JP2011084904A5 - - Google Patents
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Description
本発明は、直交する通り芯の交点上に通し柱が配置され、各階層の床を支持する梁が隣接する通し柱に架け渡されて剛接合されることで架構が構成されるラーメン構造の建物において、特に、中間階層の一部領域において基準床の床とは異なる床の高さを有するスキップ床が形成された建物及びその設計方法に関するものである。
従来より、中間階層において一部の床(床を支持する梁)の高さが基準となる床の高さと異なる、いわゆるスキップフロア式建物がある。スキップフロア式建物は、例えば、ビルトインガレージや収納庫などの一般の居室よりも天井高が小さくても良い空間の天井高(上部の床高さ)を一般の居室よりも低く設定し、その上階に一般の居室よりも大きな天井高を有する明るく開放的なリビングルームを設ける、といったように、建物内の空間の天井高をその用途に応じて変化させることができ、建物の機能性や快適性の向上をはかることが可能である。
しかし、このようなスキップフロア式建物では、同一階層において床を支持する梁を異なる高さに設置する必要がある。また、高さの異なる床への移動手段となる階段には、踏み面とその上方の梁との間に充分な高さを確保する必要もある。従って、複雑で力学的簡潔性に欠けた架構となりがちであった。また、構造計算も複雑なものとなるので、計画段階において多大な手間や時間を要していた。
特許文献1には、中間階の床梁の高さの異なる軸組構造体間のスキップゾーン両側に通し柱を設け中間階の床梁端部を通し柱に接合した梁優先構造のスキップフロア式建築物の記載がある。このような構成によれば軸組構造体の夫々について構造計算を行うことができ、構造計算が簡単になる、とされている。
上記特許文献1のスキップフロア式建築物は、梁優先構造の軸組構造体からなるスキップフロア式建築物において構造計算を簡単に行い得るように構成したものであり、より一般的な構造形式である、直交する通り芯の交点上に通し柱を配置するとともに、各階層の床を支持する床梁を隣接する通し柱に架け渡して剛接合すことで架構が構成されたラーメン構造の建物に適用してそのような効果が期待できるものではない。
本発明は、このような従来技術の課題を解決し、力学的観点から簡潔な架構を容易に構成することができ、また、簡便な構造計算をすることが可能なスキップ床を有するラーメン構造の建物及びその設計方法を提供することを目的とするものである。
上記の課題を解決するために、所定の床高さを有する基準床と、当該基準床とは異なる床高さを有するスキップ床を有するラーメン構造の建物であって、
所定の階層の床が基準床で構成された第一基本グリッドと、
前記所定の階層の床がスキップ床で構成された第二基本グリッドと、
前記第一基本グリッドと第二基本グリッドとが連結され、前記基準床と前記スキップ床とが混在して床段差部が形成された連結グリッドを有する建物を提案する。
所定の階層の床が基準床で構成された第一基本グリッドと、
前記所定の階層の床がスキップ床で構成された第二基本グリッドと、
前記第一基本グリッドと第二基本グリッドとが連結され、前記基準床と前記スキップ床とが混在して床段差部が形成された連結グリッドを有する建物を提案する。
本明細書において、「基準床」と「スキップ床」という用語は同一階層で異なる高さの2つの床を区分するために用いたものであり、高さの異なる2つの床があるとき、一方を「基準床」他方を「スキップ床」と称するが、当該名称は相対的な関係を表すに過ぎないので、名称が逆であっても支障は無い。例えば、工業化住宅において各階層に対し居室として標準的な天井高(例えば2400mm)を与える高さの床を基準床、これとは異なる高さの床をスキップ床、と定義付けてもよい。また、当該階層において面積の大きな床を基準床、面積の小さな床をスキップ床と定義付けてもよい。
