JP2011084837A - スパンボンド不織布およびその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】 生産現場において、ノズル孔より吐出した糸条を牽引ジェットに植え込む際に、非常に成熟した技術者でなくとも容易に植え込みをすることができ、地合いが良好で強度斑のなく、かつ安定して連続生産できる不織布を提供することを課題とする。
【解決手段】 ポリエステル共重合体によって構成されるスパンボンド不織布であって、ポリエステル共重合体は、ジカルボン酸成分がテレフタル酸を主成分とし、ジオール成分が1,6−ヘキサンジオールとエチレングリコールとを構成成分として1,6−ヘキサンジオールがジオール成分中の50モル%以上を占めており、該ポリエステル共重合体中にタルクおよび高級脂肪酸金属塩を含んでいるスパンボンド不織布。
【選択図】 なし
【解決手段】 ポリエステル共重合体によって構成されるスパンボンド不織布であって、ポリエステル共重合体は、ジカルボン酸成分がテレフタル酸を主成分とし、ジオール成分が1,6−ヘキサンジオールとエチレングリコールとを構成成分として1,6−ヘキサンジオールがジオール成分中の50モル%以上を占めており、該ポリエステル共重合体中にタルクおよび高級脂肪酸金属塩を含んでいるスパンボンド不織布。
【選択図】 なし
Description
本発明は、低融点でありながら結晶性に優れたポリエステル共重合体からなるスパンボンド不織布に関するものである。
ポリエステル繊維は、その優れた寸法安定性、耐候性、機械的特性、耐久性、さらにはリサイクル性等から、衣料、産業資材として不可欠のものとなっており、様々な分野において多く使用されている。
例えば、自動車用内装材において、複数の繊維製品を接着等により積層したものが使用され、リサイクルを考慮して、内装材を構成する部材すべてポリエステル製のものが求められる。接着積層のために用いるホットメルトシートとして、熱処理の際の収縮が小さく、得られる積層体が、高温下で寸法安定性が良好であるとして、芯部にポリエチレンテレフタレートを配し、鞘部にテレフタル酸成分、脂肪族ラクトン成分、エチレングリコール成分および1,4−ブタンジオール成分を共重合したポリエステル系共重合体を配した芯鞘型複合繊維からなるスパンボンド不織布(接着シート)を本出願人は、提案している(特許文献1)。しかしながら、特許文献1における複合繊維の鞘部(バインダー成分)は、融点が150〜200℃であり、熱接着処理の際には加工温度を低く設定することができずコスト的に不利である。また、特許文献1の接着シートは、鞘部のみが接着剤として機能するものであり、より強固な接着力が求められる場合は、シート全てが熱により溶融して接着剤として機能するものが適している。
熱接着加工温度を低く設定するために、ポリエステルとして、より融点が低いものを選択することが考えられるが、一般的に低融点の重合体は非晶性であることが多く、冷却固化速度が遅いため、このような重合体を用いてスパンボンド法により繊維を得ようとすると、スパンボンド法はノズル孔より吐出した糸条が牽引細化されるまでの距離(紡糸ノズル〜牽引ジェットまでの距離)が極めて短いためにポリマーは冷えにくく、繊維同士が密着を起こしやすく良好に開繊できず、得られる不織布の地合いが悪くなるため、強度斑を有するという問題がある。
また、結晶性であったとしても、融点が低い重合体は、ガラス転移温度および結晶化温度も低く、冷却固化速度が遅いために、上記と同様で、スパンボンド法では繊維同士を密着させずに操業性良く得ることが困難である。
上記のような冷えにくい重合体は、一般的に曳糸性に劣るため、高速気流によって牽引するスパンボンド法では、紡糸した糸条は不安定となって糸切れが多発しやすく、このような冷えにくい重合体のみからなる単相型の繊維を得ようとすると、より一層紡糸が困難となる。
本出願人は、繊度と繊維の表面積を特定の範囲にすることによって、曳糸性に劣る低融点重合体を、上記制約のあるスパンボンド法に適用しうることを提案した(特願2008−104665号)。
本発明は、特願2008−104665号記載の発明を利用し、生産現場において、ノズル孔より吐出した糸条を牽引ジェットに植え込む際に、非常に成熟した技術者でなくとも容易に植え込みでき、地合いが良好で強度斑のなく、かつ安定して連続生産できる不織布を提供することを課題とする。
本発明者等は、融点およびガラス転移温度や結晶化温度が低い重合体がスパンボンド法に適用しにくい要因は以下の3点にあると考えた。
(1)低融点重合体は、紡糸ノズルより吐出した糸条を牽引ジェットで牽引する際に、重合体の冷えが遅いため、ジェット延伸の牽引力に耐え切れずに糸切れしやすい。
(2)重合体の冷えが遅いために牽引ジェットに植え込み前の紡出糸条においては、半溶融状態の割合が多く糸条の張りが弱いため、紡糸ノズル直下での冷却風(クエンチングエアー)に触れることで大きく糸揺れし、糸切れが多く発生する。
(3)未だ固化していない状態で金属製の牽引ジェットと接触するため、糸条表面の摩擦抵抗値が大きく切れやすい。
(1)低融点重合体は、紡糸ノズルより吐出した糸条を牽引ジェットで牽引する際に、重合体の冷えが遅いため、ジェット延伸の牽引力に耐え切れずに糸切れしやすい。
(2)重合体の冷えが遅いために牽引ジェットに植え込み前の紡出糸条においては、半溶融状態の割合が多く糸条の張りが弱いため、紡糸ノズル直下での冷却風(クエンチングエアー)に触れることで大きく糸揺れし、糸切れが多く発生する。
(3)未だ固化していない状態で金属製の牽引ジェットと接触するため、糸条表面の摩擦抵抗値が大きく切れやすい。
