JP2011072258A - グミキャンディ浸透菓子及びその製造方法 - Google Patents

グミキャンディ浸透菓子及びその製造方法 Download PDF

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進介 北中
Kiyoshi Suzuki
潔 鈴木
Takeki Matsui
雄毅 松居
Yasumasa Yamada
泰正 山田
Ichiro Yamada
一郎 山田
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Abstract

【課題】多孔質表面を有する焼菓子にグミキャンディを含浸させて今までにない新規な食感を有する菓子を提供すること。
【解決手段】多孔質表面を有する焼菓子に、該焼菓子重量の100〜300重量%のグミキャンディが浸透し、全体として水分含量が5〜16重量%の範囲にあるグミキャンディ浸透菓子。多孔質表面を有する焼菓子に、ゼラチンを2〜25重量%含有し、40〜75ブリックスに調整したグミキャンディシロップを含浸させ、その後全体として水分含量が5〜16重量%になるまで乾燥させることで得られる。
【選択図】なし

Description

本発明は、多孔質表面を有する焼菓子にグミキャンディ生地を含浸することにより今までにない粘弾性を付与した、グミキャンディ浸透菓子に関する。
一般的に焼菓子とは、穀類・芋類・豆類、あるいはその加工品、例えば小麦粉や澱粉、餅等を主原料に、そのままないしは加熱や副原料、加工助剤の添加等の前処理を施した後に成形し、焼成することにより水分値を下げ、その後必要に応じて成形・コーティング等の二次加工を施した菓子である。
従来より、パンや焼菓子の表面に、糖液や油脂性菓子をコーティングした食品が知られている。砂糖掛けや飴掛けによって、甘味が向上し、表面に焼菓子では出ない色や艶を与える事もできる。また、表面に砂糖や飴の食感を与える事もできる。一方、チョコレート等の油脂性菓子によるコーティングは、表面に艶を与え、油脂性菓子の濃厚感、口どけ感を与える事ができる。これらの方法は、パンや焼菓子のもつ食感を変えずに、味や見た目にバラエティを与える手段として、広く用いられている。
パンや焼菓子は、一般的に、焼成前の生地において、攪拌や泡立て等による気泡の練り込みや、ベーキングパウダー等の膨張剤によるガスの発生、発酵によるガスの発生等により無数の小さな気泡が内部に存在している。その生地を焼成することにより、気泡自体の熱膨張および気泡内への生地中の水分の蒸散による膨張、また、高温下での膨張剤の反応によるガスの発生により、生地中の無数の気泡が膨張して大きな気泡となり、多数の空洞を有した構造を形成している。この空隙に液体原料を充填することは可能であり、一般的には、所望の液体原料に浸漬させる方法がとられ、さらには必要に応じて物理的圧力や、減圧、加圧処理により含浸させる方法がある。又、焼成したパンを切断し、それをさらに焼く、揚げる、等の操作により水分をとばしたラスク、クルトン等は、内部にあった空洞が切断表面に現れ、表面が多孔質状態であるため、含浸させるために特に好適な基材であり、古くからこれらに糖液やチョコレートを浸漬させた菓子が知られている。尚、一般的にラスクはパンをスライスしただけの形状、クルトンはサイコロ状に角切りされたものを言う。
