JP5704875B2 - 熱接着性ポリエステル系長繊維不織布の製造方法およびそれにより構成される熱接着シート材 - Google Patents
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Description
これら積層体を構成する構造物同士を接着するために、ホットメルト系の接着剤を用いることも多いが、熱接着性を有する繊維からなる不織布を介在させて熱処理を施すことにより、両構造物を接着させる場合もある。
しかしながら、鞘部のイソフタル酸成分を共重合したポリエチレンテレフタレート系共重合体は、非晶性であり明確な結晶融点を示さないため、接着後に不織構造物を高温雰囲気下で使用した場合、接着強力が低下して変形するという問題を生じるものであった。
しかしながら、この不織布は、ポリエステル系であり、また結晶核剤としてのポリオレフィンの含有量が少ないため、ポリオレフィンとの接着性が低く、例えば、ポリプロピレンやポリエチレンからなるフィルム及び不織布との接着性が乏しいものであった。特許文献1に記載された製造方法を発明者らが追試したところ、スパンボンド法のような冷却ゾーンの比較的短い方法を用いて不織布を製造する場合には、糸条の密着を起こしやすく、開繊性が劣る上、装置へポリマーが付着しやすく、連続操業できないものであった。
すなわち、本発明の要旨は、次のとおりである。
(1)テレフタル酸を主成分とするジカルボン酸成分と、1,6−ヘキサンジオールが50モル%以上であるジオール成分とからなり、融点(Tm)が100〜150℃である共重合ポリエステル(ただし、ポリブチレンテレフタレートを主成分とするポリエステルとポリテトラメチレングリコールを主成分とするポリエーテルからなる共重合ポリエステル系エラストマを除く)を用いてスパンボンド法により長繊維不織布を製造する方法において、溶融紡糸時に、メルトインデックス(MI)が5〜100g/10minであるポリエチレンを添加し、無機微粉末を添加せずに、前記ポリエチレンを1.0〜5.0質量%含有する長繊維を得て、この長繊維を多数堆積させて不織布化することを特徴とする熱接着性ポリエステル系長繊維不織布の製造方法。
(2)上記(1)記載の熱接着性ポリエステル系長繊維不織布の製造方法により得られた熱接着性ポリエステル系長繊維不織布により構成される熱接着シート材。
本発明の製造方法で得られる熱接着性ポリエステル系長繊維不織布は、長繊維を形成する共重合ポリエステルがジオール成分としてヘキサンジオールを50モル%以上共重合しているため、低融点でありながら、結晶性に優れ、かつ、その共重合ポリエステル中にポリエチレンを1.0〜5.0質量%含有しているため、ポリオレフィン系基材に対しても良好なヒートシール性を有することができる。
本発明で製造する熱接着性ポリエステル系長繊維不織布は、テレフタル酸を主成分とするジカルボン酸成分と、1,6−ヘキサンジオールが50モル%以上であるジオール成分とからなる共重合ポリエステル中に、ポリエチレンを1.0〜5.0質量%含有する長繊維によって構成される。
なお、ポリエチレンの高濃度のマスターバッチを作製し、それを紡糸時に適宜、希釈しながら添加してもよい。
乾燥温度は、特に限定されず、基材の耐熱温度等によって適宜決定すればよいが、通常、50〜150℃であればよく、60〜140℃がより好ましく、70〜130℃がさらに好ましい。乾燥温度が50℃未満の場合、媒体を十分、揮発させることができない、あるいは揮発させるのに時間を要するため良好な接着性能を発現させることが困難になる。一方、乾燥温度が150℃を超えると基材となる不織布が融解してしまい好ましくない。