これらの要因を踏まえ、上記課題を達成すべく検討した結果、結晶性を有する特定の低融点のポリエステル共重合体に特定の2種の添加剤を加えることによって、ポリエステル共重合体の配向結晶化も促進させ、エアサッカーによるジェット延伸の牽引力にも耐えられるよう紡出糸条の溶融張力を向上させることにより、牽引ジェットへの植え込みが容易となり、より操業性良く紡糸が可能となることを見出し、本発明に到達した。
すなわち、本発明は、ポリエステル共重合体によって構成されるスパンボンド不織布であって、ポリエステル共重合体は、ジカルボン酸成分がテレフタル酸を主成分とし、ジオール成分が1,6−ヘキサンジオールとエチレングリコールとを構成成分として1,6−ヘキサンジオールがジオール成分中の50モル%以上を占めており、該ポリエステル共重合体中にタルクおよび高級脂肪酸金属塩を含んでいることを特徴とするスパンボンド不織布を要旨とするものである。
また、本発明は、ジカルボン酸成分がテレフタル酸を主成分とし、ジオール成分が1,6−ヘキサンジオールとエチレングリコールとを構成成分として1,6−ヘキサンジオールがジオール成分中の50モル%以上を占めているポリエステル共重合体であって、タルクおよび高級脂肪酸金属塩を含むポリエステル共重合体を、該ポリエステル共重合体の融点よりも40〜90℃高い温度で溶融して紡糸口金から紡糸糸条を吐出させ、紡糸糸条を紡糸口金直下の牽引ジェットに導引して牽引速度3000〜6000m/分で牽引細化した後、移動式捕集面上に開繊させながら堆積させてウエブを得た後、不織布化することを特徴とするスパンボンド不織布の製造方法を要旨とするものである。
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明におけるポリエステル共重合体は、ジカルボン酸成分がテレフタル酸を主成分とし、ジオール成分が1,6−ヘキサンジオールとエチレングリコールを構成成分として1,6−ヘキサンジオールがジオール成分中の50モル%以上を占めている。
ジカルボン酸成分がテレフタル酸を主成分とすることにより、ポリエステル共重合体は結晶性が良好なものとなる。ジカルボン酸成分中にテレフタル酸は60モル%以上であることが好ましく、80モル%以上であることがより好ましい。テレフタル酸以外の酸成分として、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、デカンジカルボン酸、ドデカンジカルボン酸、1,3−シクロブタンジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、ダイマー酸などに例示される飽和脂肪族ジカルボン酸またはこれらのエステル形成性誘導体、フマル酸、マレイン酸、イタコン酸などに例示される不飽和脂肪族ジカルボン酸またはこれらのエステル形成性誘導体、フタル酸、イソフタル酸、5−(アルカリ金属)スルホイソフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、4,4’−ビフェニルジカルボン酸などの芳香族ジカルボン酸またはこれらのエステル形成性誘導体を発明の効果を損なわない範囲にて共重合してもよい。
ジオール成分、1,6−ヘキサンジオールとエチレングリコールとを構成成分とし、1,6−ヘキサンジオールがジオール成分中の50モル%以上占める。1,6−ヘキサンジオールの量を50モル%以上とすることによりポリエステル共重合体の融点を120〜150℃の範囲とすることができる。ジオール成分中の1,6−ヘキサンジオールの量を60〜95モル%とし、得られるポリエステル共重合体の融点を120〜140℃とすることが好ましい。ポリエステル共重合体の融点が120℃未満であると、ノズル孔より吐出した糸条は冷却固化する速度が遅く、糸条表面は冷えずに粘着性を有する状態で存在し、糸条同士が密着や集束しやすく、個々の繊維が良好に開繊せずに束状になって堆積される。また、紡糸段階で糸切れが発生し操業性が劣る。得られるスパンボンド不織布においては、高温雰囲気下での熱安定性、耐熱性に劣るものとなる。一方、ポリエステル共重合体の融点が150℃を超えると、熱接着シートとして使用の際には低い温度で加工することができなくなり、コスト的に不利である。
本発明におけるポリエステル共重合体には、結晶核剤としてタルクを含んでいる。本発明において、このタルクは溶融紡出糸条の冷却固化速度を促進させることができ、糸条表面が冷えやすく、粘着性を低減させることができる。
タルクの含有量は、繊維中に0.05〜5質量%がよく、好ましくは0.1〜3質量%である。タルクの含有量が0.05質量%未満であると、糸条表面が冷えにくく、粘着性が残りやすく、また、得られる不織布が熱処理により収縮しやすくなる。一方、5質量%を超えると、タルクの含有量が多くなりすぎ、紡糸、延伸時の操業性を悪化させることとなる。また、操業性が悪化することで糸質のバラツキが大きくなり、繊維の乾熱収縮率も高くなる。
本発明におけるポリエステル共重合体には、高級脂肪酸金属塩が含まれる。高級脂肪酸金属塩を加えることで、ポリエステル共重合体の溶融粘度を増加させることができ、溶融体の伸長粘度が向上する。それにより、紡糸工程でのエアサッカーによるジェット延伸の牽引力にも耐えられ、糸切れが起こりにくくなり、紡糸工程が安定する。また、高級脂肪酸金属塩を含有させることにより、ポリエステル共重合体に滑性を付与することができ、紡糸糸条と金属製のジェットとの摩擦抵抗が小さくなる。また、高級脂肪酸金属塩を含有させることにより、ポリエステル共重合体の冷却固化速度を促進させることができる。したがって、紡糸ノズルより吐出した糸条の冷却固化速度が向上させることにより、紡糸ノズルより吐出された糸条は切れにくく、ノズル直下にある牽引ジェットへ糸条を良好に導引することができ、操業性が良好となる。また、糸切れが発生しにくく、地合いの良好なスパンボンド不織布を得ることができる。
