本発明の実施態様として、前記絶縁層が、平面図位置として、前記電気/電子部品が埋め込まれた領域を除き該領域以外の領域に第2の補強材を含有する、とすることができる。絶縁層がこのように第2の補強材を含有することで、電子モジュールとしてさらに高い剛性を持たせることができる。この第2の補強材は、換言すると、電気/電子部品の上に配された補強材とは異なる積層方向水準の位置に設けられたものであり、互いに干渉しない配置になっている。第2の補強材が電気/電子部品の埋設された領域で除かれているのは、積層時に第2の補強材が電気/電子部品にぶつかりダメージを与え信頼性を劣化させるのを防止するためである。
ここで、前記絶縁層の前記補強材と前記第2の補強材との間に設けられた第3の配線パターンをさらに具備する、とすることができる。この場合、配線層をさらに設けて多層化することで、より複雑な導電路を有するモジュールとし付加価値を高められる。
さらにここで、前記絶縁層の一部を貫通して前記第1の配線パターンの面と前記第3の導電体パターンの面との間に挟設された、導電性組成物からなりかつ貫通方向に径が変化する柱状の層間接続体をさらに具備する、とすることができる。この層間接続体は、小さな領域に高密度に設けることができ、電子モジュール設計のファイン化に資することができる。
また、実施態様として、前記第1の配線パターンが、前記絶縁層の側に落ち込み位置している、とすることができる。この構造は、例えば、第1の配線パターンを、ダミーとなる基板上に先に形成しておき、その状態で第1の配線パターン上に電気/電子部品を実装し、これを絶縁層などと積層後にダミーの基板を取り除いて得られるものである。電気/電子部品の実装工程がより安定する利点がある。
また、実施態様として、融点が240℃以下の前記低融点金属が、Sn−In組成系、Sn−Bi組成系、Sn−Zn−Bi組成系、Sn−Ag−In組成系、Sn−Ag−Cu組成系、Sn−Ag組成系、Sn−Cu組成系、およびSn−Sb組成系、ならびにSnからなる群より選択された1種の組成系または金属であり、前記接続部材が含有する前記第1の金属の粒子が、Ag、Au、Cu、Ni、およびFe、ならびにCu−Ni組成系、Cu−Sn組成系、Ag−Sn組成系、Cu−Zn組成系、およびCo−Sb組成系からなる群より選択された1種以上の金属または組成系の粒子である、とすることができる。
これによれば、複数元素系相を、CuxSny(融点:640.4℃)、CoxSny(同:525℃)、CuxZny(同:598.8℃)、CuxSby(同:586℃)、CoxSby(同:770℃)、NixBiy(同:469℃)、AgxSny(同:480℃)、FexSny(同:496.6℃)、AgxCuySnz(同:515℃)、またはAuxSny(同:278℃)とすることができる。したがって、融点が260℃以上の複数元素系相を実現できる。ここで、x、y、zは、各元素が複数元素系相を形成可能な正の数である(以下、同じ)。
また、実施態様として、前記接続部材の前記複数元素系相が、CuxSny、CoxSny、CuxZny、CuxSby、CoxSby、NixBiy、AgxSny、FexSny、AgxCuySnz、およびAuxSnyからなる群から選択された1種以上を含む相である、とすることができる。これらは上記のように、融点が260℃以上である相の例示である。
また、実施態様として、融点が240℃以下の前記低融点金属が、Snと、Ag、Bi、Cu、In、およびZnからなる群より選択された1種以上とを組成とする第1の合金と、Snと、Agと、Bi、Cu、In、およびZnからなる群より選択された1種以上とを組成とする第2の合金とを有し、前記接続部材が含有する前記第1の金属の粒子が、Cuと、Ag、Bi、In、およびSnからなる群より選択された1種以上とを組成とする合金の粒子である、とすることができる。これは、融点が240℃以下である低融点金属として、2種の合金を用いている態様である。
以上を踏まえ、以下では本発明の実施形態を図面を参照しながら説明する。図1は、本発明の一実施形態に係る電子モジュールの構成を模式的に示す断面図である。図1に示すように、この電子モジュールは、絶縁層11、同12、同13、配線層(配線パターン)21、同22、同23、同24、層間接続体31、同33、スルーホール導電体32、表面実装型受動素子部品(電気/電子部品)41、同48、半導体部品(電気/電子部品)42、同47、接続部材51、同52、接続部材(はんだ)57、同58、はんだレジスト61、62を有する。絶縁層11、12、13は、それぞれ、絶縁樹脂とこれらを補強する補強材11a、12a、13a(それぞれ例えばガラスクロス)とからなる。