まず、テレフタル酸を主成分とするジカルボン酸成分と、1,6−ヘキサンジオールが50モル%以上であるジオール成分とからなり、融点(Tm)が100〜150℃の共重合ポリエステルを用意し、また、メルトインデックス(MI)が5〜100g/10minであるポリエチレンを用意する。それぞれを別途計量した後、溶融させ、紡糸口金を介して溶融紡糸し、紡出糸条を従来公知の横吹き付けや環状吹き付け等の冷却装置を用いて冷却せしめた後、吸引装置を用いて牽引細化して引き取る。このときの牽引速度は、1000〜6000m/分と設定することが好ましい。牽引速度が1000m/分未満であると、糸条において十分に分子配向が促進されず、得られる長繊維不織布の寸法安定性や熱安定性に劣る傾向となる。一方、牽引速度が高すぎると紡糸安定性に劣る。
ASTM−D−1238(E)に記載の方法に準じて、温度190℃、荷重2160gfで測定した。
示差走査型熱量計(パーキンエルマ社製、DSC−2型)を用い、試料質量を5mg、昇温速度を10℃/分で測定し、得られた融解吸熱曲線の最大値を与える温度を融点(℃)とした。
不織ウエブより50本の繊維の繊維径を光学顕微鏡で測定し、密度補正して求めた平均値を繊度とした。
標準状態の試料から試料長が10cm、試料幅が5cmの試料片10点を作成し、各試料片の質量(g)を秤量し、得られた値の平均値を単位面積あたりに換算して、目付(g/m2)とした。
1m2シートを採取し、その中の密着糸の有無を持って評価した。
○:密着糸なし
×:密着糸あり
24h運転する間の装置へのポリマー付着に伴う、トラブル発生の有無で評価した。
○:トラブルなし
×:トラブルあり
被接着体(ポリエチレンテレフタレート(以下、PETとする)、ポリプロピレン(以下、PPとする))からなる50g/m2のスパンボンド不織布を2枚用意し、この2枚の間に得られたスパンボンド不織布(50g/m2)を挟み込み、150mm×150mmとなるようにサンプリングする。このシートの端より20mmのところをヒートシール機を用いて、150℃、2.0s、2.0kgf/cm2、10mm幅でヒートシールを行った。
このシートを剥離し、その状態を3段階で評価した。
○:サンプルの剥離を行う際、抵抗が大きく剥離が難しい。もしくは、接着部分よりシートが破断する。
△:少しの力で剥離する。
×:接着していない。
テレフタル酸を主成分とするジカルボン酸成分と、1,6−ヘキサンジオール89モル%、1,4−ブタンジオール11モル%で構成されるジオール成分とからなり、Tmが133℃で、MIが20g/10minである共重合ポリエステル(以下、P1とする)と、MIが25g/10minであるポリエチレンを用意した。
ポリエチレンが溶融重合体中に2.0質量%となるように、個別に計量した後、エクストルーダー型溶融押出機を用いて、温度190℃で溶融し、単孔吐出量3.3g/分の条件で溶融紡糸した。
紡出糸条を公知の冷却装置にて冷却した後、引き続いて紡糸口金の下方に設けたエアサッカーに牽引速度4000m/分で牽引細化し、公知の開繊器具を用いて開繊し、移動するスクリーンコンベア上に長繊維群をウエブとして捕集堆積させた。堆積させた長繊維の単糸繊度は8.0デシテックスであった。
次いで、このウエブをロール温度115℃としたエンボスロールからなる部分熱圧着装置に通して部分的に熱圧着し、目付50g/m2の熱接着性ポリエステル系長繊維不織布を得た。
テレフタル酸を主成分とするジカルボン酸成分と、1,6−ヘキサンジオール89モル%、1,4−ブタンジオール11モル%で構成されるジオール成分とからなる共重合ポリエステルを重合する際に、ポリエチレンワックス(クラリアント社製 Licowax PE190)を、濃度が0.05質量%になるように添加した。得られた共重合ポリエステル(以下、P2とする)は、Tmが133℃で、MIが20g/10minであった。
共重合ポリエステルP2をエクストルーダー型溶融押出機を用いて、温度190℃で溶融し、単孔吐出量3.3g/分の条件で溶融紡糸した。
