JP2011051940A - イソチオシアナト化合物の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】 カルボキシル基を有するアミノ化合物を、溶媒中、塩基存在下、チオカルボニルジイミダゾールと反応させることで、カルボキシル基を有するイソチオシアナト化合物を得る。
【選択図】 なし
Description
カルボキシル基を有するアミノ化合物から、対応するカルボキシル基を有するイソチオシアナト化合物を製造する方法としては、チオホスゲン(例えば非特許文献1参照)やクロロチオノギ酸フェニルを利用した方法(例えば非特許文献2参照)が報告されているが、非常に強い毒性と悪臭を有するという問題がある。また、テトラメチルチウラムジスルフィドを利用した方法(例えば非特許文献3参照)が報告されているが、途中で中間体を単離する必要があり操作が煩雑であること、酸存在下、高温で加熱するなど反応条件が過酷であること、用いるテトラメチルチウラムジスルフィドが高価であることなどの問題がある。そこで、これらの試薬を用いずに、高収率かつ高純度で工業的生産法としても有用な、カルボキシル基を有するイソチオシアナト化合物の新規な製造方法が望まれていた。
(1)
式(1)
で示されるカルボキシル基を有するイソチオシアナト化合物の製造方法。
(2)
AがC6−14芳香族炭化水素基(該C6−14芳香族炭化水素基は無置換であるか、又はハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、C1−6アルキル基、保護された水酸基、C1−6アルコキシ基、ジC1−6アルキルアミノ基、保護されたアミノ基、保護されたモノC1−6アルキルアミノ基、C1−6アルキルカルボニル基若しくはC1−6アルコキシカルボニル基で置換されている。)であり、Bが単結合である(1)に記載の製造方法。
(3)
AがC6−14芳香族炭化水素基(該C6−14芳香族炭化水素基は無置換であるか、又はハロゲン原子若しくはニトロ基で置換されている。)である(2)に記載の製造方法。
(4)
mが1であり、nが1である(3)に記載の製造方法。
(5)
Aがフェニレン基(該フェニレン基は無置換であるか、又はハロゲン原子若しくはニトロ基で置換されている。)である(4)に記載の製造方法。
(6)
用いる塩基が三級アミンである(1)乃至(5)の何れか1項に記載の製造方法。
(7)
用いる塩基が、トリC1−6アルキルアミンである(6)に記載の製造方法。
(8)
用いる塩基が、トリエチルアミンである(7)に記載の製造方法。
(9)
用いる溶媒が、ハロゲン化炭化水素である(1)乃至(8)の何れか1項に記載の製造方法。
(10)
用いる溶媒が、塩化メチレンである(9)に記載の製造方法。
(11)
カルボキシル基を有するアミノ化合物を、溶媒中、チオカルボニルジイミダゾール及び塩基と反応させた後、酸性水溶液で処理して目的物を得る(1)乃至(10)の何れか1項に記載の製造方法。
(12)
カルボキシル基を有するアミノ化合物を、溶媒中、チオカルボニルジイミダゾール及び塩基と反応させた後、塩酸で処理して目的物を得る(11)に記載の製造方法。
(13)
カルボキシル基を有するアミノ化合物を、溶媒中、チオカルボニルジイミダゾール及び塩基と反応させた後、塩酸を加え、分液操作を経ずにろ過操作で目的物を得る(12)に記載の製造方法。
(14)
カルボキシル基を有するアミノ化合物を、溶媒中、チオカルボニルジイミダゾール及び塩基と反応させた後、塩酸を加え、分液操作を経ずに貧溶媒を加えた後にろ過操作で目的物を得る(13)に記載の製造方法。
(15)
貧溶媒が水またはC5−8アルカンである(14)に記載の製造方法。
などが挙げられる。