表面実装型受動素子部品41は、いわゆる表面実装型のチップ部品であり、ここでは例えばチップコンデンサである。その平面的な大きさは例えば0.6mm×0.3mmであり、両端に端子41aを有し、その下側が配線層21によるランドに対向位置している。部品41の端子41aと配線層21によるランドとは接続部材51(詳細を後述)により電気的、機械的に接続されている。なお、板上に実装の表面実装型受動素子部品48も、その端子48aを含め部品41と同様の部品であるが、その接続部材58は、その材料が接続部材51と異なり例えば通常のはんだである。
半導体部品42は、ウエハレベル・チップスケールパッケージによる半導体素子であり、半導体チップと、この半導体チップ上に形成されたグリッド状配列の表面実装用端子42aとを少なくとも備えている。表面実装用端子42aは、概略として、半導体チップがもともと有する端子パッドから再配線層を介して電気的に導通しつつその位置を再配置して設けられた端子である。このような再配置により、端子としての配置密度が半導体チップ上の端子パッドのそれより粗くなっている。
表面実装用端子42aにより、半導体部品42は、部品41と同様に、配線層21によるランドに、接続部材51と同様の材料である接続部材52を介して電気的、機械的に接続されている。なお、板上の半導体部品47もその端子構造(表面実装用端子47a)は部品42と同様であるが、その接続部材57は、その材料が接続部材52とは異なり例えば通常のはんだである。
表面実装型受動素子部品41および半導体部品42は、絶縁層11、12、13内に埋設されている。部品41、42を埋設する積層の位置関係として、配線パターン21の、部品41および部品42の接続された面と同じ面上に、絶縁層11が積層されており、さらに、絶縁層11上に配線層22を介して絶縁層12が積層され、絶縁層12上に配線層23を介して絶縁層13が積層されている。絶縁層13上には配線パターン24が設けられている。
絶縁層13の補強材13aは、図示の断面で、表面実装型受動素子部品41および半導体部品42に対向するように位置する。対して、絶縁層11の補強材11aおよび絶縁層12の補強材12aは、平面的に見て、表面実装型受動素子部品41および半導体部品42が埋設された領域には存在していない。これは、製造工程(積層工程)で補強材11a、12aが部品41、42にぶつかりダメージを与え信頼性を劣化させるのを防止するためである。
絶縁層13の補強材13aにより、この電子モジュールは、部品41、42に加わる曲げの力に対抗することができる構成であり、モジュールとして剛性が確保される。そして、このモジュールの基板部分は、厚み方向の寸法が、部品41、42の厚みと絶縁層13の厚みと和によりほぼ占められており、部品41、42を収容しつつ剛性も確保する最小限の構成になっている。これにより、実用的で薄型のモジュールになっている。加えて、内層の配線層22、23も有しており、これにより複雑な導電路を要するモジュールとしての対応が容易である。
また、絶縁層11、12が、平面図位置として、部品41、42が埋設された領域を除き補強材11a、12aを含有することで、補強材13aのみ有する場合よりモジュール板としてさらに高い剛性を得ている。これらの補強材11a、12aは、部品41、42の上に配された補強材13aとは異なる積層方向水準の位置に設けられたものであり、補強材11a、12a、13aは互いに干渉しない配置である。
絶縁層11、13には、それぞれ、製造過程においてガラスエポキシのプリプレグを使用することができる。絶縁層12も同様であるが、プリプレグの段階を経た積層板として供給されたものを使用してもよい(製造工程は後述する)。
次に、部品41、42を配線層21のランドに接続している接続部材51、52の微細な構造について図2を参照して説明する。図2は、図1に示した電子モジュールに使用の接続部材51、52の微細な構造を示す説明図である。接続部材51、52は、図2(a)右側に示すように、微細な構造として、硬化されている樹脂部503A中に導電部505の骨格構造が形成された構成になっている。この骨格構造はその抜けた部位に樹脂部503Aが満たされ、空隙をもたせないようにしている。
導電部505は、さらに詳細には、図2(b)に示す拡大断面図に描かれるように、粒子状の金属の種部502Aとこの表面を覆う複数元素系相512とを有し、種部502Aを覆う複数元素系相512が互いに連接することによって骨格構造になっている。なお、接続部材51、52中には、種部502A、複数元素系相512のほかに、残留はんだ501Aも多少存在する。複数元素系相512は、はんだ粒子501(図2(a)左側を参照)中の金属と種部502A中の金属とによる複数元素系相であり、はんだ粒子501の融点が240℃以下、複数元素系相512の融点が260℃以上となるように、はんだ粒子501および種部502A(種粒子502)の材料が選ばれている。