「グリッド」とは、4本の通し柱とこれらを連結する各階層の大梁からなるラーメン構造の立体的な架構の基本単位を意味する用語として用いる。所定階層の床が基準床で構成された第一基本グリッドは、所定の階層については床が基準床からなるが、第一基本グリッド内の所定の階層の上あるいは下に位置する異なる階層の床が基準床からなるか否かは限定されない。所定の階層の床がスキップ床で構成された第二基本グリッドについても同様である。例えば、第一グリッドの所定の階層以外の階層の床が基準床であってもスキップ床であってもよいし、第二グリッドの所定の階層以外の階層の床が基準床であってもスキップ床であっても良い。
グリッドが連結される際は、2つのグリッドが接する面を構成する柱梁は、両方のグリッドに属する(両方のグリッドを構成する)ものであってもよい。連結グリッドは、前記所定の階層の床が、前記基準床と同一の高さで連続する連結基準床と、前記スキップ床と同一の高さで連続する連結スキップ床とを有するものである。
前記連結グリッドは、第一、第二基本グリッドと接する面における第一、第二基本グリッドを構成する通し柱及び第一、第二基本グリッドの各階層床を支持する大梁、並びに第一、第二基本グリッドと接しない面において一方の基本グリッドの大梁と高さが一致するように通し柱に接合された連結大梁をグリッド構成部材としており、
前記基準床とスキップ床との段差部は、一端が前記通し柱に接合され、他端が前記大梁または連結大梁から起立あるいは垂下した束柱に接合された部分梁を用いて構成されるものである。
また、第一基本グリッド、第二基本グリッド及び連結グリッドの床は、その一部に吹き抜けや階段室などの開口が形成されたものであってもよい。
前記基準床とスキップ床との段差部は、一端が前記通し柱に接合され、他端が前記大梁または連結大梁から起立あるいは垂下した束柱に接合された部分梁を用いて構成されるものである。
また、第一基本グリッド、第二基本グリッド及び連結グリッドの床は、その一部に吹き抜けや階段室などの開口が形成されたものであってもよい。
本発明はまた、所定の床高さを有する基準床と、当該基準床とは異なる床高さを有するスキップ床を有するラーメン構造の建物の設計方法であって、
所定の階層の床が基準床で構成された第一基本グリッドと、
前記所定の階層の床がスキップ床で構成された第二基本グリッドと、
前記第一基本グリッドと第二基本グリッドとが連結され、前記基準床と前記スキップ床とが混在して床段差部が形成された連結グリッドを有する建物の設計方法を提案する。
所定の階層の床が基準床で構成された第一基本グリッドと、
前記所定の階層の床がスキップ床で構成された第二基本グリッドと、
前記第一基本グリッドと第二基本グリッドとが連結され、前記基準床と前記スキップ床とが混在して床段差部が形成された連結グリッドを有する建物の設計方法を提案する。
本発明の請求項1の建物の構成によれば、基準床のみで構成された第一基本グリッドとスキップ床のみで構成された第二基本グリッドとが連結され、内部に基準床とスキップ床が混在し床段差部が形成された連結グリッドを有している。すなわち、スキップ床が形成された建物の架構を複雑且つ不安定にする主要因である基準床とスキップ床との段差部や階段が連結グリッド内に集約され、該連結ユニットが構造的に明快かつ安定した二つの基本グリッドで挟み込まれて保持されるように構成されている。従って、大地震の際にも連結グリッドの耐震性を十分確保することができ、安定した建物全体の架構を構成することができる。
また、精緻かつ多大な労力を要する構造計算が不要となり、連結グリッド部の複雑な架構を単純な構造モデルに置き換えることによって構造計算を簡略化することができる。更に、このような構成にすることによって、熟練度の低い設計者であっても構造的に問題のないスキップ床を有する建物を比較的簡便に設計することができる。
更に請求項2に記載された建物の構成によれば、連結グリッドが連結大梁を備えているのでラーメン架構の連続性が保持され、連結大梁で支持されない高さの異なる床はラーメン架構の地震時の安全性に大きな影響を及ぼさない部分梁によって支持される。
従って、常に安定した架構を構成することができ、また、ラーメンの主架構に手を加えることなく、部分梁の長さや配置を適宜変更するだけで夫々の高さの床の領域を容易に(大掛かりな構造計算のやり直しをすることなく)変更することができる。
