JP2011040343A - 多孔質発熱装置とその製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】炭化ケイ素質多孔質構造材を発熱体とし、その発熱体に導電性の高い電極を強固に固着する。
【解決手段】黒鉛など炭素質の電極体2を用い、電極体2と多孔質構造体1との界面に形成された炭化ケイ素層3を介して、電極体2を多孔質構造体1と一体に固着した。
【選択図】図4

Description

本発明は、炭化ケイ素系セラミックスを利用した多孔質発熱装置とその製造方法に関するものである。本発明の多孔質発熱装置は、その多孔質である特徴を利用して流体加熱装置、フィルタ装置、排ガス浄化用触媒などに利用することができる。
炭化ケイ素セラミックス(SiC)は、1400℃までの温度でも曲げ強度や弾性率の変化が小さく、耐酸化性や耐蝕性に優れ、金属との反応性も極めて低い。したがって炭化ケイ素焼結体から構成されたヒータは、使用可能雰囲気が制限されず、しかも急速昇温・降温特性に優れている。そのため、半導体ウェハの各種熱処理用ヒータなどとして利用されている。
このようなヒータと金属電極との接合には、例えば特開2003−308951号公報などに記載のように、アルミストラップとクランプ(バネ)などを用いたネジ止め構造が一般的である。しかしながらネジ止め構造では、炭化ケイ素焼結体と金属部材との熱膨張差が大きいために緩みが生じるという問題がある。
そこで特開2008−117556号公報には、炭化ケイ素焼結体からなる発熱体に炭化ケイ素製の一対の電極を固着し、その電極の先端を一対の金属板状電極で挟んだ電極構造が記載されている。しかしこの電極構造では、炭化ケイ素製の一対の電極まで発熱するため効率が悪い。また部品点数が多く取付工数が大きいという不具合がある。
一方、特許第3699992号、特許第4273195号、特許第4110244号には、スポンジ状の有機多孔質構造体から炭化ケイ素質多孔質構造材を製造する方法が開示されている。この製造方法は、例えば段ボール紙やウレタンスポンジにフェノール樹脂及びシリコン粉末を含むスラリーを含浸させ、それを不活性雰囲気下で焼成することで、炭素質多孔質構造体を経て反応焼結によって炭化ケイ素質多孔質構造材を製造するものである。
上記製造方法によって得られた炭化ケイ素質多孔質構造材は、膜を取り除いた無数の連泡を有し、ガス拡散性に優れている。そこで、この炭化ケイ素質多孔質構造材を発熱体として用いることが想起された。しかしこの炭化ケイ素質多孔質構造材は、表面に無数の空孔が開口しているために電極との接触面積が小さく、接触抵抗が大きいという問題があった。したがって、導電性を高く維持しながら電極を固定するための工夫が必要となる。
例えば金属電極を形成する方法として、金属溶射、無電解めっきなどを用いて炭化ケイ素系多孔質構造材の表面に金属層を形成し、その金属層を介して金属電極端子を固定する方法が考えられる。しかし金属と炭化ケイ素とは付着性が十分とは云えず、使用時の振動や熱膨張差によって剥離する場合がある。そこで耐熱性フェルトなどの被覆体で覆ったりして補強することも考えられるが、製造工数が多大となり部品点数も増大してしまう。
特開2003−308951号公報 特開2008−117556号公報 特許第3699992号 特許第4273195号 特許第4110244号
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、炭化ケイ素質多孔質構造材を発熱体とし、その発熱体に導電性の高い電極を強固に固着することで、自動車などにも搭載できる実用的な多孔質発熱装置とすることを目的とする。
上記課題を解決する本発明の多孔質発熱装置の特徴は、炭化ケイ素系セラミックスからなる多孔質構造体と、多孔質構造体に固着された一対の電極体と、よりなり、電極体を介した通電によって発熱する多孔質発熱装置であって、電極体は炭素系材料から形成され、電極体と多孔質構造体との界面に形成された炭化ケイ素層を介して多孔質構造体と一体に固着されていることにある。
また本発明の多孔質発熱装置の製造方法の特徴は、炭素源としての樹脂とシリコン粉末とを含むスラリー又はスラリーにさらに炭化ケイ素粉末を含むスラリーを有機多孔質構造体に含浸させる含浸工程と、有機多孔質構造体から余剰のスラリーを除去し有機多孔質構造体の骨格及びその表面に該スラリーが付着した前駆体を形成する除去工程と、有機多孔質構造体の所定部分に炭素系材料からなる電極体を仮固定する仮固定工程と、真空中又は非酸化性雰囲気中にて前駆体を加熱し樹脂を炭素化するとともに有機多孔質構造体を熱分解して炭素質多孔質構造体とする炭素化工程と、真空中又は非酸化性雰囲気中にて炭素質多孔質構造体を加熱することでシリコンと炭素とを反応させて炭素質多孔質構造体から炭化ケイ素質多孔質構造体を形成するとともに電極体と炭化ケイ素質多孔質構造体とを一体に結合する焼成工程と、を行うことにある。
本発明の製造方法においては、焼成工程後に、真空中又は非酸化性雰囲気中にて炭化ケイ素質多孔質構造体に溶融シリコンを含浸させ金属シリコン層を形成する溶融含浸工程を行うことが望ましい。
