JP2011032360A - フッ素樹脂および反射防止材料 - Google Patents

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Abstract

【課題】フッ素ガスを用いて室温等の工業的条件下で直接フッ化処理を行い製造した場合であっても、低分子量化が問題にならないフッ素樹脂および、該樹脂を含む反射防止材料を提供すること。
【解決手段】本発明のフッ素樹脂は、エチレン性二重結合を分子内に複数有するモノマーと、ポリチオールとをラジカル重合する工程(a)を経て得られる重合体(A)に、フッ素ガスを用いた直接フッ化処理を施すことにより得られ、本発明の反射防止材料は、少なくとも、エチレン性二重結合を分子内に複数有するモノマーと、ポリチオールとをラジカル重合する工程(a)を経て得られる重合体(A)を含む層を有する材料(1)に、フッ素ガスを用いた直接フッ化処理を施すことにより得られる。
【選択図】図1

Description

本発明は、フッ素樹脂および反射防止材料に関する。
液晶ディスプレイ(LCD)、プラズマディスプレイ(PDP)、有機エレクトロルミネッセンスディスプレイ(OELD)等の各種表示装置の開発は、近年盛んに行われており、高品質化、低コスト化が開発の主題となっている。
高品質化における重要なテーマとして視認性の向上が挙げられる。視認性の向上としては、高視野角化や、高精細化に加えて、反射防止性を向上させることが重要な技術的アプローチの一つである。なお、反射防止とは、表示画面へ入射した外光(入射光)に由来する反射光によるコントラストの低下やいわゆる映り込みを防止することを示す。
また、携帯電話、携帯端末、デジタルカメラ、デジタルビデオカメラ等は現在急速に普及が進んでいるが、その使用環境は屋外であることが多い。屋外では、屋内と比べて反射光により視認性が損なわれやすい。また屋外で使用する機器は一般に手で触れたり、他の物と接触する可能性が高い。このため屋内で使用する機器と比べ、高い反射防止性と表示画面の保護が求められる。
表示画面の反射光を低減するために、反射防止層を有する光学フィルムを表示画面の表面に設けることが一般に行われている。
反射防止層としては、低屈折率層および高屈折率層を有し、その屈折率の違いによりそれぞれの界面で反射される光の干渉を利用することにより、反射光を低減するもの、反射防止層の表面側を低屈折率とし、表示画面方向の深さ方向に向かって徐々に屈折率を大きくすることにより、反射光を低減するものがある。
ところで、フッ素原子を含むフッ素系重合体は一般に屈折率が低く、また防汚性を付加することも可能であり、非晶性フッ素系重合体は一般に透明性にも優れるため反射防止層を形成する重合体として用いられることが多い。
反射防止層を形成する代表的な重合体としては、フッ素置換されたアルキルアクリレートの重合体等が知られている。しかしながらこれらの重合体は、他のフィルム等の基材へコートしても柔らかいという欠点が有り、またコート面と基材との密着性も不充分であった。
また特許文献1には、ポリフェニレンスルフィド等の硫黄含有樹脂を含む硫黄含有樹脂基材層を有するフィルムの硫黄含有樹脂基材層表面をフッ素ガスを用いて直接フッ化処理を行うことにより、反射率の低い反射防止フィルムが得られることが記載されている。
特開2007−178796号公報
本発明者らは、特許文献1に記載の硫黄含有樹脂は、フッ素ガスを用いて直接フッ化処理を行うと、フッ素ガス処理条件によっては、重合体鎖中の炭素‐硫黄結合等の炭素‐ヘテロ原子結合が切断される場合があり、結果として、得られたフッ素系樹脂が低分子量化して表面に油状に付着した状態(浮き出し)となり、エタノール等の溶剤で拭き取れてしまうことを見出した。
また、反射防止フィルム等に利用される低屈折率物質は、空気層(屈折率1.0)との屈折率差が、小さいものを用いることが好ましいことが、一般に知られている。加えて、反射防止フィルムは光線透過率に優れること、画面保護の観点から高硬度であることが望まれる。
本発明は上記従来技術の有する課題を鑑みてされたものであり、反射率の低い反射防止フィルム等の反射防止材料を得る際に用いることが可能であり、またフッ素ガスを用いて室温等の工業的条件下で直接フッ化処理を行い製造した場合であっても、低分子量化が問題にならないフッ素樹脂および、該樹脂を含む反射防止材料を提供することを目的とする。
本発明者らは上記課題を達成するために鋭意研究を重ねた結果、特定の重合体(A)に、直接フッ化処理を施すことにより得られるフッ素樹脂は透明性に優れ、該重合体(A)を含む層を有する材料(1)に、直接フッ化処理を施すことにより、反射防止性に優れる反射防止材料を得ることが可能であることを見いだし本発明を完成させた。
すなわち、本発明のフッ素樹脂は、エチレン性二重結合を分子内に複数有するモノマーと、チオール基を分子内に複数有するポリチオールとをラジカル重合する工程(a)を経て得られる重合体(A)に、フッ素ガスを用いた直接フッ化処理を施すことにより得られる。
前記工程(a)が、乳化重合により行われ、前記重合体(A)が、前記工程(a)により重合体微粒子を得た後に、前記重合体微粒子の存在下で、エチレン性二重結合を分子内に一つ有するモノマーを重合することにより得られる多段型重合体微粒子であってもよい。
本発明の反射防止材料は、少なくとも、エチレン性二重結合を分子内に複数有するモノマーと、ポリチオールとをラジカル重合する工程(a)を経て得られる重合体(A)を含む層を有する材料(1)に、フッ素ガスを用いた直接フッ化処理を施すことにより得られる。
前記工程(a)が、乳化重合により行われ、前記重合体(A)が、前記工程(a)により重合体微粒子を得た後に、前記重合体微粒子の存在下で、エチレン性二重結合を分子内に一つ有するモノマーを重合することにより得られる多段型重合体微粒子であってもよい。
前記材料(1)が、基材上に、重合体(A)を含有するコート層を形成することにより得られる、基材およびコート層から形成される材料であってもよい。
前記材料(1)が、重合体(A)を含む層のみからなる、単層構造の材料であってもよい。
本発明の重合体(A)から得られるフッ素樹脂は、透明性に優れている。また、該フッ素樹脂は屈折率が低いため、前記重合体(A)を含む層を有する材料(1)に、フッ素ガスを用いた直接フッ化処理を施すことにより得られる反射防止材料は、優れた反射防止性を有する。
また、重合体(A)に、直接フッ化処理を施すことにより得られるフッ素樹脂は、低分子量化が問題にならないため好ましい。
実施例2および比較例2で得られたフィルムの直接フッ化処理前後の反射分光スペクトルを示す。
次に本発明について具体的に説明する。
〔フッ素樹脂〕
本発明のフッ素樹脂は、エチレン性二重結合を分子内に複数有するモノマーと、ポリチオールとをラジカル重合する工程(a)を経て得られる重合体(A)に、フッ素ガスを用いた直接フッ化処理を施すことにより得られる。
本発明のフッ素樹脂は、前記重合体(A)が多官能性のモノマーである、エチレン性二重結合を分子内に複数有するモノマーおよびポリチオールを原料として用いているため、架橋構造を有し、強度にも優れる。また、本発明のフッ素樹脂は、重合体(A)に直接フッ化処理を施すことにより得られるため、低屈折率の樹脂である。
なお、本発明において、フッ素ガスを用いた直接フッ化処理を、単に直接フッ化処理とも記す。