また、請求項3の設計方法によれば、連結グリッド内に限定して立体的な意匠設計や複雑な架構の設計を行うことができるので、熟練度の低い設計者であっても構造的に問題のないスキップ床を有する建物を比較的簡便に設計することができる。
以下に本発明を実施例に基づいて説明するが、実施例は発明の理解を容易にするために具体例に基づいて記載するものであって、本発明が記載された実施例に限定されるものでないことは自明である。本発明の技術的範囲は特許請求の範囲に基づいて定められるものであり、特許請求の範囲に記載された構成によって規定される発明に均等な発明を含む。
(各実施例共通事項)
本実施例の建物Aは、鉄骨造3階建ての工業化住宅であり、構造形式は直交する通り芯の交点上に通し柱が配置され、各階層の床を支持する大梁が隣接する通し柱に架け渡されて剛接合されて構成されたラーメン構造である。
本実施例の建物Aは、鉄骨造3階建ての工業化住宅であり、構造形式は直交する通り芯の交点上に通し柱が配置され、各階層の床を支持する大梁が隣接する通し柱に架け渡されて剛接合されて構成されたラーメン構造である。
図1及び図2に示したように、基本架構は、直交する「通り芯」(柱や大梁の配置基準線)上に格子状に構築された鉄筋コンクリート造の布基礎1の交点上(通り芯の交点上)に、第1層から最上層まで連続する通し柱2を配置し、各階層において隣接する通し柱2の間に大梁3を掛け渡し、その端部を通し柱2に剛接合して構成されている。
この基本架構を構築したのち、相対する大梁3の間に小梁4(図3参照)を適宜架け渡した上でALC(軽量気泡コンクリート)からなる床パネル5(図3参照)を梁の上フランジに載置して床Bが構成され、外周部の大梁3にALCからなる壁パネル(図示しない)を取り付けることによって外壁が構成されて躯体が完成する。
通し柱2に接合される大梁3はH形鋼からなる。大梁3端部の通し柱2との接合部は、大梁3の両端部に溶接された接合プレート3aで構成され、接合プレート3aには、同一径の複数の孔3bが穿たれている。
通し柱2に接合される大梁3はH形鋼からなる。大梁3端部の通し柱2との接合部は、大梁3の両端部に溶接された接合プレート3aで構成され、接合プレート3aには、同一径の複数の孔3bが穿たれている。
通し柱2は、横断面内に溶接による継目が存在しない角形鋼管(いわゆるシームレスパイプ)からなり、長さ方向についても中間部に継目を有することなく構成されている。
通し柱2は、各階層の階高が、住宅としての一般的な天井高(例えば2400mm)に対応した高さとなるように大梁3の基準接合レベルが設定されており、柱2の全ての面には各階大梁3の基準接合レベルに合わせて、大梁3との接合部(第1の梁接合部)2e1、2f1、2g1が形成されている。大梁3との接合部には大梁3の接合プレート3aの孔3bに対応して複数のネジ孔2hが穿たれている。
通し柱2は、各階層の階高が、住宅としての一般的な天井高(例えば2400mm)に対応した高さとなるように大梁3の基準接合レベルが設定されており、柱2の全ての面には各階大梁3の基準接合レベルに合わせて、大梁3との接合部(第1の梁接合部)2e1、2f1、2g1が形成されている。大梁3との接合部には大梁3の接合プレート3aの孔3bに対応して複数のネジ孔2hが穿たれている。
更に、第2層の基準接合レベル(第1の梁接合部2e1)から下方向及び上方向の所定(例えば1000mm)の位置には、第1の梁接合部2e1と同様の構成で第2の梁接合部2e2と第3の梁接合部2e3が形成されている。また、第3層においても同様に基準接合レベル(第1の梁接合部2f1)から下方向及び上方向の所定の位置には、第1の梁接合部2f1と同様の構成で第2の梁接合部2f2と第3の梁接合部2f3が形成されている。大梁3端部の接合プレートの孔と通し柱2の梁接合部2e1、2f1、2g1等とのネジ孔とを一致させて、高力ボルト10で締結することによって通し柱2と大梁3とが剛接合される。
(第1実施例)…直線型
図3に示す第1の実施例に基づく建物Aは、第一基本グリッドA1、第二基本グリッドA2、及びこの二つの基本グリッドA1、A2を連結する連結グリッドA3の3つのグリッドからなり、これらが平面視で一直線状となるように構成されている。