紡出糸条を公知の冷却装置にて冷却したが、引き続いて紡糸口金の下方に設けたエアサッカーにて牽引細化し、公知の開繊器具を用いて開繊することができず、長繊維群を堆積したウエブを観察すると、長繊維は単糸の状態ではなく密着糸ばかりであり、また、連続稼動中に装置の様々な場所にポリマーが付着しトラブルが生じたので、不織布製造を中止した。
共重合ポリエステルP1とMIが20g/10minであるポリエチレンを用意した。
ポリエチレンが溶融重合体中に0.5質量%となるように、個別に計量した後、エクストルーダー型溶融押出機を用いて、温度190℃で溶融し、単孔吐出量3.3g/分の条件で溶融紡糸した。
紡出糸条を公知の冷却装置にて冷却したが、引き続いて紡糸口金の下方に設けたエアサッカーにて牽引細化し、公知の開繊器具を用いて開繊することができず、長繊維群を堆積したウエブを観察すると、長繊維は単糸の状態ではなく密着糸ばかりであり、また、連続稼動中に装置の様々な場所にポリマーが付着しトラブルが生じたので、不織布製造を中止した。
共重合ポリエステルP1と二酸化チタンとを用意した。
二酸化チタンが溶融重合体中に0.8質量%となるように、個別に計量した後、エクストルーダー型溶融押出機を用いて、温度190℃で溶融し、単孔吐出量3.3g/分の条件で溶融紡糸した。
紡出糸条を公知の冷却装置にて冷却した後、引き続いて紡糸口金の下方に設けたエアサッカーに牽引速度4000m/分で牽引細化し、公知の開繊器具を用いて開繊し、移動するスクリーンコンベア上にウエブとして捕集堆積させた。堆積させた長繊維の単糸繊度は8.0デシテックスであった。
次いで、このウエブをロール温度115℃としたエンボスロールからなる部分熱圧着装置に通して部分的に熱圧着し、目付50g/m2の熱接着性ポリエステル系長繊維不織布を得た。
Tm256℃のポリエチレンテレフタレート(以下、PETとする)を用意した。これをエクストルーダー型溶融押出機を用いて、温度285℃で溶融し、単孔吐出量1.7g/分の条件で溶融紡糸した。
紡出糸条を公知の冷却装置にて冷却した後、引き続いて紡糸口金の下方に設けたエアサッカーに牽引速度5000m/分で牽引細化し、公知の開繊器具を用いて開繊し、移動するスクリーンコンベア上にウエブとして捕集堆積させた。堆積させた長繊維の単糸繊度は3.0デシテックスであった。
次いで、このウエブをロール温度220℃としたエンボスロールからなる部分熱圧着装置に通して部分的に熱圧着し、目付50g/m2の熱接着性ポリエステル系長繊維不織布を得た。
比較例1、比較例2では、開繊性、操業性に劣り不織布を製造することができなかった。
比較例3の不織布は、開繊性、操業性は改善されるものの、フィラーを含むため実施例1と比較して接着性に劣るものであった。
比較例4の不織布は、不織布を構成する樹脂の融点が256℃と高く、ポリエステル系基材、ポリオレフィン系基材のどちらの基材に対しても接着性がなかった。
Claims (2)
- テレフタル酸を主成分とするジカルボン酸成分と、1,6−ヘキサンジオールが50モル%以上であるジオール成分とからなり、融点(Tm)が100〜150℃である共重合ポリエステル(ただし、ポリブチレンテレフタレートを主成分とするポリエステルとポリテトラメチレングリコールを主成分とするポリエーテルからなる共重合ポリエステル系エラストマを除く)を用いてスパンボンド法により長繊維不織布を製造する方法において、溶融紡糸時に、メルトインデックス(MI)が5〜100g/10minであるポリエチレンを添加し、無機微粉末を添加せずに、前記ポリエチレンを1.0〜5.0質量%含有する長繊維を得て、この長繊維を多数堆積させて不織布化することを特徴とする熱接着性ポリエステル系長繊維不織布の製造方法。
- 請求項1記載の熱接着性ポリエステル系長繊維不織布の製造方法により得られた熱接着性ポリエステル系長繊維不織布により構成される熱接着シート材。
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