また、本発明において、エチレン性二重結合とは、CH2=CH−、またはCH2=CCH3−で表わされる構造を意味し、エチレン性二重結合を分子内に複数有するモノマーとは、該構造を分子内に2つ以上有するモノマーを意味し、エチレン性二重結合を分子内に一つ有するモノマーとは、該構造を分子内に一つ有するモノマーを意味する。
(重合体(A))
前記重合体(A)は、エチレン性二重結合を分子内に複数有するモノマーと、ポリチオールとをラジカル重合する工程(a)を経て得られる重合体である。前記重合体(A)は、原料として、ポリチオールを用いることにより、高い屈折率を有する。
前記重合体(A)としては、前記工程(a)を経て得られる重合体であればよく、具体的には、前記工程(a)により重合される重合体であってもよく、前記工程(a)を重合体微粒子が重合される条件下で行い、前記工程(a)により重合体微粒子を得た後に、前記重合体微粒子の存在下で、エチレン性二重結合を分子内に一つ有するモノマーを重合することにより得られる多段型重合体微粒子であってもよい。なお、前記重合体微粒子を得る際には、前記工程(a)は通常、乳化重合、懸濁重合等により行われ、中でも乳化重合により行われることが好ましい。
前記エチレン性二重結合を分子内に複数有するモノマーとしては、例えばジビニルベンゼン、ジイゾプロペニルベンゼン、4,4'‐ジビニルビフェニル等のエチレン性二重結合を分子内に二つ有する芳香族化合物、2,2−ビス(4−(メタ)アクリロイルオキシエチルジフェニル)プロパン等のビスフェノールA誘導体、9,9−ビス(4−メタクリロキシエトキシ)フェニル)フルオレン等のジフェニルフルオレン誘導体、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,10−デカンジオールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート等の多官能(メタ)アクリレートを用いることができる。またエチレン性二重結合を分子内に複数有するモノマーとしては前記モノマーの有する水素原子の一部にフッ素が導入されたモノマーを用いてもよい。
これらのエチレン性二重結合を分子内に複数有するモノマーは1種単独で用いてもよく、2種以上を用いてもよい。
なお、(メタ)アクリロイルとは、メタクリロイルと、アクリロイルとの両方を示し、(メタ)アクリレートとは、メタクリレートとアクリレートとの両方を示す。
これらの中でも、重合体(A)の屈折率を大きくするために、エチレン性二重結合を分子内に複数有するモノマーとしては、芳香環を有するモノマーが好ましく、エチレン性二重結合を分子内に二つ有する芳香族化合物がより好ましく、ジビニルベンゼン、ジイゾプロペニルベンゼン、および4,4'‐ジビニルビフェニルから選択される少なくとも1種のエチレン性二重結合を分子内に二つ有する芳香族化合物を用いることが特に好ましい。
前記ポリチオールとしては、1,4−ビス(メルカプトメチル)ベンゼン、エタンジチオール、1,4−ブタンジチオール、1,6−ヘキサンジチオール、エチレングリコールビスチオグリコラート、1,2−プロパンジチオール、2−メルカプトエチルエーテル、ビスメルカプトエチルスルフィド、ビス(メルカプトエチルチオ)エタン、トリメチロールプロパントリス(チオグリコラート)、トリメチロールプロパントリス(チオプロピオネート)、ペンタエリスリトールテトラキス(チオグリコラート)、ペンタエリスリトールテトラキス(チオプロピオネート)、1,2−ビス〔(2-メルカプトエチル)チオ〕−3−メルカプトプロパン等を挙げることが出来る。これらのポリチオールは1種単独で用いてもよく、2種以上を用いてもよい。
前記ポリチオールとしては、ビスメルカプトエチルスルフィド、ビス(メルカプトエチルチオ)エタン、1,2−ビス〔(2-メルカプトエチル)チオ〕−3−メルカプトプロパンから選択される少なくとも1種のポリチオールが、硫黄含有率が大きく高屈折率を期待できるので好ましく、1,2−ビス〔(2-メルカプトエチル)チオ〕−3−メルカプトプロパンが、チオール基が3つあり、架橋度を上げられるのでより好ましい。
前記重合体(A)を製造する際には、前記エチレン性二重結合を分子内に複数有するモノマーおよびポリチオール以外の他のモノマーを用いてもよい。
他のモノマーとしては、例えば単官能モノマーが挙げられる。単官能モノマーとしては
エチレン性二重結合を分子内に一つ有するモノマーが好ましい。
エチレン性二重結合を分子内に一つ有するモノマーとしては、例えばスチレン、メチルスチレン、エチルスチレン等のアルキルスチレン類、イソプロペニルベンゼン等のエチレン性二重結合を分子内に一つ有する芳香族化合物、ベンジル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、tert‐ブチル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、メチル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリルエステル化合物、アクリロニトリル等を用いることができる。これらのエチレン性二重結合を分子内に一つ有するモノマーは1種単独で用いてもよく、2種以上を用いてもよい。
これらのエチレン性二重結合を分子内に一つ有するモノマーとしては、直接フッ化処理により、低屈折率となりやすい芳香族のモノマーを用いることが好ましい。
前記重合体(A)を製造する際に用いる、エチレン性二重結合を分子内に複数有するモノマーおよびポリチオールの量は、エチレン性二重結合を分子内に複数有するモノマーの有するエチレン性二重結合のモル数と、ポリチオールの有するチオール基のモル数との比(エチレン性二重結合/チオール基(モル))が、2.0〜10.0の範囲であることが好ましく、2.5〜5.0の範囲であることがより好ましい。前記範囲内では、重合体(A)に直接フッ化処理を施した際の、重合体(A)中の結合の切断およびそれに伴う分子量の低下が生じにくいため好ましい。
前記重合体(A)の合成方法としては、エチレン性二重結合を分子内に複数有するモノマーと、ポリチオールとをラジカル重合する工程(a)を有していればよく、特に限定はないが例えば、前記工程(a)のみで重合体(A)を重合する方法(重合体(A)の合成方法(1)とも記す)、前記工程(a)を、重合体微粒子を重合することが可能な条件下で行い、前記工程(a)により重合体微粒子を得た後に、前記重合体微粒子の存在下で、エチレン性二重結合を分子内に一つ有するモノマーを重合することにより多段型重合体微粒子(重合体(A))を重合する方法(重合体(A)の合成方法(2)とも記す)が挙げられる。
以下、重合体(A)の代表的な合成方法として、重合体(A)の合成方法(1)および(2)について説明する。
(重合体(A)の合成方法(1))
重合体(A)の合成方法(1)は、エチレン性二重結合を分子内に複数有するモノマーと、ポリチオールとをラジカル重合する工程(a)のみで重合体(A)を重合する方法である。なお、前記合成方法(1)では、重合に関わる工程は、前記工程(a)のみであるが、必要に応じて他の工程を有していてもよい。他の工程としては、例えば重合体(A)を単離する工程、重合体(A)を精製する工程等が挙げられる。
