JP2011057504A - 強化ガラス - Google Patents

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Abstract

【課題】十分な耐失透性を有し、且つイオン交換性能に優れたガラスを創案することにより、機械的強度が高く、且つ表面品位が良好な強化ガラスを作製すること。
【解決手段】本発明の強化ガラスは、表面に圧縮応力層を有する強化ガラスにおいて、ガラス組成として、質量%で、SiO 45〜75%、Al 12〜24%、NaO 11〜25%、P 0.1〜10%を含有することを特徴とする。
【選択図】なし

Description

本発明は、強化ガラスに関し、特に携帯電話、デジタルカメラ、PDA(携帯端末)、太陽電池のカバーガラス、或いはタッチパネルディスプレイの基板に好適な強化ガラスに関する。
携帯電話、デジタルカメラ、PDA、太陽電池、タッチパネルディスプレイ等のデバイスは、広く使用されており、今後ますます普及する傾向にある。また、これらのデバイスには、ディスプレイ等の保護部材として、イオン交換等で強化処理した強化ガラスが用いられている。強化ガラスは、樹脂板に比べて、機械的強度が高い特徴を有している(特許文献1、非特許文献1参照)。
近年、強化ガラスの肉厚は、デバイスの軽量化を図るため、年々小さくなっている。しかし、薄肉の強化ガラスは、破損しやすいため、更なる機械的強度の向上が求められている。
特開2006−83045号公報
泉谷徹朗等、「新しいガラスとその物性」、初版、株式会社経営システム研究所、1984年8月20日、p.451−498
非特許文献1には、ガラス組成中のAlの含有量を増加させると、イオン交換性能が向上し、強化ガラスの機械的強度が高まることが記載されている。
しかし、ガラス組成中のAl含有量を増加させると、耐失透性が低下するため、成形時にガラスが失透しやすくなり、ガラスの生産効率が低下しやすくなる。また、耐失透性が低いと、ガラスの成形方法が限定されて、強化ガラスの機械的強度を低下させずに、表面品位を高めることが困難になる。具体的には、耐失透性が低いと、オーバーフローダウンドロー法で成形し難くなるため、高度な耐失透性が要求されないロールアウト法等で成形しなければならない。この場合、表面品位が良好なガラスを作製するためには、成形後に研磨処理を行う必要がある。研磨処理を行うと、表面に微小な欠陥が不可避的に発生し、初期の機械的強度を維持し難くなる。
このような事情から、強化ガラスの機械的強度と表面品位を高いレベルで両立させることは困難であった。
そこで、本発明は、十分な耐失透性を有し、且つイオン交換性能に優れたガラスを創案することにより、機械的強度が高く、且つ表面品位が良好な強化ガラスを作製することを技術的課題とする。
本発明者は、種々の検討を行った結果、Alを多量に含有するSiO−Al−NaO系ガラスのガラス組成中にPを所定量添加することにより、耐失透性を低下させずに、イオン交換性能を向上できることを見出し、本発明を提案するに至った。すなわち、(1)本発明の強化ガラスは、表面に圧縮応力層を有する強化ガラスにおいて、ガラス組成として、質量%で、SiO 45〜75%、Al 12〜24%、NaO 11〜25%、P 0.1〜10%を含有することを特徴とする。
上記のようにガラス組成を規制すれば、耐失透性とイオン交換性能を高いレベルで両立することができ、結果として、強化ガラスの機械的強度と表面品位を同時に高めることができる。特に、Pの含有量を0.1質量%以上とすれば、Alに起因する耐失透性の低下を抑制することができる。また、上記のようにガラス組成を規制すれば、短時間で圧縮応力層の圧縮応力値を高め、且つ圧縮応力層の厚みを大きくすることができ、結果として、強化ガラスの生産効率を飛躍的に高めることができる。
(2)本発明の強化ガラスは、表面に圧縮応力層を有する強化ガラスにおいて、ガラス組成として、質量%でSiO 45〜70%、Al 12〜24%、LiO 0〜10%、NaO 11〜20%、KO 0〜10%、MgO 0〜8%、CaO 0〜8%、MgO+CaO(MgOとCaOの合量) 0〜9%、SrO+BaO(SrOとBaOの合量) 0〜5%、TiO 0〜4%、P 0.1〜10%を含有することを特徴とする。
(3)本発明の強化ガラスは、表面に圧縮応力層を有する強化ガラスにおいて、ガラス組成として、質量%でSiO 45〜70%、Al 15〜24%、B 0〜3%、LiO 0〜8%、NaO 11〜20%、KO 1〜9%、MgO 0〜6%、CaO 0〜8%、MgO+CaO 0〜8%、SrO+BaO 0〜3%、TiO 0〜1%、P 1〜9%を含有することを特徴とする。
(4)本発明の強化ガラスは、圧縮応力層の圧縮応力値が300MPa以上であり、且つ圧縮応力層の厚みが30μm以上であることを特徴とする。ここで、「圧縮応力層の圧縮応力値」および「圧縮応力層の厚み」は、表面応力計(例えば、株式会社東芝製FSM−6000)により観察される干渉縞の本数とその間隔から算出することができる。