本発明に用いる高級脂肪酸金属塩としては、下記化学一般式(A)で表される直鎖状のものを好適に用いる。
(Cn−1 H2(n−m )-1 COO−)a Xa+・・・・・・(A)
n:10〜30の整数
m:脂肪鎖中の不飽和結合の数
X:水素原子あるいはLi、K、Na、Ca、Mg、Zn、Pb、Al、Ba、Cd から選ばれた少なくとも1 種の金属原子
a:原子X のイオン価数
上記化学一般式(A)で示される直鎖状高級脂肪酸の具体例としては、カプリン酸、ウンデカン酸、ラウリン酸、トリデカン酸、ミリスチン酸、ペンタデカン酸、パルミチン酸、マルガリン酸、ステアリン酸、ノナデカン酸、アラキン酸、ヘンエイコサン酸、ベヘン酸、トリコサン酸、リグノセリン酸、ペンタコサン酸、セロチン酸、ヘプタコ酸、モンタン酸、ノナコサン酸、メリシン酸、カプロレイン酸、9−ウンデシレン酸、リンデル酸、2−トリデセン酸、ミリストレイン酸、6−ペンタデセン酸、2−パルミトレイン酸、2−ヘプタデセン酸、オレイン酸、cis−9−ナデセン酸、ゴンドイン酸、エルカ酸、セラコレイン酸、cis−7−キサコセン酸、リノール酸、リノレン酸が挙げられる。ならびに、Li、K、Na、Ca、Mg、Zn、Pb、Al、Ba、Cdから選ばれた金属塩が挙げられる。金属塩としては、Ca、Mg、Zn塩などが、非水溶性で、肌に触れた時の刺激がないことからより好ましい。また、上記脂肪酸金属塩の中でも、最も入手しやすく安価であり重合体中に添加しやすく、滑性付与効果も有する点からは、ステアリン酸、そのCa、Mg、Zn塩などが好適である。モンタン酸金属塩もまた、ポリエステル共重合体に滑性効果を付与することができ、溶融紡糸において、糸条同士が密着することを防止することができる。
(Cn−1 H2(n−m )-1 COO−)a Xa+・・・・・・(A)
n:10〜30の整数
m:脂肪鎖中の不飽和結合の数
X:水素原子あるいはLi、K、Na、Ca、Mg、Zn、Pb、Al、Ba、Cd から選ばれた少なくとも1 種の金属原子
a:原子X のイオン価数
上記化学一般式(A)で示される直鎖状高級脂肪酸の具体例としては、カプリン酸、ウンデカン酸、ラウリン酸、トリデカン酸、ミリスチン酸、ペンタデカン酸、パルミチン酸、マルガリン酸、ステアリン酸、ノナデカン酸、アラキン酸、ヘンエイコサン酸、ベヘン酸、トリコサン酸、リグノセリン酸、ペンタコサン酸、セロチン酸、ヘプタコ酸、モンタン酸、ノナコサン酸、メリシン酸、カプロレイン酸、9−ウンデシレン酸、リンデル酸、2−トリデセン酸、ミリストレイン酸、6−ペンタデセン酸、2−パルミトレイン酸、2−ヘプタデセン酸、オレイン酸、cis−9−ナデセン酸、ゴンドイン酸、エルカ酸、セラコレイン酸、cis−7−キサコセン酸、リノール酸、リノレン酸が挙げられる。ならびに、Li、K、Na、Ca、Mg、Zn、Pb、Al、Ba、Cdから選ばれた金属塩が挙げられる。金属塩としては、Ca、Mg、Zn塩などが、非水溶性で、肌に触れた時の刺激がないことからより好ましい。また、上記脂肪酸金属塩の中でも、最も入手しやすく安価であり重合体中に添加しやすく、滑性付与効果も有する点からは、ステアリン酸、そのCa、Mg、Zn塩などが好適である。モンタン酸金属塩もまた、ポリエステル共重合体に滑性効果を付与することができ、溶融紡糸において、糸条同士が密着することを防止することができる。
ポリエステル共重合体の冷却固化促進の効果がより大きい点で、モンタン酸Ca塩あるいはモンタン酸Na塩を好適に用いることができる。特に、モンタン酸金属塩は、メカニズムは分かっていないが、ポリエステル共重合体の溶融粘度を増加させるため、紡糸工程での延伸の際、溶融体の伸長粘度が向上し、エアサッカーによるジェット延伸の急激な強い牽引力にも耐えられるようになり、糸切れが起こりにくく、紡糸工程が安定する効果をより奏する。金属塩としてCa、Mg、Zn、Ba、Alなど、2価、3価の金属原子が増粘効果を良好に発しやすい。
ポリエステル共重合体中に含有する高級脂肪酸金属塩の量は、繊維中に0.05〜2質量%がよく、好ましくは0.1〜1質量%である。含有量が少ないと、本発明の目的が達成されにくく、一方、含有量が多いと、紡糸ノズルやフィルターの目詰まりが生じやすく、また、重合体中に存在する異物となって、紡糸時に糸切れが多く発生する原因となる。過度に添加するとスパンボンド不織布の繊維表面はブリードアウトの状態となる。
ポリエステル共重合体に高級脂肪酸金属塩を含有させる方法としては、粉末状の剤を押出機に設けられているサイドフィーダーより導入して溶融押出しと共に混練添加するとよい。また、事前に混練したコンパウンドあるいはマスターバッチを用いて添加するとよい。溶融押出しと共に混練添加する場合は、分散性を向上させるために分散剤を適宜用いるとよい。
本発明におけるポリエステル共重合体には、本発明の効果を損なわない範囲で、リン酸エステル化合物やヒンダードフェノール化合物のような安定剤、コバルト化合物、蛍光増白剤、染料のような色調改良剤、二酸化チタンのような艶消剤、可塑剤、顔料、制電剤、難燃剤、易染化剤などの各種添加剤を1種類または2種類以上添加してもよい。
本発明のスパンボンド不織布は、前記のポリエステル共重合体によって構成される単相形態の長繊維が堆積したなるものである。すなわち、貼り合せ型や芯鞘型等の形態にて高融点重合体と複合された複合形態ではなく、120〜150℃という低融点のポリエステル共重合体による単相形態であるため、接着のための熱処理によって繊維を構成する重合体はすべて溶融し、すべてが接着剤として機能するため、被接着体同士を強固に熱接着することができる。