接続部材51、52の上記微細構造には、それらの形成過程が関連している。概略的には、図2(a)左側に示すように、接続部材51、52は、硬化される前の状態として、ペースト状の熱硬化性樹脂503中にはんだ粒子501と種粒子502とが分散された構成の組成物である(硬化前の接続部材51A、52A)。
このような、硬化前の接続部材51A、52Aを加熱してはんだ粒子501を溶解させると、その成分金属と種粒子502が含有する金属とが反応(または溶け合って。以下では「反応」で溶け合う場合も含むこととする)して種粒子502表面が複数元素系相512に変化し、はんだ粒子501の溶解に由来して複数元素系相512は互いに連接する。複数元素系相512が発現するとその融点ははんだ粒子501より高いので、上記加熱の温度程度では固相となって骨格構造になる。種粒子502のうちの未反応部(中心に近い部位)は、複数元素系相512の中に種となって残り種部502Aになる。はんだ粒子501のうち複数元素系相512への変化に残留した分は凝固して残留はんだ501Aになる。
上記で、はんだ粒子501を溶解させる温度では、熱硬化性樹脂503は硬化しないようにその材料が選択されている。これにより、はんだ粒子501が溶解したときのその移動を妨げずに溶解金属と種粒子502との反応が円滑になされるようになっている。このような溶解、反応を生じさせた後に、加熱温度を上げて熱硬化性樹脂503を熱硬化させる。この熱硬化により、上記形成された骨格構造を固定化するように骨格構造の隙間に樹脂部503Aが満たされた構造ができあがる。
このような構成の接続部材51、52は、粒子どうしの圧接ではなく、骨格構造がその導電性を担っており、低抵抗である。また、複数元素系相512は、上記のように、融点が260℃以上になっていて、この電子モジュールの面上に部品47や部品48を実装(以下「2次実装」ともいう)するときの加熱(例えば高くとも250℃)でも溶融せず、電子モジュールとして組み立てるときの実用性が高められている。
さらに、この導電性の骨格構造は硬化された樹脂部503A中に形成されており、骨格構造の隙間はこれにより埋められている。したがって、接続部材51、52中にボイドが発生するような信頼性劣化が抑制されている。残留はんだ501Aが、部品47、48を実装するときに再溶融することはあり得るが、複数元素系相512へ変化せずに残留した分なのでその量はわずかでありかつ樹脂部503A中に閉じ込められているので、信頼性に対する影響は最小限である。加えて、上記のような接続部材51、52を構成するのに、以下説明するように通常のはんだと類似の組成物を用いればよくコスト的にも有利である。
図3は、図2に示した接続部材51、52中の導電部505を得るための材料の例を示す表であり、図3(a)は、硬化前の接続部材51A、52A中に含まれるはんだ粒子(低融点金属粒子)501の材料例、図3(b)は、同じく種粒子502の材料例である。図3(a)に示すように、これらのはんだ粒子501では、その融点が240℃以下である。図3(b)に示す組成系または金属は、はんだ粒子501の組成金属のひとつと反応してできる複数元素系相が、融点として260℃以上を有する組成系または金属として選択されている。
図4は、図2に示した接続部材51、52を構成する複数元素系相512の材料例を示す表であり、図3に示した材料のはんだ粒子501と種粒子502とから形成され得る複数元素系相を示している。図4に示すように、これらの複数元素系相512は、その融点が260℃以上となっている。このような複数元素系相512により、2次実装時加熱(例えば高くとも250℃)で溶融は起こらず、電子モジュールとして組み立てるときの実用性が高められている。
なお、図4に示す複数元素系相におけるx、y(、z)の比は、単純な整数比になる場合(=化学量論的組成;金属間化合物)のみならず、これからはずれて例えばxの値を固定したときにy(、z)が幅をもった値で存在できる場合もある。例えば、合金(固溶体)相の場合や、組成比の異なる2種以上の金属間化合物が混晶している相の場合である。
図4に示す複数元素系相における金属間化合物としては、例えば、Cu6Sn5、CuZn3、Cu2Sb、Ag3Sn、FeSn2、AuSn2が知られている。Cu6Sn5は、これと組成元素が同じで組成比が異なる異種の金属間化合物であるCu3Snと混在して形成される場合があり、この混在比に応じて全体としてx、yの比は単純な整数比ではなくなる。Cu3Snは、Cu6Sn5と比較してもろい性質があるが、その融点が260℃以上であることに変わりはなく、また、導電部505の構造が樹脂部503Aにより補強される構造により、その悪影響を小さく留めることができる。