以上のようにパンや焼菓子の内部に、糖液や油脂性菓子を浸透させる発明は数多く提案されており、例えば、粘度や組成を規定することにより含浸させる油脂性菓子の物性を改良したもの(特許文献1参照)、減圧下で液状原料に埋没させた後に常圧に戻すことにより含浸させる方法(特許文献2参照)、加速度を与えることにより含浸させる方法(特許文献3参照)等がある。特許文献2、3においては、含浸させる流動性液体については特に限定していないものの、例として油脂性原料、調味液、飲料、クリーム、水飴、等が挙げられている。しかしこれらは、パンや焼菓子に甘味や風味、濃厚感、口どけ感を与えるものの、パンや焼菓子自身の食感に著しい変化を与えるものではなかった。その中でも、多孔質構造の空隙を有する基食材にゼリーを含浸させた食品も提案されており(特許文献4参照)、基食材に瑞々しさや弾力を付与させることに成功しているが、これは基食材にゼリー液を浸透させただけのものであり日持ちのしないものであった。
また、近年、濡れおかきのような、米菓に醤油等の調味液を浸漬させた菓子も流行しており、餅のような弾力感のあるものや、軽くて軟らかいしっとりとしたものも提案されている(例えば、特許文献5、6参照)。しかし、これらのような濡れおかきは保存性に乏しく、微生物の繁殖防止のため、無菌製造設備、真空パック、脱酸素剤封入、窒素ガス封入等の処置が必要であり、さらには澱粉の経時的な老化が問題となっている。そのため、濡れおかきの保存性向上の研究も数多くなされており、例えば、濡れ煎餅全体の水分値の調整および表面の塩分濃度により微生物の繁殖および澱粉の老化を抑制しているもの(特許文献7参照)、トレハロースを添加した調味液を所定の操作で浸漬させることにより澱粉の老化を抑制したもの(特許文献8参照)等がある。しかし、澱粉の老化防止は十分ではなく、澱粉による弾力や半生感の長期的な維持には課題が残る。以上のように濡れ米菓の軟らかい食感は人気であり、濡れ米菓にかかわらず、焼菓子等の長期流通菓子に半生食感を付与させることができれば、嗜好性の高い食品として消費者の需要に応えることができると大いに予想される。
特許第3122841号公報 特開2008−5745号公報 特開2009−72086号公報 特開2004−194549号公報 特許第3842749号公報 特開2008−5782号公報 特開平10−52226号公報 特許第3268388号公報
本発明は、多孔質表面を有する焼菓子にグミキャンディを含浸させて今までにない新規な食感を有する菓子を提供することを目的とする。
前記目的を達成するため、本発明者らは鋭意研究を重ねた結果、多孔質表面を有する焼菓子に、グミキャンディ生地を含浸させたところ、驚くべきことに、半生感があり、且つ粘弾性のある全く新しい食感を焼菓子に付与させられることを見出した。また、濡れおかきでは実現し得ない低い水分活性をもつ菓子にすることを可能にした。さらに驚くべきことに、このグミキャンディ浸透菓子は、グミキャンディと焼菓子の組み合わせであるが、そのどちらの食感とも異なる、チューイング性を有する全く新しい食感の菓子となった。
即ち、本発明は、
[1]多孔質表面を有する焼菓子に、該焼菓子重量の100〜300重量%のグミキャンディが浸透し、全体として水分含量が5〜16%の範囲にあるグミキャンディ浸透菓子
[2]多孔質表面を有する焼菓子に、ゼラチンを2〜25重量%含有し、40〜75ブリックスに調整したグミキャンディシロップを含浸させ、その後全体として水分含量が5〜16重量%になるまで乾燥させることを特徴とする前記[1]に記載のグミキャンディ浸透菓子の製造方法
に関する。
本発明に係るグミキャンディ浸透菓子は、グミキャンディの含浸量と水分値を規定することにより、半生感があり、且つ粘弾性のあり、低い水分活性をもち、さらにグミキャンディと焼菓子とどちらの食感とも異なる、チューイング性を有する、今までにない食感の菓子である。
本発明に係るグミキャンディ浸透菓子に使用される焼菓子は、小麦、米、とうもろこし等の澱粉質を主原料とした生地を焼成したものであり、且つ多孔質表面をもつものであれば何でもよく、例えば、ラスク、クルトン、ビスケット、クッキー、パイ、せんべい、麩菓子等が挙げられる。
本発明においては、焼菓子の多孔質表面とは、後述のグミキャンディシロップを接触させた場合に、グミキャンディが含浸していくことが可能な程度の大きさの空隙を有する表面であればよく、焼菓子表面の孔の径については特に限定はない。