図3に示す第1の実施例に基づく建物Aは、第一基本グリッドA1、第二基本グリッドA2、及びこの二つの基本グリッドA1、A2を連結する連結グリッドA3の3つのグリッドからなり、これらが平面視で一直線状となるように構成されている。
なおここで、「グリッド」とは、4本の通し柱とこれらを連結する各階層の大梁からなるラーメン構造の架構の基本単位と定義する。また、2つのグリッドが接する場合、2つのグリッドが接する辺上の通し柱や大梁は、一方のグリッドのみの構成部材ではなく、2つのグリッド共通の構成部材と考える。
第一基本グリッドA1では、第2層については第2の梁接合部2e2を利用して大梁3が接合され、また第3層についても第2の梁接合部2e2を利用して大梁3が剛接合されている。
第一基本グリッドA1では、第2層については第2の梁接合部2e2を利用して大梁3が接合され、また第3層についても第2の梁接合部2e2を利用して大梁3が剛接合されている。
第二基本グリッドA2では、第2層については第1の梁接合部2e1を利用して大梁3が接合され、第3層については第3の梁接合部2f3を利用して大梁3が剛接合されている。
第一基本グリッドA1と第二基本グリッドA2を連結する連結グリッドA3は、2つの基本グリッドA1、A2と接する面の夫々の基本グリッドA1、A2を構成する通し柱2、及び夫々の基本グリッドA1、A2の各階層床を支持する大梁3、並びに夫々の基本グリッドA1、A2と接しない2つの面において一方の基本グリッドの大梁3と高さが一致するように第一基本グリッドA1を構成する通し柱2と第二基本グリッドA2を構成する通し柱2とに剛接合された2本の連結大梁6をグリッド構成部材としている。本実施例では、夫々の基本グリッドA1、A2と接しない2つの面がともに、第2層については第二基本グリッドA2の大梁3と等しい高さとなるように通し柱2の第1の梁接合部2e1を利用して連結大梁4が剛接合され、第3層については第一基本グリッドA1の大梁3と等しい高さとなるように通し柱2の第2の梁接合部2f2を利用して連結大梁4が剛接合されている。
(第1実施例の第2層の構成)
連結大梁6の中間部(床B2の段差部ラインとの交点上)の下フランジから垂下した吊束7と、通し柱2で支持された部分梁8が第一基本グリッドの大梁3と等しい高さとなるように設置されている。
第一基本グリッドA1を構成する(第一基本グリッドA1と共通の構成部材である)大梁3、2本の部分梁8、2本の部分梁8間に架け渡された小梁4等で支持された床パネル5によって、第一基本グリッドA1の床B2a(基準床)と同じ高さで連続する床B2a´(連結基準床)が連結グリッドA3内部に形成されている。
連結大梁6の中間部(床B2の段差部ラインとの交点上)の下フランジから垂下した吊束7と、通し柱2で支持された部分梁8が第一基本グリッドの大梁3と等しい高さとなるように設置されている。
第一基本グリッドA1を構成する(第一基本グリッドA1と共通の構成部材である)大梁3、2本の部分梁8、2本の部分梁8間に架け渡された小梁4等で支持された床パネル5によって、第一基本グリッドA1の床B2a(基準床)と同じ高さで連続する床B2a´(連結基準床)が連結グリッドA3内部に形成されている。
また、連結大梁4、第二基本グリッドA2を構成する(第二基本グリッドA2と共通の構成部材である)大梁2、2本の連結大梁4間に架け渡された小梁4等で支持された床パネル5によって、第二基本グリッドA2の床B2b(スキップ床)と同じ高さで連続する床B2b´(連結スキップ床)が連結グリッドA3内部に形成されている。
以上の構成により、連結グリッドA3内部に異なる高さの床B2a(B2a´)、B2b(B2b´)間の段差部が形成されている。
また、連結グリッドA3内部には、異なる高さの床B2a(B2a´)、B2b(B2b´)間の上下移動のための階段ユニット11が、下端面がの床B2a´上に載置され、上端部が床B2の段差部に沿って配置された小梁4に係止された状態で設置されている。
(第1実施例の第3層の構成)
連結大梁6の中間部(床B3の段差部ラインとの交点上)の上フランジから起立した束9と、通し柱2で支持された部分梁8が第一基本グリッドの大梁3と等しい高さとなるように設置されている。