図1に戻り、電子モジュールとしてのほかの構造を補足する。配線層24は、電子モジュールとしての主面上の配線層であり、その上に各種の部品47、48が実装され得る。この実装で接続部材(はんだ)57、58が載るべき配線層24のランド部分を除いて主面上には、はんだ接続時に溶融したはんだをランド部分に留めかつその後は保護層として機能するはんだレジスト62が形成されている(厚さは例えば20μm程度)。ランド部分の表層には、耐腐食性の高いNi/Auのめっき層(不図示)を形成するようにしてもよい。
なお、裏面の配線層21についても、配線層24と同様に、部品を実装するように構成することができる。配線層21の側も配線層24の側と同様にはんだレジスト61の層が形成されている(厚さははんだレジスト62と同様)。
各配線層21〜24は、例えばそれぞれ厚さ18μmの金属(銅)箔を所定のパターンに加工したものである。配線層21〜24を隔てる絶縁層11〜13は、絶縁層11、13が例えばそれぞれ厚さ100μm、絶縁層12が例えば厚さ300μmで、それぞれ例えばガラスエポキシ樹脂からなるリジッドな素材である。絶縁層12は、埋設された部品41、42に相当する位置部分が開口部になっており、部品41、42を収容するための空間を提供する。絶縁層11、13は、埋設された部品41、42のための絶縁層12の上記開口部および絶縁層12のスルーホール導電体32内部の空間を埋めるように変形進入しており内部に空隙となる空間は存在しない。
配線層21と配線層22とは、それらのパターンの面の間に挟設されかつ絶縁層11を貫通する層間接続体31により導通し得る。同様に、配線層22と配線層23とは、絶縁層12を貫通して設けられたスルーホール導電体32により導通し得る。配線層23と配線層24とは、それらのパターンの面の間に挟設されかつ絶縁層13を貫通する層間接続体33より導通し得る。
層間接続体31、33は、それぞれ、導電性組成物のスクリーン印刷により形成される導電性バンプを由来とする柱状構造のものであり、その製造工程に依拠して軸方向(図1の図示で上下の積層方向、貫通方向)に径が変化している。その直径は、太い側で例えば200μmである。この層間接続体31、33は、小さな領域に高密度に設けることができ、電子モジュール設計のファイン化に資することができる。
次に、図1に示した電子モジュールの製造工程を図5ないし図7を参照して説明する。図5ないし図7は、それぞれ、図1に示した電子モジュールの製造過程の一部を模式的断面で示す工程図である。これらの図において図1中に示した構成要素と同一または同一相当のものには同一符号を付してある。
図5から説明する。図5は、図1中に示した各構成のうち埋設の部品41、42を中心とした部分の製造工程を示している。まず、図5(a)に示すように、配線パターン21とすべき厚さ例えば18μmの金属箔(電解銅箔)21Aを用意し、その面上所定の位置に例えばスクリーン印刷により、硬化前の接続部材51A、52Aを印刷、適用する。この適用には、スクリーン印刷に代えてディスペンサを使用することもできる。そして、部品41および半導体部品42を硬化前の接続部材51A、52Aを介して金属箔21A上にそれぞれ例えばマウンタで載置する。
硬化前の接続部材51A、52Aとして、ここでは、例えば硬化温度240℃の例えばエポキシ変性ポリイミド樹脂たる熱硬化性樹脂503(図2を参照)中に、例えば、はんだ粒子501(図2を参照)たるSn−3Ag−0.5Cu(融点217℃)の組成の粒子、および種粒子502(図2を参照)たるCu粒子が分散されたものを用いる。その組成比としては、例えば、CuをSn−3Ag−0.5Cuとの全体に対して30wt%、CuおよびSn−3Ag−0.5Cuを熱硬化性樹脂503との全体に対して75wt%とすることができる。なお、組成がSn−3Ag−0.5Cuのはんだ粒子501は、その粒径として例えば10μmないし20μm、Cuの種粒子502は、その粒径として例えば3μmないし40μmとすることができる。
硬化前の接続部材51A、52Aには、はんだ粒子501を加熱、溶解させたときにこれを活性化させる性質を有するフラックス成分を含ませておくことができる。このような接続部材51A、52Aによれば、フラックスを適用する工程を別途行う必要がなくなり、生産性を向上させる上で好ましい。
部品41、42が接続部材51A、52Aを介して金属箔21A上に載置されたら、次に、接続部材51A、52A中に分散されたはんだ粒子501を溶融させるべく加熱(例えば225℃程度)を行う。この加熱では、接続部材51A、52A中の熱硬化性樹脂503を硬化させることなく、はんだ粒子501が有する金属と種粒子502が有する金属との反応により複数元素系相512(図2を参照)を生成させる。この反応時には熱硬化性樹脂503が硬化していないので、樹脂503中で金属の移動は妨げられず反応は円滑に進む。複数元素系相512は225℃程度の温度で固相として発現する。この固相は、互いに連接して骨格構造を形成する。