合成方法(1)としては、エチレン性二重結合を分子内に複数有するモノマー、ポリチオールおよび重合開始剤を溶媒中に添加し、ラジカル重合を行い重合体(A)を得る方法、重合体(A)を板、シート、フィルムとして合成する場合には、対向する2枚の板の周辺部をテープなどを用いてシールした内部に、エチレン性二重結合を分子内に複数有するモノマー、ポリチオールおよび重合開始剤の混合物を入れて熱または光等で重合を行うことにより、板、シート、またはフィルム状の重合体(A)を得る方法が挙げられる。また、合成方法(1)としては、ガラス、フィルム等の基材上に、エチレン性二重結合を分子内に複数有するモノマー、ポリチオールおよび重合開始剤の混合物を塗布し、熱または光等で重合を行うことにより、重合体(A)を基材上にコート層として形成する方法であってもよい。また、合成方法(1)においては、前述のエチレン性二重結合を分子内に一つ有するモノマーを、エチレン性二重結合を分子内に複数有するモノマーおよびポリチオールと共に、工程(a)に用いてもよい。なお、エチレン性二重結合を分子内に一つ有するモノマーの少なくとも一部として、アクリロニトリル、エチル(メタ)アクリレート、メチル(メタ)アクリレート等の極性基を有するエチレン性二重結合を分子内に一つ有するモノマーを用いると、溶剤や、バインダーへの分散性、他の樹脂との相溶性を向上させることができる。
重合体(A)の合成方法(1)に用いることが可能な重合開始剤としては、例えば過酸化ベンゾイル、tert−ブチルハイドロパーオキサイド、tert−ブチルパーオキシピバレート、クメンハイドロパーオキサイド等の有機過酸化物、アゾビスイソブチロニトリル、アゾビス−(2,4−ジメチル)バレロニトリル等の有機アゾ化合物、ベンゾフェノン化合物類、アセトフェノン化合物類、ベンジルケタール化合物類、ビスアシルホスフィンオキサイド化合物類、レドックス開始剤が挙げられる。
これらの開始剤は一種単独で用いても二種以上を用いてもよい。
また、重合度の調節の為にメルカプタン類のような公知の連鎖移動剤を使用することも可能である。
合成方法(1)により、前記重合体(A)を製造する場合には、工程(a)に用いるエチレン性二重結合を分子内に複数有するモノマーおよびポリチオールの量は、エチレン性二重結合を分子内に複数有するモノマーの有するエチレン性二重結合のモル数と、ポリチオールの有するチオール基のモル数との比(エチレン性二重結合/チオール基(モル))が、2.0〜10.0の範囲であることが好ましく、2.5〜5.0の範囲であることがより好ましい。前記範囲内では、重合体(A)に直接フッ化処理を施した際の、重合体(A)中の結合の切断およびそれに伴う分子量の低下が生じにくいため好ましい。
また、合成方法(1)にエチレン性二重結合を分子内に一つ有するモノマーを用いる場合には、工程(a)に用いるエチレン性二重結合を分子内に一つ有するモノマーは、エチレン性二重結合を分子内に複数有するモノマーとポリチオールとの合計100重量部あたり、50重量部以下であることが好ましく、25重量部以下であることがより好ましい。
合成方法(1)により、前記重合体(A)を製造する場合には、用いる重合開始剤としては、エチレン性二重結合を分子内に複数有するモノマーとポリチオールとの合計100重量部あたり、0.05〜5重量部であることが好ましく、0.1〜2.5重量部であることがより好ましい。
(重合体(A)の合成方法(2))
重合体(A)の合成方法(2)は、前記工程(a)を、重合体微粒子を重合することが可能な条件下で行い、前記工程(a)により重合体微粒子を得た後に、前記重合体微粒子の存在下で、エチレン性二重結合を分子内に一つ有するモノマーを重合することにより多段型重合体微粒子(重合体(A))を重合する方法である。なお、合成方法(2)では、多段型重合体粒子が、重合体(A)に相当する。前記工程(a)は、重合体微粒子を重合することが可能な条件下でおこなわれるが、通常は、乳化重合、懸濁重合等により行われ、中でも乳化重合により行われることが好ましい。
合成方法(2)においては、前記工程(a)において、前述のエチレン性二重結合を分子内に一つ有するモノマーを、エチレン性二重結合を分子内に複数有するモノマーおよびポリチオールと共に用いてもよく、工程(a)の後に行う、重合体微粒子の存在下で行う、エチレン性二重結合を分子内に一つ有するモノマーの重合の際には、エチレン性二重結合を分子内に一つ有するモノマー以外のモノマーを併用してもよい。
なお、前記合成方法(2)では、重合に関わる工程は、前記工程(a)および、工程(a)の後に行う多段型重合体微粒子を得る工程(重合体微粒子の存在下で、エチレン性二重結合を分子内に一つ有するモノマーを重合する工程)である。合成方法(2)は、必要に応じて他の工程を有していてもよい。他の工程としては、例えば重合体(A)を単離する工程、重合体(A)を精製する工程等が挙げられる。
重合体(A)を合成方法(2)により得ると、エチレン性二重結合を分子内に一つ有するモノマーを適宜選択することにより、重合体(A)に様々な機能を付与することができるため好ましい。
前記合成方法(2)においては、工程(a)を乳化重合で行われるが、工程(a)の後に行う、重合体微粒子の存在下での、エチレン性二重結合を分子内に一つ有するモノマーの重合も乳化重合により行われることが好ましい。
前記合成方法(2)で得られる多段型重合体微粒子は、前記工程(a)により得られる重合体微粒子と比べて、バインダー樹脂等に対する分散性に優れる。これは、工程(a)で得られた重合体微粒子の存在下で、エチレン性二重結合を分子内に一つ有するモノマーの重合を行うことにより、前記多段型重合体微粒子が、エチレン性二重結合を分子内に一つ有するモノマーに由来する重合体鎖を有するためである。前記多段型重合体微粒子の、溶剤やバインダーへの分散性、他の樹脂との相溶性を向上させるためには、重合体微粒子の存在下で、エチレン性二重結合を分子内に一つ有するモノマーの重合を行う際に、該モノマーの少なくとも一部として、アクリロニトリル、エチル(メタ)アクリレート、メチル(メタ)アクリレート等を用いる事が好ましい。
また、前記多段型重合体微粒子は、工程(a)により得られる重合体微粒子が、エチレン性二重結合を分子内に複数有するモノマーおよびポリチオールに由来する構造、すなわち架橋構造を有するため、強度に優れる。
前記合成方法(2)では、工程(a)により得られる重合体微粒子の平均粒径としては、20〜300nmであることが好ましく、30〜200nmであることがより好ましい。また、前記多段型重合体微粒子の平均粒径としては、30〜310nmであることが好ましく、40〜250nmであることがより好ましい。前記範囲内では、多段型重合体微粒子は強度に優れ、多段型重合体微粒子を含むコート層を、基材上に形成した際の透明性に優れる傾向があるため好ましい。
なお、前記重合体微粒子の平均粒径および多段型重合体微粒子の平均粒径は、微粒子作成時にベックマンコールター社製サブミクロン粒子アナライザーN4を用いて測定することができる。なお、多段型重合体微粒子をバインダー中に分散させたものの平均粒径を測定した場合には、多段型重合体微粒子を構成する、前記工程(a)の後に行う多段型重合体微粒子を得る工程で形成される、エチレン性二重結合を分子内に一つ有するモノマーに由来する重合体鎖がバインダーと相溶し、観測することが困難になるため、粒子作成時に測定した値よりも小さくなることがある。