連結大梁4、第一基本グリッドA1を構成する(第一基本グリッドA1と共通の構成部材である)大梁2、2本の連結大梁4間に架け渡された小梁4等で支持された床パネル5によって、第一基本グリッドA1の床B3a(基準床)と同じ高さで連続する床B3a´(連結基準床)が連結グリッドA3内部に形成されている。
連結大梁6の中間部(床B3の段差部ラインとの交点上)の上フランジから起立した束9と、通し柱2で支持された部分梁8が第一基本グリッドの大梁3と等しい高さとなるように設置されている。
連結大梁4、第一基本グリッドA1を構成する(第一基本グリッドA1と共通の構成部材である)大梁2、2本の連結大梁4間に架け渡された小梁4等で支持された床パネル5によって、第一基本グリッドA1の床B3a(基準床)と同じ高さで連続する床B3a´(連結基準床)が連結グリッドA3内部に形成されている。
また、第二基本グリッドA2を構成する(第二基本グリッドA2と共通の構成部材である)大梁3、2本の部分梁8、2本の部分梁8間に架け渡された小梁4等で支持された床パネル5によって、第二基本グリッドA2の床B3b(スキップ床)と同じ高さで連続する床B3b´(連結スキップ床)が連結グリッドA3内部に形成されている。
以上の構成により、第3層においても、連結グリッドA3内部において、異なる高さの床B3a(B3a´)、B3b(B3b´)間の段差部が形成され、また、異なる高さの床B3a(B3a´)、B3b(B3b´)間の上下移動のための階段ユニット11が、下端面が床B3a´上に載置され、上端部が床B3の段差部に沿って配置された小梁4に係止された状態で設置されている。
(第1実施例の第4層の構成)
第4層においては、2つの基本グリッドA1、A2の大梁3及び連結グリッドA3の連結大梁6は、全て通し柱2の接合部2g1を利用して同一高さとなるように接合されており、全てのグリッドの床(屋根)B4の高さが同一となるように構成されている。
第4層においては、2つの基本グリッドA1、A2の大梁3及び連結グリッドA3の連結大梁6は、全て通し柱2の接合部2g1を利用して同一高さとなるように接合されており、全てのグリッドの床(屋根)B4の高さが同一となるように構成されている。
図5は、前記第1実施例の、図3において図面を右側から見た立面図を示すものである。前記のように、第一基本グリッドA1と第二基本グリッドA2を連結する連結グリッドA3の、第一基本グリッドA1を構成する通し柱2と第二基本グリッドA2を構成する通し柱2とに剛接合された2本の連結大梁6、第2層において連結大梁6の中間部垂下した吊束7、吊束7と通し柱2で支持された部分梁8が図示されている。第3層においては、連結大梁6の中間部から起立した束9と、当該束9と通し柱2で支持された部分梁8が図示されている。
(第1実施例の変形例)
上記第1実施例では、連結グリッドA3を構成する2本の連結大梁6は、第2層については第二基本グリッドA2の大梁3と等しい高さとなるように設置し、第3層については第一基本グリッドA1の大梁3と等しい高さとなるように設置し、更に部分梁8および小梁4を適宜配置して連結グリッドA2内部の所定の領域に異なる高さの床B2a´、B2b´及びB3a´、B3b´を構成したが、連結グリッドA3内の架構はこの構成に限定されるものではない。
例えば、連結グリッドA3を構成する2本の連結大梁6を、第2層については第一基本グリッドA1の大梁3と等しい高さとなるように設置してもよく、第3層については第二基本グリッドA2の大梁3と等しい高さとなるように設置してもよい。
また、ある階層の2本の連結大梁6のうちの一方を第一基本グリッドA1の大梁3と等しい高さとなるように設置し、他方を第二基本グリッドA2の大梁3と等しい高さとなるように設置してもよい。
上記第1実施例では、連結グリッドA3を構成する2本の連結大梁6は、第2層については第二基本グリッドA2の大梁3と等しい高さとなるように設置し、第3層については第一基本グリッドA1の大梁3と等しい高さとなるように設置し、更に部分梁8および小梁4を適宜配置して連結グリッドA2内部の所定の領域に異なる高さの床B2a´、B2b´及びB3a´、B3b´を構成したが、連結グリッドA3内の架構はこの構成に限定されるものではない。