本発明の多孔質発熱装置によれば、炭素系材料からなる電極体を用いているので、耐熱性に優れ、電極体自体の導電性が高く給電損失を防止することができる。そして電極体は、電極体と多孔質構造体との界面に形成された炭化ケイ素層を介して多孔質構造体と一体に強固に固着されている。したがって電極体が使用時に多孔質構造体から剥離したり脱落するような不具合が生じない。
そして本発明の多孔質発熱装置の製造方法によれば、焼成工程を行うだけで電極体を多孔質構造体と強固に固着することができるので、製造工数を大幅に低減することができ、かつ電極体の固着強度のばらつきも抑制できる。
本発明の一実施例に係る多孔質発熱装置の斜視図である。 本発明の一実施例に係る多孔質発熱装置の要部拡大断面図である。 本発明の第2の実施例に係る多孔質発熱装置の斜視図である。 本発明の第2の実施例に係る多孔質発熱装置の要部拡大断面図である。 本発明の第2の実施例の他の態様に係る多孔質発熱装置の要部拡大断面図である。 本発明の第3の実施例に係る多孔質発熱装置の斜視図である。 本発明の第3の実施例に係る多孔質発熱装置の要部拡大断面図である。 本発明の第4、5の実施例に係る多孔質発熱装置の斜視図である。 本発明の第4、5の実施例に係る多孔質発熱装置の要部拡大断面図である。 本発明の第6の実施例に係る多孔質発熱装置の斜視図である。
本発明の多孔質発熱装置は、多孔質構造体と電極体とよりなり、電極体を介した通電によって発熱する。多孔質構造体は炭化ケイ素系セラミックスからなるものであり、炭化ケイ素のみからなるものであってもよいし、炭化ケイ素を主成分とすれば他にカーボン、シリコン、あるいは骨材や酸化防止剤として窒化ケイ素、ジルコニア、ジルコン、アルミナ、シリカ、ムライト、二ケイ化モリブデン、炭化ホウ素、ホウ素粉末、Mg、Al、Ti、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Zr、Nb、Mo、Wなどの金属を含んでいてもよい。また多孔質骨格の表面にシリコン層を有すれば、強度が向上する。さらにシリコン層を酸化すれば、親水性が向上するため貴金属などを容易に担持することができ、通電発熱可能な触媒とすることもできる。
電極体は、例えば黒鉛、炭素繊維集積体、墨などのカーボン粉末成形体、などの炭素系材料から形成されたものを用いることができ、その形状は板状、棒状など目的に応じて選択される。この電極体は、炭化ケイ素系セラミックスからなる多孔質構造体より導電性が高いことが必要であり、少なくとも70質量%以上の炭素を含むことが望ましい。こうすることで電極体の導電性を十分なものとすることができ、通電時の損失を抑制することができる。
電極体と多孔質構造体との界面には、炭化ケイ素層が形成されている。この炭化ケイ素層は、電極体と後述するスラリー中の樹脂成分及び有機多孔質構造体とを炭素源として供給された炭素と、後述するスラリー中のシリコンあるいは外部から供給されたシリコンとが反応して形成されたものである。したがって電極体と多孔質構造体とは、この炭化ケイ素層を介して化学的に一体に結合し、電極体は多孔質構造体と一体に強固に固着している。この炭化ケイ素層の厚さは特に制限されず、ナノレベルからミリレベルの範囲とすることができる。
多孔質構造体は、その骨格表面あるいは細孔中にシリコンを含むことが望ましい。こうすることで強度が向上する。またシリコンを酸化してSiOを形成すれば親水性が格段に向上するので、触媒金属化合物を溶解した水溶液を用いて多孔質構造体に直接触媒金属を担持することができる。したがって排ガス浄化用触媒として利用することができ、電極体を介して通電して発熱させることで、始動時などの低温時においても排ガスを浄化することが可能となる。
電極体の固着強度をさらに向上させるために、電極体の表面を炭化ケイ素系セラミックスからなる板状の被覆部材で覆って一体に固着し、さらにその被覆部材を多孔質構造体の表面に固着することが好ましい。この場合、被覆部材は補強の役目を担うとともに、電極体を介した通電によって被覆部材も発熱する。また被覆部材の炭素含有量やシリコン量を多く設定し緻密化すれば、導電性が向上するため被覆部材は電極体としても機能する。
また電極体と多孔質構造体との接触面積が小さい場合には、多孔質構造体への給電が不均一となり発熱効率が悪くなる場合がある。このような場合には、炭素含有量が多く面積が大きな被覆部材を用いることが好ましく、電極体が固着されている多孔質構造体の端面の面積の50%以上を被覆部材が覆うように構成することが望ましい。
なお本発明の多孔質発熱装置においては、多孔質構造体の表面はある程度の導電性を有する場合があるので、使用時における通電時に周囲の部材と短絡が生じる場合が考えられる。この不具合を回避するには、多孔質構造体の表面に耐熱性を有する絶縁層を形成することが望ましい。この絶縁層としては、セラミック被膜が望ましい。このようなセラミック被膜を形成するには、例えばアルミナセメントやアルミナ、ジルコニアなどのセラミック粉末をアルミナゾル、シリカゾルなどの無機バインダーと共にスラリー化し、このスラリーを多孔質構造体の表面にウォッシュコートした後に焼成することで、容易に形成することができる。