(5)本発明の強化ガラスは、化学的に強化されてなることを特徴とする。ここで、「化学的に強化する」は、歪点以下の温度におけるイオン交換反応により、表面にイオン半径の大きいアルカリイオンを導入し、表面に圧縮応力層を形成することを意味する。
(6)本発明の強化ガラスは、密度が2.6g/cm以下であることを特徴とする。ここで、「密度」とは、周知のアルキメデス法で測定した値を指す。
(7)本発明の強化ガラスは、液相温度が1180℃以下であることを特徴とする。ここで、「液相温度」とは、標準篩30メッシュ(篩目開き500μm)を通過し、50メッシュ(篩目開き300μm)に残るガラス粉末を白金ボートに入れて、温度勾配炉中で24時間保持した後、結晶が析出する最低温度(初相の析出温度)を指す。
(8)本発明の強化ガラスは、液相粘度が104.0dPa・s以上であることを特徴とする。ここで、「液相粘度」とは、液相温度におけるガラスの粘度を白金球引き上げ法で測定した値を指す。なお、液相粘度が高く、液相温度が低い程、耐失透性や成形性が高まる。
(9)本発明の強化ガラスは、平板形状を有することを特徴とする。
(10)本発明の強化ガラスは、オーバーフローダウンドロー法で成形されてなることを特徴とする。ここで、「オーバーフローダウンドロー法」は、フュージョン法とも称されており、溶融ガラスを耐熱性の樋状構造物の両側から溢れさせて、溢れた溶融ガラスを樋状構造物の下端で合流させながら、下方に延伸して平板形状のガラスを成形する方法である。
(11)本発明の強化ガラスは、未研磨の表面を有することを特徴とする。ここで「未研磨の表面」とは、強化ガラスの表面(端面を除く)が研磨されていないことを意味し、言い換えれば強化ガラスの表面が火造り面であることを意味する。このようにすれば、強化ガラスの生産コストが低廉化するとともに、強化ガラスの表面品位を高めることができる。なお、強化ガラスが平板形状の場合、端面から破壊に至る不具合を防止するため、強化ガラスの端面に対し、面取り等の研磨処理やエッチング処理を行ってもよい。
(12)本発明の強化ガラスは、タッチパネルディスプレイの基板に用いることを特徴とする。
(13)本発明の強化ガラスは、携帯電話のカバーガラスに用いることを特徴とする。
(14)本発明の強化ガラスは、太陽電池のカバーガラスに用いること特徴とする。
(15)本発明の強化ガラスは、ディスプレイの保護部材に用いることを特徴とする。
(16)本発明のガラスは、ガラス組成として、質量%で、SiO 45〜75%、Al 12〜24%、NaO 11〜25%、P 0.1〜10%を含有することを特徴とする。
(17)本発明のガラスは、ガラス組成として、質量%で、SiO 45〜70%、Al 15〜24%、B 0〜3%、LiO 0〜3%、NaO 13〜20%、KO 2〜9%、MgO+CaO 0〜6%、SrO+BaO 0〜1%、TiO 0〜1%、P 1〜9%を含有することを特徴とする。
強化方法は、大まかに物理的に強化する方法と化学的に強化する方法の二つに大別することができる。本発明の強化ガラスは、化学的に強化されてなることが好ましい。このようにすれば、ガラスの肉厚が小さくても、良好に強化処理を行うことができ、所望の機械的強度を得ることができる。さらに、強化処理後に強化ガラスを切断しても、物理的に強化する方法のように、強化ガラスが容易に破壊することがない。イオン交換条件は、ガラスの粘度特性、用途、板厚、内部の引っ張り応力等を総合的に考慮して、最適な条件を選択すればよい。特に、KNO溶融塩中のKイオンとガラス中のNa成分をイオン交換すると、表面に圧縮応力層を短時間で形成することができる。
本発明の強化ガラスにおいて、ガラス組成を上記のように限定した理由を以下に説明する。なお、以下の%表示は、特に断りがある場合を除き、質量%を指す。
SiOは、ガラスのネットワークを形成する成分であり、その含有量は45〜70%であり、45〜70%、45〜65%、45〜63%、48〜61%、特に48〜55%が好ましい。SiOの含有量が多過ぎると、ガラスの溶融、成形が難しくなるとともに、熱膨張係数が低下し過ぎて、周辺材料の熱膨張係数に整合し難くなる。一方、SiOの含有量が少な過ぎると、ガラス化し難くなり、また熱膨張係数が高くなり、耐熱衝撃性が低下しやすくなる。
Alは、イオン交換性能を高める成分であり、また歪点やヤング率を高める効果もあり、その含有量は12〜24%である。Alの含有量が多過ぎると、ガラスに失透結晶が析出しやすくなって、オーバーフローダウンドロー法等による成形が困難になったり、熱膨張係数が低下し過ぎて、周辺材料の熱膨張係数に整合し難くなったり、高温粘度が高くなり過ぎて、ガラスを溶融し難くなる。一方、Alの含有量が少な過ぎると、イオン交換性能を十分に発揮できないおそれが生じる。上記観点から、Alの好適な上限範囲は23%以下、22%以下、21.5%以下、特に21%以下であり、好適な下限範囲は13%以上、15%以上、17%以上、特に18%以上である。