複数元素系相512を生成させる加熱に続いて、次に多少加熱温度を上昇させ(例えば250℃)、熱硬化性樹脂503を熱硬化させる。これにより、上記骨格構造による導電部505(図2を参照)の隙間を埋めるような硬化された樹脂部503A(図2を参照)が形成され、結果、接続部材51、52になる(図5(b)中に示す)。以上により得られた素材を積層素材1とする。この積層素材1を用いる後の工程については図7で述べる。
次に、図6を参照して説明する。図6は、図1中に示した各構成のうち絶縁層11および同12を中心とした部分の製造工程を示している。まず、図6(a)に示すように、両面に例えば厚さ18μmの金属箔(電解銅箔)22A、23Aが積層された例えば厚さ300μmのFR−4の絶縁層12を用意し、その所定位置にスルーホール導電体を形成するための貫通孔73をあけ、かつ内蔵、埋設する部品41、42に相当する部分に部品用開口部71、72を形成する。
次に、無電解めっきおよび電解めっきを行い、図6(b)に示すように、貫通孔73の内壁にスルーホール導電体32を形成する。このとき開口部71、72の内壁にも導電体が形成される。さらに、図6(c)に示すように、金属箔22A、23Aを周知のフォトリソグラフィを利用して所定にパターニングして配線層22、23を形成する。配線層22、23のパターニング形成により、開口部71、72の内壁に形成された導電体も除去される。
次に、図6(d)に示すように、配線層22上の所定の位置に層間接続体31となる導電性バンプ(底面径例えば200μm、高さ例えば160μm)をペースト状導電性組成物のスクリーン印刷により形成する。続いて、図6(e)に示すように、絶縁層11とすべきFR−4のプリプレグ11A(公称厚さ例えば100μm)を配線層22側にプレス機を用い積層する。プリプレグ11Aには、絶縁層13と同様の、埋設する部品41、42に相当する部分の開口部をあらかじめ設けておく。
図6(e)の積層工程では、層間接続体31の頭部をプリプレグ11Aに貫通させる。なお、図6(e)における層間接続体31の頭部の破線は、この段階でその頭部を塑性変形させてつぶしておく場合と塑性変形させない場合の両者あり得ることを示す。以上により得られた素材を積層素材2とする。
以上の図6に示した工程は、以下のような手順とすることも可能である。図6(a)の段階では、貫通孔73のみ形成し内蔵部品用の開口部71、72を形成せずに続く図6(b)から図6(d)までの工程を行う。次に、図6(e)に相当する工程として、プリプレグ11A(開口のないもの)の積層を行う。そして、絶縁層12およびプリプレグ11Aに部品用の開口部を同時に形成する、という工程である。
次に、図7を参照して説明する。図7は、上記で得られた積層素材1、2などを積層する配置関係を示す図である。ここで、図示上側の積層素材3は、以下の工程で得られたものである。まず、配線パターン24とすべき厚さ例えば18μmの金属箔24A上の所定の位置に、層間接続体31を形成の場合と同様に、層間接続体33となる導電性バンプを印刷、形成する。そして、この導電性バンプが貫通するように金属箔24A上に、絶縁層13とすべきFR−4のプリプレグ13Aを積層する。これにより、図示する構成になる。図7における層間接続体33の頭部の破線は、この段階でその頭部を塑性変形させてつぶしておく場合と塑性変形させない場合の両者あり得ることを示す。
図7に示すような配置で各積層素材1、2、3を積層配置してプレス機で加圧、加熱する。これにより、プリプレグ11A、13Aが完全に硬化し全体が積層、一体化する。このとき、加熱により得られるプリプレグ11A、13Aの流動性により、部品41、42の周りの空間およびスルーホール導電体32内部の空間にはプリプレグ11A、13Aが変形進入し空隙は発生しない。また、金属箔21A、配線層23は、それぞれ、層間接続体31、33にそれぞれ電気的に接続される。
図7に示す積層工程の後、上下両面の金属箔21A、24Aを周知のフォトリソグラフィを利用して所定にパターニングし、さらにはんだレジスト61、62の層を形成する。これによりモジュールとしての基板が完成する。さらに、その面上に部品47、48を例えば通常のはんだリフロー工程で実装することにより、図1に示したような電子モジュールを得ることができる。すでに述べたように、このリフロー工程によって埋設の部品41、42を接続している接続部材51、52は溶融せず、信頼性劣化が防止されている。
なお、変形例として、中間の絶縁層12に設けられたスルーホール導電体32については、層間接続体31や同33と同様なものとする構成もあり得る。また、層間接続体31、33について、説明した導電性組成物印刷による導電性バンプを由来とするもの以外に、例えば、金属板エッチングにより形成された金属バンプ、導電性組成物充填による接続体、めっきにより形成された導体バンプなどを由来とするものなどのうちから適宜選択、採用することもできる。