本発明のスパンボンド不織布を構成する繊維の横断面は、溶融紡糸の際に冷却固化しやすさを考慮して、異型断面であることが好ましい。特に、構成繊維の横断面の外周長さをAとし、この構成繊維と同じ共重合ポリエステルで構成された同じ繊度の繊維で断面形状を円形と仮定して算出した横断面の外周長さをBとした場合、A/B≧1.4以上の異型断面であることが好ましい。すなわち、本発明における繊維は、横断面において、同一の共重合ポリエステルで構成された同一繊度の円形断面の繊維に比べて、1.4倍以上の外周長さを有することにより、繊維の表面積が大きくなり、スパンボンド法における紡糸ノズル孔からエアーサッカー(牽引ジェット)の入り口までの限られた距離であっても、溶融紡出された共重合ポリエステルを、より良好に冷却することができる。異型断面形状の具体的な例としては、A/Bが1.4以上となる多葉断面を選択することが好ましい。前記多葉断面とすることにより、単糸同士の密着や集束がなく、地合いが良好で強度斑の少ないスパンボンド不織布を容易に得ることができる。
構成繊維の単糸繊度は、5デシテックス以上であることが好ましい。5デシテックス以上とすることにより、牽引細化の際の高速気流に耐え得ることができ、延伸工程にて糸切れが生じずに延伸・配向を行うことができ、強度斑の少ないスパンボンド不織布を良好に得ることができる。単糸繊度の上限は13デシテックス程度である。13デシテックスを超えると、糸条は冷えにくい傾向となり単糸同士が密着しやすくなる。上記のような理由から、本発明においてスパンボンド不織布を構成する繊維の単糸繊度は、7〜13デシテックスが好ましい。
本発明のスパンボンド不織布は、前記した繊維が堆積したものであるが、不織布の形態は、繊維同士が熱接着されたものであっても、繊維同士が機械的に交絡してなるものであってもいずれのものでもよい。部分的に熱接着する方法としては、多数の繊維が堆積してなる繊維ウエブを熱風循環装置に通して繊維表面の一部を溶融または軟化させて接着させる方法、繊維ウエブを熱エンボス装置や熱カレンダー装置に通して熱接着する方法等が挙げられる。また、繊維同士が機械的に交絡してなるものとしては、水流交絡法やニードルパンチ法等によって、繊維同士を三次元的に交絡させる方法が挙げられる。
本発明のスパンボンド不織布の目付は、特に限定するものではなく、用途に応じて適宜選択すればよく、15〜200g/m2程度が一般的である。
本発明のスパンボンド不織布は熱接着シートとして好適に使用することができ、被接着体の素材や大きさに応じて、本発明のスパンボンド不織布を適宜の大きさに裁断し、熱接着シートとして使用すればよい。
本発明のスパンボンド不織布は、昇温速度10℃/分で示差熱分析した際に、明確な吸熱ピークが120℃〜150℃の間に発現し、かつ融解熱量(ΔHm)が30J/g以上であることが好ましい。スパンボンド不織布が、上記した明確な吸熱ピークを発現するため、雰囲気温度を向上させた場合、ガラス転移温度を超えても結晶崩壊点である融点に雰囲気温度が到達するまで重合体の流動を持ちこたえられ、その形状を保持でき、被接着体との接着状態を保つことができる。結晶融解による吸熱ピークを示さない結晶性の低い重合体であると、ガラス転移温度を超えると流動性が極端に上昇するため、繊維を構成する重合体は流動しやすく、高温雰囲気下での形態保持には適さない。
上記吸熱ピークは、スパンボンド不織布を構成する重合体の結晶融解による吸熱ピーク時の温度(融点)であり、この吸熱ピークを120〜150℃の間に発現させることで、スパンボンド不織布を熱接着シートとして使用する場合に、低い接着温度にて不織布を構成するポリエステル共重合体を溶融させることができるため、熱接着処理温度を低温で行うことが可能であり、被接着体が熱の影響を受けにくく品質や性能を低下させにくいため、被接着対象物として様々な素材を選択し、良好に接着処理を施すことができる。吸熱ピークを120℃以上とすることにより、本発明のスパンボンド不織布からなる熱接着シートを接着剤として高温雰囲気下で使用した場合の熱安定性、耐熱性を保持することができる。また、吸熱ピークを150℃以下とすることにより、上記したように接着温度を高い温度に設定せずとも熱接着加工を施すことができるので、加工性が良好で経済的にも有利である。
スパンボンド不織布を示差走査熱量分析(DSC分析)した際の融解熱量(ΔHm)とは、昇温した際にスパンボンド不織布を構成する重合体の全結晶を融解させるのに必要な熱量であり、示差走査熱量曲線(DSC曲線)において重合体の結晶融点付近に現れる結晶融解による吸熱ピークの面積から求める。融解熱量は、主として、スパンボンド不織布を構成する繊維の結晶性に依存し、繊維を構成する重合体の結晶性が高いと、融解熱量の値は大きくなる。融解熱量を30J/g以上とすることにより、繊維は十分な結晶性を有し、スパンボンド不織布の寸法安定性や機械的特性が良好となる。また、熱に対する安定性が良好で、高温下で用いた際にスパンボンド不織布は収縮を発生しにくい。また、スパンボンド不織布を熱接着シートとして使用した場合は、熱接着シート(スパンボンド不織布)における溶融または軟化した熱接着重合体が流動することなく、また、接着点や接着面が剥がれることなく、接着強力を保持できる。