合成方法(2)により、前記重合体(A)を製造する場合には、工程(a)に用いるエチレン性二重結合を分子内に複数有するモノマーおよびポリチオールの量は、エチレン性二重結合を分子内に複数有するモノマーの有するエチレン性二重結合のモル数と、ポリチオールの有するチオール基のモル数との比(エチレン性二重結合/チオール基(モル))が、2.0〜10.0の範囲であることが好ましく、2.5〜5.0の範囲であることがより好ましい。前記範囲内では、重合体(A)に直接フッ化処理を施した際の、重合体(A)中の結合の切断およびそれに伴う分子量の低下が生じにくいため好ましい。
また、合成方法(2)にエチレン性二重結合を分子内に一つ有するモノマーを用いる場合には、工程(a)に用いるエチレン性二重結合を分子内に一つ有するモノマーは、エチレン性二重結合を分子内に複数有するモノマーとポリチオールとの合計100重量部あたり、80重量部以下であることが好ましく、60重量部以下であることがより好ましい。
合成方法(2)により、前記重合体(A)を製造する場合には、多段型重合体微粒子を得る工程に用いる、エチレン性二重結合を分子内に一つ有するモノマーの量は、工程(a)に用いるエチレン性二重結合を分子内に複数有するモノマーとポリチオールとの合計100重量部あたり、100重量部以下であることが好ましく、80重量部以下であることがより好ましい。
合成方法(2)により、前記重合体(A)を製造する場合には、工程(a)に用いる重合開始剤としては、エチレン性二重結合を分子内に複数有するモノマーとポリチオールとの合計100重量部あたり、0.05〜5重量部であることが好ましく、0.1〜2.5重量部であることがより好ましい。また、多段型重合体微粒子を得る工程に用いる重合開始剤としては、エチレン性二重結合を分子内に一つ有するモノマー100重量部あたり、0.05〜5重量部であることが好ましく、0.1〜2.5重量部であることがより好ましい。
前記合成方法(2)としては例えば、工程(a)としてエチレン性二重結合を分子内に複数有するモノマーと、ポリチオールとを乳化重合し、重合体微粒子を得た後に、前記重合体微粒子の存在下で、エチレン性二重結合を分子内に一つ有するモノマーを乳化重合により重合することにより多段型重合体微粒子を得る方法が挙げられる。
なお、乳化重合とはラジカル重合の一態様である。
前記合成方法(2)の具体例としては、まず、エチレン性二重結合を分子内に複数有するモノマーと、ポリチオールとを、界面活性剤、重合開始剤等と共に、水へ添加して乳化重合を行い、重合体微粒子含む微粒子分散水溶液を得る。続いて該微粒子分散水溶液にエチレン性二重結合を分子内に一つ有するモノマーを追加し、必要に応じて重合開始剤、界面活性剤、水等を追加し、乳化重合を行う事によって多段型重合体微粒子を含む微粒子分散水溶液を得る方法が挙げられる。
乳化重合に使用される界面活性剤としては、一般的に用いられるアニオン系界面活性剤の他、ノニオン系界面活性剤、カチオン系界面活性剤を用いることができる。これらの界面活性剤は、1種単独で用いても、2種以上を併用して用いてもよい。
界面活性剤の具体例としては、アニオン系界面活性剤としては、脂肪酸塩、アルキルスルホン酸塩、エーテルリン酸塩等、ノニオン系界面活性剤としてはポリオキシエチレンアルキルエーテル系、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル等、カチオン系界面活性剤としてはアルキル四級アンモニウム塩が挙げられる。
また、乳化重合に使用される重合開始剤としては、前述の合成方法(1)で例示した重合開始剤を適宜用いることができる。なお、前記乳化重合を行う際には、連鎖移動剤等の他の成分が含まれていてもよい。
多段型重合体微粒子を含む微粒子分散水溶液から、多段型重合体微粒子を回収する方法としては、多段型重合体微粒子を含む微粒子分散水溶液を直接乾燥する方法、前記多段型重合体微粒子を含む微粒子分散水溶液に酸を添加して回収する酸析法、前記多段型重合体微粒子を含む微粒子分散水溶液に塩を添加して回収する塩析法、前記多段型重合体微粒子を含む微粒子分散水溶液を凍結した後に再溶解し、沈殿物をろ過し回収する方法、前記多段型重合体微粒子を含む微粒子分散水溶液を凍結し、凍結乾燥を行い回収する方法等公知の方法を用いる事ができる。得られた多段型重合体微粒子については、通常は適当な溶剤によって再分散して使用するが分散に際しては通常の攪拌法の外に超音波やホモジナイザーなどを使用することも可能である。
前記合成方法(1)、合成方法(2)で得られる重合体(A)に、フッ素ガスを用いた直接フッ化処理を施すことにより、本発明のフッ素樹脂を得ることができる。なお、直接フッ化処理では、フッ素ガスが非常に反応性の高いガスであるため、重合体(A)の有する水素原子の位置や反応性を問わずに、重合体(A)はフッ化される。直接フッ化処理においては、重合体(A)がメチレン基を有する場合には、メチレン基中の水素原子がフッ素原子に置換されたり、重合体(A)が芳香環を有する場合には、芳香環が有する水素原子がフッ素原子に置換されたり、芳香環にフッ素原子が付加される。
なお、成形前の重合体(A)に、直接フッ化処理を施すと、得られるフッ素樹脂は、重合体(A)と比べて成形性に劣る傾向がある。そこで、重合体(A)を所望の形状に成形した後に、直接フッ化処理を行い、重合体(A)の一部(表面近傍)をフッ素樹脂へフッ化することが好ましい。具体例としては、重合体(A)を含む層を有する所望の形状に成形された材料(1)の、少なくとも該層に直接フッ化処理を施し、該層の一部(表面近傍)をフッ素樹脂へフッ化する態様が挙げられる。該態様では、フッ化処理後の材料が反射防止材料として用いることが可能であり、本発明のフッ素樹脂は、反射防止材料の構成部材として得られる。なお、直接フッ化処理の条件としては、後述する〔反射防止材料〕の項で記載する直接フッ化処理の条件を適用することができる。
〔反射防止材料〕
本発明の反射防止材料は、少なくとも、エチレン性二重結合を分子内に複数有するモノマーと、ポリチオールとをラジカル重合する工程(a)を経て得られる重合体(A)を含む層を有する材料(1)に、フッ素ガスを用いた直接フッ化処理を施すことにより得られる。
(材料(1))
前記材料(1)は、少なくとも、エチレン性二重結合を分子内に複数有するモノマーと、ポリチオールとをラジカル重合する工程(a)を経て得られる重合体(A)を含む層を有していればよい。
すなわち、前記材料(1)は、前記重合体(A)を含む層のみからなる、単層構造の材料であってもよく、多層構造の材料であってもよい。多層構造の材料としては、基材の片面に重合体(A)を含む層を形成することにより得られる、〔基材/重合体(A)を含む層〕の層構造を有する二層構造の材料であってもよく、基材の両面に重合体(A)を含む層を形成することにより得られる、〔重合体(A)を含む層/基材/重合体(A)を含む層〕の層構造を有する三層構造の材料であってもよい。また、基材が複数の層から形成されていてもよい。本発明に用いる材料(1)としては、前記重合体(A)を含む層のみからなる、単層構造の材料であるか、重合体(A)を含む層が最外層に存在する多層構造の材料であることが好ましい。
なお、材料(1)の形状としては特に限定はなく、フィルム、シート、板等が挙げられる。
単層構造の材料や、重合体(A)を含む層が最外層に存在する多層構造の材料では、後述の直接フッ化処理によって重合体(A)の一部(表層部)を好適にフッ化することが可能であり、反射防止性に優れた反射防止材料を得ることができる。なお、フッ化された重合体(A)は、前述のフッ素樹脂に相当する。