本発明に係るグミキャンディ浸透菓子において、前記焼菓子に浸透されるグミキャンディの重量は、該焼菓子重量の100〜300重量%とする。グミキャンディの重量は好ましくは150〜250重量%である。100重量%未満ではほとんど焼菓子の食感が残ってしまい、300重量%を越えるとグミキャンディの割合が多く、チューイング性に欠けるものとなってしまう。
グミキャンディとしては、糖質およびゼラチンを主原料とし、各種食品原料、各種食品添加物、および水分から構成されている。
ゼラチンは、製法や由来に特に限定されずに使用することができる。焼菓子に浸透させるグミキャンディシロップ中のゼラチンの含有量は、グミキャンディシロップの全重量の2〜25重量%とする。2重量%を下回ると弾力が出ず、25重量%を超えると焼菓子への浸透が困難になる。
また、糖質は特に限定されずに使用することができ、例えば、砂糖、ブドウ糖、水飴、糖アルコール等が使用できる。糖質の含有量は、グミキャンディシロップの全重量の20〜70重量%が好ましい。
各種食品原料には、果汁、果肉、乳製品、食物繊維、澱粉、タンパク質、油脂等が使用できる。
各種食品添加物には、酸味料、香料、着色料、増粘多糖類、乳化剤等が添加できる。
前記の各種食品原料と各種食品添加物とは、所望に応じてグミキャンディ中に含有すればよい。
水分としては、8〜16重量%が好ましい。
なお、本発明では、前記の成分を混合して煮詰め、所望のブリックスを有するグミキャンディシロップとし、このグミキャンディシロップを前記焼菓子に含浸させた後、乾燥させることでグミキャンディを形成させることができる。
本発明において前記焼菓子にグミキャンディが浸透した状態としては、焼菓子の多孔質表面から内部にグミキャンディが全て浸透し、グミキャンディが焼菓子表面上に見えない状態であってもよいし、グミキャンディが多孔質表面から浸透しながら、焼菓子表面の一部または全体を覆っていてもよい。
本発明に係るグミキャンディ浸透菓子の水分量は、全重量に対し5〜16重量%とする。好ましくは6〜15重量%である。5重量%未満では硬すぎる食感となってしまい、16重量%を越えると粘弾性に劣る食感となり、かつ日持ちも悪くなってしまう。尚、本発明における水分量は、減圧乾燥法により乾燥前後でのグミキャンディ浸透菓子の重量差を測定することにより算出されたものである。
前記の構成を有するグミキャンディ浸透菓子は、多孔質表面を有する焼菓子に、ゼラチンを2〜25重量%含有し、40〜75ブリックスに調製したグミキャンディシロップを含浸させ、その後全体として水分含量が5〜16重量%になるまで乾燥させることで製造することができる。
前記グミキャンディシロップのブリックス(固形分濃度)は40〜75とする。40ブリックスを下回ると焼菓子の吸水による変形および乾燥の長時間化が起き、かつ最終製品の粘弾性も弱まってしまう。一方、75ブリックスを超えるとシロップの粘性が高すぎて焼菓子への浸透が困難になる。
本発明に係るグミキャンディ浸透菓子の具体的な製造方法としては、多孔質表面を有する焼菓子に、ザル等の固定器具を用いてグミキャンディシロップ中に埋没させて含浸させ、その後引き上げて余分な液を落とし、そのまま所望の水分値になるまで乾燥させて得る事ができる。
浸漬時のグミキャンディシロップの温度については、シロップが流動性を示す温度であれば特に規定はないが、例えば60〜100℃で行なう。温度が高いほどグミキャンディシロップの粘性が下がり、浸透が容易になる。
乾燥温度についても特に規定はないが、例えば室温から60℃程度で乾燥する。