本発明の多孔質発熱装置の製造方法では、含浸工程と、除去工程と、仮固定工程と、炭素化工程と、焼成工程とを行う。含浸工程では、炭素源としての樹脂とシリコン粉末とを含むスラリー又はこのスラリーにさらに炭化ケイ素粉末を含むスラリーを有機多孔質構造体に含浸させる。ここで有機多孔質構造体としては、ウレタン発泡体、発泡ゴム、発泡ポリオレフィン、段ボール紙など連続気孔を有するものを用いることができる。その形状や気孔径、気孔分布などは特に制限されず、目的に応じて種々選択することができる。
炭素質の電極体としては、黒鉛製のもの、炭素繊維集積体からなるもの、墨などのカーボン粉末成形体などを用いることができ、その形状は板状、棒状など目的に応じて選択される。
炭素源である樹脂としては、溶媒に溶解して溶液となるものを用いることができ、フェノール樹脂、フラン樹脂、あるいはポリカルボシラン等の有機金属ポリマーなどが例示される。これらから選ばれる一種でもよいし、複数種を混合して用いてもよい。また添加剤として、炭素粉末、黒鉛粉末、カーボンブラックを添加してもよく、骨材や酸化防止剤として窒化ケイ素、ジルコニア、ジルコン、アルミナ、シリカ、ムライト、二ケイ化モリブデン、炭化ホウ素、ホウ素粉末などを添加することもできる。
シリコン粉末は、平均粒径が30μm以下の微粉末が好適である。粒径が大きなものは、ボールミルなどによって粉砕して用いることが好ましい。シリコン粉末は、純シリコン粉末であってもよいし、Mg、Al、Ti、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Zr、Nb、Mo、Wなどの金属を含むシリコン合金粉末、あるいは純シリコン粉末とこれらの金属粉末との混合粉末を用いることもできる。
スラリーにおける樹脂とシリコン粉末との混合比は、原子比でSi/C=0.05〜5.00の範囲とするのが好ましい。この原子比が0.05未満では、反応焼結で生じる多孔質炭化ケイ素量が少なくなり、発熱体として実用的でない。またこの原子比が5.00を超えると、スラリー中のシリコン粉末量が多くなって沈殿し易くなる。
また樹脂とシリコン粉末とを含むスラリーにさらに炭化ケイ素粉末を混合したスラリーを用いることもできる。この場合、炭化ケイ素粉末はシリコン粉末重量の3倍以内の範囲とするのが好ましい。炭化ケイ素粉末がシリコン粉末重量の3倍を超えると、混合が不十分となる場合がある。
スラリー中の固形分濃度は、有機多孔質構造体にスラリーを含浸可能な粘度であれば特に制限されない。またスラリーに用いられる溶媒は特に制限されないが、樹脂を溶解可能なものが用いられる。スラリーを有機多孔質構造体に含浸するには、単に浸漬して引き上げるだけでもよいし、減圧下で含浸させることも好ましい。
除去工程では、有機多孔質構造体から余剰のスラリーを除去し、有機多孔質構造体の骨格及びその表面にスラリーが付着した前駆体を形成する。有機多孔質構造体から余剰のスラリーを除去するのは、連続気孔部に充填されたスラリーを除去するためであり、遠心分離、有機多孔質構造体から余剰のスラリーを吸引する方法、あるいは有機多孔質構造体を絞って余剰のスラリーを除去する方法などを用いて行うことができる。余剰のスラリーが除去されることで、有機多孔質構造体の骨格内部や表面にスラリーが付着した前駆体が形成される。
仮固定工程では、有機多孔質構造体の所定部分に炭素系材料からなる電極体が仮固定される。この仮固定工程は、上記スラリーを用い、一対の電極体を有機多孔質構造体に貼着することで行うことができる。含浸工程で用いるスラリーより濃度の高いペースト状のスラリーを用いれば、粘着力が増すため仮固定の強度が向上する。例えば有機多孔質構造体にスラリーを含浸後にスラリーを介して電極体を貼着してもよいし、有機多孔質構造体の所定部位に電極体を配置後にスラリーを含浸して電極体と有機多孔質構造体との界面にスラリーを浸入させることで電極体を貼着することもできる。
除去工程あるいは仮固定工程後には、スラリー中の溶媒を乾燥させる乾燥工程を行うことが望ましい。乾燥工程は大気中で行うことができ、70℃で3時間程度保持すれば十分である。なお除去工程と仮固定工程とは、どちらを先に行ってもよいし同時に行うこともできる。また仮固定工程は、炭素化工程後で焼成工程より前に行うこともできる。炭素化工程で形成される炭素質多孔質構造体は強度が低いので加工が容易であり、電極体を仮固定するための溝や孔を容易に形成することができる。
炭素化工程では、真空中又は非酸化性雰囲気中にて前駆体を加熱し樹脂を炭素化するとともに有機多孔質構造体を熱分解して炭素質多孔質構造体とする。非酸化性雰囲気としては、アルゴンガスなど不活性ガス雰囲気が好ましい。樹脂の熱分解による炭素化過程では、タール状のものや気化物質が生成するので、真空中で行うのはあまり好ましくない。また窒素ガス雰囲気では、窒化ケイ素が生成する場合があるのであまり好ましくない。炭素化工程における焼成温度は、900〜1350℃の範囲とすることができる。900〜1350℃の範囲で加熱することで、有機多孔質構造体の骨格表面に付着している樹脂が炭素化するとともに、有機多孔質構造体が熱分解しその立体骨格を維持しつつ炭素化される。したがって有機多孔質構造体の骨格を維持した炭素質多孔質構造体が形成される。