本発明のスパンボンド不織布は、降温速度10℃/分で示差熱分析した時に、降温時の示差熱曲線に降温結晶化温度(Tc)が存在しているとよい。降温結晶化温度は、昇温により溶融した繊維が降温によって冷却され結晶化する時の温度であり、示差熱曲線に存在する発熱ピーク点の温度である。降温結晶化温度が存在すると、一旦、溶融した後に結晶化する能力が高く、短時間での結晶固化が可能となる。したがって、このような降温結晶化温度を有するスパンボンド不織布は、ホットタック性能に優れているため、熱接着加工直後の被接着体との固着速度が早く、接着加工時の張力や衝撃による負荷に対しても、接着部分が剥離しにくい性質を持つ。また、一般生活資材や袋状物に加工する際のヒートシール加工に対しても好適である。短時間での結晶固化が可能であるため、熱接着加工サイクルを短縮することができる。また、本発明のスパンボンド不織布は、熱接着シートとして機能させる場合、降温結晶化温度は80℃以上がよく、降温結晶化温度を80℃以上とすることにより、熱接着処理により一旦溶融した繊維が次いで降温結晶化温度に達するまでに時間が早く、被接着物同士を良好に接着することができる。なお、降温結晶化温度の上限は、本発明におけるポリエステル共重合体の組成より130℃程度がよい。
本発明のスパンボンド不織布の結晶化熱量(ΔHc)は、30J/g以上であることが好ましい。結晶化熱量は発熱ピーク時の発熱量であり、一旦昇温した後に降温した際のDSC曲線における発熱ピークの面積から求められる。これは、一旦溶融した繊維が冷えて結晶固化するときの能力の大きさを表し、発熱量が大きいほどその能力が高いことを意味する。スパンボンド不織布の結晶化熱量が30J/g以上であると、熱接着処理により一旦溶融した繊維が次いで固着するまでの時間が早く、接着点を良好に形成でき、接着強力が保持できる。
本発明のスパンボンド不織布において、80℃以上の降温結晶化温度が存在し、かつ結晶化熱量が30J/g以上であると、熱接着固化速度が速く、低温ヒートシール性に優れているため、熱接着加工での単位時間当たりの生産速度を上げることが可能となる。したがって、低温で熱接着ができるほど自動包装機適性や作業性が良くなるため、熱接着シートとして使用した場合や、スパンボンド不織布をヒートシール加工する際に、接着スピードが向上し、ロスの低減が計れる。また、得られる製品の仕上がりが良好となる。
本発明のスパンボンド不織布は、以下の方法によって好適に得ることができる。まず、上記したポリエステル共重合体を得るために、ジカルボン酸成分とジオール成分とをエステル化反応またはエステル交換反応させ、重縮合反応を行う。重縮合反応においてポリエステルが所定の極限粘度に到達したら、ストランド状に払い出して、冷却、カットすることによりチップ化する。次に、このチップを通常の溶融紡糸装置に供給して溶融紡糸を行い、この紡出糸条を牽引細化した後に、移動式捕集面上に公知の開繊器にて開繊させながら堆積させてウェブを得た後、不織布化の手段を施す。
スパンボンド法は溶融紡糸工程から冷却・延伸工程、開繊工程、堆積工程までが直結していることから、生産効率に優れている。また、溶融紡糸工程から堆積工程までが直結しているため、紡糸ノズル孔より溶融吐出させた糸条が牽引細化されるまでの距離(紡糸ノズル孔から牽引ジェットの入り口までの距離)が限られた短い距離であり、スパンボンド法によって不織布を得るには、紡糸ノズル孔から牽引ジェットの入り口までの間で、溶融吐出した糸条は冷えなければならない。また、牽引ジェットによる延伸工程でも距離は限られており、この限られた延伸工程内で溶融吐出した糸条を延伸・配向させなければならないことから、高速気流にて糸条を引き込むために、この気流に耐え得る強度が紡出糸条に求められる。本発明では、溶融紡糸した糸条を3000〜6000m/分の高速気流で牽引細化して長繊維を得る。
以下に、各工程での説明をする。
ポリエステル共重合体に含有させるタルクは、重縮合反応させる際に投入するとよい。タルクの結晶化促進性能を利用してチップの払い出し性が良好となり、また、チップ同士の固着を防ぐことができる。なお、高級脂肪酸金属塩を含有させる方法は、上記したとおりである。
ポリエステル共重合体の相対粘度は、1.35〜1.60範囲が好ましい。この範囲で紡糸延伸することで、延伸配向が十分進んだ繊維を得ることができる。
溶融紡糸での溶融紡糸温度は、ポリエステル共重合体の融点をTm℃としたときに(Tm+40)℃〜(Tm+90)℃の温度範囲とする。紡糸温度が(Tm+40)℃より低いと、重合体が十分に溶融せず、高速気流による曵糸性や引き取り性に劣る。一方、(Tm+90)℃を超えると、糸条の冷却過程での結晶化が遅れ、糸条間で融着を生じたり開繊性が劣ったりする。
紡糸口金より吐出した紡糸糸条は紡糸口金直下の牽引ジェットに導引して牽引細化するが、牽引速度は3000〜6000m/分とする。3000m/分未満では、繊維を構成するポリエステル共重合体の分子配向が十分に増大しないため、また、残留伸度が高い状態となりやすいため、得られる長繊維の引張強力が不十分となり、その結果、得られるスパンボンド不織布の寸法安定性や機械的強力、熱安定性が劣る傾向となる。特に熱エンボス加工により不織布化する場合は、繊維が熱収縮を発生し不織布が幅入りし、また、非エンボス部分においても繊維が熱の影響を受けて一部が融け始めるため、得られるスパンボンド不織布の地合いが低下する。一方、6000m/分を超えると、溶融紡糸時の曵糸限界を超えて糸切れが発生し、さらに繊径の均整度に劣る傾向にあるので、製糸性が低下する傾向となる。
牽引細化した後、移動式捕集面上に開繊させながら堆積させてウエブを得た後、適宜の手段により不織布化することによりスパンボンド不織布とする。
不織布化手段としては、熱エンボス加工を施すことが好ましい。このとき、得られるスパンボンド不織布の風合いや操業性を考慮して、熱エンボス装置のロールの表面温度は、ポリエステル共重合体の融点よりも10℃低い温度以下に設定するとよい。設定温度の下限は、ポリエステル共重合体の融点よりも50℃低い温度とするとよい。