式(1)のA及びBにおけるC1−12飽和炭化水素基は、AまたはBの定義の通りに置換基を有することができる。例えば、mが1のときのAのC1−12飽和炭化水素基、またはnが1のときのBのC1−12飽和炭化水素基は、炭素原子を1乃至12個有する直鎖状、分岐状または環状のアルキレン(アルカン−ジイル)基であり、このアルキレン基はAまたはBで定義されている通りに無置換であるか、置換基で置換されている。また、mが2のときのAのC1−12飽和炭化水素基、またはnが2のときのBのC1−12飽和炭化水素基は、炭素原子を1乃至12個有する直鎖状、分岐状または環状のアルカン−トリイル基であり、このアルカン−トリイル基はAまたはBで定義されている通りに無置換であるか、置換基で置換されている。
本発明におけるC1−12飽和炭化水素基は、好ましくはC1−12飽和炭化水素基の炭素数が1から6に限定されたC1−6飽和炭化水素基であり、より好ましくはメチレン基またはエチレン基である。
式(1)のA及びBにおけるC6−14芳香族炭化水素基は、AまたはBの定義の通りに置換基を有することができる。例えば、mが1のときのAのC6−14芳香族炭化水素基、またはnが1のときのBのC6−14芳香族炭化水素は、炭素原子を6乃至14個有するアリーレン(アリール−ジイル)基であり、このアリーレン基はAまたはBで定義されている通りに無置換であるか、置換基で置換されている。また、mが2のときのAのC6−14芳香族炭化水素基、またはnが2のときのBのC6−14芳香族炭化水素基は、炭素原子を6乃至14個有するアリール−トリイル基であり、このアリール−トリイル基はAまたはBで定義されている通りに無置換であるか、置換基で置換されている。
本発明におけるC6−14芳香族炭化水素基は、好ましくはC6−14芳香族炭化水素基の炭素数が6から10に限定されたC6−10飽和炭化水素基であり、より好ましくはフェニレン基またはナフチレン基であり、さらに好ましくはフェニレン基である。
保護されたアミノ基、保護されたモノC1−6アルキルアミノ基及び保護された窒素原子における保護基としては、窒素原子の保護基として作用する限りどのような保護基でもよいが、例えば Greene’s Protective Groups in Organic Synthesis (4th ed.), John Wiley, 2007, pp. 706-872. に記載の保護基が挙げられる。
nは好ましくは1である。
Bは、好ましくは単結合又はC1−6アルキル基であり、より好ましくは単結合である。
用いる塩酸は、好ましくは4M以上の濃度の塩酸であり、より好ましくは濃塩酸である。処理方法としては、反応系中に塩酸を加えてもよいし、塩酸中に反応混合物を加えてもよいが、塩酸、又は塩酸と非水溶性有機溶媒との懸濁液に反応混合物を加える手順がより好ましい。使用量としては、カルボキシル基を有するアミノ化合物1モルに対して、(用いたチオカルボニルジイミダゾールのモル数×2.0+用いた塩基のモル数)以上のモル数が好ましい。
本発明の製造法は、反応溶媒が凍結しない温度から溶媒の沸点までの反応温度で行うことができる。カルボキシル基を有するアミノ化合物、チオカルボニルジイミダゾール及び塩基を混合する際の好ましい反応温度は−10〜40℃の範囲であり、より好ましくは−10〜10℃の範囲である。基質を反応させる際の好ましい温度は−10〜40℃の範囲であり、より好ましくは−10〜10℃の範囲、さらに好ましくは0〜5℃の範囲である。塩酸で処理する際の好ましい温度は、−10から40℃の範囲であり、より好ましくは0〜30℃の範囲であり、さらに好ましくは25〜30℃の範囲である。塩酸で処理した後に撹拌する好ましい温度は、−10〜30℃の範囲であり、より好ましくは0〜30℃の範囲であり、さらに好ましくは25〜30℃の範囲である。
塩基の使用量は、カルボキシル基を有するアミノ化合物1モルに対して、[(原料1分子中のカルボキシル基の数×1.0)〜(原料1分子中のカルボキシル基の数×5.0)]モル、好ましくは[(原料1分子中のカルボキシル基の数×1.1)〜(原料1分子中のカルボキシル基の数+原料1分子中のアミノ基の数×2.0)]モルが適切である。