炭素化工程後に焼成工程が行われる。この焼成工程では、真空中又は非酸化性雰囲気中にて炭素質多孔質構造体を加熱することで、シリコンと炭素とを反応させ、炭素質多孔質構造体から炭化ケイ素質多孔質構造体を形成するとともに、電極体と炭化ケイ素質多孔質構造体とが一体に結合される。焼成雰囲気は、炭素化工程と同様とすることができる。
また焼成温度は、1350℃以上とすることができる。1350℃以上に加熱されることで炭素とシリコンとが反応し、炭化ケイ素を主成分とする炭化ケイ素質多孔質構造体が形成される。この反応は、シリコンと炭素が系内にあるので体積が減少する反応であり、炭素が拡散してシリコンと反応することで炭化ケイ素の生成と同時に内部に微細な細孔が形成される。そして焼成工程においては、電極体と有機多孔質構造体との界面において両者から供給される炭素及び樹脂由来の炭素とシリコンとの反応によって炭化ケイ素層が形成され、電極体と炭化ケイ素質多孔質構造体とが炭化ケイ素層を介して化学的に一体的に結合される。
炭素化工程と焼成工程とは、別々に行ってもよいが、炭素化工程に連続して焼成工程を行うことが望ましい。このようにすることで、熱エネルギーの無駄を防止することができる。
また仮固定工程において、電極体と有機多孔質構造体との仮固定部分を紙、不織布などの有機多孔質板で覆い、上記したスラリーで電極体及び有機多孔質構造体に貼着しておくことが好ましい。このようにすれば、炭素化工程後の焼成工程において有機多孔質板が炭化ケイ素質多孔質板となり、電極体及び炭化ケイ素質多孔質構造体と一体に固着される。したがって電極体と炭化ケイ素質多孔質構造体との固定強度がさらに向上する。
さらに有機多孔質板は、炭素元素の濃度が50質量%以上、より好ましくは70質量%以上であることが望ましい。このような有機多孔質板を用いることで、焼成工程で生成する炭化ケイ素質多孔質板の密度が上がり導電性が高まるので、通電時に電極板から炭化ケイ素質多孔質構造体への給電の均一化を図ることができる。この意味において、有機多孔質板は広い面積で有機多孔質構造体に貼着しておくことが望ましく、電極体が固着されている有機多孔質構造体の端面の面積の50%以上を覆うように貼着することが望ましい。
焼成工程における反応では、シリコンと炭素の組成が原子比でSi/C<1であれば炭化ケイ素と未反応の炭素が残留し、Si/C>1であれば炭化ケイ素と未反応の金属シリコンが残留する。未反応の炭素が残留すると、炭化ケイ素質多孔質構造体の強度が十分でない場合がある。この場合には、焼成工程の後に、真空中又は非酸化性雰囲気中にて炭化ケイ素質多孔質構造体に溶融シリコンを含浸させ金属シリコン層を形成する溶融含浸工程を行うことが望ましい。形成される金属シリコン層によって炭化ケイ素質多孔質構造体が補強される。
溶融含浸工程は、金属シリコンをその融点(約1410℃)以上に加熱して溶融シリコンとし、炭化ケイ素質多孔質構造体に含浸すればよく、特に真空中で行うことが好ましい。溶融含浸用シリコンは、粉末状、顆粒状、あるいは塊状でもよい。
溶融含浸工程では、炭化ケイ素は溶融シリコンに対する濡れ性が良好であるので、焼成工程時に立体骨格部に形成された微細な細孔に溶融シリコンが浸入し、残留している炭素と反応して炭化ケイ素が形成される。この反応は、シリコンを系外から加えているので体積が増加する反応であり、立体骨格部の内部に形成された微細な細孔がシリコン又は炭化ケイ素で充填されることになる。したがって立体骨格部の強度が向上するとともに、投錨効果によって金属シリコン層と立体骨格部との付着強度が著しく高まる。
そして溶融含浸工程では、真空中又は非酸化性雰囲気中にて1410℃の高温に晒されるため、残留している炭素は大部分が炭化ケイ素となる。なお溶融含浸工程は、焼成工程と同時に又は焼成工程後に連続して行うこともできる。すなわち炭素化工程後に、溶融含浸用シリコンを加えて真空あるいは非酸化性雰囲気にて、シリコンの融点(約1410℃)以上の温度でシリコンを溶融含浸させ、未反応の炭素とシリコンとを反応させる。過剰なシリコンはシリコンとして残留する。
炭化ケイ素質多孔質構造体がシリコンを含む場合には、含まれるシリコンの少なくとも一部を酸化してSiOを形成する酸化工程を行うことも好ましい。SiOにはシラノール基が容易に生成し親水性が向上する。したがって触媒金属化合物の水溶液を多量に吸水することが可能であり、それを焼成することで白金などの触媒金属を高分散担持した触媒を形成することができる。この触媒は排ガス浄化用触媒などに用いることが可能であり、しかも通電によって発熱するため、始動時における低温の排ガスからも有害成分を浄化することができる。
この酸化工程は、シリコンを含む炭化ケイ素質多孔質構造体を大気中などの酸化性雰囲気中で加熱すればよい。加熱温度が高いほど、シリコンの総量に対して生成するSiO2量が多くなることが明らかとなっており、400℃以上で加熱することが望ましい。なお加熱時間は10分間程度保持すれば十分である。また形成されるSiOの量は、加熱温度によって調整することが可能であり、加熱温度が高いほどSiOを多く形成することができる。したがってPtなどの触媒金属を高分散状態かつ十分な担持量で担持できる厚さとすることができる加熱温度を選択すればよい。