は、イオン交換性能を高める成分であり、特に圧縮応力層の厚みを大きくする効果が大きい成分であり、その含有量は0.1〜10%である。また、イオン交換性能を高めるためにAl含有量を多くすると、耐失透性が低下しやすくなるが、Pを添加すれば、そのような場合であっても、十分な耐失透性を得ることができる。すなわち、AlとPを併存させることによって、耐失透性を維持しつつ、イオン交換性能を顕著に高めることができる。しかし、Pの含有量が多過ぎると、ガラスが分相したり、耐水性が低下しやすくなるとともに、ガラス組成の成分バランスが損なわれて、逆に耐失透性が低下しやすくなる。Pの好適な上限範囲は9%以下、8%以下、7%以下、特に6%以下であり、好適な下限範囲は0.5%以上、1%以上、2%以上、3%以上、特に4%以上である。
NaOは、イオン交換成分であるとともに、高温粘度を低下させて、溶融性や成形性を高める成分であり、また耐失透性を高める成分でもある。NaOの含有量は11〜25%であり、11〜22%、12〜20%、13〜19%、特に14〜18%が好ましい。NaOの含有量が多過ぎると、熱膨張係数が高くなり過ぎて、耐熱衝撃性が低下したり、周辺材料の熱膨張係数に整合し難くなる。また、NaOの含有量が多過ぎると、歪点が低下し過ぎたり、ガラス組成の成分バランスが損なわれて、逆に耐失透性が低下する傾向がある。一方、NaOの含有量が少な過ぎると、溶融性が低下したり、熱膨張係数が低下し過ぎたり、イオン交換性能が低下しやすくなる。
上記成分のみでガラス組成を構成してもよいが、以下のように、他の成分をガラス組成中に添加することができる。
LiOは、イオン交換成分であるとともに、高温粘度を低下させて、溶融性や成形性を高める成分であり、またヤング率を高める成分であり、更にはアルカリ金属酸化物RO(RはLi、Na、Kから選ばれる1種以上)の中では圧縮応力層の圧縮応力値を高める効果が高い成分である。しかし、LiOの含有量が多過ぎると、液相粘度が低下して、ガラスが失透しやすくなったり、熱膨張係数が高くなり過ぎて、耐熱衝撃性が低下したり、周辺材料の熱膨張係数に整合し難くなる。さらに、LiOの含有量が多過ぎると、低温粘性が低下し過ぎて、応力緩和が生じやすくなり、逆に圧縮応力値が低下する場合がある。したがって、LiOの含有量は0〜10%、0〜8%、0〜5%、0〜4%未満、0〜3%未満、特に0〜2%が好ましく、実質的に含まない、つまり0.01%未満が最も好ましい。
Oは、イオン交換を促進する効果があり、ROの中では圧縮応力層の厚みを大きくする効果が高い。また、KOは、高温粘度を低下させて、溶融性や成形性を高める成分である。さらに、KOは、耐失透性を高める成分でもある。KOの含有量は0〜10%が好ましい。KOの含有量が多過ぎると、熱膨張係数が高くなり、耐熱衝撃性が低下したり、周辺材料の熱膨張係数に整合し難くなる。さらに、KOの含有量が多過ぎると、歪点が低下し過ぎたり、ガラス組成の成分バランスが損なわれて、逆に耐失透性が低下する傾向がある。KOの好適な上限範囲は9%以下、8%以下、7%以下、特に6%以下であり、好適な下限範囲は0.5%以上、1%以上、2%以上、3%以上、特に4%以上である。
Oの合量が多過ぎると、耐失透性が低下しやすくなるとともに、熱膨張係数が高くなり過ぎて、耐熱衝撃性が低下したり、周辺材料の熱膨張係数に整合し難くなる。また、ROの合量が多過ぎると、歪点が低下し過ぎて、高い圧縮応力値が得られない場合がある。さらに、ROの合量が多過ぎると、液相温度付近の粘性が低下し、液相粘度を高め難くなる場合がある。このため、ROの合量は30%以下、25%以下、特に22%以下が好ましい。一方、ROの合量が少な過ぎると、イオン交換性能や溶融性が低下する場合がある。このため、ROの合量は8%以上、10%以上、13%以上、特に15%以上が好ましい。
モル比(NaO+KO)/Alの値を所定範囲(好ましくは0.5〜2.5、0.7〜2、1〜1.8、1.2〜1.6、特に1.3〜1.6)に規制すれば、耐失透性をより効果的に高めることができる。モル比(NaO+KO)/Alの値が2.5より大きいと、低温粘性が低下し過ぎて、イオン交換性能が低下したり、ヤング率が低下したり、熱膨張係数が高くなり過ぎて、耐熱衝撃性が低下したり、ガラス組成の成分バランスが損なわれて、逆にガラスが失透しやすくなる場合がある。一方、モル比(NaO+KO)/Alの値が0.7より小さいと、溶融性や耐失透性が低下しやすくなる。
モル比KO/NaOの値を所定範囲に規制すれば、圧縮応力層の圧縮応力値と厚みを調整することが可能になる。モル比KO/NaOの値は0〜1、0〜0.8、0.05〜0.7、0.1〜0.5、0.15〜0.4、0.15〜0.3、特に0.15〜0.25が好ましい。このようにすれば、短時間で圧縮応力層の圧縮応力値を高く、また圧縮応力層の厚みを大きくすることができる。なお、モル比KO/NaOの値が大き過ぎると、耐失透性が低下しやすくなる。
アルカリ土類金属酸化物R’O(R’はMg、Ca、Sr、Baから選ばれる1種以上)は、種々の目的(詳細は各成分の説明の欄に記載)で添加可能な成分である。しかし、R’Oの合量が多くなると、密度や熱膨張係数が高くなるとともに、イオン交換性能や耐失透性が低下する傾向がある。したがって、R’Oの合量は15%以下、9%以下、6%以下、特に5%以下が好ましい。