以上のようにして得られたグミキャンディ浸透菓子は、グミキャンディが焼菓子に浸透している部分において、グミキャンディにも焼菓子にもない独特な粘弾性を有するという、今までにない食感を楽しむことができる菓子である。この食感は、例えば、グミキャンディと焼菓子とを張り合わせた組み合わせ菓子のようにグミキャンディの食感と焼菓子のサクサクした食感が合わさっただけの食感と比べて、顕著に相違した食感である。
次に、実施例によって本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例により何ら制限されるものではない。
(実施例1)
厚さ9mm、直径25mmの円柱形のラスクを、砂糖15部、水飴15部、濃縮ブルーベリー果汁10部、ゼラチン20部、クエン酸1.8部、ブルーベリー香料0.2部、水38部を混合して調製したグミキャンディシロップ(ブリックス52)中に、60℃40分間浸漬させ、その後引き上げ、60℃で24時間乾燥させてグミキャンディ浸透菓子を得た。全体の水分値は8%であった。浸漬前のラスクに比べてグミキャンディ浸透菓子の重量は330重量%に増加しており、ラスクに対してグミキャンディが230重量%浸透していることがわかる。得られたグミキャンディ浸透菓子は、水分値が高いため半生感があり、硬く噛み応えのある、特有の粘弾性とチューイング性を有する菓子となった。又、水分活性は0.55と非常に低い値を示した。
(実施例2)
一辺15mmの立方体形のクルトンを、砂糖30部、水飴25部、濃縮りんご果汁20部、ゼラチン5部、クエン酸2.8部、りんご香料0.2部、水17部を混合して調製したグミキャンディシロップ(ブリックス70)中に、100℃10分間浸漬させ、その後引き上げ、60℃で12時間乾燥させてグミキャンディ浸透菓子を得た。全体の水分値は15%であった。浸漬前のクルトンに比べてグミキャンディ浸透菓子の重量は300重量%に増加しており、クルトンに対してグミキャンディが200重量%浸透していることがわかる。得られたグミキャンディ浸透菓子は、水分値が高いため半生感があり、焼菓子にはない瑞々しさをもち、特有の粘弾性とチューイング性を有する菓子となった。又、水分活性は実施例1と同様に非常に低い値を示した。
(比較例1)
実施例2と同様のグミキャンディシロップの配合で、実施例2と同様にして、直径15mmの立方体形のクルトンをグミキャンディシロップ中に60℃40分間浸漬させ、その後引き上げ、乾燥をとらずにグミキャンディ浸透菓子を得た。全体の水分値は21%であった。得られたグミキャンディ浸透菓子は、水分値が高く、食感はグミキャンディそのものに近く、粘弾性を有するものではなかった。
(比較例2)
直径15mmの立方体形のクルトンを、砂糖35部、水飴30部、濃縮りんご果汁20部、ゼラチン5部、クエン酸2.8部、りんご香料0.2部、水2部を混合して調製したグミキャンディシロップ(ブリックス78)中に、100℃10分間浸漬させ、その後引き上げ、60℃で12時間乾燥させてグミキャンディ浸透菓子を得た。全体の水分値は6%であった。浸漬前のクルトンに比べてグミキャンディ浸透菓子の重量は180重量%に増加しており、クルトンに対してグミキャンディが80重量%浸透していることがわかる。得られたグミキャンディ浸透菓子には、サクサクとした焼菓子の食感が非常に残っており、粘弾性にも乏しいものであった。

Claims (2)

  1. 多孔質表面を有する焼菓子に、該焼菓子重量の100〜300重量%のグミキャンディが浸透し、全体として水分含量が5〜16重量%の範囲にあるグミキャンディ浸透菓子。
  2. 多孔質表面を有する焼菓子に、ゼラチンを2〜25重量%含有し、40〜75ブリックスに調整したグミキャンディシロップを含浸させ、その後全体として水分含量が5〜16重量%になるまで乾燥させることを特徴とする請求項1に記載のグミキャンディ浸透菓子の製造方法。
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