また、補強材11a、12a、13aとしてガラスクロスを含有する絶縁層11、12、13の場合を説明したが、この補強材に代えてアラミドクロスやガラス不織布、アラミド不織布などの補強材を含有する絶縁層とすることもできる。
以上、実施形態を説明したが、上記では、硬化前の接続部材51A、52Aとして、例えば、硬化温度240℃の例えばエポキシ変性ポリイミド樹脂たる熱硬化性樹脂503(図2を参照)中に、例えば、はんだ粒子501(図2を参照)たるSn−3Ag−0.5Cu(融点217℃)の組成の粒子、および種粒子502(図2を参照)たるCu粒子が分散された組成物を用いた。ここで、部品41、42の、金属箔21Aへの接続工程における温度プロファイルの設定をよりラフ(非高精度)にするには、はんだ粒子501の融点と熱硬化性樹脂503の硬化温度とをより離すように、接続部材51A、52Aの材料として次のようなものを採用することができる。
すなわち、接続部材51A、52Aのはんだ粒子501として、Snと、Ag、Bi、Cu、In、およびZnからなる群より選択された1種以上とを含む第1の合金の粒子と、Snと、Agと、Bi、Cu、In、およびZnからなる群より選択された1種以上とを含む第2の合金の粒子とが備えられたものを用いる。種粒子502としては、Cuと、Ag、Bi、In、およびSnからなる群より選択された1種以上とを含む合金の粒子とする。熱硬化性樹脂503には、上記説明の製造工程と同じ硬化温度240℃のエポキシ変性ポリイミド樹脂を用いる。上記3種の合金は、熱硬化性樹脂503との全体に対して80wt%の含有率とする。
以上の、合金の粒子と熱硬化性樹脂との混合体についてDSC(示差走査熱量測定)による融点観察を行うと、100℃ないし200℃の間に複数の融点があり、さらに、300℃ないし500℃の間にも複数の融点があることがわかる。よって、この合金粒子分散の熱硬化性樹脂を用いれば、100℃ないし200℃の間に存在する融点により、一般的に言われるはんだづけが可能である。
また、100℃ないし200℃に存在する融点での融解を生じしめたあとに生じる凝固組成物について同様にDSCによる融点観察を行うと、100℃ないし200℃の間に存在する融点はほとんど消失し(∵融点の高い複数元素系相に変化している)、300℃以上に融点が残るのみとなることがわかる。この性質から、2次実装での加熱(例えば250℃)においてはこの組成物はほぼ溶融はしないことになるので、上記の合金粒子分散の熱硬化性樹脂は、図5に示した接続部材51A、52Aと同様に利用できることがわかる。ここで、第1、第2の合金粒子の融点と熱硬化性樹脂503の硬化温度とは、図5での説明の場合より離れているので、部品41、42の、金属箔21A上へ接続工程における温度プロファイルの設定はよりラフで済む。
次に、別の例として、部品41、42の、金属箔21A上へ接続工程の温度をより低温化するには、はんだ粒子501の融点をより低下させ、かつ、熱硬化性樹脂503の硬化温度もより低下させるように、接続部材51A、52Aの材料として次のようなものを採用することができる。
すなわち、接続部材51A、52Aとして、はんだ粒子501がSn−58Bi(融点138℃)の粒子であり、種粒子502がSnのめっきされたCu粒子およびNi粒子であり、熱硬化性樹脂503が硬化温度180℃のエポキシ樹脂であるような、金属粒子分散の熱硬化性樹脂を用いる。これによれば、第1段階の加熱を例えば150℃で行い、次に第2段階の加熱としてこれを例えば185℃で行うことができる。
実際にこのような加熱を行って部品41、42を金属箔21A上に接続しその後の工程を経て得られたモジュールに対して、2次実装を想定して260℃の加熱を3回行って信頼性試験を実施したところ、再溶融による問題は生じないことがわかった。この場合の接続部材51、52を観察したところ、CuSn合金(融点約630℃)およびNiBi合金(融点約469℃)が生じていることがわかった。
次に、本発明の別の実施形態に係る電子モジュールについて図8を参照して説明する。図8は、別の実施形態に係る電子モジュールの構成を模式的に示す断面図である。同図において、すでに説明した図中に登場の構成要素と同一または同一相当のものには同一符号を付してある。その部分については加えるべき事項がない限り説明を省略する。
この実施形態の電子モジュールは、図1に示したものに比較して、配線パターン21に代えて配線パターン210を有しており、この配線パターン210が、製造工程に由来して絶縁層11の側に落ち込み位置している点が異なる。そのほかの点では両者は同様である。