MgOは、高温粘度を低下させて、溶融性や成形性を高めたり、歪点やヤング率を高める成分であり、R’Oの中では、イオン交換性能を高める効果が大きい成分である。しかし、MgOの含有量が多くなると、密度や熱膨張係数が高くなったり、耐失透性が低下しやすくなる。したがって、MgOの含有量は10%以下、8%以下、6%以下、5%以下、特に4%以下が好ましい。
CaOは、高温粘度を低下させて、溶融性や成形性を高めたり、歪点やヤング率を高める成分であり、R’Oの中では、イオン交換性能を向上させる効果が大きい成分である。しかし、CaOの含有量が多くなると、密度や熱膨張係数が高くなったり、耐失透性やイオン交換性能が低下する場合があったり、ガラスが分相しやすくなる。したがって、CaOの含有量は10%以下、8%以下、7%以下、6%以下、5%以下、4%以下、2%以下、特に1%以下が好ましい。
MgOとCaOは、R’Oの中ではイオン交換反応を促進する作用があり、且つ高温粘度を低下させる効果を有する。このため、MgO+CaOの含有量を0〜10%、0〜9%、0〜8%、0〜7%、0〜6%、特に0.1〜5%に規制すれば、イオン交換性能を維持しつつ、高温粘度を低下させやすくなる。但し、MgO+CaOの含有量が多過ぎると、密度や熱膨張係数が高くなったり、耐失透性が低下する場合がある。
SrOとBaOは、高温粘度を低下させて、溶融性や成形性を高めたり、歪点やヤング率を高める成分であり、その含有量は各々0〜5%が好ましい。SrOやBaOの含有量が多くなると、イオン交換性能が低下する傾向があり、また密度や熱膨張係数が高くなったり、耐失透性が低下しやすくなる。SrOの含有量は3%以下、2%以下、1%以下、0.5%以下、0.2%以下、特に0.1%以下が好ましい。BaOの含有量は3%以下、2%以下、1%以下、0.8%以下、0.5%以下、0.2%以下、特に0.1%以下が好ましい。
上記の通り、SrOとBaOの含有量が多くなると、イオン交換性能が低下する傾向があり、結果として、強化ガラスの機械的強度が低下しやすくなる。そこで、SrO+BaOの含有量を所定量以下に制限すれば、イオン交換性能をより効果的に高めることができる。よって、SrO+BaOの含有量は5%以下、3%以下、2.5%以下、2%以下、1%以下、0.2%以下、特に0.1%以下が好ましい。
R’Oの合量をROの合量で除した値が大きくなると、耐失透性が低下する傾向が現れる。このため、質量比R’O/ROの値は0.5以下、0.4以下、特に0.3以下が好ましい。
ZnOは、イオン交換性能を高める成分であり、特に圧縮応力層の圧縮応力値を高くする効果が大きく、また低温粘性を低下させずに高温粘度を低下させる効果を有する成分である。しかし、本発明に係るガラス組成系において、ZnOの含有量が多くなると、ガラスが分相したり、耐失透性が低下したり、密度が高くなりやすい。このため、ZnOの含有量は8%以下、6%以下、4%以下、2%以下、1%以下、0.5%以下、0.1%以下、特に0.01%以下が好ましい。
SnOは、イオン交換性能を高める効果があり、特に圧縮応力層の圧縮応力値を高くする効果があり、その含有量は0〜3%、0.01〜3%、0.01〜1.5%、特に0.1〜1%が好ましい。但し、SnOの含有量が多くなると、SnOに起因する失透が発生したり、ガラスが着色しやすくなる傾向がある。
ZrOは、イオン交換性能を顕著に高めるとともに、ヤング率や歪点を高め、高温粘度を低下させる効果がある。しかし、ZrOの含有量が多くなると、耐失透性が低下するおそれがある。このため、ZrOの含有量は0〜10%、0〜5%、0〜3%、0〜1%、0〜0.4%、特に0〜0.1%が好ましい。
は、液相温度、高温粘度および密度を低下させる効果を有するとともに、イオン交換性能を高める効果、特に圧縮応力層の圧縮応力値を高くする効果を有する。しかし、Bの含有量が多過ぎると、イオン交換によって表面にヤケが発生したり、耐水性が低下したり、液相粘度が低下するおそれがある。また、Bの含有量が多過ぎると、圧縮応力層の厚みが小さくなる傾向がある。このため、Bの含有量は0〜6%、0〜4%、0〜3%、0〜2%、特に0〜1%が好ましい。
TiOは、イオン交換性能を高める効果があり、また高温粘度を低下させる効果がある。しかし、TiOの含有量が多過ぎると、ガラスが着色したり、耐失透性が低下したり、密度が高くなりやすい。特に、TiOの含有量が多過ぎると、溶融雰囲気や原料により透過率が変化しやすくなるため、ディスプレイのカバーガラスとして使用する場合、紫外線硬化樹脂等の光を利用してカバーガラスをデバイスに接着する工程において、紫外線の照射条件が変動しやすくなり、結果として、ディスプレイの生産効率が低下しやすくなる。したがって、TiOの含有量は4%以下、3%以下、2%以下、1%以下、0.5%以下、0.1%以下、特に0.01以下が好ましい。