材料(1)が単層構造の材料である場合には、該材料の厚さは50〜1000μmであることが好ましく、200〜700μmであることがより好ましい。また、材料(1)が多層構造の材料である場合には、前記重合体(A)を含む層の厚さは1〜50μmであることが好ましく、1〜20μmであることがより好ましく、基材の厚さは10〜1000μmであることが好ましく、20〜200μmであることがより好ましい。
材料(1)が単層構造の材料である場合には例えば、前記重合体(A)を合成する際に、板、シートまたはフィルム状の重合体として得られる条件で重合することにより得られる板、シートまたはフィルムや、任意の方法で合成した重合体(A)および、必要に応じて光硬化性モノマー、バインダー樹脂、一般的に用いられる酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤等の他の成分を混練機に導入し、Tダイ等を用いて押出すことにより得られるフィルム等の材料を用いることができる。
材料(1)が二層構造や、三層構造等の多層構造の材料である場合には例えば、基材上に、重合体(A)を含有するコート層を形成することにより得られる、基材およびコート層から形成される材料(例えば板、シートまたはフィルム)を用いることができる。基材上にコート層を形成する際には、重合体(A)および、必要に応じて光硬化性モノマー、バインダー樹脂、一般的に用いられる酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤等の他の成分を含む塗布液を、基材上に塗布することにより形成することが、基材と、コート層との密着性の観点から好ましい。前記塗布液に含有される重合体(A)としては、前述の多段型重合体微粒子であることが、塗布液への溶解性、任意に含まれるバインダー樹脂や、光硬化性モノマーが重合することにより得られるポリマーとの相溶性の観点から好ましい。
前記基材の材質としては、透明樹脂、ガラス等を用いることができる。前記透明樹脂としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリエーテルスルフォン、ポリエステル、ポリアクリル系樹脂、ポリビニルアルコール、ポリカーボネート、トリアセチルセルロース、ジアセチルセルロース、ポリアクリロニトリル等があげられる。
また、前記基材の厚さとしては、基材の材質等によっても異なるが、通常は10〜1000μm、好ましくは20〜200μmである。
前記光硬化性モノマーとしては、特に限定はないが、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ビス〔4−メタクリロイルチオフェニル〕スルフィド、2,2−ビス〔4−(メタ)アクリロキシエトキシフェニル〕プロパン等が挙げられる。光硬化性モノマーとしては1種単独で用いても、2種以上を用いてもよい。
光硬化性モノマーとして、硫黄を含むモノマー、すなわち含硫モノマーを用いると、コート層の屈折率が高くなる傾向があり好ましい。前記塗布液が光硬化性モノマーを含む場合には、光硬化性を好適に発現するための、該塗布液には、必要に応じて光重合開始剤や光重合促進剤を配合されていてもよい。
光硬化性モノマーを含む塗布液を、コート層の形成に用いる場合には、前記重合体(A)と、光硬化性モノマーとの重量比は、重合体(A)100重量部あたり、光硬化性モノマーが通常は10〜500重量部、好ましくは50〜300重量部である。
また、前記バインダー樹脂としては、重合体(A)を均一に分散し、好適に塗布を行うことができるUV硬化性樹脂が好ましい。バインダー樹脂としてUV硬化性樹脂を用いる場合には、通常、基材上に塗布液を塗布した後に、UV照射によりUV硬化性樹脂を硬化することにより、コート層を形成する。
UV硬化性樹脂としては、例えば、ウレタン(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート、多官能(メタ)アクリレート等のアクリル樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂などが挙げられるがこの中でも多官能(メタ)アクリレートを主成分としたアクリル樹脂がフッ化反応時の分解を考慮すると好ましい。また、これらの樹脂には予めフッ素原子が含まれる物を用いてもよい。これらUV硬化性樹脂は一種単独で用いても、二種以上を用いてもよい。前記塗布液がUV硬化性樹脂を含む場合には、UV硬化性を好適に発現するための、該塗布液には、必要に応じて光重合開始剤や光重合促進剤を配合されていてもよい。
UV硬化性樹脂を含む塗布液を、コート層の形成に用いる場合には、前記重合体(A)と、UV硬化性樹脂との重量比は、重合体(A)100重量部あたり、UV硬化性樹脂が通常は10〜500重量部、好ましくは50〜300重量部である。
基材上に、塗布液を塗布する方法としては、カーテンフロートコート、ディッピング、ロールコーティング、バーコーティング、スピンコート、スプレーコーティング等の塗工方法が挙げられる。
(直接フッ化処理)
本発明の反射防止材料は、前記材料(1)に、フッ素ガスを用いた直接フッ化処理を施すことにより得られる。該直接フッ化処理について説明する。
直接フッ化処理とは、前記材料(1)とフッ素ガスとが接触する条件で、前記材料(1)を保持する処理である。
直接フッ化処理の具体例としては、前記材料(1)を密閉空間に配置し、予め酸素の除去を行うために真空引きを行い、該空間にフッ素ガスを導入し、フッ素ガスの分圧が600Pa〜0.2MPa、密閉空間の全圧が1000Pa〜0.2MPa、温度−50℃〜150℃の条件下で、5秒〜2000分保持する方法が挙げられる。
なお、密閉空間にフッ素ガスを導入する際には、フッ素ガス単独でもよいが、窒素や、アルゴン、ヘリウム等の不活性ガスを同時に導入してもよく、また、これらの不活性ガスで希釈したフッ素ガスを用いても良い。また、最初の酸素除去の為に真空引きを行った後にこれらの不活性ガスを導入し、再度真空引きを行うと該空間内の残存する酸素をより低減することができるため好ましい。
直接フッ化処理では、前記材料(1)に含まれる前記重合体(A)が有する水素原子の少なくとも一部をフッ素原子で置換、もしくは芳香環に付加することができ、重合体(A)の一部を前記フッ素樹脂へフッ化することができる。
直接フッ化処理を用いずに、フッ素を含有するモノマーを用いて重合を行い、フッ素系重合体を得たり、原料重合体に化学的にフッ素原子を導入することにより得られるフッ素系重合体は、極薄いフィルムや複雑な形状の成形体を作製することが困難だが、重合体(A)を含む層を有する材料(1)にフッ素ガス処理を施す場合には、重合体(A)を含む層の表面近傍、すなわち表層部だけをフッ化することが可能であり、優れた反射防止性を有する材料を得ることができる。
本発明の反射防止材料は前述のように、材料(1)に、フッ素ガスを用いた直接フッ化処理を施すことにより得られる。本発明の反射防止材料は、材料(1)の有する前記重合体(A)を含む層の表面近傍、すなわち表層部がフッ化され、フッ素樹脂を含む層を有する。フッ素樹脂は、低屈折率であり、重合体(A)は、高屈折率である。すなわち、本発明の反射防止材料は、材料表面から、低屈折率層および高屈折率層が隣接して形成される。
本発明の反射防止材料の、低屈折率層および高屈折率層の厚さの合計は、材料(1)の有する前記重合体(A)を含む層の厚さに相当する。本発明の低屈折率層の厚さは、通常は50〜500nmであり、好ましくは50〜200nmである。なお、低屈折率層の厚さは、直接フッ化処理の条件を制御することにより、調整することが可能である。