本発明に用いるポリエステル共重合体のように融点が低い(ガラス転移温度は0〜20℃)場合、紡糸工程から冷却延伸工程を限られた短い距離で行わざるを得ないスパンボンド法に適用しようとすると、溶融紡糸工程にて冷えにくい性質を有するため、糸条は未だ半溶融状態であり張りがないため、牽引ジェットによる気流や冷却装置からの冷却風に耐えられず、糸揺れが大きくなったり、糸切れが生じやすいため、溶融紡糸が不安定になるが、本発明においては、ポリエステル共重合体に、タルク及び高級脂肪酸金属塩を添加することにより、冷却固化しやすく、また糸条同士の密着や糸切れを防止することが可能となり、スパンボンド法を適用しても操業性良く、不織布を得ることができる。
次に、実施例に基づき本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。なお、以下の実施例、比較例における各種特性値等の測定、評価方法は次の通りである。
(1)相対粘度(ηrel):フェノールと四塩化エタンとの等質量比の混合溶媒100ccに試料0.5gを溶解し、オストワルド粘度計を用いて温度20℃で測定した。
(1)相対粘度(ηrel):フェノールと四塩化エタンとの等質量比の混合溶媒100ccに試料0.5gを溶解し、オストワルド粘度計を用いて温度20℃で測定した。
(2)操業性評価:
<糸切れ>
溶融紡糸工程において、紡出糸条数504本(1錘あたりの42ホールで12錘)を1時間観察し、その間の切れ糸の発生本数で評価した。
◎:切れ糸数が0〜3本/時間
○:切れ糸数が4〜10本/時間
×:複数の錘にて糸切れ多発
<牽引ジェットへの植込み性>
ノズルから紡出された糸条を牽引ジェットに植え込む(導入する)際の作業性を評価した。
○:糸条の冷却固化が進んでいるため植込みが容易で、ジェット吸引による牽引は可能である。
×:糸条の冷却固化が十分ではなく、植込みが不可能であり、ジェット吸引による牽引が不可能である。
<糸切れ>
溶融紡糸工程において、紡出糸条数504本(1錘あたりの42ホールで12錘)を1時間観察し、その間の切れ糸の発生本数で評価した。
◎:切れ糸数が0〜3本/時間
○:切れ糸数が4〜10本/時間
×:複数の錘にて糸切れ多発
<牽引ジェットへの植込み性>
ノズルから紡出された糸条を牽引ジェットに植え込む(導入する)際の作業性を評価した。
○:糸条の冷却固化が進んでいるため植込みが容易で、ジェット吸引による牽引は可能である。
×:糸条の冷却固化が十分ではなく、植込みが不可能であり、ジェット吸引による牽引が不可能である。
(2)繊度(デシテックス):
標準状態の繊維を長さ2000mm分採取して質量を測定し、これを5回繰り返して平均値を求め、この平均値から10000mあたりの質量に換算して繊度とした。
標準状態の繊維を長さ2000mm分採取して質量を測定し、これを5回繰り返して平均値を求め、この平均値から10000mあたりの質量に換算して繊度とした。
(3)繊維の横断面の外周長さ:
紡出した繊維10本を長手方向に直交して切断し、繊維の横断面を電子顕微鏡写真に撮影し、横断面の外周長さをそれぞれキルビメーターで測定し、得られた値の平均値を求めて、繊維の横断面の外周長さとした。
紡出した繊維10本を長手方向に直交して切断し、繊維の横断面を電子顕微鏡写真に撮影し、横断面の外周長さをそれぞれキルビメーターで測定し、得られた値の平均値を求めて、繊維の横断面の外周長さとした。
(4)A/B(繊維横断面の外周比)
上記した繊度、繊維の横断面の外周長さにて得られた値とポリマーの密度から、横断面が円形とした場合の繊維の外周長さを算出し(円周率は3.14)、「繊維の横断面の外周長さ」をAとして、円形の外周長さをBとした際に、AをBで除した値を算出した。
上記した繊度、繊維の横断面の外周長さにて得られた値とポリマーの密度から、横断面が円形とした場合の繊維の外周長さを算出し(円周率は3.14)、「繊維の横断面の外周長さ」をAとして、円形の外周長さをBとした際に、AをBで除した値を算出した。
(5)目付(g/m2):試料長10cm、試料幅5cmの試料片10点を作成し、各試料片の質量(g)を秤量し、得られた値の平均値を単位面積あたりに換算して、目付(g/m2)とした。
(6)融点Tm(℃)、融解熱量ΔHm(J /g)、降温結晶化温度Tc(℃)、結晶化熱量ΔHc(J /g):
パーキンエルマ社製の示差走査型熱量計DSC−7型を用い、試料質量を5mg、昇温速度を10 ℃/分として測定し、得られた融解吸熱曲線の最大値を与える温度を融点Tm(℃)とし、吸熱ピークの面積を融解熱量ΔHm(J/g)とした。また、同様に、降温速度を10 ℃/分として測定し、得られた結晶化発熱曲線の発熱ピークの極値を与える温度を降温結晶化温度Tc(℃)とし、発熱ピークの面積を結晶化熱量ΔHc(J/g)とした。
パーキンエルマ社製の示差走査型熱量計DSC−7型を用い、試料質量を5mg、昇温速度を10 ℃/分として測定し、得られた融解吸熱曲線の最大値を与える温度を融点Tm(℃)とし、吸熱ピークの面積を融解熱量ΔHm(J/g)とした。また、同様に、降温速度を10 ℃/分として測定し、得られた結晶化発熱曲線の発熱ピークの極値を与える温度を降温結晶化温度Tc(℃)とし、発熱ピークの面積を結晶化熱量ΔHc(J/g)とした。
(7)熱接着性の評価:
得られた不織布を10cm×10cmの正方形に切断し、被接着体(10cm×10cm)2枚の間に両端を合わせて挟んだものを試料とする。この試料をヒートシール機の上下熱処理板(長さ32cm×幅1cm)に配置して、下記の条件にて熱接着処理を施した。その後、パネラーによる剥離強力の程度を下記の3段階で評価した。評価はサンプル数10個について行った。