清澄剤として、As、Sb、CeO、F、SO、Clの群から選択された一種または二種以上を0.001〜3%添加してもよい。ただし、AsとSbは、環境に対する配慮から、その使用を極力低減することが好ましく、各々の含有量は0.1%未満、特に0.01%未満が好ましく、実質的に含有しないこと(0.005%未満)が望ましい。CeOは、透過率を低下させる成分であるため、その含有量は0.1%未満、特に0.01%未満が好ましい。Fは、低温粘性を低下させ、また圧縮応力層の圧縮応力値を低下させるおそれがあるため、その含有量は0.1%未満、特に0.01%未満が好ましい。上記点を考慮すると、上記清澄剤の内、SOとClが好ましく、SOとClの一方または両方を0.001〜3%、0.001〜1%、0.01〜0.5%、特に0.05〜0.4%添加することが好ましい。なお、SnOも清澄剤として使用することができ、好適な含有範囲は上記の通りである。
NbやLa等の希土類酸化物は、ヤング率を高める成分である。しかし、希土類酸化物は、原料コストが高く、また多量に希土類酸化物を添加すると、耐失透性が低下する。このため、希土類酸化物の含有量は3%以下、2%以下、1%以下、0.5%以下、特に0.1%以下が好ましい。
Co、Ni等の遷移金属元素は、透過率を低下させる成分である。特に、Co、Ni等の遷移金属元素の含有量が多いと、タッチパネルディスプレイの基板に用いる場合、タッチパネルディスプレイの視認性が損なわれる。このため、Co、Ni等の遷移金属元素の含有量が0.5%以下、0.1%以下、特に0.05%以下となるように、原料やカレットの使用量等を調整することが望ましい。
Pb、Bi等の物質は、環境に対する配慮から、その使用を極力低減することが好ましく、その含有量は0.1%未満が好ましい。
本発明の強化ガラスにおいて、各成分の好適な含有範囲を適宜選択し、好適なガラス組成範囲を構成することができるが、特に好適なガラス組成範囲は以下の通りである。
(1)質量%で、SiO 45〜65%、Al 15〜23%、B 0〜2%、LiO 0〜4%、NaO 12〜19%、KO 1〜8%、MgO 0〜5%、CaO 0〜3%、MgO+CaO 0〜5%、TiO 0〜0.5%、ZrO、0〜0.5%、P 0.5〜8%含有、
(2)質量%で、SiO 45〜65%、Al 16〜23%、B 0〜2%、LiO 0〜4%、NaO 12〜19%、KO 1〜8%、MgO 0〜5%、CaO 0〜2%、MgO+CaO 0〜5%、TiO 0〜0.5%、ZrO、0〜0.5%、P 1〜8%含有、
(3)質量%で、SiO 45〜65%、Al 17〜23%、B 0〜2%、LiO 0〜4%、NaO 12〜19%、KO 3〜8%、MgO 0〜5%、CaO 0〜5%、MgO+CaO 0〜5%、SrO+BaO 0〜1%、TiO 0〜0.5%、ZrO、0〜0.5%P 2〜8%含有、
(4)質量%で、SiO 48〜61%、Al 18〜22%、B 0〜1%、LiO 0〜3%、NaO 13〜18%、KO 3〜7%、MgO 0〜5%、CaO 0〜5%、MgO+CaO 0〜5%、SrO+BaO 0〜0.5%、TiO 0〜0.1%、ZrO、0〜0.1%P 2〜7%含有、
(5)質量%で、SiO 48〜61%、Al 18〜21%、B 0〜1%、LiO 0〜2%、NaO 14〜18%、KO 3〜7%、MgO 0〜5%、CaO 0〜5%、MgO+CaO 0〜5%、SrO+BaO 0〜0.1%、TiO 0〜0.1%、ZrO、0〜0.1%、ZnO 0〜0.01%、P 2〜7%含有。
(6)質量%で、SiO 48〜55%、Al 18〜21%、B 0〜1%、LiO 0〜1%、NaO 12〜18%、KO 3〜7%、MgO 0〜5%、CaO 0〜2%、MgO+CaO 0〜5%、SrO+BaO 0〜0.1%、TiO 0〜0.1%、ZrO、0〜0.1%、ZnO 0〜0.01%、P 2〜6%含有。
本発明の強化ガラスにおいて、圧縮応力層の圧縮応力値は600MPa以上、800MPa以上、特に900MPa以上が好ましい。圧縮応力層の圧縮応力値が高くなるにつれて、強化ガラスの機械的強度が高くなる。一方、表面に極端に大きな圧縮応力が形成されると、表面にマイクロクラックが発生し、逆に強化ガラスの機械的強度が低下するおそれがあり、また内在する引っ張り応力が極端に高くなるおそれがある。このため、圧縮応力層の圧縮応力値は2500MPa以下が好ましい。なお、Al、TiO、ZrO、MgO、ZnO、SnOの含有量を増加させたり、SrO、BaOの含有量を低減すれば、圧縮応力層の圧縮応力値を高くすることができる。また、イオン交換に要する時間を短くしたり、イオン交換溶液の温度を下げれば、圧縮応力層の圧縮応力値を高くすることができる。
本発明の強化ガラスにおいて、圧縮応力層の厚みは30μm以上、40μm以上、50μm以上、60μm以上、特に70μm以上が好ましい。圧縮応力層の厚みが大きい程、深い傷がついても、強化ガラスが割れ難くなる。一方、圧縮応力層の厚みが大き過ぎると、強化ガラスを切断し難くなったり、内部の引っ張り応力が極端に高くなって、強化ガラスが破損するおそれがある。このため、圧縮応力層の厚みは500μm以下、200μm以下、特に150μm以下が好ましい。なお、KO、Pの含有量を増加させたり、SrO、BaOの含有量を低減すれば、圧縮応力層の厚みを大きくすることができる。また、イオン交換に要する時間を長くしたり、イオン交換溶液の温度を高めれば、圧縮応力層の厚みを大きくすることができる。