図9は、図8に示した電子モジュールの製造過程の一部を模式的断面で示す工程図であり、すでに説明した図7に示した段階に相当の積層工程を示している。図9において、すでに説明した図中に登場の構成要素と同一または同一相当のものには同一符号を付してある。図9中に示した積層素材2、3は、部品41、42を埋設するための絶縁板に相当している。
図9に示すように、この積層工程では、積層素材1に代えて積層素材1Aが用いられる。積層素材1Aは、ダミー基板80上に形成された配線パターン210上に、接続部材51、52により部品41、42が接続された状態のものである。ダミー基板80は、例えば、材質としてステンレス(SUS)やアルミニウムであり、この積層工程において耐熱性の硬質板として機能し変形(塑性変形)はしない。これにより、積層工程での加熱、加圧により、ダミー基板80上に形成された配線パターン210の凸形状がプリプレグ11Aの側に落ち込むことになる。よって、図8に示したように、配線パターン210は、絶縁層11の側に落ち込み位置する。
積層素材1Aを得るにはいくつか方法があるが、例えば、以下のようにする。まず、ダミー基板(SUS板、アルミニウム板)80上に配線層210とすべき金属箔(銅箔)が積層された積層体を用意し、この積層体の金属箔(のみ)に対して周知のフォトリソグラフィ工程を適用しこの金属箔を配線パターン210に加工する。または、ダミー基板(SUS板、アルミニウム板)80を用意し、これを給電路として、その表面上に電解めっきによりアディティブに配線パターン210を形成することもできる。そして、ダミー基板80上の形成された配線パターン210上に、硬化前の接続部材51、52の印刷、適用し、さらに、部品41、42をすでに説明したようにして配線パターン210上に接続する。
積層素材1Aを得る変形例としては、次のような方法もある。ダミー基板80として銅層上にごく薄いエッチングストッパ層(例えばニッケルの層)が積層され、さらにその上に配線層210とすべき金属箔(銅箔)が積層された積層体を用意し、この積層体の金属箔(のみ)に対して周知のフォトリソグラフィ工程を適用しこの金属箔を配線パターン210に加工する。そして、上記と同様に、ダミー基板80上の形成された配線パターン210上に、硬化前の接続部材51、52の印刷、適用し、さらに、部品41、42をすでに説明したようにして配線パターン210上に接続する。
図9に示す積層素材1A、2、3の積層工程のあとに得られた積層体から、ダミー基板80は取り除かれる。これには、例えば、ダミー基板80のみを溶かし、配線パターン210は溶かさないエッチャントを用いエッチング除去すればよい。そして、上面の金属箔24Aを周知のフォトリソグラフィを利用して所定にパターニングする。その後はすでに説明したように工程を行い、図8に示したような電子モジュールを得ることができる。
なお、ダミー基板80として銅層上にエッチングストッパ層が積層された板を用いた場合(上記変形例の場合)には、このダミー基板80を除去するために2段階のエッチングを行う。まず、銅のみを溶かしエッチングストッパ層は溶かさないエッチャントを用いてエッチングを行い、続いて、エッチングストッパ層のみを溶かし銅(すなわち配線パターン210)を溶かさないエッチャントを用いエッチングを行う。
この実施形態は、接続部材51A、52Aを用いる部品41、42の接続工程が、金属箔21A上ではなく、配線パターン210上に対してなされる。このとき、配線パターン210はダミー基板80を伴って剛性を有する部材となっているので扱いやすく、接続工程がより容易になされ得るという利点がある。
次に、本発明のさらに別の実施形態に係る電子モジュールについて図10を参照して説明する。図10は、さらに別の実施形態に係る電子モジュールの構成を模式的に示す断面図である。同図において、すでに説明した図中に登場の構成要素と同一または同一相当のものには同一符号を付してある。その部分については加えるべき事項がない限り説明を省略する。
この実施形態の電子モジュールは、図1、図8に示した電子モジュールよりさらに薄型化を図った態様である。概略すると、図1、図8に示した電子モジュールにおける絶縁層12、配線層22、23を省略した構成であり、これに伴い、層間接続部も、層間接続体31、33、スルーホール導電体32から、層間接続体330に代わられている。さらに、埋設の部品41、42として、より薄型の部品41A、42Aを使用している。
この実施形態は、別の見方をすると、埋設の部品41A、42Aとしてその厚さが薄いものを利用し、この薄い部品41A、42Aより多少背の高い寸法の層間接続体330で、部品41A、42Aの上下にある配線パターン210、24間を電気的導通させた構成のものと言える。換言すると、上下方向に小さな間隔をもって重畳的に位置する配線パターン210、24の間に部品41A、42Aを位置させており、部品41A、42Aを埋設も基板として厚みが薄いことを示している。