図1に本実施例の多孔質発熱装置を、図2にその要部拡大断面図を示す。この多孔質発熱装置は、炭化ケイ素系セラミックスからなる多孔質構造体1と、多孔質構造体1と一体に形成された一対の電極体2と、よりなる。多孔質構造体1は円柱形状をなし、多数の連続気孔を有している。一対の電極体2は黒鉛から形成された棒状をなし、それぞれ一端部が多孔質構造体1の両端面の中心に差し込まれ、炭化ケイ素層3を介して多孔質構造体1と一体に固着されている。
以下、この多孔質発熱装置の製造方法を説明し、構成の詳細な説明に代える。
フェノール樹脂の炭素化による炭素とシリコンとの原子比がSi/C=0.6になる割合にフェノール樹脂と平均粒径約20μmのシリコン粉末との混合量を設定し、シリコン粉末重量の約2.4倍の重量のエチルアルコールでフェノール樹脂を溶解してスラリーを調製し、シリコン粉末の粒径を小さくするために1日間ボールミル混合して、更に平均粒径約3μmの炭化ケイ素粉末をシリコン粉末の0.5倍の重量添加し、分散スラリーを調製した。
<含浸工程・除去工程>
#13(1インチ当たり13セル数)の円柱状ポリウレタンスポンジを用意し、上記分散スラリーを十分に含浸し、分散スラリーが連続気孔を塞がない程度に絞り、これを70℃で3時間乾燥させた。
<炭素化工程・仮固定工程>
分散スラリーが付着したスポンジを、アルゴンガス雰囲気下にて1000℃に加熱して炭素化した。この時、スポンジが熱分解するとともにフェノール樹脂が炭素化し、用いたスポンジと同等の立体骨格を有する炭素質多孔体が形成された。
この炭素質多孔体は加工が容易であるので、その両端面の中央に軸方向に延びる凹部をそれぞれ形成した。一方、黒鉛から予め形成された一対の電極体2を用意し、上記分散スラリーの固形分濃度を高くすることで調製された高粘度のペーストを一端部に塗布し、そのペーストが塗布された一端部を両端の凹部にそれぞれ挿入した。これを70℃で3時間乾燥させ、一対の電極体2を炭素質多孔体にそれぞれ仮固定した。次いで、この炭素質多孔体をアルゴンガス中にて1000℃で1時間焼成し、ペーストを炭素化した。
<焼成工程・溶融含浸工程>
次にシリコン顆粒の適量を炭素質多孔体の表面に置き、真空中にて1450℃で1時間焼成した。この焼成では、まずシリコンの融点(約1410℃)以下の温度で、炭素がシリコン粉末と反応して、炭化ケイ素と未反応の炭素とからなるスポンジ骨格を有する多孔質構造体1が形成される。また電極体2と炭素質多孔体との界面では、電極体2と炭素質多孔体に含まれる炭素とシリコン粉末とが反応して炭化ケイ素層3が形成され、これにより電極体2は、炭化ケイ素層3を介して多孔質構造体1に一体に固着された。
さらに、シリコンの融点以上の温度で多孔質構造体1にシリコン顆粒が溶融含浸し、未反応の炭素と反応して炭化ケイ素が生成するとともに、余剰の金属シリコンによって多孔質構造体が補強され電極体2の固着強度もさらに向上する。
得られた多孔質発熱装置は、一対の電極体2が炭化ケイ素質多孔質構造体1と一体に固着し、一対の電極体2は使用に耐えうる十分な強度を備えていた。
しかしながら実施例1の多孔質発熱装置においては、電極体2の固着部位が局所的であり、炭化ケイ素層3を介しての電極体2と多孔質構造体1との接触面積が小さい。そのため一対の電極体2を介した通電時における電流密度にばらつきが生じ、多孔質構造体1の発熱が不均一になる場合がある。
そこで本実施例の多孔質発熱装置は、図3及び図4に示すように直方体形状の多孔質構造体1と、その長手方向の両端面に一体的に接合された一対の電極体2と、からなる。一対の電極体2は黒鉛から形成された板状をなし、炭化ケイ素層3を介して多孔質構造体1と一体に固着されている。また多孔質構造体1の骨格表面には、金属シリコン層10が形成されている。以下、この多孔質発熱装置の製造方法を説明し、構造の詳細な説明に代える。
フェノール樹脂の炭素化による炭素とシリコンとの原子比がSi/C=0.6になる割合にフェノール樹脂と平均粒径約20μmのシリコン粉末との混合量を設定し、シリコン粉末重量の約2.4倍の重量のエチルアルコールでフェノール樹脂を溶解してスラリーを調製し、シリコン粉末の粒径を小さくするために1日間ボールミル混合して、更に平均粒径約3μmの炭化ケイ素粉末をシリコン粉末の0.5倍の重量添加して分散スラリーを調製した。
<仮固定工程・含浸工程・除去工程>
#13(1インチ当たり13セル数)の直方体形状のポリウレタンスポンジを用意した。このスポンジに上記分散スラリーを十分に含浸し、分散スラリーが連続気孔を塞がない程度に絞った後、70℃で3時間乾燥させた。次いで上記分散スラリーの固形分濃度を高くすることで調製された高粘度のペーストを用い、ポリウレタンスポンジの長手方向の両端に黒鉛製の電極体2をそれぞれ貼着した。これを70℃で3時間乾燥させ、電極体2を仮固定した。
<炭素化工程>
電極体2が仮固定されたスポンジを、アルゴンガス雰囲気下にて1000℃に加熱して炭素化した。この時、スポンジが熱分解するとともにフェノール樹脂が炭素化し、用いたスポンジと同等の立体骨格を有する炭素質多孔体が形成された。
<焼成工程・溶融含浸工程>