本発明の強化ガラスにおいて、[数1]で計算される内部の引っ張り応力は200MPa以下、150MPa以下、100MPa以下、特に50MPa以下が好ましい。内部の引っ張り応力が小さくなる程、内部の欠陥によって強化ガラスが破損し難くなる。しかし、内部の引っ張り応力が極端に小さくなると、圧縮応力層の圧縮応力値が低下しやすくなり、また圧縮応力層の厚みが小さくなる。このため、内部の引っ張り応力は1MPa以上、10MPa以上、特に15MPa以上が好ましい。
本発明の強化ガラスは、平板形状を有することが好ましく、板厚は3.0mm以下、1.5mm以下、0.7mm以下、0.5mm以下、特に0.3mm以下が好ましい。平板形状であれば、各種カバーガラスや基板に適用可能になる。また、板厚が小さい程、強化ガラスを軽量化することができる。なお、本発明の強化ガラスは、機械的強度が高く、破壊し難いため、板厚が小さい程、他の材料に比べて有利になる。
本発明の強化ガラスは、未研磨の表面を有することが好ましく、その表面の平均表面粗さ(Ra)は10Å以下、5Å以下、4Å以下、3Å以下、特に2Å以下が好ましい。ここで、「平均表面粗さ(Ra)」は、JIS B0601:2001に準拠した方法により測定した値を指し、例えばAFM等により測定することができる。ガラスの理論強度は本来非常に高いが、理論強度よりも遥かに低い応力でも破壊に至ることが多い。これは、ガラスの表面にグリフィスフローと呼ばれる小さな欠陥が成形後の工程、例えば研磨工程等で生じるからである。そこで、表面を未研磨とすれば、強化ガラスの機械的強度が損なわれ難くなり、強化ガラスが破壊し難くなる。また、表面を未研磨とすれば、研磨工程を省略できるため、強化ガラスの生産コストを低廉化することができる。特に、平板形状の場合、両面(端面を除く)を未研磨とすれば、強化ガラスが更に破壊し難くなる。さらに、平板形状の場合、端面(切断面)から破壊に至る事態を防止するため、強化ガラスの端面に面取り加工やエッチング処理等を行ってもよい。なお、オーバーフローダウンドロー法でガラスを成形すれば、未研磨で強化ガラスの表面品位を高めることができる。
本発明の強化ガラスにおいて、密度が2.6g/cm以下、2.55g/cm以下、2.5g/cm以下、2.49g/cm以下、特に2.48g/cm以下が好ましい。密度が低い程、強化ガラスの軽量化を図ることができる。なお、密度を低下させるには、SiO、P、Bの含有量を増加したり、RO、R’O、ZnO、ZrO、TiOの含有量を低減すればよい。
本発明の強化ガラスにおいて、熱膨張係数は70〜110×10−7/℃、75〜110×10−7/℃、80〜110×10−7/℃、特に85〜110×10−7/℃が好ましい。熱膨張係数が上記範囲内であれば、金属、有機系接着剤等の部材の熱膨張係数に整合しやすくなり、金属、有機系接着剤等の部材の剥離を防止することができる。ここで、「熱膨張係数」は、30〜380℃の温度範囲における平均値を指し、例えばディラトメーターで測定することができる。なお、熱膨張係数を高めるには、RO、R’Oの含有量を増加すればよく、逆に熱膨張係数を低下させるには、RO、R’Oの含有量を低減すればよい。
本発明の強化ガラスにおいて、歪点は520℃以上、550℃以上、560℃以上、特に570℃以上が好ましい。歪点が高い程、耐熱性に優れるため、熱処理により圧縮応力層が消失し難くなる。また、歪点が高いと、イオン交換中に応力緩和が起こり難くなるため、圧縮応力層の圧縮応力値を高めやすくなる。ここで、「歪点」は、ASTM C336の方法に基づいて測定した値を指す。なお、歪点を高めるためには、ROの含有量を低減したり、R’O、Al、ZrOの含有量を増加すればよい。
本発明の強化ガラスにおいて、102.5dPa・sにおける温度が1650℃以下、1600℃以下、1580℃以下、1550℃以下、1540℃以下、特に1530℃以下が好ましい。102.5dPa・sにおける温度は、溶融温度に相当しており、102.5dPa・sにおける温度が低い程、低温でガラスを溶融することができる。したがって、102.5dPa・sにおける温度が低い程、溶融窯等の製造設備への負担が小さくなるとともに、泡品位を高めやすくなり、結果として、ガラスを安価に製造することができる。なお、102.5dPa・sにおける温度を低下させるには、RO、R’O、ZnO、B、TiOの含有量を増加したり、SiO、Alの含有量を低減すればよい。
本発明の強化ガラスにおいて、液相温度は1180℃以下、1150℃以下、1130℃以下、1110以下、特に1100℃以下が好ましい。なお、液相温度を低下させるには、P、NaO、KO、Bの含有量を増加したり、Al、LiO、MgO、ZnO、TiO、ZrOの含有量を低減すればよい。
本発明の強化ガラスにおいて、液相粘度は104.0dPa・s以上、104.3dPa・s以上、104.5dPa・s以上、105.0dPa・s以上、特に105.4dPa・s以上が好ましい。液相粘度を高めるには、P、NaO、KOの含有量を増加したり、Al、LiO、MgO、ZnO、TiO、ZrOの含有量を低減すればよい。
なお、液相粘度が高く、液相温度が低い程、耐失透性や成形性に優れている。そして、液相温度が1180℃以下、液相粘度が104.0dPa・s以上であれば、オーバーフローダウンドロー法で成形することができる。