表面実装型受動素子部品41Aとしては、例えば、厚さ0.15mmの0603サイズまたは0402サイズのチップ抵抗などを使用することができる。また、半導体部品42Aとしては、例えば、バックグラインドの手法により例えば数十μmの厚さに薄片化された半導体チップを有する部品を使用することができる。
図11は、図10に示した電子モジュールの製造過程の一部を模式的断面で示す工程図であり、すでに説明した図7に示した段階に相当の積層工程を示している。図11において、すでに説明した図中に登場の構成要素と同一または同一相当のものには同一符号を付してある。図11中に示した積層素材4は、部品41A、42Aを埋設するための絶縁板に相当している。
図11中に示す下側の積層素材1Bについては、図9中に示した積層素材1Aについての工程と同様の工程により得ることができる。なお、積層素材1Bは、図7中に示した積層素材1のように、ダミー基板80がない金属箔21A上に部品41、42が接続されたものに代えることもできる。図11中に示す上側の積層素材4については、以下のようにして得ることができる。
まず、配線パターン24とすべき厚さ例えば18μmの金属箔(電解銅箔)24Aを用意し、その面上所定の位置に例えばスクリーン印刷により、層間接続体330となるペースト状の導電性組成物をほぼ円錐形のバンプ状(底面径例えば220μm、高さ例えば260μm)に形成する。
次に、金属箔24A上に厚さ例えば公称40μm(〜50μm)のFR−4のプリプレグ13Aおよび公称150μm(〜160μm)のFR−4のプリプレグ11Aを積層して層間接続体330を貫通させ、その頭部が露出するようにする。露出に際してあるいはその後その先端を塑性変形でつぶしてもよい(いずれにしても層間接続体330は、積層方向に一致する軸を有しその軸方向に径が変化している柱状構造になる。)。
なお、プリプレグ13A、11Aの積層前に、プリプレグ11Aについては、部品41、42を収めるべき大きさの部品用開口部11oをあらかじめ形成しておく。部品用開口部11oの形成によりプリプレグ11Aが有する補強材11aも、その部分で除去される。補強材11aと部品41、42との当たりを避けるためである。
そして、図11に示す配置で、積層素材1B、4をプレス機で加圧・加熱する。これにより、プリプレグ11A、13Aが完全に硬化し全体が積層、一体化する。このとき、加熱により得られるプリプレグ11A、13Aの流動性により、部品41、42周りの空間にはプリプレグ11A、13Aが変形または進入し空隙は発生しない。また、層間接続体330は、配線パターン210に電気的に接続される。この後の工程については、図9での説明と同様である。
この実施形態の電子モジュールは、配線層が多層ではないが、その基板部分は、埋設の部品41、42を伴っているにもかかわらず、再溶融しない導電部材51、52が用いられ、加えて補強材13a、11aで強度が補強されることで、実用的で究極とも言える薄さに仕上がっている。
次に、本発明のさらに別の実施形態に係る電子モジュールについて図12を参照して説明する。図12は、さらに別の実施形態に係る電子モジュールの構成を模式的に示す断面図である。同図において、すでに説明した図中に登場の構成要素と同一または同一相当のものには同一符号を付してある。その部分については加えるべき事項がない限り説明を省略する。
この実施形態の電子モジュールは、図10に示した電子モジュールにおける配線パターン24に代えて、絶縁層13の側に落ち込み位置している配線パターン240を有した構成である。そのほかの点では両者は同様である。
図13は、図12に示した電子モジュールの製造過程の一部を模式的断面で示す工程図であり、すでに説明した図7に示した段階に相当の積層工程を示している。図13において、すでに説明した図中に登場の構成要素と同一または同一相当のものには同一符号を付してある。図13中に示した積層素材4A中のプリプレグ13A、11Aは、部品41A、42Aを埋設するための絶縁板に相当している。
図13中に示す上側の積層素材4Aは、下側の積層素材1Bを得る途中までの工程を経て得ることができる。すなわち、積層素材1Bにおけるダミー基板80上に配線パターン210を形成するのと同様の要領で、ダミー基板81上に配線パターン240をまず形成する。そのあとは、図11で説明したように、層間接続体330の形成、プリプレグ13A、11Aの積層を行えばよい。図13に示す積層工程の後、ダミー基板80、81は、すでに説明したようにして取り除かれる。
この実施形態は、層間接続体330の形成が、金属箔24A上ではなく、配線パターン240上に対してなされる。このとき、配線パターン240はダミー基板81を伴って剛性を有する部材となっているので扱いやすく、層間接続体330の形成もより容易になるという利点がある。図8、図9に示した実施形態に対しても同様の適用が可能である。