なお、実施例中、HPLCは高速液体クロマトグラフィー、NMRは核磁気共鳴を意味する。
HPLCの測定条件;
使用機器:SHIMADZU LC−10Aシリーズ
使用カラム:INERTSIL ODS 2
カラム温度:40℃
検出:UV 254nm
溶媒組成:アセトニトリル/20mMリン酸 80/20(v/v)
流速:1.0mL/min
又は、
使用機器:SHIMADZU LC−10Avp
使用カラム:L−Column ODS
カラム温度:40℃
検出:UV 233nm
溶媒組成:アセトニトリル/10mMリン酸 buffer(pH2.6) 35/65(v/v)
with 5 mM SDS
流速:1.0mL/min
1H−NMRスペクトルは、JNM−ECP300およびJNM−ECX300を用いて測定した。
4−イソチオシアネート安息香酸
チオカルボニルジイミダゾール(8.45 g, 47.4 mmol)とトリエチルアミン(5.6 mL, 40.2 mmol)の塩化メチレン溶液(51 mL)に、4−アミノ安息香酸(5.00 g, 36.5 mmol)を内温5℃以下で加え、氷冷下1時間撹拌した。これを別途調整した濃塩酸(12.2 mL, 140.5 mmol)とn−ヘプタン(51 mL)の混合溶液に、内温25℃から30℃になるように滴下したところ、淡黄色懸濁液となった。これを氷冷下3時間撹拌した後、ろ取し、水(50 mL)で洗浄することで淡黄色の粗物を得た。得られた粗物を水(50 mL)で撹拌洗浄、ろ取することを2度行い、減圧下乾燥することで、淡黄色固体の4−イソチオシアネート安息香酸(6.23 g, 収率95%, HPLC純度100.0%)を得た。
1H-NMR (DMSO-d6) δ: 7.52 (d, J = 8.7 Hz, 2H), 7.97 (d, J = 8.7 Hz, 2H), 13.20 (brs, 1H).
3−イソチオシアネート安息香酸
チオカルボニルジイミダゾール(7.8 g, 43.8 mmol)とトリエチルアミン(5.6 mL, 40.2 mmol)の塩化メチレン溶液(51 mL)に、3−アミノ安息香酸(5.00 g, 36.5 mmol)を内温5℃以下で加え、−10℃で1時間撹拌した。これを別途調整した濃塩酸(11.6 mL, 133.0 mmol)とn−ヘプタン(51 mL)の混合溶液に、内温20℃から30℃になるように滴下し、そのまま1時間撹拌した。その後、氷冷下2時間撹拌した後、得られた無色固体をろ過し、水(20 mL)で4回洗浄し、減圧下乾燥することで、クリーム色固体の3−イソチオシアネート安息香酸(6.01 g, 収率93%, HPLC純度99.8%)を得た。
1H-NMR (DMSO-d6) δ: 7.58 (dd, J = 8.1 Hz, 1H), 7.68 (ddd, J = 1.2, 8.1 Hz, 1H), 7.86-7.92 (m, 2H), 13.34 (brs, 1H).
4−イソチオシアネート-2-クロロ安息香酸
4−アミノ−2−クロロ安息香酸(18.84 g, 109.82 mmol)の塩化メチレン溶液(130 mL)に、氷冷下トリエチルアミン(30.6 mL, 219.5 mmol)とチオカルボニルジイミダゾール(23.01 g, 129.14 mmol)の塩化メチレン溶液(235 mL)を滴下し、内温10 ℃以下を保ったまま1時間撹拌した。4M 塩酸(120 mL, 480 mmol)を内温10 ℃以下になるように滴下し、氷冷下1時間撹拌した。水(10 mL)を加えて、生じた桃色固体をろ取し、水(100 mL)で5回洗浄し、減圧下乾燥して、無色固体の4−イソチオシアネート−2−クロロ安息香酸(21.36 g, 収率91%, HPLC純度98.2%)を得た。
1H-NMR (CDCl3) δ: 7.19 (dd, J = 2.1, 8.4 Hz, 1H), 7.35 (d, J = 2.1 Hz, 1H), 8.03 (d, J = 8.4 Hz, 1H).