本発明の強化ガラスにおいて、ヤング率は70GPa以上、71GPa以上、特に73GPa以上が好ましい。ヤング率が高い程、平板形状の強化ガラスが撓み難くなるため、タッチパネルディスプレイ等のデバイスにおいてペン等でディスプレイを押した際に、デバイス内部の液晶素子等が圧迫され難くなり、ディスプレイの表示不良が発生し難くなる。
本発明の強化ガラスは、以下のようにして生産することができる。まず所定のガラス組成になるように調合したガラス原料を連続溶融炉に投入し、1500〜1600℃で加熱溶融した後、十分に清澄した上で、成形装置で平板形状等にガラスを成形し、必要に応じて徐冷処理を行う。次に得られたガラスに対し、強化処理、特にイオン交換処理を行うと、強化ガラスを作製することができる。イオン交換処理は、例えば400〜550℃の硝酸カリウム溶液中にガラスを1〜8時間浸漬することで行うことができる。イオン交換条件は、ガラスの粘度特性、用途、板厚、内部の引っ張り応力等を総合的に考慮して、最適な条件を選択すればよい。切断加工は、強化処理前に行ってもよいが、強化処理後に行うと、強化ガラスの生産コストを低廉化することができる。
本発明の強化ガラスは、オーバーフローダウンドロー法で成形されてなることが好ましい。このようにすれば、未研磨で表面品位が良好な平板形状のガラスを効率良く成形することができ、結果として、未研磨で表面品位が良好な平板形状の強化ガラスを効率良く作製することができる。その理由は、オーバーフローダウンドロー法の場合、表面となるべき面は樋状耐火物に接触せず、自由表面の状態で連続的に成形されるからである。樋状構造物の構造や材質は、所望の寸法や表面品位を実現できるものであれば、特に限定されない。また、下方への延伸成形を行うために、ガラスに対して力を印加する方法は、所望の寸法や表面品位を実現できるものであれば、特に限定されない。例えば、充分に大きい幅を有する耐熱性ロールをガラスに接触させた状態で回転させて延伸する方法を採用してもよいし、複数の対になった耐熱性ロールをガラスの端面近傍のみに接触させて延伸する方法を採用してもよい。本発明の強化ガラスは、耐失透性に優れるとともに、成形に適した粘度特性を有しているため、オーバーフローダウンドロー法で平板形状のガラスを成形しやすい性質を有している。
なお、本発明の強化ガラスは、オーバーフローダウンドロー法以外の成形方法、具体的にはダウンドロー法(スロットダウンドロー法、リドロー法等)、フロート法、ロールアウト法、プレス法等の成形方法で成形されてなる場合を排除するものではない。
本発明のガラスは、ガラス組成として、質量%で、SiO 45〜75%、Al 12〜24%、NaO 11〜25%、P 0.1〜10%を含有することを特徴とし、SiO 45〜70%、Al 15〜24%、B 0〜3%、LiO 0〜3%、NaO 13〜20%、KO 2〜9%、MgO+CaO 0〜6%、SrO+BaO 0〜1%、TiO 0〜1%、P 1〜9%を含有することが好ましい。本発明のガラスは、ガラス組成を上記のように規制しているため、イオン交換性能が良好であり、特に圧縮応力層の圧縮応力値が300MPa以上、且つ圧縮応力層の厚みが30μm以上の強化ガラスを作製しやすい特徴を有している。また、本発明のガラスは、ガラス組成を上記のように規制しているため、耐失透性に優れており、オーバーフローダウンドロー法で良好に成形することができる。したがって、本発明のガラスを用いると、本発明の強化ガラスを容易に作製することができる。なお、本発明のガラスにおいて、好ましいガラス組成、好ましい特性等は、本発明の強化ガラスと同様であるため、ここでは便宜上その記載を省略する。
以下、本発明を実施例に基づいて説明する。
表1は、本発明の実施例(試料No.1、2)と比較例(試料No.3、4)を示している。尚、表中の「未」の表示は、未測定であることを意味している。
次のようにして、表中の各試料を作製した。表中のガラス組成になるように、ガラス原料を調合し、白金ポットを用いて1580℃で8時間溶融した。その後、溶融ガラスをカーボン板の上に流し出して平板形状に成形した。得られたガラスについて、種々の特性を評価した。
密度は、周知のアルキメデス法によって測定した値である。
熱膨張係数は、30〜380℃の温度範囲における平均値を指し、ディラトメーターで測定した値である。
歪点Ps、徐冷点Taは、ASTM C336の方法に基づいて測定した値である。
軟化点Tsは、ASTM C338の方法に基づいて測定した値である。
104.0dPa・s、103.0dPa・s、102.5dPa・sにおける温度は、白金球引き上げ法で測定した値である。
液相温度TLは、標準篩30メッシュを通過し、50メッシュに残るガラス粉末を白金ボートに入れ、温度勾配炉中に24時間保持して、結晶の析出する最低温度を測定した値である。
液相粘度logηTLは、液相温度における粘度を白金球引き上げ法で測定した値を指す。
未強化ガラスと強化ガラスは、表層において微視的にガラス組成が異なっているものの、全体として見た場合、ガラス組成が実質的に相違していない。したがって、密度、粘度特性等は、強化処理の有無で実質的に値が相違しない。