続いて、シリコン顆粒の適量を炭素質多孔体の表面に置き、真空中にて1450℃で1時間焼成した。この焼成では、まずシリコンの融点(約1410℃)以下の温度で、炭素がシリコン粉末と反応して、スポンジ骨格の炭化ケイ素と未反応の炭素とからなる多孔質構造体1が形成される。また電極体2と炭素質多孔体との界面では、電極体2と炭素質多孔体に含まれる炭素とシリコン粉末とが反応して炭化ケイ素層3が形成され、これにより電極体2は炭化ケイ素層3を介して多孔質構造体1に一体に固着された。
この焼成では、温度がシリコンの融点以上になるとシリコン顆粒が多孔質構造体1に溶融含浸して残存炭素とも反応し、最終的に金属シリコン層10をもつ多孔質構造体1を得た。
得られた多孔質発熱装置は、一対の電極体2が多孔質構造体1と一体に固着し、使用に耐えうる十分な強度を備えていた。また炭化ケイ素層3を介しての電極体2と多孔質構造体1との接触面積は、多孔質構造体1の端面の面積の50%以上と十分に大きいので、多孔質構造体1は通電時に均一に発熱する。
この多孔質発熱装置は、多孔質構造体1の表面の大部分が露出し、電極体2の表面も給電に必要な部位以外の部分が露出している。したがって実際の使用時に他部材との短絡が生じる場合がある。このような不具合を防ぐには、図5に示すように、露出させたくない表面に絶縁層4を形成することが望ましい。
絶縁層4は、電極体2の先端部を除く多孔質構造体1の全表面に厚さ50μm程度に形成することができる。例えば絶縁層4は、アルミナセメントと水とからなるスラリーを調製し、上記のようにして製造された多孔質発熱装置1の電極体2の先端部を除く全表面にウォッシュコートし、それを大気中1000℃で焼成することで形成することができる。
上記実施例2では、多孔質構造体1の長手方向の両端面に板状の電極体2が固着されているが、図6に示すように多孔質構造体1の短手方向の両端面に一対の電極体2を形成したい場合がある。この場合に上記実施例2と同様の形状の電極体2を用いると、多孔質構造体1の短手方向の端面の面積に対する電極体2の接触面積の割合が小さくなるため、一対の電極体2を介した通電時における電流密度にばらつきが生じ、多孔質構造体1の発熱が不均一になる場合がある。
そこで本実施例では、図6、図7に示すように、電極体2の表面に導電性を有する板状の被覆部材5を配置し、被覆部材5が多孔質構造体1の短手方向の端面の大部分(約80%)を被覆するように構成している。被覆部材5は、電極体2の表面及び多孔質構造体1の表面に一体に固着されている。したがって通電時には、電流は電極体2から被覆部材5を通じて多孔質構造体1に流れるため、多孔質構造体1は通電時に均一に発熱する。また被覆部材5によって電極体2の脱落がさらに確実に防止されるとともに、多孔質構造体1も補強されている。
この多孔質発熱装置の製造方法を以下に説明する。
<仮固定工程・含浸工程・除去工程>
#13(1インチ当たり13セル数)の直方体形状のポリウレタンスポンジ(実施例2と同様のもの)を用意した。このスポンジに実施例2と同様の分散スラリーを十分に含浸し、分散スラリーが連続気孔を塞がない程度に絞った後、70℃で3時間乾燥させた。次いで分散スラリーの固形分濃度を高くすることで調製された高粘度のペーストを用い、短手方向の両端に黒鉛製の電極体2をそれぞれ貼着した。一方、活性炭を70質量%含有する厚さ0.3mmの板紙(段ボール紙の平板紙)を用意し、上記分散スラリーを含浸させた後に電極体2の表面及びスポンジの短手方向の端面に上記分散スラリーを用いて貼着した。これを70℃で3時間乾燥させ、電極体2と板紙を仮固定した。
<炭素化工程>
電極体2及び板紙が仮固定されたスポンジを、アルゴンガス雰囲気下にて1000℃に加熱して炭素化した。この時、スポンジ及び板紙が熱分解するとともにフェノール樹脂が炭素化し、板紙が炭素化した炭素板体と電極体2とが仮固定された炭素質多孔体が形成された。
<焼成工程・溶融含浸工程>
次いで、シリコン顆粒の適量を炭素質多孔体の表面に置き、真空中にて1450℃で1時間焼成した。この焼成では、まずシリコンの融点(約1410℃)以下の温度で、炭素がシリコン粉末と反応して、スポンジ骨格の炭化ケイ素と未反応の炭素とからなる多孔質構造体1と、貼着された板紙形状で炭化ケイ素質の被覆部材5とが形成される。また電極体2、被覆部材5及び多孔質構造体1のそれぞれの界面では炭化ケイ素層3が形成され、これにより電極体2及び被覆部材5は炭化ケイ素層3を介して多孔質構造体1に一体に固着された。
温度がシリコンの融点以上になるとシリコン顆粒が多孔質構造体1及び被覆部材5に溶融含浸して残存炭素とも反応する。過剰のシリコンによって、多孔質構造体1の骨格の表面に金属シリコン層が形成される。また被覆部材5は炭化ケイ素とシリコンからなる緻密な構造となる。
得られた多孔質発熱装置は、一対の電極体2が多孔質構造体1と一体に固着し、かつ被覆部材5によって被覆されている。この被覆部材5は、炭化ケイ素とシリコンとからなり緻密な構造であるので導電性が高い。したがって電流は電極体2から被覆部材5を通じて多孔質構造体1に流れるので、炭化ケイ素層3を介しての電極体2と多孔質構造体1との接触面積が小さくても、多孔質構造体1は通電時に均一に発熱する。
本実施例の多孔質発熱装置は、例えば以下のようにして排ガス浄化用触媒として用いることができる。すなわち上記で製造された多孔質発熱装置を、先ず大気中にて約600℃まで昇温し金属シリコン層を酸化してSiO層を形成する。次いでジニトロジアミン白金硝酸溶液の水溶液に、SiO層をもつ多孔質構造体1を浸し、引き上げて乾燥し、例えば300℃にて1時間焼成する。