例えば、連結グリッドA3を構成する2本の連結大梁6を、第2層については第一基本グリッドA1の大梁3と等しい高さとなるように設置してもよく、第3層については第二基本グリッドA2の大梁3と等しい高さとなるように設置してもよい。
また、ある階層の2本の連結大梁6のうちの一方を第一基本グリッドA1の大梁3と等しい高さとなるように設置し、他方を第二基本グリッドA2の大梁3と等しい高さとなるように設置してもよい。
図6は、上記変形例の1つに対応するものである。前出の図5に示した構造と比較すると、連結グリッドA3の第2層の構造と第3層の構造が逆になっている。すなわち、第2層の連結大梁6の中間部から起立した束9’によって部分梁8’の一端が支持されており、第3層の連結大梁6の中間部から垂下した吊束7’によって部分梁8’の一端が支持されている。
(作用・効果)
上記構成によれば、内部に床B2、B3の段差部が形成されるとともに該床の段差部での上下移動のための階段ユニット11が設置された連結グリッドA3で、第一基本グリッドA1と第二基本グリッドA2とが連結されるように構成されている。すなわち、スキップフロア式の建物Aの架構を複雑且つ不安定にする主要因である床B2、B3の段差部や階段ユニット11が連結グリッドA3内に集約され、連結ユニットA3が構造的に明快かつ安定した架構を有する二つの基本グリッドA1、A2で挟み込まれて保持されるように構成されている。従って、大地震の際にも連結グリッドA3が崩壊に至ることがなく安定した全体架構を構成することができる。また、精緻な構造計算が不要となり、複雑な架構を単純な構造モデルに置き換えて構造計算を簡略化することができる。更に、このような構成にすることによって、熟練度の低い設計者であっても構造的に問題のないスキップフロア式の建物Aを比較的簡便に設計することができる。
上記構成によれば、内部に床B2、B3の段差部が形成されるとともに該床の段差部での上下移動のための階段ユニット11が設置された連結グリッドA3で、第一基本グリッドA1と第二基本グリッドA2とが連結されるように構成されている。すなわち、スキップフロア式の建物Aの架構を複雑且つ不安定にする主要因である床B2、B3の段差部や階段ユニット11が連結グリッドA3内に集約され、連結ユニットA3が構造的に明快かつ安定した架構を有する二つの基本グリッドA1、A2で挟み込まれて保持されるように構成されている。従って、大地震の際にも連結グリッドA3が崩壊に至ることがなく安定した全体架構を構成することができる。また、精緻な構造計算が不要となり、複雑な架構を単純な構造モデルに置き換えて構造計算を簡略化することができる。更に、このような構成にすることによって、熟練度の低い設計者であっても構造的に問題のないスキップフロア式の建物Aを比較的簡便に設計することができる。
更には、連結グリッドA3が連結大梁6を備えているので建物Aのラーメン架構の連続性が保持され、連結大梁6で支持されない高さの異なる床はラーメン架構の地震時の安全性に大きな影響を及ぼさない部分梁8によって支持される。従って、常に安定した架構を構成することができ、また、ラーメンの主架構に手を加えることなく、部分梁8や小梁4の長さや配置を適宜変更するだけで連結グリッドA3の内部において夫々の高さの床の領域を容易に変更することができる。
(第2実施例)
第1実施例と同一の構成については説明を省略する。第2実施例の建物は、第1実施例と同じ高さに大梁3が接合された(同じ高さに床B2、B3が設定された)第一基本グリッドA1と第二基本グリッドA2が、連結グリッドA3を介して平面視でL字状となるように構成されている。ここで、3つのグリッドの接点となる入隅部の通し柱2´は3つのグリッド全てに共通する構成部材となっている。
第1実施例と同一の構成については説明を省略する。第2実施例の建物は、第1実施例と同じ高さに大梁3が接合された(同じ高さに床B2、B3が設定された)第一基本グリッドA1と第二基本グリッドA2が、連結グリッドA3を介して平面視でL字状となるように構成されている。ここで、3つのグリッドの接点となる入隅部の通し柱2´は3つのグリッド全てに共通する構成部材となっている。