次に、各ガラス試料の両表面を光学研磨した後、イオン交換処理を行った。イオン交換処理は440℃のKNO溶融塩中に試料全体を6時間浸漬することで行った。イオン交換処理後、表面を洗浄した上で、表面応力計(株式会社東芝製FSM−6000)を用いて、干渉縞の本数とその間隔から圧縮応力層の圧縮応力値と厚みを算出した。算出に当たり、各試料の屈折率を1.52、光学弾性定数を28[(nm/cm)/MPa]とした。
表1から明らかなように、試料No.1、2は、液相温度が1055℃、液相粘度が105.3dPa・s以上、圧縮応力層の圧縮応力値が1000MPa以上、圧縮応力層の厚みが68μm以上であった。一方、試料No.3は、強化特性が良好であるものの、液相温度が高かった。また、試料No.4は、強化特性が不良であり、液相温度も高かった。
なお、本実施例は、実験の便宜上、溶融ガラスを流し出して、平板形状のガラスを作製した後、イオン交換処理前に光学研磨を行った。しかし、工業的規模で強化ガラスを生産する場合は、生産コストや生産効率の観点から、オーバーフローダウンドロー法で平板形状のガラスを成形した後、両面が未研磨の状態でイオン交換処理することが望ましい。
本発明の強化ガラスは、携帯電話、デジタルカメラ、PDA、太陽電池等のカバーガラス、或いはタッチパネルディスプレイの基板に好適である。また、本発明の強化ガラスは、これらの用途以外にも、高い機械的強度が要求される用途、例えば窓ガラス、磁気ディスク用基板、フラットパネルディスプレイ用基板、固体撮像素子用カバーガラス、食器等への応用も期待できる。

Claims (17)

  1. 表面に圧縮応力層を有する強化ガラスにおいて、
    ガラス組成として、質量%で、SiO 45〜75%、Al 12〜24%、NaO 11〜25%、P 0.1〜10%を含有することを特徴とする強化ガラス。
  2. ガラス組成として、質量%でSiO 45〜70%、Al 12〜24%、LiO 0〜10%、NaO 11〜20%、KO 0〜10%、MgO 0〜8%、CaO 0〜8%、MgO+CaO 0〜9%、SrO+BaO 0〜5%、TiO 0〜4%、P 0.1〜10%を含有することを特徴とする請求項1に記載の強化ガラス。
  3. ガラス組成として、質量%でSiO 45〜70%、Al 15〜24%、B 0〜3%、LiO 0〜8%、NaO 11〜20%、KO 1〜9%、MgO 0〜6%、CaO 0〜8%、MgO+CaO 0〜8%、SrO+BaO 0〜3%、TiO 0〜1%、P 1〜9%を含有することを特徴とする請求項1に記載の強化ガラス。
  4. 圧縮応力層の圧縮応力値が300MPa以上であり、且つ圧縮応力層の厚みが30μm以上であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の強化ガラス。
  5. 化学的に強化されてなることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の強化ガラス。
  6. 密度が2.6g/cm以下であることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の強化ガラス。
  7. 液相温度が1180℃以下であることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の強化ガラス。
  8. 液相粘度が104.0dPa・s以上であることを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の強化ガラス。
  9. 平板形状を有することを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載の強化ガラス。
  10. オーバーフローダウンドロー法で成形されてなることを特徴とする請求項1〜9のいずれかに記載の強化ガラス。
  11. 未研磨の表面を有することを特徴とする請求項1〜10のいずれかに記載の強化ガラス。
  12. タッチパネルディスプレイの基板に用いることを特徴とする請求項1〜11のいずれかに記載の強化ガラス。
  13. 携帯電話のカバーガラスに用いることを特徴とする請求項1〜11のいずれかに記載の強化ガラス。
  14. 太陽電池のカバーガラスに用いること特徴とする請求項1〜11のいずれかに記載の強化ガラス。
  15. ディスプレイの保護部材に用いることを特徴とする請求項1〜11のいずれかに記載の強化ガラス。
  16. ガラス組成として、質量%で、SiO 45〜75%、Al 12〜24%、NaO 11〜25%、P 0.1〜10%を含有することを特徴とするガラス。
  17. ガラス組成として、質量%で、SiO 45〜70%、Al 15〜24%、B 0〜3%、LiO 0〜3%、NaO 13〜20%、KO 2〜9%、MgO+CaO 0〜6%、SrO+BaO 0〜1%、TiO 0〜1%、P 1〜9%を含有することを特徴とする請求項16に記載のガラス。
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