こうして得られる排ガス浄化用触媒では、多孔質構造体1の見掛けの体積1Lあたり3g程度の白金を担持することができる。自動車の三元触媒における白金の担持量は、ハニカム基材の見掛けの体積1Lあたり1〜2gであるから、この排ガス浄化用触媒は一般の三元触媒に対して1.5〜3倍の白金が担持されることになる。
したがって本実施例の多孔質発熱装置は、多孔質構造体1のSiO層に白金を高濃度で担持することができ、排ガス浄化用触媒として用いることができる。しかも多孔質構造体1は多孔質であるので、ガス拡散性に優れ、担持された白金の触媒作用が十分に発現される。そして一般の排ガス浄化用触媒では始動時などの冷間時には、白金が活性化温度に到達していないため排ガス浄化が困難であるのに対し、この排ガス浄化用触媒は電極体2に通電することで多孔質構造体1を加熱することができるので、冷間時においても有害物質の排出を防止することができる。
本実施例に係る多孔質発熱装置を図8、図9に示す。この多孔質発熱装置は、多数のセル通路60をもち炭化ケイ素質のハニカム基材6と、その互いに平行な外壁面に一体に固着された電極体2と、電極体2及びハニカム基材6の表面を覆う導電性の被覆部材7と、からなる。ハニカム基材6は、炭化ケイ素質の多孔質平板61と、炭化ケイ素質の多孔質波板62とが交互に積層されてなり、多孔質平板61と多孔質波板62との間にセル通路60が形成されている。以下、この多孔質発熱装置の製造方法を説明し、構成の詳細な説明に代える。
<含浸工程・除去工程・仮固定工程>
活性炭を70質量%含有する片面段ボール紙(チヨダコンテナー株式会社製「活性炭混抄シート」)を紙用接着剤を用いて複数枚積層し、多数のセル通路をもつハニカム体を形成した。最後の波板部には、活性炭を70質量%含有する板紙(片面段ボール紙の平板紙)を接合した。
一方、フェノール樹脂の炭素化による炭素とシリコンとの原子比がSi/C=3になる割合にフェノール樹脂と平均粒径約20μmのシリコン粉末との混合量を設定し、シリコン粉末重量の約0.8倍の重量のエチルアルコールでフェノール樹脂を溶解してスラリーを調製し、シリコン粉末の粒径を小さくするために1日間ボールミル混合して、更に平均粒径約3μmの炭化ケイ素粉末をシリコン粉末の0.33倍の重量添加して分散スラリーを調製した。
上記ハニカム体にこの分散スラリーを含浸させ、余分な分散スラリーを吹き払い、70℃で3時間乾燥させた。そして分散スラリーの固形分濃度を高くすることで調製された高粘度のペーストを用い、互いに平行な表裏面を構成する多孔質平板61に黒鉛製の電極体2をそれぞれ貼着した。一方、活性炭を70質量%含有する厚さ0.3mmの板紙(片面段ボール紙の平板紙)を用意し、上記分散スラリーを含浸させた後に電極体2の表面及びハニカム体の表面に貼着した。これを70℃で3時間乾燥させ、電極体2と板紙をハニカム体に仮固定した。
<炭素化工程・焼成工程>
電極体2及び板紙が仮固定されたハニカム体を、アルゴンガス雰囲気下にて1000℃に加熱して炭素化した。この時、ハニカム体及び板紙が熱分解するとともにフェノール樹脂が炭素化し、板紙が炭素化した炭素板体と電極体2とが仮固定された炭素質ハニカム体が形成された。
次いで、この炭素質ハニカム体を真空中にて焼成した。この焼成では、シリコンの融点(約1410℃)以下の温度で、炭素がシリコン粉末と反応して炭化ケイ素質のハニカム基材6と、貼着された板紙形状で炭化ケイ素質の被覆部材7とが形成される。また電極体2、被覆部材7及びハニカム基材6のそれぞれの界面では、含まれる炭素とシリコン粉末とが反応して炭化ケイ素層3が形成され、これにより電極体2及び被覆部材7は炭化ケイ素層3を介してハニカム基材6に一体に固着された。
得られた多孔質発熱装置は、一対の電極体2がハニカム基材6と一体に固着し、かつ被覆部材7によって被覆されている。電流は電極体2から被覆部材7を通じてハニカム基材6に流れるので、炭化ケイ素層3を介しての電極体2とハニカム基材6との接触面積が小さくても、ハニカム基材6は通電時に均一に発熱する。
本実施例は、炭素化工程後に焼成工程と溶融含浸工程を行ったこと以外は実施例4と同一であるので、図は実施例4に係る図8と図9を共用し、炭素化工程までの説明は省略する。
<焼成工程・溶融含浸工程>
シリコン顆粒の適量を、板紙が炭素化した炭素板体と電極体2とが仮固定された炭素質ハニカム体の表面に置き、真空中にて1450℃で1時間焼成した。この焼成では、まずシリコンの融点(約1410℃)以下の温度で、炭素がシリコン粉末と反応して、炭化ケイ素質のハニカム基材6と、貼着された板紙形状で炭化ケイ素質の被覆部材7とが形成される。また電極体2、被覆部材7及びハニカム基材6のそれぞれの界面では、含まれる炭素とシリコン粉末とが反応して炭化ケイ素層3が形成され、これにより電極体2及び被覆部材7は炭化ケイ素層3を介してハニカム基材6に一体に固着された。
温度がシリコンの融点以上になるとシリコン顆粒がハニカム基材6及び被覆部材7に溶融含浸して残存炭素があれば反応し、ハニカム基材6や被覆部材7中に存在する小さな気孔を埋める。また過剰のシリコンによって、ハニカム基材6の骨格の表面や被覆部材7の表面に金属シリコン層が形成される。これにより実施例4に比べてハニカム基材6の強度が向上し、電極体2の固着強度も向上する。