本実施例での連結グリッドA3の構成は、上記入隅部の対角線上に位置し第一基本グリッドA1や第二基本グリッドA2とは接しない隅部に通し柱2´´が配置され、二つの基本グリッドA1やA2とは接しない面の各階層には、連結グリッドA3の二つの基本グリッドA1、A2のいずれかの大梁3と等しい高さとなるように連結大梁6が通し柱2間に架け渡され、剛接合されている。
第2実施例の第2層では、2本の連結大梁6の一方(第一基本グリッドA1側の)6´は第一基本グリッドA1の大梁3と等しい高さとなるように、他方(第二基本グリッドA2側)6´´は第二基本グリッドA2の大梁3と等しい高さとなるように設置されている。そして、部分梁8´は、第一基本グリッドA1と共通の構成部材である大梁3の中間部から起立した束9と通し柱2´によって第二基本グリッドA2側の連結大梁6´´と等しい高さとなるように支持され、部分梁8´´は第二基本グリッドA2側の連結大梁6´´から垂下した吊束7と第二基本グリッドA2側の通し柱2によって第一基本グリッドA1の大梁3と等しい高さとなるように支持されている。
また第3層では、2本の連結大梁6の双方が第一基本グリッドA1の大梁3と等しい高さとなるように設置されている。そして、2つの部分梁8は、第一基本グリッドA1と共通の構成部材である大梁3、及びこれに対向する連結大梁6の上フランジ中間部から起立した束9と第二基本グリッドA2側の通し柱2によって第二基本グリッドの大梁3と等しい高さとなるように支持されている。
(第2実施例の変形例)
第1実施例と同様に、連結グリッドA3の構成は上記に限定されるものではなく、第2層、第3層夫々の2本の連結大梁6は、二つの基本グリッドA1、A2のどちらの大梁3と高さが等しくなるように設置してもよく、部分梁8及び小梁4を異なる高さの床を支持しうるように適宜付加することによって容易に床の段差部の架構を構築することができる。
第1実施例と同様に、連結グリッドA3の構成は上記に限定されるものではなく、第2層、第3層夫々の2本の連結大梁6は、二つの基本グリッドA1、A2のどちらの大梁3と高さが等しくなるように設置してもよく、部分梁8及び小梁4を異なる高さの床を支持しうるように適宜付加することによって容易に床の段差部の架構を構築することができる。
(その他の実施例)
上記2つの実施例では、通し柱2の長さが統一されており、第4層(最上階層)の床B4の高さが同一となるように構成されているが、第4層においてもスキップ床を構成することができる。例えば、第二基本グリッドA2を構成する通し柱2´を第一基本グリッドA1を構成する通し柱2より長いものとし、通し柱2´の接合部2´g1は通し柱2の接合部2g1よりも高くなるように構成し、連結グリッドA3内において連結大梁6を第一基本グリッドA1の第4層の大梁3と同一高さとなるように架け渡し、部分梁8を第二基本グリッドA2の第4層の大梁3と同一高さとなるように束9を用いて支持するように構成することができる。
上記2つの実施例では、通し柱2の長さが統一されており、第4層(最上階層)の床B4の高さが同一となるように構成されているが、第4層においてもスキップ床を構成することができる。例えば、第二基本グリッドA2を構成する通し柱2´を第一基本グリッドA1を構成する通し柱2より長いものとし、通し柱2´の接合部2´g1は通し柱2の接合部2g1よりも高くなるように構成し、連結グリッドA3内において連結大梁6を第一基本グリッドA1の第4層の大梁3と同一高さとなるように架け渡し、部分梁8を第二基本グリッドA2の第4層の大梁3と同一高さとなるように束9を用いて支持するように構成することができる。
また、連結基準床と連結スキップ床とは連結グリッド内において平面的に重なるように構成してもよい。例えば、第1実施例の第3層において、B3a´をB3b´の下方まで延長してもよい。
また、上記2つの実施例では、通し柱2としていわゆるシームレスパイプを使用しているが、通し柱2の構成はこれに限定されるものではなく、例えば、角形鋼管、H型鋼、I型鋼、円形鋼管等が考えられる。
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