4−イソチオシアネート−2−ニトロ安息香酸
4−アミノ−2−ニトロ安息香酸(36.4 mg, 0.2 mmol)の塩化メチレン溶液(0.4 mL)に、室温でトリエチルアミン(55.8 μL, 0.4 mmol)とチオカルボニルジイミダゾール(46.3 mg, 0.26 mmol)を加え、室温で10分間撹拌した。反応混合物を酢酸エチルに溶解させ、1M 塩酸で洗浄し、有機層を硫酸マグネシウムで乾燥した。ろ過し、減圧下濃縮乾固して、無色固体の4−イソチオシアネート−2−ニトロ安息香酸(40 mg, 収率89%, HPLC純度96.4%)を得た。
1H-NMR (DMSO-d6) δ: 7.80 (dd, J = 2.1, 8.1 Hz, 1H), 7.93 (d, J = 8.1 Hz, 1H), 8.12 (d, J = 2.1 Hz, 1H).
Claims (15)
- 式(1)
で示されるカルボキシル基を有するイソチオシアナト化合物の製造方法。 - AがC6−14芳香族炭化水素基(該C6−14芳香族炭化水素基は無置換であるか、又はハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、C1−6アルキル基、保護された水酸基、C1−6アルコキシ基、ジC1−6アルキルアミノ基、保護されたアミノ基、保護されたモノC1−6アルキルアミノ基、C1−6アルキルカルボニル基若しくはC1−6アルコキシカルボニル基で置換されている。)であり、Bが単結合である請求項1に記載の製造方法。
- AがC6−14芳香族炭化水素基(該C6−14芳香族炭化水素基は無置換であるか、又はハロゲン原子若しくはニトロ基で置換されている。)である請求項2に記載の製造方法。
- mが1であり、nが1である請求項3に記載の製造方法。
- Aがフェニレン基(該フェニレン基は無置換であるか、又はハロゲン原子若しくはニトロ基で置換されている。)である請求項4に記載の製造方法。
- 用いる塩基が三級アミンである請求項1乃至5の何れか1項に記載の製造方法。
- 用いる塩基が、トリC1−6アルキルアミンである請求項6に記載の製造方法。
- 用いる塩基が、トリエチルアミンである請求項7に記載の製造方法。
- 用いる溶媒が、ハロゲン化炭化水素である請求項1乃至8の何れか1項に記載の製造方法。
- 用いる溶媒が、塩化メチレンである請求項9に記載の製造方法。
- カルボキシル基を有するアミノ化合物を、溶媒中、チオカルボニルジイミダゾール及び塩基と反応させた後、酸性水溶液で処理して目的物を得る請求項1乃至10の何れか1項に記載の製造方法。
- カルボキシル基を有するアミノ化合物を、溶媒中、チオカルボニルジイミダゾール及び塩基と反応させた後、塩酸で処理して目的物を得る請求項11に記載の製造方法。
- カルボキシル基を有するアミノ化合物を、溶媒中、チオカルボニルジイミダゾール及び塩基と反応させた後、塩酸を加え、分液操作を経ずにろ過操作で目的物を得る請求項12に記載の製造方法。
- カルボキシル基を有するアミノ化合物を、溶媒中、チオカルボニルジイミダゾール及び塩基と反応させた後、塩酸を加え、分液操作を経ずに貧溶媒を加えた後にろ過操作で目的物を得る請求項13に記載の製造方法。
- 貧溶媒が水またはC5−8アルカンである請求項14に記載の製造方法。
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