得られた多孔質発熱装置は、一対の電極体2がハニカム基材6と一体に固着し、かつ被覆部材7によって被覆されている。この被覆部材7は、表面に金属シリコン層が形成され、しかも緻密であるので導電性が高い。したがって電流は電極体2から被覆部材7を通じてハニカム基材6に流れるので、炭化ケイ素層3を介しての電極体2とハニカム基材6との接触面積が小さくても、ハニカム基材6は通電時に均一に発熱する。
本実施例に係る多孔質発熱装置を図10に示す。この多孔質発熱装置は、円柱形状で炭化ケイ素質のハニカム基材6と、その外周表面に一体的に固着された黒鉛製の一対の電極体2と、電極体2の表面とハニカム基材6の約1/4周の表面を覆う炭化ケイ素質の被覆部材7と、からなる。一対の電極体2はハニカム基材6の軸と平行に延び、互いに対向するように軸に対して対称に配置されている。一対の電極体2及び被覆部材7は、図示しない炭化ケイ素層を介してハニカム基材6の外周表面に一体に固着されている。
この多孔質発熱装置を製造するには、先ず実施例4と同様の活性炭を含有する片面段ボール紙を用い、多孔質平板61が外側となるようにロール状に巻回して多数のセル通路60をもつハニカム体を形成する。そして実施例4と同様の分散スラリーを含浸させ、余分な分散スラリーを吹き払い、70℃で3時間乾燥後、分散スラリーの固形分濃度を高くすることで調製された高粘度のペーストを用いて一対の電極体2を外周表面に仮固定する。さらに活性炭を含有する板紙(段ボール紙の平板紙)などを用意し、分散スラリーを含浸させた後に電極体2の表面及びハニカム体の表面を覆うように巻いて貼着する。これを乾燥させ、電極体2と板紙をハニカム体に仮固定する。
その後、実施例4と同様に炭素化工程と焼成工程を行うことで、本実施例の多孔質発熱装置を製造することができる。このように円筒形状のハニカム基材6とすれば、一般的な自動車の触媒コンバータに搭載することができ、実用性が高い。
本発明の多孔質発熱装置は、各種ヒータばかりでなく、排ガス浄化用触媒、ディーゼルパティキュレートフィルタ(DPF)などに利用可能である。
1:多孔質構造体
2:電極体
3:炭化ケイ素層
10:金属シリコン層

Claims (9)

  1. 炭化ケイ素系セラミックスからなる多孔質構造体と、該多孔質構造体に固着された一対の電極体と、よりなり、該電極体を介した通電によって発熱する多孔質発熱装置であって、
    該電極体は炭素系材料から形成され、該電極体と該多孔質構造体との界面に形成された炭化ケイ素層を介して該多孔質構造体と一体に固着されていることを特徴とする多孔質発熱装置。
  2. 前記電極体の表面と前記多孔質構造体の表面とは炭化ケイ素系セラミックスからなる板状の被覆部材で一体に覆われている請求項1に記載の多孔質発熱装置。
  3. 前記電極体は前記多孔質構造体の端面に固着され、前記被覆部材は前記電極体が固着されている該端面の面積の50%以上を覆う請求項2に記載の多孔質発熱装置。
  4. 前記電極体は70質量%以上の炭素を含む請求項1〜3のいずれかに記載の多孔質発熱装置。
  5. 前記多孔質構造体は少なくとも一部にシリコンを含む請求項1〜4のいずれかに記載の多孔質発熱装置。
  6. 炭素源としての樹脂とシリコン粉末とを含むスラリー又は該スラリーにさらに炭化ケイ素粉末を含むスラリーを有機多孔質構造体に含浸させる含浸工程と、
    該有機多孔質構造体から余剰のスラリーを除去し該有機多孔質構造体の骨格及びその表面に該スラリーが付着した前駆体を形成する除去工程と、
    該有機多孔質構造体の所定部分に炭素系材料からなる電極体を仮固定する仮固定工程と、
    真空中又は非酸化性雰囲気中にて該前駆体を加熱し該樹脂を炭素化するとともに該有機多孔質構造体を熱分解して炭素質多孔質構造体とする炭素化工程と、
    真空中又は非酸化性雰囲気中にて該炭素質多孔質構造体を加熱することでシリコンと炭素とを反応させて該炭素質多孔質構造体から炭化ケイ素質多孔質構造体を形成するとともに該電極体と該炭化ケイ素質多孔質構造体とを一体に結合する焼成工程と、を行うことを特徴とする多孔質発熱装置の製造方法。
  7. 前記仮固定工程は前記電極体を前記有機多孔質構造体の表面に配置し紙状の有機多孔質板で前記電極体と前記有機多孔質構造体の表面を覆うとともに該有機多孔質板にも前記スラリーを含浸させ、前記焼成工程は該有機多孔質板から炭化ケイ素質の被覆部材を形成し該被覆部材を前記電極体及び前記炭化ケイ素質多孔質構造体と一体に結合する請求項6に記載の多孔質発熱装置の製造方法。
  8. 前記有機多孔質板に含まれる炭素元素の濃度は50質量%以上である請求項7に記載の多孔質発熱装置の製造方法。
  9. 前記焼成工程後に、真空中又は非酸化性雰囲気中にて前記炭化ケイ素質多孔質構造体に溶融シリコンを含浸させ金属シリコン層を形成する溶融含浸工程を行う請求項6〜8のいずれかに記載の多孔質発熱装置の製造方法。
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