また、反射防止材料の形状は、材料(1)の形状に相当し、特に限定はないが、フィルム、シート、板等が挙げられる。
なお、本発明の反射防止材料は従来の反射防止材料と比べ、優れた反射防止性を有する。本発明の反射防止材料が、反射防止性に優れる理由としては、本発明者等は以下のように推定している。本発明の反射防止材料は、従来の反射防止理材料と比べて、低屈折率層と、高屈折率層との屈折率差が大きいため反射防止性に優れると考えられ、これは重合体(A)がポリチオール由来の構造を有するため高い屈折率を有し、フッ素樹脂との屈折率差が大きいためと推定した。
なお、一般に重合体に直接フッ化処理を行うと、主鎖や側鎖が切断され、フッ化後の重合体は、フッ化前と比べて低分子量化する傾向があった。この傾向は、炭素‐ヘテロ原子結合を主鎖中に有する重合体で顕著に見られた。具体的には、炭素‐ヘテロ原子結合を主鎖中に有する重合体を含む層を有する材料に直接フッ化処理を施すと、フッ化後の重合体が低分子量化して表面に油状に付着した状態(浮き出し)となることがあった。
しかしながら、本発明の反射防止材料では、重合体(A)を用いることにより、低分子量化を抑制している。すなわち、重合体(A)は、エチレン性二重結合を分子内に複数有するモノマーおよびポリチオールを原料として用いており、重合体(A)はこれらの多官能のモノマーを用いることにより、架橋構造を有する重合体として得られる。重合体(A)が架橋構造を有するため、直接フッ化処理により、多少の炭素‐ヘテロ原子結合が切断された場合でも、分子量が低減することを抑制することが可能である。
本発明の反射防止材料は優れた反射防止性を有するため、例えば各種ディスプレイを構成する反射防止フィルムとして好適に用いることができる。
次に本発明について実施例を示してさらに詳細に説明するが、本発明はこれらによって限定されるものではない。
〔製造例1〕
(UV硬化型含硫ハードコート液の調製)
ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート 70g、ビス〔4−メタクリロイルチオフェニル〕スルフィド 30g、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン (チバジャパン(株)社製イルガキュア651) 3g、メチルイソブチルケトン 100gを混合して紫外線硬化性ハードコート液(固形分50%)を調製した。
〔製造例2〕
(UV硬化型含硫ハードコート液の調製)
ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート 80g、2,2−ビス〔4−(メタ)アクリロキシエトキシフェニル〕プロパン 20g、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン(チバジャパン(株)社製イルガキュア651) 3g、メチルイソブチルケトン 100gを混合して紫外線硬化性ハードコート液(固形分50%)を調製した。
〔製造例3〕
(重合体微粒子の製造)
重合用ガラス容器(X)に純水160gを入れて、攪拌し、30分間窒素を吹き込んで窒素置換を行ったのちに70℃に昇温したウォーターバスにセットした。
別のガラス容器(Y)に、モノマーとして、96重量%ジビニルベンゼン(新日鉄化学社製、DVB960)18.0g、およびペンタエリスリトールテトラキス(チオプロピオネート) 12.0gを秤量し、窒素を吹き込んで窒素置換を行った。更に別の容器(Z)に1重量%エチレンジアミン四酢酸鉄ナトリウム2水塩水溶液0.6g、および5重量%アルキルジフェニルエーテルジスルホン酸ナトリウム水溶液 40.0gを秤量し、添加液を得た。
70℃に加温された重合用ガラス容器(X)に、ガラス容器(Y)中のモノマーおよび、容器(Z)中の添加液を投入し、重合(1)を開始した。
重合(1)を開始してから2時間後、重合開始剤として1重量%tert‐ブチルハイドロパーオキサイド水溶液0.3g、1重量%ナトリウム ホルムアルデヒドスルフォキシレート水溶液 0.3gを、重合用ガラス容器(X)投入し、更に重合を継続し、重合(1)を開始してから2.5時間後に冷却して重合を終了し、重合体微粒子分散水溶液を得た。
重合(1)終了時点での重合体微粒子分散水溶液中の重合体微粒子の粒径は146nmであった。なお、粒径の測定は、ベックマンコールター社製サブミクロン粒子アナライザーN4を用いて行った。
(多段型重合体微粒子の製造)
前記重合体微粒子の製造で作成した重合体微粒子分散水溶液を窒素下で70℃に昇温し、予め窒素置換したスチレン9.64g、アクリロニトリル3.21g、n‐ドデシルメルカプタン0.03g、1重量%tert‐ブチルハイドロパーオキサイド水溶液1.29g、1重量%ナトリウム ホルムアルデヒドスルフォキシレート1.29gを投入し、重合(2)を開始した。
重合(2)を開始してから2時間後に更に1重量%tert‐ブチルハイドロパーオキサイド水溶液 0.64g、1重量%ナトリウム ホルムアルデヒドスルフォキシレート 0.64gを追加投入して重合を継続し、重合(2)を開始してから3時間後に更に1重量%tert‐ブチルハイドロパーオキサイド水溶液 0.64g、1重量%ナトリウム ホルムアルデヒドスルフォキシレート 0.64gを追加投入して重合を継続した。
重合(2)を開始してから4時間後に冷却して重合を終了し、多段型重合体微粒子を含む微粒子分散水溶液を得た。
重合(2)終了時の微粒子分散水溶液中の多段型重合体微粒子の粒径は、164nmであった。なお、粒径の測定は、ベックマンコールター社製サブミクロン粒子アナライザーN4を用いて行った。
(多段型重合体微粒子の塩析)
前記多段型重合体微粒子の製造で作成した、微粒子分散水溶液200gを90℃の3%塩化カルシウム水溶液200g中に滴下し、塩析を行った。次いで沈殿物のろ過を行い、水洗、40℃乾燥を行い、白い粉末(多段型重合体微粒子(1))を得た。
〔製造例4〕
(重合体微粒子の製造)
重合用ガラス容器(X)に純水180gを入れて、攪拌し、30分間窒素を吹き込んで窒素置換を行ったのちに70℃に昇温したウォーターバスにセットした。
別のガラス容器(Y)に、モノマーとして57重量%ジビニルベンゼン(主な不純物はエチルスチレン) 24.0g、および1,2−ビス〔(2-メルカプトエチル)チオ〕−3−メルカプトプロパン 6.0gを秤量し、窒素を吹き込んで窒素置換を行った。更に別の容器(Z)に1重量%エチレンジアミン四酢酸鉄ナトリウム2水塩水溶液0.6g、5重量%アルキルジフェニルエーテルジスルホン酸ナトリウム水溶液 40.0gを秤量し、添加液を得た。
70℃に加温された重合用ガラス容器(X)に、ガラス容器(Y)中のモノマーおよび、容器(Z)中の添加液を投入した。次いで、重合開始剤として、5重量%tert‐ブチルハイドロパーオキサイド水溶液0.48g、5重量%ナトリウム ホルムアルデヒドスルフォキシレート水溶液 0.48gを投入し重合(1)を開始した。
重合(1)を開始してから、1時間後、2時間後、3時間後、および4時間後に、それぞれ重合開始剤として5重量%tert‐ブチルハイドロパーオキサイド水溶液0.24g、5重量%ナトリウム ホルムアルデヒドスルフォキシレート水溶液 0.24gを追加投入し重合を継続した。
重合(1)を開始してから5時間後に冷却して重合を終了し、重合体微粒子分散水溶液を得た。