○:全てのサンプルで剥離抵抗が十分大きく、中には被接着体である不織布が破れるものがある。
△:わずかな力で容易に剥離が可能なサンプルがある。
×:剥離抵抗がまったくなく、接着形態を維持していないサンプルがある。
<熱接着処理条件>
被接着体:ポリエチレンテレフタレートスパンボンド不織布 ユニチカ製(銘柄:70550WTO)
接着温度:145℃
接着時間:2秒
ヒートシール機のシール幅:1cm
面圧:2kgf/cm2
得られた不織布を10cm×10cmの正方形に切断し、被接着体(10cm×10cm)2枚の間に両端を合わせて挟んだものを試料とする。この試料をヒートシール機の上下熱処理板(長さ32cm×幅1cm)に配置して、下記の条件にて熱接着処理を施した。その後、パネラーによる剥離強力の程度を下記の3段階で評価した。評価はサンプル数10個について行った。
○:全てのサンプルで剥離抵抗が十分大きく、中には被接着体である不織布が破れるものがある。
△:わずかな力で容易に剥離が可能なサンプルがある。
×:剥離抵抗がまったくなく、接着形態を維持していないサンプルがある。
<熱接着処理条件>
被接着体:ポリエチレンテレフタレートスパンボンド不織布 ユニチカ製(銘柄:70550WTO)
接着温度:145℃
接着時間:2秒
ヒートシール機のシール幅:1cm
面圧:2kgf/cm2
実施例1
エステル化反応缶に、テレフタル酸(以下、TPA)、1,6−ヘキサンジール(以下、HD)、エチレングリコール(以下、EG)を供給し、添加剤としてタルク(日本タルク社製 商品名:SG−2000)を仕上がりチップ中の含有量2.0質量%となるよう添加し、温度250℃、圧力0.2MPaの条件で8時間撹拌し、エステル化反応を行った後、重縮合反応缶に移送した。そして、反応器内の圧力を徐々に減じ、撹拌しながら重縮合反応を約3時間行い、常法によりストランド状に払出しチップ化した。
エステル化反応缶に、テレフタル酸(以下、TPA)、1,6−ヘキサンジール(以下、HD)、エチレングリコール(以下、EG)を供給し、添加剤としてタルク(日本タルク社製 商品名:SG−2000)を仕上がりチップ中の含有量2.0質量%となるよう添加し、温度250℃、圧力0.2MPaの条件で8時間撹拌し、エステル化反応を行った後、重縮合反応缶に移送した。そして、反応器内の圧力を徐々に減じ、撹拌しながら重縮合反応を約3時間行い、常法によりストランド状に払出しチップ化した。
得られた共重合ポリエステルチップは、相対粘度1.47、融点130℃、酸成分がTPA100モル%、グリコール成分がEG12モル%、HD88モル%からなるものであった。共重合ポリエステルチップに対して、0.5質量%のモンタン酸カルシウム塩(クラリアント社製 商標名:リコモントCaV102)を加えて溶融紡糸装置に供給し、繊維の横断面形状を特定の異型断面とするために六葉型紡糸口金を用いることで、紡糸温度190℃、単孔吐出量3.6g/分で溶融紡糸した。
紡糸ノズル孔より紡出した糸条を、紡糸ノズル孔から牽引ジェット入り口までの距離が2000mmの条件下でジェットに導入し、単糸繊度が8.4デシテックスとなるように、牽引速度4300mm/分で牽引した。途中の牽引糸条は冷却空気流にて冷却した。なお、牽引ジェットへ植え込みについては、糸条の冷却固化が進んでいたため植込みが容易で、ジェット吸引による牽引は良好に行われた(牽引ジェットへの植え込み性:○)。
エアーサッカーから排出された糸条は、公知の開繊器により開繊させて移動するコンベアの捕集面上に堆積してウェブを形成した。次いでこのウェブをエンボスロールとフラットロールとからなる熱エンボス装置に通し、ロール温度を110℃に設定し、六角形柄、圧着面積率14.9%、圧着点密度21.9個/cm2 、線圧147N/cmの条件にて部分的に熱圧着せしめ、目付50g/m2のスパンボンド不織布を得た。不織布を構成している繊維の単糸繊度は8.4デシテックス、繊維横断面の外周比(A/B)は1.6であった。得られた不織布の融点Tmは136.9℃、融解熱量ΔHmは42.6J/g、降温結晶化温度Tcは106.5℃、結晶化熱量ΔHcは36.2J/gであった。
紡糸状態の観察の際には、糸切れの発生は4本と少なく(糸切れ:○)、繊維が集積されたウエブを観察すると、密着糸は存在しなかった。また、不織布全体に均一に繊維が存在しており、地合いは良好であった。
実施例2
実施例1において、単糸繊度10.3デシテックスとなるように溶融紡糸の際の単孔吐出量を4.5g/分としたこと以外は、実施例1と同様にしてスパンボンド不織布を得た。
実施例1において、単糸繊度10.3デシテックスとなるように溶融紡糸の際の単孔吐出量を4.5g/分としたこと以外は、実施例1と同様にしてスパンボンド不織布を得た。
牽引ジェットへ植え込みについては、糸条の冷却固化が進んでいたため植込みが容易で、ジェット吸引による牽引は良好に行われた(牽引ジェットへの植え込み性:○)。紡糸の際、糸切れの発生はなく(糸切れ:◎)、繊維が集積されたウエブには、密着糸は存在せず、不織布全体に均一に繊維が存在し、地合いは良好であった。
実施例3
実施例2において、共重合ポリエステルの相対粘度を1.57に変更したこと以外は、実施例2と同様にして、単糸繊度10.8デシテックスのスパンボンド不織布を得た。
実施例2において、共重合ポリエステルの相対粘度を1.57に変更したこと以外は、実施例2と同様にして、単糸繊度10.8デシテックスのスパンボンド不織布を得た。
