量増加制御を行うことで、必要な状況でのみスリップ量増加制御を行うこととなるので、自動運転モードにおける車両に必要な走行性能を確保しながらも、燃費(燃料消費率)の向上を図ることができる。
また、本実施形態では、要求駆動力又は要求加速度が、現在の変速段(目標変速段)からのダウンシフトにより達成される駆動力又は加速度未満である場合に、スリップ量増加制御を行うようにしている。
要求駆動力又は要求加速度が、現在の変速段(目標変速段)からのダウンシフトで達成される駆動力又は加速度未満である場合には、現在の変速段(目標変速段)からのダウンシフトを行うことなく、スリップ量増加制御を行うことで要求駆動力又は要求加速度を満たすことができる。これにより、自動運転モードにおいて変速段のダウンシフトによる車両の振動・騒音の増加が生じる頻度をより少なく抑えることができる。したがって、自動運転モードにおいて必要な車両の走行性能と振動・騒音の低減性能(乗り心地の向上)との両立を図ることができる。
また、本実施形態では、自動運転モードにおいてロックアップクラッチLCの温度又は発熱量を推定し、この推定した温度又は発熱量に基づいてスリップ量増加制御の許可または禁止を決定するようにしている。
この構成によれば、ロックアップクラッチLCの将来的な温度又はロックアップクラッチLCで将来発生する発熱量を推定し、この推定に基づいてスリップ量増加制御の許可または禁止を決定することで、スリップ量増加制御を行うことによるロックアップクラッチの過度の発熱又は温度上昇を効果的に防止することができる。
また、本実施形態では、自動運転モードの実施中に推定したロックアップクラッチLC(トルクコンバータTC)の温度又は発熱量が所定以下であって、かつ、車両の駆動力の増加要求がない場合に、自動変速機TMの現在の変速段(目標変速段)をアップシフトし、かつロックアップクラッチLCのスリップ量を増加させることで車両の要求駆動力を満たすようにしている(ステップST12)。
この構成によれば、自動運転モードの実施中に推定したロックアップクラッチLCの温度又は発熱量が所定以下であって、かつ、車両の駆動力の増加要求がない場合に、自動変速機TMの現在の変速段(目標変速段)をアップシフトし、かつロックアップクラッチLCのスリップ量を増加させることで車両の要求駆動力を満たすスリップ量増加制御を行うことで、車両の要求駆動力を満たしながらも、変速段のアップシフトによりエンジンEGの回転数を下げることができるので、自動運転モードの実施中の車両の振動・騒音の効果的な低減を図ることができる。したがって、自動運転モードにおいて必要な車両の走行性能と振動・騒音の低減性能(乗り心地の向上)との両立を図ることができる。
また、上記の駆動力の増加要求がない場合とは、車両を一定速度で走行させる場合または減速させる場合であってよい。この構成によれば、車両を一定速度で走行させる場合または減速させる場合において、車両の駆動力を維持しながら、変速段のアップシフトによりエンジンEGの回転数を下げることができるので、自動運転モードの実施中に車両を一定速度で走行させる場合または減速させる場合において、車両の振動・騒音の効果的な低減を図ることができる。
以上、本発明の実施形態を説明したが、本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲、及び明細書と図面に記載された技術的思想の範囲内において種々の変形が可能である。例えば、上記実施形態では、本発明のトルク増幅機構がトルクコンバータTCであり、同期機構が当該トルクコンバータTCに付随するロックアップクラッチLCである場合を示したが、これに限るものではない。すなわち、本発明のトルク増幅機構は、駆動源と自動変速機の間に設置されたトルク増幅機能を有する機構であれば、他の機構であってもよい。一例として、乾式又は湿式のクラッチ(摩擦係合装置)や、歯車を使用したトルクの分割/合成機構であってよい。同様に、本発明の同期機構は、駆動源と自動変速機の間に設置された同期(係合)機能を有する機構であれば、他の機構であってもよい。一例として、乾式又は湿式のクラッチ(摩擦係合装置)であってよい。