重合(1)終了時点での重合体微粒子分散水溶液中の重合体微粒子の粒径は58nmであった。なお、粒径の測定は、ベックマンコールター社製サブミクロン粒子アナライザーN4を用いて行った。
(多段型重合体微粒子の製造)
前記多段型重合体微粒子の製造で作成した微粒子分散水溶液を窒素下で70℃に昇温し、予め窒素置換したスチレン10.61g、アクリロニトリル3.54g、n‐ドデシルメルカプタン0.03g、5重量%tert‐ブチルハイドロパーオキサイド水溶液0.17g、5重量%ナトリウム ホルムアルデヒドスルフォキシレート0.17gを投入して重合(2)を開始した。
重合(2)を開始してから1時間後および2時間後に、それぞれ5重量%tert‐ブチルハイドロパーオキサイド水溶液 0.17g、1重量%ナトリウム ホルムアルデヒドスルフォキシレート 0.17gを追加投入し重合を継続した。
重合(2)を開始してから3時間後に冷却して重合を終了し、多段型重合体微粒子を含む微粒子分散水溶液を得た。
重合(2)終了時の微粒子分散水溶液中の多段型重合体微粒子の粒径は、65nmであった。なお、粒径の測定は、ベックマンコールター社製サブミクロン粒子アナライザーN4を用いて行った。
(多段型重合体微粒子の塩析)
前記多段型重合体微粒子の製造で作成した、微粒子分散水溶液200gを90℃の3%塩化カルシウム水溶液200g中に滴下し、塩析を行った。次いで沈殿物のろ過を行い、水洗、40℃乾燥を行い、白い粉末(多段型重合体微粒子(2))を得た。
〔製造例5〕
(重合体微粒子の製造)
ガラス容器に純水180g、1重量%エチレンジアミン四酢酸鉄ナトリウム2水塩水溶液0.6g、1%重量酒石酸水溶液6gを投入、攪拌し、窒素を吹き込んだ。
前記ガラス容器を湯浴中で70℃に加熱した後に、ガラス容器に、モノマーとしてスチレン14.3g、および57重量%ジビニルベンゼン(主な不純物はエチルスチレン)15.7g、界面活性剤として5%アルキルジフェニルエーテルジスルホン酸ナトリウム水溶液40gを投入し、窒素雰囲気下で混合し、70℃まで昇温を行った。
次いで重合開始剤として5重量%tert‐ブチルハイドロパーオキサイド水溶液16.8g、5重量%ナトリウム ホルムアルデヒドスルフォキシレート水溶液 16.8gを投入し窒素雰囲気下70℃で重合(1)を開始した。
重合(1)を開始してから2時間後、更に5重量%tert‐ブチルハイドロパーオキサイド水溶液 8.4g、5重量%ナトリウム ホルムアルデヒドスルフォキシレート水溶液 8.4g、5重量%アルキルジフェニルエーテルジスルホン酸ナトリウム水溶液20gを追加投入し、4時間後にも5重量%tert‐ブチルハイドロパーオキサイド水溶液 8.4g、5重量%ナトリウム ホルムアルデヒドスルフォキシレート 8.4gを追加投入して重合反応を継続した。
重合(1)を開始してから6時間後に冷却して重合を終了し、重合体微粒子分散水溶液を得た。
重合(1)終了時点での重合体微粒子分散水溶液中の重合体微粒子の粒径は35nmであった。なお、粒径の測定は、ベックマンコールター社製サブミクロン粒子アナライザーN4を用いて行った。
(多段型重合体微粒子の製造)
前記重合体微粒子の製造で作成した微粒子分散水溶液を70℃に昇温し、予め窒素置換したスチレン9.65g、アクリロニトリル3.22g、n‐ドデシルメルカプタン0.03g、50重量%ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド水溶液0.13gを投入し、更に窒素雰囲気下で5重量%tert‐ブチルハイドロパーオキサイド水溶液5.2g、5重量%ナトリウム ホルムアルデヒドスルフォキシレート5.2gを投入して重合(2)を開始した。
重合(2)を開始してから2時間後に更に5重量%tert‐ブチルハイドロパーオキサイド水溶液 2.6g、5重量%ナトリウム ホルムアルデヒドスルフォキシレート 2.6gを追加投入して重合を継続し、重合(2)を開始してから4時間後に冷却して重合を終了し、多段型重合体微粒子を含む微粒子分散水溶液を得た。
重合(2)終了時の微粒子分散水溶液中の多段型重合体微粒子の粒径は、43nmであった。なお、粒径の測定は、ベックマンコールター社製サブミクロン粒子アナライザーN4を用いて行った。この多段型重合体微粒子の重合(1)に用いたモノマーと、重合(2)に用いたモノマーとの重量比(重合(1)に用いたモノマー/重合(2)に用いたモノマー)は70/30である。
(多段型重合体微粒子の塩析)
前記多段型重合体微粒子の製造で作成した、微粒子分散水溶液200gを90℃の3%塩化カルシウム水溶液200g中に滴下し、塩析を行った。次いで沈殿物のろ過を行い、水洗、40℃乾燥を行い、白い粉末(多段型重合体微粒子(3))を得た。
〔実施例1〕
製造例3で作成した多段型重合体微粒子(1) 2.5g、製造例2で作成した紫外線硬化性ハードコート液(固形分50%) 3.0g、メチルイソブチルケトン 6.0gを混合して多段型重合体微粒子分散ハードコート液を調製した。
この液をバーコーターを用いて、透明PET(テトロンフィルムHS−74 帝人デュポンフィルム(株))基材上に塗工し、メチルイソブチルケトン溶媒を除去した後にUV照射(3500mJ/cm2)を行い、膜を作成(厚み5μm)し、基材/高屈折率層の層構造を有するフィルムを得た。
この基材/高屈折率層の層構造を有するフィルムに、以下の方法でフッ素ガスを用いた直接フッ化処理を施した。基材/高屈折率層の層構造を有するフィルムをフッ素ガス処理用チャンバーに入れ、チャンバー内の酸素除去を行うため真空引きおよび窒素ガス導入を3回繰り返し、さらに真空引きを行った。
次いでフッ素ガスを、チャンバーに内圧6.7kPaになるまで5分間かけて導入し、1時間放置した。チャンバー内のフッ素ガスを除去した後にこのフィルムを取り出し、高屈折率層の表層部に低屈折率層が形成された、基材/高屈折率層/低屈折率層の層構造を有する反射防止フィルムを得た。
基材/高屈折率層の層構造を有するフィルムおよび基材/高屈折率層/低屈折率層の層構造を有する反射防止フィルムについて、後述の光線反射率測定およびエタノールによる拭取り試験を行った。
〔実施例2〕
製造例4で作成した多段型重合体微粒子(2) 2.5g 製造例2で作成した紫外線硬化性ハードコート液(固形分50%) 3.0g、メチルイソブチルケトン 3.5gを混合して微粒子分散ハードコート液を調製した。
この液をバーコーターを用いて、透明PET(テトロンフィルムHS−74 帝人デュポンフィルム(株))基材上に塗工し、メチルイソブチルケトン溶媒を除去した後にUV照射(3500mJ/cm2)を行い、膜を作成(厚み8μm)し、基材/高屈折率層の層構造を有するフィルムを得た。
この基材/高屈折率層の層構造を有するフィルムを実施例1と同じ方法で表層部に低屈折率層を形成し、基材/高屈折率層/低屈折率層の層構造を有する反射防止フィルムを得た。
基材/高屈折率層の層構造を有するフィルムおよび基材/高屈折率層/低屈折率層の層構造を有する反射防止フィルムについて、後述の光線反射率測定およびエタノールによる拭取り試験を行った。
〔実施例3〕
製造例2で作成した紫外線硬化性ハードコート液(固形分50%)を製造例1で作成した紫外線硬化性ハードコート液(固形分50%)に替えた以外は、実施例2と同様に行い、基材/高屈折率層/低屈折率層の層構造を有する反射防止フィルムを得た。