牽引ジェットへ植え込みについては、糸条の冷却固化が進んでいたため植込みが容易で、ジェット吸引による牽引は良好に行われた(牽引ジェットへの植え込み性:○)。紡糸の際、糸切れの発生はなく(糸切れ:◎)、繊維が集積されたウエブには、密着糸は存在せず、不織布全体に均一に繊維が存在し、地合いは良好であった。
実施例4
実施例2において、共重合ポリエステルの相対粘度を1.40に変更したこと以外は、実施例2と同様にして、単糸繊度10.1デシテックスのスパンボンド不織布を得た。
実施例2において、共重合ポリエステルの相対粘度を1.40に変更したこと以外は、実施例2と同様にして、単糸繊度10.1デシテックスのスパンボンド不織布を得た。
牽引ジェットへ植え込みについては、糸条の冷却固化が進んでいたため植込みが容易で、ジェット吸引による牽引は良好に行われた(牽引ジェットへの植え込み性:○)。紡糸の際、糸切れの発生はなく(糸切れ:◎)、繊維が集積されたウエブには、密着糸は存在せず、不織布全体に均一に繊維が存在し、地合いは良好であった。
比較例1
実施例1において、溶融紡糸の際に添加剤としてモンタン酸カルシウム塩を加えなかったこと、単糸繊度10.8デシテックスとなるように溶融紡糸の際の単孔吐出量を4.5g/分としたこと以外は、実施例1と同様にしてスパンボンド不織布を得ようとした。
実施例1において、溶融紡糸の際に添加剤としてモンタン酸カルシウム塩を加えなかったこと、単糸繊度10.8デシテックスとなるように溶融紡糸の際の単孔吐出量を4.5g/分としたこと以外は、実施例1と同様にしてスパンボンド不織布を得ようとした。
紡糸の際には、糸切れが2本発生した(糸切れ:◎)。また、紡出糸条の揺れが大きく、実施例と比較して溶融紡糸糸条の冷却性が劣ることから、牽引ジェットへ糸条の植え込み(導入)が困難であった。
比較例2
実施例1において、紡糸口金を丸型断面形状に変更したこと、溶融紡糸の際に添加剤としてモンタン酸カルシウム塩を加えなかったこと以外は、実施例1と同様にしてスパンボンド不織布を得ようとしたが、紡糸の際に、糸切れがあちこちの錘にて多発し(糸切れ:×)、また、溶融紡糸糸条の冷却性が劣ったことから、牽引ジェットへ糸条の植え込み(導入)が困難であり(牽引ジェットへの植え込み性:×)、ウェブを採取することを断念した。
実施例1において、紡糸口金を丸型断面形状に変更したこと、溶融紡糸の際に添加剤としてモンタン酸カルシウム塩を加えなかったこと以外は、実施例1と同様にしてスパンボンド不織布を得ようとしたが、紡糸の際に、糸切れがあちこちの錘にて多発し(糸切れ:×)、また、溶融紡糸糸条の冷却性が劣ったことから、牽引ジェットへ糸条の植え込み(導入)が困難であり(牽引ジェットへの植え込み性:×)、ウェブを採取することを断念した。
実施例1〜4のスパンボンド不織布は、ポリエステル共重合体にタルクおよび高級脂肪酸金属塩(モンタン酸カルシウム塩)を添加したものであり、糸条の冷却効果がさらに増したことと、紡出糸条の張りが強くなったことから、結果的に、糸条の揺れが小さくなり、糸切れの発現も殆んどなくなったため、牽引ジェットへの植え込みしやすく、安定した紡糸が可能であるため、連続生産できるものであった。また、単糸繊度8.4デシテックス(実施例1)から、10〜11デシテックス(実施例2〜4)に変更しても、糸条の冷却性が劣ることなく、牽引ジェットへの糸条の植え込み(導入)は容易に行うことができ、紡糸操業面で優れたものであった。また、熱接着性の評価を行ったところ、実施例1〜4のいずれのスパンボンド不織布も良好に接着し「○」であった。
Claims (6)
- ポリエステル共重合体によって構成されるスパンボンド不織布であって、ポリエステル共重合体は、ジカルボン酸成分がテレフタル酸を主成分とし、ジオール成分が1,6−ヘキサンジオールとエチレングリコールとを構成成分として1,6−ヘキサンジオールがジオール成分中の50モル%以上を占めており、該ポリエステル共重合体中にタルクおよび高級脂肪酸金属塩を含んでいることを特徴とするスパンボンド不織布。
- 高級脂肪酸金属塩がモンタン酸金属塩であることを特徴とする請求項1記載のスパンボンド不織布。
- スパンボンド不織布を構成する繊維の単糸繊度が5デシテックス以上、構成繊維の横断面形状が下式(1)を満足する異型断面であることを特徴とする請求項1または2記載のスパンボンド不織布。
A/B≧1.4 ・・・・・・・式(1)
上式(1)において、
Aは構成繊維の横断面の外周長さ、
Bは構成繊維と同じポリエステルで構成された同じ繊度の繊維で断面形状が円形と仮定して算出した横断面の外周長さ - スパンボンド不織布が、昇温速度10℃/分で示差熱分析した際に明確な吸熱ピークが120℃〜150℃の間に発現し、かつ融解熱量(ΔHm)が30J/g以上であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項記載のスパンボンド不織布。
- 請求項1〜4のいずれか1項記載のスパンボンド不織布によって構成される熱接着シート。
- ジカルボン酸成分がテレフタル酸を主成分とし、ジオール成分が1,6−ヘキサンジオールとエチレングリコールとを構成成分として1,6−ヘキサンジオールがジオール成分中の50モル%以上を占めているポリエステル共重合体であって、タルクおよび高級脂肪酸金属塩を含むポリエステル共重合体を、該ポリエステル共重合体の融点よりも40〜90℃高い温度で溶融して紡糸口金から紡糸糸条を吐出させ、紡糸糸条を紡糸口金直下の牽引ジェットに導引して牽引速度3000〜6000m/分で牽引細化した後、移動式捕集面上に開繊させながら堆積させてウエブを得た後、不織布化することを特徴とするスパンボンド不織布の製造方法。
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