基材/高屈折率層の層構造を有するフィルムおよび基材/高屈折率層/低屈折率層の層構造を有する反射防止フィルムについて、後述の光線反射率測定およびエタノールによる拭取り試験を行った。
〔実施例4〕
96重量%ジビニルベンゼン(新日鉄化学社製、DVB960) 70g、1,2−ビス〔(2-メルカプトエチル)チオ〕−3−メルカプトプロパン 30gを混合した後に重合開始剤としてtert−ブチル パーオキシピバレートを1.0重量部添加してよく攪拌し、重合性単量体混合物を得た。
次いでこの重合性単量体混合物を2枚の対向するガラス製円板(厚さ5mm、2枚のガラス製円板間隔0.5mm)の周辺部をテープでシールする事により作成した重合板作成用型の中に流し込み、テープで封入した。この重合板作成用型を40℃で8時間保持し、5時間かけて65℃まで昇温し、2時間かけて100℃に昇温し、100℃で1時間保持し、2時間かけて70℃に降温するという加熱プログラムを組んだオーブンに入れて重合を行った後サンプル型より重合体を取り出し高屈折率板を得た。
この板に、以下の方法で直接フッ化処理を施した。この板をフッ素ガス処理用チャンバーに入れ、チャンバー内の酸素除去を行うため真空引きおよび窒素ガス導入を3回繰り返し、さらに真空引きを行った。
次いでフッ素ガスを、フッ素ガスをチャンバーに内圧3.3kPaになるまで5分間かけて導入し、10分間放置した。チャンバー内のフッ素ガスを除去した後にこの板を取り出し、高屈折率樹脂の表層部に低屈折率層を形成された高屈折率層/低屈折率層の層構造を有する反射防止板を得た。
高屈折率板および高屈折率層/低屈折率層の層構造を有する反射防止板について、後述の光線反射率測定およびエタノールによる拭取り試験を行った。
〔比較例1〕
製造例1で作成した紫外線硬化性ハードコート液(固形分50%)をバーコーターによって透明PET(テトロンフィルムHS−74 帝人デュポンフィルム(株))基材上に塗工し、メチルイソブチルケトン溶媒を除去した後にUV照射(3500mJ/cm2)を行い、膜を作成(厚み5μm)し、基材/高屈折率層の層構造を有するフィルムを得た。
基材/高屈折率層の層構造を有するフィルムについて、後述の光線反射率測定およびエタノールによる拭取り試験を行った。
〔比較例2〕
製造例5で作成した多段型重合体微粒子(3) 2.5g、製造例2で作成した紫外線硬化性ハードコート液(固形分50%) 3.0g、メチルイソブチルケトン 6.5gを混合して微粒子分散ハードコート液を調製した。
この液をバーコーターを用いて、透明PET(テトロンフィルムHS−74 帝人デュポンフィルム(株))基材上に塗工し、メチルイソブチルケトン溶媒を除去した後にUV照射(3500mJ/cm2)を行い、膜を作成(厚み5μm)し、基材/高屈折率層の層構造を有するフィルムを得た。
この基材/高屈折率層の層構造を有するフィルムを実施例1と同じ方法で表層部に低屈折率層を形成し、基材/高屈折率層/低屈折率層の層構造を有する反射防止フィルムを得た。
基材/高屈折率層の層構造を有するフィルムおよび基材/高屈折率層/低屈折率層の層構造を有する反射防止フィルムについて、後述の光線反射率測定およびエタノールによる拭取り試験を行った。
〔比較例3〕
厚さ250μmのポリフェニレンスルフィド(PPS)シートを100℃において縦横3倍に二軸延伸し、次いで250℃のオーブンにて1分間熱処理を行った。得られたポリフェニレンスルフィド二軸延伸フィルムは、厚さ25μmで、ヘイズは0.45だった。次に、得られたポリフェニレンスルフィド二軸延伸フィルム(高屈折率基材)を、放置する時間を1時間から5分間に替えた以外は、実施例1と同じ方法で表層部に低屈折率層を形成し、高屈折率基材/低屈折率層構造を有する反射防止フィルムを得た。
ポリフェニレンスルフィド二軸延伸フィルムおよび高屈折率基材/低屈折率層構造を有する反射防止フィルムについて、後述の光線反射率測定およびエタノールによる拭取り試験を行った。
〔フィルムの評価〕
実施例、比較例で得たフィルム(但し、実施例4では板)について、以下の評価を行った。
(光線反射率測定)
フィルムの測定面に保護フィルムを貼り加工時に傷や汚れがつかないように保護した。
なお、測定面とは、低屈折率層を有する反射防止フィルムにおいては、低屈折率層の表面を意味し、基材/高屈折率層の層構造を有するフィルムにおいては、高屈折率層の表面を意味し、高屈折率板およびポリフェニレンスルフィド二軸延伸フィルムにおいては、任意の表面を意味する。
次いで反対面を#1200のサンドペーパーで荒らした後に黒のマジックで塗りつぶしてフィルム反対面での反射が生じない様に加工した。
このフィルムを黒のマット面のアクリル板に測定面を外側に平坦になるように貼りつけ、保護フィルムを取り光線反射率測定サンプルとした。
光線反射率(%)は日立分光光度計U4000に5度正反射付属装置をセットし付属の基準ミラーを用いてベースライン補正を行った後に300〜1500nmの波長で測定した。
表1には、各実施例、比較例における、反射防止フィルムの500〜550nmの範囲で反射率が一番低い波長における反射率を記した。
実施例2および比較例2の直接フッ化処理前後の反射分光スペクトルを図1に示す。
(エタノールによる拭取り試験)
直接フッ化処理における樹脂分解の有無を以下の拭取り試験で測定した。
エタノールをベンコットPS-2(小津産業(株)社製)に染み込ませ、反射防止フィルムの低屈折率層(フッ素ガス処理を施した層)の表面を拭取る。
その際に樹脂が除去されるか否かを検査した。
なお、実施例、比較例におけるフッ素ガス処理を行う前のフィルムについても同様の方法で、高屈折率層(但し、実施例4では高屈折率板、比較例3ではポリフェニレンスルフィド二軸延伸フィルム)の表面を拭取り、樹脂が除去されるか否かを検査した。
樹脂が除去されるものをBB、除去されないものをAAとして評価した。
Figure 2011032360

Claims (6)

  1. エチレン性二重結合を分子内に複数有するモノマーと、ポリチオールとをラジカル重合する工程(a)を経て得られる重合体(A)に、フッ素ガスを用いた直接フッ化処理を施すことにより得られるフッ素樹脂。
  2. 前記工程(a)が、乳化重合により行われ、
    前記重合体(A)が、前記工程(a)により重合体微粒子を得た後に、前記重合体微粒子の存在下で、エチレン性二重結合を分子内に一つ有するモノマーを重合することにより得られる多段型重合体微粒子である請求項1に記載のフッ素樹脂。
  3. 少なくとも、エチレン性二重結合を分子内に複数有するモノマーと、ポリチオールとをラジカル重合する工程(a)を経て得られる重合体(A)を含む層を有する材料(1)に、フッ素ガスを用いた直接フッ化処理を施すことにより得られる反射防止材料。
  4. 前記工程(a)が、乳化重合により行われ、
    前記重合体(A)が、前記工程(a)により重合体微粒子を得た後に、前記重合体微粒子の存在下で、エチレン性二重結合を分子内に一つ有するモノマーを重合することにより得られる多段型重合体微粒子である請求項3に記載の反射防止材料。
  5. 前記材料(1)が、基材上に、重合体(A)を含有するコート層を形成することにより得られる、基材およびコート層から形成される材料である請求項3または4に記載の反射防止材料。
  6. 前記材料(1)が、重合体(A)を含む層のみからなる、単層構造の材料である請求項3に記載の反射防止材料。
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